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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C08F |
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管理番号 | 1149837 |
異議申立番号 | 異議2003-73352 |
総通号数 | 86 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-05-06 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-12-24 |
確定日 | 2006-07-04 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3459272号「オレフィンの重合および共重合方法」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3459272号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3459272号の請求項1ないし6に係る発明は,平成5年1月26日に出願(優先権主張 平成4年1月27日,ドイツ)され,平成15年8月8日にその特許権の設定登録がなされたところ,特許異議申立人 金子 しの(以下,「申立人」という。)より,請求項1ないし6に係る特許に対し特許異議の申立てがなされたものであり,その後,取消理由が通知され,指定期間内である平成17年3月10日付で特許異議意見書の提出および訂正請求がなされたが,訂正拒絶理由が通知され,指定期間内である平成17年11月14日付で手続補正がなされたものである。 2.訂正の適否 2.1 訂正請求に対する手続補正の適否 平成17年11月14日付の手続補正は,平成17年3月10日付の訂正請求書の訂正の内容(5),(6)および(7)を削除するものである。 そして,当該手続補正は,訂正請求書の要旨を変更するものではなく,特許法第120条の4第3項で準用する第131条第2項の規定に適合するものである。 2.2 訂正の内容 前記手続補正の結果,訂正請求書に示される訂正事項は,次のとおりである。 (1)【請求項1】の「助触媒1が」を「上記メタロセンが式(I)(式および説明略。)で表される化合物であり、助触媒1が」と,「そして助触媒2が重合反応の前にメタロセンと接触させられていることを特徴とする、」を「そして助触媒2が担体に担持されて担持触媒2を形成しそして上記担持触媒2を重合反応の前にメタロセンと接触させられそして重合反応前に助触媒1が液状モノマーまたは重合反応に使用される懸濁媒体に添加されることを特徴とする、」と訂正する。 (2)【請求項2】の記載を削除し, 【請求項3】の「請求項1または2」を「請求項1」と訂正して,新たな【請求項2】とし, 【請求項4】の「請求項1?3のいずれか一つ」を「請求項1または2」と訂正して,新たな【請求項3】とする。 (3)【請求項5】の「助触媒2がシリカゲル、酸化アルミニウムおよび固体のアルミノキサンの様な無機担体材料にまたは微細なポリオレフィン粉末に担持されている請求項1?4」を「上記担体がシリカゲル、酸化アルミニウムまたは固体のアルミノキサンまたは微細なポリオレフィン粉末である請求項1?3」と訂正して,新たな【請求項4】とする。 (4)【請求項6】の「メタロセンがオレフィンと予備重合されている請求項1?5」を「メタロセンがオレフィンと予備重合されている、請求項1?5」と訂正して,新たな【請求項5】とする。 また,前記以外に,全文訂正明細書においては,発明の名称が「オレフィンの重合および/または共重合方法」に訂正され,発明の詳細な説明の段落【0013】(中身なし)が削除され,段落【0014】?【0053】が段落【0013】?【0052】に訂正され,段落【0054】中「実施例 6?27…」より前の記載部分が段落【0053】に,以後の記載部分が段落【0054】に訂正されている。 2.3 訂正の目的の適否,新規事項の有無および拡張・変更の存否 訂正事項(1)は,請求項1において,メタロセンについては特許明細書の段落【0014】?【0024】の記載,助触媒1については同じく段落【0034】の記載,助触媒2については同じく段落【0037】の記載を根拠として,各々特定の態様に限定するものであって,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである(なお,訂正請求書5頁4行に「0013?0014段落」,同8行に「0036段落」および同13行に「0033段落」とあるのは,各々,全文訂正明細書の段落番号を指すものと認める。)。 訂正事項(2)のうち,請求項2を削除する訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,また,請求項3ないし4を新たな請求項2ないし3とする訂正は,特許請求の範囲の記載の整合をとるものであって,明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項(3),(4)は,特許請求の範囲の記載の整合をとるものであって,明りょうでない記載の釈明を目的とするものである(なお,訂正後の【請求項5】に「請求項1?5」とあるのは,「請求項1?4」の誤記と認める。)。 そして,前記(1)?(4)のいずれも,明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 また,前記以外の,全文訂正明細書の発明の名称および発明の詳細な説明に係る前記訂正については,その内容よりみて,明りょうでない記載の釈明を目的とし,明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないものと認める。 2.4 まとめ 以上のとおりであるから,前記訂正は,特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下,「平成6年法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる,特許法第120条の4第3項で準用する平成6年法改正前の特許法第126条第1項ただし書,第2項および第3項の規定に適合するので,当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 3.1 訂正後の本件発明 前記訂正の結果,訂正後の請求項1?5に係る発明(以下,各々「本件発明1」?「本件発明5」という。)は,全文訂正明細書(以下,「本件明細書」という。)の記載からみて,以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 オレフィンの重合または共重合方法において、遷移金属化合物としての少なくとも1種類のメタロセン、助触媒1および助触媒2で構成される触媒組成物を使用し、 その際に上記メタロセンが式(I)(式および説明略。)