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審決分類 審判 一部無効 特29条の2  F04C
管理番号 1144290
審判番号 無効2005-80282  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-10-08 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-09-26 
確定日 2006-09-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第3545826号発明「スクロ-ル圧縮機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3545826号の請求項1、3、4、8に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯の概要
本件特許第3545826号に係る発明についての出願は、平成7年3月20日の出願であって、平成16年4月16日に特許の設定登録がなされたものである。
これに対し平成17年9月26日付けで請求人より本件無効審判の請求がなされ、平成17年12月20日付けで被請求人より答弁書及び訂正請求書が提出された。その後、平成18年1月12日付けで審尋(甲第1号証の技術説明)を双方に行い、請求人から、平成18年2月15日付けで弁駁書が提出され、平成18年6月15日に口頭審理が実施され、被請求人は平成18年6月15日付け口頭審理陳述要領書を陳述し、訂正拒絶理由通知が告知された。
さらに、被請求人から平成18年6月26日付けで意見書及び手続補正書が提出され、請求人から平成18年6月19日付けで上申書が提出された。そして、請求人の平成18年6月19日付け上申書における新たな効果(第2.2.(1)参照。)の有無について、当合議体から双方に平成18年6月30日付けで審尋を行い、請求人から平成18年7月10日付けで回答書が提出されたが、被請求人からは回答がなされなかった。

第2.請求人の主張の概要
請求人は、審判請求書において「特許第3545826号発明の明細書の請求項1、3、4、8に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として概ね次の1.のように主張するとともに、証拠方法として、甲第1号証を提出し、さらに、平成18年6月19日付け上申書において、概ね次の2.(1)のように主張するとともに、周知技術に対する証拠方法として、甲第2、3号証を提出した。平成18年7月10日付け回答書において、概ね次の2.(2)のように主張し、周知技術に対する証拠方法として、甲第4、5号証を提出した。

1.本件の請求項1、3、4、8に係る本件発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲第1号証の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、これを「先願明細書又は図面」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、本件特許は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

2.(1)平成17年9月26日付け審判請求書の17頁3から5行の『請求項4に係る本件発明が溝通路を「固定スクロール端板摺動面」に設けているのに対し、甲第1号証が溝通路を「スラスト軸受面」に設けている点で両者は相違する。』との相違点について、本件発明のように、溝通路を「固定スクロール端板摺動面」に設けることは、周知技術(例えば特開昭62-261686号公報、特開昭62-168986号公報)であり、甲第1号証における溝通路を、「スラスト軸受面」に設ける代わりに、周知技術である「固定スクロール端板摺動面」に設けたに過ぎないものであり、新たな効果を奏するものではなく、両者は実質的に同一である。
(2)請求項4に係る発明について、本件特許明細書の段落0013の『「前記両端板の摺動面を確実に潤滑できる」という効果は、溝通路を固定スクロール端板に設けたことに伴う当然の効果であって、周知技術』の有する効果にすぎない。(回答書2頁12から14行)
甲第1号証の『段落0078において「また本第7の発明は、背面室Cと吸入室との間の連通路を、旋回スクロールのラップ支持円板と固定スクロールの鏡板との摺動面に設けた油溝とし、油溝と排出油通路とを互いに反対位置に配置させたことにより、背面室Aから背面室Bを経由して背面室Cに流入させた潤滑油を、吸入室に流入させる途中で旋回スクロールのラップ支持円板と固定スクロールの鏡板との間の摺動面を均一に供給し、摺動摩擦抵抗を少なくして圧縮機の効率と耐久性向上を図ることができる。」と記載されている。』(同2頁28行から3頁5行)
甲第1号証の『段落0063において「その結果、旋回スクロール13の離反力よりも合成背圧力が大きい場合には、ラップ支持円板13bは固定スクロール7の鏡板7aに支持され(図5参照)、反対の場合にはスラスト軸受19に支持される(図6参照)。上述のいずれの場合にもラップ支持円板13bとその摺動面の間は微小隙間が保持されて、その摺動面に供給された潤滑油によって油膜形成されており、その摺動抵抗が軽減されている。」と記載されている。すなわち、甲第1号証においては、ラップ支持円板13bと固定スクロール7の鏡板7aとの間の摺動面の摺動抵抗を軽減することと、ラップ支持円板13bとスラスト軸受19との間の摺動面の摺動抵抗を軽減することのどちらも大切であることが記載されているのであるから、甲第1号証においてバイパス穴24をスラスト軸受19側に向けて開口させるのに代えて(又は、加えて)、周知技術のようにバイパス穴24を固定スクロール7の鏡板7a側に向けて開□させることは、設計上の微差に過ぎない。』(同3頁14から26行)

3.証拠方法
甲第1号証 特願平7-4882号(特開平8-193583号公報)
甲第2号証 特開昭62-261686号公報
甲第3号証 特開昭62-168986号公報
甲第4号証 特開平6-317271号公報
甲第5号証 特開平5-164068号公報

第3.被請求人の主張概要
被請求人は、平成17年12月20日付けで答弁書及び同日付け訂正請求書が提出し、同答弁書において、「その出願から設定登録にいたるまでの手続の経緯が、請求人の主張の通りであること、本件特許明細書の特許請求の範囲請求項1に係る発明に関し、構成事項AないしIと分説(請求書第7頁第8行ないし第8頁第3行)しているとおりのものであること、及び請求人の提示に係る甲第1号証に関し、証拠の説明(請求書第8頁第19行ないし第12頁第10行)をしている内容については、これらを認めるが、その余についてはすべて争う。」(同答弁書2頁7から12行)と主張した上で、概ね次の1.のように主張し、平成18年6月26日付けで意見書及び手続補正書を提出し、概ね次の2.のように主張した。

1.平成17年12月20日付け訂正請求書において明細書の訂正を請求し、「本件請求人の提示に係る甲第1号証に記載の先願発明は、本件発明の要旨の一部である上記訂正G、訂正H及び訂正Iの構成を備えていないので、両発明が同一であるとはいえない。それゆえ、本書と同時に提出した訂正請求書に添付の全文訂正明細書の特許請求の範囲請求項1、3、4、5に係る特許発明が、甲第1号証の存することにより、特許法第29条の2の適用を受けて、その特許が無効とされるべきであるとする請求人の主張には理由がない。」(同答弁書7頁10から16行。なお、「請求項1、3、4、5に係る特許発明」は、「請求項1、3、4、8に係る特許発明」の誤り。)

2.『訂正拒絶理由における審判長殿の上記説示1ないし3に鑑み、被請求人が、平成17年12月20日付けで提出した訂正請求書の第2頁ないし第8頁にわたっての「7 請求の理由」の全文及び同書に添付の全文訂正明細書を、本書と同時に提出する手続補正書(訂正請求書)及び同書に添付の全文訂正明細書のとおりに訂正いたしました。この全文訂正明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された発明によるスクロール圧縮機の構成は、前回訂正における訂正F及び訂正Iは、もとに戻して訂正をしないこととした』。(意見書3頁7から13行)
そして、「今回の手続補正により補正された前掲AないしF、訂正G、訂正H及びIを構成事項として具有する本件特許発明(以下、単に「本発明」という)と前掲先願発明との差違について」(意見書5頁3から5行)主張した。

第4.訂正の適否
1.訂正の内容
請求人が求めている訂正の内容は、平成17年12月20日付け訂正請求書において「特許第3545826号の明細書を請求書に添付した全文訂正明細書のとおり訂正することを求める。」(以下、当該明細書を、「特許明細書」といい、当該全文訂正明細書を、「訂正明細書」という。)というもので、その訂正の内容は、以下の(1)ないし(10)のとおりである。

(1)訂正事項1
特許明細書の特許請求の範囲に記載された
「【請求項1】
密閉容器内に端板と端板に直立する渦巻状のラップを有する固定スクロール及び旋回スクロールと、これら固定スクロール及び旋回スクロールを互いにラップを内側として噛み合わせて形成された圧縮室と、前記旋回スクロールを旋回軸受部を介して旋回運動させるクランク軸と、該クランク軸を主軸受部を介して支持する主フレームとを備える圧縮機構部、
該圧縮機構部を駆動する電動機部、
前記圧縮機構部及び電動機部を収納しかつ圧縮機構部の吐出口に連通されて吐出圧力に維持されると共にその下部には潤滑油部を有する密閉容器
を備えたスクロール圧縮機において、
旋回スクロールと主フレームとの間に設けられ、前記旋回スクロールの背面を低圧部側と前記各軸受部側とに仕切り、前記各軸受部側をほぼ吐出圧力にするためのシール部材と、
該シール部材により仕切られた前記低圧部側に設けられたオルダムリングと、
前記吐出圧力下にある潤滑油部から前記クランク軸内を通りクランク部端部の空間に通じる第1の給油路と、
前記シール部材によりほぼ吐出圧力とされた前記各軸受部側の空間から前記旋回スクロ-ル端板内を通りその後前記低圧部側に通じると共に、旋回スクロールの旋回運動により間欠的にその開口部端が開口されるように構成された第2の給油路とを備え、
前記低圧部側に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して間欠的に給油される潤滑油により潤滑されることを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項2】
請求項1において、前記第1の給油路の途中からクランク軸の外周面に開口しクランク軸の回転による遠心ポンプ作用を利用して前記主軸受部に潤滑油を供給する第3の給油路を備えることを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項3】
請求項1において、前記スクロール圧縮機は可変速仕様としたことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項4】
請求項1において、前記第2の給油路の旋回スクロ-ル端板内に形成された給油路の開口端部が旋回スクロ-ルの旋回運動により移動する範囲内の前記固定スクロ-ル端板摺動面に円周方向の溝通路を設け、該溝通路と旋回スクロール端板に設けた給油路の開口部とを、旋回スクロールの旋回運動により間欠的に連通させる構成としたことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項5】
請求項1において、クランク軸内に形成された前記第1の給油路は、その上流側でクランク軸心側とし、その上方でクランク軸心から偏心した位置となるようにクランク軸に対し斜めに形成したことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項6】
請求項1において、前記クランク軸の前記主軸受より反クランク部側にクランク軸の一端側を支承する副軸受部を設け、前記第1の給油路の途中からクランク軸の外周面に開口しクランク軸の回転による遠心ポンプ作用を利用して前記副軸受部に潤滑油を供給する第4の給油路を設けたことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項7】
請求項1において、前記旋回軸受部と主軸受部との間の空間と、前記密閉容器内の空間とを連通し、前記空間に供給された潤滑油を密閉容器内空間に排出する排油孔を前記主フレ-ムに形成したことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項8】
請求項1において、前記第1の給油路は、クランク軸内に形成された給油路の一端部と前記潤滑油部とを接続する給油パイプを備えることを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項9】
請求項5において、クランク軸内に形成した給油路をクランク軸心に対してクランク部方向に偏心させたことを特徴とするスクロ-ル圧縮機。」を、

