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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  A47L
管理番号 1144801
異議申立番号 異議2003-73077  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-03-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-16 
確定日 2006-09-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第3424154号「電気掃除機」の請求項1に係る特許に対する特許異議申立て事件についてした、平成18年1月5日付けの決定に対し、知的財産高等裁判所において決定取消しの判決(平成18年(行ヶ)第10082号、平成18年7月26日判決言渡)があったので、更に審理の結果、次のとおり決定する。 
結論 特許第3424154号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
1.特許出願:平成9年8月29日
2.設定登録:平成15年5月2日
3.特許異議の申立て:平成15年12月16日
4.取消理由の通知:平成17年2月2日
(発送日:平成17年2月14日)
5.訂正請求:平成17年4月15日
6.訂正拒絶理由の通知:平成17年8月3日
(発送日:平成17年8月16日)
7.特許異議の決定(取消決定):平成18年1月5日
(送達日:平成18年1月23日)
8.特許異議の決定の取り消しを求める訴えの提起
(平成18年(行ヶ)第10082号):平成18年2月22日
9.訂正審判の請求(訂正2006-39074号)
:平成18年5月12日
10.上記訂正審判についての訂正認容の審決:平成18年6月14日
11.訂正審判認容の審決確定を受けて、決定取消しの判決
:平成18年7月26日判決言渡

第2 特許異議の申立ての理由、及び取消理由の概要
特許異議申立人が主張している特許異議の申立ての理由、及び当審が通知した取消理由は、概略、次のとおりである。
「本件特許の請求項1に係る発明は、以下の引用刊行物1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本件発明についての特許は、取り消されるべきである。
引用刊行物1: 特開平8-238202号公報
引用刊行物2: 実願昭60-193706号
(実開昭62-100149号)のマイクロフィルム」

第3 特許異議の申立てについての判断
1.本件特許発明
上記第1、9.の訂正審判について、訂正認容の審決が確定したので、本件特許第3424154号の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、第1、9.の訂正審判請求書に添付された明細書及び願書に最初に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「掃除機本体に蓋体により上部を開閉される集塵室を設けて、集塵室内の前壁下縁に設けられた載置部に平板状の口板付き集塵袋の前記口板を収納することにより前記集塵室内に前記集塵袋を収納し、集塵室の前面に形成された吸込口周りに設けたシール部材と前記口板の前面とを当接させ、その状態をクランプ部材の係止部により前記口板の裏面側から弾性保持させるようにした電気掃除機において、
前記クランプ部材に、その口板側との係止部より延出して、その先端部から前記口板の前面側上辺と当接し、該口板側からの接触圧力によって従動させられながら前記口板の前面側上辺を前記係止部まで摺動案内する当接面を設けるとともに、
前記蓋体の内面に、その蓋閉動作時に前記口板の裏面側上辺と当接し、この裏面側上辺を摺動させながら、前記口板の前面側上辺を前記クランプ部材から離れた位置より該クランプ部材の当接面と当接可能な位置を経て該クランプ部材の係止部まで摺動案内可能な複数の片からなる当接部を有する案内部材を設け、
蓋閉動作時に、前記口板の前面側上辺が前記クランプ部材の前記当接面に当接した後、前記口板の裏面側上辺が前記案内部材の当接部に、前記口板の前面側上辺が前記クランプ部材の当接面に、それぞれ当接し、前記案内部材の複数の片の間に前記クランプ部材の当接面が嵌まり込んだ状態で、前記案内部材の複数の片は、前記口板により前記クランプ部材を押しやりながら、前記口板の前面側上辺を前記クランプ部材の当接面の下端部まで摺動案内していくことを特徴とする電気掃除機。」

