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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B41J
審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  B41J
審判 全部無効 2項進歩性  B41J
審判 全部無効 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正  B41J
審判 全部無効 特許請求の範囲の実質的変更  B41J
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  B41J
管理番号 1148666
審判番号 無効2006-80005  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2006-07-06 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-01-16 
確定日 2006-12-11 
事件の表示 上記当事者間の特許第3667749号発明「インクカートリッジの再生方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3667749号の請求項に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願からの主だった経緯は次のとおりである。
・平成16年12月24日 本件出願
・平成17年4月15日 特許第3667749号として設定登録(請求項1?7)
・平成18年1月16日 請求人より本件審判請求
・同年3月29日 被請求人より答弁書及び訂正請求書提出
・同年4月3日付け 当審にて無効理由を通知
・同年5月2日 被請求人より意見書及び訂正請求書提出
・同年5月8日 請求人より意見書及び弁駁書提出
・同年5月17日付け 当審にて訂正拒絶理由を通知
・同年6月21日 請求人より意見書及び弁駁書提出
・同日 被請求人より意見書提出
・同年8月31日 当事者双方より口頭審理陳述要領書提出
・同日 口頭審理を実施し、新たな訂正拒絶理由を通知
・同年10月2日 被請求人より意見書及び手続補正書(平成18年5月2日付け訂正請求書の)

第2 当事者の主張及び当審で通知した無効理由
1.請求人の主張
(1)訂正請求について
平成18年5月2日付けの訂正請求は、特許法134条の2第1項ただし書各号に掲げる事項を目的としておらず、同条5項で準用する同法16条4項の規定に適合しないから認められるべきでない。

(2)無効理由1(記載不備)
請求項1に「しかる後該インク注入用に選択した開口部には融着フィルムを載せて熱融着してシールする」と、請求項3に「テープ状の融着フィルムで、複数個の並列しているインクカートリッジの容器本体に設けられているインク注入用に選択した開口部の表面を共通して貼着し」とあるが、融着フィルムは開口部ではなくインク供給口に熱融着されるものであり、明細書の段落【0029】及び【図8】に記載されているのもそうである。しかも、密封手段とは異質の材質の上であって、平坦でない面上に、融着フィルムを熱融着させることができるのか疑問である。また、開口部は「密封手段」で既に封止されているのだから、重ねて融着フィルムを熱融着させることの技術的意義が不明である。
したがって、請求項1,3記載の上記発明特定事項は発明の詳細な説明に記載されておらず、発明の詳細な説明は実施可能な程度に記載されていないとともに、上記発明特定事項の技術的意義を明らかにしていないから、特許法36条4項1号及び6項1号に規定する要件を満たしていない。
残余の請求項は請求項1,3を引用しているから、請求項1?7の特許は無効とされるべきである。
なお、特許庁が通知した無効理由も妥当である。

(2)無効理由2(進歩性)
仮に訂正が認められるとすれば、請求項1?7の特許は、甲第9号証又は甲第10号証から把握される発明を出発点とし、これに甲第3号証、甲第11?21号証から把握される技術を組み合わせることによって、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?7の特許は特許法29条2項の規定に違反してされた特許である。

(3)請求人が提出した証拠
請求人が提出した証拠は次のとおりである。
甲第1号証:特許第3667749号公報
甲第2号証:特許第3667749号原簿
甲第3号証:http://www.geocities.jp/hirai_kjp/printer_refil.htmlの情報を平成17年11月16日に印刷したもの
甲第4号証:http://www.geocities.jp/hirai_kjp/の情報を平成17年11月16日に印刷したもの
甲第5号証:http://www.urban.ne.jp/home/simtrick/Links/link.htmlの情報を平成17年11月16日に印刷したもの
甲第6号証:http://www.geocities.jp/hirai_kjp/printer.htmlの情報を平成17年11月16日に印刷したもの
甲第7号証:http://www.happydesigns.jp/blog/archives/2004/12/pm4000px.htmlの情報を平成17年11月16日に印刷したもの
甲第8号証:http://www.epson.jp/products/supply/shoumouhin/ink/inkjet_ink.htmの情報を平成17年11月16日に印刷したもの
甲第9号証:http://www.daiko2001.co.jp/innk/epson-t-1.htmの情報を平成17年10月6日に印刷したもの
甲第10号証:甲第9号証3頁「EPSON no21カートリッジ詰め替え説明書」を、平成17年10月6日にダウンロードし印刷したもの
甲第11号証:特開2001-180004号公報
甲第12号証:特開平9-94799号公報
甲第13号証:特開2001-162821号公報
甲第14号証:特開平4-257452号公報
甲第15号証:特開2003-118131号公報
甲第16号証:特開2003-53988号公報
甲第17号証:特開平9-132294号公報
甲第18号証:特開2004-321545号公報
甲第19号証:特開2004-249616号公報
甲第20号証:特開平7-34037号公報
甲第21号証:特開2002-292899号公報
甲第22号証:被請求人が請求人に送付した平成17年7月27日付内容郵便証明の写し
甲第23号証:http://www.jitdirect.jp/cgi-bin/cart/goods.cgi?item=EPSON用リサイクルインク&item2=IC21シリーズの情報を平成17年11月16日に印刷したもの
甲第24号証:特開2005-131978号公報
甲第25号証:特開2003-34040号公報
甲第26号証:株式会社ダイコー代表取締役大野隆司作成の証明書

2.当審で通知した無効理由
当審で通知した無効理由はつぎのようなものである。
(1)【請求項1】には「これに付されている栓を除去した後、ドリルで真円状に穴あけ後清浄にし」と記載されている。ところが、発明の詳細な説明には、【請求項1】と実質同文の段落【0007】を除けば、栓除去工程の記載はないから、請求項1及びこれを引用する請求項2?7に係る発明が、発明の詳細な説明に記載されたと認めることはできないから、請求項1?7の特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされた特許である。
また、栓除去工程とドリルによる穴あけ工程の双方をこの順に実行することの技術的意義が発明の詳細な説明に記載されておらず、同意義を理解することができないから、請求項1?7の特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされた特許である。
以下、この理由を「無効理由3」という。

(2)【請求項5】には「負圧を80?100kPa好ましくは90?95kPaとした」と記載されている。この記載によると、負圧が80?90kPa又は95?100kPaである場合が、請求項5に係る発明に含まれるのかどうか不明確である。したがって、請求項5及びこれを引用する請求項6,7の特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされた特許である。
以下、この理由を「無効理由4」という。

3.被請求人の主張
(1)訂正請求について
平成18年10月2日付けで補正された同年5月2日付け訂正請求は、誤記の訂正及び明りようでない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項追加にも該当しないから適法である。なお、特許法126条4項の規定は、特許請求の範囲の減縮を目的とする場合の規定であり、誤記の訂正には当てはまらない。

(2)無効理由1について
本件発明はインクカートリッジの再生方法であり、開口部をゴム栓などの密封部材で封止しても、インク漏れに対する対策が施されていてもおかしくはない。この2重封止が融着フィルムで熱融着することの技術的意義である。また、密栓と融着フィルムを併用する実施例は、発明の詳細な説明の段落【0029】に記載されている。