「【請求項1】
密閉容器内に端板と端板に直立する渦巻状のラップを有する固定スクロール及び旋回スクロールと、これら固定スクロール及び旋回スクロールを互いにラップを内側として噛み合わせて形成された圧縮室と、前記旋回スクロールを旋回軸受部を介して旋回運動させるクランク軸と、該クランク軸を主軸受部を介して支持する主フレームとを備える圧縮機構部、
該圧縮機構部を駆動する電動機部、
前記圧縮機構部及び電動機部を収納しかつ圧縮機構部の吐出口に連通されて吐出圧力に維持されると共にその下部には潤滑油部を有する密閉容器
を備えたスクロール圧縮機において、
旋回スクロールと主フレームとの間に設けられ、前記旋回スクロールの背面を低圧部側と前記各軸受部側とに仕切り、前記各軸受部側をほぼ吐出圧力にするためのシール部材と、
該シール部材により仕切られた前記低圧部側空間に設けられたオルダムリングと、
前記吐出圧力下にある潤滑油部から前記クランク軸内を通り該クランク軸の一端側に設けたクランク部の旋回スクロール側端部空間に通じる第1の給油路と、
前記シール部材によりほぼ吐出圧力とされた前記クランク部の旋回スクロール側端部空間から前記旋回スクロ-ル端板内を通りその後前記低圧部側に通じると共に、旋回スクロールの旋回運動により間欠的にその開口部端が開口されるように構成され、前記クランク部の旋回スクロール側端部空間の潤滑油を直接旋回スクロール端板内に導いて、前記オルダムリングを設けた低圧部側空間に間欠的に排出するようにした第2の給油路とを備え、
前記低圧部側空間に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して前記オルダムリングを設けた低圧部側空間に間欠的に排出された潤滑油により潤滑されることを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項2】
請求項1において、前記第1の給油路の途中からクランク軸の外周面に開口しクランク軸の回転による遠心ポンプ作用を利用して前記主軸受部に潤滑油を供給する第3の給油路を備えることを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項3】
請求項1において、前記スクロール圧縮機は可変速仕様としたことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項4】
請求項1において、前記第2の給油路の旋回スクロール端板内に形成された給油路の開口端部が旋回スクロールの旋回運動により移動する範囲内の前記固定スクロール端板摺動面に円周方向の溝通路を設け、該溝通路と旋回スクロール端板に設けた給油路の開口部とを、旋回スクロールの旋回運動により間欠的に連通させる構成としたことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項5】
請求項1において、クランク軸内に形成された前記第1の給油路は、その上流側でクランク軸心側とし、その上方でクランク軸心から偏心した位置となるようにクランク軸に対し斜めに形成したことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項6】
請求項1において、前記クランク軸の前記主軸受より反クランク部側にクランク軸の一端側を支承する副軸受部を設け、前記第1の給油路の途中からクランク軸の外周面に開口しクランク軸の回転による遠心ポンプ作用を利用して前記副軸受部に潤滑油を供給する第4の給油路を設けたことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項7】
請求項1において、前記旋回軸受部と主軸受部との間の空間と、前記密閉容器内の空間とを連通し、前記空間に供給された潤滑油を密閉容器内空間に排出する排油孔を前記主フレームに形成したことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項8】
請求項1において、前記第1の給油路は、クランク軸内に形成された給油路の一端部と前記潤滑油部とを接続する給油パイプを備えることを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項9】
請求項5において、クランク軸内に形成した給油路をクランク軸心に対してクランク部方向に偏心させたことを特徴とするスクロール圧縮機。」と訂正する。

(2)訂正事項2
特許明細書の段落0003の
「【0003】
クランク軸に設けた偏心孔により軸受部に給油する従来のものにおいては、クランク軸に設けた偏心孔を潤滑油中に入れて遠心ポンプ作用を得るため、クランクジクの回転中心を垂直とした縦型構造としてのみ使用されている。」を、
「【0003】
クランク軸に設けた偏心孔により軸受部に給油する従来のものにおいては、クランク軸に設けた偏心孔を潤滑油中に入れて遠心ポンプ作用を得るため、クランク軸の回転中心を垂直とした縦型構造としてのみ使用されている。」と訂正する。

(3)訂正事項3
特許明細書の段落0008の
「【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1の特徴は、密閉容器内に端板と端板に直立する渦巻状のラップを有する固定スクロール及び旋回スクロールと、これら固定スクロール及び旋回スクロールを互いにラップを内側として噛み合わせて形成された圧縮室と、前記旋回スクロールを旋回軸受部を介して旋回運動させるクランク軸と、該クランク軸を主軸受部を介して支持する主フレームとを備える圧縮機構部、該圧縮機構部を駆動する電動機部、前記圧縮機構部及び電動機部を収納しかつ圧縮機構部の吐出口に連通されて吐出圧力に維持されると共にその下部には潤滑油部を有する密閉容器を備えたスクロール圧縮機において、旋回スクロールと主フレームとの間に設けられ、前記旋回スクロールの背面を低圧部側と前記各軸受部側とに仕切り、前記各軸受部側をほぼ吐出圧力にするためのシール部材と、該シール部材により仕切られた前記低圧部側に設けられたオルダムリングと、前記吐出圧力下にある潤滑油部から前記クランク軸内を通りクランク部端部の空間に通じる第1の給油路と、前記シール部材によりほぼ吐出圧力とされた前記各軸受部側の空間から前記旋回スクロ-ル端板内を通りその後前低圧部側に通じると共に、旋回スクロールの旋回運動により間欠的にその開口部端が開口されるように構成された第2の給油路とを備え、前記低圧部側に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して間欠的に給油される潤滑油により潤滑されることにある。」を、
「【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1の特徴は、密閉容器内に端板と端板に直立する渦巻状のラップを有する固定スクロール及び旋回スクロールと、これら固定スクロール及び旋回スクロールを互いにラップを内側として噛み合わせて形成された圧縮室と、前記旋回スクロールを旋回軸受部を介して旋回運動させるクランク軸と、該クランク軸を主軸受部を介して支持する主フレームとを備える圧縮機構部、該圧縮機構部を駆動する電動機部、前記圧縮機構部及び電動機部を収納しかつ圧縮機構部の吐出口に連通されて吐出圧力に維持されると共にその下部には潤滑油部を有する密閉容器を備えたスクロール圧縮機において、旋回スクロールと主フレームとの間に設けられ、前記旋回スクロールの背面を低圧部側と前記各軸受部側とに仕切り、前記各軸受部側をほぼ吐出圧力にするためのシール部材と、該シール部材により仕切られた前記低圧部側空間に設けられたオルダムリングと、前記吐出圧力下にある潤滑油部から前記クランク軸内を通り該クランク軸の一端側に設けたクランク部の旋回スクロール側端部空間に通じる第1の給油路と、前記シール部材によりほぼ吐出圧力とされた前記クランク部の旋回スクロール側端部空間から前記旋回スクロール端板内を通りその後前記低圧部側に通じると共に、旋回スクロールの旋回運動により間欠的にその開口部端が開口されるように構成され、前記クランク部の旋回スクロール側端部空間の潤滑油を直接旋回スクロール端板内に導いて、前記オルダムリングを設けた低圧部側空間に間欠的に排出するようにした第2の給油路とを備え、前記低圧部側空間に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して前記オルダムリングを設けた低圧部側空間に間欠的に排出された潤滑油により潤滑されることにある。」と訂正する。

(4)訂正事項4
特許明細書の段落00012を削除する。

(5)訂正事項5
特許明細書の段落00019を削除する。

(6)訂正事項6
特許明細書の段落00020の
「【0020】
第2の給油路から差圧供給された潤滑油は、旋回スクロールの旋回運動により間欠的にその開口部端が開口されるように構成された第2の給油路、或いは絞り部を有する第2の給油路を介して、オルダムリングが設けられた低圧部側に必要最小量流入し、給油過多によるスクロール圧縮機の性能低下を防止しつつオルダムリング摺動面を潤滑する。」を、
「【0020】
第2の給油路から差圧供給された潤滑油は、旋回スクロールの旋回運動により間欠的にその開口部端が開口されるように構成された第2の給油路を介して、オルダムリングが設けられた低圧部側空間に必要最小量流入し、給油過多によるスクロール圧縮機の性能低下を防止しつつオルダムリング摺動面を潤滑する。」と訂正する。

(7)訂正事項7
特許明細書の段落0027の
「【0027】
クランク軸6にはその内部に軸心(回転中心)に対してクランク部6aの偏芯方向へ斜めに設けた給油路22を有し、該給油路22の上端はクランク部の上端面に開口している。また給油路22の下端部は給油パイプ21をかいして密閉容器下部の潤滑油部に開口している。これら給油路22及び給油パイプ21により第1の給油路が構成される。また、給油路22から主軸受部31の下方端側に向けてクランク軸径方向に分岐する給油孔(第3の給油路)22bが設けられており、主軸受部31には前記第1及び第3の給油路を介して密閉容器下部の潤滑油が供給される。旋回スクロ-ルはクランク軸のクランク部6aに旋回軸受部30を介して支承され、この旋回軸受部30には第1の給油路21、22を介しクランク軸上端面の空間2hを利用して給油される。クランク部端部空間に供給された潤滑油は旋回軸受部30の内周面に形成されたスパイラル溝30aを介して軸受部30の全体に供給され、軸受部30の下部空間にクランク軸6と一体に形成されたスラスト受け部6bを潤滑後、排油孔19及び排油パイプ20を介して密閉容器下部の潤滑油部に還流される。」を、
「【0027】
クランク軸6にはその内部に軸心(回転中心)に対してクランク部6aの偏芯方向へ斜めに設けた給油路22を有し、該給油路22の上端はクランク部の上端面に開口している。また給油路22の下端部は給油パイプ21を介して密閉容器下部の潤滑油部に開口している。これら給油路22及び給油パイプ21により第1の給油路が構成される。また、給油路22から主軸受部31の下方端側に向けてクランク軸径方向に分岐する給油孔(第3の給油路)22bが設けられており、主軸受部31には前記第1及び第3の給油路を介して密閉容器下部の潤滑油が供給される。旋回スクロ-ルはクランク軸のクランク部6aに旋回軸受部30を介して支承され、この旋回軸受部30には第1の給油路21、22を介しクランク軸上端面の空間2hを利用して給油される。クランク部端部空間に供給された潤滑油は旋回軸受部30の内周面に形成されたスパイラル溝30aを介して軸受部30の全体に供給され、軸受部30の下部空間にクランク軸6と一体に形成されたスラスト受け部6bを潤滑後、排油孔19及び排油パイプ20を介して密閉容器下部の潤滑油部に還流される。」と訂正する。

(8)訂正事項8
特許明細書の段落0028の
「【0028】
電動機7は電動機ステーター7aとクランクジク6に固定された電動機ローター7bより構成される。密閉容器14の胴部14aに取り付けられた副フレーム支え10には副フレ-ム8が径方向の位置合わせ自在に数本のボルトで固定され、副フレーム8に固定した副軸受部32の軸心が主軸受部31の軸心に一致するようにしている。副軸受部32の内面はすべり軸受面とされ、その外面は球面形状として副フレーム8の球面形状のハウジング内に嵌合された構造で、調心機能を有している。この副軸受部32には第1の給油路22から径方向に分岐された第4の給油路22aにより給油される。」を、
「【0028】
電動機7は電動機ステーター7aとクランク軸6に固定された電動機ローター7bより構成される。密閉容器14の胴部14aに取り付けられた副フレーム支え10には副フレ-ム8が径方向の位置合わせ自在に数本のボルトで固定され、副フレーム8に固定した副軸受部32の軸心が主軸受部31の軸心に一致するようにしている。副軸受部32の内面はすべり軸受面とされ、その外面は球面形状として副フレーム8の球面形状のハウジング内に嵌合された構造で、調心機能を有している。この副軸受部32には第1の給油路22から径方向に分岐された第4の給油路22aにより給油される。」と訂正する。