で表される化合物であり、 助触媒1が式II(式および説明略。)で表される化合物および/または式III(式および説明略。)で表される化合物の少なくとも1種類または式IV(式および説明略。)で表される少なくとも1種類のアルミニウム化合物であり、 そして助触媒2は式IIおよび/または式IIIの少なくとも1種類の化合物および/または式IVの少なくとも1種類の化合物より成り、 ただし触媒組成物が式IIおよび/または式IIIの少なくとも1種類の化合物および式IVの少なくとも1種類の化合物を含有しており そして助触媒2が担体に担持されて担持触媒2を形成し そして上記担持触媒2を重合反応の前にメタロセンと接触させられ そして重合反応前に助触媒1が液状モノマーまたは重合反応に使用される懸濁媒体に添加されることを特徴とする、上記オレフィンの重合または共重合方法。 【請求項2】 式IVの化合物がトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウム-ジハライドまたはジアルキルアルミニウムヒドリドである請求項1に記載のオレフィンの重合または共重合方法。 【請求項3】 式IVの化合物がトリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウム-ヒドリド、ジエチルアルミニウム-クロライド、ジメチルアルミニウム-フルオライド、エチルアルミニウム-ジクロライドまたはトリエチルアルミニウムである請求項1または2に記載のオレフィンの重合または共重合方法。 【請求項4】 上記担体がシリカゲル、酸化アルミニウムまたは固体のアルミノキサンまたは微細なポリオレフィン粉末である請求項1?3のいずれか一つに記載のオレフィンの重合または共重合方法。 【請求項5】 メタロセンがオレフィンと予備重合されている、請求項1?5(「請求項1?4」の誤記と認める。)のいずれか一つに記載のオレフィンの重合または共重合方法。」 3.2 取消理由の概要 当審が通知した取消理由は,申立人による特許異議申立ての理由と同様なものであるところ,その理由2)は,訂正前の請求項1?6に係る発明は,本件出願前に頒布された刊行物1(特開昭63-280703号公報,甲第1号証),刊行物2(特開昭63-61010号公報,甲第2号証),刊行物3(特開昭63-178108号公報,甲第3号証)ないし刊行物4(特開平3-21607号公報,甲第4号証)に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである,というものである。 3.3 刊行物2の記載 前記刊行物のうち,刊行物2には,次の記載(1)?(4)がある。 (1)特許請求の範囲 「〔A〕有機金属化合物処理が施された多孔質無機酸化物担体に、 〔B〕周期律表第IVB族の遷移金属化合物を担持した固体触媒であつて、多孔質無機酸化物担体1グラムに対して遷移金属が3×10-3ないし3ミリグラム原子担持された固体触媒成分、及び 〔C〕アルミノオキサン、 から形成された触媒の存在下に、オレフインを重合または共重合させることを特徴とするオレフインの重合方法。」 (2)4頁左上欄9行?右下欄3行 「触媒成分〔A〕は、有機金属化合物処理が施された多孔質無機酸化物担体である。上記担体としては具体的にはSiO2、Al2O3、…等を例示することができる。…。 触媒成分〔A〕において上記担体は触媒成分〔B〕を担持する前に予め有機金属化合物で処理される。…。これらの中で有機アルミニウム化合物が好ましく、具体的にはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム…などのトリアルキルアルミニウム、…ジエチルアルミニウムクロリド…のようなジアルキルアルミニウムハライド、…エチルアルミニウムジクロリドのようなアルキルアルミニウムジハライド…を例示できる。 上記有機アルミニウム化合物としてトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムジクロリドが好ましく、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、…ジエチルアルミニウムクロリドがとくに好ましい。」 (3)5頁左上欄3行?6頁右上欄8行 「触媒成分〔B〕における周期律表IVB族の遷移金属はチタン、ジルコニウム及びハフニウムからなる群から選択されるものである。…。 触媒成分〔B〕における周期律表IVB族の遷移金属化合物の例として、共役π電子を有する基を配位子としたジルコニウム化合物を挙げることができる。上記共役π電子を有する基を配位子としたジルコニウム化合物はたとえば下記式(I) R1kR2lR3mR4nZr (I) 〔ここで、R1はシクロアルカジエニル基を示し、R2、R3およびR4はシクロアルカジエニル基、アリール基、アルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子または水素であり、k≧1、k+l+m+n=4である〕で示される化合物である。…。該ジルコニウム化合物としては次の化合物を例示することができる。…。」 (4)6頁左下欄12行?右下欄5行 「触媒成分〔C〕はアルミノオキサンである。 触媒成分〔C〕として使用されるアルミノオキサンとして一般式(II)及び一般式(III)(式略。)で表わされる有機アルミニウム化合物を例示することができる。…。」 そこで,刊行物2に記載された各触媒成分についてみると,まず,触媒成分〔A〕の「有機金属化合物」にはトリメチルアルミニウム,トリエチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム,ジエチルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムハライド,エチルアルミニウムジクロリド等のアルキルアルミニウムジハライドが例示され(記載事項(2)),これは,本件発明1?3における「式IVの化合物」に該当するものである。また,触媒成分〔A〕の「多孔質無機酸化物担体」にはSiO2,Al2O3等が例示され(記載事項(2)),これは,本件発明1,4における「担体」に該当するものである。さらに,触媒成分〔A〕は「有機金属化合物処理が施された多孔質無機酸化物担体」であり(記載事項(1)),これは,本件発明1において「式IVの化合物」が「担体」の上に担持されたもの,すなわち「担持触媒2」に該当するものである。 つぎに,刊行物2に記載された触媒成分〔B〕の「周期律表第IVB族の遷移金属化合物」はいわゆるメタロセンである(記載事項(3))から,本件発明1における「遷移金属化合物としての少なくとも1種類のメタロセン」に対応する。そして,触媒成分〔B〕は触媒成分〔A〕に担持されるものであり(記載事項(2)),係る担持が重合反応の前に行われることは自明であるから,これは,本件発明1における「担持触媒2を重合反応の前にメタロセンと接触させられ」に該当するものである。 さらに,〔C〕アルミノオキサンは,その一般式(記載事項(4))よりみて,本件発明1における「式IIの化合物」ないし「式IIIの化合物」に該当するものである。 