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審決分類 審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1149426
審判番号 不服2003-24255  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-06-01 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-15 
確定日 2006-12-13 
事件の表示 平成4年特許願第507654号「活性剤複合体を生成するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成5年10月28日国際公開、WO93/20857、平成7年6月1日国内公表、特表平7-504881〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、1992年4月11日を国際出願日とする出願であって、その請求項に係る発明は、平成17年5月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載されたとおりのものであって、請求項1に係る発明は以下のとおりである。
「骨形成用の活性剤複合体を生成するための方法であって、骨から、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン及びその混合物の形態における少なくとも一種の構造成分、少なくとも一種の走化学性ペプチド又はアラキドン酸代謝物の形態における少なくとも一種の補充成分、フィブロネクチン、テネイシン、ラミニン、コラーゲンタイプIV型、V型、VII、L-CAM、N-CAM又はインテグリンの形態における少なくとも一種の接着成分並びに少なくとも一種のサイトカインの形態における少なくとも一種の増殖及び成熟成分を含んでなる少なくとも一の初期複合体を調製し、そしてそれを次の工程に従って処理する、
a)当該初期複合体に変性手段を供給するか、又は当該初期複合体を変性手段で処理して、当該初期複合体の前記成分の少なくとも一部を変性させて均質相を獲得し;
b)このようにして形成された均質相を二以上の部分に分割し;
c1)当該均質相を二部に分けたなら、当該均質相の一の部における前記成分のうち枯渇もしくは富化を所望する1又は複数種の成分を選定し;
c2)当該均質相を二部超に分けたなら、当該均質相の少なくとも一の部における前記成分のうち枯渇もしくは富化を所望する1又は複数種の成分を選定し;
d)当該均質相の少なくとも一の部から前記選定した成分を分画し;
e)このようにして獲得した画分の少なくと一部を前記均質相の他の部と混合し;
f)工程eにより得られた混合均質相を、前記変性手段を取り除くことにより、又は前記変性剤による処理を停止させることにより再生し、これにより
g1)前記活性剤複合体を構成する最終複合体を形成する;又は
g2)前記工程a)ないしf)を1又は複数回繰り返して前記活性剤複合体を構成する最終複合体を形成する;
ことを特徴とする方法。」(以下、「本願発明」という。)

2.当審が通知した拒絶理由

当審は平成16年11月12日付けで、「富化・枯渇を所望する1又は複数種の成分を選定し」とは、どの成分をどのようにして選定するのか、明細書には具体的に記載されておらず不明である点等を指摘し、本願明細書には当業者が本願発明を容易に実施できる程度の記載がされていないから、本件出願は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない旨の拒絶理由を通知した。

3.当審の判断

本願発明の工程c1)あるいはc2)における「枯渇もしくは富化を所望する1又は複数種の成分を選定し」について、本願明細書には以下の記載がある。
(a)「…多くの活性剤がまた、その複合体に存在できる。変性-再結合工程の個々のサイクルは、それ自体、個々の場合において予定される活性剤に関して富化(濃縮)段階のタイプである。多くのサイクルが実施されるなら、活性剤複合体におけるいづれか予定された活性剤は、それが生物中に導入される場合、それが正確に定義され、そして予定の時間のために効果的であるような手段で富化され得る。」(段落【0008】)
(b)「…また、活性剤複合体を形成するためにひじょうに異なった濃度でお互いに関係なく初期複合体に成分として存在する多くの活性剤を富化することは、本発明の方法の範囲内である。」(段落【0009】)
(c)「本発明の方法の好ましい態様においては、均質相の部分からのいづれかの予定された成分が消耗され、富化され又は単離される。従って、いづれかの数の部分が均質相から形成され得る。」(段落【0010】)
(d)「好ましくは、均質性は2つの部分に分けられ、均質性の1つの部分からの個々の予定された成分が消耗され、富化され又は単離され、そして均質相の他の部分と組合される。」(段落【0011】)
(e)「…均質性の部分を1:1の体積比で分割する。この手段で分割された、変性された均質相の1つの部分を分別し、これはクロマトグラフィー、電気泳動、限外濾過又は透析により達成され得る。本発明によれば、その得られた所望する画分を、前記変性された均質相の第2の部分に添加し、そして後者と共に再結合する。」(段落【0035】)
(f)「…パート1からの所望する分子質量、たとえば 30000ダルトンまでの低分子量活性剤画分を濃縮し、そして高分子量基質部分を、中空繊維フィルターカートリッヂにおける適切な限外濾過に基づく濾過により除去する。
この態様で濃縮され、そして分離された活性剤画分は、従来技術におけるように、活性剤に関して処理されないが、しかしパート2の変性された残留物と共に組合され、そして高分子量基質の存在下で再生のために供給される。」(段落【0037】?【0038】)