2.引用刊行物に記載された発明
(1)引用発明1
上記特許異議の申立ての理由、及び取消理由に引用された引用刊行物1(特開平8-238202号公報)には、図面とともに次のように記載されている。
(a)「【0012】図1,図2(a)は、ハンドタイプの電気掃除機を示したものである。この電気掃除機は、掃除機本体1と、掃除機本体1に接続して使用する吸込口体2(塵埃吸込手段)を備えている。尚、3は吸込口体2の接続パイプ部である。」(公報第3頁左欄第15〜19行)
(b)「【0015】この集塵室用凹部13の前端には上部側が斜め前方に傾斜する傾斜壁14が形成され、集塵室用凹部13の前端底部には傾斜壁14に沿う口枠係止溝15が形成され、ケース本体8の前上面には集塵室用凹部13に近接してクランプ部材16が支持軸17により回動可能に枢着されている。このクランプ部材16は、集塵室用凹部13の上部側に突出していると共に、図示しないスプリングで集塵室用凹部13側に回動付勢されている。」(同第3頁左欄第37〜45行)
(c)「【0018】この紙パックフィルター6は、袋状紙フィルター部6aと、この袋状紙フィルター部6aの開口261に一体に設けたボール紙からなる平板状の口枠体6bとから構成されている。この口枠体6bは、下端部が口枠係止溝15に挿入され、上部の裏面164がクランプ部材16の突出部162の突部162aによって押さえられている。この押さえにより、口枠体6bが後述するシール部材19に当接して固定されている。」(同第3頁右欄第9〜16行)
(d)「【0021】このケース本体8の集塵室用凹部13は、上部開口端が蓋体9で開閉可能に装着されて、蓋体9との間に集塵室23を形成している。」(同第3頁右欄33〜35行)
(e)「【0038】次に、この様な構成の電気掃除機の作用を説明する。【0039】この様な構成によれば、紙パックフィルター6を交換した際に、図18に示すように、誤ってクランプ部材16の突出部162を口枠体6bの上に乗せて蓋体9を閉めてしまった場合、蓋体9を閉じる際に、蓋体9の膨出突部34がクランプ部材16の突出部162の上部162bに当接する前に膨出突部34の下面に設けた案内部材170がクランプ部材16の切欠163に入り、この案内部材170の傾斜面171が口枠体6bの上部に当接する。
【0040】そして、蓋体9をさらに閉じると、傾斜面171が口枠体6bをシール部材19側へ案内するするので、図19に示すように、クランプ部材16の突出部162は口枠体6bの上から外れ、この口枠体6bはその上部の裏面164がクランプ部材16の突出部162の突部162aに押えられて固定される。すなわち、口枠体6bは変形されることなくクランプ部材16により確実にクランプされることとなる。
【0041】このクランプにより、口枠体6bはシール部材19に当接され、紙パックフィルタ6の開口261と筒体18の開口18aとがシール部材208によりシールされた状態で接続され、そのシール性は確保されることとなり、シール性が悪くなってしまうことが防止される。
【0042】ところで、クランプ部材16の突出部162と突出部162との間に形成された切欠163に入った案内部材170と突出部162,162とは互いに隣接した位置にあるので、案内部材170が口枠体6bに当接してこの当接部分がシール部材19側へ移動すれば、この口枠体6bの当接部分の近辺部もシール部材19側へ移動するので、クランプ部材16の突出部162,162は口枠体6bの裏面164へ確実に回り込むこととなり、口枠体6bを所定位置に確実に固定することができる。
【0043】
【効果】以上説明したように、この発明によれば、クランプ部材の近傍位置となる前記蓋体の下面に、該蓋体が閉じられた際に前記口枠体をシール部材側へ移動させる案内部材を設けたものであるから、誤ってクランプ部材の突出部を紙パックフィルタの口枠体の上部に乗せて蓋体を閉めても、案内部材が口枠体をシール部材側へ移動させるので、クランプ部材の突出部は紙パックフィルタの口枠体の上部から外れて口枠体はクランプ部材により確実にクランプされ、口枠体とシール部材との間のシール性を悪くしてしまうことが防止される。」(同第5頁左欄4行〜49行)
(f)図1には電気掃除機全体の概略構成を示す断面図が、図6〜9にはクランプ部材16の詳細図が、そして図18,19にはクランプ部材16の突出部162と口枠体6bとの関係等を示す説明図が、それぞれ示されている。