そして,以上にしたがえば,刊行物2に記載された触媒成分が,本件発明1における触媒組成物のように「式IIおよび/または式IIIの少なくとも1種類の化合物および式IVの少なくとも1種類の化合物を含有」することは自明である。 そうすると,刊行物2には,次の発明が記載されている(以下,「刊行物2発明」という。)。 「オレフィンの重合または共重合方法において,遷移金属化合物としての少なくとも1種類のメタロセン,式IIおよび/または式IIIの少なくとも1種の化合物,および,式IVの化合物で構成される触媒組成物を使用し,その際に 触媒組成物が式IIおよび/または式IIIの少なくとも1種類の化合物および式IVの少なくとも1種類の化合物を含有しており そして式IVの化合物が担体に担持されて担持触媒2を形成し そして上記担持触媒2が重合反応の前にメタロセンと接触させられていることを特徴とする,上記オレフィンの重合または共重合方法。」 3.4 対比・判断 (1)本件発明1 前記刊行物2発明における「式IIおよび/または式IIIの少なくとも1種類の化合物」は,本件発明1の「助触媒1」を構成し,また,刊行物2発明における「式IVの化合物」は,本件発明1の「助触媒2」を構成するものであるから,本件発明1と刊行物2発明とは,ともに,オレフィンの重合または共重合方法において,遷移金属化合物としての少なくとも1種類のメタロセン,助触媒1および助触媒2で構成される触媒組成物を用いるものであって,次の二点においてのみ相違している。 相違点1:本件発明1ではメタロセンとして式(I)で表される化合物を用いるのに対し,刊行物2発明ではそのような特定がされていない点。 相違点2:本件発明1では重合反応前に助触媒1が液状モノマーまたは重合反応に使用される懸濁媒体に添加されるのに対し,刊行物2発明ではそのような明示がない点。 前記相違点について検討するに,まず,相違点1については,メタロセン触媒を用いたオレフィンの重合または共重合方法において,前記式(I)のメタロセンを用いることは,本件出願前に周知(刊行物1の6頁左上欄10行?9頁左下欄5行,刊行物3の4頁右下欄8行?5頁右上欄13行および刊行物4の特許請求の範囲等を参照。)であるから,刊行物2発明においてメタロセン触媒として式(I)で表される化合物を用いることは,当業者が容易になしえたことである。 また,相違点2については,刊行物4(10頁左上欄下2行?右上欄6行「実施例20」,同右下欄2?9行「実施例43」,11頁左上欄8?15行「実施例44」および同右上欄13?17行「実施例45」を参照。)には,アルミノキサンのトルエン溶液を重合反応前に加えることが記載されているところ,刊行物4に記載されている「アルミノキサン」ないし「トルエン」が,各々,本件発明1における「助触媒1」ないし「懸濁媒体」に相当することは明らかである。そうすると,刊行物2発明において,助触媒1を構成する式IIおよび/または式IIIの化合物(すなわち,〔C〕アルミノオキサン)を,重合反応前に懸濁媒体に添加してみることは,当業者が容易になしえたことである。 そして,本件明細書の記載をみても,本件発明1において,式(I)のメタロセンを用いる点,および,助触媒1が重合反応前に重合反応に使用される懸濁媒体に添加される点に,格別の技術的意義があるものとも認められない。 したがって,本件発明1は,刊行物2発明および刊行物4に記載された発明並びに周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件発明2 本件発明2は,本件発明1において,式IVの化合物がトリアルキルアルミニウム,ジアルキルアルミニウムハライド,アルキルアルミニウム-ジハライドまたはジアルキルアルミニウムヒドリドであることを特徴とするが,これらの化合物は刊行物2発明にも包含されている(記載事項(2))。 したがって,本件発明2は,前記(1)と同様,刊行物2発明および刊行物4に記載された発明並びに周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)本件発明3 本件発明3は,本件発明1または2において,式IVの化合物がトリメチルアルミニウム,トリイソブチルアルミニウム,ジエチルアルミニウム-ヒドリド,ジエチルアルミニウム-クロライド,ジメチルアルミニウム-フルオライド,エチルアルミニウム-ジクロライドまたはトリエチルアルミニウムであることを特徴とするが,これらの化合物は刊行物2発明にも包含されている(記載事項(2))。 したがって,本件発明3は,前記(1)と同様,刊行物2発明および刊行物4に記載された発明並びに周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)本件発明4 本件発明4は,本件発明1?3において,担体がシリカゲル,酸化アルミニウムまたは固体のアルミノキサンまたは微細なポリオレフィン粉末であることを特徴とするが,その一部は刊行物2発明にも開示されている(記載事項(2))。 したがって,本件発明4は,前記(1)と同様,刊行物2発明および刊行物4に記載された発明並びに周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)本件発明5 本件発明5は,本件発明1?4において,メタロセンがオレフィンと予備重合されていることを特徴とするものである。 一方,刊行物2発明にはそのような明示はされていないが,メタロセン触媒を用いたオレフィンの重合または共重合方法において,メタロセンをオレフィンと予備重合させることは,刊行物1(10頁右上欄下8?3行,13頁左下欄6行?14頁左上欄3行,第1?4図等を参照。)に記載されているから,刊行物2発明において,メタロセンをオレフィンと予備重合させることは,当業者が容易になしえたことである。 そして,本件明細書の記載をみても,本件発明5において,予備重合を行う点に格別の技術的意義があるものとも認められない。 したがって,本件発明5は,刊行物2発明,および,刊行物1に記載された発明,刊行物4に記載された発明並びに周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおりであるから,本件発明1ないし5は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないのであって,本件発明1ないし5についての特許は,拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。 