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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1147155
審判番号 不服2003-22312  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-03-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-17 
確定日 2006-11-08 
事件の表示 平成 7年特許願第185924号「遠隔の励起源を用いる堆積チャンバーのクリーニング技術」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 3月11日出願公開、特開平 9- 69504〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成7年7月21日の特許出願であって、平成14年11月7日付けで拒絶の理由が通知され、平成15年5月12日に意見書とともに手続補正書が提出され、平成15年8月13日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、平成15年11月17日に本件審判の請求がされ、平成15年12月16日に明細書を補正対象とする手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理 由]
1.補正の内容の概要
本件補正は、特許請求の範囲について補正をするものであって、その請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
1-1 補正前の請求項1
「電子デバイスの作製において用いられる堆積チャンバーをクリーニングする方法であって、
前記堆積チャンバー外部の遠隔チャンバーに前駆体ガスを供給(delivering)し;
遠隔エネルギー源を用いて前記遠隔チャンバー内で前記前駆体ガスを活性化して反応性化学種を形成し;
前記遠隔チャンバーから前記堆積チャンバー内に前記反応性化学種をフィルターを通して流し;そして、
前記遠隔チャンバーから前記堆積チャンバー内に前記フィルターを通した前記反応性化学種を流して、前記堆積チャンバーをクリーニングする;
ことを含む前記方法。」

1-2 補正後の請求項2
「電子デバイスの作製において用いられる堆積チャンバーをクリーニングする方法であって、
前記堆積チャンバー外部の遠隔チャンバーに弗素ガスを供給(delivering)し;
遠隔エネルギー源を用いて前記遠隔チャンバー内で前記弗素ガスを活性化して反応性化学種を形成し;
前記遠隔チャンバーから前記堆積チャンバー内に前記反応性化学種をフィルターを通して流し;そして、
前記遠隔チャンバーから前記堆積チャンバー内に前記フィルターを通した反応性化学種を流して、前記堆積チャンバーの内側表面をクリーニングする;
ことを含む前記方法。」

2.補正の適否
上記請求項1についての補正は、「前駆体ガス」を「弗素ガス」と限定し、クリーニング対象を堆積チャンバーの「内側表面」と限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。

2-1 本件補正発明
本件補正発明は、本件補正がされた明細書及び図面の記載からみて、前記1-2に示す補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの方法であると認める。

2-2 刊行物記載の発明及び事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平5-214531号公報(以下、「刊行物1」という。)、及び特開昭55-145338号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下のとおり記載されている。

(1)刊行物1
ア.段落【0001】?【0005】
「【産業上の利用分野】本発明は、半導体技術において層形成のために使用される析出チャンバをインシトゥ(in-situ=本来の場所)浄化するための方法に関する。
・・・
析出およびエッチング技術は、リソグラフィおよびドーピング技術とならんで、シリコン基板から集積回路を製造するために常に繰り返して使用される基本的な2つのプロセスである。チップ集積密度を増すための開発は個別プロセスおよびプロセスシーケンスへの要求を常に高めてきた。それと関連してますます高効率かつ製造に適した浄化工程の必要性が高まっている。その際に特に問題となることは、ウェハの浄化とならんで、遅くとも所定量のシリコンウェハの浄化後に必要な、各製造サイクルで繰り返して層形成のために使用される析出チャンバの浄化である。
析出チャンバはたとえば低圧気相析出(LPCVD)を実施するために使用される。・・・。
析出チャンバの湿式浄化の公知の欠点、特にこのようなエクスシトゥ(ex-situ=本来の場所以外)浄化手順における不足する設備および不充分な浄化効果に基づいて、また析出チャンバが現在ではいずれにせよプラズマによる析出用として設計されているので、チャンバ浄化は現在では通常、プラズマ中で活性化されたエッチングガスによるインシトゥ乾式エッチングにより行われる。」
イ.段落【0011】
「【課題を解決するための手段】この課題は、冒頭に記載した種類の方法において、浄化のために使用されるエッチングガスが析出チャンバから空間的に隔てられたマイクロ波を供給されるプラズマ放電のなかで強く励起され、また活性化された電気的に中性のエッチングガス粒子がその後に析出チャンバのなかに吹き込まれ、またそこですべての表面を表面の位置および配置に無関係な高いエッチングレートでエッチングすることにより解決される。」
ウ.段落【0015】?【0016】
「図面に示されている析出設備の本発明による浄化のためには、浄化のために使用されるエッチングガス、たとえばCF4 またはO2 が供給管9または10を介してエッチングガス導入管15のなかに導入され、またそこで、析出チャンバから空間的に隔てられて、マイクロ波源7により強く励起される。活性化されたエッチングガス粒子は続いて析出チャンバのなかに吹き込まれ、そこでそれらは、場合によっては既存の電極1および2により発生される非常に小さい電力のプラズマにより助成されて、析出チャンバ全体をエッチングプロセスにより浄化する。その際に生ずる反応生成物および不純物は容易に真空ポンプにより吸引管16を介して除去され得る。
公知のプラズマ助成浄化法と異なり、本発明による方法では外部のまた特に強力なマイクロ波励起が行われる。反応室から隔てられた励起装置の配置により本発明による方法では励起プラズマの析出チャンバに対して有害な種は除去され、他方において長い寿命および高い密度の有用な中性の反応粒子が発生される。」

