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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B65D
管理番号 1149212
審判番号 無効2006-80066  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-02-02 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-04-14 
確定日 2006-12-20 
事件の表示 上記当事者間の特許第3713364号発明「タンクローリー」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1 手続の経緯
本件特許第3713364号に係る発明についての出願は、平成9年7月10日に特許出願されたものであって、平成17年8月26日にその発明について特許の設定登録がなされた。
これに対し、平成18年4月14日に請求人有限会社タンクテックより無効審判の請求がなされ、平成18年7月21日に被請求人有限会社東田鉄工より答弁書が提出され、その後、平成18年10月17日に口頭審理が行われたものである。

2 本件特許発明
本件特許第3713364号の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、その明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「液体を充填するタンクの内部底面をタンク長手方向両端部から中央部にかけ且つタンク幅方向両側部から中央部にかけて下向き傾斜状に形成し、タンク内部にはその長手方向前部寄りには後方に膨らみのある仕切板を、後部寄りには前方に膨らみのある仕切板を設け、これら仕切板によって前部、中央部、後部の3個のタンク室を形成し、各タンク室の底部の最も低位置に底弁を設けると共に、各底弁にはタンクを上下方向に貫通するハンドル付き操作軸を設け、また各タンク室の底弁を、タンク底部の中央部側でタンク長手方向に延びる排出用主管に連通連結し、この主管にタンクローリーの一側面部に延びる排出管を接続してその排出端部側に開閉弁を設け、この側面排出管からタンクローリーの後部に延びる排出管を分岐させて、この分岐排出管に送液方向を切り替える切替弁付きの送液ポンプを設けると共に、この分岐排出管の分岐端部側に開閉弁を設け、更に送液ポンプの下手側である前記分岐排出管の排出端部にタンクローリーの両側面部に延びる一対の側部排出管を接続して夫々の排出端部側に開閉弁を設け、且つ両側部排出管のいずれか一方からタンクローリーの後部に延びる後部排出管を分岐させ、この後部排出管の分岐端部側と排出端部側とに開閉弁を設けてなるタンクローリー。」

3 請求人の主張の概要
審判請求人は、審判請求書、平成18年5月19日付け上申書、平成18年10月17日付け口頭審理陳述要領書(第1回)、口頭審理陳述要領書(第2回)及び口頭審理陳述要領書(第3回)によれば、次の理由及び証拠により、本件特許発明は、特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、特許法第123条第1項第2号により無効にすべきものであると主張する。

