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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1145604
審判番号 不服2003-22729  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-21 
確定日 2006-10-18 
事件の表示 平成 7年特許願第516572号「多点側面照明式光ファイバー」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 6月22日国際公開、WO95/16877、平成 9年 6月30日国内公表、特表平 9-506716〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
平成 6年12月16日 国際出願
(優先権主張1993年12月17日 フランス国)
平成12年12月21日 手続補正(1)
平成14年 4月19日 拒絶理由通知
平成14年10月30日 手続補正(2)
平成14年12月11日 最後の拒絶理由通知
平成15年 6月23日 手続補正(3)
平成15年 8月13日 手続補正(3)の補正却下
平成15年 8月13日 拒絶査定
平成15年11月21日 審判請求
平成15年11月21日 手続補正(4)
平成15年12月22日 手続補正(5)
平成16年 1月30日 上申書

第2.補正の却下の決定(1)
[補正の却下の決定の結論]
平成15年12月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の発明
平成15年12月22日付けの手続補正(上記手続補正(5)、以下「本件補正1」という)は特許請求の範囲を以下の(1)から(2)に補正することを含むものである。

(1)本件補正1前の特許請求の範囲
【請求項1】光ファイバーの一方の入口端部に配置された光源から、他方の末端端部まで光束を伝達するためのファイバーで、前記ファイバーがほぼ円筒形をしたファイバーであり、外側表面の少なくとも一定区域(2)に、ファイバーの直径に比べて非常に小さい寸法の互いに接近した多数の傷群を有し、前記傷がそれぞれファイバー内を伝達された光のほぼ点状の射出を起こさせる構成からなる光ファイバーにおいて、
前記傷群(4)が多少細長い噴火口形状であり、各傷がファイバー内を伝達された光をほぼ均一に発光させ、傷群の表面密度D(x)が、光束の伝播方向に応じて変化し、一つの点iで、この点の密度Diが、この点での光束Φiと反比例するような増加の法則によって、Di=K*1/Φiであり、射出する光束が、前記区域の長さについてほぼ一定であることを特徴とする光ファイバー。

