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審決分類 審判 判定 利用 属する(申立て成立) E04H
管理番号 1144805
判定請求番号 判定2005-60070  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 1986-04-03 
種別 判定 
判定請求日 2005-09-22 
確定日 2006-10-05 
事件の表示 上記当事者間の特許第1637690号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「屋根の組立方法」は、特許第1637690号発明の技術的範囲に属する。 
理由 1.請求の趣旨
本件判定請求の趣旨は、イ号図面及びその説明書に記載の「商品名(ライザーテラス・屋根/セイバーテラス・屋根)を施工する際の施工方法」(以下、「イ号方法」という。)が特許第1637690号発明(以下、「本件発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めたものである。

2.本件発明の手続の経緯
本件判定請求書の「6.請求の理由」の項にも示されているように、本件発明の出願経過等の概略を示すと、次のとおりである。
(1)出願 昭和59年 9月 5日
(2)出願公開 昭和61年 4月 3日
(3)出願公告 平成 3年 1月25日
(4)特許登録 平成 4年 1月31日

3.本件発明
本件発明は、願書に添付された明細書及び図面(以下、「特許明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その構成要件を分説すると、次のとおりである。

A:たる木掛け1と軒桁2との長手方向一端部間に亘つて一方の妻側たる木を連結した後に、
B:たる木掛け1と軒桁2とに沿つて透光板8をスライドして前記一方の妻側たる木に連結し、
C:その後にたる木掛け1と軒桁2とに沿つてたる木5をスライドして前記透光板8に連結し、
D:しかる後に透光板8とたる木5とを前述と同様にスライドして順次連結し、
E:最後に他方の妻側たる木を透光板8に連結するとともにたる木掛け1と軒桁2とに連結することを特徴とする
F:屋根の組立方法。

4.イ号方法
判定請求書に添付されたイ号図面およびイ号説明書および平成17年12月13日受付の答弁書に添付された訂正イ号説明書を参照すれば、イ号方法は次のとおりの構成からなるものと認められる。

a:垂木掛け1と、前枠2との長手方向一端部間に亘って一方の端部垂木4を連結した後、
b:透光性を有するパネル8の前端を前枠2の凹部20に差し込み、後端を垂木掛け1の凹部12に差し込み、パネル8を端部垂木4側にスライドして、パネル8の端部を端部垂木4の凹部30に差し込み、
c:垂木掛け1および前枠2間に仮置きしてあった中間垂木5をパネル8側に向かってスライドし、中間垂木5の凹部40にパネルを差し込み、
d:次のパネル8および中間垂木5を上述と同じ手順で取り付け、予め垂木掛け1と前枠2にスライド部品31,32を介して摺動自在に連結されていた他方の端部垂木3を外方にずらし、端部のパネル8を垂木掛け1と前枠2にスライドして挿入した後、
e1:垂木掛け1と前枠2にスライド部品31,32を介して摺動自在に連結されていた他方の端部垂木3を内方へ戻し、端部垂木3の凹部にパネル8を差し込み、
e2:次に垂木掛け1の凹部12に後付けビード16を挿入して垂木掛け1の凹部12にパネル8を連結し、一方の端部垂木4の凹部30および他方の端部垂木3の凹部に後付けビード36を挿入して一方の端部垂木4の凹部および他方の端部垂木3の凹部にパネル8を連結し、中間垂木5の凹部40に後付けビード46を挿入して中間垂木の凹部40にパネル8を連結する
f:屋根の組立方法。

5.対比・判断
本件発明とイ号方法を対比すると、イ号方法の「垂木掛け1」、「前枠2」、「一方の端部垂木4」、「中間垂木5」、「パネル8」、「他方の端部垂木3」は、本願発明の「たる木掛け1」、「軒桁2」、「一方の妻側たる木」、「たる木5」、「透光板8」、「他方の妻側たる木」にそれぞれ相当する。
そうすると、イ号方法が、本件発明の構成要件A及びFと文言上一致する構成を備えているいることが明らかであるから、イ号方法は、本件発明の構成要件A及びFを充足するといえる。
また、イ号方法のa、fが、本件発明の構成要件A、Fをそれぞれ充足することは、被請求人も平成17年12月13日受付の答弁書において認めていることから、両当事者間に争いはないといえる。
一方、イ号方法の構成b、c、d、eが、本件発明の構成要件B、C、D、Eを充足するか否かについて、両当事者間に争いがある。
そこで、上記の争いがある点につき、以下検討する。

