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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1146021
審判番号 不服2005-2462  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-05-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-10 
確定日 2006-10-26 
事件の表示 特願2002-311464「廃棄物管理システムおよび廃棄物管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月20日出願公開、特開2004-145737〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、特許法30条1項の規定の適用を主張した平成14年10月25日の出願であって、平成17年1月4日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年2月10日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年3月9日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成17年3月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
1 補正却下の決定の結論
平成17年3月9日付けの手続補正を却下する。

2 理由
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項2は、
「【請求項2】 排出業者から収集運搬業者および処理業者までの廃棄物の流れを管理する廃棄物管理システムであって、
前記排出業者が排出する廃棄物に付する電子識別符号と、
前記電子識別符号を読み取る手段を備えた端末と、
前記電子識別符号、排出業者、収集運搬業者および処理業者を管理するデータベースと、
前記端末と通信可能な管理センタのサーバとを有し、
同サーバは、
前記収集運搬業者による前記廃棄物の受託の際に前記端末によって読み取られ、送信された電子識別符号に基づいて、前記排出業者が排出する廃棄物に関する情報を、前記データベースに登録するとともに、前記排出業者が指定する処理業者に関する情報が前記電子識別符号とともに前記端末に入力された場合に前記電子識別符号とともに前記端末から送信された前記排出業者が指定する処理業者に関する情報に基づいて、前記排出業者によって指定された処理業者に前記収集運搬業者が前記廃棄物を搬入するより先に通知する手段と、
前記収集運搬業者が前記廃棄物を搬入した際に前記端末によって読み取られ、送信された電子識別符号に基づいて、前記収集運搬業者が搬入した廃棄物に関する情報を、前記データベースに登録するとともに、前記廃棄物が適正に処理された旨を前記排出業者に電子メール等を送信することにより通知する手段とを備えたものである廃棄物管理システム。」と補正された。

上記補正は、補正前の平成16年6月16日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項3に記載した発明を特定するために必要な事項である「排出業者に通知する手段」について限定を付加するものであって、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項2に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
(2-1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-76287号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、不法投棄場所の特定と写真による確認システムに係り、より詳しくは、廃棄物収集運搬車輌の搬送ルートや、廃棄物処分場所への到着及び廃棄物の不法投棄の監視を集中管理する廃棄物収集運搬車輌の作業・運行管理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】本発明者らはすでに、衛星通信及びグローバルポジショニングシステム(以下、GPSと称す)を利用した廃棄処理マニフェスト情報管理システム(以後、Satellite Communication Management Systemを略し「SCMS」と略称する。)、及び、SCMSを発展させた一般廃棄物の指定外焼却処理施設(地域外公共焼却場)搬入防止および監視システムのSCMSIIを開発し提供している。
【0003】SCMSとは、廃棄物処理の流れを、衛星通信を使い情報の収集を行うことにより、排出事業者・収集運搬業者・中間処理業者間・最終処分業者の廃棄物処理の管理を可能とし、収集した情報から必要な情報を速やかに作成し提供することを目的とするシステムをいい、廃棄物処理の流れを衛星通信を使い情報の収集を行うことにより、排出事業者、収集運搬業者、中間処理業者間、最終処分業者の廃棄物処理の管理を可能とし、収集した情報から必要な方法を速やかに作成し提供する廃棄物収集運搬車輌の作業・運行管理システムであって、バーコードラベルおよび通信衛星の端末に入力された該バーコードを含む関係情報に基づき必要事項が記入される積荷明細伝票を組み合わせて用いることを特徴とする通信衛星を使用した廃棄物収集運搬車輌の作業・運行管理システムであり、簡潔には、バーコードラベルおよび通信衛星の端末に入力された該バーコードを含む関係情報に基づき必要事項が記入される積荷明細伝票を組み合わせることを特徴とする通信衛星を使用した特別管理廃棄物収集運搬車輌6の作業・運行管理システムである(特開平10-95506、特開平10-95505)。」