(2)本件補正1後の特許請求の範囲
【請求項1】光ファイバーの一方の入口端部に配置された光源から、他方の末端端部まで光束を伝達するためのファイバーで、前記ファイバーがほぼ円筒形をしたファイバーであり、
ファイバー内を伝達された光を点状に射出させる一定区域(2)のファイバーの外側表面に、ファイバー内を伝達された光束がそこを通って放射される非常に小さな互いに接近した多数の傷群を有し、傷の表面密度D(x)が光束の伝播方向に応じて変化する光ファイバーにおいて、
前記傷群(4)がファイバー内を伝達された光をほぼ均一に発光させ、傷の表面密度D(x)が光束の伝播方向に応じて変化し、一つの点iで、この点の密度Diが、この点での光束Φiと反比例するような増加の法則によって、Di=K*1/Φiであり、射出する光束が、前記区域の長さについてほぼ一定であり、
前記傷群をサンドブラスト方式で形成することを特徴とする光ファイバー。
【請求項2】光ファイバーの一方の入口端部に配置された光源から、他方の末端端部まで光束を伝達するためのファイバーで、前記ファイバーがほぼ円筒形をしたファイバーであり、
ファイバー内を伝達された光を点状に射出させる一定区域(2)のファイバーの外側表面に、ファイバー内を伝達された光束がそこを通って放射される非常に小さな互いに接近した多数の傷群を有し、傷の表面密度D(x)が光束の伝播方向に応じて変化する光ファイバーにおいて、
前記傷群(4)がファイバー内を伝達された光をほぼ均一に発光させ、傷の表面密度D(x)が光束の伝播方向に応じて変化し、一つの点iで、この点の密度Diが、この点での光束Φiと反比例するような増加の法則によって、Di=K*1/Φiであり、射出する光束が、前記区域の長さについてほぼ一定であり、
一定速度で走行する光ファイバーに向けて、その光ファイバーとの距離を変更可能なノズル(22)によるサンドブラスト方式で傷群を形成することを特徴とする光ファイバー。
【請求項3】光ファイバーの一方の入口端部に配置された光源から、他方の末端端部まで光束を伝達するためのファイバーで、前記ファイバーがほぼ円筒形をしたファイバーであり、
ファイバー内を伝達された光を点状に射出させる一定区域(2)のファイバーの外側表面に、ファイバー内を伝達された光束がそこを通って放射される非常に小さな互いに接近した多数の傷群を有し、傷の表面密度D(x)が光束の伝播方向に応じて変化する光ファイバーにおいて、
前記傷群(4)がファイバー内を伝達された光をほぼ均一に発光させ、傷の表面密度D(x)が光束の伝播方向に応じて変化し、一つの点iで、この点の密度Diが、この点での光束Φiと反比例するような増加の法則によって、Di=K*1/Φiであり、射出する光束が、前記区域の長さについてほぼ一定であり、
光ファイバーとの距離が一定であるノズル(32)を設けて、前記光ファイバーの速度を変更可能にするサンドブラスト方式で傷群を形成することを特徴とする光ファイバー。
【請求項4】光ファイバーの一方の入口端部に配置された光源から、他方の末端端部まで光束を伝達するためのファイバーで、前記ファイバーがほぼ円筒形をしたファイバーであり、
ファイバー内を伝達された光を点状に射出させる一定区域(2)のファイバーの外側表面に、ファイバー内を伝達された光束がそこを通って放射される非常に小さな互いに接近した多数の傷群を有し、傷の表面密度D(x)が光束の伝播方向に応じて変化する光ファイバーにおいて、
前記傷群(4)がファイバー内を伝達された光をほぼ均一に発光させ、傷の表面密度D(x)が光束の伝播方向に応じて変化し、一つの点iで、この点の密度Diが、この点での光束Φiと反比例するような増加の法則によって、Di=K*1/Φiであり、射出する光束が、前記区域の長さについてほぼ一定であり、
光ファイバーは光源(7)によって一定の光束の出力が維持され、光センサー(44)はサンドブラストが行われる光ファイバーの区域に対向して配置され、前記光センサー(44)によって感知された光が予め決められた強度に達したとき、前記ファイバーの走行を制御することを特徴とする光ファイバー。
【請求項5】光ファイバーの一方の入口端部に配置された光源から、他方の末端端部まで光束を伝達するためのファイバーで、前記ファイバーがほぼ円筒形をしたファイバーであり、
ファイバー内を伝達された光を点状に射出させる一定区域(2)のファイバーの外側表面に、ファイバー内を伝達された光束がそこを通って放射される非常に小さな互いに接近した多数の傷群を有し、傷の表面密度D(x)が光束の伝播方向に応じて変化する光ファイバーにおいて、
前記傷群(4)がファイバー内を伝達された光をほぼ均一に発光させ、傷の表面密度D(x)が光束の伝播方向に応じて変化し、一つの点iで、この点の密度Diが、この点での光束Φiと反比例するような増加の法則によって、Di=K*1/Φiであり、射出する光束が、前記区域の長さについてほぼ一定であり、
前記傷群が、エアロゾル状の溶媒の侵食によって得られることを特徴とする光ファイバー。
【請求項6】近接して配置されたり、接続されたり、ねじられたり、編まれたり又は織られたりした複数のファイバーに適用されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光ファイバー。

2.判断
本件補正1は、特許請求の範囲の請求項の数を1から6に増やす補正であり、しかも、当該請求項の数の増加は、例えば、構成要件が択一的なものとして記載された一つの請求項についてその択一的な構成要件をそれぞれ限定して複数の請求項とする場合のように、補正前の請求項が実質的に複数の請求項を含んでいたものをただ単に複数の独立請求項に書き改めただけの形式的なものでもない。
そうしてみれば、本件補正1は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれをも目的とするものではない。

