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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1144360
審判番号 不服2003-25150  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-07-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-25 
確定日 2006-09-28 
事件の表示 平成10年特許願第 1892号「アクティブマトリックス基板、および液晶装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月21日出願公開、特開平11-194366〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年1月7日に出願された特許出願であって、原審において、平成15年1月17日付で拒絶理由が通知され、同年3月24日に手続補正がなされたところ、同年8月22日付で最後の拒絶理由が通知され、同年10月27日に特許法第17条の2第1項第2号の規定による手続補正がなされた。これに対し、同年11月14日付で上記10月27日付手続補正についての補正却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされたところ、同年12月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成16年1月26日に特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正がなされたものである。

2.平成16年1月26日付手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年1月26日付手続補正を却下する。
[理由]
(1)平成16年1月26日付手続補正について
平成16年1月26日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)のうち、請求項1についての補正は、平成15年3月24日付手続補正に係る請求項1である
「【請求項1】 信号線、前記信号線に交差する走査線、前記信号線及び前記走査線の交差に対応して設けられた薄膜トランジスタ、前記薄膜トランジスタに接続された画素電極、並びに前記画素電極に対向して配置される共通電極を備えてなり、前記画素電極と前記共通電極との間に横電界が印加されるよう構成されたアクティブマトリクス基板であって、
前記信号線と前記画素電極との間に絶縁膜が介在しており、
前記信号線と前記画素電極の一部が重なるように配置されてなることを特徴とするアクティブマトリクス基板。」
を、
「【請求項1】 信号線、前記信号線に交差する走査線、前記信号線及び前記走査線の交差に対応して設けられた薄膜トランジスタ、前記薄膜トランジスタに接続された画素電極、並びに前記画素電極に対向して配置される共通電極を備えてなり、前記画素電極と前記共通電極との間に横電界が印加されるよう構成されたアクティブマトリックス基板であって、
前記信号線と前記画素電極との間、及び前記信号線と前記共通電極との間に絶縁膜が介在しており、
前記信号線の側端部のうち、一方の前記側端部に前記画素電極の一部、他方の前記側端部に前記共通電極の一部が配線方向に沿って平面的に重なるように配置されてなり、
前記信号線はアルミニウム、銅、又はそれらの合金からなることを特徴とするアクティブマトリックス基板。」
と補正するものである。

(2)特許法第17条の2第4項違反について
そこで、上記請求項1に係る補正のうち下線を付した事項、すなわち、平成15年3月24日付手続補正の
イ.「前記信号線と前記画素電極の一部が重なるように配置されてなる」
を、本件補正において
ロ.「前記信号線の側端部のうち、一方の前記側端部に前記画素電極の一部、他方の前記側端部に前記共通電極の一部が配線方向に沿って平面的に重なるように配置されてなり、前記信号線はアルミニウム、銅、又はそれらの合金からなる」
と補正した事項が、特許法第17条の2第4項で規定する“特許請求の範囲の減縮”を目的とするものであるかについて以下に検討する。

上記イ.についての作用効果は、本願明細書の記載によれば、
「【0014】また、信号線が画素電極または共通電極の下方に断面的に重なって形成されているため、各画素の開口率を向上させることができるようになる。」
ないしは、
「【0015】 ・・・、前記画素電極および共通電極を同一絶縁膜上に形成するとともに、前記信号線を前記画素電極または共通電極の下方に絶縁膜を隔てて重なるように他の導電層によって形成するようにしたことを特徴とする。
【0016】このような構成とすることにより前述の様に、開口率を向上させた液晶装置を得ることができる。」
と記載されている。
上記イ.ならびに上記本願明細書の記載事項について考察するに、画素電極または共通電極と信号線とが平面視で重なるように配置すれば、それら配線によって陰になる部分が減ることになるから、特に他方が一方の陰に完全に入るように配置すれば、それら配線が平面視で占める面積が最も少なくなることになり、その結果、開口率は最も大きくなることが理解できる。すなわち上記イ.の構成は、開口率を向上させることを課題としたものであることが明らかである。