(9)訂正事項9
特許明細書の段落0035の
「【0035】
次に、上述した実施例の動作を説明する。◆
電動機部7の電動機ローター7bの回転によりクランク軸6が回転し、旋回スクロール2は、オルダムリング5の介在により旋回運動して、冷媒ガスが吸入口16から吸入ポート1cを通り流入し、圧縮室に吸い込まれる。旋回スクロール2の旋回運動に伴い冷媒ガスは圧縮され、吐出ポート1dから固定スクロール1の上部空間に吐出される。この圧縮動作中、適当に昇圧された中間圧の冷媒ガスの一部は中間孔2eを介して背圧室9の内側の空間9aに流入し、背圧室9を中間圧に保つ。起動時、旋回スクロール2は主フレーム台座部3aに支持された状態のため、内側空間9aは閉じられた状態にあり、内側空間9aの圧力は速やかに所定の圧力まで上昇し、旋回スクロール2を押上げ。旋回スクロール端板2aは主フレーム3の台座部3aと固定スクロール1に挟持されているため、旋回スクロール2は起動時に傾くことなく固定スクロール1に押付けられ、背圧室外側空間9bも所定の圧力まで上昇する。」を、
「【0035】
次に、上述した実施例の動作を説明する。電動機部7の電動機ローター7bの回転によりクランク軸6が回転し、旋回スクロール2は、オルダムリング5の介在により旋回運動して、冷媒ガスが吸入口16から吸入ポート1cを通り流入し、圧縮室に吸い込まれる。旋回スクロール2の旋回運動に伴い冷媒ガスは圧縮され、吐出ポート1dから固定スクロール1の上部空間に吐出される。この圧縮動作中、適当に昇圧された中間圧の冷媒ガスの一部は中間孔2eを介して背圧室9の内側の空間9aに流入し、背圧室9を中間圧に保つ。起動時、旋回スクロール2は主フレーム台座部3aに支持された状態のため、内側空間9aは閉じられた状態にあり、内側空間9aの圧力は速やかに所定の圧力まで上昇し、旋回スクロール2を押上げ、旋回スクロール端板2aは主フレーム3の台座部3aと固定スクロール1に挟持されているため、旋回スクロール2は起動時に傾くことなく固定スクロール1に押付けられ、背圧室外側空間9bも所定の圧力まで上昇する。」と訂正する。

(10)訂正事項10
特許明細書の段落0061の
「【0061】
【発明の効果】
本発明によれば以下の効果が得られる。
(1)シール部材によりほぼ吐出圧力とされた各軸受部側の空間から旋回スクロ-ル端板内を通りその後低圧部側に通じると共に、旋回スクロールの旋回運動により間欠的にその開口部端が開口されるように構成された第2の給油路とを備え、前記低圧部側に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して間欠的に給油される潤滑油により潤滑されるように構成しているので、各摺動部に必要十分な潤滑油を給油できると共に、旋回スクロール背面の低圧部に設けたオルダムリングへの給油過多によるスクロール圧縮機の性能低下を防止することのできるスクロール圧縮機を得ることができる。
(2)シール部材によりほぼ吐出圧力とされた前記各軸受部側の空間から前記旋回スクロ-ル端板内を通りその後背圧室側に通じると共に、その途中に通路面積を絞る絞り部を設けた第2の給油路とを備え、前記背圧室に設けられたオルダムリングの摺動面を、前記第2の給油路の絞り部を介して給油された潤滑油で潤滑すると共に、前記第2の給油路の絞り部をクランク軸に形成された第1の給油路の通路面積より十分小さくし、前記オルダムリング部への給油過多による性能低下を防止すると共にクランク軸内の給油路における潤滑油の油圧をほぼ吐出圧力に維持するようにしたものでも上記(1)と同様の効果を得ることができる。
(3)吐出圧力下にある潤滑油をこれより低圧部(例えば中間圧力の背圧室)に連通した第1、第2の給油路を設けているから、圧縮機の低速回転時においても軸受部への給油を確実に行なうことができ、可変速スクロール圧縮機としても常に安定した給油を行なうことができる。」を、
「【0061】
【発明の効果】
本発明によれば以下の効果が得られる。
(1)シール部材によりほぼ吐出圧力とされたクランク部の旋回スクロール側端部空間から旋回スクロール端板内を通りその後低圧部側に通じると共に、旋回スクロールの旋回運動により間欠的にその開口部端が開口されるように構成され、前記クランク部の旋回スクロール側端部空間の潤滑油を直接旋回スクロール端板内に導いて、オルダムリングを設けた低圧部側空間に間欠的に排出するようにした第2の給油路を備え、前記低圧部側空間に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して前記オルダムリングを設けた低圧部側空間に間欠的に排出された潤滑油により潤滑されるように構成しているので、各摺動部に必要十分な潤滑油を給油できると共に、旋回スクロール背面の低圧部に設けたオルダムリングヘの給油過多によるスクロール圧縮機の性能低下を防止することのできるスクロール圧縮機を得ることができる。
(2)吐出圧力下にある潤滑油をこれより低圧部(例えば中間圧力の背圧室)に連通した第1、第2の給油路を設けているから、圧縮機の低速回転時においても軸受部への給油を確実に行なうことができ、可変速スクロール圧縮機としても常に安定した給油を行なうことができる。」と訂正する。

2.訂正拒絶理由通知
被請求人が求めている訂正に対して、平成18年6月15日に実施した口頭審理において告知した訂正拒絶理由の概要は、以下の(1)、(2)の点で訂正要件に違反するから、本件訂正は認められないとするものである。
(1)新規事項追加禁止の違反
訂正明細書の請求項1に記載された「前記クランク部の旋回スクロール側端部空間の潤滑油を直接旋回スクロール端板内に導いて、前記オルダムリングを設けた低圧部側空間に間欠的に排出するようにした第2の給油路」なる記載(以下、これを「訂正事項A」という。)、及び「前記低圧部側空間に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して前記オルダムリングを設けた低圧部側空間に間欠的に排出された潤滑油により潤滑される」なる記載(以下、これを「訂正事項B」という。)なる記載は、特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められない。

(2)訂正の目的要件、特許請求の範囲の実質的変更・拡張禁止の違反
訂正明細書の請求項1の「前記低圧部側空間に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して前記オルダムリングを設けた低圧部側空間に間欠的に排出された潤滑油により潤滑される」なる訂正事項Bは、訂正前の「間欠的に給油される潤滑油」なる事項が削除されており、訂正の目的要件の何れにも適合しない。また、訂正事項Bは、訂正前の「前記低圧部側に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して間欠的に給油される潤滑油により潤滑される」なる事項(「間欠的に給油される潤滑油」なる事項)を実質的に変更するものである。しかも、訂正事項Bは、間欠的には給油されないで、間欠的に排出されたものが含まれていることから、実質的にも拡張するものである。
さらに、特許明細書の段落0019、0020、0061に関する訂正明細書の訂正事項は、平成17年12月20日付け答弁書6頁1行から35行記載の絞り部についての主張を考慮すれば、訂正明細書の請求項1の「第2の給油路」の機能を実質的に変更するものである。

3.訂正請求の補正について
(1)手続補正書の内容
平成18年6月26日付けで提出された手続補正書による補正は、訂正明細書の内容を以下のとおりに補正しようとするものを含むものである。

特許請求の範囲の減縮を目的として、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載を、「【請求項1】
密閉容器内に端板と端板に直立する渦巻状のラップを有する固定スクロール及び旋回スクロールと、これら固定スクロール及び旋回スクロールを互いにラップを内側として噛み合わせて形成された圧縮室と、前記旋回スクロールを旋回軸受部を介して旋回運動させるクランク軸と、該クランク軸を主軸受部を介して支持する主フレームとを備える圧縮機構部、
該圧縮機構部を駆動する電動機部、
前記圧縮機構部及び電動機部を収納しかつ圧縮機構部の吐出口に連通されて吐出圧力に維持されると共にその下部には潤滑油部を有する密閉容器
を備えたスクロール圧縮機において、
旋回スクロールと主フレームとの間に設けられ、前記旋回スクロールの背面を低圧部側と前記各軸受部側とに仕切り、前記各軸受部側をほぼ吐出圧力にするためのシール部材と、
該シール部材により仕切られた前記低圧部側空間に設けられたオルダムリングと、
前記吐出圧力下にある潤滑油部から前記クランク軸内を通り該クランク軸の一端側に設けたクランク部の旋回スクロール側端部空間に通じる第1の給油路と、
前記シール部材によりほぼ吐出圧力とされた前記クランク部の旋回スクロール側端部空間から前記旋回スクロ-ル端板内を通りその後前記低圧部側に通じると共に、旋回スクロールの旋回運動により間欠的にその開口部端が開口されるように構成され、前記クランク部の旋回スクロール側端部空間の潤滑油を直接旋回スクロール端板内に導いて、前記オルダムリングを設けた低圧部側空間に間欠的に排出するようにした第2の給油路とを備え、
前記低圧部側空間に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して前記オルダムリングを設けた低圧部側空間に間欠的に排出された潤滑油により潤滑されることを特徴とするスクロール圧縮機。」と訂正しようとするものを、

特許請求の範囲の減縮を目的として、「【請求項1】
密閉容器内に端板と端板に直立する渦巻状のラップを有する固定スクロール及び旋回スクロールと、これら固定スクロール及び旋回スクロールを互いにラップを内側として噛み合わせて形成された圧縮室と、前記旋回スクロールを旋回軸受部を介して旋回運動させるクランク軸と、該クランク軸を主軸受部を介して支持する主フレームとを備える圧縮機構部、
該圧縮機構部を駆動する電動機部、
前記圧縮機構部及び電動機部を収納しかつ圧縮機構部の吐出口に連通されて吐出圧力に維持されると共にその下部には潤滑油部を有する密閉容器
を備えたスクロール圧縮機において、
旋回スクロールと主フレームとの間に設けられ、前記旋回スクロールの背面を低圧部側と前記各軸受部側とに仕切り、前記各軸受部側をほぼ吐出圧力にするためのシール部材と、
該シール部材により仕切られた前記低圧部側に設けられたオルダムリングと、
前記吐出圧力下にある潤滑油部から前記クランク軸内を通りクランク部の旋回スクロール側端部空間に通じる第1の給油路と、
前記シール部材によりほぼ吐出圧力とされた前記クランク部の旋回スクロール側端部空間から前記旋回スクロ-ル端板内を通りその後前記低圧部側に通じると共に、旋回スクロールの旋回運動により間欠的にその開口部端が開口されるように構成され、前記クランク部の旋回スクロール側端部空間の潤滑油を直接旋回スクロール端板内に導いて、前記オルダムリングを設けた低圧部側に排出するようにした第2の給油路とを備え、
前記低圧部側に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して間欠的に給油される潤滑油により潤滑されることを特徴とするスクロール圧縮機。」と訂正しようとするものに補正する。

(2)補正の適否
ア.上記(1)の補正は、請求項1の「前記低圧部側空間に設けられたオルダムリング」なる記載を、「前記低圧部側に設けられたオルダムリング」と補正するものである。(以下、「補正事項1」という。)