よって,平成6年法附則第14条の規定に基づく,平成6年法の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により,結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 オレフィンの重合および/または共重合方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】オレフィンの重合または共重合方法において、遷移金属化合物としての少なくとも1種類のメタロセン、助触媒1および助触媒2で構成される触媒組成物を使用し、その際に上記メタロセンが式(I) 【化1】 〔式中、M1はジルコニウム、ハフニウムまたはチタンであり、 R1およびR2は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、炭素原子数1?10のアルキル基、炭素原子数1?10のアルコキシ基、炭素原子数6?10のアリール基、炭素原子数6?10のアリールオキシ基、炭素原子数2?10のアルケニル基、炭素原子数7?40のアリールアルキル基、炭素原子数7?40のアルキルアリール基、炭素原子数8?40のアリールアルケニル基またはハロゲン原子であり、 R3およびR4は互いに同じでも異なっていてもよく、中心原子M1とサンドイッチ構造を形成し得る単環式-または多環式炭化水素残基であり、 R7は=CR11R12、=SiR11R12、=GeR11R12、-O-、-S-、=SO、=PR11または=P(O)R11であり、 R11およびR12は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1?10のアルキル基、炭素原子数1?10のフルオロアルキル基、炭素原子数6?10のアリール基、炭素原子数6?10のフルオロアリール基、炭素原子数1?10のアルコキシ基、炭素原子数2?10のアルケニル基、炭素原子数7?40のアリールアルキル基、炭素原子数8?40のアリールアルケニル基または炭素原子数7?40のアルキルアリール基であるかまたは R11とR12またはR11とR13とはそれぞれそれらの結合する原子と一緒に成って環を形成してもよく、そして R8およびR9は互いに同じでも異なっていてもよく、R11と同じ意味を持ち、そして mおよびnは0または1であり、m+nは0または1である。] で表される化合物であり、助触媒1が式II 【化2】 〔式中、R14は互いに同じでも異なっていてもよく、炭素原子数1?6のアルキル基、炭素原子数6?18のアリール基、ベンジル基または水素原子でありそしてpは2?50の整数である。〕 で表される化合物および/または式III 【化3】 〔式中、R14およびpは上記の意味を有する。〕 で表される化合物の少なくとも1種類または式IV 【化4】 〔式中、R15、R16およびR17は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、炭素原子数1?10のアルキル基、炭素原子数1?15のアルキルシリル基、炭素原子数6?10のアリール基、炭素原子数2?10のアルケニル基、炭素原子数7?40のアリールアルキル基、炭素原子数7?40のアルキルアリール基、炭素原子数8?40のアリールアルケニル基またはハロゲン原子である。〕 で表される少なくとも1種類のアルミニウム化合物であり、 そして助触媒2は式IIおよび/または式IIIの少なくとも1種類の化合物および/または式IVの少なくとも1種類の化合物より成り、ただし触媒組成物が式IIおよび/または式IIIの少なくとも1種類の化合物および式IVの少なくとも1種類の化合物を含有しておりそして助触媒2が担体に担持されて担持触媒2を形成しそして上記担持触媒2を重合反応の前にメタロセンと接触させられそして重合反応前に助触媒1が液状モノマーまたは重合反応に使用される懸濁媒体に添加されることを特徴とする、上記オレフィンの重合または共重合方法。 【請求項2】式IVの化合物がトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウム-ジハライドまたはジアルキルアルミニウムヒドリドである請求項1に記載のオレフィンの重合または共重合方法。 【請求項3】式IVの化合物がトリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウム-ヒドリド、ジエチルアルミニウム-クロライド、ジメチルアルミニウム-フルオライド、エチルアルミニウム-ジクロライドまたはトリエチルアルミニウムである請求項1または2に記載のオレフィンの重合または共重合方法。 【請求項4】上記担体がシリカゲル、酸化アルミニウムまたは固体のアルミノキサンまたは微細なポリオレフィン粉末である請求項1?3のいずれか一つに記載のオレフィンの重合または共重合方法。 【請求項5】メタロセンがオレフィンと予備重合されている、請求項1?5のいずれか一つに記載のオレフィンの重合または共重合方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、先ず第一にメタロセンおよび助触媒としての少なくとも二種類の異なるアルミニウム化合物より成るオレフィンの重合用触媒組成物に関する。 【0002】 【従来の技術】 可溶性メタロセン化合物とオリゴマーのアルミノキサンとの組合せを基礎とする触媒は公知である。これらの系はエチレン、プロピレンおよび更に高級なオレフィンを重合する為に使用することができる〔ヨーロッパ特許出願公開第185,918号明細書;J.Am.Chem.Soc.109(1987)6544〕。 ポリオレフィンワックスおよび高立体規則性のポリオレフィンはメタロセン/アルミノキサン-触媒組成物によって製造できる(ヨーロッパ特許出願公開第321,852号明細書およびヨーロッパ特許出願公開第387,690号明細書)。 使用する助触媒がアルミノキサンであることがこれらの全ての方法に共通している。このアルミニウム化合物は製造に費用が掛り且つ困難である。更に、満足したメタロセン活性を達成するためにはAl/メタロセン-比が1,000より大きくあるべきであり、若干の場合には10,000より大きくあるべきであるので、重合に比較的に多量に必要とされる。それ故、生じるポリマー中に含まれる残留灰分は相応して多く、複雑で費用の掛かる精製段階によって除かなければならない。 【0003】 それ故に、アルミノキサンの必要量を減らすかまたはアルミノキサンを他の助触媒に交換することに関心が持たれている。しかしながら従来に提案された解決法は全て満足なものでない。 【0004】 例えばメタロセンとしてのエチレンビス(インデニル)ZrCl2およびオレフィンとしてのプロピレンとの組合せにおいて、メチルアルミノキサン(MAO)の全部をと組合せて二倍量のトリメチルアルミニウムに交換することが、10kg(PP)/g(メタロセン)×時から63g(PP)/g(メタロセン)×時(0.6%)に重合活性を低下させる〔Macromolecules、23(1990)4489〕。 【0005】 Adv.Organomet.Chem.18(1980)99によると、ジルコノセン/トリアルキルアルミニウム系はプロペンを重合することができず、そしてエチレンに対しても不活性であるかまたは活性が非常に低い。 【0006】 MAOをトリメチルアルミニウムに交換する時に僅かな不活性化作用が生ずることがCp2ZrCl2/-エチレン系において観察されている。しかしながらこの種の系はプロキラルなオレフィン、例えばプロペンを重合して、アイソタクチック-またはシンジオタクチック-ポリマーをもたらすことができず、あまり関心がもたれないアタクチック-ポリマーしか生じない。 