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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A01M
審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A01M
管理番号 1145814
審判番号 不服2002-4669  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-10-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-03-18 
確定日 2006-10-30 
事件の表示 平成 6年特許願第 73120号「飛行昆虫捕獲器」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年10月24日出願公開、特開平 7-274793〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成6年4月12日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれを、「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、平成13年10月23日付け及び平成17年1月31日付け手続補正書により補正された明細書(以下、「補正明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 上面に開口した開口部を有するハウジング部(11、17、22)を備え、垂直かつ平面の表面(20)の上に取り付ける取り付け手段(10)を有し、昆虫誘引のための誘引光源(16)を前記ハウジング内部に設け、さらに昆虫を不動状態にするために前記ハウジング部の底面に設けられる接着面(12)とを備えた飛行昆虫捕獲器において、
前記ハウジング部は、前記取り付け手段により前記垂直かつ平面の表面(20)に設けたときに、前記誘引光源(16)を直接的に見ることができず、
かつ前記ハウジング部は水平な平面に対して80度以下の角度で傾斜した面部(21)を有し、前記面部において前記誘引光源からの光を前記垂直かつ平面の表面(20)に反射させることを特徴とする飛行昆虫捕獲器。
【請求項2】 垂直の取付面(20)に昆虫誘引のための誘引光源を形成する飛行昆虫捕獲器であって、
(a)前記飛行昆虫捕獲器を前記垂直の取付面(20)上に据え付けるための手段(10)と、
(b)昆虫誘引光源(16)と、
(c)前記昆虫誘引光源(16)を収納するハウジング部(11、17、22)であって、
(1)前記昆虫誘引光源からの反射光と散乱光とが前記垂直の取付面(20)に対して指向されて、広く散乱する光パターンを形成するように水平面に対して角度が80度以下の角度で傾斜して位置された内側の反射面(21)と、昆虫を不動状態にするために前記ハウジング部の底面に設けられる粘着表面部(12)と、昆虫を内部に導入するために上方に向う上方開口部と、前記上方開口部の縁部より下方に位置される前記昆虫誘引光源とを備えることを特徴とする飛行昆虫捕獲器。」

2.当審における拒絶理由
当審における平成16年10月27日付けの拒絶理由は、本願の請求項1及び2に係る発明は、本件出願前に頒布された刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、また、本件出願は、明細書及び図面に記載の事項が不備のため、特許法第36条第4、5項に規定する要件を満たしていないとするものである。

3.特許法第29条第2項について
3-1.引用刊行物
当審の拒絶の理由に引用され、本件出願前に頒布された下記の刊行物1ないし5には、それぞれ以下の事項が記載されている。

[刊行物]
刊行物1:仏国特許出願公開第2609527号明細書
刊行物2:特開平6-7067号公報
刊行物3:国際公開第92/20224号パンフレット
刊行物4:実願平4-58538号(実開平6-17485号)の
CD-ROM
刊行物5:特開昭64-55137号公報

[刊行物に記載された事項]
刊行物1:仏国特許出願公開第2609527号明細書
(1-a)「(57)本発明はハロゲン ランプから出る光を反射し、反射した光の色を変化させ、ランプ及びその反射装置を冷却し、昆虫類を殺して排出し、香水を蒸発させることができる装置に関するものである。この装置は、既存のランプシェードに取り付けて使用することができる。」(書誌的事項が記載された頁下欄)
(1-b)「本発明はハロゲン タングステン ランプから出た光を反射させるための装置に関するものである。」(1頁1、2行)
(1-c)「この装置には・・・平打ちアルミニウム製の反射装置本体、ランプを冷却し、死んだ昆虫類を排出するための換気用仕切り板、ハロゲン タングステン ランプ(250°)により放散される熱の伝達を遮るこれらの組立品一式の支持部、・・・反射装置の支持部が備えられている。」(1頁10〜16行)
(1-d)「ハロゲン ランプの上で羽が燃えてしまった昆虫類は、換気用仕切り板によって反射装置支持部の中へ落ちるが、この低温部では昆虫類が燃えることはないので、もはや悪臭を放つことはない。」(1頁26〜29行)
(1-e)「金属製の反射装置の支持部には、調節可能なクリップ(はさみ)が付いており、これによって支持部をランプシェードの骨組みへ固定できる。」(2頁1、2行)
(1-f)「反射装置の中の反射板はランプの両側に配置されており、金色または赤銅色に陽極処理された取り外し可能な反射板によって、光は好みに応じて色付けされる。」(1頁30〜32行)
(1-g)「ハロゲン タングステン ランプから来る光の反射装置は、以下を備えていることを特徴とする。
1/・・・反射装置(A)。
中略
6/ランプシェードの骨組みに固定するためのクリップ(L)(K)の付いた反射装置の支持部(J)。」(3頁1〜12行)
(1-h)「図1ハロゲン ランプの反射装置
A.反射装置本体・・・D.ハロゲン タングステン ランプ」(図1に付された記号の説明)
(1-i)「図2反射装置支持部・・・
A.多面体の反射装置・・・J.支持部本体・・・K.ランプシェードの骨組みへ取り付けるためのクリップの付いた方向可変式の固定アーム L.ランプシェードの骨組みへ取り付けるためのクリップの付いた伸縮式の固定アーム・・・X.ランプシェードの骨組み」(図2に付された記号の説明)
(1-j)「反射装置(A)は、上方が開口した箱形をしており、ハロゲン タングステン ランプ(D)の両側に配置された反射板は、前記ランプ(D)からの光が上方に向かって反射するように傾斜して位置されている」点。(図1、図2)
(1-k)「ハロゲン タングステン ランプ(D)は、反射装置(A)の上方開口部の縁部より下方に位置される」点。(図1、図2)
(1-l)「上方が開口し箱形をした反射装置支持部本体(J)は、反射装置(A)を収納して支持している」点。(図2)
(1-m)「クリップの付いた固定アーム(K)(L)を、反射面と対向する側に備えている」点。(図2)