(3)無効理由2について
甲3?6,甲9,10号証は公知性の立証が不十分であり、証拠価値がない。甲26は私人の証明であるから証明力が不十分である。
後記分節による構成Aのインクカートリッジが公知であり、甲9,10記載のEPSON No21シリーズがこれに該当することは認めるが、構成Bが公知であることの立証はされていない。
構成D?Hはどの証拠にも示されていない。特に、甲9,10ではシール除去をせずに穴をあけている。
請求項2?7の限定事項も容易でないばかりか、請求項1に係る発明に進歩性があるから、当然請求項2?7に係る発明にも進歩性がある。

(4)無効理由3,4について
訂正により、無効理由3,4は解消した。

第3 訂正の許否の判断
本件では2度にわたり訂正請求がされているが、特許法134条の2第4項の規定により、平成18年3月29日付けの訂正請求は取り下げたものとみなされる。そこで、以下では平成18年5月2日付け訂正請求(以下「本件訂正」という。)のみ検討する。

1.補正の採否
(1)補正内容
平成18年10月2日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、訂正請求を次のように補正するものである。
補正前には、「密封されている開口部のうち、第一開口部もしくは第二開口部のいずれかをインク注入用に選択して、これに付されている栓を除去した後、ドリルで真円状に穴あけ後清浄にし、」との記載を「密封されている開口部のうち、第一開口部もしくは第二開口部のいずれかをインク注入用に選択して、これに付されている表面のシールを除去した後、ドリルで真円状に穴あけ後清浄にし、」と訂正するとしていたものを、「密封されている開口部のうち、第一開口部もしくは第二開口部のいずれかをインク注入用に選択して、これに付されている表面のシールを剥離し、ドリルで真円状に穴あけ後清浄にし、」と訂正する旨補正する。

(2)上記補正についての検討
検討すべきは次の2項目である。
ア.「除去」を「剥離」と補正する点。
イ.表面のシールの処理(補正前では「除去」、補正後では「剥離」)と、「ドリルで真円状に穴あけ後清浄」の順序につき、補正前では「表面のシールを除去した後」(下線は当審で付加)とあったため、表面のシールの処理が先であったが、補正後では順序の限定がない点。
訂正事項の補正については、訂正事項の削除、及び請求書の要旨を変更しない範囲での軽微な瑕疵の補正等は許されるが、新たに訂正事項を加える、あるいは訂正事項を変更することは、請求書の要旨の変更に該当するものとして許されない。
上記アは訂正事項を変更するものであり(「剥離」は「除去」の一態様であるが、同一の操作ではない)、上記イは順序の限定をなくすという趣旨の新たな訂正事項を加えるものであって、訂正事項の削除又は軽微な瑕疵の補正等には該当しないものである。

(3)補正の採否の結論
以上のとおり、本件補正は訂正請求書の要旨の変更に該当するから、特許法134条の2第5項で準用する同法131条の2第1項の規定に違反している。
したがって、本件補正を採用しない。

2.訂正事項
本件補正は不採用であるから、本件訂正は平成18年5月2日付け訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正するよう求めるものであり、次の訂正事項1,2を含んでいる。
訂正事項1:請求項1記載の「密封されている開口部のうち、第一開口部もしくは第二開口部のいずれかをインク注入用に選択して、これに付されている栓を除去した後、ドリルで真円状に穴あけ後清浄にし、」との記載を「密封されている開口部のうち、第一開口部もしくは第二開口部のいずれかをインク注入用に選択して、これに付されている表面のシールを除去した後、ドリルで真円状に穴あけ後清浄にし、」と訂正する(下線が訂正箇所)。
訂正事項2:請求項5記載の「負圧を80?100kPa好ましくは90?95kPaとした」を「負圧を80?100kPaとした」と訂正する。

2.訂正事項1について
(1)訂正前において除去対象とされているのは、インク注入用に選択した開口部(第一開口部又は第二開口部のいずれか)に付されている栓である。ところで、開口をテープ又はフィルム状のものでシールした場合、テープ又はフィルム状のものを「栓」と称することは十分あり得る。しかし、本件においては、その後ドリルで穴あけするのだから、再生対象とされる使用済みインクカートリッジは、開口部にシールが付されているとしても、シールとは別の部材により密封されていると解すべきであり、別の密封部材が存する場合まで、シールを「栓」と称することは不自然である。したがって、訂正事項1を特許請求の範囲の減縮と解することはできない。しかも、特許明細書においては、インク注入後の処理としてであるが、「開口部を密封手段で封止し、しかる後・・・開口部には融着フィルムを載せて熱融着してシール」(【請求項1】)及び「開口部の密封手段が、シリコーンゴム若しくはフッ素ゴムからなる栓と押さえ治具とでなる」(【請求項2】)とあるように、「シール」と「栓」が明確に区別されている。インク注入後に「シール」と「栓」を区別するのであれば、インク注入前でも区別されていると解すべきである。加えて、除去対象が「シール」であるならば、インク注入用に選択した開口部のシールに限定する必要はないのに対し、「栓」であるならば限定すべきである(無用な穴をあけることは避けるべきであるから、選択しない開口部の栓を除去することは考えられないが、シールを除去しても栓があるのだから、2つの開口部が1つのシールで覆われている場合には、選択しない開口部側を含めてシール全体を除去することは十分想定できる。)ところ、訂正前には「第一開口部もしくは第二開口部のいずれかをインク注入用に選択して、これに付されている栓を除去」とあり、「これ」とは選択された開口部を意味するから、この点からも除去対象は「栓」であると解すべきである。
請求人は、訂正事項1について、誤記の訂正であると主張するが、誤記の訂正とは、本来その意であることを明らかな字句・語句の誤りをその意味内容の字句・語句に正すことをいうのであって、訂正前の「栓」が「シール」の意味であると客観的に解することはできないから、誤記の訂正を目的とするものと認めることもできない。
請求人の主張の根拠は、願書に添付した明細書(以下、特許請求の範囲及び添付図面を含めて「特許明細書」という。)の「第一開口部、第二開口部の表面のシールを剥離し」(段落【0027】)との記載にある。しかし、表面のシールを剥離しなければ、それに続く「ドリルで真円状に穴あけ」を実行できないわけではなく、実際、例えば甲第9号証では、シール除去をせずに穴をあけている(この点は被請求人主張のとおりである。)のだから、請求項1の記載が誤記で、段落【0027】の記載が正しいと断じることはできない。段落【0027】の記載が正しいといえるためには、シール除去をすることの技術的意義等が特許明細書に明確に記載されていなければならないが、そのような記載は見あたらない。
ところで、願書に最初に添付した特許請求の範囲の【請求項1】には、「該インク注入用に選択した開口部を密封手段で封止し、しかる後該インク注入用に選択した開口部にシリコーンゴム栓を栓押さえ治具により装填して封止し」とあったところ、平成17年1月28日拒絶理由により同様な封止工程を二回行うことの記載不備を指摘され、それに伴い「しかる後該インク注入用に選択した開口部にシリコーンゴム栓を栓押さえ治具により装填して封止し」が削除されたものである。また、特許明細書の段落【0028】には「・・・シリコーンゴム栓102を用いて密栓する。・・・図7では支持具51に装荷されたインクカートリッジ3個を同時に密栓するために、透明な耐熱性プラスチック片53を介在させて、専用押し棒52で加熱押し圧して融着しているので、効率的に融着作業がなされる。」と記載があるけれども、シリコーンゴム栓を加熱融着するとは考えづらいので、これも誤記と解される。このように、本件明細書には、出願当初から無効理由とは別の誤記がいくつかあったことも併せ考えると、特許明細書に文言としての記載があったとしても、その技術的裏付けがない限り、文言記載を全面的に信ずることはできない。そうである以上、段落【0027】の「第一開口部、第二開口部の表面のシールを剥離し」が誤記でないとは断定できないのだから、訂正事項1を誤記の訂正と認めることはできない。
したがって、訂正事項1は特許法134条第1項ただし書各号に掲げる事項を目的としていない。

