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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) A23K
管理番号 1149845
判定請求番号 判定2006-60034  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2001-09-25 
種別 判定 
判定請求日 2006-07-10 
確定日 2007-01-10 
事件の表示 上記当事者間の特許第3165810号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号説明書に示す「ペレット製造方法」は、特許第3165810号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定請求人の趣旨は、判定請求書のイ号説明書に示す「ペレット製造方法」が、特許第3165810号の技術的範囲に属するとの判定を求めるものである。

第2 本件特許発明
特許第3165810号の特許公報を見ると、その特許請求の範囲には、請求項1ないし8の記載があるところ、判定請求人は、判定請求書において判定請求に係る発明を特定していないことから、当審では、平成18年8月2日付けの審尋指令により判定を求める発明の特定を求めたが、平成18年9月1日付け回答書によっても判定請求に係る発明は明らかとされなかった。
そこで、判定請求書の趣旨及び回答書の内容を考慮し、判定請求に係る発明を、特許第3165810号の請求項1に係る発明と認定する旨を請求人に通知し意見を求めたが、平成18年12月22日付け弁駁書には上記認定についての意見は示されなかった。
したがって、判定請求に係る発明を、特許第3165810号の請求項1に係る発明とする。

本件特許第3165810号の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、これを分説すると次のとおりである。
【請求項1】
A:高含水率75%?86%を有する無処理の結着力の低いおからを単独で
B:グラインダー成型し、成型による圧縮熱、摩擦熱及び反応熱で水分を蒸発させ、軟質な所要の大きさの円柱形ペレットとする工程と;
C:該円柱形ペレットを所要温度で所要時間流動熱風装置で高熱殺菌乾燥する工程と;
D:から成る無添加固型飼料の製法。

第3 イ号方法
請求人による「イ号説明書」では、「イ号物品ないしイ号の製法」が特定されていないことから、当審では、平成18年8月2日付けの審尋指令によりイ号物品ないしイ号の製法の構成を明確に記載した資料の提出を求めたが、平成18年9月1日付け回答書によっても「イ号物品ないしイ号の製法」は明らかとされなかった。
そこで、「イ号説明書」及び被請求人が提出した答弁書並びに添付された乙第1号証の内容を考慮し、被請求人が提出した答弁書に添付されたカタログ「ほ乳期子牛育成用人工乳 らくらく健太」(乙第2号証)、表示票「らくらく健太」(乙第3号証)に記載の固型飼料「らくらく健太」の製造方法を「イ号方法」と認定する旨を請求人に通知し意見を求めたが、請求人からの平成18年12月22日付け弁駁書には上記認定についての意見は示されなかった。
したがって、固型飼料「らくらく健太」の製造方法を「イ号方法」とする。

乙第2号証によれば、イ号方法は、「牛乳成分、甘味料、乳酸菌、酵母、ユッカ抽出物、たん白質分解酵素、繊維分解酵素」を配合するものである。
乙第3号証によれば、イ号方法は、原材料として「とうもろこし、大麦、きな粉、大豆油かす、ふすま、ビールかす、乾燥ホエー、脱脂粉乳、糖蜜、アルファルファ、ビール酵母、ブドウ糖、炭酸カルシウム、食塩、りん酸カルシウム、ケイ酸、ユッカ抽出物、乳酸菌、枯草菌発酵抽出物、二酸化ケイ素」を用いるものである。
また、イ号説明書によれば、イ号方法は、イ号説明書に添付された資料1「配合飼料講座 下巻 製造篇」(チクサン出版社発行)の172頁に記載されたペレットミルを使用し、同174頁に記載のペレットクーラーで冷却する製造方法を採用したものと認められる。
これらの記載から、イ号方法は、次のとおりのものであると認める。
【イ号方法】
a:とうもろこし、大麦、きな粉、大豆油かす、ふすま、ビールかす、乾燥ホエー、脱脂粉乳、糖蜜、アルファルファ、ビール酵母、ブドウ糖、炭酸カルシウム、食塩、りん酸カルシウム、ケイ酸、ユッカ抽出物、乳酸菌、枯草菌発酵抽出物、二酸化ケイ素を
b:ペレットミルで混合し、圧縮成型して所要の大きさの円柱形ペレットとする工程と、
c:該円柱形ペレットを冷風装置で冷却する工程と、
d:から成る固型飼料の製法。

第4 当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、判定請求書3頁12行?16行及び同頁28行?30行において、イ号方法は、ペレット形状が全く同じ6mm直径の円筒状であるから、本件特許発明の圧縮成型製法と同じであると考えられる、また、原料の相違については配合内容を変更したにすぎないから、イ号方法は、本件特許発明の技術的範囲に属する旨主張している。

2.被請求人の主張
被請求人は、判定答弁書において、イ号方法は、原料として「おから」を含まず、結着剤としての糖蜜を含むものであるから、本件特許発明の構成要件A、Dを備えていない、また、円柱形ペレットの成型は摩擦熱、反応熱を利用しないものであって、高い硬度を有するペレットが得られるものであり、流動冷風装置で冷間乾燥するものであるから、本件特許発明の構成要件B、Cを備えていない、さらに、イ号方法は従来公知の方法であって、本件特許発明と均等でもないから、イ号方法は、本件特許発明の技術的範囲に属しない旨主張している。