一方、上記ロ.の作用効果については、本願明細書に何ら記載がないが、請求の理由(平成16年1月26日付手続補正書(方式)の(3)3-2)において、請求人は次のように主張している。
「(3)本願発明について
・・・3-2 本願発明に基く作用効果
本願に係わる発明によれば、信号線の一方の側端部に画素電極、他方の側端部に共通電極が重なり、且つ信号線がアルミニウム、銅、又はそれらの合金から形成されています。アルミニウム、銅、又はそれらの合金が遮光性を有することは自明であり、本願発明の構成により、画素電極及びそれと隣り合う共通電極の間は信号線によって遮光されます。そのため、本願発明は、画素電極及びそれと隣り合う共通電極間に雑音電界が発生し、液晶に影響を及ぼした場合であっても、前記雑音電界による液晶の乱れが表示に影響を及ぼすことを防止するという格段の作用効果を奏します。」
請求人の上記主張によれば、上記ロ.の主旨は、画素電極と共通電極との間隙を信号線により塞ぐことにより遮光し、当該間隙部における液晶の乱れが表示に悪影響を及ぼすことを防止するにあることが明らかである。

そして、上記イ.などについての上記考察で明らかなように、上記ロ.の構成では、上記イ.の構成に比較して画素電極および共通電極と信号線との重畳割合が少なくなることから、開口率の向上には十分寄与し得ないものと思量されること、さらには、本願明細書の記載は当初から一貫して「前記信号線を前記画素電極または共通電極の下方に・・・重なるように」(段落【0012】、【0015】、【0029】)と、画素電極または共通電極の何れか一方が信号電極と重なることを開示しており、これとは異なる上記ロ.の構成ならびにこれに付随する効果については記載されていない。
したがって、上記ロ.の補正事項は、本件補正前の請求項1に記載された発明の課題であった「開口率の向上」を、「画素電極と共通電極との間の遮光」に変更するものであるから、本件補正は、本件補正前の当該発明と課題が同一であるとはいえず、特許法第17条の2第4項第2号の要件を満たさないものである。

なお、本願明細書の段落【0018】には、「光を遮光するブラックマスクを設けることなく電極のすき間から光が漏れてコントラストが低下するのを防止することができる。」と記載されているが、当該事項は、信号線に設けられた突出部(22a、22b)に関する説明であって、これを上記ロ.についてまで敷衍することは、段落【0018】および上記段落【0012】、【0015】、【0029】の記載からみて無理がある。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年1月26日付の手続補正は上記のとおり却下された。また、平成15年10月27日付手続補正が既に却下されていることは上記1.で述べたとおりである。したがって、本願の請求項に係る発明は、平成15年3月24日付手続補正の特許請求の範囲の請求項1〜6に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、次のものである。
「【請求項1】 信号線、前記信号線に交差する走査線、前記信号線及び前記走査線の交差に対応して設けられた薄膜トランジスタ、前記薄膜トランジスタに接続された画素電極、並びに前記画素電極に対向して配置される共通電極を備えてなり、前記画素電極と前記共通電極との間に横電界が印加されるよう構成されたアクティブマトリクス基板であって、
前記信号線と前記画素電極との間に絶縁膜が介在しており、
前記信号線と前記画素電極の一部が重なるように配置されてなることを特徴とするアクティブマトリクス基板。」