前記記載において、上方の開口部は昆虫を内部に導入していることは明かであるから、前記の記載からみて、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ハロゲン タングステン ランプ(D)と、
前記ランプ(D)を収納する箱形をした反射装置(A)であって、前記ランプ(D)からの光が上方に向かって反射するように傾斜して位置された内側の反射面と、昆虫を内部に導入するために上方に向う上方開口部と、前記上方開口部の縁部より下方に位置される前記ランプ(D)とを備える反射装置(A)と、
反射装置(A)を収納して支持し、ランプシェードの骨組みへ固定するためのクリップの付いた固定アーム(K)(L)を備えた、上方が開口し箱形をした反射装置支持部本体(J)。」

刊行物2:特開平6-7067号公報
(2-a)「【請求項1】 昆虫に対して忌避光を発生する忌避光源、該忌避光源によって誘引されてきた昆虫を反射し滑落させる反射板、該反射板の下方に設けた昆虫殺傷捕獲手段からなることを特徴とする防虫器。」(特許請求の範囲)
(2-b)「【作用】 本発明の防虫器では、昆虫に対して忌避光を発生する忌避光源、該忌避光源によって誘引されてきた昆虫を反射する反射板、該反射板の下方に設けた、・・・捕虫紙等を用いた昆虫殺傷捕獲手段からなる」(段落【0009】)
(2-c)「電動機9、ファン10からなる送風機、捕獲網12の代わりに、漏斗状反射板6の底の部分に捕虫紙を張るだけの構成であってもよい。」(段落【0024】)

刊行物3:国際公開第92/20224号パンフレット
(3-a)「本発明は、飛行昆虫・・・を捕捉する装置、とりわけ、誘引放射源と粘着面を備えたそのような装置に係る。」(1頁2〜5行)
(3-b)「ケーシングの後方部分21bは壁W・・・に装着できるように構成されている。」(15頁4〜6行)

刊行物4:実願平4-58538号(実開平6-17485号)の
CD-ROM
(4-a)「・・・機枠内部の背面側には前記粘着面を照明する光源を設けてなる昆虫類の捕獲装置。」(2頁1欄5、6行)
(4-b)「上記した実施例の昆虫捕獲装置を使用するには、まず図1に示すように、クリーンルーム等の壁や柱等に、予めフックを固定しておき、このフックに係止穴15を掛けて背面カバー2をセットし、」(段落【0017】)

刊行物5:特開昭64-55137号公報
(5-a)「捕虫用の誘引燈(2)と粘着面(4)とを備えた照明式捕虫器」(1頁左下欄5、6行)
(5-b)「照明式捕虫器(A)は、・・・第8図に示すように、壁(W)に・・・取付けられたりして使用され、」(2頁左下欄2〜10行)

3-2.対比
本願発明2と引用発明を対比すると、
引用発明の「ハロゲン タングステン ランプ(D)」、「箱形をした反射装置(A)」、「ハロゲン タングステン ランプ(D)及び反射装置(A)」は、それぞれ、本願発明2の「昆虫誘引光源(16)」、「ハウジング部(11、17、22)」、「飛行昆虫捕獲器」に相当するから、
両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「昆虫誘引光源と、前記昆虫誘引光源を収納するハウジング部であって、
傾斜して位置された内側の反射面と、昆虫を内部に導入するために上方に向う上方開口部と、前記上方開口部の縁部より下方に位置される前記昆虫誘引光源とを備える飛行昆虫捕獲器。」
<相違点>
(1)本願発明2は、「垂直の取付面(20)に昆虫誘引のための誘引光源を形成する飛行昆虫捕獲器であって、(a)前記飛行昆虫捕獲器を前記垂直の取付面(20)上に据え付けるための手段(10)」を備え、内側の反射面の傾斜角度が、「昆虫誘引光源からの反射光と散乱光とが垂直の取付面(20)に対して指向されて、広く散乱する光パターンを形成するように水平面に対して角度が80度以下の角度」であるのに対して、引用発明は、飛行昆虫捕獲器をランプシェードの骨組みに固定するものであり、内側の反射面の傾斜角度が不明である点。
(2)本願発明2は、「昆虫を不動状態にするためにハウジング部の底面に設けられる粘着表面部(12)」を備えるのに対して、引用発明は、粘着表面部を備えていない点。