ところで、本件発明においる「連結する」としている用語を、どのような意味で用いているのか、特許請求の範囲に記載された事項からは必ずしも明確ではない。
そこで、特許明細書の記載を参照すると、次の記載がある。
(ア)特許明細書には、「まず、第1図aに示すように、たる木掛け1と右妻側たる木3と軒桁2とを強固に連結すると共に、たる木掛け1と軒桁2とに左妻側たる木4を仮止め連結し、竪枠9、横枠10、方杖11をそれぞれ連結する。」(特公平3-5461号公報第2頁左欄31〜35行)との記載がある。
(イ)特許明細書には、「第1図bに示すように、たる木掛け1の凹部12と軒桁2の凹部20とに亘つて透光板8を、その弾力を利用して彎曲させて掛け渡し、矢印方向にスライドして右縁部を右妻側たる木4の凹部30に嵌合する。」(同公報2頁左欄36行〜右欄2行)との記載がある。
(ウ)特許明細書には、「第1図cに示すように、たる木掛け1と軒桁2とに亘つてたる木5を掛け渡し、矢印方向にスライドしてたる木5の右側凹部30を透光板8の左縁部に嵌合し、たる木5をたる木掛け1と軒桁2とに固着する。」(同公報2頁右欄3〜7行)との記載がある。
(エ)特許明細書には、「以下同様に透光板8とたる木5とを順次取付け、最後の透光板8を取付ける時には左妻側たる木3を外して透光板8を取付け、その後に左妻側たる木3を取付けてたる木掛け1と軒桁2とに連結する。」(同公報2頁右欄8〜12行)との記載がある。
すなわち、「連結する」という用語に関して、上記(ア)の記載によれば、たる木掛け1と右妻側たる木3と軒桁2との関係のように「強固に連結する」、あるいは、たる木掛け1と軒桁2と左妻側たる木4との関係のように「仮止め連結する」、上記(イ)の記載によれば、透光板8と右妻側たる木4との関係のように部材をスライドさせて「嵌合する」、(ウ)の記載によれば、たる木5と透光板8との関係のように「嵌合する」、たる木5とたる木掛け1および軒桁2との関係のように「固着する」といった記載があることから、本件発明における「連結する」は、「ある部材と他の部材とを、互いに強固に連ねて結び付けた状態」、「ある部材と他の部材とを、仮止めと称されるように簡単に取り外しができる程度に一応に係止している状態」、および「ある部材と他の部材とを、スライドを許容する程度には嵌めた状態」のいづれの状態を表す場合にも共通して使用されている用語であると解することができる。

(1)イ号方法の構成bが本件発明の構成要件Bを充足するか否かについて
この点に関して、判定被請求人が、イ号方法の構成bが充足しないとする根拠は、平成17年12月13日受付の答弁書の「(4)の(ii)」によれば、「この段階では、イ号方法はパネル8を端部垂木4の凹部に差し込む(後付けビード36を用いた連結はなされていない)のに対して、本件発明では、透光板8を妻側たる木4の凹部に連結する点で相違している」というものであり(注:下線部は当審が付記した)、その余の部分については両当事者の間に争いはないものと認められる。
ところで、本件発明の構成要件Bにおける「連結し」は、上記(イ)の記載を参酌すれば、透光板8を一方の妻側たる木にスライドさせて嵌合する(すなわち、透光板8がスライドをすることを許容される程度に一方の妻側たる木にはまっている)状態を意味していると解するのが相当であり、イ号方法における「パネル8を端部垂木4の凹部に差し込む」としている構成と、本願発明における「透光板8を妻側たる木4の凹部に連結する」とは、文言上異なっているものの、その意味するところにおいて実質的な技術上の差異はない。
したがって、イ号方法の構成bは、本件発明の構成要件Bを充足するものといえる。