引用刊行物1の上記記載(a)〜(d)及び各図に示されている電気掃除機の概略構成に関わる図示内容によれば、引用刊行物1には、掃除機本体1に蓋体9により上部を開閉される集塵室23を設けて、集塵室23前端の傾斜壁14の下縁に設けられた口枠係止溝15に平板状の口枠体6b付き紙パックフィルター6を収納することにより、前記集塵室23内に前記紙パックフィルター6を収納すること、その上で、集塵室23の前面に形成された接続口18a周りに設けたシール部材19と前記口枠体6bの前面とを当接させ、その状態を維持するよう、スプリングで回動付勢されたクランプ部材16により保持するようにした電気掃除機が記載されているものと認められる。
また、同記載(e)及び図6〜9,18,19に示されているクランプ部材16の構成をみると、クランプ部材16には、口枠体6bの上部の裏面を押えて係止する突部162aを有する突出部162が形成されており、この突部162aより上部162bに向けて延出するように斜面が形成されているということができる。
更に、引用刊行物1の上記記載(e)及び図18に示されている案内部材170の構成をみると、蓋体9の内面に傾斜面171を有する案内部材17が設けられており、誤ってクランプ部材16の突出部162を口枠体6bの上に載せて蓋体9を閉めてしまった場合には、この傾斜面171が口枠体6bの裏面側上辺と当接し、程度の差はさておき、該上辺を摺動させながら口枠体6bを突部162aにより係止される位置まで摺動案内し、図19に示されるようなクランプ状態とする構成が記載されていることは明白である。
したがって、以上の記載、各図の図示内容及びこれらから明白な事項を総合すれば、引用刊行物1には、次のような発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「掃除機本体(1)に蓋体(9)により上部を開閉される集塵室(23)を設けて、集塵室(23)内の集塵室(23)前端の傾斜壁(14)下縁に設けられた口枠係止溝(15)に平板状の口枠体(6b)付き紙パックフィルター(6)を収納することにより前記集塵室(23)内に前記紙パックフィルター(6)を収納し、集塵室(23)の前面に形成された開口(18a)周りに設けたシール部材(19)と前記口枠体(6b)の前面とを当接させ、その状態をクランプ部材(16)の突部(162a)により前記口枠体(6b)の裏面(164)側から弾性保持させるようにした電気掃除機において、
前記クランプ部材(16)に、その突出部(162)より延出して斜面を設けるとともに、
前記蓋体(9)の内面に、クランプ部材(16)の突出部(162)を口枠体(6b)の上に載せた状態での蓋閉時に、前記口枠体(6b)の裏面側上辺と当接し、この裏面側上辺を摺動させながら、前記口枠体(6b)の上辺を該クランプ部材(16)の突部(162a)により係止される位置まで摺動案内可能な傾斜面(171)を有する案内部材(170)を設けた電気掃除機。」

(2)引用発明2
同引用刊行物2(実願昭60-193706号(実開昭62-100149号)のマイクロフィルム)には、図面とともに次のように記載されている。
(a)「当板凸部48の最後部は上蓋24が閉塞回動するとき、支持板34に保持された口枠45に最初に当たり、これを集塵室23内方向に押圧していく。」(明細書第7頁第4〜7行参照)
(b)「上蓋24が本体21に結合すると、同時に当板凸部48に押されていた口枠45の上縁が、支持板37の蓋当板46側に形成した支持溝50に入り、また、弁47が吸塵口44に嵌合する。」(明細書第7頁第11〜15行参照)
(c)「一方、新しい集塵袋22の口枠45の下縁を支持板34の上部に設けた支持溝35に挿入して支持板34に装着し、そののち上蓋14を本体11に結合させるため閉塞回動をさせて行くと、蓋当板46に設けた当板凸部48の最後部が口枠35を押して集塵室23内部方向へ徐々に倒して行き、口枠35の上縁が支持溝50に自動的に挿入されて正規の取り付け状態となる。」(明細書第8頁第6〜13行参照。なお、上記記載中、「支持溝35」、「上蓋14」、「本体11」、「口枠35」(2カ所)の符号は、文意、他の記載箇所及び図面からみて、それぞれ「支持溝43」、「上蓋24」、「本体21」、「口枠45」の誤記であることは明白である。)
(d)「なお以上の説明では、当板凸部48を口枠45に押圧を加えるものとして述べたが、当板凸部48は略円形である必要性はなく、リブ体やボス形状であっても良く、要は、上蓋24が閉じるときに口枠45に押圧を加えるものであれば良い。」(明細書第9頁第5〜9行参照)
(e)第1図には「平板状の口枠45付き集塵袋22を装着」した電気掃除機の要部中央断面図が、第3図には同じく集塵袋22を装着する時の電気掃除機の斜視図が、そして第4図には同じく上蓋24を閉じる時の状態図が、それぞれ示されている。
なお、第1図において、番号37のすぐ下方に「口枠」とあるが、37は「支持板」であり、「口枠」は45であることは明白である。

