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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q
管理番号 1150750
審判番号 不服2003-6284  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-09-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-14 
確定日 2007-01-15 
事件の表示 平成11年特許願第504059号「ホームネットワークのためのプログラミングツール」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月30日国際公開、WO98/59478、平成12年 9月19日国内公表、特表2000-512472〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、1998年6月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1997年6月25日、1997年9月22日、米国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する時、ホームネットワークに対してプログラムガイドを発生する方法において、
第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する段階と、
第1家電機器と関連された識別されたマルチメディア物によってHTMLページを発生する段階と、
第1家電機器の接近可能な領域に前記HTMLページを貯蔵する段階とを含むことを特徴とする方法。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-44477号公報(以下、「引用例1」という。)、及び特開平9-146973号公報(以下、「引用例2」という。)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。

[引用例1]
A.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、文字・音声・静止画・動画等の各種情報を取り扱うマルチメディア機器のシステム制御に用いて好適なものである。
【0002】
【従来の技術】従来アナログ技術を中心としていたオーディオ・ビデオ・TV等のAV機器においては、近年急速にデジタル化が進んできている。また、文字・静止画情報のデジタル化の普及と合わせて、いわゆるマルチメディアとして文字・音声・静止画・動画情報がコンピュータの中で統括的に取り扱われるようになってきた。
【0003】
【発明が解決しようとしている課題】しかしながら、現在マルチメディア機器(デジタルカメラ、CD-ROMプレーヤ、スキャナ、サウンドボード、ビデオボード等の音声入出力機器、映像入出力機器等)をコンピュータで利用する場合、それを駆動する専用のアプリケーションソフトまたはデバイスドライバというソフトウェアをコンピュータにインストールしなければならなかった。
【0004】したがつてこの方法では、新しいマルチメディア機器に対しては新たなアプリケーションソフトまたはデバイスドライバをコンピュータごとにあるいはOS(Operating System)ごとに用意しなければないため、ソフトウェアの開発負荷が大きく、効率的かつ高速の制御が不可能であるという問題があった。
【0005】またこの方法では、一般的にはLANに接続された他のコンピュータから、そのマルチメディア機器を透過的に使用することが出来ないため、LANを介して各コンピユータから各周辺機器にアクセスできるようなマルチメデイアシステムのコンセプトを実現することができないものであつた。
【0006】本発明の課題は、上述の問題点を解決することにあり、これらのマルチメデイア機器において、上記アプリケーシヨンソフトやデバイスドライバ等の特別なソフトウエアを必要とせず、またLANを介して他のコントローラから透過的に共通的にマルチメデイア機器を利用できる環境を提供し、特にマルチメデイア機器間でデータの送受信を行う際に利用者に簡易なユーザーインターフエースをもつてマルチメデイア機器間のデータ送受信関係を構築できるようにし、実際のデータ送受信の際には、コントローラを介さずに、マルチメデイア機器間のみでデータ送受信を行うことを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上述の課題を解決するためになされたもので、その特徴とするところは、複数のマルチメディア機器及びこれらを制御するための制御機器がネットワーク上に接続され、該ネットワークを介して前記複数のマルチメディア機器及び制御装置が互いにオブジェクト指向に基づいたメッセージ及びデータの送受信が可能なシステムにおいて、前記制御装置には表示手段及びポインティング手段が付随し、前記表示手段により、前記複数のマルチメディア機器それぞれを象徴する図柄が表示され、利用者が該ポインティング手段により、これらの図柄の間にリンクを張ることによりマルチメディア機器間のデータの入出力関係を指定するように構成したマルチメディア機器の制御システムにある。」(第2頁右欄第26行?第3頁左欄第32行)
B.「【0054】図12は代理オブジェクト記述ファイルのコントロールパネル記述部の構成を示した図である。図12において247はコントロールパネルオブジェクト記述部であり、第1オブジェクト記述情報248から第iオブジェクト記述部249までのi個のオブジェクト記述情報より構成されている。1つのオブジェクト記述情報はオブジェクト認識情報250、オブジェクト描画情報254、オブジェクトリンク情報260から構成される。
【0055】オブジェクト認識情報250はオブジェクトが所属するクラスを示すクラス名251、第iオブジェクト固有のIDであるオブジェクトID252、第iオブジェクトが直属するオブジェクトのIDを示す所属オブジェクトID253から構成される。