(2)イ号方法の構成cが本件発明の構成要件Cを充足するか否かについて
この点に関しても、判定被請求人が充足しないとする根拠は、平成17年12月13日受付の答弁書の「(4)の(iii)」によれば、「この段階では、イ号方法はパネル8を中間垂木5の凹部40に差し込むのに対して、本件発明では、透光板8をたる木5の凹部に連結する点で相違している」というものであり(注:下線部は当審が付記した)、その余の部分については両当事者の間に争いはないものと認められる。
そして、上記(1)で説示したのと同様に、本件発明の構成要件Cにおける「連結し」は、上記(ウ)を参酌すれば、イ号方法における「差し込む」とその意味するところにおいて実質的な技術上の差異はない。
したがって、イ号方法の構成cは、本件発明の構成要件Cを充足するものといえる。

(3)イ号方法の構成dが本件発明の構成要件Dを充足するか否かについて
イ号方法では、イ号図面の図9および図10に示されているように、次のパネル8および中間垂木5をイ号方法の構成b、同構成cと同じ手順で取り付けるとともに、さらに図14によれば、端部のパネル8も垂木掛け1と前枠2の各凹部に挿入後スライドして中間垂木5の凹部に挿入している。
これによれば、イ号方法の構成dは、次のパネル8と中間垂木5と端部のパネル8をイ号方法の構成b、同構成cと同じ手順で順次取り付けた構成であるといえる。
そうすると、上記(1)、(2)で検討したとおり、イ号方法の構成b、cが、それぞれ本件発明の構成要件B、Cを充足するといえるのと同様に、本件発明の構成要件Dにおける「連結し」についても、イ号方法における「取り付け」とその意味するところにおいて実質的な技術上の差異はないということができる。したがって、イ号方法の構成dは、本件発明の「しかる後に透光板8とたる木5とを前述と同様にスライドして順次連結し、」としている構成要件Dを実質的に充足するものといえる。

(4)イ号方法の構成e1およびe2が本件発明の構成要件Eを充足するか否かについて
本件発明の構成要件Eは、「最後に他方の妻側たる木を透光板8に連結するとともにたる木掛け1と軒桁2とに連結する」というものである。
ここでの「連結する」という意味は、上記(エ)の記載を参酌すれば、最終的に他方の妻側たる木を透光板8とたる木掛け1と軒桁2とに強固に連結することと解するのが相当である。
他方、イ号方法における「e1:垂木掛け1と前枠2にスライド部品31,32を介して摺動自在に連結されていた他方の端部垂木3を内方へ戻し、端部垂木3の凹部にパネル8を差し込み、e2:次に垂木掛け1の凹部12に後付けビード16を挿入して垂木掛け1の凹部12にパネル8を連結し、一方の端部垂木4の凹部30および他方の端部垂木3の凹部に後付けビード36を挿入して一方の端部垂木4の凹部および他方の端部垂木3の凹部にパネル8を連結し、中間垂木5の凹部40に後付けビード46を挿入して中間垂木の凹部40にパネル8を連結する」としている点においても、最終的には、端部垂木3が端部のパネル8と垂木掛け1と前枠2と強固に連結される状態となっていると解することができる。
したがって、イ号方法の構成e1およびe2は、本件発明の構成要件Eを充足しているといえる。
ところで、被請求人は、平成17年12月13日受付の答弁書の「(4)の(v)」によれば、「イ号物件では図14,15に示すように、予め垂木掛け1と前枠2にスライド部品31,32を介して摺動自在に連結されている他方の端部垂木3を外方へずらし、端部のパネル8を垂木掛け1と前枠2にスライド挿入した後、垂木掛け1と前枠2にスライド部品31,32を介して摺動自在に連結されていた他方の端部垂木3を内方に戻し、端部垂木3の凹部にパネル8を差し込むようにしている点で本件発明とは構成が異なる」としている点を挙げ、イ号方法の構成dには「予め垂木掛け1と前枠2にスライド部品31,32を介して摺動自在に連結されていた他方の端部垂木3を外方にずらし、」といった構成がさらに含まれているから、イ号方法と本件発明とは構成が異なる旨主張しているが、当該構成を備えるか否かにより上記充足するとした点が左右されるものではない。

6.むすび
以上のとおりであるから、イ号方法は、本件発明の技術的範囲に属するものである。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2006-09-25 
出願番号 特願昭59-184520
審決分類 P 1 2・ 2- YA (E04H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山田 忠夫  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 宮川 哲伸
柴田 和雄
登録日 1992-01-31 
登録番号 特許第1637690号(P1637690)
発明の名称 屋根の組立方法  
代理人 木下 実三  
代理人 石崎 剛  
代理人 中山 寛二  

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