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審決分類 |
審判 判定 利用 属さない(申立て不成立) G10K |
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管理番号 | 1149844 |
判定請求番号 | 判定2006-60051 |
総通号数 | 86 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 1996-02-20 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2006-09-11 |
確定日 | 2007-01-10 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3099284号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号図面及びイ号写真に示す「メガホン」は、特許第3099284号発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
第1.請求の趣旨 本件判定請求は、図面(甲第3,4号証、以下「イ号図面」という)及び写真(甲第5号証、以下「イ号写真」という)(以下これらをまとめて「イ号資料」ともいう)に開示されるメガホン(商品名:マスコットメガホン ハリー)(以下「イ号物件」ともいう)は、特許第3099284号発明(以下「本件発明」ともいう)の技術的範囲に属するとの判定を求めたものである。 第2.本件発明 1.本件発明の構成 本件発明は、明細書又は図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次のとおりのものと認められる。 「【請求項1】 複数個の拡声筒を並設したメガホンに於いて、複数個の拡声筒はその後部に共用される1個の吹き口部を有し、複数個の拡声筒は打撃により互いを打ち合うように設けられていることを特徴とする、メガホン。 【請求項2】 複数個の拡声筒を並設したメガホンに於いて、複数個の拡声筒はその後部に共用される1個の吹き口部を有し、少なくとも1の拡声筒がヒンジによって前記吹き口部に軸着されて打撃により互いを打ち合うように設けられていることを特徴とする、メガホン。 【請求項3】 ヒンジで軸着した拡声筒の、他の拡声筒と接触する側の後部に、内側へカーブする湾曲部が形成されている、請求項2のメガホン。 【請求項4】 少なくとも1の拡声筒の、少なくとも吹き口部に当たる部位が柔軟な素材で構成されている、請求項1のメガホン。 【請求項5】 拡声筒の吹き口部に当たる部位に、蛇腹構造の最小単位である谷部が形成されている、請求項4のメガホン。 【請求項6】 メガホンの中心部から拡声筒の外周面を通る線に直角な方向に位置する谷部の相対する2ヶ所に、この谷部を埋めるムクが設けられている、請求項5のメガホン。 【請求項7】 拡声筒の対向面の少なくとも何れか一側に、相手面を突くための突起が設けられている、請求項1または請求項2のメガホン。 【請求項8】 前記突起より前方の部位に、複数個の拡声筒の結束手段が設けられている、請求項7のメガホン。」 2.本件発明の課題・目的及び効果 明細書の記載によれば、本件発明の課題・目的は、「従来のメガホンでは、2個のメガホン9a,9bを開き、吹き口91a,91bを閉じて利用する場合では、吹き口91a,91bをしっかり握って持たないと吹き口91a,91bが開いてしまうことがあり、また元々別体の2個のメガホン9a,9bの吹き口91a,91bであるため、略円形状と成る吹き口91a,91bの中央部に仕切りが存在し、ここを吹く時に唇に当たるなどして感触が悪く、また、2個のメガホン9a,9bを閉じ、吹き口91a,91bを開いて利用する場合では、2個の吹き口91a,91bが大きく離れてしまうため、ここを吹くことが出来ず、せいぜい片方のみ利用することしか出来ない、という欠点があるので、本発明は、このような問題点を除去し、複数個の筒を有するも、それらの筒の開閉状態に影響されることなく、それらの筒の開閉状態に気を使うことなく、ごく普通に吹き口を吹くことが出来ると共に、拍子木のように打撃音を発生させること」(特許公報2頁3欄段落【0004】ないし【0006】)であり、効果は「複数個の拡声筒を有するも、共用の、唯1個の吹き口部を具えているので、それらの筒の開閉状態に影響されることなく、またそれらの筒の開閉状態に気を使うことなく、ごく普通に吹き口を吹くことが出来るように成った」(特許公報4頁8欄段落【0040】)点である。 第3.イ号物件 イ号物件(メガホン(商品名:マスコットメガホン ハリー))は、イ号資料に開示されたものであって、それによれば、イ号物件は、 「拡声部1a及びそれに繋がる吹き口部1bを有する第1拡声筒1と、拡声部2a及びそれに繋がる吹き口部2bを有する第2拡声筒2とを具備し、それらの吹き口部1b、2bを覆うように把持する把持部3aと把持端部3bを有する把持筒3を具備し、第1拡声筒及び第2拡声筒の後端1d、2dと把持筒3の後端3dは略同一平面上にあり、両拡声部1a、2a間には隙間Dを有し、2つの拡声筒の両後端は仕切りSを構成するメガホン」(イ号物件の構成の名称、番号は、甲第4号証による。以下同様)といえる。 第4.本件発明及びイ号物件についての当事者の主張 1.請求人の主張 (1)本件発明 本件発明の必須構成要件は以下の3つである。 A 複数個の拡声筒を併設したメガホンである。 B 複数個の拡声筒はその後部に共用される1個の吹き口部を有する。 C 複数個の拡声筒は打撃により互いに打ち合うように設けられている。 (2)本件発明とイ号物件の対比 a 必須構成要件Aについて イ号物件は、2個の拡声筒1と2を併設したメガホンである。 従って、イ号物件は、本件発明の必須構成要件A「複数個の拡声筒を併設したメガホンである。」を有するものである。 