イ.上記(1)の補正は、請求項1の「該クランク軸の一端側に設けたクランク部の旋回スクロール側端部空間」なる記載を、「クランク部の旋回スクロール側端部空間」と補正しようとするものである。(以下、「補正事項2」という。)

ウ.上記(1)の補正は、請求項1の「前記オルダムリングを設けた低圧部側空間に間欠的に排出する」なる記載を、「前記オルダムリングを設けた低圧部側に排出する」と補正しようとするものである。(以下、「補正事項3」という。)

エ.上記(1)の補正は、請求項1の「前記低圧部側空間に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して前記オルダムリングを設けた低圧部側空間に間欠的に排出された潤滑油により潤滑される」なる記載を、「前記低圧部側に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して間欠的に給油される潤滑油により潤滑される」と補正しようとするものである。(以下、「補正事項4」という。)

そして、上記補正事項3により、訂正内容は、低圧部側空間に間欠的に排出すると訂正しようとするものが、低圧部側に排出するものであると訂正しようとし、上記補正事項4により、オルダムリングの摺動面が、前記オルダムリングを設けた低圧部側空間に間欠的に排出された潤滑油により潤滑されると訂正しようとするものが、間欠的に給油される潤滑油により潤滑されると訂正しようとするものに補正されているから、この補正は訂正事項を変更する補正である。

以上のように、この補正は、訂正事項を変更する補正を含むものであるから、請求の要旨変更に該当し(平成11年6月3日言渡 平成8年(行ケ)222号(平成12年1月21日上告棄却)参照。)、特許法第134条の2第5項において準用する同法第131条の2第1項の規定に適合しない。
よって、この訂正請求書の補正を認めることはできない。

4.訂正の適否についての判断
上記第4.1.の訂正について、検討する。
(1)新規事項追加禁止の違反
特許明細書及び図面を検討すると、以下の記載(下線は当審において付した。)が認められる。
ア.「【0012】
なお、前記絞り部は、例えば前記第2の給油路の旋回スクロ-ル端板内に形成された給油路が開口する旋回スクロ-ル端板と固定スクロ-ル端板との摺動面により構成される。
【0013】
さらに、前記第2の給油路の旋回スクロ-ル端板内に形成された給油路の開口端部が旋回スクロ-ルの旋回運動により移動する範囲内の前記固定スクロ-ル端板摺動面に円周方向の溝通路を設け、該溝通路と旋回スクロール端板に設けた給油路の開口部とを、旋回スクロールの旋回運動により間欠的に連通させる構成とすれば、前記両端板の摺動面を確実に潤滑できる。」

イ.「【0031】
図2に示すように、第1の給油路22はクランク軸上端部空間2hを介して旋回スクロール端板内に設けた給油路2fに通じ、給油路2fは固定スクロール1と旋回スクロール2の端板摺動面に開口している。この開口部は旋回運動にともない間欠的に固定スクロール端板面に設けたリング状の溝通路1eと連通する。この溝通路1eは固定スクロール1と旋回スクロールの端板面により閉じられた空間を形成している。
【0032】
前記クランク部端部空間2hから前記旋回スクロ-ル端板内を通り旋回スクロ-ル端板と固定スクロ-ル端板との摺動部に開口しさらにその後前記背圧室9に通じるようにして第2の給油路が形成されている。」

ウ.「【0038】
潤滑油は吐出圧力と背圧室圧力の差圧により潤滑油部13からクランク軸6に固定した給油パイプ21を介しクランク軸6内の給油路22を通り、クランク軸上端面空間2hを介して旋回スクロール端板内に設けた給油路2fに通じ、旋回運動に伴って間欠的に固定スクロール端板面に設けたリング溝1eと連通し、固定スクロール1と旋回スクロール2の端板面を潤滑する。その後、端板面を給油した潤滑油は背圧室9の外側空間9bに排出され、この空間に設けたれたオルダムリング5を潤滑し、旋回スクロール2と主フレーム台座3aの隙間を通り内側の空間9aに移動した後中間孔2eを通って圧縮室に流入し、冷媒ガスとともに吐出ポート1dから吐出される。
【0039】
前記固定スクロール端板面の溝通路1eは固定スクロール1と旋回スクロール2の端板面で閉じられた空間を形成している。旋回スクロール端板の給油路2fの開口部は差圧給油路(第2の給油路)の絞り部として機能し、この絞り部の通路面積はクランク軸6内の給油路(第1の給油路)22に対して十分通路面積を絞られているので、クランク軸6内の給油路22内では潤滑油の油圧は低下せず、また給油路22はクランク軸6の回転中心に対してクランクピン部6aの偏心方向に斜めに設けられているので、潤滑油が差圧により給油路22内を上昇する際に潤滑油は給油路22内で遠心ポンプ作用を受け、潤滑油の油圧は吐出圧力よりも上昇する。」

エ.「【0055】
また、旋回スクロール端板内に形成した給油路を旋回スクロールと固定スクロールの端板面に開口する構成としたことにより、端板摺動面は差圧給油され、更に給油後の潤滑油をオルダムリングを組込んだ背圧室に排出する構造としたことにより、潤滑油はオルダムリングの摺動面を潤滑し、中間孔2eを通って圧縮室に入り、冷媒ガスと共に吐出され、密閉容器下部の潤滑油部に還流する。以上によりスクロール圧縮機の全摺動面に給油できる。」

上記記載の段落0013の「前記第2の給油路の旋回スクロ-ル端板内に形成された給油路の開口端部が旋回スクロ-ルの旋回運動により移動する範囲内の前記固定スクロ-ル端板摺動面に円周方向の溝通路を設け、該溝通路と旋回スクロール端板に設けた給油路の開口部とを、旋回スクロールの旋回運動により間欠的に連通させる」なる記載、段落0031の「給油路2fは固定スクロール1と旋回スクロール2の端板摺動面に開口している。この開口部は旋回運動にともない間欠的に固定スクロール端板面に設けたリング状の溝通路1eと連通する。」なる記載からすれば、給油路2fの開口部は間欠的にリング状の溝通路1eと連通するとしか記載されていない。しかも、段落0031の「この溝通路1eは固定スクロール1と旋回スクロールの端板面により閉じられた空間を形成している。」なる記載からすれば、溝通路1eが背圧室9の外側空間9bに開放されるものとすることはできない。
したがって、潤滑油が背圧室9の外側空間9bに間欠的に排出される点は記載されておらず、この点はその他特許明細書又は図面にも記載されていない。

これに対して、被請求人は、口頭審理陳述要領書の図A紙面上、図IIIの右下図の状況が、図2の溝通路を示す「1e」と旋回スクロールを示す「2」の位置関係から生ずると主張する。しかしながら、図2自体を、設計図面にみられるような正確な寸法、位置関係を表示したものとは認めることはできず、図A紙面上、図IIIの右下図において旋回スクロール2の紙面右端部と溝通路1eとが一致するような状況までもが自明とする主張は採用できない。
また、旋回運動に伴って間欠的に固定スクロール端板面に設けたリング溝1eと連通し、固定スクロール1と旋回スクロール2の端板面を潤滑し、その後、端板面を給油した潤滑油は背圧室9の外側空間9bに排出されることは明らかであるとしても、間欠的の語義には通常「止んで、また、起こること」なる語義を含む以上、当該語義での間欠的に排出することまでも自明とすることはできない。その他の特許明細書又は図面の記載を考慮しても、潤滑油が背圧室9の外側空間9bに間欠的に排出される点が自明であると認めることはできない。(なお、当初明細書段落0020における「第2給油路」の範囲を示す記載は、特許明細書において削除されている。)
よって、訂正明細書の請求項1に記載された「前記クランク部の旋回スクロール側端部空間の潤滑油を直接旋回スクロール端板内に導いて、前記オルダムリングを設けた低圧部側空間に間欠的に排出するようにした第2の給油路」なる訂正事項A、及び「前記低圧部側空間に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して前記オルダムリングを設けた低圧部側空間に間欠的に排出された潤滑油により潤滑される」なる訂正事項Bは、特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められない。

したがって、上記訂正事項1の一部である訂正事項A、Bは、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法[第1条の規定]による改正前の特許法第134条第2項ただし書きの規定に適合しない。

(2)訂正の目的要件の違反
訂正前の特許明細書の請求項1の「前記低圧部側に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して間欠的に給油される潤滑油により潤滑される」における「間欠的」の語義は「止んで、また、起こること」であることが明らかである。
そして、訂正事項Bの「前記低圧部側空間に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して前記オルダムリングを設けた低圧部側空間に間欠的に排出された潤滑油により潤滑される」なる訂正事項には、訂正前の「間欠的に給油される潤滑油」なる事項が削除されており、訂正事項Bは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められない。
また、訂正事項1の請求項1の「旋回スクロールの旋回運動により間欠的にその開口部端が開口されるように構成され、前記クランク部の旋回スクロール側端部空間の潤滑油を直接旋回スクロール端板内に導いて」なる訂正事項において、間欠的にその開口部端がどこに開口されるのか明りょうでなく、また、「直接」の語義から絞りの存在の有無まで解釈することはできず、口頭審理における調書の「直接」の定義の主張を鑑みると、「直接」の指示内容が明りょうでない。訂正事項1は、依然として明りょうでないから、明瞭りょうでない記載の釈明を目的とするものとは認められない。

したがって、訂正事項1は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法[第1条の規定]による改正前の特許法第134条第2項ただし書き各号のいずれにも該当しない。

(3)特許請求の範囲の実質的変更・拡張禁止の違反
訂正前の「間欠的に給油される潤滑油」とは、特許明細書の段落0013、0031、0038、0055等の記載を考慮すれば、摺動面を確実に潤滑するため、間欠的にリング溝1eに給油される潤滑油であることが明らかであるから、訂正事項Bは、訂正前の「前記低圧部側に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して間欠的に給油される潤滑油により潤滑される」なる事項(「間欠的に給油される潤滑油」なる事項)を実質的に変更するものである。しかも、訂正事項Bは、間欠的には給油されないで、間欠的に排出されたものが含まれていることから、実質的に拡張するものでもある。
さらに、特許明細書の段落0019、0020、0061に関する訂正明細書の訂正事項(以下、これを「訂正事項C」という。訂正事項Cは、上記訂正事項5、6、10である。)は、平成17年12月20日付け答弁書6頁1行から35行記載の絞り部についての主張を考慮すれば、訂正明細書の請求項1の「第2の給油路」の機能を実質的に変更するものである。
したがって、訂正事項B、Cは、特許法第134条の2第5項において準用する特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法[第1条の規定]による改正前の特許法第126条第2項の規定に適合しない。

(4)むすび
以上の通りであるから、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法[第1条の規定]による改正前の特許法第134条第2項ただし書き、ただし書き各号、及び、特許法第134条の2第5項において準用する特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法[第1条の規定]による改正前の特許法第126条第2項の規定に適合しないから、本件訂正は認められない。

