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審決分類 審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F28D
審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F28D
管理番号 1147802
審判番号 不服2004-16549  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-03-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-09 
確定日 2006-11-09 
事件の表示 平成 6年特許願第510757号「ガスを加熱する方法及びガス加熱蓄熱器」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 5月11日国際公開、WO94/10519、平成 7年 3月23日国内公表、特表平 7-502804〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯・本願発明。
本願は、1993年(平成5年)10月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1992年10月29日、ドイツ国)を国際出願日とする特許出願であって、平成12年10月19日付け、平成15年9月25日付け、平成16年8月9日付け、平成16年9月8日付け及び平成18年3月27日付けの各手続補正書により補正された明細書及び図面、とくにその特許請求の範囲の記載事項からして、「ガスの加圧及び煙突効率の低下方法」に関するものである。

2. 当審の拒絶理由。
当審において、平成17年9月22日付けで通知した拒絶の理由の2は、「本願は、下記の点で明細書の記載が特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。」というものであって、不備であると指摘した事項を以下に示す。(以下、各不備につき、その頭に付された番号を用いて、「不備3」のように称する。)
ここで、当該拒絶理由通知書には「特許法第36条第4項及び第6項」と記載したが、これは、「特許法第36条第4項及び第5項」の誤記である。(発明の詳細な説明の記載要件、特許請求の範囲の記載要件について、平成6年法律第116号による改正前の特許法では、それぞれ、第36条第4項第36条第5項に規定され、平成6年法律第116号による改正後の特許法では、それぞれ、第36条第4項第36条第6項に規定される。)このことは、不備を指摘した事項から明らかである。

「《請求項1の記載について》
1.「熱蓄積マス」の「マス」は日本語として不明瞭である。

2.「煙道効率」は概念乃至定義が不明である。明細書の詳細な説明の箇所で記載の技術用語「煙突効率(stack effect)」(概念乃至定義:煙突または煙道内に閉じこめられた高温ガスと排出口周辺の冷たい外気との間の圧力差)との関係が不明である。

3.「煙道効率の低下方法」と式「 △Phot - △Pcold ≧ 5ρgH 」との関係が不明である。
前記の式と煙道効率の関係が不明であり、この式が煙道効率の低下を示しているのか否かが不明であり、もし示しているとすればその理由が不明である。

4. 「△Phot」及び「△Pcold」の定義が不明瞭である。「加熱段階」とは何を加熱するのか、主体となる対象も不明である。

5. 「Hを蓄熱器の高さとし、」とあるが、 蓄熱器の高さとは具体的にどこを云うのか不明である。対象流体は「熱蓄積マス」を通過する故、「熱蓄積マス」の寸法が関係すると思われるが、それについての記載もなく、不明である。

6. 「また、加熱段階の・・・」における「また、」は及び(and)を意味するのか、又は(or)を意味するのか、不明瞭である。

7. 「少なくとも300m3N/h.m2に等しく、」は、日本語の表現として意味不明瞭である。

8. 式「 △Phot - △Pcold ≧ 5ρgH 」及び「少なくとも300m3N/h.m2に等しく、」の技術的根拠が不明であり、それらの要件を如何にして実施するのか、具体的方法ないし手段が不明瞭である。

9. 「粒子サイズ」とは直径を云うのか、半径を云うのか、どの寸法を云うのか不明である。

《請求項3の記載について》
10. 請求項3に記載の構成が、詳細な説明においても具体的な説明がなく、技術的に意味不明である。「部分負荷による作動時」及び「加熱段階が、全出力で行われ」が技術的に意味不明であり、さらに「一時的に中断される」の主体が不明である。

《特許請求の範囲以外の詳細な説明及び図面の記載について》
11. 明細書4頁11行?12行「そこに・・・、ここには・・・定量的実施態様は、」における「そこ」「ここ」は具体的に何を示しているのか不明瞭である。

12. 明細書4頁15行の「熱蓄熱マス」と14行の「熱蓄熱層」と17行の「材料床」の関係が不明瞭である。もし同一物を云うなら、別表現とする理由が不明である。同一の内容は同一の表現をしなければ不明瞭である。
13. 明細書4頁16行?26行の記載は、以下の点もあって、日本語文章としても、技術的にも意味不明である。

13-1 「ガス負荷の損失」及び「負荷損失」とは、技術的に如何なる内容概念を意味しているのか、また、請求項1に記載の「圧力低下」との関係も不明であるし、技術用語である圧力損失との関係も不明である。

