• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09B
管理番号 1151019
審判番号 不服2004-625  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-06-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-08 
確定日 2007-01-19 
事件の表示 平成 9年特許願第263101号「地図表示装置及び該装置用記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月 9日出願公開、特開平10-153950〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成9年9月29日の出願であって、平成15年12月3日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として平成16年1月8日付けで本件審判請求がされるとともに、同年2月9日付けで明細書についての手続補正がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成16年2月9日付け手続補正を却下するとともに、拒絶理由を通知したところ、請求人は平成18年9月25日付けで意見書及び手続補正書を提出した。
したがって、本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年9月25日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項2】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「電話番号に対応する位置座標及び位置座標を有する地図データを記憶する記憶手段と、
表示手段と、
入力手段と、
地図を前記表示手段に表示している際、前記入力手段の入力を判断し0が入力されたことを条件に、地図画面から電話番号入力画面に直接切り換えて該電話番号入力画面を前記表示手段に表示すると共に0を第1番目の桁として前記電話番号入力画面に表示する電話番号入力画面表示処理手段と、
前記0と引き続き前記入力手段により入力される番号に対応する前記位置座標を前記記憶手段から検索する検索手段と、
該位置座標を含む地図を前記表示手段に表示する地図表示処理手段と
を備えたことを特徴とする地図表示装置。」

第2 当審の判断
1.引用刊行物記載の発明の認定
当審における拒絶の理由に引用した特開昭64-10383号公報(以下「引用例1」という。)には、「住所、氏名、電話番号および住所コードでなる複数の住所データを記憶させた第1のメモリーと、住所コードに対応した複数の地図のイメージデータを記憶させた第2のメモリーと、これらのメモリーからデータを読み取るとともに全体の制御を司る本体部と、この本体部に対し指示入力を与える入力部と、上記本体部からの指令によりデータを表示および印刷する表示部および印字部とを備え、上記本体部は、上記入力部からの電話番号または住所コードのデータ入力に基き、住所コードをインデックスとして該当する地区の地図を検索し、上記表示部に表示する検索処理手段を有したことを特徴とする電話番号-地図データ処理システム。」(1頁左下欄5?18行)との発明(以下「引用発明1」という。)が記載されており、その説明として、以下のア?ウの記載が図示とともにある。
ア.「第1図は本発明の一実施例による電話番号-地図データ処理システムのハード構成を示す。同図において、1は本システムの全体の制御を司るホストコンピュータ(本体部)で、後述する所定の動作手順(プログラム)が格納されたメモリーのハードディスクドライブ2を内蔵している。3は本体部に対して操作者が指示入力を与えるためのキーボード(入力部)、4は本体部からの指令により駆動されデータを表示する高精細CRTデイスプレィ(表示部)、5,6は本体部に連結されたビュアーコントローラおよび印刷を行うレーザビームプリンタ(印字部)、7,8は同様に本体部に連結されたCD-ROMドライブ、9は住所、氏名、電話番号および符号化した所定の住所コードでなる複数の住所データを記憶させたCD-ROM(第1のメモリー)、10は住所コードに対応した複数の地区別地図のイメージデータを記憶させたCD-ROM(第2のメモリー)である。」(2頁左下欄2?19行)
