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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1144348
審判番号 不服2003-17210  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-05-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-04 
確定日 2006-09-28 
事件の表示 特願2001-266996「プリント配線板」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月17日出願公開、特開2002-141624〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は、平成13年9月4日(特許法第44条第2項の規定に係るみなし出願日、平成10年5月26日)の出願であって、その発明は、平成15年9月4日付けの手続補正に係る明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】はんだ付けにより電子部品を実装搭載し電子回路を形成するために用いるプリント配線板であって、熱分解温度が250℃以上の神経伝達系の忌避薬剤と、フィラーと、硬化性樹脂と、硬化剤を含有したペースト、またはソルダレジスト、または絶縁層樹脂の少なくとも1つを用いて形成したプリント配線板。」(以下、「本願発明」という)

2.引用例とその記載事項
これに対し、原査定の拒絶理由において、本願のみなし出願日よりも前に頒布された刊行物として引用された、特開平2-20094号公報(以下、「引用例」という)には、「プリント基板および同基板用レジストインク」に関して、次のイ〜ハの事項が記載されている。
イ 「基板上の所定部位に形成されたソルダーレジスト内に害虫忌避剤を混入してなることを特徴とするプリント基板。」(第1頁左下欄第5〜7行)
ロ 「この発明においては、害虫忌避剤を混入してなるレジストインクが用いられる。そのレジストインクは、例えばエポキシ系熱硬化型、アクリル系紫外線硬化型、液性現像型などであってよい。
害虫忌避剤としては、ゴキブリやダニなどに効果のあるクロロフェニル系や有機リンが適しているが、インクのビヒクルに可溶であれば他の害虫忌避剤であってもよい。」(第1頁右下欄第13行〜第2頁左上欄第1行)
ハ 「〔実 施 例〕・・・プリント基板に、通常のサブトラクティブ法により、Cu箔回路を形成し、ブラスト研磨、乾燥の後、太陽インキ製熱硬化型エポキシインクS-22にクロロフェニル系の防虫剤クロロベンジラートを500mg/kgの割合で加え混合したものをレジストインクとし、・・・スクリーン印刷し、温風遠赤外炉にて乾燥硬化させた。硬化後のレジスト皮膜の特性は、・・・260℃の溶融ハンダ中への60秒間浸漬試験においても外観の変化はなかった。・・・このプリント基板を留守番電話に使用したところ、半年使用の後にも害虫の生息は見られなかった。」(第2頁左上欄第13行〜同右上欄第16行)

3.発明の対比
引用例記載の「プリント基板」も、「260℃の溶融ハンダ」(記載事項ハ)に浸漬することが想定されているから、本願発明でいう「プリント配線板」と同様に、「はんだ付けにより電子部品を実装搭載し電子回路を形成するために用いる」ものといえる。また、上記のハンダ温度(260℃)からみて、引用例記載の「害虫忌避剤」も、本願発明でいう「忌避薬剤」と同様に、「熱分解温度が250℃以上」のものとみてよい。
更に、引用例記載の「ソルダーレジスト」又は「レジストインク」は、本願発明でいう「ソルダレジスト」に相当し、このようなレジスト又はインクには、硬化性樹脂と、硬化剤とが含有されるものである。
したがって、本願発明と引用例記載の発明との一致点及び相違点を次のとおりに認定できる。
[一致点] 「はんだ付けにより電子部品を実装搭載し電子回路を形成するために用いるプリント配線板であって、熱分解温度が250℃以上の忌避薬剤と、硬化性樹脂と、硬化剤を含有したソルダレジストを用いて形成したプリント配線板」である点。
[相違点1] 忌避薬剤が、本願発明では「神経伝達系」のものであるのに対し、引用例記載の発明にはその言及がない点。
[相違点2] 本願発明のソルダレジストは「フィラー」を含有するのに対し、引用例記載の発明にはこれについて言及がない点。

4.当審の判断
(1)相違点1について
当該技術分野においては、「殺虫剤より毒性が低い」として、神経伝達系の忌避薬剤であるピレスロイド系のものが用いられることも多い(特開平9-208403号公報【0010】、特開平9-205975号公報【0010】参照)。
上記のピレスロイド系の薬剤には、蚊取り線香に用いられるものもあるところから、熱分解温度が比較的高いものが存在することが予測される一方、引用例でも「クロロフェニル系や有機リンが適しているが・・・他の害虫忌避剤であってもよい」としているところから、引用例記載の発明において、忌避薬剤として「神経伝達系」のものを採用することは、当業者にとって、特段困難なこととはいえない。
(2)相違点2について
特開平2-68号公報、特開平5-32746号公報、特開平9-258446号公報にも示されるように、ソルダレジストに、シリカやアルミナなどのフィラー(充填材)を含有せしめることは、当該技術分野における常套手段であり、引用例記載の発明の「ソルダーレジスト」又は「レジストインク」についても、上記のようなフィラーを含有したものとすることは、当業者が容易になしうる程度の技術事項といえる。
(3)作用効果について
上記の相違点1及び2に係る構成を併せ備える本願発明の作用効果について検討しても、引用例や上記の周知例に記載されている事項から、当業者が予測しがたいといえるものが認められない。
したがって、本願発明は、上記の引用例記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

5.付記
なお、請求人は、平成15年11月14日付けで上申書を提出し、上記平成15年9月4日付けの手続補正は手違いによるものであり、本意とする請求項1の発明は、次のとおりのものであるとしている。
「はんだ付けにより電子部品を実装搭載し電子回路を形成するために用いるプリント配線板であって、フィラー表面に吸着された熱分解温度が250℃以上の神経伝達系の忌避薬剤と、硬化性樹脂と、硬化剤を含有したペースト、またはソルダレジスト、または絶縁層樹脂の少なくとも1つを用いて形成したプリント配線板。」
そこで、上記の下線部の事項を含む発明についても一応検討すると、忌避薬剤をアルミナやシリカ等に吸着させて薬効期間の長期化等を図ることは、当該技術分野では普通に行われており(特開昭63-188603号公報、特開平6-1702号公報参照)、しかも、上述のとおり、アルミナやシリカは、ソルダレジスト等に含有せしめるフィラーとしても普通に用いられているものである。
そうすると、たとえ請求人が本意であるとする上記の補正が仮になされたとしても、発明の容易性に関する上記判断の結果が左右されるというものではない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-07-28 
結審通知日 2006-08-01 
審決日 2006-08-14 
出願番号 特願2001-266996(P2001-266996)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長屋 陽二郎  
特許庁審判長 前田 仁
特許庁審判官 平瀬 知明
永安 真
発明の名称 プリント配線板  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 永野 大介  

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