3.補正の却下の決定の結び
本件補正1は、特許法第17条の2第3項の規定に適合しないので、同補正は特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.補正の却下の決定(2)
[補正の却下の決定の結論]
平成15年11月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の発明
平成15年11月21日付の手続補正(上記手続補正(4)、以下「本件補正2」という)により特許請求の範囲は下記のとおり補正された。



【請求項1】光ファイバーの一方の入口端部に配置された光源から、他方の末端端部まで光束を伝達するためのファイバーで、前記ファイバーがほぼ円筒形をしたファイバーであり、外側表面の少なくとも一定区域(2)に、ファイバーの直径に比べて非常に小さい寸法の互いに接近した多数の傷群を有し、前記傷がそれぞれファイバー内を伝達された光のほぼ点状の射出を起こさせる構成からなる光ファイバーにおいて、
前記傷群(4)が多少細長い噴火口形状であり、各傷がファイバー内を伝達された光をほぼ均一に発光させ、傷群の表面密度D(x)が、光束の伝播方向に応じて変化し、一つの点iで、この点の密度Diが、この点での光束Φiと反比例するような増加の法則によって、Di=K*1/Φiであり、射出する光束が、前記区域の長さについてほぼ一定であることを特徴とする光ファイバー。

上記補正は特許法第17条の2第3項の規定に適合するので、本件補正2後の請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例の記載等
原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先権主張日前に頒布された特公昭61-24685号公報(以下「引用例」という)には各図とともに以下の事項が記載されている。
なお、数式をテキスト表記するに際しては、分母及び分子が混乱しないように「( )」を補って表記した。

(1)「光源に一端が結合された光フアイバのクラツド層に、その表面から光フアイバコアにまで達する傷を形成し、この傷から光を漏洩させることにより光フアイバの線径方向に光電力を照射するようにしたものにおいて、傷の密度をn、光フアイバの延長方向の位置をr、光フアイバの照光開始位置をr0、定数をCとした時
n=1/(Ce-(r-r0))で表わされる密度で光フアイバの各位置に傷を形成することを特徴とする光フアイバ照光装置。」(特許請求の範囲第1項)

(2)「この発明は光フアイバ照光装置の改良に関するものである。」(第1頁左欄第19ないし20行)

(3)「第3図において、1は光源、2は光フアイバで、周知の通り、中心部を構成するコア(図示せず)と、その表面を覆うクラツド層(図示せず)とから構成されている。4は光フアイバのクラツド層に形成された傷で、それぞれの深部は光フアイバ中心部のコアにまで達している。5は上記傷から外部に照射される光、6は光フアイバの他端から照射される光である。」(第1頁右欄第19ないし26行)

(4)「即ち光フアイバの一端から注入された光電力は他端に向うに従つておおむね上記の如き式に従つて低下するため光フアイバの表面に形成する傷の密度を光電力の減衰傾向の逆、即ち1/(Ce-r)に比例して光フアイバの他端に向つて増大させるものである。なお前記分数の分子は数字の「1」であつてアルフアベツトの「l」ではない。
第4図は光フアイバの照射開始位置r0からLの長さにわたつて傷の密度の変化状態を示している。
このような構成とすることにより光電力の低下を傷の密度増で補なうことが出来るため傷を介して照射される漏洩光電力は光フアイバのいずれの位置においてもほぼ一定となり全長にわたつて同一の明るさとすることが可能である。
ただし定数Cは第3図においてB端からの残光6が零となるように決定する必要がある。
なお、上記の説明では光源の種類、光フアイバの材料、光フアイバの構造については特に触れなかつたが、光源としては太陽光線、レーザ光線、半導体発光源、フイラメント方式による電球光源など、いずれでもよく、光フアイバの材料はガラスフアイバ、樹脂フアイバのいずれにも適用可能、光フアイバの構造についても、ステツプインデツクス型、グレーデツドインデツクス型などいずれでもよい。
また、傷の形状についても特に限定されるものではなく、リング状の傷、スパイラル状の傷、ピンホール状の傷、その他適宜の形状の傷などいずれでもよい。
この発明は以上のように構成され、一端が光源に結合される光フアイバのクラツド層に、その表面からコアにまで達する傷を形成し、かつその傷の密度を光フアイバの延長方向に対して不均一としたため光源から注入された光を光フアイバの延長方向に対して線状に一定の明るさで照射することが出来るものである。」(第2頁左欄第22行ないし右欄第25行)

