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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1149595
審判番号 不服2004-16867  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-02-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-12 
確定日 2007-01-04 
事件の表示 平成 7年特許願第214238号「ヘパリン由来の混濁を防止する測定用試薬及び測定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 2月14日出願公開、特開平 9- 43234〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成7年7月31日の出願であって、平成16年7月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年8月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成16年9月13日付で手続補正がなされたものである。

II.平成16年9月13日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年9月13日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の記載:
「【請求項1】採取後にヘパリンを添加した生体試料液又は予めヘパリンを含有する生体試料液を、その生体試料液中の生理活性物質測定用試薬と接触させることによって発生するヘパリン由来混濁の発生を防止して、前記生体試料液中の生理活性物質を測定するための測定用試薬であって、塩基性アミノ酸、塩基性タンパク質、カチオン性ポリマー、非イオン性界面活性剤、及びアルカリ金属塩からなる群から選んだヘパリン由来混濁防止剤を含有することを特徴とする、前記の測定用試薬。
【請求項2】多試薬系からなる請求項1に記載の測定用試薬であって、少なくとも第一試薬に前記混濁防止剤を含有する前記の測定用試薬。
【請求項3】採取後にヘパリンを添加した生体試料液又は予めヘパリンを含有する生体試料液を、その生体試料液中の生理活性物質測定用試薬と接触させることによって発生するヘパリン由来混濁の発生を防止して、前記生体試料液中の生理活性物質を測定するための方法であって、塩基性アミノ酸、塩基性タンパク質、カチオン性ポリマー、非イオン性界面活性剤、及びアルカリ金属塩からなる群から選んだヘパリン由来混濁防止剤の存在下で実施することを特徴とする、前記の測定方法。」を、
「【請求項1】採取後にヘパリンを添加した生体試料液又は予めヘパリンを含有する生体試料液を、その生体試料液中の生理活性物質測定用で、2価金属イオンを含む試薬と接触させることによって発生するヘパリン由来混濁の発生を防止して、前記生体試料液中の生理活性物質を測定するための測定用試薬であって、塩基性アミノ酸、塩基性タンパク質、カチオン性ポリマー、非イオン性界面活性剤、及びアルカリ金属塩からなる群から選んだヘパリン由来混濁防止剤を含有することを特徴とする、前記の測定用試薬。
【請求項2】多試薬系からなる請求項1に記載の測定用試薬であって、少なくとも第一試薬に前記混濁防止剤及び前記2価金属イオンを含有する前記の測定用試薬。
【請求項3】採取後にヘパリンを添加した生体試料液又は予めヘパリンを含有する生体試料液を、その生体試料液中の生理活性物質測定用で、2価金属イオンを含む試薬と接触させることによって発生するヘパリン由来混濁の発生を防止して、前記生体試料液中の生理活性物質を測定するための方法であって、塩基性アミノ酸、塩基性タンパク質、カチオン性ポリマー、非イオン性界面活性剤、及びアルカリ金属塩からなる群から選んだヘパリン由来混濁防止剤の存在下で実施することを特徴とする、前記の測定方法。」と補正することを含むものである。

2.独立特許要件についての検討
特許請求の範囲請求項1ないし3についての上記の補正は、「採取後にヘパリンを添加した生体試料液又は予めヘパリンを含有する生体試料液」と接触させる「その生体試料液中の生理活性物質測定用試薬」を「2価金属イオンを含む」試薬に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-1.引用例の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-35166号公報(以下、「引用例1」という)には、下記の事項が記載されている。

(1a)試料における混濁を防止する方法(特許請求の範囲第1項)
「(1)血清、血漿または溶液状蛋白質を含む他の液体の試料に界面活性剤を添加することにより該試料における混濁を低減しまたは実質的に防止するにあたり、該試料にさらに尿素または尿素誘導体を添加することを特徴とする、該試料における混濁を低減しまたは実質的に防止する方法。」

(1b)従来の技術とその問題点について(公報第2頁右上欄7行?11行)
「臨床化学においては、血清試料および(または)血漿試料を処理しそれらについて測光分析が必要とされることが多い。知られる通り、測光測定は混濁によって不利に影響される。混濁は試料中での蛋白質の沈殿によって引起こされることがある。」

(1c)従来技術問題点の解決について(公報第3頁右上欄7行?13行)
「本発明は従って血清、血漿または溶液状蛋白質質を含む他の液体の試料に界面活性剤を添加することにより該試料における混濁を低減しまたは実質的に防止するにあたり、該試料にさらに尿素または尿素誘導体を添加することを特徴とする、該試料における混濁を低減しまたは実質的に防止する方法を提供する。」