〈無効理由〉
審判請求人は、本件特許発明の「液体を充填するタンクの内部底面をタンク長手方向両端部から中央部にかけ且つタンク幅方向両側部から中央部にかけて下向き傾斜状に形成し、タンク内部にはその長手方向前部寄りには後方に膨らみのある仕切板を、後部寄りには前方に膨らみのある仕切板を設け、これら仕切板によって前部、中央部、後部の3個のタンク室を形成し、」の構成を立証するために、
甲第1号証:西独国特許出願第1007639号明細書及びその抄訳,
を提出して、そのFig.4のタンクを3つに分けることは、法令により当業者が適宜行うべき設計的事項であり、同Fig.4の補強壁50の位置は、タンクを3つに分けるときの仕切板の位置を示唆するものであり、そして、タンクの最下部に弁を設けることは設計的事項であって、同Fig.4のタンクを3つに分ければ、最下部は中央になり、しかも、そのFig.5には、本件特許発明同様、排出用主管を短くすることが示唆されているとし、
さらに、同構成の立証を補強するために、
甲第2号証:特開平07-164956号公報,
甲第5号証:実願昭59-66184号(実開昭60-177098号) のマイクロフィルム,
を提出している。
そして、審判請求人は、本件特許発明の「各タンク室の底部の最も低位置に底弁を設けると共に、各底弁にはタンクを上下方向に貫通するハンドル付き操作軸を設け」の構成が周知技術であることを立証するために、
甲第7号証:移動タンク貯蔵所設置許可申請書添付図書(平成3年4月1 1日申請)
甲第8号証:移動タンク貯蔵所設置許可申請書添付図書(昭和62年3月 18日申請)
甲第9号証:移動タンク貯蔵所設置許可申請書添付図書(平成5年3月1 2日申請)
甲第10号証:移動タンク貯蔵所設置許可申請書添付図書(平成6年3月 10月6日申請)
を用いて、その周知技術を立証し、また、本件特許発明の「各タンク室の底弁を、タンク底部の中央部側でタンク長手方向に延びる排出用主管に連通連結し、この主管にタンクローリーの一側面部に延びる排出管を接続してその排出端部側に開閉弁を設け、この側面排出管からタンクローリーの後部に延びる排出管を分岐させて、この分岐排出管に送液方向を切り替える切替弁付きの送液ポンプを設けると共に、この分岐排出管の分岐端部側に開閉弁を設け、更に送液ポンプの下手側である前記分岐排出管の排出端部にタンクローリーの両側面部に延びる一対の側部排出管を接続して夫々の排出端部側に開閉弁を設け、且つ両側部排出管のいずれか一方からタンクローリーの後部に延びる後部排出管を分岐させ、この後部排出管の分岐端部側と排出端部側とに開閉弁を設けてなる」の構成を立証するために、
甲第3号証:特開昭61-190500号公報,
甲第4号証:特開昭57-55235号公報,
甲第6号証:「移動タンク貯蔵所ハンドブック(平成9年4月版)(19 7、198各頁),
甲第7号証:「移動タンク貯蔵所設置許可申請書添付図書(平成3年4月 11日申請);配管概要図」,
を提出して、上記構成は甲第3号証、甲第4号証及び甲第6号証にそれぞれ記載されたものを寄せ集めたもの、又は甲第6号証及び甲第7号証にそれぞれ記載されたものを寄せ集めたものに過ぎないとして、本件特許発明は、甲第1号証乃至甲第7号証に記載された発明、及び前記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものあるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであると主張している。
なお、請求人が提出した口頭審理陳述要領書(第1回)に添付の参考資料は撤回された。

4 被請求人の主張の概要
被請求人は、答弁書、平成18年10月17日付け第1回として提出された口頭審理陳述要領書及び口頭審理陳述要領書(第2回)によれば、無効理由に対して次のように主張する。
〈無効理由〉について
本件特許発明の「液体を充填するタンクの内部底面をタンク長手方向両端部から中央部にかけ且つタンク幅方向両側部から中央部にかけて下向き傾斜状に形成し」(以下、「構成要件A」という。)の構成は、タンクの長手方向中央部(中心部)が最も低い底面を構成し、その中央部最低底面に向けてタンクの内部底面を長手方向端部から下向き傾斜状に形成してなる構成を意味するものであり、本件特許発明の「タンク内部にはその長手方向前部寄りには後方に膨らみのある仕切板を、後部寄りには前方に膨らみのある仕切板を設け、これら仕切板によって前部、中央部、後部の3個のタンク室を形成し」(以下、「構成要件B」という。)の構成は、タンク内部には、その長手方向前部寄りの位置と、長手方向後部寄りの位置とに仕切板を設け、舟形構造のタンク中央部(中心部)の最低位置には仕切板を設けない構成を意味するものであり、本件特許発明の「各タンク室の底部の最も低位置に底弁を設けると共に、各底弁にはタンクを上下方向に貫通するハンドル付き操作軸を設け」(以下、「構成要件C」という。)の構成は、前部タンク室にあっては、その底部が後方に傾斜しているため、後方に膨らんだ仕切板下部と後方に傾斜しているタンク底部との接続部に無理なく最低位置が生じ、この余裕のある最低位置に底弁を設けることを意味し、中央部タンクにあっては、その長手方向中央部に最低位置が生じ、その最低位置に底弁を設けることを意味し、後部タンク室にあっては、その底部が前方に傾斜しているため、前方に膨らんだ仕切板下部とタンク底部との接続部に無理なく最低位置を生じ、この余裕のある最低位置に底弁を設けることを意味するものであり、これら構成要件A乃至Cの構成を前提として、本件特許発明は「また、各タンク室の底弁をタンク底部の中央部側でタンク長手方向に伸びる排出用主管に連通連結し」(以下、「構成要件D」という。)の構成を備えるものであって、これら構成要件A乃至Dの構成が一体不可分となることで、本件特許発明の「排出用主管の長さを短くする」という目的を達成することができて、「排出用主管をほぼ中央部タンクの長さまで短くする」という特有の効果を奏するものである。
しかしながら、甲第1号証乃至甲第10号証には、本件特許発明の構成要件A乃至Dの一部の構成の開示又は示唆はあるものの、上記構成要件A乃至Dを一体不可分とした構成の開示又は示唆はなく、さらに、排出用主管をほぼ中央部タンクの長さまで短くするという開示も示唆もないのであるから、請求人が主張する無効理由には理由がない。
なお、被請求人は第1回として提出した口頭陳述要領書の第16頁(5)は撤回するとともに、口頭陳述要領書(第2回)において、請求人が提出した甲第1号証記載のものでは、タンクを上下方向に貫通してハンドル付き操作軸を設けることができない旨を立証するために、
乙第1号証:甲第1号証(西独国特許出願公告第1007639号明細書)の第4欄5行目?第5欄下から2行目までの翻訳文、
を提出している。