上記記載(b)より、弁47は、上蓋24の吸気口の周りに設けられていることは明白である。
さらに、上記記載(c)によると、上蓋14の閉塞回動に連動して、第4図に示されるような状態から、当板凸部48の最後部が口枠35の前面側表面を押して集塵室23内部方向へ徐々に倒して行き、最終的に第1図に示されるように、口枠45の上縁が支持溝50に自動的に挿入され、係止状態になるのであるから、このとき、口枠45の後面側上縁が、支持板37の前面側(口枠45側)における支持溝50上方に当接し、口枠45側からの接触圧力により、支持板37は反口枠45方向(第4図における時計方向)に従動され、口枠45の上縁が支持溝50に到達したとき、口枠45方向(第4図における反時計方向)に弾性力により復帰して、口枠45の上縁が支持溝に挿入されるのは明白であり、第1図、第4図をも参酌すれば、上記した支持溝50上方の部分は、口枠45側からの接触圧力によって従動させられる斜面を形成しているといえる。

したがって、以上の記載、各図の図示内容及びこれらから明白な事項を総合すれば、引用刊行物2には、次のような発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「掃除機に上蓋(24)により上部を開閉される集塵室(23)を設けて、集塵室(23)内に設けられた支持溝(43)に平板状の口枠(45)付き集塵袋(22)の前記口枠(45)を収納することにより前記集塵室(23)内に前記集塵袋(22)を収納し、上蓋(24)の吸気口周りに設けられた弁(47)と前記口枠(45)の前面に設けられた吸塵口(44)とを嵌合させ、その状態を支持板(37)の支持溝(50)により前記口枠(45)の前面側から弾性保持させるようにした電気掃除機において、
前記支持板(37)に、その支持溝(50)より延出して、その先端部から口枠(45)の後面側上縁と当接し、該口枠(45)側からの接触圧力によって従動させられながらこれを前記支持板(37)の支持溝(50)まで摺動案内する斜面を設けるとともに、
前記蓋体(24)の内面に、その蓋閉時に口枠(45)の前面側表面と当接し、前記口枠(45)を押しやりながら前記口枠(45)の後面側上縁を前記支持板(37)から離れた位置より該支持板(37)の斜面と当接可能な位置を経て該支持板(37)の支持溝(50)まで案内する当板凸部(48)を設けた電機掃除機。」

3.対比
(1)本件特許発明と引用発明1との対比
そこで、本件特許発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「口枠体(6b)」は、その機能や形状からみて、本件特許発明の「口板」に相当し、以下同様に、「(集塵室(23)前端の)傾斜壁(14)」は「前壁」に、「口枠係止溝(15)」は「載置部」に、「紙パックフィルター(6)」は「集塵袋」に、「開口(18a)」は「吸込口」に、「突部(162a)」は「(口板側との)係止部」に、そして、「傾斜面(171)」は「当接面」に、それぞれ相当する。