(2)訂正後の請求項1では、インク注入用に選択した開口部(第一開口部又は第二開口部のいずれか)に付されている表面のシールを除去する旨記載されている。ところが、特許明細書には、シール除去について段落【0027】に記載されているだけであり、そこには「第一開口部、第二開口部の表面のシールを剥離し」とあり、剥離(除去)されるシールは2つの開口部のシールすべてであって、インク注入用に選択した開口部に付されている表面のシールのみを除去することが記載されているわけではない。
また、インク注入用に選択した開口部に付されている表面のシールのみを除去することが自明であると認めることもできない。
したがって、訂正事項1は特許明細書に記載した事項の範囲でされたものではないから、特許法134条の2第5項で準用する同法126条3項の規定に適合しない。訂正事項1が誤記の訂正を目的とするものであったとしても、シール除去に関する記載は一切補正されていないから、訂正事項1は願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は添付図面のいずれにも記載されておらず、特許法134条の2第5項で準用する同法126条3項の規定に適合しない。

(3)仮に訂正事項1が誤記の訂正を目的としていても、訂正前後の特許請求の範囲を比較したとき、特許請求の範囲の拡張又は変更に該当する場合には訂正を認めることはできない。
訂正事項1は、ドリルでの穴あけに先だって実施する工程を、訂正前の「栓を除去」から訂正後の「表面のシールを除去」に変更するものであるから、特許請求の範囲を変更することが明らかである。
すなわち、訂正事項1は、特許法134条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に適合しない。
この点被請求人は、特許法126条4項の規定は誤記の訂正には当てはまらないと主張するが、特許法134条の2第5項は「第百二十6条第2項から第五項まで、第百二十7条、第百二十8条、第百三十1条、第百三十2条第3項及び第四項並びに第百六十5条の規定は、第二項の場合に準用する。」と規定しており、法126条4項を準用する場合のただし書きは存在しないから、根拠のない主張であり、採用することができない。

3.訂正事項2について
被請求人は、訂正事項2について「「好ましくは90?95kPa」を削除し、明確に致しました。」と主張しており(訂正請求書7頁3?4行)、明りようでない記載の釈明(特許法134条の2第1項ただし書3号該当)を目的とする旨主張しているものと解される。
訂正前の記載については、「好ましくは90?95kPa」が発明を何ら特定せず、負圧範囲が「80?100kPa」であるとの解釈(以下「第1解釈」という。)と、負圧80?100kPaの中から好ましいものとして「90?95kPa」を請求項5において限定するとの解釈(以下「第2解釈」という。)との二様の解釈が可能である。第1解釈に従えば、確かに明りようでない記載の釈明に該当するが、第2解釈であれば特許請求の範囲の拡張に該当する。
ところで、明りようでない記載とは、記載された文言のみからはその意味するところを直ちに理解することが困難であるとの意味であり、これを釈明するとは、直ちには理解できないものの、文言が用いられている文脈、発明の詳細な説明の記載等を総合考慮すれば、記載された文言の意味が確定できる場合に、文言の意味を直ちに理解できる程度に書き改めることである。当然、文言の意味が変更されることがあってはならない。
ところが、上記のとおり訂正前の記載については、その意味するところを確定することができないから、訂正前後の記載の意味が変更されていないと断定することができない。
そうである以上、訂正事項2が明りようでない記載の釈明を目的とすると認めることはできない。また、訂正事項2が特許請求の範囲の減縮(特許法134条の2第1項ただし書1号)又は誤記又は誤訳の訂正(同2号)を目的とするものと認めることもできない。
したがって、訂正事項2は、特許法134条第1項ただし書各号に掲げる事項を目的としていない。

4.訂正の許否の判断の結論
以上のとおり、本件訂正は、特許法134条第1項ただし書各号に掲げる事項を目的としておらず、並びに同条5項で準用する同法126条3項及び4項の規定に適合しないから、本件訂正を認めることはできない。

第4 本件審判請求についての判断
1.特許請求の範囲の記載
本件発明は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?請求項7に記載された事項によって特定されるものである。ただし、請求項1の「容器客体」及び「インク供給芯」並びに請求項3の「支持体」は、「容器本体」、「インク供給針」及び「支持具」の自明な誤記と認められるから訂正した上で、請求項1については適宜分節し、次のとおり認定する。
【請求項1】
A)一方側に開口する平面ほぼ矩形状の容器本体と、この容器本体の開口を封止する容器蓋体とを有し、その内部にインク流路系および空気流路系から大略構成され、前記容器本体の下方部に、記録ヘッドのインク供給針に接続可能なインク供給口及びこのインク供給口の側方に並列する第一開口部、第二開口部を有し、第一開口部は第一インク収容室に、第二開口部は前記第一インク収容室及びインクエンド室に連通され、さらに、容器本体の上方側部に係止部材が設けられ、バルブ収容室を有し、さらに、容器本体の上面部にカートリッジの識別用のラベル、背面に空気溝を覆うラベルが貼付されている使用済みインクカートリッジに対して、インクを注入して再生するにあたり、
B)該容器本体のインク供給口を上向きもしくは下向きにしてセットし、
C)密封されている開口部のうち、第一開口部もしくは第二開口部のいずれかをインク注入用に選択して、
D)これに付されている栓を除去した後、
E)ドリルで真円状に穴あけ後清浄にし、
F)インク供給口から残存インク及び空気を吸引除去しながら該インク注入用に選択した開口部よりインクを注入し、
G)その後該インク注入用に選択した開口部を密封手段で封止し、
H)しかる後該インク注入用に選択した開口部には融着フィルムを載せて熱融着してシールすることを特徴とする
I)カートリッジの再生方法。
【請求項2】インク注入用に選択した開口部の密封手段が、シリコーンゴム若しくはフッ素ゴムからなる栓と押さえ治具とでなる請求項1に記載のカートリッジの再生方法。
【請求項3】 使用済みインクカートリッジを複数個を並列にして支持具に装着し、前記各工程を連続的に行い、インク注入用に選択した開口部はインク注入後、密封手段で封止した後、テープ状の融着フィルムで、複数個の並列しているインクカートリッジの容器本体に設けられているインク注入用に選択した開口部の表面を共通して貼着し、その後各インクカートリッジの容器本体間で融着フィルムを切断して分離し、融着フィルムの端部を各インクカートリッジ容器本体に密着させることを特徴とする請求項1もしくは2に記載のインクカートリッジの再生方法。
【請求項4】支持具は、インクカートリッジの複数個を並列にして嵌装して係止保持する切り欠き部を有し、かつ少なくとも支持具の脚部の先端四隅に設けられた突起を有し、該突起が両側面に係止穴を有する支持具固定テープ上に載置され、該突起と係止穴との嵌合により固定される請求項1、2若しくは3に記載のインクカートリッジの再生方法。
【請求項5】インク供給口から残存インク及び空気を吸引除去する際の負圧を80?100kPa好ましくは90?95kPaとしたことを特徴とする請求項1、2、3若しくは4に記載のインクカートリッジの再生方法。
【請求項6】並列に載置された複数個のインクカートリッジのそれぞれのインク注入用に選択した開口部に請求項2に記載の密封手段を行うに際して、該密封箇所の上に共通の樹脂板を載せて、その中央部を押さえ治具で圧押しして完全に封止することを特徴とする請求項1、2、3、4若しくは5に記載のインクカートリッジの再生方法。
【請求項7】使用済みインクカートリッジの再生処理前に、容器に付されている出所表示となるロゴをコテにより溶融して消去することを特徴とする請求項1、2、3、4、5若しくは6に記載のインクカートリッジの再生方法。