5 当審の判断
5-1 本件特許発明と甲第1号証、甲第2号証及び甲第5号証各記載のもの、並びに甲第7号証乃至甲第10号証を用いて立証する周知技術との対比(タンク構造に関して)
本件の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第1号証には、第5欄第48行?第6欄第20行に「図4及び5の説明図でも、参照番号(1)は上部シェルを、参照番号(2)は下部シェルを示している。図1及び図3の構造図では、コンテナの後面に排出口があるが、図4では、排出口(52)は中央間仕切壁(47)下のコンテナ中央部に位置している。底シェル(2)は、中央間仕切壁(47)から前面(48)及び後面(49)の両方向に向かって上方へ傾斜している。(50)は、二枚の補強壁を示し、参照番号(51)は、コンテナ底の二つの弁を表している。図5にあるように、排出口(53)は、液体コンテナの左から三分の一の位置にある間仕切壁(54)の下にあり、もう一枚の間仕切壁(55)は、左から三分の二のあたりにある。また、(48)及び(49)は、それぞれ前面及び後面を、(50)は補強壁を示している。三つに仕切られたコンテナの中の液体は、底弁(51)を通って、排出口(53)に流れている。このデザインでも、底シェル(2)の底壁は、間仕切壁(54)から前面(48)及び後面(49)の両方向に向かって上方へ傾斜している。」と記載され、そのFig.2には、コンテナが、その上下の高さ幅に対して左右の横幅が大である扁平な楕円円筒状に形成されている点が記載されている。
そして、Fig.4により、液体を充填するタンクの内部底面をタンク長手方向両端部から中央部にかけて下向き傾斜状に形成し、その中央部に中央間仕切壁(47)を設けてタンク室を前後2個とし、この中央間仕切壁(47)を挟んだタンク底部に、すなわち中央間仕切壁(47)の膨らみ側と膨らまない側の両方のタンク底部に底弁(51)(51)を設けた点が認められる。
また、Fig.5により、タンクの内部底面はタンク長手方向両端部から前方略三分の一の位置の部分にかけて下向き傾斜状に形成され、その前方略三分の一の位置に間仕切壁(54)及びその前方から略三分の二の位置に間仕切壁(55)を設けてタンク室を3個とし、間仕切壁(54)を挟んだタンク底部、すなわち間仕切壁(54)の膨らみ側と膨らまない側の両方のタンク底部、及び間仕切壁(55)の膨らみ側のタンク底部に底弁(51)、(51)、(51)を設け、さらに間仕切壁(54)及び間仕切壁(55)の膨らみは後方に向いている点が認められる。
しかしながら、Fig.2及びFig,4のものは、本件特許発明の上記構成要件Aの構成の開示はあるものの、中央部に中央間仕切壁47を備え、タンク室は前後に2個とされ、さらにこの中央間仕切壁(47)を挟んだタンク底部に、すなわち中央間仕切壁(47)の膨らみ側と膨らまない側の両方のタンク底部に底弁(51)(51)を設けたもので、しかもハンドル付き操作軸を設けていないから、タンク室を3個とした舟形構造のタンク中央部(中心部)の最低位置に仕切板を設けないとする上記本件特許発明の構成要件Bの構成、及びハンドル付き操作軸を設けるとする本件特許発明の上記構成要件Cの構成を開示又は示唆するものではなく、上記構成要件A乃至Cの構成を前提とした上記構成要件Dの構成を開示又は示唆するものではない。
また、Fig.2及びFig.5のものは、上記構成要件Aの一部である「液体を充填するタンクの内部底面をタンク幅方向両側部から中央部にかけて下向き傾斜状に形成し」の構成の開示はあるものの、タンクの内部底面はタンク長手方向両端部から前方略三分の一の位置の部分にかけて下向き傾斜状に形成されたもので、本件特許発明の構成要件Aでいう「タンクの内部底面をタンク長手方向両端部から中央部にかけて下向き傾斜状に形成し」たものではなく、さらに、前部、中央部、後部に3個のタンク室は形成されているものの、間仕切壁(54)を挟んだタンク底部、すなわち間仕切壁(54)の膨らみ側と膨らまない側の両方のタンク底部、及び間仕切壁(55)の膨らみ側のタンク底部に底弁(51)、(51)、(51)を設け、さらに間仕切壁(54)及び間仕切壁(55)の膨らみは後方に向いており、しかもハンドル付き操作軸を備えていないから、同様に、本件特許発明の上記構成要件B及びCの構成を開示又は示唆するものではなく、上記構成要件A乃至Cの構成を前提とした上記構成要件Dの構成を開示又は示唆するものではない。