第5.本件特許発明に対する判断
1.本件特許発明
本件訂正は認められないことにより、本件特許の請求項1、3、4、8に係わる発明(以下、それぞれ本件特許発明1、2、3、4という。)は、特許明細書明細書、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、3、4、8に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
密閉容器内に端板と端板に直立する渦巻状のラップを有する固定スクロール及び旋回スクロールと、これら固定スクロール及び旋回スクロールを互いにラップを内側として噛み合わせて形成された圧縮室と、前記旋回スクロールを旋回軸受部を介して旋回運動させるクランク軸と、該クランク軸を主軸受部を介して支持する主フレームとを備える圧縮機構部、
該圧縮機構部を駆動する電動機部、
前記圧縮機構部及び電動機部を収納しかつ圧縮機構部の吐出口に連通されて吐出圧力に維持されると共にその下部には潤滑油部を有する密閉容器
を備えたスクロール圧縮機において、
旋回スクロールと主フレームとの間に設けられ、前記旋回スクロールの背面を低圧部側と前記各軸受部側とに仕切り、前記各軸受部側をほぼ吐出圧力にするためのシール部材と、
該シール部材により仕切られた前記低圧部側に設けられたオルダムリングと、
前記吐出圧力下にある潤滑油部から前記クランク軸内を通りクランク部端部の空間に通じる第1の給油路と、
前記シール部材によりほぼ吐出圧力とされた前記各軸受部側の空間から前記旋回スクロ-ル端板内を通りその後前記低圧部側に通じると共に、旋回スクロールの旋回運動により間欠的にその開口部端が開口されるように構成された第2の給油路とを備え、
前記低圧部側に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して間欠的に給油される潤滑油により潤滑されることを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項3】
請求項1において、前記スクロール圧縮機は可変速仕様としたことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項4】
請求項1において、前記第2の給油路の旋回スクロ-ル端板内に形成された給油路の開口端部が旋回スクロ-ルの旋回運動により移動する範囲内の前記固定スクロ-ル端板摺動面に円周方向の溝通路を設け、該溝通路と旋回スクロール端板に設けた給油路の開口部とを、旋回スクロールの旋回運動により間欠的に連通させる構成としたことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項8】
請求項1において、前記第1の給油路は、クランク軸内に形成された給油路の一端部と前記潤滑油部とを接続する給油パイプを備えることを特徴とするスクロール圧縮機。」

2.先願発明
(1)先願明細書又は図面の記載
請求人が提出した甲第1号証の願書に最初に添付された明細書又は図面には、次の事項が図面とともに記載されている。(甲第1号証の特願平7-4882号の出願日は、平成7年1月17日であり、特開平8-193583号公報の公開日は、平成8年7月30日である。また、特開平8-193583号公報2ないし9頁の記載は、願書に最初に添付された明細書又は図面と同一である。)

ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】 固定スクロールの一部をなす鏡板と渦巻き状の固定スクロールラップに対して、旋回スクロールの一部をなすラップ支持円板上の旋回スクロールラップを揺動回転自在に噛み合わせ、両スクロール間に渦巻き形の圧縮空間を形成し、前記鏡板の中心部に吐出ポートを設け、前記固定スクロールラップの外側には吸入室を設け、前記圧縮空間は吸入側より吐出側に向けて連続移行する複数個の圧縮室に区画されて流体を圧縮すべく、駆動軸を支承する本体フレームと前記旋回スクロールとの間に、前記旋回スクロールの自転阻止部材を係合させて前記旋回スクロールを旋回運動させるスクロール圧縮機構を形成し、前記旋回スクロールは前記本体フレームと前記固定スクロールとの間に、前記駆動軸の軸方向に微小な隙間を有して配置され、前記ラップ支持円板は反圧縮室側面を前記本体フレームのスラスト軸受に支承可能な構成とし、前記スラスト軸受面と前記ラップ支持円板の反圧縮室側面との間には、前記駆動軸と前記旋回スクロールとの係合摺動部を囲む環状シール部材を配置した構成において、前記旋回スクロールの反圧縮室側を、前記環状シール部材で囲んだ背面室Aと、前記スラスト軸受の内で前記背面室Aを除く範囲の背面室Bと、前記背面室Bの外側の背面室Cとに区画し、前記背面室Aに供給した潤滑油を減圧の後、前記背面室Bおよび前記背面室Cを順次経由して前記吸入室に流入する給油通路を設けたスクロール気体圧縮機。
【請求項2】 背面室Bを構成するラップ支持円板の反圧縮室側面とスラスト軸受面の少なくとも一方の面に環状の油溝を設け、前記環状の油溝と背面室Aとを連通した請求項1記載のスクロール気体圧縮機。
【請求項3】 自転阻止部材と係合する旋回スクロールの係合溝をスラスト軸受に設けた環状の油溝に連通させた請求項2記載のスクロール気体圧縮機。
【請求項4】 環状の油溝と背面室Cとの間を、ラップ支持円板の反圧縮室側面とスラスト軸受面の少なくとも一方に設けた絞り部を有する排出油通路で連通させた請求項2または請求項3記載のスクロール気体圧縮機。
【請求項5】 背面室Aから環状の油溝への油通路の開口位置を、排出油通路の反対側に設けた請求項4記載のスクロール気体圧縮機。
【請求項6】 自転阻止部材の係止部の近傍に、排出油通路を開口させた請求項4記載のスクロール気体圧縮機。
【請求項7】 背面室Cと吸入室との間の連通路を、旋回スクロールのラップ支持円板と固定スクロールの鏡板との摺動面に設けた油溝とし、前記油溝と排出油通路とを互いに反対位置に配置させた請求項4記載のスクロール気体圧縮機。
【請求項8】 旋回スクロールが旋回運動することに伴って、背面室Aから流出した潤滑油が環状の油溝に間欠的に流入すべく給油通路を設けた請求項2記載のスクロール気体圧縮機。」(特許請求の範囲)

イ.「【0037】
【実施例】以下、本発明の実施例のスクロール気体圧縮機について、図面を参照しながら説明する。
【0038】図1〜図6において、1は鉄製の密閉ケースで、その内部全体は吐出管50に連通する高圧雰囲気となり、その中央部にモータ3、右部に圧縮部を、左部に給油ポンプ装置51を配置し、モータ3の回転子3aに固定された駆動軸4を支承する圧縮部の本体フレーム5に固定スクロール7が取り付けられている。
【0039】本体フレーム5は密閉ケース1に固定されている。駆動軸4は本体フレーム5の主軸受8とモータ3の固定子3bに取り付けられた補助フレーム6の副軸受9とで支持されて、その端部には給油ポンプ装置51が接続されている。給油ポンプ装置51の一端が油溜11に浸入している。
【0040】駆動軸4に設けられた縦方向の油穴12は、その一端が給油ポンプ装置51に通じ、他端が最終的に主軸受8に通じている。
【0041】固定スクロール7と噛み合って圧縮室2を形成する旋回スクロール13は、固定スクロール7と本体フレーム5との間に配置され、渦巻き状の旋回スクロールラップ13aと旋回軸13cとを直立させたラップ支持円盤13bとから成る。
【0042】固定スクロール7は、鏡板7aと渦巻き状の固定スクロールラップ7aとから成り、固定スクロールラップ7aの中央部に吐出ポート30、外周部に吸入室31が配置されている。
【0043】吐出ポート30は、隣接する吐出室32を介してモータ3が配置された高圧空間に通じている。
【0044】吸入室31は、密閉容器1の端壁を貫通する吸入管33に通じている。駆動軸4の主軸から偏芯して駆動軸4の右端穴部に配置された旋回軸受14は、旋回スクロール13の旋回軸13cと係合摺動すべく構成されている。
【0045】旋回スクロール13のラップ支持円板13bと本体フレーム5に設けられたスラスト軸受19との間は、油膜形成可能な微小隙間が設けられている。
【0046】ラップ支持円板13bには旋回軸13cとほぼ同芯の環状溝17が設けられ、環状溝17に環状シール部材18が装着されている。
【0047】環状シール部材18は、図3にその外観を示すごとく、切口を有しており、環状溝17の外周壁に接して、溝ラップ支持円板13bが配置された空間を、その内側の背面室A20と外側とに仕切っている。
【0048】背面室A20は、主軸受8および旋回軸受14の摺動面を介して駆動軸4の油穴12にも通じている。
【0049】旋回軸受14の底部の油室15と、ラップ支持円板13bの外周部空間の背面室C16との間は、ラップ支持円板13bに設けられた油通路21を介して通じている。油通路21は、その両端に絞り部A22と絞り部B23を、その中間にバイパス穴24を有している。
【0050】バイパス穴24は、旋回スクロール13の旋回運動に伴って、スラスト軸受19面に設けられた環状の油溝25に間欠的に通じるべく配置されている。
【0051】環状の油溝25と背面室C16とは、環状の油溝25の一部に設けられた絞り部を有する排出油通路26を介して通じている。
【0052】排出油通路26は旋回スクロール13の自転阻止部材27に係合する本体フレーム5に設けられた係止溝28の近傍に配置されている。
【0053】スラスト軸受19の環状溝25は、自転阻止部材27と係合する旋回スクロール13の係止溝34(図示参照)にも間欠的に連通すべく配置されている。
【0054】環状シール部材18の外側と背面室C16との間の空間が、背面室A20と背面室C16との間の圧力の背面室B29を形成できるように、環状油溝25と背面室C16とが区画・連通している。
【0055】背面室C16と吸入室31との間は、ラップ支持円板13bと摺接する鏡板7aの表面に設けられた油溝(図示なし)を介して連通している。
【0056】以上のように構成されたスクロール気体圧縮機について、その動作を説明する。
【0057】図1〜図6において、モータ3によって駆動軸4が回転駆動すると本体フレーム5のスラスト軸受19に支持された旋回スクロール13が旋回運動をし、圧縮機に接続した冷凍サイクルから潤滑油を含んだ吸入冷媒ガスが、吸入管33を経由して吸入室31に流入し、旋回スクロール13と固定スクロール7との間に形成された圧縮室5へと圧縮移送され、中央部の吐出口30、吐出室32を経てモータ3を冷却しながら吐出管50から圧縮機外部に排出される。潤滑油を含んだ吐出冷媒ガスは、吐出室32から吐出管50までの通路途中で分離され、油溜11に収集する。
【0058】吐出圧力が作用する潤滑油は、給油ポンプ装置51により、その一部が副軸受9に給油され、残りの大部分が駆動軸4の油穴12を経由して油室15に送られ、その大部分が主軸受8を経由して油溜11に帰還する一方、残りの潤滑油が旋回スクロール13に設けられた油通路21を経由して最終的に背面室C16に流入する。
【0059】油通路21を流れる潤滑油は、その入口部の絞り部A22で一次減圧され、その一部の潤滑油がバイパス穴24を通じてスラスト軸受19に設けられた環状油溝25に流入し、残りの潤滑油が絞り部B23で二次減圧された後、吸入室31とほぼ同圧力の背面室C16に流入する。
【0060】油通路21の潤滑油は、旋回スクロール13の旋回運動に伴ってバイパス穴24が環状油溝25に間欠的に連通する際の通路抵抗の影響を受ける。すなわち、旋回速度が遅い時には油通路21の潤滑油が環状油溝25に多く流入し、旋回速度が速い時には油通路21の潤滑油が環状油溝25に少なく流入するように調整される。
【0061】環状油溝25の潤滑油は、環状油溝25の全周部から背面室C16に微少漏れしてスラスト軸受19面を潤滑する一方、バイパス穴24と反対側に設けられた絞り部を有する油排出通路26を通過する際に減圧されて背面室C16に流入し、油排出通路26の近傍に設けられた自転阻止部材27の係止溝28を潤滑する。また、環状油溝25の潤滑油は、旋回スクロール13の係止溝34(図示参照)に間欠的に流出する際にも減圧されて背面室C16に流入する。
【0062】自転阻止部材27の係止溝28を潤滑した潤滑油は、油排出通路26と反対側に設けられた鏡板7aの油溝(図示なし)に向かって流れ、旋回スクロール13の係止溝34から排出された潤滑油と共に周辺摺動部を潤滑しながら吸入室31に流入する。
【0063】圧縮室5の冷媒ガス圧力は、駆動軸4の軸方向に旋回スクロール13を固定スクロール7から離反させようと作用する。一方、旋回スクロール13のラップ支持円板13bが吐出圧力の作用する背面室A20(環状シール部材18で囲まれた部分)と、吐出圧力と吸入圧力との中間圧力が作用する背面室B29とからの合成背圧を受けている。したがって、旋回スクロール13を固定スクロール7から離反させようとする力と合成背圧力とが相殺される。その結果、旋回スクロール13の離反力よりも合成背圧力が大きい場合には、ラップ支持円板13bは固定スクロール7の鏡板7aに支持され(図5参照)、反対の場合にはスラスト軸受19に支持される(図6参照)。上述のいずれの場合にもラップ支持円板13bとその摺動面の間は微小隙間が保持されて、その摺動面に供給された潤滑油によって油膜形成されており、その摺動抵抗が軽減されている。
【0064】旋回スクロール13のラップ支持円板13bが固定スクロール7の鏡板7aまたはスラスト軸受19のいずれに支持される場合でも、圧縮室2の隙間は微小で、圧縮室2に流入した潤滑油の油膜で密封されている。
【0065】以上のように上記実施例によれば、固定スクロール7の一部をなす鏡板7aと渦巻き状の固定スクロールラップ7bに対して、旋回スクロール13の一部をなすラップ支持円板13b上の旋回スクロールラップ13aを揺動回転自在に噛み合わせ、両スクロール間に渦巻き形の圧縮空間を形成し、鏡板7bの中心部に吐出ポート30を設け、固定スクロールラップ7bの外側には吸入室31を設け、圧縮空間は吸入側より吐出側に向けて連続移行する複数個の圧縮室15に区画されて流体を圧縮すべく、駆動軸4を支承する本体フレーム5と旋回スクロール13との間に、旋回スクロール13の自転阻止部材27を係合させて旋回スクロール13を旋回運動させるスクロール圧縮機構を形成し、旋回スクロール13は本体フレーム5と固定スクロール7との間に、駆動軸4の軸方向に微小な隙間を有して配置され、ラップ支持円板13bは反圧縮室側面を本体フレーム5のスラスト軸受19に支承可能な構成とし、スラスト軸受19面とラップ支持円板13bの反圧縮室側面との間には、駆動軸4と旋回スクロール13の旋回軸13cとが係合摺動する旋回軸受14を囲む環状シール部材18を配置した構成において、旋回スクロール13の反圧縮室側を、環状シール部材18で囲んだ背面室A20と、スラスト軸受19の内で背面室A20を除く範囲の背面室B29と、背面室B29の外側の背面室C16とに区画し、吐出圧力が作用する油溜11から背面室A20に供給した潤滑油を旋回スクロール13のラップ支持円板13bに設けた油通路21の絞り部A22で減圧の後、バイパス穴24を経由して間欠的にスラスト軸受19に設けた環状油溝25を有する背面室B29に減圧給油する一方、絞り部B23を経由して減圧の後、背面室C16を順次経由して吸入室31に流入する給油通路を設けたことにより、圧縮室冷媒ガス圧力によって旋回スクロール13が固定スクロール7から離されようとする圧縮荷重が、背面室A20の潤滑油圧力に基づく背圧力によって軽減されると共に、固定スクロール7の鏡板7aまたはスラスト軸受19のいずれかに摺動支持された旋回スクロール13のラップ支持円板13bの摺動面が、背面室A20から背面室B29と背面室C16に流入した潤滑油によってその摺動面が潤滑されるので、摺動部摩擦損失を低減することができる。また、旋回スクロール13のラップ支持円板13bの摺動面に供給した潤滑油が圧縮室にも供給されるので、圧縮室隙間を油膜密封して圧縮途中冷媒ガス漏れを防ぎ、圧縮効率を高めることもできる。」(段落0037から0065)