【0056】オブジェクト描画情報254は、コントロールパネル表示画面231を構成するボタン等のオブジェクトの描画を行うための情報であり、第1オブジェクト描画情報255から第jオブジェクト描画情報259までのj個のオブジェクト描画情報から構成される。1つのオブジェクト描画情報は描画位置・大きさ情報256、形状・色情報257、オブジェクト画像258から構成される。
【0057】オブジェクトリンク情報261はコントローラオブジェクト207等コントロールパネルオブジェクトを構成するオブジェクトが対応するオブジェクトとのリンク情報を提供する記述であり、第1オブジェクトリンク情報261から、第kオブジェクトリンク情報264までのk個のオブジェクトリンク情報から構成される。1つのオブジェクトリンク情報は対応オブジェクトID262と対応オブジェクトへの送出メッセージ263から構成される。」(第7頁左欄第25行?右欄第5行)
C.「【0064】まず、デジタルVTR203がLAN4に接続されたときの動作について説明する。図16はデジタルVTR203をLAN4に接続した際の動作のフローを示した図である。図17はマルチメディアコントローラ1の画面を示した図である。図17において228はマルチメディアコントローラ1のディスプレー、229はデジタルVTR203が接続されたことを示すアイコン表示であり、230はマウスなどのポインティングデバイスが指示する位置を示すカーソルである。ポインティングデバイスは図示しないが、ポインティングデバイスはボタンを備えており、該ボタンを利用者が押して放す動作を一般的にクリックすると称し、所定間隔で2回クリックする動作をダブルクリックすると称する。尚、他の接続機器としては、カメラ(静止画入力)、チユーナ、テレビジヨン、各種データベース、CD等、種々の機器との接続が可能であり、それらの機器の選択、制御も画面228上のアイコン表示にて行うことができる。
【0065】図18はLAN4にマルチメディア機器の例であるオブジェクト化されたデジタルVTR203が接続されたときの状態を説明する図である。図18において220はマルチメディアコントローラ1内に生成されるオブジェクトでありマルチメディアコントローラ1内においてデジタルVTR203の代理として機能するデジタルVTR代理オブジェクト220である。デジタルVTR代理オブジェクト220はデジタルVTR203のコントロールパネルとして機能するデジタルVTRコントロールパネルオブジェクト221、データ入力の際にデータ入力オブジェクト208の代理として機能するデジタルVTRデータ入力代理オブジェクト222、同様にデータ出力オブジェクト209の代理として機能するデジタルVTRデータ出力代理オブジェクト223から構成される。
【0066】図16、図17、図18に従ってLAN4にマルチメディア機器の例であるオブジェクト化されたデジタルVTR203が接続されたときの動作を説明する。デジタルVTR203をLANに接続すると(636)システムディレクターオブジェクト205がデジタルVTR203の接続を認識する(637)。次にシステムディレクターオブジェクト205はデジタルVTR203にデバイスIDを発送する(638)。
【0067】次にシステムディレクターオブジェクト205はマルチメディア機器代理オブジェクト生成手段1047を用いてデジタルVTR203よりデジタルVTR代理オブジェクト記述ファイル210をロードする(639)。次にシステムディレクターオブジェクト205はマルチメディア機器代理オブジェクト生成手段1047を用いてデジタルVTR代理オブジェクト記述ファイル210に基づきデジタルVTR代理オブジェクト220をマルチメディアコントローラ1中に生成する(640)。その結果図18で示した接続状態になる。次にデジタルVTR代理オブジェクト220はマルチメディアコントローラ1のディスプレー228にデジタルVTR203のアイコン表示229を表示する(641)。その後利用者の指示を待つ(642)。
【0068】以後、操作者は、マルチメデイアコントローラのデジタルVTRコントロールパネルオブジエクト221に基づいて表示された操作画面に基づいてデジタルVTRを操作することにより、マルチメデイアコントローラ1内のデジタルVTR代理オブジエクト220を介してデジタルVTRを制御することができる。
【0069】次にデジタルVTR代理オブジェクト記述ファイル210の記述と生成されるオブジェクトの関連についてさらに詳細に説明する。
【0070】図19はデジタルVTR203のアイコン、図20はコントロールパネル表示画面の例を示した図である。図19はデジタルVTR203がLAN4に接続する際に表示されるアイコン229を示している。図20はデジタルVTRコントロールパネルオブジェクト221が描画するデフォルトの表示画面であり、同図において232はデイスプレー上に表示されるコントロールパネルの表示選択メニュー、265はテープの経過時間を表示するタイムカウンター表示、266はデジタルVTR203の制御モードを選択するコントロールモード選択部267はデフォルトの制御モードに設定するための第1のスイッチボタン表示、268はより詳細な制御モードを選択するための第2のスイッチボタン表示、269は巻き戻しボタン表示、270は逆転再生ボタン表示、271は一時停止ボタン表示、272は再生ボタン表示、273は早送りボタン表示、274は停止ボタン表示、275は録画ボタン表示である。」(第8頁左欄第18行?右欄第48行)
D.「【0084】図23は利用者がデジタルVTR203のアイコン表示229にカーソル230を合わせてダブルクリックした際の動作を示すのフローチヤートおよびコントロールパネルを操作した際の動作のフローチヤートを示した図である。
【0085】図24は利用者がデジタルVTR203のアイコン表示229をダブルクリックした際のマルチメディアコントローラ1の表示画面を示す図である。図24において231はデジタルVTR203のデフォルトのコントロールパネル表示画面、272は再生ボタンである。」(第10頁左欄第46行?右欄第6行)