(5)第3図及びその説明から、以下の点が見てとれる。
ア.光ファイバ2のAと表記された一端に光源1が配置され、Bと表記された他端まで光電力が伝達されている点。
イ.光ファイバ2がほぼ円筒形をしている点。
ウ.光ファイバ2のLと表記された一定区域に、光ファイバ2の直径に比べて非常に小さい寸法の互いに接近した多数の傷がある点。

したがって、引用例には以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という)。

「光ファイバ2の一端Aに配置された光源1から、他端Bまで光電力を伝達するための光ファイバ2で、前記光ファイバ2がほぼ円筒形をした光ファイバ2であり、クラッド層の表面の一定区域Lに、光ファイバ2の直径に比べて非常に小さい寸法の互いに接近した多数の傷を有し、前記傷がそれぞれ光ファイバ2の一端Aから注入され他端Bに向かう光電力を漏洩させる構成からなる光ファイバ2において、
前記傷の形状はリング状の傷、スパイラル状の傷、ピンホール状の傷、その他適宜の形状の傷であり、各傷を介して照射される漏洩光電力は光ファイバ2のいずれの位置においてもほぼ一定となり全長にわたって同一の明るさで、傷の密度を、光ファイバ2の一端Aから注入され他端Bに向かうにしたがって低下する光電力の減衰傾向の逆に比例して光ファイバ2の他端Bに向かって増大させ、各傷を介して照射される漏洩光電力は光ファイバ2のいずれの位置においてもほぼ一定となり全長にわたって同一の明るさである光ファイバ2。」

3.対比
補正発明と引用発明を比較すると以下のとおりである。
(1)引用発明の「一端A」「光源1」「他端B」「光電力」「クラッド層の表面」「一定区域L」及び「密度」は、それぞれ、本願発明の「一方の入口端部」「光源」「他方の末端端部」「光束」「外側表面」「一定区域(2)」及び「表面密度D(x)」に相当する。
(2)補正発明の「光ファイバー」及び「ファイバー」は、ともに、引用発明の「光ファイバ2」の全体またはファイバーとしての一部に相当する。同様に補正発明の「傷」及び「傷群」は、ともに、引用発明の「傷」の個々または集合に相当する。
(3)引用発明の傷は「前記傷がそれぞれ光ファイバ2の一端Aから注入され他端Bに向かう光電力を漏洩させる」構成であり、また、引用例の第3図から見て傷は点状であるから、引用発明は、補正発明の「前記傷がそれぞれファイバー内を伝達された光のほぼ点状の射出を起こさせる」に相当する構成を有する。
(4)引用発明は「各傷を介して照射される漏洩光電力は光ファイバ2のいずれの位置においてもほぼ一定となり全長にわたって同一の明るさで」という構成を有するから、引用発明は、補正発明の「各傷がファイバー内を伝達された光をほぼ均一に発光させ」に相当する構成、及び、「射出する光束が、前記区域の長さについてほぼ一定である」に相当する構成を有する。
(5)引用発明は「傷の密度を、光ファイバ2の一端Aから注入され他端Bに向かうにしたがって低下する光電力の減衰傾向の逆に比例して光ファイバ2の他端Bに向かって増大させ」という構成を有するから、引用発明は、補正発明の「傷群の表面密度D(x)が、光束の伝播方向に応じて変化し」に相当する構成を有する。