ウ.「【0066】上記実施例では、環状シール部材18をラップ支持円板13bに設けたが、スラスト軸受19に設けても良い。
【0067】また、上記実施例では、環状油溝25をスラスト軸受19に設けたが、ラップ支持円板13bに設けても良く、その場合の油通路21の一部を本体フレーム5に設けて、背面室A20と環状油溝25との間を絞り通路で連通しても良い。
【0068】また、上記実施例では、背面室B29を吐出圧力と吸入圧力との中間圧力となるように設定したが、吐出圧力と吸入圧力の変動範囲に応じて背面室C16と同圧力となるように設定しても良い。
【0069】また、上記実施例では、背面室C16を吸入室31と同圧力となるように設定したが、吐出圧力と吸入圧力の変動範囲に応じて背面室B19と吸入室31との中間圧力となるように設定しても良い。」(段落0066から0069)

エ.「【0020】また本第8の発明は、圧縮機運転速度に応じて圧縮室への給油量調整によって圧縮効率向上を図ることを目的とするものである。」(段落0020)

オ.「【0078】また本第7の発明は、背面室Cと吸入室との間の連通路を、旋回スクロールのラップ支持円板と固定スクロールの鏡板との摺動面に設けた油溝とし、油溝と排出油通路とを互いに反対位置に配置させたことにより、背面室Aから背面室Bを経由して背面室Cに流入させた潤滑油を、吸入室に流入させる途中で旋回スクロールのラップ支持円板と固定スクロールの鏡板との間の摺動面を均一に供給し、摺動摩擦抵抗を少なくして圧縮機の効率と耐久性向上を図ることができる。
【0079】また本第8の発明は、旋回スクロールが旋回運動することに伴って、背面室Aから流出した潤滑油が環状の油溝に間欠的に流入すべく給油通路を設けたことにより、背面室Aから背面室Bと背面室Cを経由して吸入室に流入する給油通路の通路抵抗を、旋回スクロールの旋回運動に伴って背面室Bへの流入部で開通・遮断させ、圧縮機運転速度が速い時には圧縮室への給油量を少なくし、圧縮機運転速度が遅い時には圧縮室への給油量を多くするように調整して圧縮機運転速度に応じた圧縮室への適正給油をすることができる。これにより、圧縮室隙間を油膜密封して圧縮室気体漏れを少なくし、圧縮効率を向上することができる。」(段落0078、0079)

(2)ここで、上記記載事項ア.ないしオ.、及び図1ないし8から、先願明細書又は図面に記載された発明について、次のことがわかる。

ア.上記記載事項第5.2.(1)ア.、イ.、及び図1、2より、次のことがわかる。
固定スクロール7の一部をなす鏡板7aと渦巻き状の固定スクロールラップ7bに対して、旋回スクロール13の一部をなすラップ支持円板13b上の旋回スクロールラップ13aを揺動回転自在に噛み合わせ、両スクロール間に渦巻き形の圧縮空間を形成し、鏡板7bの中心部に吐出ポート30を設け、固定スクロールラップ7bの外側には吸入室31を設け、圧縮空間は吸入側より吐出側に向けて連続移行する複数個の圧縮室15に区画されて流体を圧縮すべく、駆動軸4を支承する本体フレーム5と旋回スクロール13との間に、旋回スクロール13の自転阻止部材27を係合させて旋回スクロール13を旋回運動させるスクロール圧縮機構を形成したスクロール気体圧縮機である。(段落0065)
本体フレーム5は密閉ケース1に固定されている。駆動軸4は本体フレーム5の主軸受8とモータ3の固定子3bに取り付けられた補助フレーム6の副軸受9とで支持されて、その端部には給油ポンプ装置51が接続されている。給油ポンプ装置51の一端が油溜11に浸入している。駆動軸4に設けられた縦方向の油穴12は、その一端が給油ポンプ装置51に通じ、他端が最終的に主軸受8に通じている。固定スクロール7と噛み合って圧縮室2を形成する旋回スクロール13は、固定スクロール7と本体フレーム5との間に配置され、渦巻き状の旋回スクロールラップ13aと旋回軸13cとを直立させたラップ支持円盤13bとから成る。(段落0039から0041)
吐出ポート30は、隣接する吐出室32を介してモータ3が配置された高圧空間に通じている。駆動軸4の主軸から偏芯して駆動軸4の右端穴部に配置された旋回軸受14は、旋回スクロール13の旋回軸13cと係合摺動すべく構成されている。(段落0043、0044)

このことから、密閉ケース1内に鏡板7aに直立する固定スクロールラップ7bを有する固定スクロール7およびラップ支持円盤13bに直立する旋回スクロールラップ13aを有する旋回スクロール13と、これら固定スクロール7および旋回スクロール13を互いにラップを内側として噛み合わせて形成された圧縮室2と、旋回スクロール13を旋回軸受14を介して旋回運動させる駆動軸4と、駆動軸4を主軸受8を介して支持する本体フレーム5とを備えるスクロール圧縮機構と、スクロール圧縮機構を駆動するモータ3、スクロール圧縮機構およびモータ3を収納しかつスクロール圧縮機構の吐出ポート30に連通されて吐出圧力に維持されると共にその下部には油溜11を有する密閉ケース1を備えたスクロール気体圧縮機であることがわかる。

また、駆動軸4の端部には給油ポンプ装置51が接続されており、給油ポンプ装置51の一端が油溜11に浸入しており、図1の11と表示された部位には、51と表示された部材から紙面上下方に向けて中空棒状体が示されている。
このことから、クランク軸内に形成された油穴12の一端部と油溜11とを接続する給油ポンプ装置51を備えることがわかる。

イ.上記記載事項第5.2.(1)イ.より、次のことがわかる。
スラスト軸受19面とラップ支持円板13bの反圧縮室側面との間には、駆動軸4と旋回スクロール13の旋回軸13cとが係合摺動する旋回軸受14を囲む環状シール部材18を配置した構成において、旋回スクロール13の反圧縮室側を、環状シール部材18で囲んだ背面室A20と、スラスト軸受19の内で背面室A20を除く範囲の背面室B29と、背面室B29の外側の背面室C16とに区画し、吐出圧力が作用する油溜11から背面室A20に供給した潤滑油を旋回スクロール13のラップ支持円板13bに設けた油通路21の絞り部A22で減圧の後、バイパス穴24を経由して間欠的にスラスト軸受19に設けた環状油溝25を有する背面室B29に減圧給油する一方、絞り部B23を経由して減圧の後、背面室C16を順次経由して吸入室31に流入する給油通路が設けられている。(段落0065)
旋回スクロール13は本体フレーム5と固定スクロール7との間に、駆動軸4の軸方向に微小な隙間を有して配置され、ラップ支持円板13bは反圧縮室側面を本体フレーム5のスラスト軸受19に支承可能な構成としている。ラップ支持円板13bには旋回軸13cとほぼ同芯の環状溝17が設けられ、環状溝17に環状シール部材18が装着されている。(段落0045、0046)
環状シール部材18は、図3にその外観を示すごとく、切口を有しており、環状溝17の外周壁に接して、溝ラップ支持円板13bが配置された空間を、その内側の背面室A20と外側とに仕切っている。(段落0047)
背面室A20は、主軸受8および旋回軸受14の摺動面を介して駆動軸4の油穴12にも通じている。旋回軸受14の底部の油室15と、ラップ支持円板13bの外周部空間の背面室C16との間は、ラップ支持円板13bに設けられた油通路21を介して通じている。油通路21は、その両端に絞り部A22と絞り部B23を、その中間にバイパス穴24を有している。バイパス穴24は、旋回スクロール13の旋回運動に伴って、スラスト軸受19面に設けられた環状の油溝25に間欠的に通じるべく配置されている。(段落0048から0050)背面室A20側とは、主軸受8および旋回軸受14側である。
吐出圧力が作用する潤滑油は、給油ポンプ装置51により、その一部が副軸受9に給油され、残りの大部分が駆動軸4の油穴12を経由して油室15に送られ、その大部分が主軸受8を経由して油溜11に帰還する一方、残りの潤滑油が旋回スクロール13に設けられた油通路21を経由して最終的に背面室C16に流入する。(段落0058)
第5.2.(1)ア.の請求項1の記載においては、「前記背面室Aに供給した潤滑油を減圧の後、前記背面室Bおよび前記背面室Cを順次経由して前記吸入室に流入する給油通路を設けた」と記載されている。