2.本件発明の特徴的構成
(1)本件出願時に公知の発明の認定
甲第9号証は、株式会社ダイコーがインターネット上で提供している情報を、平成17年10月6日に印刷したものであり、「EPSON No21,22,23詰め替え手順方法(2004.06.09更新)」として次のような説明がされている。
ア.「このカートリッジは、・・・カートリッジ内にバルブを設けているタイプです」
イ.「1.図1の場所に薄っすら見える丸型の部分にカッター等で穴を開けます。
2.まず、中抜きシールを台紙から剥がす前に穴をくり抜いておきます。図1の穴に中抜きシール(図2)の穴を合わせて貼り付けます。その後、シールは両面テープになってますので、スポイト補助具(図2)を貼り付けて下さい。
3.10ccのピストンスポイトにインクを約半分入れ図3にスポイトを入れ、ピストンを引き空気を強制的に抜いき、そのまま手を離してください。空気を抜くことにより自動的にゆっくりとスポイト内のインクが補充されます2?3度程同じ事を繰り返すとほぼインクが一杯になります。
4.図3にてインクを補充したら、インクの噴出し口からもう一本のスポイトを差込み、インクを1ccほど引きます。(図4)カートリッジのバルブ付近にインクを強制的に引き込むための作業です。・・・
5.最初に空けた穴の付近を良くふき取ります。ふき取った後に付属のゴム栓にて空けた穴をふさぎます。・・・」

また、甲9第2頁には、詰め替え説明用の図(写真を含む)も掲載されており、「薄っすら見える丸型の部分」と「インクの噴出し口」が、平面ほぼ矩形状の容器本体の1つの面に並んで配置されていること、及び同面を上向きにして詰め替えを行うことが読み取れる。同面が上面であることは、「空気を抜くことにより自動的にゆっくりとスポイト内のインクが補充され」との現象が、インクと空気の置換であり、この置換のためにはスポイトを上部に配すべきことからも窺える。
したがって、甲9には「EPSON No21」のインクカートリッジ(以下「IC21系カートリッジ」という。)の詰め替え方法として、次のような発明が記載されていると認めることができる。
「IC21系カートリッジの詰め替え方法であって、
インクの噴出し口を上面にセットし、
上面に薄っすら見える丸型の部分に穴をあけ、
同穴にスポイトを入れ、ピストンを引き空気を強制的に抜くことによりスポイト内のインクを補充し、
インク補充後ゴム栓にて空けた穴をふさぐ詰め替え方法。」(以下「引用発明」という。)

甲9第1頁上欄に「買い物かご」と記載があることからみて、株式会社ダイコーは、インク付け替えキットをインターネット上で販売することを業としている。インク付け替えキットをインターネット上で販売するに当たっては、詰め替え作業が容易であることを一般ユーザに知らしめることが、販売促進上得策であることは明らかであるから、詰め替え方法を開発すれば、速やかにその手順をインターネット上で公開し、詰め替えキット販売を行うと解すべきであって、「2004.06.09更新」との記載は、甲9記載の詰め替え方法が、更新日にインターネット上で公開されたことを意味し、その後甲9印刷日まで更新されていないことを意味する。そのことは、株式会社ダイコー代表取締役が甲26にて証明しているとおりであり、この証明書に格別不審な点はない。もちろん、更新日以前にも詰め替えキットは販売されていたかもしれないが、詰め替え方法の説明は甲9とは異なるものであったと解される。したがって、引用発明は「特許出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明」に該当する。
甲9記載の方法が本件出願前に公知であることは、次の事実によっても裏付けられる。
甲6には「海軍爺様の「インク77」」及び「Daiko(株)」へのリンクが張られており、リンク先の「海軍爺様の「インク77」」のURLは「http://www2u.biglobe.ne.jp/~navy77/page007.html」であるが、このウエブサイトでは、IC21系カートリッジの詰め替え方法として、2002年、2003年及び2004年の箇所にそれぞれ異なる説明がされており、2002年では「手前の穴が注入口であるが、ここから注射器に針をつけてで入れようとしても絶対い入らないのである。注射器にノズルを取り付け、この穴にしっかり入れ込みかなりの圧力をかけて注入する以外は注入は不可能である。」と、2003年には甲9とほぼ同様の説明(ただし、「薄っすら見える丸型」に該当するものは甲9に比して、インクの噴出し口から遠い位置にある。)がされており、2004年では、「新しい注入方法はインクの注入口のそばにある穴は直径2ミリの穴が開いてますのでそこよりインクを注入する」(この「インクの注入口のそばにある穴」は甲9の「薄っすら見える丸型の部分」と同位置と認める。)と説明されている。
さらに、URLが「http://jcob.net/ink/inklink.html」で特定されるウエブサイトには、「PM-950Cカートリッジ」(このカートリッジがIC21系カートリッジであることは明らかである。)の詰め替え方法として、甲9とほぼ同様の説明がされており、甲9記載の「薄っすら見える丸型の部分」と同位置が「2004年方式の補充口」と、それよりも外側部分の穴が「充填口」と説明されている。
これらによれば、IC21系カートリッジの詰め替え方法として、「海軍爺様の「インク77」」及びURLが「http://jcob.net/ink/inklink.html」で特定されるウエブサイト(これらウエブサイトは、甲9同様オンラインショッピングサイトである。)において、薄っすら見える丸型の部分の位置まで含めて甲9と同一視できる方法を、2004年にインターネット上で公開し、その後更新していないものと認めることができる。詰め替え方法を更新するからには、更新後の方法が更新前の方法より優れており、更新後の方法を最も早く公開した者が誰であるかは不明なものの、一旦公開されれば、他の詰め替えキット販売業者が追随して、更新後の方法を採用することは明らかであるところ、甲9において更新日とされる2004年6月9日は、上記2つのウエブサイトにおける更新時期と符合するものであるから、詰め替えキット販売業者である株式会社ダイコーが同社のウエブサイトにて、本件出願前の2004年6月9日に甲9記載の方法を公開していたことは明らかというべきである。