【0007】 J.Polym.Sci.、パートA、Pol.Chem.、29(1991)第459頁には、MAOおよびMAOとトリメチルアルミニウムとの混合物の存在下にrac-エチレン(1-インデニル)2ZrCl2を使用してプロペンを重合することが開示されている。MAOの全部または一部をトリメチルアルミニウムに交換することは同様に重合活性の著しい低下または喪失をもたらす。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】 それ故の本発明の課題は、助触媒、特にMAOの量、許容し得る程度の活性の損失しか生ぜしめないで減少させることのできる、オレフィンの重合用触媒組成物または方法を見出すことである。 【0009】 【課題を解決するための手段】 本発明は、遷移金属化合物としての少なくとも1種類のメタロセン、助触媒Iおよび助触媒2で構成され、助触媒iが式II 【0010】 【化5】 〔式中、R14は互いに同じでも異なっていてもよく、炭素原子数1?6のアルキル基、炭素原子数6?18のアリール基、ベンジル基または水素原子でありそして pは2?50の整数である。〕 で表されるおよび/または式III 【0011】 【化6】 〔式中、R14およびpは上記の意味を有する。〕 で表される少なくとも1種類のアルミニウム化合物または式IV 【0012】 【化7】 〔式中、R15、R16およびR17は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、炭素原子数1?10のアルキル基、炭素原子数1?15のアルキルシリル基、炭素原子数6?10のアリール基、炭素原子数2?10のアルケニル基、炭素原子数7?40のアリールアルキル基、炭素原子数7?40のアルキルアリール基、炭素原子数8?40のアリールアルケニル基またはハロゲン原子である。〕 で表される少なくとも1種類のアルミニウム化合物であり、 そして助触媒2は式IIおよび/または式IIIの少なくとも1種類の化合物および/または式IVの少なくとも1種類の化合物より成り、ただし触媒組成物が式IIおよび/または式IIIの少なくとも1種類の化合物および式IVの少なくとも1種類の化合物を含有しそして助触媒2を重合反応の前にメタロセンと接触させることを特徴とする、オレフィンの重合または共重合用触媒組成物に関する。 【0013】 本発明の触媒組成物の構成成分であるメタロセンは式Iまたは1a 【0014】 【化8】 〔式中、M1は周期律表の第IVb、第Vbまたは第VIb族の金属であり、 R1およびR2は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、炭素原子数1?10のアルキル基、炭素原子数1?10のアルコキシ基、炭素原子数6?10のアリール基、炭素原子数6?10のアリールオキシ基、炭素原子数2?10のアルケニル基、炭素原子数7?40のアリールアルキル基、炭素原子数7?40のアルキルアリール基、炭素原子数8?40のアリールアルケニル基またはハロゲン原子であり、 R3?R6は互いに同じでも異なっていてもよく、中心原子M1とサンドイッチ構造を形成し得る単環式-または多環式炭化水素残基であり、 R7は 【0015】 【化9】 =BR11、=AlR11、-Ge-、-Sn-、-O-、-S-、=SO、=SO2、=NR11、=CO、=PR11または=P(O)R11であり、その際R11、R12およびR13は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1?10のアルキル基、炭素原子数1?10のフルオロアルキル基、炭素原子数6?10のアリール基、炭素原子数6?10のフルオロアリール基、炭素原子数1?10のアルコキシ基、炭素原子数2?10のアルケニル基、炭素原子数7?40のアリールアルキル基、炭素原子数8?40のアリールアルケニル基または炭素原子数7?40のアルキルアリール基であるかまたは R11とR12またはR11とR13とはそれぞれそれらの結合する原子と一緒に成って環を形成してもよく、そして M2は珪素、ゲルマニウムまたは錫であり、 R8およびR9は互いに同じでも異なっていてもよく、R11について記載した意味を有しそして mおよびnは互いに同じでも異なっていてもよく、0、1または2であり、m+nは0、1または2である。〕 で表される化合物、とくに後述の実施例に示された化合物である。 【0016】 化合物I?IVにおいて、アルキル基は直鎖状のまたは枝分かれしたアルキル基である。ハロゲン(ハロゲン化)は弗素原子、塩素原子、臭素原子または沃素原子、特に弗素原子または塩素原子である。 【0017】 式IまたはIa中、M1は周期律表の第IVbの金属であり、例えばチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムである。 【0018】 R1およびR2は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、炭素原子数1?10のアルキル基、好ましくは炭素原子数1?3のアルキル基、炭素原子数1?10のアルコキシ基、好ましくは炭素原子数1?3のアルコキシ基、炭素原子数6?10、殊に6?8のアリール基、炭素原子数6?10、殊に6?8のアリールオキシ基、炭素原子数2?10、殊に2?4のアルケニル基、炭素原子数7?40、殊に7?10のアリールアルキル基、炭素原子数7?40、殊に7?12のアルキルアリール基、炭素原子数8?40、殊に8?12のアリールアルケニル基またはハロゲン原子、殊に塩素原子である。 【0019】 R3?R6は互いに同じでも異なっていてもよく、好ましくはシクロペンタジエニル、インデニルまたはフルオレニルである。これらの残基は追加的に置換基を有していてもよい。この種の置換された残基R3?R6の例にはジアルキルシクロペンタジエニル、トリアルキルシクロペンタジエニル、アルキルインデニル、ジアルキルインデニル、トリアルキルインデニル、アルキルテトラヒドロインデニルまたはベンゾ融合したインデニルがある。 【0020】 R7は 【0021】 【化10】 =BR11、=AlR11、-Ge-、-Sn-、-O-、-S-、=SO、=SO2、=NR11、=CO、=PR11または=P(O)R11であり、その際 R11、R12およびR13は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1?10のアルキル基、殊に炭素原子数1?4のアルキル基、特にメチル基、炭素原子数1?10のフルオロアルキル基、好ましくはCF3基、炭素原子数6?10のアリール基、好ましくは炭素原子数6?8のアリール基、炭素原子数6?10のフルオロアリール基、好ましくはペンタフルオロフェニル基、炭素原子数1?10のアルコキシ基、好ましくは炭素原子数1?4のアルコキシ基、特にメトキシ基、炭素原子数2?10のアルケニル基、好ましくは炭素原子数2?4のアルケニル基、炭素原子数7?40のアリールアルキル基、好ましくは炭素原子数7?10のアリールアルキル基、炭素原子数8?40のアリールアルケニル基、好ましくは炭素原子数8?12のアリールアルケニル基または炭素原子数7?40のアルキルアリール基、好ましくは炭素原子数7?12のアルキルアリール基であるかまたはR11とR12またはR11とR13とはそれぞれそれらの結合する原子と一緒に成って環を形成してもよい。 