(1d)使用される界面活性剤について(公報第3頁右上欄末行?左下欄11行)
「使用される界面活性剤は好ましくは生化学的分析用に既に知られているもの、例えば4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールのエトキシ化物(例えばTritonX-100(R))または水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム(例えばTrironB(R))である。他の界面活性剤例えばp-tert-オクチルフエノキシポリエトキシエタノール、ラウリルアルコールのポリオキシエチレンエーテル、ポリエチレンソルビタンモノラウラート、ポリオキシエチレン-14-ラウラートまたはポリエチレンソルビタンモノパルミタートを用いることもできる。」

(1e)実施例1ないし3において、「ヘパリン血漿試料[凝固防止のためにヘパリンを加えて安定化した血漿試料]」を用いている点。

(2)原査定の拒絶の理由に引用された特開昭61-95247号公報(以下、「引用例2」という)には、下記の事項が記載されている。

(2a)血液試料の濁りを減らす方法(特許請求の範囲)
「血液試料中に式 CH3(CH2)x-O-(CH2CH2O)nH ・・・・〔I〕 (xは7?13の整数、nは3?14の整数)で示されHLBが10?15であるポリオキシエチレン第一級アルキルエーテルを存在させることを特徴とする血液試料の濁りを減らす方法。」

(2b)従来の技術について(公報第1頁左下欄16行?右下欄4行)
「臨床化学分析においてはあらゆる組織の変化を反映している血液が最も重要な分析試料の1つとなっており、その中でも主として分析の対象となる血清は数百種の成分から成る複雑な組成をもち、特に患者血清ではそれらの成分の含量が大幅に異なり、しかもその変動範囲は様々である。臨床化学分析において分析の反応を妨害し、分析誤差を招来するものの1つとして、血清中の濁りが指摘され続けてきた。」

(2c)問題点の解決方法について(公報第2頁左上欄16行?左下欄8行)
「以上の様な問題点を解決すべく本発明者は血液試料の濁りを減らす物質について広範囲にその効果を鋭意検索した結果、表1の様な陰イオン系、陽イオン系、非イオン系界面活性剤及び両性界面活性剤の様々な種類の検索から以下のようなことがわかった。(表1・略)まず第一に液性に対する安定性という点から見た場合、臨床化学分析用試薬の液性はpH2?13と幅広いため、強酸・強アルカリ性での溶解性と安定性が求められ、更に重金属、塩などに対する安定性やイオン解離しない事などが求められ、これらの点と表1の検索の結果から非イオンのポリオキシエチレン(POEと略)系の界面活性剤が最も適しているといえる。」

(2d)血液試料への添加について(公報第3頁左上欄3行?7行)
「式〔I〕で示される化合物を血液試料に存在させる方法としては臨床化学分析用試薬と混合、ないしは水溶液や緩衝溶液として添加するのが実用的である。何れの場合にも濁りを減らす効果は十分に発揮される。」

(3)原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-308117号公報(以下、「引用例3」という)には、下記の事項が記載されている。

(3a)採血管(特許請求の範囲請求項1)
「ゲル状物質と凍結乾燥された薬剤が封入されてなる採血管において、開口部を有する中空管状体内で凍結乾燥された薬剤がゲル状物質の上に介在されていることを特徴とする採血管。」

(3b)凍結乾燥された薬剤について(第2欄17行?19行)
「本発明において凍結乾燥された薬剤とは、何ら血液凝固促進剤に限定されるものではなく、抗凝固剤、ヘパリン中和剤としての硫酸プロタミン等も使用できる。」