第5 対比・判断
1.イ号方法が本件特許発明の構成要件を充足するか否かの判断
本件特許発明は、高含水率75%?86%を有する無処理の結着力の低いおからを単独で用いる無添加固型飼料である(構成要件A、D)のに対し、イ号方法は、おからを含まず、とうもろこし、大麦、きな粉、大豆油かす、ふすま、ビールかす等に糖蜜、ブドウ糖、炭酸カルシウム等の添加成分を配合したものであり(構成要件a)、添加物を含む固型飼料である(構成要件d)点で相違している。
また、本件特許発明は、円柱形ペレットを流動熱風装置で高熱殺菌乾燥する工程を有する(構成要件C)のに対し、イ号方法は、流動熱風装置で高熱殺菌乾燥する工程を有しておらず、円柱形ペレットを冷風装置で冷却する工程を有している(構成要件c)点で相違している。
したがって、イ号方法は、少なくとも本件特許発明の構成要件A、C、Dを充足していないので、本件特許発明の技術的範囲に属するとすることはできない。

2.均等の判断
最高裁平成6年(オ)第1083号判決(平成10年2月24日判決言渡、民集52巻1号113頁)は、特許発明の特許請求の範囲に記載された構成中に、相手方が製造等をする製品又は用いる方法(以下「対象製品等」という)と異なる部分が存在する場合であっても、以下の対象製品等は、特許請求の範囲に記載された製品等と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当であるとしている。
積極的要件
(1)相違部分が、特許発明の本質的な部分でない。
(2)相違部分を対象製品等の対応部分と置き換えても、特許発明の目的を達することでき、同一の作用効果を奏する。
(3)対象製品等の製造時に、異なる部分を置換することを、当業者が容易に想到できる。
消極的要件
(4)対象製品等が、出願時における公知技術と同一又は当業者が容易に推考することができたものではない。
(5)対象製品等が特許発明の出願手続において、特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たる等の特段の事情がない。

そこで、イ号方法が、前記要件を満たすか否かについて検討する。
本件特許明細書には、「高含水率75%?86%を有する無処理の結着力の低いおからを単独で」用いること、「円柱形ペレットを所要温度で所要時間流動熱風装置で高熱殺菌乾燥する工程を有する」ことに関して、以下の記載がある。
「【0001】【発明の属する技術分野】 この発明は、無添加固型飼料及びその製法に関し、更に詳しくは、食品製造の際、副次的に産出され、従来は廃棄処分されていた豆腐製造に伴う未利用の“おから”や、“ビール・モルト滓”等の高含水率を有する加工殻物残査及び穀物粉滓を粘結剤を使用しないで処理し、栄養価で消化が良い成牛、育成牛、養豚用等の動物の飼料として効率的に製造する無添加固型資料及びその製法に関する。」
「【0008】 豆腐滓、“おから”は、高栄養価であるから、各種の利用技術が提案されてきているが、高含水率なので腐敗しやすく、保存性が悪く、取り扱いにくい物質であり、運搬性も低いのでその利用にあたっては、多くの問題があり、豆腐製造業界からも、これらの隘路打開が望まれている現状である。」
「【0014】 従来の成型に比べて
(本願の固型成型方法)
(1)(当審注:原文は丸数字。以下同様) 至難といわれている豆腐粕おから単独結着(無添加)で完成。
(2) しかも粗密度の嗜好性、消化率の良い軟質な固型飼料を得た。
(3) 粗密度な為、乾燥効率も従来の硬質固型飼料よりも短く、乾燥時間は全工程25分間と驚異的短時間で可能です。黴発生の最低条件14日間も皆無でクリアしました。
【0015】 公知の豆腐滓(“おから”)の処理法としては、それを現品のまま加熱乾燥して乾燥豆腐滓(“おから”)とする方法が実施されているが、高額設備投資の為、採算割れしている実情である。」
「【0021】 (説明)
・・・原材料に付着発生する各種生菌は耐熱生菌のバチルス、クロストジュウム(120℃4分間殺菌が必要)をはじめ諸菌がおりますが、本願の乾燥機使用により完全死滅の結果を得た。」
「【0040】本発明に係わる特許性、新規性、従来の考案より優れている点は、(特許性)至難とされてきたおから単独による成型を完成(新規性)、短時間劣化原材料を長時間無添加にて保存加工後成分分析は良好である(優れた点)熱風循環炉の採用により、短時間で含水率12%の製品を完成。」
さらに、請求人は、本件特許に係る出願の審査の過程において、平成12年9月18日付け意見書を提出し、その中で「本願の結着剤を使用せず結着成型可能とする製法は、おから含有の残存豆乳が摩擦熱、圧縮熱の加熱凝固化による粘着性を利用して結着成型致します。」と述べている。
また、請求人は、上記平成18年12月22日付け弁駁書において「当方の特許の特徴は1)当方開発の熱風回転式流動乾燥機使用による完全乾燥飼料・・・3)合成添加剤、決着剤不使用の無添加固形飼料生産」と述べている。
これらの記載及び主張によれば、本件特許発明は、無処理のおからを単独で用い、粘結剤を使用しないこと、円柱形ペレットを流動熱風装置で高熱殺菌乾燥することにより作用効果を達成するものと認められるから、「高含水率75%?86%を有する無処理の結着力の低いおからを単独で」用いること、及び「円柱形ペレットを所要温度で所要時間流動熱風装置で高熱殺菌乾燥する工程を有する」ことは、本件特許発明の本質的部分と言わざるを得ない。
そうすると、イ号方法は、均等の判断にあたって上記要件(1)を満たしていないから、他の要件について検討するまでもなく、均等なものとして本件特許発明の技術的範囲に属するということはできない。

第6 むすび
以上のとおり、イ号方法は、本件特許の請求項1に係る発明の技術的範囲に属しない。
 
別掲
 
判定日 2006-12-28 
出願番号 特願2000-123344(P2000-123344)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (A23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋月 美紀子  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 藤岡 善行
松本 泰典
登録日 2001-03-09 
登録番号 特許第3165810号(P3165810)
発明の名称 無添加固型飼料、及びその製法  
代理人 江藤 聡明  
代理人 籾山 正勝  

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