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審決分類 |
審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 A61H 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61H |
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管理番号 | 1151046 |
審判番号 | 不服2004-3744 |
総通号数 | 87 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-08-17 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-02-26 |
確定日 | 2007-01-25 |
事件の表示 | 平成10年特許願第25544号「美容方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年8月17日出願公開、特開平11-221260号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 1.特許出願:平成10年2月6日 2.拒絶理由の通知:平成14年11月18日(発送:同年11月26日)3.意見書及び手続補正書の提出:平成15年1月23日 4.拒絶査定:平成16年1月19日(発送:同年1月27日) 5.拒絶査定に対する審判の請求:平成16年2月26日 (方式補正:平成16年3月26日) 6.手続補正書の提出:平成16年3月26日 第2 拒絶査定の理由の概要 拒絶査定の理由は、上記第1、2.の拒絶理由通知書及び同4.の拒絶査定書からみて、概略、次のとおりである。 「本願の請求項1に係る発明は、人体を構成する皮膚のマッサージ方法に関わるもので、それにより、例えば血行促進等の効果が生じることは明白であり、健康状態を維持するために処置する方法に該当することは明らかである。 そして、健康状態を維持するために処置する方法は、人間を治療する方法に含まれることになるから、本願の請求項1に係る発明は、産業上利用することができる発明に該当しない。」 第3 平成16年3月26日付けの手続補正についての補正却下の決定 【補正却下の決定の結論】 平成16年3月26日付けの手続補正を却下する。 【理由】 1.補正の内容、補正の目的の適否 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「肌色改善、皮膚のくすみの改善、化粧崩れの防止又は化粧のりの向上のために、真皮繊維の方向に沿ってマッサージすることを特徴とする美容方法。」 と補正された。 上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「血行促進、肌色改善、皮膚のくすみ若しくはむくみの改善、にきびの予防若しくは低減、化粧崩れの防止、化粧のりの向上、皮膚のはり改善、皮膚のたるみ改善、又は身体のスリミング化のために」を「肌色改善、皮膚のくすみの改善、化粧崩れの防止又は化粧のりの向上のために」とするものであって、補正前の請求項1に記載された択一的な事項のうち、「血行促進」、「むくみの改善」、「にきびの予防若しくは低減」、「皮膚のはり改善」、「皮膚のたるみ改善」、「身体のスリミング化」を削除するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に記載された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 2.本願補正発明の独立特許要件について 審判請求人は、上記した拒絶査定の理由に対して、審判請求書の請求の理由で「医師と関わりなく、美容師等によって美容効果を得るためにマッサージがなされる場合もあります。本願請求項1に係るマッサージは、まさにこの美容効果を得るためになされるものです。また、美容効果を得るためになされるマッサージと、健康状態を維持するための処置としてなされるマッサージが異なることは、肌色改善、化粧崩れ防止、化粧のりの向上等が健康状態を維持するための処置の目的とはなり得ないことからもわかります。」及び「美容効果を得るためになされるマッサージは、健康状態を維持するための処置としてなされるマッサージとは明確に区別され、したがって人間を治療する方法ではありません。」と主張する。 そこで、上記主張について検討する。 本願補正発明に係る、真皮線維の方向に沿ったマッサージに関して、特に本願明細書の段落【0004】?【0006】、【0062】及び【0098】には、次のように記載されている。 (1)「【0004】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、マッサージの皮膚に適度な張力を与えることや血行促進に伴う種々の波及効果は大きいことから、一般人でも自ら手軽にマッサージできるようにすることが望ましい。 【0005】 本発明は以上のような従来技術の課題を解決しようとするものであり、一般人でも手軽に行うことができ、かつ大きなマッサージ効果を得、それにより大きな美容効果を達成する新たな美容方法を提供することを目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】 本発明は、上記の目的を達成するため、真皮線維の方向に沿ってマッサージすることを特徴とする美容方法を提供する。」 (2)「【0062】 また、本発明の美容方法が達成する美容効果には、より具体的には、血行促進効果や、それに伴う種々の効果、例えば色ムラをとり、艶や透明感を高めるといった肌色改善効果、くすみをとる効果、むくみをとる効果、にきびの予防と低減を図る効果、化粧崩れを防止する効果、化粧のりを向上させる効果、皮膚のはりを改善する効果、皮膚のたるみを改善する効果、身体のスリミング効果、皮膚の代謝改善効果等がある。