イ 「【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、マニフェスト情報システム管理センターにおいて、廃棄物収集運搬車輌についての情報に基づき必要事項が記入されたマニフェスト伝票(積荷明細伝票)によりマニフェスト管理を行い、併せて衛星通信を使い廃棄物収集運搬車輌の積荷および/または動態についての情報にもとづき少なくとも廃棄物の収集・作業を行った場所を、GPSナビゲーションシステムにもとづく位置情報と、航空写真及び衛星写真にもとづく視覚情報とによって確認して、廃棄物収集運搬車輌の作業・運行を管理し、さらに、その情報にもとづき、廃棄物収集運搬車輌の作業・運行効率を改善すると共に、廃棄物収集運搬車輌が廃棄物を指定廃棄物処分場所以外の廃棄物処分場所に搬入することを監視することにより課題を解決した。」

ウ 「【0014】上記の位置情報が、衛星通信を使い収集した廃棄物収集運搬車輌の積荷および/または動態についての情報に基づくものであり、その場合、本発明は、廃棄物収集運搬車輌について必要事項が記入された積荷明細伝票によるマニフェスト情報および位置情報を利用して廃棄物収集運搬車輌の作業・運行を管理するシステムにおいて、衛星通信を使い収集した廃棄物収集運搬車輌の積荷および/または動態についての情報に基づく廃棄物収集運搬車輌の位置情報を、地図情報と航空写真又は衛星写真に基づく景観情報とをマッチングさせて表示できるようにしたことを特徴とする廃棄物収集運搬車輌の作業・運行管理システムである。」

エ 「【0017】発送現場において、管理情報を入力あるいは読みとり当該データを記憶する。到着現場に置いても同様に行う。上記管理情報の入力あるいは読みとりは、発送場所及び到着場所に用意された衛星通信端末機に接続した読取機によってマニフェスト伝票のデータを読みとり、あるいは入力して該衛星通信端末機を使ってネットワークセンターに送信する。これらのデータはネットワークセンターで集中管理される。ネットワークセンターにおいて、情報の伝達のほか、通信処理、データ処理を行う。ネットワークセンターで集中管理されるこれらの情報は関係者にVANあるいは電話回線で配信される。関係者はパソコン端末でこれらを管理する。衛星通信端末機に入力された上記管理情報に基づき発送場所ごとの発送量の数値管理を行うことができる。発送場所別の数値管理が行えることで、車両の移動場所を正確に把握することができる。車両は車載端末機を搭載しているので、発送後、リアルタイムに車両がどこにあるか、どこを搬送中か、いつ到着現場に引き渡されたか、またはどこに滞留しているかが掌握できることで、発送現場としての管理責任は十分に果たすことができる。」

オ 「【0019】本発明において使用する情報ネットワークは、マニフェスト伝票の管理情報を衛星通信端末を使ってマニフェスト情報システム管理センターへ送信し、これらの情報を関係者にVANあるいは電話回線で配信し、該関係者はパソコン端末でこれら管理することにより、廃棄物運搬作業車両の所在を把握するように構成したシステムである。ネットワークセンターにおいて、データはすべて通信衛星を通じて大型コンピューターに記録し、情報を集中管理し、情報の伝達のほか、通信処理、データ処理を行い、発送場所、到着場所、運送業者等へ随時報告する。」