(2)引用例
拒絶査定に至る一連の手続きの一つである平成15年11月14日付補正却下の決定において引用された特開平9-230378号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
a.「【0001】【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜トランジスタ(以下、TFTという)などのスイッチング素子を備え、表示媒体として液晶等を用いた表示装置に関し、特にアクティブマトリクス基板の構成に関する。」
b.「【0009】【発明が解決しようとする課題】
上述のような横電界駆動方式の液晶表示装置400においては、共通配線123及びその駆動電極113がTFT基板側に配置されているため、共通配線(駆動電極)が対向基板側に配置された従来の縦電界駆動方式の液晶表示装置に比較して、アクティブマトリクス基板側の電極の配線構造が複雑になる。そのため、各配線間での寄生容量によるクロストークが生じやすいという問題点があった。更に、透過型他液晶表示装置の場合、共通配線及び駆動電極の存在によってバックライト光の透過する開口部の面積が狭くなるため、十分な輝度が得られなかった。
【0010】本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、(1)バックライト光の透過する開口部を面積を広くすることにより、高輝度の表示あるいは低消費電力を実現できる液晶表示装置を提供し、また(2)絵素電極に対するソース信号線の影響を抑制することにより、クロストークが低減した高品位の表示を実現する液晶表示装置を提供することにある。」
c.「【0032】図1に示すように、アクティブマトリクス基板100には、表示電極2、及び対向配線1に挟まれた複数の表示領域2aがマトリクス状に設けられている。また、これら表示領域2aの周囲を通って互いに直交差するように、走査配線としてのゲート信号配線3と信号配線としてのソース信号配線4が設けられている。・・・また、ゲート信号配線3とソース信号配線4の交差部には、スイッチング素子として機能する薄膜トランジスタ(以下、TFT22という)が設けられ、TFT22のドレイン電極12は接続電極6aを介して、最終的に表示電極2に接続されている。TFT22のゲート電極5には、ゲート信号配線3が接続されており、ゲート電極5に入力される信号によってTFT22が駆動制御される。TFT22のソース電極11には、ソース信号配線4が接続されており、これによりTFT22のソース電極11にデータ信号が入力される。ここで、TFT22のドレイン電極12は、コンタクトホール7によって接続電極6aを介して表示電極2と接続される。・・・」
d.「【0035】・・・さらに、TFT22、ゲート信号配線3およびソース信号配線4、接続電極6の上部を覆って層間絶縁膜9が設けられている。・・・
【0036】図3に示すように、この層間絶縁膜9上には、画素を形成するための表示電極2が相対するように設けられている。この表示電極2は、層間絶縁膜9を貫くコンタクトホール7によって、接続電極6と一体化している透明導電膜10a’を介してTFT22のドレイン電極12と接続されている。ここで、表示電極2は、ソース信号配線4上に層間絶縁膜9上を介して重畳するように、表示領域2aの周縁部に配置される。・・・
【0037】また、上記の層間絶縁膜9上には、対向配線1がストライプ状に形成されている。対向配線1と表示電極2は、互いに長手方向に平行になるように配置される。対向配線1は、表示領域2aの周縁部であり、且つ隣接するソース信号配線4と重畳しない位置に配置されている。・・・対向配線1と表示電極2は同じ工程でつくられ、これらの材質は、導電性の材料であれば・・・良い。」

上記a〜dの事項によれば、引用例には、
「互いに直交差するように、走査配線としてのゲート信号配線と信号配線としてのソース信号配線が設けられ、また、ゲート信号配線とソース信号配線の交差部には、スイッチング素子として機能する薄膜トランジスタが設けられ、前記薄膜トランジスタに接続された表示電極、および上記表示電極とは互いに長手方向に平行になるように配置された対向配線を備えた横電界駆動方式の液晶表示装置用のアクティブマトリクス基板であって、上記表示電極は、ソース信号配線上に層間絶縁膜上を介して重畳するように配置されているアクティブマトリクス基板。」
との事項が開示されていると認められる(以下、「引用例発明」という。)。

(3)対比・判断
そこで、本願発明と引用例発明とを対比すると、両者は次のとおり相当する。
[引用例発明] [本願発明]
ゲート信号配線 走査線
ソース信号配線 信号線
薄膜トランジスタ 薄膜トランジスタ
表示電極 画素電極
対向配線 共通電極
層間絶縁膜 絶縁膜
アクティブマトリクス基板 アクティブマトリクス基板

また、本願発明の「前記画素電極と前記共通電極との間に横電界が印加されるよう構成された」との事項については、引用例発明が「横電界駆動方式の液晶表示装置用のアクティブマトリクス基板」であって、横電界が表示電極と対向配線との間に印加されることは自明であることから、引用例発明は当該事項を有する。
さらに、本願発明の「前記信号線と前記画素電極との間に絶縁膜が介在しており、前記信号線と前記画素電極の一部が重なるように配置されてなる」は、引用例発明の「上記表示電極は、ソース信号配線上に層間絶縁膜上を介して重畳するように配置されている」なる事項に相当する。

そうすると、引用例発明は本願発明のすべての構成要件を充足するから、両者は同一であるといえる。

なお、原査定の理由は特許法第29条第2項違反であるが、請求人は、請求理由において、引用例に記載された事項と本願発明との相違点について充分言及しており、その中で特許法第29条第1項第3号の同一性を含め検討していることは明らかであるから、当審が特許法第29条第1項第3号を適用することに違法はない。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-07-14 
結審通知日 2006-07-18 
審決日 2006-08-14 
出願番号 特願平10-1892
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G02F)
P 1 8・ 572- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小牧 修  
特許庁審判長 向後 晋一
特許庁審判官 平井 良憲
吉田 禎治
発明の名称 アクティブマトリックス基板、および液晶装置  
代理人 上柳 雅誉  
代理人 須澤 修  
代理人 藤綱 英吉  

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