イ.「第2図において、画面11は本システムの電源をONした後の初期画面で、この画面11の状態でキーボード3の「復改キー」(または実行キー)を押すと画面12に示すように、問い合わせ電話番号あるいは住所コード番号の入力待ち状態の画面となる。・・・電話番号から検索を行なう場合を説明する。例えば、電話番号が012-345-6789の場合、キーボード3のテンキーにて0,1,2,-,・・・,8,9を順次入力していき、最後に「復改キー」を押す。すると、本体部は問合わせの電話番号に対応する住所コードをインデックスとして住所CD-ROM9,地図CD-ROMl0のデータを検索して画面13に示すように、該当する住所、持主名および該当地図が出力表示される。」(3頁左上欄1?17行)
ウ.「電話があって住所CD-ROM9をアクセスした結果、電話番号、住所、持主名をデイスプレィ4に表示する(ステップS7)とともに、該当する住所コードがあるかどうか調べ(ステップS8)、住所コードがあれば、これをインデックスとして地図CD-ROM10にアクセスし(ステップS9)、第2図の画面13に示すように、該当の区分地図を表示し(ステップS10)、住所コードがなければエラー表示を行う(ステップS11)。」(3頁左下欄11?19行)

2.本願発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
以下、本審決では「発明を特定するための事項」という意味で「構成」との用語を用いることがある。
引用発明1では電話番号入力により、住所コードをインデックスとして該当する地区の地図を検索するのだから、「電話番号に対応する位置座標及び位置座標を有する地図データを記憶」していなければならない。すなわち、引用発明1の「第1のメモリー」及び「第2のメモリー」を併せたものが本願発明の「記憶手段」に相当する。
引用発明1の「表示部」及び「入力部」(実施例では、記載アの「キーボード」)は、本願発明の「表示手段」及び「入力手段」にそれぞれ相当し、引用発明1では地図を表示するのだから、引用発明1を「地図表示装置」と称しても差し支えない。
引用発明1では電話番号入力が可能であり、「電話番号入力画面を前記表示手段に表示する」との限度において「電話番号入力画面表示処理手段」を備える点では、本願発明と引用発明1に相違はない。
本願発明の「検索手段」は、「前記0と引き続き前記入力手段により入力される番号に対応する前記位置座標を前記記憶手段から検索する」としているものの、検索機能だけを考えれば市外局番を含む電話番号に対応する位置座標を記憶手段から検索しているのであり、その限度における「検索手段」は引用発明1にも備わっている。そして、引用発明1が本願発明の「該位置座標を含む地図を前記表示手段に表示する地図表示処理手段」を備えることは明らかである。要するに、引用発明1の「検索処理手段」が、細部はともかくとして本願発明の「検索手段」及び「地図表示処理手段」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明1とは、
「電話番号に対応する位置座標及び位置座標を有する地図データを記憶する記憶手段と、
表示手段と、
入力手段と、
電話番号入力画面を前記表示手段に表示する電話番号入力画面表示処理手段と、
入力された電話番号に対応する前記位置座標を前記記憶手段から検索する検索手段と、
該位置座標を含む地図を前記表示手段に表示する地図表示処理手段と
を備えた地図表示装置。」である点で一致し、次の各点で相違する。
〈相違点1〉本願発明が「地図を前記表示手段に表示している際」に「入力手段の入力を判断し0が入力されたことを条件に、地図画面から電話番号入力画面に直接切り換えて該電話番号入力画面を前記表示手段に表示する」と限定しているのに対し、引用発明1には同限定がない点。
〈相違点2〉電話番号入力及び位置座標検索に当たり、本願発明では、電話番号入力画面に直接切り換えるために入力された0を「第1番目の桁として前記電話番号入力画面に表示」し、「前記0と引き続き前記入力手段により入力される番号」に対応する位置座標を検索するのに対し、引用発明1はかかる構成を採用していない点。

3.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
引用例1の記載イにあるとおり、引用発明1の実施例では、電源をONした後の初期画面で、キーボードの「復改キー」を押すことにより、電話番号入力画面を表示しており、第2図12の画面によると、電話番号入力画面と住所コード入力画面は共通画面となっている。住所コードとしては郵便番号が想定できるけれども、地図を表示したいユーザにとっては、住所そのものは知っているが郵便番号を知らないという場合も十分想定できる。実際、住所に基づき地図を検索する技術としては、郵便番号に基づく検索のほか、住所名に基づく検索も周知である。そして、住所名に基づく検索であれば入力すべきものが数字ではなくなるため、電話番号入力画面と共通にすることは必ずしも有効ではなく、電話番号入力画面と住所入力画面を独立した別画面とすることも周知である(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-250585号公報の【図9】を参照。)。そうである以上、引用発明1において、電話番号入力画面と住所入力画面を独立した別画面とすることは設計事項というべきである。
