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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E04B
審判 全部申し立て 発明同一  E04B
審判 全部申し立て 2項進歩性  E04B
管理番号 1148125
異議申立番号 異議2003-73204  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-19 
確定日 2006-12-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第3429469号「室内用建材」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3429469号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3429469号に係る出願は、平成12年2月23日の出願であって、平成15年5月16日に特許権の設定登録がなされ、その後、大建工業株式会社と美濃顔料化学株式会社から特許異議の申立がなされて、取消理由通知が通知され、その指定期間内である平成16年10月7日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由通知が通知され、それに対して、平成17年5月16日付けで訂正請求書を補正する手続補正書が提出されたものである。

2.訂正の適否について
平成17年5月16日付けで行われた訂正請求書の補正は、訂正事項を変更しており、訂正請求書の要旨を変更するものと認められるので、当該訂正請求書の補正は、特許法第120条の4第3項で準用する同法第131条第2項の規定に違反するものであり、採用できない。
そして、平成16年10月7日付け訂正請求は、訂正拒絶理由通知で指摘したように、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされた訂正ではなく、該訂正は、特許法第120条の4第3項で準用する同法第126条第2項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

3.異議の申立てについての判断
(1)本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「木質材、土質材、紙材、コルク材、モルタル材、樹脂シ-トに、静電気に帯電しにくい高分子化合物から選ばれた水性アクリルエマルジョン、並びに希有元素類を含む鉱物、及び少なくともトルマリン若しくは遠赤外線セラミックスのいずれか一方を含有した樹脂組成物を一部分或いは全面に塗布又は層着したマイナスイオンを放出すると同時に、遠赤外線を放射することを特徴とする室内用建材。」

(2)特許法第36条第6項第1号及び第2号に関して
取消理由通知で指摘したように、請求項1において「……樹脂組成物を一部分或いは全面に塗布又は層着した……」とあるが、「層着」という事項は不明確である。また、詳細な説明の項においても、何ら説明されておらず、樹脂組成物をどのような状態とするのか不明である。

(3)特許法第29条の2に関して
取消理由通知で提示した、本件出願の日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された、特願平11-193620号(特開2001-19420号公報、異議申立人美濃顔料化学株式会社提出の甲第7号証。以下、「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書及び図面(以下、「先願明細書」という。)には、以下の記載がある。
「【請求項1】自発分極を持つ粉体と、前記自発分極を持つ粉体を、マイナスイオンを発生させるように励起する励起剤の粉体とが混合されていることを特徴とする粉体。」
「【請求項15】請求項1?3のいずれかに記載の粉体が紙、不織布又は、布にバインダーを用いて固定されていることを特徴とする粉体の応用素材。」
「【請求項17】高分子エマルジョンを前記バインダーとして用いたことを特徴とする請求項15に記載の粉体の応用素材。」
「【0011】……放射線を放出する粉体としては、放射線を放出する天然鉱石である……モズナ石等があり」(当審注:「モズナ石」は、「モナズ石」の誤記と認める。)
「【0016】……自発分極を持つ粉体たとえばトルマリンと放射線を放出する粉体(以下励起剤という)を混合することによって、多くのマイナスイオンが発生する。これらの粉体を樹脂、例えば……ポリアクリル系樹脂……などに混練することによって、マイナスイオンを発生する樹脂が可能となり、粉体のままよりも取り扱いや応用が広がる。」
「【0028】……一般に用いられる塗料、もしくは難燃塗料にトルマリンと励起剤の粉体を含有させた場合について説明する。一般塗料においても難燃塗料においてもトルマリンと励起剤の粉体を混合することで、マイナスイオンを効果的に発生させることが可能となる。」
「【0033】……トルマリンと励起剤の粉体を固定する方法として、高分子のエマルジョンを使用する。高分子エマルジョンにトルマリンと励起剤の粉体を0.01重量%?500重量%の範囲で均一に分散し、紙、不織布、布に塗布する。塗布後、乾燥、固化を行う。高分子エマルジョンは網目状になってトルマリンと励起剤の粉体を紙、不織布、布に固定するため、トルマリンと励起剤の表面はほとんどの部分空気と接触する。したがって、マイナスイオンが発生すると効果的に空気中に出ていくことになる。」
これらの記載を含む明細書全体を参照すると、先願明細書には、以下の発明が記載されていると認められる。
「紙に、ポリアクリル系樹脂や一般に用いられる塗料、並びにモナズ石等の放射線を放出する天然鉱石、及びトルマリンを含有した樹脂組成物を塗布したマイナスイオンを放出する、応用素材。」(以下、「先願発明」という。)