カ 「【0026】実施例
以下、図面を参照して、本発明の廃棄物搬送車輌6の作業・運行管理システムの一実施例を説明する。図1に示すように、各地に分散した排出事業所3、中間処理業者4及び廃棄物の処分を管理監督する行政機関5には、各々排出事業所3及び中間処理業者4用端末装置Bが設置されており、これらの端末装置Bは無線受信装置を備えており、さらに通信回線を介してマニフェスト情報システム管理センター(SCMS管理センター)1の管理用端末装置Aに接続されている。
【0027】図2に示すように廃棄物収集運搬車輌6には、このGPSにより位置を測定するために、GPS衛星からの電波を受信するためのGPS測位アンテナ7及び受信した電波より位置を測定するために、車載表示端末10及び携帯端末11を具えたSCMSIIの車載用端末装置Cが搭載され、さらに、マニフェスト情報システム管理センター(SCMS管理センター)1と廃棄物収集運搬車輌6との通信全般を制御る通信制御装置9及び通信衛星との送受信を行う衛星通信アンテナ8が搭載されており、自車の位置の計測、及び、マニフェスト情報システム管理センター(SCMS管理センター)1との間の情報の授受を可能にしている。」

キ 「【0031】この廃棄物回収作業中、廃棄物収集運搬車輌6の車載用端末装置Cは、GPS衛星からの信号を受信し、受信した信号から自車の位置を演算し、演算して求めた位置情報と廃棄物収集運搬車輌6毎に付けられたIDコードを衛星通信アンテナ8から通信衛星へ向けて発信する。発信された情報は、通信衛星により中継されてマニフェスト情報システム管理センター(SCMS管理センター)1に送られ、マニフェスト情報システム管理センター(SCMS管理センター)1は、受信した情報を磁気記録装置に記録すると共に、必要な情報は通信回線を通して排出事業所3及び中間処理業者4及び行政機関5の端末装置Bに送信する。」

ク 「【0036】廃棄物収集運搬車輌6が廃棄物処分場所に向かい走行を開始すると、SCMS管理センター1に設置された管理用端末装置は、廃棄物収集運搬車輌6が排出事業所3及び中間処理業者4から提供された規定の経路走行しているかどうか監視し、廃棄物収集運搬車輌6が決められた経路走行していない場合には警告を発すると共に、その旨の情報を通信回線経由で、当該廃棄物収集運搬車輌6が所属する中間処理業者4に設置された管理用端末装置Aに送信する。その情報を受信した中間処理業者4に設置された端末装置Bは、その位置情報及びIDコードを、搬送ルートの地図とともに磁気記憶装置装置に記録する。
【0037】廃棄物処分場所に到着した廃棄物収集運搬車輌6は、所定の処分場所に廃棄物を荷卸しするのであるが、マニフェスト情報システム管理センター(SCMS管理センター)1の管理用端末装置Aのディスプレイには、その投棄場所が地図データと航空写真及び衛星写真とをマッチングさせて表示される(図3a)。そして、マニフェスト情報システム管理センター(SCMS管理センター)1のその投棄情報びIDコードを、磁気記憶装置装置に記録すると共に、排出事業所3及び中間処理業者4及び行政機関5に設置された端末装置Bにも、通信回線経由で投棄情報を提供する。
【0038】投棄情報を受けた排出事業所3及び中間処理業者4及び行政機関5に設置された端末装置Bのディスプレイには、投棄場所が地図データと航空写真及び衛星写真とをマッチングさせて表示されている(図3a)ので、地図情報と周囲の景観とからその処分場所が規定の処分場所かどうか直ちに判断でき、規定の場所以外であるときには警告を発する。」