以上の記載及び図面の記載より、刊行物1には、次の発明が記載されているものと認める。(以下、「刊行物1記載の発明」という。)
「集積回路の作製において用いられる析出チャンバを浄化する方法であって、
前記析出チャンバ外部のエッチングガス導入管15にCF4エッチングガスを供給し;
マイクロ波源を用いて前記エッチングガス導入管15内で前記CF4エッチングガスを活性化してエッチングガス粒子を形成し;
前記エッチングガス導入管15から前記析出チャンバ内に前記エッチングガス粒子を流し;そして、
前記エッチングガス導入管15から前記析出チャンバ内にエッチングガス粒子を流して、前記析出チャンバの内側表面を浄化する;
ことを含む前記方法。」

(2)刊行物2
ア.第1頁左欄13?18行
「この発明は、半導体装置の製造工程において、半導体ウェーハ上に多結晶シリコン、チッ化シリコン、酸化シリコン等の被膜を形成させるための改良した減圧CVD装置(Chemical Vapour Deposition;減圧化学気相成長装置)に関する。」
イ.第2頁左上欄18行?右上欄17行
「しかし、このような減圧CVD装置で、繰り返しCVD被膜の形成作業を行なっていくと、反応管11の内壁に数μmの窒化シリコンや多結晶シリコン等の生成物が堆積される。・・・。これを防止するためには、頻繁に装置を冷却し、反応管11を装置より取りはずし、薬品等で洗浄しなければならず、装置の稼動率を低下せしめる要因となっている。
この発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、反応管11をつけたまま反応管内部の洗浄が効果的に行なわれ、非稼動時間を短縮して効率のよい、半導体ウエーハ17表面上に不純物の付着されない効果的な半導体ウエーハ17の被膜形成作業を行なわせることのできる減圧OVD装置を提供することを目的とする。」
ウ.第2頁右上欄18行?右下欄16行
「以下、この発明の一実施例を図画を参照して説明する。第2図は、この発明に係わる減圧CVD装置を示しており、第1図の場合と同様に横長の反応管11に対して加熱炉12を設け、反応管11出口に真空ポンプ13、更に入口付近に反応ガス導入管15を連通する。この導入管15には第2のバルブ19を備えた輸送管20を連通するもので、この輸送管20は電離室21に導かれている。この電離室21には、マイクロ波発生装置を構成するマグネトロン22からの電磁波を矩形導波管23を介して供給され、また導入管24を介して洗浄ガスが導入されている。そして、この洗浄ガスを電離室21内でプラズマ化し、反応管11内に導かれるようにしてなる。その他、第1図と同一構成部分は、同ー符号を付してその説明を省略する。
・・・。この反応管11の内部の洗浄作業は、真空ポンプ13を作動させ、反応管11内部を減圧状態にし、洗浄ガス導入管24より洗浄ガスとして、例えばフレオンCF4と酸素O2の混合気体を導入する。この混合気体は、電離室21においてマグナトロン22で発生し矩形導波管23で電離室21に導かれた電磁波が照射されており、導入管24よりの洗浄ガスをフッ素プラズマ化されたものである。
このようにして発生したフツ素プラズマは、その寿命が非常に長く、電離室21より数m離れた場所でも活性化している。・・・。
このようにして、反応管11に導入されたフツ素プラズマ化された洗浄ガスは、その内壁に付着した窒化シリコンや多結晶シリコンと反応してこれを除去する。」

以上のとおりであるので、刊行物2には、次の事項が記載されているものと認める。
「マグナトロン22を用いて電離室21内でCF4とO2の混合気体をプラズマ化してフッ素プラズマを形成する」点。(以下、「刊行物2記載の事項」という。)。