13-2 「したがってガスの圧力は、・・・無視することができる。」の技術的内容が意味不明であり、かつ、かかる文章が云える技術的理由が不明である。

13-3 「ガスの圧力は、・・・負荷損失の倍数である。」は日本語文章としても、技術内容的にも意味不明である。

13-4 「熱風下の作業時、したがって寒冷吹出しの間、」は、熱風下の作業時が寒冷吹出しの間と同じ旨表現されているが、意味不明である。

14. 第1図の記載と明細書中のその説明箇所の記載が以下の点で技術的に不明瞭である。

14-1 第1図の横軸の数値は何の床のどの方向での距離を意味しているのか不明である。

14-2 第1図に示された温度のS字配分(明細書5頁11行、7頁24行)とは具体的に第1図のどれを意味しているのか不明であり、明細書7頁16行の第1図の黒三角を結んだ「上側の線」や白四角を結んだ「下側の線」は到底S字とは見えない。

14-3 第1図に示された米印を結んだ「中央の線」(明細書7頁下から4行)は明細書7頁下から4行の記載によると「ほぼ直線上である公知の空気加熱器の温度配分」と記載されているが、この中央の線の方がむしろS字を示しているように認められ、また、この中央の線はどのようなタイプの公知の空気加熱器のどのような行程での温度を意味しているのか、不明である。

14-4 明細書5頁11行?14行の「第1図に示された・・・100℃に等しいのみであり、」及び7頁下から3行?8頁1行の「温度のS字配分は・・・高いことである。」は不明瞭である。「寒風吹出し中の熱風の温度低下」及び「従来公知の空気加熱器では、平均温度の変化は反対に100℃に等しい」とは第1図のどの線乃至どこを見て云えるのか不明である。

15. 明細書5頁下から7行の式では加熱段階終了時や開始前の圧力低下を取り扱っているにもかかわらず、同頁下から5行?4行の記載「この方法の有利な・・・行われる。」では寒冷段階でその実施がなされると有り、前記の式を実施する具体的態様とその理由が不明である。

16. 明細書6頁4行?6行及び8頁17行?19行の記載の技術的内容が不明である。また、この内容と1基の蓄熱器を前提とした本願請求項1に記載の構成との関係が不明である。

17. 明細書6頁9行?10行、8頁下から7行?下から5行及び9頁5行?6行の記載は技術的に意味不明である。具体的態様が理解し得ない。

18. 明細書6頁17行「大きくとも・・・」は日本語の表現として意味不明瞭である。

19. 明細書6頁下から9行?8行「上述の・・・小さい。」は意味不明である。

20. 明細書6頁下から2行の「バーナの一実施態様の温度配分」とは、具体的にどのようなことを示しているのか、何の何処の温度配分なのか不明である。

21. 明細書9頁7行?11行の「最後に、・・・示している。」は技術的に意味不明瞭である。

22. 総じて明細書に記載された内容は技術的にも日本語文章としても意味不明瞭であり、当業者がその発明を容易に実施し得るように記載されているとは認められない。 」

3. 平成18年3月27日付手続補正書による補正(当審で通知した拒絶理由に対する請求人の応答)。
請求人は、当審の平成17年9月22日付拒絶理由通知書に対して、平成17年12月27日付けで期間延長請求書を提出した後(この延長は許可された。)、意見書に代えて、平成18年3月27日付けの手続補正書を提出した。
当該手続補正書による補正は、特許請求の範囲のみを補正対象としたものであって、特許請求の範囲を次のとおりに補正するものである。

「 【請求項1】
内側円筒状格子と外側同軸円筒状格子との間に配置された粗いばらの材料から成る蓄積塊体、内側格子によって囲まれる熱ガス用熱収集室、及び外側壁と外側格子との間に囲まれる冷ガス用の冷収集室を備えた蓄積器におけるガスの加圧及び煙突効率の低下方法であって、
a)加熱段階の間、熱蓄積塊体を通って、熱収集室から冷収集室へ加熱ガスを移動すること;
b)吹き出し段階の間、熱蓄積塊体を通って、冷収集室から熱収集室へ加熱すべきガスを移動すること;
を含み、
ΔPhotを加熱段階の終了時における、畜熱器の圧力低下とし、
ΔPcoldを加熱段階の開始時における、畜熱器の圧力低下とし、
Hを畜熱器の高さとし、
ρを20℃に加熱される上記ガスの密度とし、
gを重力加速度としたとき、
ΔPhot - ΔPcold ≧ 5ρgH であり、
加熱段階の間に加熱すべき上記ガスの流量が、常圧時で内側格子の表面領域において、300m3N/h.m2に等しい、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
過圧で該吹き出し段階を行う、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該粗いばらの材料の粒子サイズが15mmより小さい、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
部分負荷による作動時、加熱段階が、全出力で行われ、吹き出し段階の後に一時的に中断される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。」