以上の記載事項によると、引用例1には、
「廃棄物処理の流れの情報を収集して、排出事業者・収集運搬業者・中間処理業者・最終処分業者の廃棄物処理の管理を可能とした廃棄物収集運搬車輌の作業・運行管理システムであって、
バーコードを含む必要事項が記入された積荷明細伝票であるマニフェスト伝票と、
発送現場において、読取機によってマニフェスト伝票のデータを読みとり、あるいは入力する衛星通信端末機と、
マニフェスト伝票のデータを衛星通信端末から受信し、磁気記録装置に記録するマニフェスト情報システム管理センターと、
廃棄物回収作業中、及び走行中、廃棄物収集運搬車輌の位置情報及びIDコードを衛星通信端末から、マニフェスト情報システム管理センターへ送信し、マニフェスト情報システム管理センターは受信した情報を磁気記録装置に記録するとともに、その位置情報及びIDコードを中間処理業者に送信する手段と、
廃棄物収集運搬車輌が廃棄物処分場所に到着すると、マニフェスト情報システム管理センターはその投棄情報及びIDコードを磁気記憶装置に記録するとともに、排出事業所にも通信回線経由で該投棄情報を提供する手段、
とを備えた廃棄物収集運搬車輌の作業・運行管理システム。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(2-2)同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-349104号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
ケ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、廃棄商品管理システムに関するものであり、更に詳しくは廃棄する商品、例えば電子機器であるところのOA機器、自販機、遊技機等に廃棄用ラベルを貼り付け又は取り付けて廃棄商品を統一的に維持管理できるようにした廃棄商品管理システムに関する。」

コ 「【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明に係る廃棄商品管理システムは、廃棄商品にバーコード化されたデータを有する廃棄用ラベルを貼り付け又は取り付け、該貼り付け又は取り付けられた廃棄用ラベルのデータに基づいて収集運搬業者による管理、前記廃棄商品を保管する倉庫での管理、前記廃棄商品を処理する処理業者による管理を行うようにし、前記バーコード化されたデータには少なくとも前記廃棄商品を製造したメーカー、製造番号、前記廃棄商品を排出する排出者が含まれていることである。」

サ 「【0019】収集運搬業者20は、この廃棄用ラベル24をハンデイターミナルでスキャンすれば環境システムホストコンピューター16と交信が行われ、引き取り年月日、引き渡し年月日、車両番号、運転者等の登録の確認をすることができる。」

シ 「【0022】処理業者23は、解体等の処理をする時にハンデイターミナルで廃棄用ラベル24をスキャンして環境システムホストコンピューター16と交信をしてその処理年月日を登録し、かつ、所望のデータの登録を確認することができる。そして、処理業者23がリサイクル等の処理がされたことを確認し、処理済通知を排出者18に送り一連の廃棄用商品19の処理が完了する。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「排出事業者」「中間処理業者」は、本願補正発明の「排出業者」「処理業者」にそれぞれ相当する。
引用発明の「廃棄物収集運搬車輌の作業・運行管理システム」は、収集運搬業者が所有する廃棄物収集運搬車輌の排出事業者から中間処理業者への廃棄物の運行をマニフェスト情報システム管理センターが管理するものであるので、引用発明には、「排出業者から収集運搬業者および処理業者までの廃棄物の流れを管理する廃棄物管理システム」が示されている。
引用発明の「バーコード」は、電子識別符号である。
引用発明の「読取機によってマニフェスト伝票のデータを読みとり、あるいは入力する衛星通信端末機」は、本願補正発明の「電子識別符号を読み取る手段を備えた端末」に相当する。
引用発明におけるマニフェスト情報システム管理センターは、磁気記憶装置を用いて、マニフェスト伝票のデータ、廃棄物収集運搬車輌の位置情報及びIDコード、並びに投棄情報を記録し、情報を集中管理し、排出業者や処理業者に報告するものであるので、引用発明が「電子識別符号、排出業者、収集運搬業者および処理業者を管理するデータベース」及び「端末と通信可能な管理センタのサーバ」を備えていることは、当業者であれば当然に理解できる。
引用発明のマニフェスト情報システム管理センターは、発送時に読み取られ、あるいは入力されたマニフェスト伝票のデータを衛星通信端末から受信し、磁気記録装置に記録するので、引用発明は、サーバが、収集運搬業者による廃棄物の受託の際に端末によって読み取られ、送信された電子識別符号に基づく情報を、データベースに登録する構成を有しているといえる。
引用発明は、廃棄物回収作業中、及び走行中に得られた情報である廃棄物収集運搬車輌の位置情報及びIDコードを衛星通信端末から、マニフェスト情報システム管理センターへ送信し、マニフェスト情報システム管理センターは受信した情報を磁気記録装置に記録するとともに、その位置情報及びIDコードを中間処理業者に送信する手段を備えているので、引用発明は、サーバが、処理業者に収集運搬業者が廃棄物を搬入するより先にデータベースの情報を通知する手段を有しているといえる。
引用発明は、廃棄物収集運搬車輌が廃棄物処分場所に到着すると、マニフェスト情報システム管理センターはその投棄情報及びIDコードを磁気記憶装置に記録するとともに、排出事業所にも通信回線経由で該投棄情報を提供するので、引用発明には、サーバが、収集運搬業者が廃棄物を搬入した際に収集運搬業者が搬入した廃棄物に関する情報を、データベースに登録するとともに、排出業者に通知する手段が示されている。