3-3.当審の判断
前記相違点について検討する。
(A)相違点(1)について
i.垂直の取付面に昆虫誘引のための誘引光源を形成する飛行昆虫捕獲器であって、前記飛行昆虫捕獲器を前記垂直の取付面上に据え付けるための手段を備える飛行昆虫捕獲器は、周知技術(前記刊行物3〜5及び下記の周知例1参照。)である。そうすると、引用発明において、飛行昆虫捕獲器を、ランプシェードの骨組みに固定することに代えて、垂直の取付面上に据え付けることは、当業者が容易に着想することであり、当該据え付けに際して、引用発明を認定した刊行物1には、据え付けるための手段に相当するクリップの付いた固定アーム(K)(L)を、反射面と対向する側に備えている点が記載されている((1-m)参照。)から、垂直の取付面上に据え付けるための手段を反射面と対向する側の面に備える構成とすることは、当業者が容易になし得る設計的事項であるということができる。そして、このような構成とすることにより、反射面が誘引光源からの光が上方に向かって反射するように傾斜して位置されるから、飛行昆虫捕獲器を壁などの垂直の取付面上に据え付けると、昆虫誘引光源からの反射光と散乱光とが前記垂直の取付面に対して指向されて、広く散乱する光パターンを形成することは自明である。
ii.本願明細書の【表2】【表3】には、反射面が水平面に対して、30度、60度、90度の角度とした場合の実験結果が記載されているが、60度と80度の間の角度についての実験結果は記載されていないため、反射面が水平面に対して80度以下の角度で傾斜していると限定した点により格別顕著な効果を奏するとは認められない。しかも、反射面の傾斜角度を昆虫の捕獲率が良くなる角度とすることは、当業者が適宜に設定し得る設計的事項にすぎない。
iii.そうすると、前記相違点(1)に係る本願発明の構成は、引用発明に前記周知技術を適用して、当業者が容易に想到し得ることと認められる。
(B)相違点(2)について
昆虫誘引のための誘引光源と昆虫を不動状態にするために粘着表面部を備え、垂直の取付面上に据え付ける飛行昆虫捕獲器は、周知技術(前記刊行物3〜5及び下記の周知例1参照。)である。また、前記刊行物2に、防虫器に設けた昆虫殺傷捕獲手段に関して、「電動機9、ファン10からなる送風機、捕獲網12の代わりに、漏斗状反射板6の底の部分に捕虫紙を張るだけの構成であってもよい。」(前記(2-c)の摘記参照。)と記載されているように、刊行物2に記載された発明は、電動機9、送風機、捕獲網12を設けずに、漏斗状反射板6の底の部分に捕虫紙を張る実施例を含むものであり、捕虫紙が粘着表面部を有することは周知である。そうすると、引用発明において反射板の底の部分であるハウジング部の底面に粘着表面部を設け、前記相違点(2)に係る本願発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願発明2によって奏せられる効果は、引用発明(前記刊行物1に記載された発明)及び前記刊行物2に記載された発明並びに前記周知技術によって奏せられる効果と比較して、格別顕著なものであるということはできない。

周知例1:米国特許第4,876,822号明細書

3-4.むすび
以上のとおりであるので、本願請求項2に係る発明は、前記刊行物1、2に記載された発明及び前記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.特許法第36条第5項について
当審で、明細書に記載の事項が不備であると指摘した点のうち、下記の点は依然として不備である。

特許請求の範囲の請求項1について、『「ハウジング部は、前記垂直かつ平面の表面に前記誘引光源を設けたときに、前記誘引光源を直接的に見ることができず」とは、具体的にどのような構成をいうのか不明である。』と指摘した点(拒絶理由通知の理由[II]の(1)のb.)。

すなわち、補正明細書の特許請求の範囲の請求項1において、「ハウジング部は、前記垂直かつ平面の表面に前記誘引光源を設けたときに、前記誘引光源を直接的に見ることができず」は、「ハウジング部は、前記取り付け手段により前記垂直かつ平面の表面(20)に設けたときに、前記誘引光源(16)を直接的に見ることができず」と補正されたが、ハウジング部は上面に開口した開口部を有しており、誘引光源(16)を上方から直接的に見ることができるから、依然として、どのような構成により誘引光源(16)を直接的に見ることができないのか不明である。
したがって、本件出願は特許法第36条第5項第2号の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項2に係る発明は特許法第29条第2項の規定により、また、本件出願は特許法第36条第5項第2号の規定により、拒絶をするべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-17 
結審通知日 2005-03-22 
審決日 2005-04-18 
出願番号 特願平6-73120
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A01M)
P 1 8・ 534- WZ (A01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 佳代子  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 白樫 泰子
川島 陵司
発明の名称 飛行昆虫捕獲器  
代理人 大塚 康徳  

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