【0022】 M2は珪素、ゲルマニウムまたは錫、特に珪素またはゲルマニウムである。 R7は=CR11R12、=SiR11R12、=GeR11R12、-O-、-S-、=SO、=PR11または=P(O)R11であるのが有利である。 【0023】 R8およびR9は互いに同じでも異なっていてもよく、R11と同じ意味を持つ。 mおよびnは互いに同じでも異なっていてもよく、0、1または2、殊に0または1であり、m+nは0、1または2、殊に0または1である。 【0024】 これらメタロセンの製法は文献から公知である〔例えば、Journal of Organometallic Chem.288(1985)63;同、369(1989)343;同、369(1989)359;Chemistry Letters(1989)1853;ヨーロッパ特許出願公開第387,690号明細書;ヨーロッパ特許出願公開第320,762号明細書参照)。本発明によると、助触媒はメタロセンと一緒に使用する。これらには二種類のアルミニウム化合物の代表例である。 【0025】 第一の種類は式IIおよび/または式IIIのアルミノキンサンであり、ただし式IIおよびIII中の残基R14は互いに同じでも異なっていてもよく、炭素原子数1?6のアルキル基、炭素原子数6?18のアリール基、ベンジルまたは水素原子でありそしてpは2?50、殊に10?35の整数である。 【0026】 残基R14は好ましくは互いに同じでありそしてメチル、イソブチル、フェニルまたはベンジルであり、特に好ましくはメチルである。 基R14が異なる場合には、メチルと水素原子または場合によってはメチルとイソブチルであるのが好ましく、水素原子またはイソブチルは0.01?40%の量で存在するのが有利である(基R14の数)。 【0027】 アルミノキサンは公知の方法によって色々なルートで製造できる。かゝる方法の一つは、例えばアルミニウム-炭化水素化合物および/またはアルミニウムヒドリド-炭化水素化合物を水(気体、固体、液体または結合した、例えば結晶水)と不活性溶剤(例えばトルエン)中で反応させることより成る。異なるアルキル基R14を持つアルミノキサンを製造する為には、二種類の異なったアルミニウム-トリアルキル(AlR3+AlR’3)??所望の組成に依存する??を水と反応させる(S.Pasynkiewicz、Polyhedron 9(1990)429およびヨーロッパ特許出願公開第302,424号明細書参照〕。 【0028】 アルミノキサンIIおよびIIIの正確な構造は知られていない。 製造方法に無関係に、全てのアルミノキサン溶液は、遊離状態でまたは付加物として存在する未反応アルミニウム出発化合物の含有量が変化するという共通点を有している。 【0029】 第二の種類は式IV(AlR15R16R17)の化合物であり、この場合、R15、R16およびR17は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、炭素原子数1?10、殊に炭素原子数1?8のアルキル基、炭素原子数1?15、殊に炭素原子数1?6のアルキルシリル基、炭素原子数6?10、殊に炭素原子数6?8のアリール基、炭素原子数2?10、殊に炭素原子数2?4のアルケニル基、炭素原子数7?40、殊に炭素原子数7?10のアリールアルキル基、炭素原子数7?40、殊に炭素原子数7?12のアルキルアリール基、炭素原子数8?40、殊に炭素原子数8?12のアリールアルケニル基、ハロゲン原子、殊に塩素原子または臭素原子である。 【0030】 第二の種類の特に有利なアルミニウム化合物は、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウム-ハライド、アルキルアルミニウム-ジハライド、ジアルキルアルミニウム-ヒドリド、上記化合物のアリール/アルキル-同属体の混合物、および上記化合物のアルコキシ/アルキル、アルコキシ/アルール、アルールオキシ/アルキルおよびアリールオキシ/アリール同属体の各混合物、特に実施例に記載の化合物IVがある。 【0031】 本発明の触媒系は特にメタロセン、助触媒1および助触媒2より成る。 助触媒1および2を組合せることによって、式IIおよび/またはIII(アルミノキサン、第一の種類)の化合物の少なくとも1種類と式IVの化合物の少なくとも1種類とをいずれの場合にも重合に提供することを保証しなければならない。 【0032】 ここでは式IIおよび/またはIIIの化合物を式IVの化合物と組み合わせるのが有利である。 更にメタロセンIまたはIaを用いるのが有利である。 【0033】 助触媒1は第一の種類のアルミニウム化合物の少なくとも1種類または第二の種類の化合物の少なくとも1種類より成る。助触媒1は溶剤なしでまたは不活性炭化水素に溶解して使用する。炭化水素は、脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素である。トルエンまたはベンジンが有利である。助触媒1??純粋な状態または溶解したもの??は重合反応の前に液状のモノマーまたは重合に使用する懸濁媒体に添加する。 【0034】 助触媒1の量は、1dm3の重合媒体当たり0.01?100mmol(アルミニウム化合物)、好ましくは0.1?10mmol(アルミニウム化合物)である。 【0035】 助触媒2は第一の種類のアルミニウム化合物の少なくとも1種類および/または第二の種類の化合物の少なくとも1種類より成る。助触媒2は溶剤なしにまたは好ましくは不活性炭化水素に溶解してまたは懸濁した懸濁液として使用する。脂肪族-または芳香族炭化水素、好ましくはトルエンまたはベンジンを使用する。 【0036】 助触媒2??純粋な状態、懸濁状態または溶解状態??を重合反応前にメタロセンまたはメタロセン混合物と接触させる。メタロセンは固体としてまたは不活性炭化水素、殊にベンジンまたはトルエンに溶解して添加する。メタロセンは助触媒2溶液または懸濁液中に固体として溶解するのが好ましい。助触媒2が固体である場合には、この固体を、メタロセンまたはメタロセンの混合物を炭化水素、好ましくはベンジン、例えばペンタン、ヘキサンまたはオクタンに溶解した溶液と混合してもよい。この溶剤は除いてもよく、そして助触媒2およびメタロセンまたはメタロセン混合物の両方を溶解しない炭化水素に交換してもい。場合によっては助触媒2は担体、例えばシリカゲル、酸化アルミニウム、固体のアルミノキサン、他の無機担体材料に担持させるかまたは場合によっては微細なポリオレフィン粉末に担持させる。メタロセンは担持されたこれら助触媒2に、溶解したメタロセンと担持された助触媒2とを攪拌することによってメタロセンを適用する。その溶剤を除きそして助触媒2およびメタロセンの両方を溶解しない炭化水素に交換する。 