このことから、旋回スクロール13と本体フレーム5との間に設けられ、旋回スクロールの反圧縮室側面を、背面室B29および背面室C16と、背面室A20とに仕切り、背面室A20をほぼ吐出圧力にするための環状シール部材18と、吐出圧力下にある油溜11から駆動軸4内を通り旋回軸受14の底部の油室15に通じる油穴12と、環状シール部材18によりほぼ吐出圧力とされた背面室A20からラップ支持円板13b内を通り、背面室A20に供給した潤滑油を減圧の後、バイパス穴24および絞り部B23から背面室B29および背面室C16に通じると共に、旋回スクロール13の旋回運動により間欠的にバイパス穴24はその開口部端がスラスト軸受19面に設けられた環状の油溝25に開口されるように構成された油通路21とを備えていることがわかる。

ウ.上記記載事項第5.2.(1)イ.より、次のことがわかる。
駆動軸4を支承する本体フレーム5と旋回スクロール13との間に、旋回スクロール13の自転阻止部材27を係合させて旋回スクロール13を旋回運動させている。(段落0065)
スラスト軸受19の環状溝25は、自転阻止部材27と係合する旋回スクロール13の係止溝34(図示参照)にも間欠的に連通すべく配置されている。(段落0053)
環状油溝25の潤滑油は、環状油溝25の全周部から背面室C16に微少漏れしてスラスト軸受19面を潤滑する一方、バイパス穴24と反対側に設けられた絞り部を有する油排出通路26を通過する際に減圧されて背面室C16に流入し、油排出通路26の近傍に設けられた自転阻止部材27の係止溝28を潤滑する。また、環状油溝25の潤滑油は、旋回スクロール13の係止溝34(図示参照)に間欠的に流出する際にも減圧されて背面室C16に流入する。(段落0061)

このことから、環状シール部材18により仕切られた背面室C16に設けられた自転阻止部材27と、背面室C16に設けられた自転阻止部材27の摺動面が、油通路21およびバイパス穴24を介して間欠的に給油される潤滑油により潤滑されることがわかる。

エ.上記記載事項第5.2.(1)エ.、オ.より、次のことがわかる。
本第8の発明は、圧縮機運転速度に応じて圧縮室への給油量調整によって圧縮効率向上を図ることを目的とするものである。(段落0020)
本第8の発明は、旋回スクロールが旋回運動することに伴って、背面室Aから流出した潤滑油が環状の油溝に間欠的に流入すべく給油通路を設けたことにより、背面室Aから背面室Bと背面室Cを経由して吸入室に流入する給油通路の通路抵抗を、旋回スクロールの旋回運動に伴って背面室Bへの流入部で開通・遮断させ、圧縮機運転速度が速い時には圧縮室への給油量を少なくし、圧縮機運転速度が遅い時には圧縮室への給油量を多くするように調整して圧縮機運転速度に応じた圧縮室への適正給油をすることができる。(段落0079)
このことから、可変速仕様としたスクロール気体圧縮機であることがわかる。

(3)先願発明
先願明細書又は図面には次の発明が記載されている。
「密閉ケース1内に鏡板7aに直立する固定スクロールラップ7bを有する固定スクロール7及びラップ支持円盤13bに直立する旋回スクロールラップ13aを有する旋回スクロール13と、これら固定スクロール7及び旋回スクロール13を互いにラップを内側として噛み合わせて形成された圧縮室2と、旋回スクロール13を旋回軸受14を介して旋回運動させる駆動軸4と、駆動軸4を主軸受8を介して支持する本体フレーム5とを備えるスクロール圧縮機構と、
スクロール圧縮機構を駆動するモータ3、
スクロール圧縮機構及びモータ3を収納しかつスクロール圧縮機構の吐出ポート30に連通されて吐出圧力に維持されると共にその下部には油溜11を有する密閉ケース1を
備えたスクロール気体圧縮機において、
旋回スクロール13と本体フレーム5との間に設けられ、旋回スクロールの反圧縮室側面を、背面室B29及び背面室C16と、背面室A20とに仕切り、背面室A20をほぼ吐出圧力にするための環状シール部材18と、
環状シール部材18により仕切られた背面室C16に設けられた自転阻止部材27と、
吐出圧力下にある油溜11から駆動軸4内を通り旋回軸受14の底部の油室15に通じる油穴12と、
環状シール部材18によりほぼ吐出圧力とされた背面室A20からラップ支持円板13b内を通り、背面室A20に供給した潤滑油を減圧の後、バイパス穴24及び絞り部B23から背面室B29及び背面室C16に通じると共に、旋回スクロール13の旋回運動により間欠的にバイパス穴24はその開口部端が開口されるように構成された油通路21と、
背面室C16に設けられた自転阻止部材27の摺動面が、油通路21及びバイパス穴24を介して間欠的に給油される潤滑油により潤滑されるスクロール気体圧縮機。」(以下、「先願発明1」という。)

同様に、先願明細書又は図面には次の発明が記載されている。
「先願発明1において、可変速仕様としたスクロール気体圧縮機。」(以下、「先願発明2」という。)

同様に、先願明細書又は図面には次の発明が記載されている。
「先願発明1において、油通路21のラップ支持円板13b内に形成された給油路のバイパス穴24の開口部端が旋回スクロール13の旋回運動により移動する範囲内のスラスト軸受19面に環状の油溝25を設け、環状の油溝25と、ラップ支持円板13bに設けた給油路のバイパス穴24の開口部端とを旋回スクロール13の旋回運動により間欠的に連通させる構成としたスクロール気体圧縮機。」(以下、「先願発明3」という。)

同様に、先願明細書又は図面には次の発明が記載されている。
「先願発明1において、クランク軸内に形成された油穴12の一端部と油溜11とを接続する給油ポンプ装置51を備えるスクロール気体圧縮機。」(以下、「先願発明4」という。)

3.被請求人の主張概要
被請求人は、平成17年12月20日付け答弁書、平成18年6月26日付け意見書で概ね次の(1)ないし(2)のように主張した。

(1)平成17年12月20日付け答弁書において、訂正明細書の特許請求の範囲に基づく発明を本件発明として、概ね次のア.ないしオ.のように主張した。

ア.先願発明における自転阻止部材(オルダムリング)に対する潤滑油の給油は、背面室C16への連続給油がメインであり、間欠給油は副次的なものであるにすぎない。これに対し、本件発明においては、例えば、実施例として記載されているように、ほぼ吐出圧力とされたクランク部の旋回スクロール側端部空間2h、給油路2f及び溝通路1eを経て、旋回スクロール2外側の低圧部側空間9bへ間欠的に排出される潤滑油量のみによって該低圧部側空間9b内に設けられたオルダムリングの摺動面を潤滑するものであり、前記した連続給油をメインとする先願発明とはオルダムリングヘの給油方式が全く相違しているものである。(同答弁書4頁33から5頁7行)

イ.先願発明においては、クランク軸(駆動軸4)の一端側にクランク部が設けられておらず、旋回軸受14を設けた構成となっているため、第1給油路(油穴12)は、本件発明の「該クランク軸の一端側に設けたクランク部の旋回スクロール側端部空間に通じる第1の給油路」の構成を有していない。(同答弁書5頁9から12行)

ウ.、先願発明においては、「クランク部の旋回スクロール側端部空間から前記旋回スクロール端板内を通りその後前記低圧部側に通じる(第2の給油路)」の構成を備えておらず、更に先願発明は、絞り部22、23を介してオルダムリングを設けた低圧部側空間に連続的に排出されるものであり、本件発明のように、「クランク部の旋回スクロール側端部空間の潤滑油を直接旋回スクロール端板内に導いて前記オルダムリングを設けた低圧部側空間に間欠的に排出する」点、「低圧部側の空間に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して前記オルダムリングを設けた低圧部側空間に間欠的に排出された潤滑油により潤滑される」点の構成も備えていない。(同答弁書5頁14から28行)

エ.先願発明にはクランク部がなく、本件発明における「クランク部の旋回スクロール側端部空間」の構成はない。本件発明は、クランク部の旋回スクロール側端部空間に直接、旋回スクロール端板内に設けた第2の給油路が」接続される構成であるから、第2の給油路を簡単に形成することが可能となるものである。(同答弁書5頁31から36行)

オ.先願発明においては、油室15の高圧油を絞り部22で減圧してから油通路21(第2の給油路)に導くようにしているため、潤滑油中に溶解している液冷媒が油通路21内で発泡しやすく、細径の油通路21で発泡が生じると潤滑油が十分な量だけ流れず、給油不足を生じ易くなり、安定した給油を行うことは困難であり、本件発明の効果を期待することはできない。これに対して、本件発明は、「旋回スクロールの旋回運動により間欠的にその開口部端が開口されるように構成され、前記クランク部の旋回スクロール側端部空間の潤滑油を直接旋回スクロール端板内に導いて前記オルダムリングを設けた低圧部側空間に間欠的に排出するようにした第2の給油路」を備えているので、先願発明のような絞り部を設ける必要がなく、オルダムリングを設けた低圧部側空間に潤滑油を安定して供給できるものである。(同答弁書6頁1から6行、6頁30から35行)

(2)平成18年6月26日付け意見書において、概ね次のように主張した。
「先願発明では、本発明の第2の給油路に相当する給油路は二股に分かれ、その一方の開口端は、絞り部B23を介して常に低圧部側に開口しているものであって、本発明のように間欠的に開口される構成のものではありません。本発明では、その第2の給油路の開口端部は、間欠的に開口される構成(即ち間欠的にのみ開口する構成)としていますので、第2給油路出入口端部側間の圧力差に変動があってもその圧力差の影響が少なく、安定した給油量を得ることができるという効果があります。」(同意見書5頁11から18行)
『先願発明では、オルダムリングの摺動面を、絞り部A22を介して旋回スクロール端板内に導入され、その後、絞り部B23を介して供給される潤滑油と、バイパス穴24、環状油溝25及び排出油通路26を介して供給される潤滑油と、の総量で潤滑する発明が記載されているだけで、本発明のように間欠的に給油される第2の給油路を介して、間欠的にのみ給油される潤滑油により潤滑するようにした構成は記載されておらず、「第2給油路出入ロ端部側間の圧力差に変動があってもその圧力差の影響が少なく、安定した給油量を得ることができる」という本発明の効果を奏することはできないものであります。』(同意見書6頁3から11行)