4. 当審の判断。
請求人が提出した平成18年3月27日付手続補正書による補正は、上述したように、特許請求の範囲のみを対象としたものであるため、当審の平成17年9月22日付拒絶理由通知書で指摘した不備のうち少なくとも不備11?22は解消していないのであるが、ここで、再度、発明の詳細な説明及び図面の記載並びに平成18年3月27日付手続補正書による補正後の特許請求の範囲の記載を検討する。

まず、不備14?不備14-4及び不備20が解消していないことにより、第1図が意味する技術的内容が、依然として明確でない。
そうすると、この第1図に関する説明の記載事項及び発明の詳細な説明の他の記載事項を参酌しても、請求項1に係る発明の構成に欠くことができない事項とされている、式「ΔPhot - ΔPcold ≧ 5ρgH」の関係を満たすこと、及び、加熱段階の間に加熱すべきガスの流量を、常圧時で内側格子の表面領域において、「300m3N/h.m2」」とすることが、それぞれ、どのような技術的根拠を持つものなのか、或いは、どのような技術的な意義を持つものなのかが、依然として不明であり、また、具体的にどのようにして実施されるものなのかも依然として不明である(不備8)。さらに、そもそも、上記式でいうH(蓄熱器の高さH)とは、第2図のような構造の蓄熱器を考えると、どこからどこまでの長さを指すものなのか明確にされるべきところ、依然として、明確に特定できるものではない(不備5)。
また、発明の詳細な説明には、発明の目的として「したがって本発明の目的は、煙突効果によって発生された欠点を避けることによって、特に著しく低減された蓄熱器の構造的高さに対して、出力を増加することによって、上に述べられた蓄熱器と同様に、導入部で述べられた方法を改良することである。」(明細書第4頁末2行?第5頁第2行。)と記載され、さらに、補正後の請求項1に「蓄熱器におけるガスの加圧及び煙突効率の低下方法」であると記載されていることから、請求項1?4に係る発明は、煙突効果又は煙突効率に関連して創意工夫されたものであることが明らかであるのだが、上述した式等の請求項1?4に係る発明の構成に欠くことができない事項と煙突効果或いは煙突効率との関係も、依然として明らかではない(不備3)。

次に、不備17が解消していないことにより、「部分負荷」が意味する技術的内容も、依然として明確でない。
そうすると、請求項4に係る発明は、部分負荷により作動することをその構成に欠くことができない事項に含むものであるが、それが具体的にどのような技術的内容を意味するものかが、依然として不明である(不備10。なお、拒絶理由通知書で不備があると指摘した請求項3は、平成18年3月27日付手続補正書による補正で請求項4とされた。)。

以上からすると、請求項1?4に係る発明が、具体的にどのように構成されるものなのか、また、どのようにして所与の目的を達成するものなのか、といったことが依然として不明であるから、発明の詳細な説明の記載は、請求項1?4に係る発明を当業者が容易に実施できるように、それぞれの目的、構成及び効果を明りょうに記載したものではないし、また、請求項1?4の記載も、発明の構成に欠くことができない事項を明りょうに記載したものとはいえない。

4. むすび。
したがって、本願は、明細書の発明の詳細な説明に当業者が容易にその実施をすることができる程度に発明の目的、構成及び効果を明りょうに記載したとは認められず、また特許請求の範囲に発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項のみを明りょうに記載したとも認めることができないから、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない。すなわち、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-08 
結審通知日 2006-06-14 
審決日 2006-06-28 
出願番号 特願平6-510757
審決分類 P 1 8・ 531- WZ (F28D)
P 1 8・ 534- WZ (F28D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 富夫  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 佐野 遵
新海 岳
発明の名称 ガスを加熱する方法及びガス加熱蓄熱器  
代理人 浜野 孝雄  

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