【0037】 助触媒2は、1dm3の重合媒体当たり0.01?100mmol(アルミニウム化合物)、好ましくは0.1?10mmol(アルミニウム化合物)の量で使用する。 【0038】 メタロセンは1dm3の重合媒体当たり10-8?10-3モル、殊に10-7?10-4モルの濃度で使用する。 助触媒2/メタロセンの組合せを好ましくは重合媒体および助触媒1が既に導入されている反応器中に配量供給する。これで重合が開始される。 【0039】 重合を連続的に実施する場合には、重合媒体/助触媒1およびメタロセン/助触媒2を連続的に配量供給する。 重合反応で使用する前に助触媒2によってメタロセンを予備活性化する。これは重合活性を著しく向上させそして粒子形態を改善する。 【0040】 予備活性化時間は1分?60時間、好ましくは5?60分である。予備活性化は-78?100℃、好ましくは0?70℃の温度で実施する。 メタロセンは予備重合させてもよい。この目的の為に、助触媒2/メタロセンの組合せを、重合系に導入する前に、オレフィン、好ましくは重合で用いるオレフィンと接触させる。これは-78?100℃、殊に0?70℃の温度で実施する。 【0041】 オレフィン中の触媒毒を除く為に、アルキルアルミニウム化合物、例えばAlMe3またはAlEt3によって精製するのが有利である。この精製は重合系自体で実施するかまたは、オレフィンを重合系に導入する以前にAl化合物と接触させそして次いで再び除いてもよい。ポリマー中の残留灰分含有量をできるだけ少なくするためには、モノマーの精製を重合系の外で実施するのが有利である。 【0042】 重合または共重合は公知の様に、溶液状態、懸濁状態または気相中で連続的にまたは不連続的に一段階または多段階で-60?200℃、好ましくは30?80℃の温度で実施する。式 Ra-CH=CH-Rbで表されるオレフィンを重合または共重合する。この式中、RaおよびRbは互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1?14のアルキル基である。しかしながらRaおよびRbはそれらが結合するC-原子と一緒に環を形成していてもよい。この種のオレフィンの例には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、ノルボルネンまたはノルボルナジエンがある。プロピレンおよびエチレンを重合または共重合するのが特に有利である。 【0043】 必要な場合には、分子量調整剤として水素を添加する。重合系の全圧は5×104?107Paである。特に工業的に興味の持たれる5×105?64×105Paの圧力範囲内で重合するのが有利である。 【0044】 本発明に従うメタロセンの優れた水素調整能力によって、高分子量ポリオレフィンとワックスとの間の全分子量範囲を一つのメタロセンによってカバーできる。 要するに本発明は、本発明の触媒組成物を使用することを特徴とする、オレフィンの上述の重合-または共重合法にも関する。 【0045】 重合を懸濁重合または溶液重合として実施する場合には、チグラー低圧法で慣用される不活性の溶剤を用いる。例えば重合を脂肪族-または脂環式炭化水素中で実施する。挙げることのできるかゝる溶剤の例としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサンおよびメチルシクロヘキサンが挙げられる。 【0046】 更に、ベンジンまたは水素化ジーゼル油留分も使用できる。トルエンも使用できる。重合を液状のモノマー中で実施するのが有利である。もし不活性溶剤を用いる場合には、モノマーを気体または液体として配量供給する。 【0047】 重合時間は、本発明で使用する触媒組成物が時間の経過と共に重合活性が僅かしか下がらないことが判っているので、任意の時間が可能である。 本発明の重合法は、製造に費用がかかり且つ製造が困難であるアルミノキサンを二種類の助触媒系の組合せによって安価なアルミニウム化合物に部分的に交換できる点に特徴がある。更に本発明の方法は追加的に、重合系のアルミニウムの全体量を減少させることを可能とし、このことが結果的に重合生成物中に残留灰分含有量を減少させる。 【0048】 【実施例】 以下の実施例にて本発明を更に詳細に説明する。 VN=粘度数(cm3/g) MAO=メチルアルミノキサン、 PP=ポリプロピレン Me=メチル Et=エチル Ph=フェニル Flu=フルオレニル Cp=シクロペンタジエニル Ind=インデニル C=比較例 実施例1?9および比較例1?6 乾燥した24dm3反応器をプロピレンでフラッシュ洗浄しそして12dm3の液状プロピレンを導入する。次いで、助触媒1の30cm3のトルエン溶液(表1参照;メチルアルミノキサンの平均オリゴマー度p=19)を添加しそしてこの混合物を30℃で15分攪拌する。これと平行して、5.0mgのrac-ジメチルシリル(1-インデニル)2ZrCl2を、助触媒2の15cm3のトルエン溶液(表1参照;メチルアルミノキサンの平均オリゴマー度p=19)に溶解しそして15分放置して予備活性化する。この溶液を次に反応器に導入し、熱の供給によって70℃(10℃/分)に加熱しそして重合系を冷却によって1時間の間70℃に維持する。20dm3(標準状態)のCO2ガスを添加しそしてガス状の過剰のモノマーを除くことによって重合を終了する。メタロセン活性および得られるポリマーの粘度数を表1に示す。 表1 【0049】 【表1】 実施例1?5は、助触媒1としてのMAOをAlMe3に交換しても、メタロセン活性が低下し(比較例1参照)、同時にAlMe3の量を収量を更に損失することなしに1/10に減らすことができることが判る(実施例1および実施例5)。倍の量のAlMe3は、活性を向上させないので、利益をもたらさない(実施例1および2)。 【0050】 全量のMAOを交換すると(本発明に従うものでない)、殆ど不活性の重合系がもたらされる(比較例2?4参照)。 実施例6は、AlMe3と実施例1からの助触媒2とを追加的に混合することが活性の向上を可能とすることを示している。反対に、比較例5において半分のMAOを実施例1からの助触媒2に交換することがメタロセン活性を半減させてしまう。 【0051】 実施例7の助触媒2の場合にMAOの量を増やすことが、実施例4と比較してメタロセン活性を著しく向上させる。 反対に、比較例6に記載したように助触媒1および2へのMAOを配分が、実施例7と比較してメタロセン活性を低下させてしまう。 【0052】 MAOが助触媒1としてAlMe3に交換されている実施例1?7の代わりに、MAOを場合によっては本発明に従って助触媒2においてもAlMe3に交換してもよい。これは、実施例8および9によって例示されている。 【0053】 実施例10?15 操作は実施例1と同様であるが、AlMe3を表2に掲載したアルミニウム化合物に交換する。 【表2】 表2 【0054】 実施例16?27 操作は実施例3と同様であるが、rac-ジメチルシリル(1-インデニル)2ZrCl2を表3に掲載したメタロセンと交換する。 表3 実施例28 実施例18と同様に実施するが、更に50gのエチレンを重合の間、一様な速度で配量供給する。