一方、本件特許発明は、少なくとも上記構成要件A乃至Dの、
「液体を充填するタンクの内部底面をタンク長手方向両端部から中央部にかけ且つタンク幅方向両側部から中央部にかけて下向き傾斜状に形成し、タンク内部にはその長手方向前部寄りには後方に膨らみのある仕切板を、後部寄りには前方に膨らみのある仕切板を設け、これら仕切板によって前部、中央部、後部の3個のタンク室を形成し、各タンク室の底部の最も低位置に底弁を設けると共に、各底弁にはタンクを上下方向に貫通するハンドル付き操作軸を設け、また各タンク室の底弁を、タンク底部の中央部側でタンク長手方向に延びる排出用主管に連通連結し、」を構成(以下、「特徴構成1」という。)の一部として有するものであり、これにより、本件特許発明の目的である「排出用主管の長さを短くする」を達成するとともに、本件特許発明の特有の効果である「排出用主管をほぼ中央部タンクの長さまで短くする」を奏するものである。
すなわち、本件特許発明は、中央部最低底面に向けてタンクの内部底面を長手方向端部から下向き傾斜状に形成して、いわゆる舟形構造とし、そして、タンク内部には、その長手方向前部寄りの位置と長手方向後部寄りの位置とに仕切板を設け、舟形構造のタンク中央部の最低位置には仕切板を設けないこととして、タンク室を前部、中央部、後部の3個とし、前部タンク室にあっては後方に膨らんだ仕切板とし、後部タンク室にあっては前方に膨らんだ仕切板として、前部及び後部タンク室にあっては、仕切板の膨らみのない側の各タンク室の底部の最も低位置に底弁を設け、中央部タンク室にあっては、その長手方向中央部の最低位置に底弁を設けて、各タンク室の底弁をタンク底部の中央部側でタンク長手方向に伸びる排出用主管に連通連結するものであって、タンクの内部底面を舟形構造とした中央部に仕切板を有しない3つのタンクを前提としたうえで、前方仕切板と後方仕切板の膨らみを向き合うようにして、仕切板の膨らみのない側に底弁を設けて底弁の設置空間を確保しつつ、各タンク室の底弁をタンク底部の中央部側でタンク長手方向に伸びる排出用主管に連通連結することで、本件特許発明の目的である「排出用主管の長さを短くする」を達成するとともに、本件特許発明の特有の効果である「排出用主管をほぼ中央部タンクの長さまで短くする」を奏するものと認められる。
したがって、本件特許発明では、上記特徴構成1が一体不可分となることで、はじめて前記目的を達成し、前記特有の効果を奏するものといえる。
してみると、甲第1号証は、本件特許発明の目的である「排出用主管の長さを短くする」を達成するための一体不可分となる前記特徴構成1を開示又は示唆するものではない。