したがって、補正発明と引用発明は、
「光ファイバーの一方の入口端部に配置された光源から、他方の末端端部まで光束を伝達するためのファイバーで、前記ファイバーがほぼ円筒形をしたファイバーであり、外側表面の少なくとも一定区域(2)に、ファイバーの直径に比べて非常に小さい寸法の互いに接近した多数の傷群を有し、前記傷がそれぞれファイバー内を伝達された光のほぼ点状の射出を起こさせる構成からなる光ファイバーにおいて、
各傷がファイバー内を伝達された光をほぼ均一に発光させ、傷群の表面密度D(x)が、光束の伝播方向に応じて変化し、射出する光束が、前記区域の長さについてほぼ一定である光ファイバー。」の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
補正発明は「前記傷群(4)が多少細長い噴火口形状であり」という構成を有するのに対し、引用発明は「多少細長い噴火口形状」と特定された構成を有さない点。

(相違点2)
補正発明は「一つの点iで、この点の密度Diが、この点での光束Φiと反比例するような増加の法則によって、Di=K*1/Φiであり」という構成を有するのに対して、引用発明は「Di=K*1/Φi」という式で特定される構成を有さない点。

4.判断
(1)相違点1について
補正発明で「多少細長い噴火口形状」と表現されているものは、本願明細書及び図面の記載からみて、砂吹きによって得られる傷の形状を包含するものであるところ、引用発明は「傷の形状はリング状の傷、スパイラル状の傷、ピンホール状の傷、その他適宜の形状の傷」というものであるから、引用発明においてファイバーに傷を付けるに際し、当業者において周知である砂吹きによって行い、「多少細長い噴火口形状」の傷とすることは、当業者ならば適宜選択しうる事項に過ぎない。
なお、砂吹き(サンドブラスト)については、例えば、特開平5-151806号公報、特開平4-143705号公報、特開昭63-124004号公報に記載されている。

(2)相違点2について
引用発明は「傷の密度を、光ファイバ2の一端Aから注入され他端Bに向かうにしたがって低下する光電力の減衰傾向の逆に比例して光ファイバ2の他端Bに向かって増大させ」る構成を有し、その結果、「各傷を介して照射される漏洩光電力は光ファイバ2のいずれの位置においてもほぼ一定となり全長にわたって同一の明るさである」から、引用発明は、光ファイバーの各所で、光電力の逆数と傷の密度とが比例するように意図して傷の密度が設定されていることが理解できる。光電力の逆数と傷の密度とが比例すると言うことは、定数をKとしたときに、光ファイバーの各所で
傷の密度=K×(1/光電力)
の関係を満たすと言えるから、引用発明において「一つの点iで、この点の密度Diが、この点での光束Φiと反比例するような増加の法則によって、Di=K*1/Φiであり」という構成となるように傷の密度を設定することは、当業者ならば容易にできることである。

また、このようにしてなる効果は、引用例及び周知技術から予測できる範囲内のものである。
したがって、補正発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.補正の却下の決定の結び
本件補正は、特許法等の一部を改正する法律(平成15年法第律47号)附則第2条第7項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法第1条の規定による改正前の特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第4.本願発明
1.本願発明
平成15年12月22日付けの手続補正は上記「第2.補正の却下の決定(1)」のとおり却下され、平成15年11月21日付けの手続補正は上記「第3.補正の却下の決定(2)」のとおり却下され、また、平成15年6月23日付けの手続補正(上記手続補正(3))は平成15年8月13日付けの補正却下の決定により却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成14年10月30日付け手続補正書(上記手続補正(2))により全文補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は下記のものである(以下「本願発明」という)。



光ファイバー、すなわちその端部の一方のいわゆる入口端部に配置された光源から、他方のいわゆる末端端部まで光束を伝達するためのファイバーで、前記ファイバーがほぼ円筒形の形状であって、外側表面の少なくとも区域(2)に、ファイバー内を伝達された光束がそこを通って放射される非常に小さな互いに接近した多数の傷を有し、傷の表面密度D(x)が光束の伝播方向に応じて変化する光ファイバーにおいて、
前記傷(4)が多少細長いクレータ状であり、各傷が、ファイバー内を伝達された光をほぼ均一に発光させ、傷の表面密度D(x)が光束の伝播方向に応じて変化し、また、一つの点iで、この点の密度Diが、この点での光束Φiに反比例、すなわちDi=K.1/Φiの式に従う増加法則に従うことを特徴とする光ファイバー。