ここで、木質材、土質材、紙材、コルク材、モルタル材、樹脂シートに塗料を塗布した室内用建材は慣用技術にすぎず、また、水性アクリルエマルジョン塗料は、室内用建材塗料の代表的なもの(異議申立人美濃顔料化学株式会社提出の甲第5号証等参照)であるし、かつ、水性アクリルエマルジョン塗料は静電気に帯電しにくい高分子化合物であること、さらに、特許権者が、平成16年10月7日付け特許異議意見書の9頁25行?10頁18行において証明しているように、トルマリンは遠赤外線放射物質であることをふまえて、本件発明と先願発明とを対比すると、先願発明の「ポリアクリル系樹脂や一般に用いられる塗料」、「モナズ石等の放射線を放出する天然鉱石」、「応用素材」は、各々本件発明の「静電気に帯電しにくい高分子化合物から選ばれた水性アクリルエマルジョン」、「希有元素類を含む鉱物」、「室内用建材」に相当し、先願発明の応用素材も「遠赤外線を放射する」から、先願発明は、本件発明と同一である。そして、本件発明の発明者が上記先願の発明者と同一であるとも、又本件の出願の時に、その出願人が上記先願の出願人と同一であるとも認められない。

(4)特許法第29条第2項に関して
(4-1)引用刊行物記載の発明
取消理由通知で引用した、特開平11-279422号公報(異議申立人大建工業株式会社提出の甲第1号証、異議申立人美濃顔料化学株式会社提出の甲第4号証。以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。
「【請求項1】静電気に帯電しにくい高分子化合物、並びに希有元素類を含む鉱物よりなるマイナスイオンを放出すると同時に遠赤外線を放射することを特徴とする樹脂組成物。」
「【請求項5】前記樹脂組成物が少なくともトルマリン若しくは遠赤外線放射セラミックスのいずれか一方を含む請求項1?4記載の樹脂組成物。」
「【0018】……本発明は……内装建材……等の広範な分野で有用である。」
「【0020】試料の作成 (1)表1に示す実施例1,2,3,4,5,6の所定量を配合した混合物を、5Lボ-ルミル機にて、2時間攪拌混合した。その混合物を、糊引き機にて、綿織布N0.4141に、2mm間隔の点ドット塗布加工を行い、塗布量として、100g/m2 塗布して、乾燥炉にて120℃,10分間乾燥したドット加工織布を使用した。」
これらの記載を参照すると、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「静電気に帯電しにくい高分子化合物、並びに希有元素類を含む鉱物、及び少なくともトルマリン若しくは遠赤外線放射セラミックスのいずれか一方を含有したマイナスイオンを放出すると同時に遠赤外線を放射する樹脂組成物を用いた内装建材。」