この点審判請求人は、Fig.4のタンクを3つに分けることは、法令により当業者が適宜行うべき設計的事項であり、そして、同Fig.4の補強壁50の位置は、タンクを3つに分けるときの仕切板の位置を示唆するものであり、しかも、タンクの最下部に弁を設けることは設計的事項であって、同Fig.4のタンクを3つに分ければ、最下部は中央になり、さらに、そのFig.5には、本件特許発明同様、排出主管を短くすることが示唆されていると主張する。

確かに、Fig.4のタンクを3つに分けることは、法令により当業者が適宜行うべき設計的事項であるとしても、本件特許発明の目的が「排出用主管を短くすること」であり、この目的を達成するために、本件特許発明はFig.4のようなタンクを単に3つに分けることのみでなく、タンクの内部底面を舟形構造とした中央部に仕切板を有しない3つのタンクを前提としたうえで、前方仕切板と後方仕切板の膨らみを向き合うようにして、仕切板の膨らみのない側に底弁を設けて底弁の設置空間を確保しつつ、各タンク室の底弁をタンク底部の中央部側でタンク長手方向に伸びる排出用主管に連通連結するという、上記一体不可分の特徴構成1を具備することで、本件特許発明の「排出用主管の長さをほぼ中央部タンクの長さまで短くする」という特有の効果を奏するものであるから、甲第1号証のFig.4のものは、本件特許発明の上記一体不可分となる特徴構成1を開示又は示唆するものではない。
また、Fig.5のものは、各タンク室の内部底面のほぼ最低位置に弁を設けているものの、間仕切壁(54)を挟んだタンク底部、すなわち間仕切壁(54)の膨らみ側と膨らまない側の両方のタンク底部、及び間仕切壁(55)の膨らみ側のタンク底部に底弁(51)、(51)、(51)を設け、さらに間仕切壁(54)及び間仕切壁(55)の膨らみは後方に向いているので、例え、排出用主管の長さをある程度短くすることができたとしても、本件特許発明のように、タンクの内部底面を舟形構造とした中央部に仕切板を有しない3つのタンクを前提としたうえで、前方仕切板と後方仕切板の膨らみを向き合うようにして、仕切板の膨らみのない側に底弁を設けて底弁の設置空間を確保しつつ、各タンク室の底弁をタンク底部の中央部側でタンク長手方向に伸びる排出用主管に連通連結するという、上記特徴構成1を開示又は示唆するものではない。
よって、審判請求人の上記主張は採用しない。

また、本件の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第2号証の段落0011、段落0012及び段落0014にはそれぞれ、「…このような中央部5,前部6,後部7,鏡板部8等よりなる内タンク3は、全体的に頂面が前後つまり長手方向に直線状をなすと共に、底面が中央に向け下降傾斜した、特殊な円筒形をなし、中央縦の中心線を中心に左右対称となっている。」「そして、タンク1のこのような形状の内タンク3は、内部が浅いわん状・略半球状の仕切板9により、各タンク室2に縦に仕切られている。…」「…このタンク1の内タンク3の中央部5下には排出管13が付設されており、この排出管13は、短い前後配管14と長い左右配管15とが十字にクロスして連通されてなり、前後配管14の端が底弁16を介し前後の両タンク室2に接続される…」と記載されている。
そして、図1によれば、タンク中央部の底面が水平面となっている点が認められる。
さらに、本件の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第5号証の第2頁第11行?第3頁第6行には、「第1,2図に示す実施例について本考案を説明すると、符号9は円筒状の小径部10、同小径部10両端に一体に形成された環状の段差部11,同段差部からさらに連続して一体成型された円筒状の大径部12からなる管部材である。そして上記段差部11には仕切プレート13,14の周縁が位置決めされて係合され、この状態において管部材9に溶着される。また管部材9の管端開口部にはエンドプレート15,16が閉塞して溶着される。こうしてエンドプレート15と仕切プレート13との間に第1室Aが、仕切プレート13と14との間に第2室Bが、仕切プレート14とエンドプレート16との間に第3室Cがそれぞれ気水密に形成される。」と記載されている。
そして、第2図によれば、膨らみが向かい合う仕切プレート13、14でタンク室をA、B、Cに3分割してタンク底面を水平面としたエアタンクの構成が認められる。

