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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B62M |
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管理番号 | 1144309 |
審判番号 | 不服2003-12259 |
総通号数 | 83 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-06-30 |
確定日 | 2006-10-13 |
事件の表示 | 平成4年特許願第271482号「電動スクータの電源装置」拒絶査定不服審判事件〔平成6年4月26日出願公開、特開平6-115479〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成4年10月9日の出願であって、その請求項1、2に係る発明は、平成15年3月14日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりである。 【請求項1】 電動スクータの駆動装置へ高い駆動電圧を供給する蓄電池から成る主電源と、前記主電源と接続されその電圧から降圧した低電圧を安定的に発生する直流安定化電源から成る補助電源との組み合せから成り、前記主電源と駆動装置が直接接続され、前記低電圧で動作する電動スクータの灯火装置、制御装置などは前記補助電源と接続され、主電源が駆動装置の回転、走行が不能な電圧まで下がっても制御装置などへ安定な給電が行われることを特徴とする、電動スクータの電源装置。 2.引用刊行物とその記載事項 当審において平成17年6月21日付けの拒絶理由通知で引用された本件出願前に頒布された刊行物は、以下のとおりである。 刊行物1: 特開平4-257783号公報 (公開日:平成4年9月11日) 刊行物2: 実願昭63-110538号(実開平2-30748号) のマイクロフィルム [刊行物1] (イ)「この発明は電動二輪車用パワーユニットの冷却構造に関する。」【0001】 (ロ)「ヘッドチューブ12には前部にコントロールボックス16が取り付けられ、……コントロールボックス16内にはECU等からなるコントローラが収容され、このコントローラに後述する充電回路、駆動回路、バッテリ等が接続する。」【0012】 (ハ)「パワースィングユニット50は、図2に示すように、ケース51内に直流電動モータ52……を組み付けて構成される。」【0018】 (ニ)「電動モータ52は、略有底円筒状のステータハウジング60がケース51の凹部51aに開口を一致させてボルトで固定され、このステータハウジング60と凹部51aの底壁との間で回転軸61が回転自在に支持される。」【0019】 (ホ)「ステータハウジング60には、凹部51a側(図2中左側)にステータを構成する3つのステータコイル62が固設され、……ステータコイル62は、回転軸61に対し同心状に回転方向等間隔に配置され、駆動回路と接続されている。」【0020】 以上の記載(イ)〜(ホ)及び図1,2からみて、刊行物1には、実質的に、次の発明(以下、「刊行物1の発明」という)が記載されているものと認められる。 「電動二輪車の駆動回路および電動モータ52、コントローラなどへ所望の電圧を供給するバッテリから成り、少なくとも、前記バッテリと駆動回路および電動モータ52とが直接接続され、かつ、コントローラなどへ給電が行われる電動二輪車の電源装置。」 [刊行物2] (ヘ)「この考案は大負荷である電動機への給電をバッテリ電圧に応じ制御する車両のバッテリ保護装置……に関する。」(第3頁第1行〜第6行) (ト)「制御回路17は、A/Dコンバータ回路18およびマイクロコンピュータユニット(MCU)19等から構成され、これら回路18およびユニット19が電源回路20を介してバッテリ21に接続されている。」(第7頁第3行〜第7行) (チ)「電源回路20は、……定電圧回路31等を有し、……定電圧回路31を介して制御回路17をバッテリ21に接続し、また、ヒューズ回路28,29およびキースイッチ30を介して駆動回路25をバッテリ21に接続する。……定電圧回路31は制御回路17への印加電圧を一定に保持する。」(第9頁第10行〜第20行) 3.対比 本願発明と刊行物1の発明とを対比すると、刊行物1の発明の「電動二輪車」、「駆動回路および電動モータ52」、「コントローラ」及び「バッテリ」は、それぞれ本願発明の「電動スクータ」、「駆動装置」、「制御装置」及び「蓄電池から成る電源」に相当するから、両者の一致点と相違点は次のように認定できる。 [一致点] 「電動スクータの駆動装置、制御装置などへ所望の電圧を供給する蓄電池から成る電源と、前記電源と駆動装置が直接接続され、制御装置なども電源と接続され、制御装置などへ給電が行われる電動スクータの電源装置」の点[相違点] 本願発明は、電動スクータの駆動装置へ高い駆動電圧を供給する蓄電池から成る主電源と、前記主電源と接続されその電圧から降圧した低電圧を安定的に発生する直流安定化電源から成る補助電源との組み合せから成り、前記低電圧で動作する電動スクータの灯火装置、制御装置などは前記補助電源と接続され、主電源が駆動装置の回転、走行が不能な電圧まで下がっても制御装置などへ安定な給電が行われる構成としているのに対し、刊行物1の発明では、このような構成については明らかでない点 4.当審の判断 この相違点について検討する。 刊行物2には、その記載事項(ヘ)、(ト)、(チ)及び第1図を参照すると、電動機へ駆動回路25を介して給電するバッテリ21を、さらに、定電圧回路31を有する電源回路20を介して、印加電圧を一定の所望の電圧に保持するようにしてマイクロコンピュータユニット19を有する制御回路17に接続する、という技術事項が記載されている。そして、マイクロコンピュータユニットのようなIC(集積回路)化したディジタル回路により構成される制御装置においては、このような制御装置の一般的な仕様からみて、電源電圧(印加電圧)を余り高くすることができず(一般的には、通常2V〜6V程度)、要するに、駆動装置(一例として、電動車両用の駆動用電動モータ、パワーステアリング装置用の電動モータ等)への電源電圧に比較して、このような制御装置の電源電圧を低く抑える必要があることは技術常識であるから、刊行物2に記載の、定電圧回路31が、電源電圧を、制御回路17のマイクロコンピュータユニット19に合わせた低電圧に降圧して、当該ユニット19に安定供給することは、当然行われなければならないことである。 なお、定電圧回路を構成するごく普通の安定化電源回路(電圧安定化回路)は、通常、出力電圧を所定量降圧(低下)させることが一般的である(参考例;社団法人電気学会発行「電気工学ハンドブック」、昭和63年2月28日、第449頁〜第450頁の“7.2 電圧安定化回路”を参照)。 したがって、刊行物2において、実質的に、電動機(駆動装置に相当)へ高い駆動電圧を供給するバッテリ21(蓄電池から成る主電源に相当)と、バッテリ21(主電源)と接続され、その電源電圧から降圧した低電圧を発生する定電圧回路31(直流安定化電源から成る補助電源に相当)との組み合せから成り、前記低電圧で動作する制御回路17などは定電圧回路31(補助電源)と接続され、制御回路17などへ安定した給電が行われる構成の電源装置が開示されているものと認められる。 そうすると、刊行物2に記載された電動機、バッテリ、定電圧回路、制御回路等は車両に係るものである点で、刊行物1の発明と共通の技術分野に属するものであることを勘案すると、刊行物1の発明における電動スクータの電源装置に刊行物2に記載の前記電源装置に関する技術事項を適用することにより、前記相違点でいう本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到することができたというべきものである。 そして、本願発明の効果も、刊行物1の発明及び刊行物2に記載の技術事項から当業者であれば予測することができる範囲を超えるものではない。 なお、審判請求人は、刊行物2に記載の電動機(駆動装置)は、電動スクータの駆動装置のように、「高い駆動電圧(例えば公称48V)を供給する主電源」を使用するという必然性がそもそも存在しない、旨の主張をしているが、本願の請求項1の記載からみて、本願発明は、高い駆動電圧の大きさを数値をもって特定しているわけではないし、しかも、刊行物2の記載によれば、制御回路17は、バッテリ21(電源)に、定電圧回路31を介して接続しているのに対し、電動機(駆動装置)は、定電圧回路を介さず、駆動回路25経由でバッテリ21(電源)に直接的に接続しているのであって、バッテリ21(電源)は、制御回路17に比べると電動機(駆動装置)へ高い駆動電圧を供給しているといえるものであるから、審判請求人の前記主張は採用できない。 5.むすび したがって、本願発明(請求項1に係る発明)は、刊行物1の発明及び刊行物2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-01-19 |
結審通知日 | 2006-02-01 |
審決日 | 2006-02-20 |
出願番号 | 特願平4-271482 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B62M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小山 卓志 |
特許庁審判長 |
藤井 俊明 |
特許庁審判官 |
柴沼 雅樹 見目 省二 |
発明の名称 | 電動スクータの電源装置 |
代理人 | 山名 正彦 |