b 必須構成要件Bについて イ号物件は、把持筒3の把持端部3bの幅広の環状端面、即ち把持筒3の後端3dを2個の拡声筒1と2の共用の吹き口部とするメガホンである。 それ故、イ号物件は、本件発明の必須構成要件B「複数個の拡声筒はその後部に共用される1個の吹き口部を有する。」を備えるものである。 c 必須構成要件Cについて イ号物件のメガホンは、その2個の拡声筒1と2の対向する開閉面1fと2fを打撃によってお互いに衝突させ、その衝突の際に打撃音を発生させるものである。 従って、イ号物件は、本件発明の必須構成要件C「複数個の拡声筒は打撃により互いに打ち合うように設けられているメガホンである。」を有するものである。 d 発明の効果について イ号物件は、「複数個の拡声筒を有するも、共用の、唯一の吹き口部を備えているので、それらの筒の開閉状態に影響されることなく、ごく普通に吹き口を吹くことができるように成った。」という本件発明の効果を奏するものである。 e まとめ 以上のとおり、イ号図面及びイ号写真に示すメガホンは、本件発明の必須構成要件の全てを有するものであり、従って特許第3099284号発明の技術的範囲に属するものである。 2.被請求人の主張 判定請求書について、期限を決めて意見を述べる機会を与えたが、当該期限内に被請求人からの応答はなかった。 第5.当審の判断 イ号物件が本件発明の構成要件Bを充足する構成を具備するかについて検討する。 本件発明の構成要件Bは「複数個の拡声筒はその後部に共用される1個の吹き口部を有する。」というものであって、これにより、「2個のメガホン9a,9bを開き、吹き口91a,91bを閉じて利用する場合では、吹き口91a,91bをしっかり握って持たないと吹き口91a,91bが開いてしまうことがあり、また元々別体の2個のメガホン9a,9bの吹き口91a,91bであるため、略円形状と成る吹き口91a,91bの中央部に仕切りが存在し、ここを吹く時に唇に当たるなどして感触が悪く、また、2個のメガホン9a,9bを閉じ、吹き口91a,91bを開いて利用する場合では、2個の吹き口91a,91bが大きく離れてしまうため、ここを吹くことが出来ず、せいぜい片方のみ利用することしか出来ない、という問題点を除去」(特許公報2頁3欄段落【0004】ないし【0005】)するという本件明細書記載の課題を解決したものであり、「複数個の筒を有するも、それらの筒の開閉状態に影響されることなく、それらの筒の開閉状態に気を使うことなく、ごく普通に吹き口を吹くことが出来る」(特許公報2頁3欄段落【0006】)という効果を奏するものである。 一方、イ号資料によればイ号物件は、そもそも、拡声筒1及び2を把持筒によって単に束ねたものにすぎない。イ号物件は、(開状態、閉状態となるような)ヒンジあるいは蛇腹や突起を有するものでなく、ヒンジあるいは蛇腹や突起によって開閉自在にされたものを把持部によって固定したものでないから、拡声筒の閉状態による吹き口部の不具合の解消という課題の存在が認められるわけではない。イ号資料によれば、イ号物件の拡声筒1,2の後端は把持部後端と略同一平面上に配置されているから、使用者の口に接触する位置に配置されているものといえ、本件発明における課題でいう問題点を解決しているものといえず、本件明細書でいう「普通に吹く」(段落【0005】)ことが出来るという効果を奏し得ないものといえるから、イ号物件のものは、本件発明の課題を解決する構成を具備しているものではない。 また判定請求書において、請求人は、イ号物件の把持筒3の後端3dは、本件発明の吹き口部に相当すると主張している。しかしながら、イ号物件の把持筒3の後端3dは、本件発明の吹き口部に相当するものといえず、むしろ、本件明細書でいう口元10に相当すると解するのが自然である。すなわち、本件明細書の課題、目的、効果の記載によれば、吹き口(部)1は、複数の拡声筒の端部が口に触れないように拡声筒の端部と口元10との間に空間を形成する部位(以下「空間形成部」ともいう)を含む部位と解され、また、請求人も判定請求書において、イ号物件の拡声筒1及び2の吹き口部1b、2bとして、拡声部に繋がる細長い部位、すなわち上記でいう空間形成部を含む部位を認定しているところ、イ号物件の把持部の後端は確かに幅広に形成されているものの、円形上の略平面の領域しか有さず(共用の)空間を形成していない。すなわち、把持筒1,2の後端が使用者の口に直接接触する位置に配置されており、把持部の後端が共用の空間を形成しているわけではない。 加えて、本件発明の吹き口部は、本件明細書によれば、効率的に吹くためにロート状部位の後端あるいはその近傍を口に接触させることにより空気を逃がさない構成となっていると解されるところ、イ号物件の把持部の端部は、このような空気を逃がさないことを意図した構成とはいえず、本件発明の吹き口部の機能を有していない。 これらのことからして、イ号物件の把持部の後端は本件発明における共用される1個の吹き口部に相当する部位ということはできない。 したがって、イ号物件は、共用される1個の吹き口部を具備しないから、本件発明の構成要件Bを充足する構成をイ号物件が具備するとはいえない。 第6.むすび 以上のとおりであるから、イ号資料に開示された、イ号物件であるメガホンは、本件発明の構成要件Bを充足する構成を具備するものではなく、当該構成要件Bは請求項1ないし8に係る発明に共通の構成要件であるから、その余の構成要件について検討するまでもなく、本件発明の技術的範囲に属しない。 よって結論のとおり判定する。 |
判定日 | 2006-12-28 |
出願番号 | 特願平6-204481 |
審決分類 |
P
1
2・
2-
ZB
(G10K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 杉山 務、木方 庸輔 |
特許庁審判長 |
原 光明 |
特許庁審判官 |
乾 雅浩 新宮 佳典 |
登録日 | 2000-08-18 |
登録番号 | 特許第3099284号(P3099284) |
発明の名称 | メガホン |
代理人 | 松下 義治 |