しかしながら、甲第2号証記載のものは、仕切板1個でタンク室を前後に2分割するものであって、請求人が主張する如く、シャシに搭載するタンクが前下がりに傾いているものであっても、甲第1号証記載のものと同様、本件特許発明の目的である「排出用主管を短くすること」を達成するための上記一体不可分の特徴構成1を開示又は示唆するものではない。
また、甲第5号証記載のものは、「エアタンク」に関するものであって、本件特許発明のような「排出用主管を短くすること」を目的とするものではないので、仕切プレート13、14の膨らみが向かい合っているとしても、甲第1号証記載のものと同様、上記一体不可分の特徴構成を開示又は示唆するものではない。

この点審判請求人は、「本件発明の構成要件Aは『液体を充填するタンクの内部底面をタンク長手方向両端部から中央部にかけ且つタンク幅方向両側部から中央部にかけて下向き傾斜状に形成し、』ですが、『中央部』という語は、『中心のように点ではなく、ある程度の幅をもつ部分』と解釈すべきであり、また、『かけ』るという語は、『ある場所から他の場所にまで及ぼす』と解釈すべきです。従って、特許請求の範囲の記載では、甲第2号証の図1記載の内容も当然に含まれます。
被請求人は、明細書の発明の詳細な説明における実施形態及び図面に記載の内容に基づいて『タンク長手方向中心部に最低内部底面が形成され、この最低内部底面を中心に左右対称に傾斜した内部底面が形成された構成』である旨を主張していますが、本来、特許発明の要旨認定は、特段の事情がない限り、特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであり、特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか、一見してその記載が誤記であることが明らかである等の特段の事情がある場合のみに限って、発明の詳細な説明の記載を参酌することが許される(リパーゼ事件)のであり、被請求人の主張は失当です。もし、前記主張の内容にしたいのならば、訂正請求により特許請求の範囲を訂正すべきです。」(口頭審理陳述要領書(第2回)第12頁)と主張する。

しかしながら、特許請求の範囲には、上記特徴構成1として、「液体を充填するタンクの内部底面をタンク長手方向両端部から中央部にかけ且つタンク幅方向両側部から中央部にかけて下向き傾斜状に形成し、タンク内部にはその長手方向前部寄りには後方に膨らみのある仕切板を、後部寄りには前方に膨らみのある仕切板を設け、これら仕切板によって前部、中央部、後部の3個のタンク室を形成し、タンク内部にはその長手方向前部寄りには後方に膨らみのある仕切板を、後部寄りには前方に膨らみのある仕切板を設け、これら仕切板によって前部、中央部、後部の3個のタンク室を形成し、各タンク室の底部の最も低位置に底弁を設けると共に、」と記載されている。
上記記載によれば、タンク室に関しては、「仕切板によって前部、中央部、後部の3個のタンク室を形成し」とされ、仕切板は、「長手方向前部寄り及び後部寄り」に設けられていることから、中央部に設けられていない構成に特定されている。
また、タンク内部底面に関して、「液体を充填するタンクの内部底面をタンク長手方向両端部から中央部にかけ且つタンク幅方向両側部から中央部にかけて下向き傾斜状に形成し」とされ、しかも、「各タンク室の底部の最も低位置に底弁を設ける」とされているのであるから、タンクの長手方向中央部が最も低い底面を構成し、その中央部最低底面に向けてタンクの内部底面を長手方向端部から下向き傾斜状に形成、すなわち中央部タンクはいわゆる側面視V字状に形成されていることが特定されている。
そして、仕切板が中央部に設けられていないこと、中央部タンクはいわゆる側面視V字状に形成されいることは、本件特許明細書の段落番号【0007】、【0020】、【0027】及び【図1】からも裏付けされている。
よって、審判請求人の上記主張は採用しない。