(2)本件発明と引用発明との対比
以下では、請求項1に係る発明を「本件発明」という。
甲第3号証には「EPSONのPM-950C」のプリンタ用のインクカートリッジの詰め替えについての記載が写真とともにあり、既に述べたように同プリンタ用のインクカートリッジがIC21系カートリッジであることは常識である(甲3第4頁の写真には「ICM21」の文字が見られることによっても、そのことは裏付けられる)。甲3には、同カートリッジの分解写真(5頁?11頁)や同カートリッジを基に試作したスケルトンカートリッジの写真(15頁,16頁)があり、これら写真によれば、IC21系カートリッジが本件発明の構成Aに該当することは明らかである。百歩譲って、そのように認定できないとしても、甲3第6頁の写真には「インク注入口」と「用途不明孔」が図示されており、IC21系カートリッジが2つの開口部を有することは認定できる。また、構成Aのカートリッジ自体は、本件明細書の段落【0004】記載の「【特許文献1】特開2003-145792号公報」に記載のカートリッジであることは一見して明らか(同一図面が添付されており、カートリッジの構造説明もほとんど同文である。)であるから、引用発明における詰め替え対象を構成Aのカートリッジとすることは設計事項に属する。被請求人も、IC21系カートリッジが本件発明の構成Aに該当することは認めていることを考慮し、以下では、IC21系カートリッジが構成Aを充足するものとして検討をすすめる。もちろん、引用発明の「薄っすら見える丸型の部分」が本件発明の「第一開口部もしくは第二開口部のいずれか」に相当し、同じく「インクの噴出し口」が「インク供給口」に相当する。また、引用発明の「ゴム栓」が本件発明の「密封手段」に相当し、「詰め替え方法」は「再生方法」でもある。
したがって、本件発明と引用発明とは、
「A)一方側に開口する平面ほぼ矩形状の容器本体と、この容器本体の開口を封止する容器蓋体とを有し、その内部にインク流路系および空気流路系から大略構成され、前記容器本体の下方部に、記録ヘッドのインク供給針に接続可能なインク供給口及びこのインク供給口の側方に並列する第一開口部、第二開口部を有し、第一開口部は第一インク収容室に、第二開口部は前記第一インク収容室及びインクエンド室に連通され、さらに、容器本体の上方側部に係止部材が設けられ、バルブ収容室を有し、さらに、容器本体の上面部にカートリッジの識別用のラベル、背面に空気溝を覆うラベルが貼付されている使用済みインクカートリッジに対して、インクを注入して再生するにあたり、
B)該容器本体のインク供給口を上向きもしくは下向きにしてセットし、
C)密封されている開口部のうち、第一開口部もしくは第二開口部のいずれかをインク注入用に選択して、
E’)穴あけし、
F’)該インク注入用に選択した開口部よりインクを注入し、
G)その後該インク注入用に選択した開口部を密封手段で封止し、
I)カートリッジの再生方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点1〉構成Dの有無。
〈相違点2〉構成Eにおいて、「ドリルで真円状に穴あけ」するかどうか、及び穴あけ後に洗浄するかどうかの点。
〈相違点3〉構成Fにおいて、「インク供給口から残存インク及び空気を吸引除去しながら」インクを注入するかどうかの点。
〈相違点4〉構成Hの有無。

(3)相違点2,3についての検討
〈相違点2について〉
一般に穴あけをドリルにて行うことは周知であり、ドリルであれば自然に真円状に穴あけすることになる。また、穴あけ後に洗浄することが好ましいことは明らかである。したがって、相違点2は設計事項というべきである。
〈相違点3について〉
前掲特開2003-145792号公報は、発明の名称を「インクカートリッジの製造方法」とする公開公報であり、「第二インク収容室16および第三インク収容室17へのインク注入は、第二インク収容室16および第三インク収容室17内をインク供給口4から真空吸引しながら行う。」(段落【0032】)との記載がある。このように、業としてインク注入を行うに当たり、インク供給口から真空吸引しながら行うことは周知である。
引用発明は、一般家庭においてインクを詰め替える方法であるから、「インク供給口から残存インク及び空気を吸引除去しながら」インク注入はしておらず、丸型の部分の穴から空気を吸引することで、カートリッジ内の圧力を下げている(IC21系カートリッジにはバルブがあるため、カートリッジ内の圧力を下げてもインク供給口から空気は流入しない。)のであるが、上記周知技術のようにインク供給口から真空吸引すれば、カートリッジ内の圧力は下がり、自然とインクがカートリッジ内に流入することは明らかであるから、相違点3は一般家庭で詰め替えを行うか、業としてカートリッジ再生を行うかの相違にすぎず、上記周知技術を採用することは設計事項というべきである。
もっとも、引用発明において構成Bを採用した理由は、インク注入口からカートリッジ内の空気を吸引し、インクと空気を置換するに当たり、その置換を容易ならしめるために「インク供給口を上向き」としたものと解されるところ、上記周知技術を採用する場合には、カートリッジ内の空気は、インク注入用の開口部ではなくインク供給口から吸引されることになるので、「インク供給口を上向き」とする構成をそのまま踏襲する必要は必ずしもない。しかしながら、「インク供給口を上向き」として不都合な理由はないし、インク注入終了後には、開口部とインク供給部を密閉しなければならないから、「インク供給口を上向き」とすることが自然である。実際、前掲【特許文献1】特開2003-145792号公報においても、「インクカートリッジ1をインク供給口4が上側となるような姿勢に配置する。」(段落【0027】)と記載されているとおり、「インク供給口を上向き」とする構成が採用されている。
以上のとおり、相違点3に係る本件発明の構成を採用することは設計事項というべきである。

(4)本件発明の特徴的構成
相違点2,3は設計事項にすぎないから、進歩性判断を行うに当たり、最も重要な相違点は、相違点1及び相違点4であり、本件発明の特徴的構成は構成D及び構成Hであるというべきである。
念のために、相違点1の想到容易性につき検討するに、構成Dのように栓除去を行えば、栓が完全に除去できないとしても開口はできるはずであるから、その開口からインク注入を行えば十分である。逆に、構成Eによって穴あけを行うのであれば、事前に栓を除去する必要性がない。すなわち、構成Dを構成Eと併用する必然性がない。構成Dを構成Eと併用することが容易というためには、併用することの何らかの合理的理由が必要であるが、請求人はそのような理由があることを述べておらず、自明であると認めることもできない(請求人は、訂正成立の場合の予備的主張として、進歩性欠如を主張するにとどまる。)。そうである以上、構成Dを採用することが当業者にとって想到容易であるとの、合理的理由を見出すことができない。