4.当審の判断
4-1.本件特許発明1に対する判断
(1)対比
そこで、本件特許発明1と先願発明1を対比するに、先願発明1における「密閉ケース1」、「鏡板7a」、「ラップ支持円盤13b」、「固定スクロールラップ7b」、「旋回スクロールラップ13a」、「駆動軸4」、「主軸受8」、「本体フレーム5」、「スクロール圧縮機構」、「モータ3」、「吐出ポート30」、「油溜11」、「スクロール気体圧縮機」、「反圧縮室側面」、「背面室B29及び背面室C16」、「背面室A20」、「環状シール部材18」、「自転阻止部材27」、「油穴12」、「バイパス穴24の開口部端」、「油通路21及びバイパス穴24を介して」は、本件特許発明1における「密閉容器」、固定スクロールの「端板」、旋回スクロールの「端板」、固定スクロールの「渦巻状のラップ」、旋回スクロールの「渦巻状のラップ」、「クランク軸」、「主軸受部」、「主フレーム」、「圧縮機構部」、「電動機部」、「吐出口」、「潤滑油部」、「スクロール圧縮機」、「背面」、「低圧部側」、「各軸受部側」、「シール部材」、「オルダムリング」、「第1の給油路」、「開口部端」、「第2の給油路を介して」にそれぞれ相当する。
先願発明1における「旋回軸受14の底部の油室15」は、クランク機構の端部の限りにおいて、本件特許発明1における「クランク部端部の空間」に相当する。(第1回口頭審理調書被請求人の項目4参照。)
先願発明1における「油通路21」は、各軸受部側の空間から前記旋回スクロ-ル端板内を通りその後前記低圧部側に通じる限りにおいて、本件特許発明1における「第2の給油路」に相当する。

したがって、本件特許発明1と、先願発明1は、
「密閉容器内に端板と端板に直立する渦巻状のラップを有する固定スクロール及び旋回スクロールと、これら固定スクロール及び旋回スクロールを互いにラップを内側として噛み合わせて形成された圧縮室と、前記旋回スクロールを旋回軸受部を介して旋回運動させるクランク軸と、該クランク軸を主軸受部を介して支持する主フレームとを備える圧縮機構部、
該圧縮機構部を駆動する電動機部、
前記圧縮機構部及び電動機部を収納しかつ圧縮機構部の吐出口に連通されて吐出圧力に維持されると共にその下部には潤滑油部を有する密閉容器
を備えたスクロール圧縮機において、
旋回スクロールと主フレームとの間に設けられ、前記旋回スクロールの背面を低圧部側と前記各軸受部側とに仕切り、前記各軸受部側をほぼ吐出圧力にするためのシール部材と、
該シール部材により仕切られた前記低圧部側に設けられたオルダムリングと、
前記吐出圧力下にある潤滑油部から前記クランク軸内を通りクランク機構の端部の空間に通じる第1の給油路と、
前記シール部材によりほぼ吐出圧力とされた前記各軸受部側の空間から前記旋回スクロ-ル端板内を通りその後前記低圧部側に通じると共に、旋回スクロールの旋回運動により間欠的にその開口部端が開口されるように構成された第2の給油路とを備え、
前記低圧部側に設けられたオルダムリングの摺動面が、前記第2の給油路を介して間欠的に給油される潤滑油により潤滑されることを特徴とするスクロール圧縮機。」である点で一致し、次の相違点で一応相違している。

ア.相違点1
本件特許発明1においては、「クランク部端部の空間に通じる第1の給油路」であるのに対し、先願発明1では、「旋回軸受14の底部の油室15に通じる油穴12」である点。
イ.相違点2
本件特許発明1においては、第2の給油路が「前記各軸受部側の空間から前記旋回スクロ-ル端板内を通りその後前記低圧部側に通じると共に、旋回スクロールの旋回運動により間欠的にその開口部端が開口されるように構成された」のに対し、先願発明1では、油通路21が「背面室A20からラップ支持円板13b内を通り、背面室A20に供給した潤滑油を減圧の後、バイパス穴24及び絞り部B23から背面室B29及び背面室C16に通じると共に、旋回スクロール13の旋回運動により間欠的にバイパス穴24はその開口部端が開口されるように構成された」点。

(2)判断
上記一応の相違点について検討する。
ア.相違点1
先願発明1の旋回軸受14は、旋回スクロール13の旋回軸13cとともにクランク機構を構成し、クランク部といえるものである。よって、先願発明1の油穴12も、クランク部端部の空間に通じる第1の給油路といえるから、相違点とは認められない。仮にクランク部が偏心軸のみを示すとしても、この点は慣用技術(特公昭60-35556号公報、特開昭59-113291号公報)であって、慣用技術の転換にすぎないものであり、しかも新たな効果を奏するものでもない。

イ.相違点2
先願発明1において、油通路21が「背面室A20からラップ支持円板13b内を通り、背面室A20に供給した潤滑油を減圧の後、バイパス穴24及び絞り部B23から背面室B29及び背面室C16に通じると共に、旋回スクロール13の旋回運動により間欠的にバイパス穴24はその開口部端が開口されるように構成された」点は、本件特許発明1のように、第2の給油路が「前記各軸受部側の空間から前記旋回スクロ-ル端板内を通りその後前記低圧部側に通じると共に、旋回スクロールの旋回運動により間欠的にその開口部端が開口されるように構成された」点において相違は認められず、上記相違点2は実質的相違点とは認められない。
上記第5.3.(1)ア.、ウ.、オ.、及び3.(2)の被請求人の主張については、本件特許発明1に対して適用したとしても、本件特許発明1において、絞りの有無や開口部端以外の開口が存在するか否かについては何ら特定されていない以上、特許請求の範囲の記載に基づかない主張である。
そもそも潤滑の必要個所に給油経路や絞りにより適正量給油することは機械設計の常識であって、仮に給油経路や絞りに関して相違点が存在したとしても設計上の微差にすぎないものであり、さらに、本件特許発明1のように間欠的にのみ給油することは周知技術(先に示した特開昭59-113291号公報の3頁右上欄10行から4頁左上欄5行等、先に示した特公昭60-35556号公報第7、9図等、特開昭64-3285号公報、特開平1-300080号公報)にすぎないものでもある。
また、本件特許発明1が第2の給油路の入口側に絞りがないとする被請求人の主張は、特許明細書または図面からは入口側に絞りが無いとする記載はなく(図面だけからは、第1の給油路出口から第2の給油路の入口までの間において実質流路断面積に変化がないことまで読み取れない。)、特許請求の範囲はもとより特許明細書または図面に基づかない主張であって、上記第5.3.(1)オ.の主張は採用できない。

したがって、上記相違点1、2は、実質的相違点とは認められず、仮にそうでないとしても設計上の微差にすぎず、新たな効果を奏するものでもないから、先願発明1と実質的に同一であると認められる。

4-2.本件特許発明2ないし4に対する判断
(1)本件特許発明2に対する判断
本件特許発明2については、先願発明2と対比すると、上記第5.4-1.(1)の上記相違点1ないし2で一応相違し、その他の点で一致する。
そして、本件特許発明2は、上記第5.4-1.(2)と同様の理由で、実質的に同一であると認められる。

(2)本件特許発明3に対する判断
本件特許発明3については、先願発明3と対比すると、上記第5.4-1.(1)の一致点で一致し、上記第5.4-1.(1)の上記相違点1、2に加えて、さらに次の相違点3で一応相違する。

相違点3
本件特許発明3においては、「前記第2の給油路の旋回スクロ-ル端板内に形成された給油路の開口端部が旋回スクロ-ルの旋回運動により移動する範囲内の前記固定スクロ-ル端板摺動面に円周方向の溝通路を設け、該溝通路と旋回スクロール端板に設けた給油路の開口部とを、旋回スクロールの旋回運動により間欠的に連通させる構成とした」のに対して、先願発明3においては、「油通路21のラップ支持円板13b内に形成された給油路のバイパス穴24の開口部端が旋回スクロール13の旋回運動により移動する範囲内のスラスト軸受19面に環状の油溝25を設け、環状の油溝25と、ラップ支持円板13bに設けた給油路のバイパス穴24の開口部端とを旋回スクロール13の旋回運動により間欠的に連通させる構成とした」点。
すなわち、旋回スクロール端板に設けた給油路の開口部を、旋回スクロールの旋回運動により間欠的に連通させる円周方向の溝通路が、本件特許発明3においては、固定スクロ-ル端板摺動面に設けたのに対して、先願発明3においては、スラスト軸受19面に設けた点。

上記相違点3について検討する。
「旋回スクロール端板に設けた給油路の開口部を、固定スクロ-ル端板摺動面に設けた溝通路に、旋回スクロールの旋回運動により間欠的に連通させて潤滑油を供給する」ことは周知技術にすぎない。(先に示した特開昭64-3285号公報の第1図の一実施例の給油孔と油溝等、第7図の別の実施例も参照。先に示した特開昭59-113291号公報の第1図等。先に示した特公昭60-35556号公報の第7、8図の第2実施例等。)
そして、上記第2.2.で請求人が主張するように、上記相違点3は周知技術の転換にすぎないものであり、新たな効果を奏するものではない。
したがって、上記第5.4-1.(2)と同様の理由とともに、上記相違点3は設計上の微差にすぎず、新たな効果を奏するものでもないから、先願発明3と実質的に同一であると認められる。

(3)本件特許発明4に対する判断
本件特許発明4については、先願発明4と対比すると、上記第5.4-1.(1)の一致点で一致し、上記第5.4-1.(1)の上記相違点1ないし2に加えて、さらに次の相違点4で一応相違する。

相違点4
本件特許発明4においては、第1の給油路の一端部と前記潤滑油部とを接続するものが、「給油パイプ」であるのに対して、先願発明4においては、「給油ポンプ装置51」である点。

上記相違点4を検討すると、先願発明1の給油ポンプ装置51の代わりに、給油パイプを用いることは、差圧給油のもとでは慣用技術の転換にすぎないものであって、新たな効果を奏するものでもない。
したがって、上記第5.4-1.(2)と同様の理由とともに、上記相違点4は設計上の微差にすぎず、新たな効果を奏するものでもないから、先願発明4と実質的に同一であると認められる。

第6.むすび
以上のとおりであるから、本件の請求項1、3、4、8に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲第1号証の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、本件の請求項1、3、4、8に係る発明の特許は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、本件の請求項1、3、4、8に係る発明の特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-01 
結審通知日 2006-08-04 
審決日 2006-08-17 
出願番号 特願平7-60373
審決分類 P 1 123・ 16- ZB (F04C)
最終処分 成立  
特許庁審判長 大橋 康史
特許庁審判官 深澤 幹朗
関 義彦
登録日 2004-04-16 
登録番号 特許第3545826号(P3545826)
発明の名称 スクロ-ル圧縮機  
代理人 辻田 幸史  
代理人 清水 善廣  
代理人 阿部 伸一  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  
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