同じく、特開平11-279445号公報(異議申立人大建工業株式会社提出の甲第2号証。以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。
「【請求項1】合成樹脂塗料に粒径0.5μ?50μの電気石粉と分散剤を配合してなる塗料。」
「【請求項12】上記合成樹脂塗料は、アクリル樹脂塗料である請求項1,2,3又は4に記載の塗料。」
「【0001】……本発明は、表面を保護する目的等で被装物表面に塗布する塗料に係り、特に、マイナスイオンを生成する塗料に関する。」
「【0024】……電気石は、近年、外部電界が存在している限り正電荷の中心と負電荷の中心とが自発的に電気分極を有する固体誘電体として発見された天然に産する鉱物(トルマリン鉱石)である。この電気石を粉砕して粒径0.5μ?50μの粉状にした電気石粉が合成樹脂塗料に混合されている。」
「【0030】このように合成樹脂塗料に粒径0.5μ?50μの電気石粉と分散剤を配合して構成した塗料は、建築材料(板材、壁材等)の表面、製品を構成する材料の表面、既成の製品の外面に塗布するものである」
「【0053】本発明に係る塗料の第12の実施の形態は、合成樹脂塗料を、アクリル樹脂塗料で構成したものである。アクリル樹脂塗料は、アクリル酸、メタクリル酸の誘導体を主成分とする重合樹脂で、アクリルモノマー、スチレンモノマーの反応性、二重結合をラジカル触媒で活性化し、高分子化するものである。このラジカル触媒には、過酸化物、アゾビス化合物が用いられる。アクリルモノマーには、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n-ブチル等多くの種類がある。このアクリル樹脂塗料は、本来は熱可塑性樹脂(自然乾燥用)であるが、メラミン樹脂などで補強することにより熱硬化性樹脂(焼付用)としても使われ、アクリル樹脂塗料の形態には、水溶性樹脂・エマルジョン樹脂・非水エマルション(N・A・D)・粉体樹脂などさまざまなものがある。
【0054】このようにアクリル樹脂には、溶剤型と水溶型があり、溶剤型には熱可塑性樹脂(自然乾燥アクリル、アクリルラッカー)と熱硬化性樹脂(熱硬化性アクリル、アクリル粉体)がある。また、水溶型にはエマルション型と水溶性型とがあり、エマルション型には熱可塑性樹脂(壁用エマルション)と熱硬化性樹脂(瓦・壁材など)が、水溶性型には熱硬化性樹脂(焼付下地)と熱可塑性樹脂(一部家庭用)がある。」
「【0069】本願請求項12に記載の発明によれば、電気製品・建材・自動車などの工業用から屋内(室内)塗装などの建築用に塗布することができ、室内製品・室内建材・内装に用いることにより室内に大量のマイナスイオンを生成することができる。」

(4-2)対比・判断
本件発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の「内装建材」は、本件発明の「室内用建材」に相当するといえるから、両者は下記の点で相違し、その余の点では一致している。
相違点1:室内用建材が、本件発明では、木質材、土質材、紙材、コルク材、モルタル材、樹脂シートに塗料を塗布した建材であるのに対して、刊行物1に記載された発明では、試料の作成に際し、基材である布に塗布してはいるが、上記のように限定されていない点。
相違点2:静電気に帯電しにくい高分子化合物が、本件発明では、水性アクリルエマルジョンであるのに対して、刊行物1に記載された発明では、そのように限定されていない点。
上記相違点1について検討すると、室内用建材として、木質材、土質材、紙材、コルク材、モルタル材、樹脂シートに塗料を塗布した建材は、慣用技術にすぎないし、刊行物2にも、マイナスイオンを放出する塗料を、建築材料(板材、壁材等)の表面に塗布した室内建材が記載されている。
次に、相違点2について検討すると、刊行物2には、合成樹脂塗料にトルマリンと分散剤を配合してなるマイナスイオンを生成する塗料において、合成樹脂塗料として、水性アクリルエマルジョン樹脂(非水エマルションに対し、エマルジョン樹脂は水性と解される)を用いることが記載されており、水性アクリルエマルジョン塗料は静電気に帯電しにくい高分子化合物であることから、刊行物1に記載された発明の静電気に帯電しにくい高分子化合物として、上記相違点2における本件発明のように、水性アクリルエマルジョンを選ぶことは、設計的事項にすぎない。また、水性アクリルエマルジョン塗料は、室内用建材塗料の代表的なもの(必要なら、異議申立人美濃顔料化学株式会社提出の甲第5号証等参照)であるし、水性アクリルエマルジョン塗料は静電気に帯電しにくい高分子化合物であることからも、上記相違点2における本件発明のようにすることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明は、特許法第36条第6項第1号及び第2号、同法第29条の2、及び、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明の特許は、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-07-01 
出願番号 特願2000-45529(P2000-45529)
審決分類 P 1 651・ 537- ZB (E04B)
P 1 651・ 161- ZB (E04B)
P 1 651・ 121- ZB (E04B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 高橋 三成  
特許庁審判長 山 田 忠 夫
特許庁審判官 伊 波 猛
南 澤 弘 明
登録日 2003-05-16 
登録番号 特許第3429469号(P3429469)
権利者 株式会社日野樹脂
発明の名称 室内用建材  
代理人 竹内 宏  
代理人 二宮 克也  
代理人 石野 正弘  
代理人 竹内 祐二  
代理人 前田 弘  
代理人 河宮 治  
代理人 嶋田 高久  
代理人 小山 廣毅  
代理人 今江 克実  
代理人 足立 英一  
代理人 原田 智雄  
代理人 藤田 篤史  

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