したがって、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
〈一致点〉
「掃除機本体に蓋体により上部を開閉される集塵室を設けて、集塵室内の前壁下縁に設けられた載置部に平板状の口板付き集塵袋の前記口板を収納することにより前記集塵室内に前記集塵袋を収納し、集塵室の前面に形成された吸込口周りに設けたシール部材と前記口板の前面とを当接させ、その状態をクランプ部材の係止部により前記口板の裏面側から弾性保持させるようにした電気掃除機において、
前記蓋体の内面に、その蓋閉動作時に前記口板の裏面側上辺と当接し、この裏面側上辺を摺動させながら、前記口板の上辺を該クランプ部材の係止部まで摺動案内可能な当接部を有する案内部材を設け、
蓋閉動作時に、前記口板の裏面側上辺が前記案内部材の当接部に当接し、前記案内部材の間に前記クランプ部材が嵌まり込んだ状態で、前記案内部材は、前記口板により前記クランプ部材を押しやるようにした電気掃除機。」〈相違点1〉
本件特許発明においては、「前記クランプ部材に、その口板側との係止部より延出して、その先端部から前記口板の前面側上辺と当接し、該口板側からの接触圧力によって従動させられながら前記口板の前面側上辺を前記係止部まで摺動案内する当接面」を設けているのに対して、引用発明1においては、「前記クランプ部材(16)に、その突出部(162)より延出して斜面」を設けているのものの、この「斜面」は、口枠体(6b)の前面側上辺と当接し、該口枠体(6b)側からの接触圧力によって従動させられながら前記口枠体(6b)の前面側上辺を前記係止部まで摺動案内するものではない点。
〈相違点2〉
本件特許発明の「(案内部材の)当接部」は、「蓋閉動作時に前記口板の裏面側上辺と当接し、この裏面側上辺を摺動させながら、前記口板の前面側上辺を前記クランプ部材から離れた位置より該クランプ部材の当接面と当接可能な位置を経て該クランプ部材の係止部まで摺動案内可能な複数の片」から構成されているのに対して、引用発明1の「(案内部材(170)の)傾斜面」は、「クランプ部材(16)の突出部(162)を口枠体(6b)の上に載せた状態での蓋閉時に、前記口枠体(6b)の裏面側上辺と当接し、この後面側上辺を摺動させながら、前記口枠体(6b)の上辺を該クランプ部材(16)の突部(162a)により係止される位置まで摺動案内可能な傾斜面(171)」から構成されている点。
〈相違点3〉
本件特許発明においては、「蓋閉動作時に、前記口板の前面側上辺が前記クランプ部材の前記当接面に当接した後、前記口板の裏面側上辺が前記案内部材の当接部に、前記口板の前面側上辺が前記クランプ部材の当接面に、それぞれ当接し、前記案内部材の複数の片の間に前記クランプ部材の当接面が嵌まり込んだ状態で、前記案内部材の複数の片は、前記口板により前記クランプ部材を押しやりながら、前記口板の前面側上辺を前記クランプ部材の当接面の下端部まで摺動案内していく」のに対して、引用発明1においては、「蓋閉動作時に、前記口枠体(6b)の上辺がクランプ部材(16)の突出部(162)に載っている状態で、前記口枠体(6b)の裏面側上辺が前記傾斜面(171)に当接し、前記傾斜面(171)が前記クランプ部材(16)の切欠(163)の間に嵌り込んだ状態で、前記傾斜面(171)は、前記クランプ部材(16)を押しやりながら、前記口枠体(6b)の上辺を前記クランプ部材(16)の突部(162a)により係止される位置まで摺動案内していく」点。

(2)本件特許発明と引用発明2との対比
次に、本件特許発明と引用発明2と対比すると、引用発明2の「上蓋(24)」は、その機能、形状からみて、本件特許発明の「蓋体」に相当し、以下同様に、「支持溝(43)」は「載置部」に、「口枠(45)」は「口板」に、「上蓋(24)の吸気口」は「集塵室の前面に形成された吸込口」に、「弁(47)」は「シール部材」に、「支持板(37)」は、「クランプ部材」に相当し、「支持溝(50)」は「(口板側との)係止部」に、そして、「上縁」は「上辺」に、「当板凸部(48)」は「案内部材」に、それぞれ相当する。

したがって、引用発明2は、本件特許発明に倣って、次のように言い換えることができる。
「掃除機本体に蓋体により上部を開閉される集塵室を設けて、集塵室内に設けられた載置部に平板状の口板付き集塵袋の前記口板を収納することにより前記集塵室内に前記集塵袋を収納し、集塵室の前面に形成された吸込口周りに設けたシール部材と前記口板の前面とを当接させ、その状態をクランプ部材の係止部により前記口板の前面側から弾性保持させるようにした電気掃除機において、前記クランプ部材に、その口板側との係止部より延出して、その先端部から前記口板の後面側上辺と当接し、該口板側からの接触圧力によって従動させられながら前記口板の後面側上辺を前記係止部まで摺動案内する当接面を設けるとともに、前記蓋体の内面に、その蓋閉動作時に前記口板の前面側表面と当接し、この前面側表面を摺動させながら、前記口板を前記クランプ部材から離れた位置より該クランプ部材の当接面と当接可能な位置を経て該クランプ部材の係止部まで摺動案内可能な複数の片からなる当接部を有する案内部材を設けた電気掃除機。」