以上、詳述した如く、本件特許発明では、その目的である「排出用主管の長さを短くすること」を達成して、その特有の効果である「排出用主管の長さをほぼ中央部タンクの長さまで短くする」を奏するためには、上記特徴構成1が一体不可分であることが必要とされるところ、甲第1号証、甲第2号証及び甲第5号証のものは、上記一体不可分の特徴構成1を開示又は示唆するものではない。

また、請求人が主張する如く、甲第7号証乃至甲第10号証を用いて立証する、「内部底面が傾斜しているタンク内部に、下り傾斜方向に膨らみのある仕切板を設けて複数のタンク室を形成し、各タンク室の内部底面における仕切板の膨らみがあるのと反対側で、その内部底面と仕切板との接続部に近接する最低位置に底弁を設けると共に、その各底弁にタンクを上下方向に貫通するハンドル付き操作軸を設ける構造」は周知技術と認められるが、この周知技術のタンクの仕切板の膨らみは前方を向いており、しかも、タンクの内部底面は前下がり状態に傾斜しているものである。
一方、上記した如く、本件特許発明は、その目的である「排出用主管の長さを短くすること」を達成するために、タンクの内部底面を舟形構造とした中央部に仕切板を有しない3つのタンクを前提としたうえで、前方仕切板と後方仕切板の膨らみを向き合うようにして、仕切板の膨らみのない側に底弁を設けて底弁の設置空間を確保しつつ、各タンク室の底弁をタンク底部の中央部側でタンク長手方向に伸びる排出用主管に連通連結するという、上記一体不可分の特徴構成1を具備するものであるので、上記周知技術は、上記一体不可分の特徴構成1を開示又は示唆するものではない。
そして、他の各甲号証のものも、上記一体不可分の特徴構成1を開示又は示唆するものではないし、上記一体不可分の特徴構成1が周知技術であるとの証拠も見受けられず、自明な事項とも認められないばかりか、甲第1号証乃至甲第10号証記載のものから、当業者が容易になし得たものとすることもできない。