以上を踏まえると、両者は、
「排出業者から収集運搬業者および処理業者までの廃棄物の流れを管理する廃棄物管理システムであって、
電子識別符号と、
前記電子識別符号を読み取る手段を備えた端末と、
前記電子識別符号、排出業者、収集運搬業者および処理業者を管理するデータベースと、
前記端末と通信可能な管理センタのサーバとを有し、
同サーバは、
前記収集運搬業者による前記廃棄物の受託の際に前記端末によって読み取られ、送信された電子識別符号に基づく情報を、前記データベースに登録するとともに、処理業者に前記収集運搬業者が前記廃棄物を搬入するより先にデータベースの情報を通知する手段と、
前記収集運搬業者が前記廃棄物を搬入した際に前記収集運搬業者が搬入した廃棄物に関する情報を、前記データベースに登録するとともに、前記排出業者に通知する手段とを備えたものである廃棄物管理システム。」で一致し、次の点で相違する。

【相違点】
【相違点1】
本願補正発明の電子識別符号は、排出業者が排出する廃棄物に付されたものであるのに対し、引用発明の電子識別符号は、積荷明細伝票であるマニフェスト伝票に含まれているものである点。

【相違点2】
収集運搬業者による廃棄物の受託の際に、本願補正発明は、電子識別符号とともに、排出業者が指定する処理業者に関する情報を端末から送るのに対し、引用発明は、該情報を送る構成を有していない点。

【相違点3】
処理業者に収集運搬業者が廃棄物を搬入するより先に通知する情報が、本願補正発明は、排出事業者が排出する廃棄物に関する情報であるのに対し、引用発明は、廃棄物収集運搬車輌の位置情報及びIDコードである点。

【相違点4】
収集運搬業者による廃棄物の搬入時、該廃棄物に関する情報を、本願補正発明は、端末によって読み取られた電子識別符号に基づいて得ているのに対し、引用発明は、どのように得ているのか明記されていない点。

【相違点5】
排出業者に通知する手段が、本願補正発明は、廃棄物が適正に処理された旨を電子メール等を送信することにより通知しているのに対し、引用発明は、投棄情報としての投棄場所の情報を通信回線を利用して通知している点。

(4)当審の判断
上記相違点について検討する。
【相違点1】について
管理対象物に直接バーコードを付することは周知である。
そして、廃棄物個々に対して、電子識別符号を付して、廃棄物の管理を行うシステムは、例えば、上記引用例2の「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明に係る廃棄商品管理システムは、廃棄商品にバーコード化されたデータを有する廃棄用ラベルを貼り付け又は取り付け、該貼り付け又は取り付けられた廃棄用ラベルのデータに基づいて収集運搬業者による管理、前記廃棄商品を保管する倉庫での管理、前記廃棄商品を処理する処理業者による管理を行うようにし、前記バーコード化されたデータには少なくとも前記廃棄商品を製造したメーカー、製造番号、前記廃棄商品を排出する排出者が含まれていることである。」(前掲コ記載)にみられるように公知である。
したがって、廃棄物を管理するに際し、引用発明の積荷単位で管理するマニフェスト伝票に含まれる電子識別符号に代えて、廃棄物単位で管理する前記公知の排出業者が排出する廃棄物に付される電子識別符号とすることは当業者が容易に想到し得たことと認められる。