また、引用発明1において、表示したい地図が1つであるとは限らず、何らかの地図を表示している状態で、それとは別の地図を電話番号入力により表示するという状況は当然想定すべきである。その場合、記載イのとおり操作しなければならないとすると、いったん電源をOFFにしてから再度電源をONにすることになるが、それではあまりにも無駄が多いことは自明であるから、地図表示状態において、入力部(キーボード)に対して何らかの操作が加えられれば電話番号入力画面に移行すると解するべきである。それ以外の解釈が可能であるとしても、入力部(キーボード)に対して何らかの操作により地図画面から電話番号入力画面に切り換える(「電話番号入力画面表示処理手段」が何らかの操作が加えられたことを判断する。)ことは設計事項といわなければならない。もっとも、何らかの操作により地図画面から電話番号入力画面に切り換えるとしても、その操作が1回とは限らない。例えば、TVを例にとると、画質設定等頻繁には設定・表示しない画面は、メニュー画面を開いてから設定・表示するようにしている(2操作である。)が、音量のように頻繁に設定・表示する場合には、メニュー画面を経ずに直接音量設定設定ができるようになっている。要するに、切り換えのための操作を1回とする(その場合、直接切り換えることになる。)か複数回とするかは、切り換え後の画面の使用頻度を勘案した上で決定すべき設計事項にすぎず、1回とすることは設計事項である。
そうすると、相違点1において検討すべきは、上記「入力部(キーボード)に対して何らかの操作」を「0」入力とすることの容易性につきる。
当審における拒絶の理由に引用した実願平4-51693号(実開平6-7356号)のCD-ROM(以下「引用例2」という。)には、「気象情報表示装置は、各地に配置されるデータレシーバ(11a?11n)からの気象情報を有線で収集する際、テンキーを有するキー入力装置13と、このキー入力装置10により最初に押されたキーが「0」であるときに市外局番番号であると判定し、「0」以外の数字であるときに地域指定の番号であると判定する手段(10、S2、S3,S4)と、この判定手段の内容によって定められた処理を行う手段(10、S3、S4)とを備えている。」(【要約】の【構成】欄)、「本考案では、電話番号の市外局番がすべて「0」から始まっていることに着目し、最初に「0」がダイヤルされたか否かによって通常のダイヤル操作か地域キーの操作かを判別できるようにしたものである。」(段落【0004】)及び「テンキーが押下されると、ステップS2に移ってテンキーによって最初に入力される数字が、「0」であるか否かの判断がなされる。そして最初に入力された数字が「0」であるときには、中央処理装置10の制御下にステップS3に移って市外局番入力モードと判定し、通常の市外局番の処理を行う。」(段落【0007】)との各記載があり、市外局番処理を行うべきか、別の処理を行うべきかを、「0」が入力されたかどうかにより判断することは記載されている。もちろん、引用例2記載の技術は地図表示に関するものではないし、市外局番処理であって、市外局番を含む電話番号の処理ではない。
しかし、引用発明1において地図を検索表示するに当たり、市外局番なしに市内局番及び加入者番号のみで検索表示できるとは考えられず、実際実施例では市外局番から入力している(記載イ参照。)。そして、電話番号入力の場合には、最初に市外局番が入力されるから、最初に入力されるのは必ず「0」である(引用例2の記載どおりである。)。また、市外局番(又はこれを含む電話番号)に基づく処理と、それ以外の入力に基づく処理を区別する点では、地図表示(引用発明1)であるか、気象情報表示装置(引用例2の技術)であるかが無関係なことは当業者に明らかである。
そして、引用発明1において、電話番号入力画面と住所入力画面を独立した別画面とすることが設計事項であることは前示のとおりであるから、地図画面から電話番号入力画面に切り換える際の操作を、引用例2記載の技術に従い、数字「0」の入力とする(結果として直接切り換えることになる。)ことは当業者にとって想到容易である。