3.無効理由1について
無効理由1で問題となるのは、構成H及びこれを請求項3において限定した「テープ状の融着フィルムで、複数個の並列しているインクカートリッジの容器本体に設けられているインク注入用に選択した開口部の表面を共通して貼着し」との構成である。
特許法36条4項1号は、発明の詳細な説明の記載について「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること」でなければならないと規定している。ここでいう「経済産業省令で定めるところ」とは、「特許法第三十6条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」(特許法施行規則24条の2)との規則である。
上記規定によれば、発明の個々の構成について、その技術的意義や具体的な工程が当業者に明らかにされる必要があることはいうまでもない。もっとも、発明の構成によっては、技術的意義や具体的な工程を明示しなくとも、当業者にとって自明な場合があり、そのような場合にまで、技術的意義や具体的な工程が発明の詳細な説明に明記されていないことをもって、特許法36条4項1号違反とすることは不適切であろう。しかし、構成Hは本件発明の特徴的構成の1つであり、進歩性判断の際においては、最も慎重に想到容易性が検討される構成である。そして、構成の想到容易性を検討するに当たっては、同構成を採用した公知技術の有無だけでなく、同構成採用に伴う作用効果が評価され、最終的に同構成採用の想到容易性について判断されるのであるから、発明の特徴的構成についてはその技術的意義や具体的な工程を明示する必要があるというべきであり、それが皆無又は不十分な明細書は、特許を受けるに値しないというべきである。
また、特許法36条6項1号は特許請求の範囲の記載の記載について「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と定めているところ、「発明の詳細な説明に記載した」とは、特許請求の範囲と同文記載が発明の詳細な説明にあればよいのではなく(そうでなければ、特許法36条6項1号の規定が空文化する。)、発明の技術的意義が発明の詳細な説明に記載されており、特許庁の審査官・審判官を含む第3者が発明を適切に把握・評価できることを要件としている。以上のことは、無効理由3にも当てはまるので、次項では再説しない。
これを本件についてみるに、構成H及び請求項3の上記限定事項と同文記載が段落【0007】にある(これだけでは、特許法36条6項1号に規定する要件を満たすことにはならない。)ほかは、インク注入用に選択した開口部の表面に融着フィルムを熱融着することに関する記載は一切なく、同工程を示す図面もないことは請求人が主張するとおりである。被請求人が、密栓と融着フィルムを併用する実施例としてあげた段落【0029】及び【図8】は、開口部の表面に融着フィルムを熱融着することとは何の関係もない。
被請求人は、2重封止が融着フィルムで熱融着することの技術的意義であると主張している。しかし、そのようなことは発明の詳細な説明に記載されていないばかりか、再生カートリッジにおいて、栓をしただけでは封止が不十分である(インク漏れの事故が多発する。)ことの立証もされていない。しかも、本件明細書に実施例として記載されている栓は【図6】に示されるシリコーンゴム栓であり、同図上部の幅広部分は、密栓後にカートリッジ表面から突出する仕組みになっている。そうすると、請求人が主張するとおり、平坦でない面に融着フィルムで熱融着することになるが、どの程度の封止効果があるのか窺い知ることができない。
そればかりか、本件発明は構成Fを採用したカートリッジ再生方法であり、2(3)で述べたように、業としての再生方法と解される。一般家庭におけるカートリッジ再生であれば、インク注入後直ちにプリンタに装着すればよいから、インク供給口を封止する必要はないが、業としての再生であればインク供給口を封止する必要があることは当然である。ところが、請求項1?7では、インク供給口封止工程が欠落しており、請求項1?7の記載は「カートリッジの再生方法」としては不完全である。
他方、発明の詳細な説明には、構成Gに該当する説明が段落【0028】にあり、その直後の段落【0029】に「次に図8に示すように、容器本体2を複数個並べて支持具51に並べて装荷し、各容器本体のインク供給口4上にポリエステル接着テープの如き高温融着性のプラスチック接着テープ54を貼り付けて、熱融着により完全にシールし、各容器本体間の中間で、テープを切断して、切断端部を容器本体2の側面に折り曲げて貼りつけることにより密封することが出来る。」とあるとおり、構成Gの工程に引き続きインク供給口封止工程を実行する旨記載されている。しかも、このインク供給口封止工程は、構成H及び請求項3の「インク注入用に選択した開口部」を「インク供給口」に置き換えた工程にほかならない。
そうすると、請求項1?7に、必須と目されるインク供給口封止工程が記載されておらず、必須とは目されず何の説明もないインク注入用開口部熱融着シール工程が記載されており、しかもそれらは「インク供給口」か「インク注入用に選択した開口部」かの相違を除けば共通記載であるから、請求項1?7の記載が誤記である可能性を否定できない。ところで、構成Dについては被請求人が誤記であると主張し、本件訂正を請求したのであるが、構成Dと構成Hについては、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明(実施例)の記載が食い違うという共通点があり、被請求人は構成Dのみが誤記であり、構成Hは誤記ではないと主張するのであるが、どれが誤記でどれが誤記でないかを確定的に把握することなど、本件特許明細書の記載からは不可能である。
以上を総合すると、構成H及び請求項3の限定事項については、その技術的意義が発明の詳細な説明に記載されておらず、構成H及び請求項3の限定事項自体も同文記載の段落【0007】を除けば一切記載されていないだけでなく、誤記の可能性すら十分あるのだから、特許法36条4項1号及び6項1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、請求項1,3及びこれらを引用しインク注入用開口部熱融着シール工程につき何らの限定を付さない他の請求項、すなわち請求項1?7の特許は、特許法123条1項4号の規定により無効とされなければならない。

4.無効理由3について
無効理由3で問題となるのは、構成D及び構成Eである。構成Dについては、特許請求の範囲と実質同文記載の段落【0007】を除けば、発明の詳細な説明に一切記載がなく、構成Dの代わりに構成Eに先立つ工程として「第一開口部、第二開口部の表面のシールを剥離し、」(段落【0027】)と記載されている。
しかも、2(4)で述べたように、構成D及び構成Eはいずれもインク注入用の穴を形成する工程であるから、2つの工程を併用する技術的意義も不明である。
加えて、被請求人自身、構成Dが誤記であることを認めている。誤記ということは、構成Dを含むインクカートリッジの再生方法が発明の詳細な説明に記載されていないことにほかならない。
そうである以上、請求項1の記載が特許法36条4項1号及び6項1号に規定する要件を満たしていないことは明らかであり、請求項1及びこれを引用する請求項2?7の特許は、特許法123条1項4号の規定により無効とされなければならない。