【相違点2】について
排出業者が所定の業者に処理を依頼することは普通に行われることで、処理業者が決まっていれば、その情報を送ることは必要に応じて採用する事項である。そして、収集運搬業者による廃棄物の受託の際に、排出業者が処理業者を指定する構成は、例えば、本願の発明の詳細な説明に従来の技術として記載の、本願の出願前に公開された特開2002-83037号公報(以下「引用例3」という。)の段落【0014】に「排出事業者200は最上面の帳票Aに、排出事業者名、廃棄物の種類やその量、収集運搬事業者名、処分事業者名などの必要事項を書き込んでこれを保管するとともに(ロ-1)、複写された残りを廃棄物とともに廃棄物の運搬を依頼した収集運搬事業者400に検印して渡す(ロ-2)。」と記載されているように周知であり、また、運搬開始時、排出事業者が廃棄物のID番号とともに処理業者を指定して処理業者の情報を入力する構成は、当業者に周知の技術である。例えば、特開2000-263027号公報(以下「引用例4」という。)の段落【0046】に「ステップS202の判別の結果、正しいパスワードであった場合、端末装置121の表示部124には、CPU122の制御により、産業廃棄物に関する情報入力を促す画面が表示される。ここでの入力情報としては、例えば、
・収集運搬業者130に渡す産業廃棄物のID番号(廃棄物ID)
・該産業廃棄物の種類(「注射針」、「脱脂綿」、「ガーゼ」等)
・該産業廃棄物の分量(「10Kg」等)
・排出事業者120自身の情報(氏名や住所等)
・収集運搬業者130の情報(氏名や住所等)
・運搬先の処分業者(ここでは処分業者140)の情報(氏名や住所等)
・収集運搬業者130の移動通信装置131の情報(電話番号等)
とする。これにより、排出事業者120は、操作部123により上記の情報を入力する。CPU122は、排出事業者120による情報入力を認識すると、それらの入力情報を運搬開始情報(運搬開始通知)として、通信部125を介して情報処理センタ110へ送信する(ステップS205)。」と記載されている。
したがって、収集運搬業者による廃棄物の受託の際に、電子識別符号を送る引用発明に上記周知の技術を適用して、排出業者が指定する処理業者に関する情報を共に送る構成とすることは当業者が容易になし得たことと認められる。

【相違点3】について
収集運搬業者が処理業者に廃棄物を搬入するより先に、該処理業者に該廃棄物に関する情報を通知する構成は、必要に応じて行うことであり、例えば、上記引用例3の段落【0104】及び【0105】に「【0104】排出事業者2である焼酎工場21から、管理センター1に廃棄物処分の要請があると、管理センター1は、保存されている処分事業者3及び収集運搬事業者4の各処理能力や所在地などに関するマスター情報を参照して、処分すべき廃棄物、すなわち焼酎廃液を処理するに最も適当な処理施設31を決定するとともに、収集運搬事業者4として陸上運送会社を選定し、それぞれに、焼酎廃液に関する情報と処理に関する指示を電話通信網Tを介して直接通話するか、あるいは電子メールなどを用いて与える。
【0105】具体的には、処理施設31(処分事業者3)に対しては、処理すべき産業廃棄物が焼酎廃液であり、その量が何トンあるのかを、また陸上運送会社には、運ぶべき焼酎廃液の量と、搬送先である排出事業者2の所在地情報などを知らせる。」と記載されている。
したがって、引用発明の処理業者に収集運搬業者が廃棄物を搬入するより先に通知する情報として、排出業者が排出する廃棄物に関する情報を想起することに格別の困難性は認められない。