2.引用例の記載等
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記「第3.補正の却下の決定(2)」の「2.引用例の記載等」に記載したとおりである。

3.対比及び判断
本願発明は、「第3.補正の却下の決定(2)」で検討した補正発明から、以下の点を省いたものと実質的に同一である。
(1)傷が「ファイバーの直径に比べて非常に小さい寸法」である点。
(2)光の射出が「ほぼ点状」である点。
(3)射出する光束が「前記区域の長さについてほぼ一定である」点。
なお、傷の形状に関し、補正発明は「噴火口形状」とし、本願発明は「クレータ状」とし、一見すると両者は異なっているが、本願明細書及び図面の記載を参酌すると、両者はともに砂吹きによって得られるような傷の形状を意味しているものであるから、「噴火口形状」と「クレータ状」とは単なる表現上の差異に過ぎず、両者は実質的に同一である。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する補正発明が、「第3.補正の却下の決定(2)」に記載したとおり引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。

第5.平成15年12月22日付け手続補正書についての付記
請求人は平成16年1月30日付けで上申書を提出しており、その趣旨は平成15年12月22日付け手続補正書(上記手続補正(5))により補正された特許請求の範囲について特許性の判断を求めるものである。
平成15年12月22日付手続補正書は補正却下されるべきものであるから、検討する要のないものであるが、念のために検討すると、以下のとおりである。

1.補正書の発明
本願の請求項に係る発明は、平成14年10月30日付け手続補正書及び平成15年12月22日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は下記のものである(以下「補正書発明」という)。



【請求項1】光ファイバーの一方の入口端部に配置された光源から、他方の末端端部まで光束を伝達するためのファイバーで、前記ファイバーがほぼ円筒形をしたファイバーであり、
ファイバー内を伝達された光を点状に射出させる一定区域(2)のファイバーの外側表面に、ファイバー内を伝達された光束がそこを通って放射される非常に小さな互いに接近した多数の傷群を有し、傷の表面密度D(x)が光束の伝播方向に応じて変化する光ファイバーにおいて、
前記傷群(4)がファイバー内を伝達された光をほぼ均一に発光させ、傷の表面密度D(x)が光束の伝播方向に応じて変化し、一つの点iで、この点の密度Diが、この点での光束Φiと反比例するような増加の法則によって、Di=K*1/Φiであり、射出する光束が、前記区域の長さについてほぼ一定であり、
前記傷群をサンドブラスト方式で形成することを特徴とする光ファイバー。

2.引用例の記載等
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記「第3.補正の却下の決定(2)」の「2.引用例の記載等」に記載したとおりである。

3.対比及び判断
補正書発明は、「第3.補正の却下の決定(2)」で検討した補正発明から以下(1)及び(2)の点を省き、(3)の限定を付加したものと実質的に同一である。
(1)傷が「ファイバーの直径に比べて非常に小さい寸法」である点。
(2)傷の形状が「多少細長い噴火口形状」である点。
(3)「傷群をサンドブラスト方式で形成する」点。
ここで、「傷群をサンドブラスト方式で形成する」点については、「第3.補正の結果の決定(2)」の「4.判断」の「(1)相違点1について」において既に検討したとおり、引用発明においてファイバーに傷を付けるに際し、当業者ならば適宜選択しうる事項に過ぎないものである。
そうしてみれば、補正書発明は、「第3.補正の却下の決定(2)」に記載したものと同様の理由により、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
 
審理終結日 2006-03-31 
結審通知日 2006-04-04 
審決日 2006-06-06 
出願番号 特願平7-516572
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 英一  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 樋口 信宏
吉田 禎治
発明の名称 多点側面照明式光ファイバー  
代理人 岡田 英彦  
代理人 岡田 英彦  

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