5.無効理由4について
無効理由4で問題となるのは、請求項5の「負圧を80?100kPa好ましくは90?95kPaとした」との記載である。
この記載については、「好ましくは90?95kPa」が発明を何ら特定せず、負圧範囲が「80?100kPa」であるとの解釈と、負圧80?100kPaの中から好ましいものとして「90?95kPa」を請求項5において限定するとの解釈との二様の解釈が可能である。換言すれば、負圧が80?90kPa又は95?100kPaである場合が、請求項5及びこれを引用する請求項6,7に係る発明に含まれるのかどうか不明確である。すなわち、請求項5の記載は特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていないことが明らかであり、請求項5?7の特許は、特許法123条1項4号の規定により無効とされなければならない。
被請求人は、「〇〇〇若しくは×××という表現は、日本のみならず広く特許明細書中に用いられており、もしもこれが不明りょうな記載であれば、たとえ明細書中の記載でも不明りょうな記載を理由として拒絶されるべきものであると思料致しますが、今日までそのような拒絶は耳にしたことがありません。」(平成18年6月21日付け意見書)と主張する。しかし、発明の詳細な説明は、文字どおり発明を説明する役割を担うのに対し、特許請求の範囲は特許請求する発明(技術的範囲)を確定する役割を担っており、それぞれの役割が異なる。説明として明確な記載であることが、発明確定としても明確であることには必ずしもならない。そして本件においては、技術的範囲を確定するために請求項5を解釈しようと試みた場合、上記2つの解釈が可能となるのである。以上のとおり、被請求人の主張は、特許請求の範囲の役割を無視するか、又は忘れた主張であるから到底採用することができない。

第5 予備的判断
本件訂正を認めることはできないが、仮に訂正が認められる場合の無効理由2について検討する。
1.訂正発明の認定
本件訂正後の請求項1?7に係る発明(以下「訂正発明1?7」という。)は、訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲【請求項1】?【請求項7】に記載された事項によって特定されるものであり、自明な誤記の訂正を除けば【請求項1】及び【請求項5】が訂正されており、訂正後のそれら請求項の記載は次のとおりである(請求項1は分節する。)。
【請求項1】
A)一方側に開口する平面ほぼ矩形状の容器本体と、この容器本体の開口を封止する容器蓋体とを有し、その内部にインク流路系および空気流路系から大略構成され、前記容器本体の下方部に、記録ヘッドのインク供給針に接続可能なインク供給口及びこのインク供給口の側方に並列する第一開口部、第二開口部を有し、第一開口部は第一インク収容室に、第二開口部は前記第一インク収容室及びインクエンド室に連通され、さらに、容器本体の上方側部に係止部材が設けられ、バルブ収容室を有し、さらに、容器本体の上面部にカートリッジの識別用のラベル、背面に空気溝を覆うラベルが貼付されている使用済みインクカートリッジに対して、インクを注入して再生するにあたり、
B)該容器本体のインク供給口を上向きもしくは下向きにしてセットし、
C)密封されている開口部のうち、第一開口部もしくは第二開口部のいずれかをインク注入用に選択して、
D)これに付されている表面のシールを除去した後、
E)ドリルで真円状に穴あけ後清浄にし、
F)インク供給口から残存インク及び空気を吸引除去しながら該インク注入用に選択した開口部よりインクを注入し、
G)その後該インク注入用に選択した開口部を密封手段で封止し、
H)しかる後該インク注入用に選択した開口部には融着フィルムを載せて熱融着してシールすることを特徴とする
I)カートリッジの再生方法。
【請求項5】インク供給口から残存インク及び空気を吸引除去する際の負圧を80?100kPaとしたことを特徴とする請求項1、2、3若しくは4に記載のインクカートリッジの再生方法。

2.訂正発明1の進歩性の判断
訂正発明1と引用発明とは、「第3 2(2)」で認定した一致点で一致し、相違点1?4で相違する(ただし、相違点1における構成Dの内容は異なる。)。
相違点2,3が設計事項にすぎないことは、「第3 2(2)」で述べたとおりであるから、相違点1,4について検討する。
まず、相違点4について検討するに、業としてインクカートリッジの再生を行うのであれば、再生品を純正品に近づけることは、当業者が当然試みることである。純正品では、開口部にシールが付されているのだから、再生品にも開口部にシールを付すことは設計事項であり、「融着フィルムを載せて熱融着してシールする」ことに技術的困難性がないことは明らか(仮に、困難性があれば、訂正明細書に実施記載がないことが明確な記載不備の理由となる。)であるから、相違点4に係る訂正発明1の構成を採用することは設計事項というべきである。
次に、相違点1について検討する。インク注入後に開口部をシールすることが設計事項であることは上記のとおりであり、後にシールするのであれば、既存のシールを除去しておくことも設計事項というべきである。
以上のとおり、相違点1?4はすべて設計事項であり、これら相違点に係る訂正発明1の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、訂正発明1は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1の特許は特許法29条2項の規定に違反してされた特許である。

3.訂正発明2の進歩性の判断
訂正発明2は訂正発明1に「インク注入用に選択した開口部の密封手段が、シリコーンゴム若しくはフッ素ゴムからなる栓と押さえ治具とでなる」との限定を付したものである。
引用発明の「密封手段」は「ゴム栓」であり、これを「シリコーンゴム若しくはフッ素ゴム」とすることは設計事項であるし、ゴム栓を押し込むための「押さえ治具」を密封手段に加えることも設計事項である。
したがって、訂正発明2は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2の特許は特許法29条2項の規定に違反してされた特許である。

4.訂正発明3の進歩性の判断
訂正発明3は、訂正発明1又は訂正発明2に、「使用済みインクカートリッジを複数個を並列にして支持具に装着し、前記各工程を連続的に行い、インク注入用に選択した開口部はインク注入後、密封手段で封止した後、テープ状の融着フィルムで、複数個の並列しているインクカートリッジの容器本体に設けられているインク注入用に選択した開口部の表面を共通して貼着し、その後各インクカートリッジの容器本体間で融着フィルムを切断して分離し、融着フィルムの端部を各インクカートリッジ容器本体に密着させる」との限定を付したものである。
そこで検討するに、業としてインクカートリッジの再生を行うのであれば、連続工程にて行うことは設計事項であるし、そのために「使用済みインクカートリッジを複数個を並列にして支持具に装着」することも設計事項というべきである。また、複数個の「使用済みインクカートリッジ」に対して、1つの工程を同時に行えば作業性が向上することは自明であるから、構成Hに対してに対してかかる処理を試みることに困難性はない。構成Hは熱融着フィルムの融着工程であるが、1つのインクカートリッジに必要なフィルムはわずかであるから、何れかの時点で切断・分離することが自然である。貼着及び融着後に分離するか、それより前に分離するかは、作業の実行可能性や作業効率を考慮して定めればよいことがらであり、訂正発明3のようにすることに困難性があると認めることはできない。そのことは、本件出願前に頒布された特開平11-147579号公報に「粒状物収納容器(1)は断面が略正方形の容器本体(2)を10本、その左右側面が互いに対向する状態に並列配置してなり、全ての粒状物収納容器(1)の全幅に亘って、各容器本体(2)の前面下部から下面および後面の上部にかけて連接用ラベル(15)を貼着してあり、この連接用ラベル(15)を介して各容器本体(2)が互いに連結されている。・・・上記連接用ラベル(15)には、容器本体(2)の左右側面に沿って破断可能なミシン目(16)が形成してあり、一方、各容器本体(2)は角部が図5に示すようにそれぞれ面取りしてあるので、このミシン目(16)に沿って指先などで押圧するだけで連接用ラベル(15)が破断され、各容器本体(2)が個別に分離される。」(段落【0035】?【0036】)と記載されていることによっても裏付けられる。
なお、「各インクカートリッジの容器本体間で融着フィルムを切断して分離」すれば、分離部近傍の融着フィルムはインクカートリッジ容器本体に密着していない状態であるから、分離後「融着フィルムの端部を各インクカートリッジ容器本体に密着させる」ことは、当然行うべき付加的工程にすぎない。
したがって、請求項3の限定事項を採用することは当業者にとって想到容易であり、訂正発明3は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3の特許は特許法29条2項の規定に違反してされた特許である。