【相違点4】について
収集運搬業者が搬入した廃棄物に関する情報を端末によって読み取られた電子識別符号に基づいて得る構成は、例えば、上記引用例2の「【0022】処理業者23は、解体等の処理をする時にハンデイターミナルで廃棄用ラベル24をスキャンして環境システムホストコンピューター16と交信をしてその処理年月日を登録し、かつ、所望のデータの登録を確認することができる。」(前掲シ記載)にみられるように公知である。
したがって、到着場所や、廃棄物収集運搬車輌に読取機付きの通信機器端末を備えた引用発明において、廃棄物に関する情報を該端末によって読み取られた電子識別符号に基づいて得る構成とすることは当業者が容易に想到し得たことと認められる。

【相違点5】について
投棄情報として、廃棄物が適正に処理されたことがわかる情報が、排出業者にとって、最も知りたい情報のうちの一つであることは、当業者にとって自明であり、そして、廃棄物が適正に処理された旨を排出業者に通知する構成は、例えば、上記引用例2の「処理業者23がリサイクル等の処理がされたことを確認し、処理済通知を排出者18に送り一連の廃棄用商品19の処理が完了する。」(前掲シ記載)にみられるように公知である。また、コンピュータの通信回線を利用して情報を通知する手段として電子メールはごく一般的に使われている技術である。
したがって、引用発明の投棄情報を排出業者に通信回線を利用して通知する構成を、廃棄物が適正に処理された旨を排出業者に電子メールで通知する構成とすることは当業者が容易になし得たことと認められる。

以上のとおり、相違点1ないし5は、当業者が引用例1、2に記載された発明及び周知技術より容易に推考できたものであり、効果についても、当業者が予測できる範囲内のものにすぎない。

したがって、本願補正発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであり、159条1項で準用する53条1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
平成17年3月9日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年6月16日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項3】前記排出業者によって指定された処理業者に関する情報は、前記収集運搬業者が廃棄物を受託する際に、前記端末に入力されて前記サーバに送信され、前記サーバは、この送信された情報に基づいて、前記指定された処理業者に前記排出業者が排出する廃棄物に関する情報を通知することを特徴とする請求項1記載の廃棄物管理システム。」
そして、請求項3が引用する請求項1は次のとおりである。
「【請求項1】 排出業者から収集運搬業者および処理業者までの廃棄物の流れを管理する廃棄物管理システムであって、
前記排出業者が排出する廃棄物に付する電子識別符号と、
前記電子識別符号を読み取る手段を備えた端末と、
前記電子識別符号、排出業者、収集運搬業者および処理業者を管理するデータベースと、
前記端末と通信可能な管理センタのサーバとを有し、
同サーバは、
前記収集運搬業者による前記廃棄物の受託の際に前記端末によって読み取られ、送信された電子識別符号に基づいて、前記排出業者が排出する廃棄物に関する情報を、前記データベースに登録するとともに、前記排出業者によって指定された処理業者に前記収集運搬業者が前記廃棄物を搬入するより先に通知する手段と、
前記収集運搬業者が前記廃棄物を搬入した際に前記端末によって読み取られ、送信された電子識別符号に基づいて、前記収集運搬業者が搬入した廃棄物に関する情報を、前記データベースに登録するとともに、前記排出業者に通知する手段とを備えたものである廃棄物管理システム。」

1 引用例
拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 2(2)」に記載したとおりである。

2 対比・判断
本願発明は、前記「第2 2」で検討した本願補正発明から「排出業者に通知する手段」における「廃棄物が適正に処理された旨を排出業者に電子メール等を送信することにより通知する」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 2(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1、2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたもので、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-28 
結審通知日 2006-08-29 
審決日 2006-09-11 
出願番号 特願2002-311464(P2002-311464)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷口 信行  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 鈴木 明
田中 幸雄
発明の名称 廃棄物管理システムおよび廃棄物管理方法  
代理人 加藤 久  

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