しかし、これらの記載事項をみても、初期複合体に含まれる「構造成分」、「補充成分」、「接着成分」、「増殖・成熟成分」のいずれを枯渇あるいは富化するのか、また、例えば補充成分として「フィブロネクチン、テネイシン、ラミニン、コラーゲンタイプIV型、V型、VII、L-CAM、N-CAM又はインテグリンの形態における少なくとも一種」と多数列挙されている物質の中から枯渇もしくは富化する成分をどのようにして選定するのかについて、本願明細書には何ら記載されていない。
さらに、本願発明は「骨形成用の活性剤複合体を生成する方法」であるところ、骨から得られた「初期複合体」の特定成分をどの程度まで枯渇あるいは富化させれば骨形成用としての活性剤複合体となるのかについての記載もない。
そして、上記成分の選択や枯渇・富化の程度についてはこれを自明とする技術常識があったとすることもできない。
したがって、本願明細書の発明の詳細な説明は当業者が本願発明を容易に実施できる程度に記載されているとはいえない。

請求人は、本願明細書に記載された情報及び本願優先日以前の技術常識に基づき、当業者であれば初期複合体のどの成分をいかにして富化又は枯渇させるかは、容易に決定し得るものである旨主張し、以下の各参考資料を提示している。
(a)タンパク質の分画手順及び単離方法について
(参考資料7;Frank W. Putnam, Academic Press, 1975により編集された「The Plasma Proteins」)
(b)活性剤複合体を形成する成分について分子量について
大部分の分子成長因子は、およそ10?25×103の範囲内にあること
(参考資料8;Bone and Mineral Research/6、William A. Peck編、Elsevier, 1989)
骨走化性因子の分子量は、60,000?70,000の範囲内にあること
(参考資料9;「Current Advances in Skeletogenesis」M. Silbermann及びH. C. Slavkin編:Excerpta Medica;1982;第58頁)。
(c)本発明に係る成分の各々に関して実施する必要のある検定方法について
・走化性因子の検定方法(参考資料9)
・接着成分の検定方法:
(参考資料10;「Extracellular Matrix Influences on Gene Expression」Academic Press Inc., New York; San Francisco; London 1975; No.7及び参考資料11「Tissue-Specific Differences and Membrane Site Mobility in Intercellular Adhesion」)
・成長・成熟成分の検定方法:
(参考資料12;「Ion, cell Proliferation, and cancer」Academic Press, 1982)
(d)本願発明の第1の態様、第2の態様の参考図
(平成13年12月12日付の意見書に添付した参考資料1及び2)

しかしながら、上記の参考資料を参照することにより、骨から得た「初期複合体」中の蛋白質を分画でき、「構造成分」「補充成分」「接着成分」「増殖・成熟成分」の各成分を分けてその活性の検定が可能であっても、各成分がどの程度どのような割合で存在していることが「骨形成用の活性複合体」であるために必要であるのかはこれらの参考資料に示されていないのであるから、初期複合体中のどの成分をどの程度にまで枯渇又は富化させるべきかの指針は当業者にとって依然として不明といわざるを得ない。
なお、上記参考資料に加え、請求人が提出した参考資料3?6をあわせ考慮しても、本願発明の「活性剤複合体」における枯渇もしくは富化を所望する成分を選定することが当業者にとって自明であるということはできない。

上記のとおり、本願出願以前の技術常識を参照しても、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明を当業者が容易に実施できる程度に発明の目的、構成及び効果が記載されているということはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願明細書は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、特許法第49条第4項の規定により本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-06-28 
結審通知日 2005-07-05 
審決日 2005-07-19 
出願番号 特願平4-507654
審決分類 P 1 8・ 531- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 淳子新留 素子  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 福井 悟
横尾 俊一
発明の名称 活性剤複合体を生成するための方法  
代理人 西山 雅也  
代理人 吉田 維夫  
代理人 石田 敬  

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