5.訂正発明4の進歩性の判断
訂正発明4は、訂正発明1?3の何れかに「支持具は、インクカートリッジの複数個を並列にして嵌装して係止保持する切り欠き部を有し、かつ少なくとも支持具の脚部の先端四隅に設けられた突起を有し、該突起が両側面に係止穴を有する支持具固定テープ上に載置され、該突起と係止穴との嵌合により固定される」との限定を付したものである。
「使用済みインクカートリッジを複数個を並列にして支持具に装着」することが設計事項であることは既に述べたとおりである。支持具としては、インクカートリッジを安定に支持できるものであれば、どのようなものでもよく、支持するために「嵌装して係止保持する切り欠き部」を有する構成とすることは設計事項に属する。
また、支持具自体もぐらつかないように固定する必要があることはいうまでもなく、部材を固定するために「脚部の先端四隅に設けられた突起」とこれが嵌合すべき「係止穴」を用いること、「係止穴」を支持具固定テープの両側面に存する構成とすること、及び支持具を有係止穴部材(支持具固定テープ)に載置することはすべて設計事項というべきである。
したがって、訂正発明4は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4の特許は特許法29条2項の規定に違反してされた特許である。

6.訂正発明5の進歩性の判断
訂正発明5は、訂正発明1?4の何れかに「インク供給口から残存インク及び空気を吸引除去する際の負圧を80?100kPaとした」との限定を付したものである。
訂正発明1の構成Fを採用することが設計事項であることは既に述べたとおりであり、構成Fを採用することはインク供給口に接続される部材を負圧にすることである。ところで、負圧が過度であれば、インク注入は速やかに行われるものの、カートリッジ内に空気が残存する可能性が高くなり、逆に負圧が過小であれば、インク注入が遅くなることは自明である。
そうであれば、負圧をどの程度にすべきかは、適宜実験等により定めればよい事項にすぎず、80?100kPaとすることは設計事項というべきである。
したがって、訂正発明5は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項5の特許は特許法29条2項の規定に違反してされた特許である。

7.訂正発明6の進歩性の判断
訂正発明6は、訂正発明1?5の何れかに「並列に載置された複数個のインクカートリッジのそれぞれのインク注入用に選択した開口部に請求項2に記載の密封手段を行うに際して、該密封箇所の上に共通の樹脂板を載せて、その中央部を押さえ治具で圧押しして完全に封止する」との限定を付したものである。
引用発明では、ゴム栓にてインク注入用に選択した開口部を封止しているのであるが、ゴム栓に封止する場合には、ゴム栓を圧押しする必要がある。
甲20には「図5に示す様にヒータ52の上面の複数カ所が押さえ治具60により上方から一定圧力で押さえ付けられる。」(段落【0019】)との記載があり、複数カ所を同時に押さえ治具で圧押しする点では、請求項6の限定事項と共通し、さらに【図5】によれば、押さえ治具の中央部を圧押しする点でも一致する。
4でも述べたように、複数個の「使用済みインクカートリッジ」に対して、1つの工程を同時に行えば作業性が向上することは自明であり、甲20記載の方法を引用発明に採用すれば複数のカートリッジを同時に密封できるのだから、同方法の採用は当業者にとって想到容易である。もっとも、甲20の押さえ治具は「樹脂板」とは限らないし、圧押しすべき箇所に共通の樹脂板を載せているわけではないけれども、その程度のことは設計事項というべきである。
したがって、訂正発明6は引用発明、甲20記載の手段及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項6の特許は特許法29条2項の規定に違反してされた特許である。

8.訂正発明7の進歩性の判断
訂正発明7は、訂正発明1?6の何れかに「使用済みインクカートリッジの再生処理前に、容器に付されている出所表示となるロゴをコテにより溶融して消去する」との限定を付したものである。
甲21に「インクカートリッジ8a及び8bの上面8a-1及び8b-1には、このインクカートリッジ8(8a、8b)に充填した純正インクのメーカーの商標である「ABC」のロゴを印刷したラベル9が貼着されている。この「ABC」のロゴは、純正インクのメーカーにのみ使用が許可される商標であるから、インクの他の類似品メーカーが許可無く使用することはできない。」(段落【0013】)と記載があり、ここに記載の「「ABC」のロゴ」は請求項7の「容器に付されている出所表示となるロゴ」にほかならない。
他方、インクカートリッジ再生業者が、再生前のインクカートリッジ製造業者と異なる場合が多いことは常識である。そうである以上、容器に付されている出所表示となるロゴを消去することは設計事項というべきである。
また、インクカートリッジ容器の多くはプラスチック製であるから、ロゴ消去に当たり「コテにより溶融して」との構成を採用することも設計事項というべきであり、同構成を採用する場合加熱処理が施されることになるが、再生処理後に消去処理を行えば加熱の影響がでないとも限らないので「再生処理前」に消去することも設計事項である。
したがって、訂正発明7は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項7の特許は特許法29条2項の規定に違反してされた特許である。

第5 むすび
以上のとおり、無効理由1,3,4には理由があり、請求項1?7の特許は特許法36条4項1号及び同条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされた特許であり、請求項5?7の特許は特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされた特許であるから、同法123条1項4号の規定により無効とされなければならない。仮に訂正を許可するとしても、無効理由2に理由があり(訂正発明1?7に進歩性がない)、請求項1?7の特許は特許法29条2項の規定に違反してされた特許であるから、同法123条1項2号の規定により無効とされなければならない。
また、審判に関する費用については、特許法169条2項で準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-12 
結審通知日 2006-10-17 
審決日 2006-10-30 
出願番号 特願2004-373083(P2004-373083)
審決分類 P 1 113・ 537- ZB (B41J)
P 1 113・ 536- ZB (B41J)
P 1 113・ 121- ZB (B41J)
P 1 113・ 853- ZB (B41J)
P 1 113・ 855- ZB (B41J)
P 1 113・ 852- ZB (B41J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 桐畑 幸▲廣▼  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 國田 正久
長島 和子
登録日 2005-04-15 
登録番号 特許第3667749号(P3667749)
発明の名称 インクカートリッジの再生方法  
代理人 溝上 哲也  
代理人 岩原 義則  
代理人 竹内 守  
代理人 溝上 満好  
代理人 山本 進  
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