上記A?Dの記載、及び関連する図面を参照すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の発明」という。)
「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面上でデジタルVTRを表すアイコン表示をダブルクリックした場合に、デジタルVTRのコントロールパネル表示画面を発生する方法において、
デジタルVTRを表すアイコン表示をダブルクリックしたことを検出する段階と、
上記デジタルVTRを表すアイコン表示のダブルクリックによってデジタルVTRのコントロールパネル表示画面を発生する段階を含む方法。」

[引用例2]
E.「【従来の技術】図26は、例えば、Marc Andreessen,「NCSA Mosaic Technical Summary Revision 2.1 May 8, 1993」及び「Getting Started with NCSA Mosaic May 8, 1993」に示された従来例の第1の分散ハイパーテキストシステムをブロック図にして示したものである。図26において、1はクライアントワークステーションで、ハイパーテキストの操作や表示を行う分散ハイパーテキスト・ビューワ2(NCSA Mosaic Client)と通信手段3を備える。4は、サーバワークステーション(httpd サーバ)で、通信手段3とハイパーテキスト・データ5を有する。6は、クライアントワークステーション1とサーバワークステーション4が通信手段3を介して通信するためのネットワークである。7は、ハイパーテキスト・データ5のノード(URL: Uniform Resource Locator で表現される)を、8は、ハイパーテキスト・データ5のリンク関係を示す。また、9は、分散ハイパーテキスト・ビューワ2が過去にアクセスしたハイパーテキスト・データ5のノード名10(URL)を時間的順序で記録する履歴テーブルを示す。また、ハイパーテキスト・データ5のノード7は、HTML: Hyper Text Markup Languageによって内容が記述され、飛び先のリンク情報であるノード名10が埋め込まれている。」(第2頁右欄第40行?第3頁左欄第11行)

上記Eの記載を参照すると、引用例2には、従来の技術として、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例2記載の発明」という。)
「HTMLページを発生、貯蔵し、それを利用するシステム。」

3.対比
本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、まず、引用例1記載の発明における「デジタルVTR」は、本願発明における「第1家電機器」に相当する。
次に、引用例1記載の発明における「LAN」は、デジタルVTRやデジタルカメラ等の種々のマルチメディア機器を接続するネットワークであり、上記デジタルVTRやデジタルカメラ等は家電機器であるので、本願発明における「ホームネットワーク」に相当するということができる。
また、引用例1記載の発明における「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面」や「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面」は、画面上のアイコン表示が、利用者に対する操作上のガイダンス表示となっているので、本願発明における「プログラムガイド」に相当するということができる。
そして、引用例1記載の発明において「LANに接続された種々のマルチメディア機器を表示する画面上でデジタルVTRを表すアイコン表示をダブルクリック」することは、画面に表示された種々のマルチメディア機器のうち、デジタルVTRを選択したことを識別させる、すなわち、デジタルVTRと関連する選択情報(これはマルチメディア機器に関連するデジタル的なデータ、すなわち「マルチメディア物」である。)を識別させることになるから、本願発明において「プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する」ことに相当する。
さらに、上記したように、「コントロールパネル表示画面」も本願発明における「プログラムガイド」に相当するということができることから、引用例1記載の発明において「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面を発生する」ことは、本願発明において「ホームネットワークに対してプログラムガイドを発生する」ことに相当する。
そして、本願発明における「HTMLページ」は、「プログラムガイド」の一形態であるということができ、本願発明において、「プログラムガイド」の一種を発生させていることには変わりない。

よって、本願発明と引用例1記載の発明とは、ともに、
「プログラムガイドがホームネットワークに連結された第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する時、ホームネットワークに対してプログラムガイドを発生する方法において、
第1家電機器と関連されたマルチメディア物を識別する段階と、
第1家電機器と関連された識別されたマルチメディア物によってプログラムガイドを発生する段階を含む方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点:本願発明においては、発生させる「プログラムガイド」が「HTMLページ」であり、「第1家電機器の接近可能な領域にHTMLページを貯蔵する」ものであるのに対し、引用例1には、そのようなことについて記載されていない点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
上記引用例2に見られるように、種々のシステムにおいて、HTMLページを発生、貯蔵し、それを利用することは、従来から行われていることである。
してみれば、引用例1記載の発明において、発生される「デジタルVTRのコントロールパネル表示画面」を「HTMLページ」とすることは、当業者が適宜に設計できる事項であるものと認められ、さらにそれをデジタルVTRの接近可能な領域に貯蔵するようにすることも、当業者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1,2に記載の発明から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1,2に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-09-05 
結審通知日 2005-09-06 
審決日 2005-10-04 
出願番号 特願平11-504059
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩原 義則  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 長島 孝志
望月 章俊
発明の名称 ホームネットワークのためのプログラミングツール  
代理人 伊東 忠彦  

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