4.相違点についての検討及び判断
そこで、上記した本件特許発明と引用発明1との相違点1ないし3について検討する。
引用発明2には、クランプ部材に、その口板側との係止部より延出して、その先端部から口板の前面側上辺と当接し、該口板側からの接触圧力によって従動させられながら口板の前面側上辺を係止部まで摺動案内する当接面が示されており、引用発明1にこれを適用し、その斜面を「その先端部から前記口板の前面側上辺と当接し、該口板側からの接触圧力によって従動させられながら前記口板の前面側上辺を前記係止部まで摺動案内する」ものとし、本件特許発明の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
しかしながら、この場合、引用発明1における案内部材(170)の傾斜面(171)は、クランプ部材(16)の突出部(162)を口枠体(6b)の上に載せた状態での蓋閉時に、口枠体(6b)の裏面側上辺と当接し、この後面側上辺を摺動させながら、口枠体(6b)の上辺を該クランプ部材(16)の突部(162a)により係止される位置まで摺動案内するものであって、口枠体(6b)の前面側上辺がクランプ部材(16)から離れた位置にある状態において、口枠体(6b)の裏面側上辺と当接し、これを摺動させながら、クランプ部材(16)の突部(162a)と当接可能な位置を経て該クランプ部材の係止部まで摺動案内することを想定したものではない。
そして、引用発明2には、案内部材が、蓋閉時に口板を押しやりながらこの口板の後面側上縁をクランプ部材から離れた位置より該クランプ部材の当接面と当接可能な位置を経て該クランプ部材の係止部まで案内することが示されているが、引用発明2においては、案内部材が口板の前面側表面と当接するものであって、引用刊行物2の記載及び各図の図示内容を総合すると、クランプ部材の当接面と当接する口板の後面側上縁と、案内部材が当接する口板の前面側表面の位置は離隔しており、クランプ部材の当接面と案内部材が、口板の前面側上辺及び裏面側上辺と当接して、口板の上辺を摺動案内するものではない。
しかも、引用発明1及び引用発明2のいずれにも、蓋体の内面に案内部材に設けた当接部を複数の辺からなるものとし、蓋閉動作時に、前記口板の裏面側上辺が前記案内部材の当接部に、前記口板の前面側上辺が前記クランプ部材の当接面に、それぞれ当接し、前記案内部材の複数の片の間に前記クランプ部材の当接面が嵌まり込んだ状態で、前記案内部材の複数の片は、前記口板により前記クランプ部材を押しやりながら、前記口板の前面側上辺を前記クランプ部材の当接面の下端部まで摺動案内していくことは示されていない。
結局、本件特許発明の相違点2及び相違点3に係る構成は、引用発明1及び2のいずれにも示されておらず、本件特許発明は、それにより、他の構成とあいまって、口板がクランプ部材から完全に離れた位置に装填されたような場合であっても、案内部材の複数の辺からなる当接部が、口板の裏面側上辺と当接し、これを摺動させながら、口板の前面側上辺をクランプ部材の当接面に当接可能な位置まで案内し、これに連続して、クランプ部材の当接面と連携して、口板上辺の表裏を、案内部材の複数の片の間にクランプ部材の当接面が嵌まり込んだ状態で、口板によりクランプ部材を押しやりながら、口板の前面側上辺をクランプ部材の当接面の下端部まで摺動案内されることになるものである。
さらに、本件特許発明は、上記した案内部材の複数の辺からなる当接部とクランプ部材の当接面の連携により、訂正明細書の段落【0063】に記載された「蓋閉前に口板がクランプ部材から完全に離れた状態にあっても集塵袋が確実に装着される。このため、集塵袋の誤装着が発生せず、塵埃を集塵室内にこぼして、電動送風機で吸われて故障するような事故も発生することはなく、かつ使い勝手が向上する。また、案内部材にかかる負担が軽減され、蓋閉時の荷重による案内部材の変形や破壊が防止される。更に、口板においても応力集中がなくなって、その変形が防止される。」という作用効果が奏されるものである。
したがって、引用発明1及び2をいかに組み合わせたとしても、本件特許発明が、当業者が引用発明1と引用発明2に基いて容易に発明をすることができたものであるということはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2006-09-05 
出願番号 特願平9-233740
審決分類 P 1 652・ 121- Y (A47L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 栗山 卓也  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 稲村 正義
平上 悦司
登録日 2003-05-02 
登録番号 特許第3424154号(P3424154)
権利者 三菱電機株式会社 三菱電機ホーム機器株式会社
発明の名称 電気掃除機  
代理人 小林 久夫  
代理人 高梨 範夫  
代理人 小林 久夫  
代理人 安島 清  
代理人 安島 清  
代理人 佐々木 宗治  
代理人 大村 昇  
代理人 大村 昇  
代理人 佐々木 宗治  
代理人 高梨 範夫  

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