メタロセン活性は164kg(コポリマー)/g(メタロセン)×時でありそしてポリマーのVNは194cm3/gである。得られるランダムコポリマーは5.6%のエチレンを含有している。 【0055】 実施例29 実施例18と同様に実施するが、250gのエチレンを30分の重合の後に添加する。メタロセン活性は219kg(コポリマー)/g(メタロセン)×時でありそしてポリマーのVNは234cm3/gである。このブロックコポリマーは19.5%のエチレンを含有している。 【0056】 実施例30 実施例18と同様に実施するが、48dm3(標準状態)の水素を、プロピレンを添加する以前に反応器に配量供給する。メタロセン活性は173kg(PP)/g(メタロセン)×時でありそしてポリプロピレン-ワックスのVNは18cm3/gである。 【0057】 実施例31 乾燥した24dm3反応器を窒素でフラッシュ洗浄しそして、芳香族化合物が除かれている12dm3のベンジン留分(沸点範囲100?120℃)を導入する。次いで反応器の気相空間から、2barのエチレンの注入および圧力開放を4回繰り返すことによってフラッシュ洗浄して窒素を除く。次いで、30cm3のトルエン中の15mmolのトリメチルアルミニウムを添加し、反応器を攪拌下に15分に亘って60℃に加熱しそしてエチレンの添加によって全体圧を5barに調節する。これと平行して、5mgのrac-エチレン(2-メチル-1-インデニル)2-ジルコニウム-ジクロライドを、メチルアルミノキサンの20cm3のトルエン溶液(=30mmolのMAO、平均オリゴマー度p=14)に溶解し、15分放置しそして反応器に導入する。重合を70℃で1時間実施し、系の圧力をエチレンの配量供給によって5barに維持する。395gのポリプロピレンが得られる。ポリエチレンのVNは305cm3/gであった。 【0058】 実施例32 実施例18と同様に実施するが、メチルアルミノキサンのトルエン溶液を同じ量およびモル濃度のイソブチルメチルアルミノキサンのヘプタン溶液に替える。メタロセン活性は137.5kg(PP)/g(メタロセン)×時でありそしてポリマーは159cm3/gのVNを有している。イソブチルメチルアルミノキサンはイソブチルAlMe2とAlMe2との混合物をヘプタン中で水と反応させることによって得られ、9mol%のイソブチル単位および91mol%のメチル単位を含有している。 【0059】 実施例33 実施例18を繰り返すが、メチルアルミノキサンのトルエン溶液を同じ量およびモル濃度のメチルアルミノキサン-ヒドリド溶液(トルエン中でMe2AlHと水とから製造される)に交換する。メタロセン活性は119kg(PP)/g(メタロセン)×時でありそしてポリマーは160cm3/gのVNを有している。 【0060】 実施例34 実施例3と同様に実施するが、用いる助触媒1溶液がヘプタンにトリイソブチルアルミニウムを溶解した34.5mlの溶液(26mmolのAl)である。反応をガス状の過剰のモノマーを速やかに除くことによって終了する。トリイソブチルアルミニウムを助触媒として使用する場合には、生じる反応生成物が不快な臭気を発するので、CO2を用いて重合を終了することができなかった。しかしながら必要な場合には、反応を場合によっては例えばアルコールを用いて終了することができる。1.27kgのポリプロピレンが得られ、これは254kg(PP)/g(メタロセン)×時のメタロセン活性に相当する。用いるメチルアルミノキサンの量を基準とすると、活性は63.5g(PP)/mmol(MAO)でありそして助触媒1および助触媒2のアルミニウムの全量を基準とすると、活性は27.6g(PP)/mmol(Al)である。ポリマーのVNは62cm3/gである。 【0061】 実施例35 実施例8と同様に実施するが、助触媒2は20mmolのトリイソブチルアルミニウム(18.3mlのトルエン溶液)である。重合は50mlのエタノールを用いて終了する。2.41kgのポリプロピレンが得られ、これは480kg(PP)/g(メタロセン)×時のメタロセン活性、46g(PP)/mmol(MAO)または33.5g(PP)/mmol(全アルミニウム)に相当する。ポリマーのVNは51cm3/gである。 【0062】 実施例36 実施例35と同様に実施するが、用いるメタロセンは10mgのrac-Me2Si(2-Me-1-インデニル)2ZrCl2である。重合温度は50℃でありそして重合をガス状の過剰のモノマーを速やかに除くことによって終了する。2.51kgのポリプロピレンが得られ、これは251kg(PP)/g(メタロセン)×時のメタロセン活性に相当する。ポリマーのVNは265cm3/gである。 【0063】 実施例37 実施例34と同様に実施するが、用いるメタロセンは5mgのrac-Me2Si(2-Me-1-インデニル)2ZrCl2である。重合温度は50℃でありそして重合をガス状の過剰のモノマーを速やかに除くことによって終了する。1.37kgのポリプロピレンが得られ、これは274kg(PP)/g(メタロセン)×時のメタロセン活性に相当する。ポリマーのVNは269cm3/gである。 【0064】 実施例38 実施例35と同様に実施するが、用いるメタロセンは8.2mgのrac-フェニル(メチル)シリル(2-Me-4,6-ジイソプロピル-1-インデニル)2ZrCl2であり、重合温度は50℃でありそして重合をガス状の過剰のモノマーを速やかに除くことによって終了する。3.12kgのポリプロピレンが得られ、これは380kg(PP)/g(メタロセン)×時のメタロセン活性に相当する。ポリマーのVNは573cm3/gであり、そして分子量は、ゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)で測定してMW=777,000g/molである。 【0065】 比較例7 実施例38と同様に実施するが、トリイソブチルアルミニウムを同じモル量のメチルアルミノキサンに交換する。ポリマーのVNは478cm3/gでありそしてMWは566,000g/molである。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2006-02-10 |
出願番号 | 特願平5-11097 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(C08F)
|
最終処分 | 取消 |
特許庁審判長 |
井出 隆一 |
特許庁審判官 |
石井 あき子 平塚 政宏 |
登録日 | 2003-08-08 |
登録番号 | 特許第3459272号(P3459272) |
権利者 | バーゼル・ポリオレフィン・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング |
発明の名称 | オレフィンの重合および/または共重合方法 |
代理人 | 鍛冶澤 實 |
代理人 | 奥村 義道 |
代理人 | 三原 恒男 |
代理人 | 奥村 義道 |
代理人 | 江崎 光史 |
代理人 | 江崎 光史 |
代理人 | 三原 恒男 |
代理人 | 鍛冶澤 實 |