5-2 本件特許発明と甲第3号証、甲第4号証、甲第6号証、及び甲第7号証(移動タンク貯蔵所設置許可申請書添付図書(平成3年4月11日申請);配管概要図)各記載のものとの対比(配管構造に関して)
本件の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第3号証の第1頁右下欄第16行目?第2頁左上欄第5行目には、「そのため、従来では第1図の如く複数の底弁を前方と後方に分割し、前方の各底弁(01)……には前主配管(02)及び分岐配管(03)を接続し、後方の各底弁(04)……には後主配管(05)及び分岐配管(06)を接続し、両分岐配管(03)(06)間には3方弁(07)(07)を介して連通配管(08)を接続し、前記連通配管(08)にはポンプPが介装された補助配管(09)を4方弁(010)を介して接続した構成が実施されている。」と、同様に甲第4号証の第2頁右上欄第5行目?第14行目には、「例えば、第2図に示す如く、第1配管14は底弁6,7と連通したうえ車輌両側、後尾に伸延して吐出弁15,16,17を有し、又、第2配管18は底弁8,9と連通したうえ車輌両側、後尾に伸延して吐出弁19,20,21を有している。…(中略)…そして、第1配管14と第2配管18の間の連通用配管25に設けられた四方切換弁26を介して移送用ポンプ13が配されている。」と記載されている。
また、本件の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第6号証の第197頁 図3.2-41及び第198頁 図3.2-42には、「タンクの両側面部に延びる側部排出管からタンクの後部に延びる後部排出管を分岐させ、この後部排出管の分岐端部側に仕切弁を設けると共に、排出端部側に吐出弁を設ける」点が記載されている。
さらに、甲第7号証(移動タンク貯蔵所設置許可申請書添付図書(平成3年4月11日申請)には、各タンク室の底弁を、タンク底部の中央側でタンク長手方向に延びる排出主管に連通連結し、それによって複数のタンク室の荷卸しを少なくとも一つの排出口から可能にするための構成、この排出主管にタンクローリーの一側面部に延びる排出管を接続してその排出端部側に開閉弁を設け、タンクローリーの側方に重力排出を可能にする構成、この側部排出管からタンクローリーの後部に延びる排出管を分岐させて、この分岐排出管に送液方向を切り替える切替弁付き送液ポンプを設け、強制吸入・排出を可能にする構成、この分岐排出管の分岐端部側に開閉弁を設け、重力排出時に送液ポンプ側への流入を阻止する構成、送液ポンプの下手側である分岐排出管の排出端部にタンクローリーの両側面部に延びる一対の側部排出管を接続して夫々の排出端部側に開閉弁を設け、タンクローリーの両側方に強制排出を可能にする構成、及び、排出主管をタンクローリーの後部に延ばして、その排出端部側に開閉弁を設け、タンクローリーの後方に重力排出を可能にする構成がそれぞれ開示されている。
しかしながら、甲第3号証、甲第4号証、甲第6号証及び甲第7号証に記載の配管構造と本件特許発明でいう配管構造、すなわち「この主管にタンクローリーの一側面部に延びる排出管を接続してその排出端部側に開閉弁を設け、この側面排出管からタンクローリーの後部に延びる排出管を分岐させて、この分岐排出管に送液方向を切り替える切替弁付きの送液ポンプを設けると共に、この分岐排出管の分岐端部側に開閉弁を設け、更に送液ポンプの下手側である前記分岐排出管の排出端部にタンクローリーの両側面部に延びる一対の側部排出管を接続して夫々の排出端部側に開閉弁を設け、且つ両側部排出管のいずれか一方からタンクローリーの後部に延びる後部排出管を分岐させ、この後部排出管の分岐端部側と排出端部側とに開閉弁を設けてなる」構成(以下、「特徴構成2」という。)とが類似しているとしても、甲第3号証、甲第4号証、甲第6号証及び甲第7号証に記載のものは、本件特許発明の上記一体不可分の特徴構成1を開示又は示唆するものではなく、同構成1を前提とした上記特徴構成2を開示又は示唆するものではない。

5-3 小括
以上により、本件特許発明は、タンクの内部底面を舟形構造とした中央部に仕切板を有しない3つのタンクを前提としたうえで、前方仕切板と後方仕切板の膨らみを向き合うようにして、仕切板の膨らみのない側に底弁を設けて底弁の設置空間を確保しつつ、各タンク室の底弁をタンク底部の中央部側でタンク長手方向に伸びる排出用主管に連通連結するという、上記一体不可分の特徴構成1を具備することで、本件特許発明の目的である「排出用主管の長さを短くする」を達成するとともに、本件特許発明の特有の効果である「排出用主管をほぼ中央部タンクの長さまで短くする」を奏するものと認められる。
したがって、本件特許発明を、上記一体不可分の特徴構成1を具備しない甲第1号証乃至甲第10号証記載のものから、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
よって、審判請求人が主張する無効理由によって、本件特許発明を無効にすることができない。

6 まとめ
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては本件特許発明を無効とすることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2006-11-08 
出願番号 特願平9-184801
審決分類 P 1 113・ 121- Y (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山下 喜代治阿部 利英  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 溝渕 良一
豊永 茂弘
登録日 2005-08-26 
登録番号 特許第3713364号(P3713364)
発明の名称 タンクローリー  
代理人 前田 弘  
代理人 関 啓  
代理人 今江 克実  
代理人 竹内 宏  
代理人 藤川 義人  
代理人 嶋田 高久  
代理人 藤川 忠司  
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