したがって、本発明の美容方法は、その具体的目的に応じて、血行促進方法、肌色改善方法、くすみ改善方法、にきび予防・解消方法、化粧崩れ予防方法、化粧のり改善方法、皮膚のはり改善方法、皮膚のたるみ改善方法、スリミング方法、皮膚代謝改善方法としてとらえることができ、さらにこれら種々の効果をもたらす美容のためのマッサージ方法としてとらえることができる。」 (3)「【0098】 【発明の効果】 本発明によれば、一般人でもマッサージを手軽に行うことができ、かつマッサージによる大きな美容効果を得ることができる。より具体的には、血行促進、肌色改善、くすみ改善、むくみ低減、にきび予防・解消、化粧崩れ予防、化粧のり改善、皮膚のはり改善、皮膚のたるみ改善、スリミング、皮膚代謝改善という種々の効果を得ることができる。したがって、本発明は日常的に行えるスキンケアの一つとして、有用な方法となる。」 たしかに本件補正により、補正前の請求項1に記載された「血行促進」、「むくみの改善」、「にきびの予防若しくは低減」、「皮膚のはり改善」、「皮膚のたるみ改善」、「身体のスリミング化」といった択一的な事項が削除され、「肌色改善、皮膚のくすみの改善、化粧崩れの防止又は化粧のりの向上のために」という事項に限定されたものの、上記(1)?(3)の記載によれば、本願補正発明に係る真皮繊維の方向に沿ったマッサージが、皮膚の血行促進効果を奏するものであることは明白である。 そして、特に上記記載(2)における「・・・血行促進効果や、それに伴う種々の効果、例えば色ムラをとり、艶や透明感を高めるといった肌色改善効果、くすみをとる効果、むくみをとる効果、にきびの予防と低減を図る効果、化粧崩れを防止する効果、化粧のりを向上させる効果、皮膚のはりを改善する効果、皮膚のたるみを改善する効果、身体のスリミング効果、皮膚の代謝改善効果等がある。」という記載によれば、本件補正により限定された「肌色改善」、「皮膚のくすみの改善」、「化粧崩れの防止又は化粧のりの向上」といった事項も、結局のところ、こうした皮膚の血行促進効果に起因するものといえるから、本願補正発明に係る美容方法は、健康状態を維持し、病気を予防するための処置方法を含むものというほかない。 したがって、本願補正発明をその全体構成からみれば、本願補正発明に係る真皮繊維の方向に沿ったマッサージは、頭髪にパーマをかける方法といった、純粋に美容効果のみを得ることを目的とした美容方法とは異なり、皮膚の血行促進という、健康状態を維持するために処置する方法あるいは病気を予防するための処置を含むものであるから、産業上利用することができる発明とはいえず、特許法第29条第1項柱書により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 なお、本願補正発明が産業上利用することができる発明であるか否かはさておき、その新規性あるいは進歩性について付言すると、美容等のための皮膚へのマッサージに関しては、古代より、日本国内はもとより世界各国で種々の手法が開発されており、各手法毎に各部位の皮膚に対してさまざまな方向に沿ってマッサージが行われていることは、例を挙げるまでもなく明白な事実である。 してみると、上記した種々のマッサージにおいては、一部であれ、各部位の皮膚毎の真皮線維の方向に沿ったマッサージがなされていることは当然のことといえ、また、マッサージの効果の観点から、各部位毎に皮膚に対して特定の方向を選定することに格別の困難を要したものともいえない。 したがって、本願補正発明は、特許出願前に日本国内または外国において公然実施をされた発明であり、また、当業者がこうした発明に基づき容易に発明をすることができたものともいえ、特許法第29条第1項第2号、同条第29条第2項の規定に基づき特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第4 本願発明について 1.本願発明 平成16年3月26日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、第1、3.の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。 「血行促進、肌色改善、皮膚のくすみ若しくはむくみの改善、にきびの予防若しくは低減、化粧崩れの防止、化粧のりの向上、皮膚のはり改善、皮膚のたるみ改善、又は身体のスリミング化のために、真皮繊維の方向に沿ってマッサージすることを特徴とする美容方法。」 2.判断 上記第3、理由、1.で検討したとおり、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本願補正発明に、「血行促進」、「にきびの予防若しくは低減」といった事項を択一的事項として追加したものであり、上記第3、理由2.で検討したとおり、まさに健康状態を維持し、病気を予防するための処置を含むものであるから、産業上利用することができる発明には該当しない。 3.むすび したがって、本願発明は、特許法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-11-22 |
結審通知日 | 2006-11-28 |
審決日 | 2006-12-12 |
出願番号 | 特願平10-25544 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A61H)
P 1 8・ 14- Z (A61H) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小菅 一弘、一ノ瀬 薫 |
特許庁審判長 |
石原 正博 |
特許庁審判官 |
川本 真裕 中田 誠二郎 |
発明の名称 | 美容方法 |
代理人 | 特許業務法人田治米国際特許事務所 |