なお請求人は、「引用例3(審決注;審決の引用例2)には、テンキーによって最初に入力される数字が「0」であるときには市外局番入力モードと判定して通常の市外局番の処理を行う点が記載されています。しかしながら、・・・何も表示されていない場面から「0」が入力された時の内容であるのか、ある地域の天気情報を表示している場面から「0」が入力された時の内容であるのか、が不明です。また、後者である場合に、「0」が入力された時に表示中の天気情報から市外局番を入力するための画面に直接切り換わるのか、も定かではありません。」(平成18年9月25日付け意見書3頁2?8行)と主張するので検討を加える。引用例2に、「0」が入力された時に表示中の天気情報から市外局番を入力するための画面に直接切り換わる旨の記載がないことは事実であるが、天気情報表示中に市外局番処理以外の目的で「0」を入力する可能性があるのなら、「0」入力により市外局番入力モードに直接移行することはできないけれども、そうでなければ、最初に入力される数字が「0」であるときには市外局番入力モードと定めてある以上、キー操作を簡略化する上で、「0」入力により市外局番入力モードに直接移行するのが自然であり、少なくとも設計事項というべきである。したがって、請求人の上記主張により、本願発明の進歩性を認めることはできない。
以上のとおりであるから、相違点1に係る本願発明の構成は当業者が容易に想到できたというべきである。

(2)相違点2について
当審における拒絶理由に引用した特開平1-94747号公報(以下「引用例3」という。)には、「電話番号の先頭の数字(市外局番の先頭の数字)は必ず0から始まるにもかかわらず、入力時に毎回0を入力しなければならない。」(1頁右下欄12?15行)及び「電話番号の先頭の“0”の入力・・・の入力をなくし、入力を簡略化したものである。」(2頁左上欄3?5行)との記載がある。引用発明1に引用例2記載の技術を採用した場合、「0」入力がされた場合、必ず電話番号入力画面になり、入力者は市外局番から始まる電話番号を入力することとなる。
ところで、引用例2記載の技術において、市外局番処理を行うべきか、別の処理を行うべきかを、「0」が入力されたかどうかにより判断することとした理由は、「電話番号の市外局番がすべて「0」から始まっている」(段落【0004】)ことにあり、この状況は、引用例3において「電話番号の先頭の数字(市外局番の先頭の数字)は必ず0から始まる」と記載されていることと全く同じである。そうであれば、引用例2に明記はないものの、引用例2記載の技術においても、「0」入力により市外局番処理と判断した後、再度入力者が「0」入力を行うとは考えづらく、0から始まる市外局番を順次入力する際の最初の入力を、上記判断基準としたと解するのが自然であり、入力者は再度「0」を入力しないと解すべきである。仮に、そのような解釈ができないとしても、市外局番処理においては最初の入力が必ず「0」であるから、引用例3記載の技術に従い、再度の「0」入力を省略することは設計事項というべきである。
そして、電話番号入力に当たり、入力された番号を入力順に表示することは極めてありふれた技術であり(引用例1の第2図画面12においても、入力順に表示されると理解すべきである。)、再度の「0」入力を省略するからには、最初に入力された「0」を「第1番目の桁として前記電話番号入力画面に表示」することは当然であるし、電話番号に基づいて位置座標を検索する以上、「前記0と引き続き前記入力手段により入力される番号」に対応する位置座標を検索することも当然である。なお、本願発明における「引き続き前記入力手段により入力される番号」が、ハイフンを省いて番号(数字)だけが入力される趣旨であるとしても、発呼等電話番号入力の際には、番号のみ入力するが通常であるから、設計事項にとどまる。
以上のとおりであるから、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、相違点1に係る本願発明の構成の採用を前提とした上での設計事項であり、当業者にとって想到容易といわざるを得ない。

(3)本願発明の進歩性の判断
相違点1,2に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は、引用発明1,引用例2及び引用例3記載の技術並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-06 
結審通知日 2006-10-31 
審決日 2006-11-13 
出願番号 特願平9-263101
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 長島 和子
藤井 靖子
発明の名称 地図表示装置及び該装置用記録媒体  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