2-3.対比
本件補正発明と刊行物1記載の発明とを対比するに、後者の「集積回路」は前者の「電子デバイス」に相当し、後者の「析出チャンバ」はCVDに用いられているものであるから、前者の「堆積チャンバー」に相当し、後者の「浄化」は前者の「クリーニング」に相当し、後者の「マイクロ波源」は前者の「遠隔エネルギー源」に相当する。
また、後者の「CF4エッチングガス」は、堆積チャンバーのクリーニングに用いられる前駆体ガスという限りで、前者の「弗素ガス」と共通し、後者の「エッチングガス粒子」は、前駆体ガスが活性化した反応性化学種という限りで、前者の「反応性化学種」と共通し、後者の「エッチングガス導入管15」は、堆積チャンバー外部に設けられ、前駆体ガスを活性化する遠隔エネルギー源が設けられている前駆体ガスの活性化部という限りで、前者の「遠隔チャンバー」と共通する。

したがって、本件補正発明と刊行物1記載の発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「電子デバイスの作製において用いられる堆積チャンバーをクリーニングする方法であって、
前記堆積チャンバー外部の活性化部に前駆体ガスを供給し;
遠隔エネルギー源を用いて前記活性化部内で前記前駆体ガスを活性化して反応性化学種を形成し;
前記活性化部から前記堆積チャンバー内に前記反応性化学種を流し;そして、
前記活性化部から前記堆積チャンバー内に反応性化学種を流して、前記堆積チャンバーの内側表面を浄化する;
ことを含む前記方法。」
<相違点1>
前者では、活性化部が遠隔チャンバーであるのに対して、後者では、エッチングガス導入管を用いている点。
<相違点2>
前者では、前駆体ガスとして、弗素ガスと特定しているのに対して、後者では、CF4エッチングガスと特定している点。
<相違点3>
前者では、活性化部から堆積チャンバー内に反応性化学種をフィルターを通して流しているのに対して、後者では、フィルターを通すとは、特定されていない点。

2-4.判断
上記相違点について検討する。
<相違点1について>
刊行物2の「マグネナトロン22」、「電離室21」、は、それぞれ、本件補正発明の「遠隔エネルギー源」、「遠隔チャンバー」に相当し、刊行物2の「CF4とO2の混合気体洗浄をプラズマ化してフッ素プラズマを形成する」は、CF4とO2の混合気体が本願発明と同様に電子デバイスの作製において用いられる堆積チャンバーをクリーニングするための前駆体ガスであることから、前駆体ガスを活性化して反応性化学種を形成するという限りで、本件補正発明の「弗素ガスを活性化して反応性化学種を形成する」と共通する。
そうすると、刊行物2記載の事項は「遠隔エネルギー源を用いて前記遠隔チャンバー内で前駆体ガスを活性化して反応性化学種を形成する」点と言い換えることができる。
したがって、刊行物1記載の発明の活性化部としてエッチングガス導入管に代えて、刊行物2の遠隔チャンバーを用いて、本件補正発明の上記相違点1にかかる事項とすることは当業者が容易に想到し得たものである。

<相違点2について>
電子デバイスの作製時に発生する物質の洗浄に弗素ガスを用いることは、例えば、拒絶査定時に周知例として示した特開平6-151394号公報や特開平6-77196号公報にも見られるように周知である。
そうすると、同様に電子デバイスの作製時に発生する物質を洗浄する方法である本件補正発明の前駆体ガスとして、前記周知の弗素ガスを用いることは、当業者が容易に想到し得たというべきものである。

<相違点3について>
チャンバー内に供給される気体より不要な物質を取り除いてチャンバー内を清浄に保つために、チャンバーへの気体供給路にフィルターを設けることは慣用手段である。
そして、刊行物1記載の発明においても、チャンバー内を清浄に保つことが必要であることは明らかである。そうすると、刊行物1記載の発明において、チャンバー内を清浄に保つために前記慣用手段を適用し、本件補正発明の上記相違点3にかかる事項とすることは当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本件補正発明の作用効果は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項、及び前記周知・慣用の事項から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものでない。

したがって、本件補正発明は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項、及び前記周知・慣用の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法等の一部を改正する法律(平成15年法律第47号)附則第2条第7項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法[第1条の規定]による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法126条第4項の規定に適合しないものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1?9に係る発明は、平成15年5月12日付け手続補正書の特許請求範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2の1-1に示す補正前の請求項1に記載したとおりものと認められる。

2.刊行物記載の発明及び事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物記載の発明及び事項は前記第2の2-2(1)乃至(2)に示したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本件補正発明の「前駆体ガス」を「弗素ガス」と限定した限定事項、及びクリーニング対象を堆積チャンバーの「内側表面」と限定した限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件の全てを含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2 2-4」に記載したとおり、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項、及び周知・慣用の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項、及び周知・慣用の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-07 
結審通知日 2006-06-13 
審決日 2006-06-26 
出願番号 特願平7-185924
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 紀本 孝  
特許庁審判長 梅田 幸秀
特許庁審判官 鈴木 孝幸
佐々木 正章
発明の名称 遠隔の励起源を用いる堆積チャンバーのクリーニング技術  
代理人 長谷川 芳樹  

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