2-2.対比・判断
引用例2には、血液試料中に非イオンのポリオキシエチレン系界面活性剤を存在させることにより血液試料の濁りを減らす方法が記載されており(上記記載(2a)(2c)参照)、非イオン性界面活性剤を存在させる方法として、臨床化学分析用試薬と混合することが記載されていることから(上記記載(2d)参照)、引用例2には、血液試料に適用され非イオン性界面活性剤を含有する臨床化学分析用試薬が実質的に記載されているものと認められる。
そこで、本願補正発明に係る「生体試料液中の生理活性物質を測定するための測定用試薬」と上記引用例2記載の上記「臨床化学分析用試薬」とを比較すると、引用例2記載の「臨床化学分析用試薬」には、「生体試料液中の生理活性物質を測定するための測定用試薬」も含まれることは明らかであり、かつ、非イオン性界面活性剤は混濁防止剤として用いられているものであるから、両者は、「生体試料液中の生理活性物質を測定するための測定試薬であって、非イオン性界面活性剤の混濁防止剤を含有する測定試薬」である点で一致し、一方、本願補正発明の測定試薬は、「採取後にヘパリンを添加した生体試料液又は予めヘパリンを含有する生体試料液を、その生体試料液中の生理活性物質測定用で、2価金属イオンを含む試薬と接触させることによって発生するヘパリン由来混濁の発生を防止」するものであるのに対して、引用例2記載の測定試薬はそのような限定が付されていない点で相違している。
上記相違点について検討するに、臨床化学分析の分野において血清試料あるいは血漿試料の濁りが分析に悪影響を与えることや、これらの濁りにはさまざまな要因が関係していることは、例えば引用例1(上記記載(1b)参照)及び引用例2(上記記載(2b)参照)にも記載されているようにこの出願前広く知られており、また、これらの濁りを低減しまたは実質的に防止するために界面活性剤が用いられ(上記記載(1c)(1d)参照)、中でも非イオン性界面活性剤が特に有効であることもすでに知られている(上記記載(2c)参照)。一方、血液試料を分析する際に目的に応じてさまざまな薬剤を添加することは、例えば引用例3にも記載されているように(上記記載(3a)(3b)参照)常套手段として知られており、特にヘパリンは凝固防止剤として常用され(上記記載(1e)参照)、2価金属を含む試薬も本願明細書段落【0006】で説明されているようにすでに上市されているものである。
このように、「採取後にヘパリンを添加した生体試料液や予めヘパリンを含有する生体試料液」や「その生体試料液中の生理活性物質測定用で2価金属イオンを含む試薬」が何ら特別なものではなく、通常広く一般に用いられているものであるとすると、これらが接触することによって発生する「ヘパリン由来混濁」についても、原因はどうであれ濁りという現象としてはこれまでにすでに認識されているものと考えられる。そして、このような濁りに対しても非イオン性界面活性剤が有効であることは、当業者であれば容易に想到できるものであり、必要であれば濁りの原因を特定することも確認実験等により適宜なし得ることであって、本願補正発明は、従来から存在する血液試料の濁りのさまざまな原因の1つを特定した上で、従来から存在している試薬について、単に「採取後にヘパリンを添加した生体試料液又は予めヘパリンを含有する生体試料液を、その生体試料液中の生理活性物質測定用で、2価金属イオンを含む試薬と接触させることによって発生するヘパリン由来混濁の発生を防止」するという限定を付したものにすぎない。
なお、本願補正発明の測定用試薬が「ヘパリン由来混濁の発生の防止」にのみ用いるものであっても、「血液試料の濁り防止」のための試薬という点では、上記引用例2記載されているような従来の測定用試薬と同一の用途を有するものであるから、濁りの原因を特定することだけで進歩性を有するものと認めることはできない。
したがって、本願補正発明は、引用例2記載の発明および引用例1ないし3に記載された周知の事項により当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-3.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
平成16年9月13日付けの手続補正は上記の通り却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という)は、平成16年1月5日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】採取後にヘパリンを添加した生体試料液又は予めヘパリンを含有する生体試料液を、その生体試料液中の生理活性物質測定用試薬と接触させることによって発生するヘパリン由来混濁の発生を防止して、前記生体試料液中の生理活性物質を測定するための測定用試薬であって、塩基性アミノ酸、塩基性タンパク質、カチオン性ポリマー、非イオン性界面活性剤、及びアルカリ金属塩からなる群から選んだヘパリン由来混濁防止剤を含有することを特徴とする、前記の測定用試薬。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物およびその記載事項は、前記II.2.2-1.に記載したとおりである。

3.本願発明と刊行物2記載の発明との対比
本願発明は前記II.2.2-2.で検討した本件補正発明から「測定用試薬」の限定事項である「2価金属イオンを含む」という構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.2.2-2.において検討したとおり引用例1ないし3及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることから、本願発明も同様の理由により、引用例1ないし3及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された上記刊行物1ないし3に記載された発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-01 
結審通知日 2006-11-07 
審決日 2006-11-20 
出願番号 特願平7-214238
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮澤 浩  
特許庁審判長 鐘尾 みや子
特許庁審判官 秋月 美紀子
黒田 浩一
発明の名称 ヘパリン由来の混濁を防止する測定用試薬及び測定方法  
代理人 森田 憲一  
代理人 森田 憲一  

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