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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B61B
管理番号 1152392
審判番号 無効2006-80083  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-05-02 
確定日 2007-01-26 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3707338号発明「移動体使用の搬送設備」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3707338号の請求項1?3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 【1】手続の経緯
1.本件特許第3707338号の請求項1?3に係る発明(以下、一括して「本件特許発明」という。)についての出願は、平成12年3月10日に出願され、平成17年8月12日にその発明について特許の設定登録がされたものである。
2.これに対して、請求人は、本件特許発明は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、したがって、本件特許発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたと主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証を提出し、さらに参考資料として参考資料1?14を提出している。
3.被請求人は、平成18年7月26日に訂正請求書を提出して訂正を求め、請求人は、平成18年9月6日に審判事件弁駁書を提出し、参考資料として参考資料15,16を提出した。
4.これに対して、当審より、請求人と被請求人のそれぞれに対し、平成18年9月27日に職権審理結果通知書と無効理由通知書をそれぞれ通知し、平成18年10月25日に被請求人から意見書が提出されたものである。

【2】訂正の可否に対する判断
1.訂正の要旨
平成18年7月26日付けの訂正請求書における訂正の要旨は、本件特許発明の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち、下記(1),(2)のとおり訂正することを求めるものである(下線部は訂正箇所を示す。)。
(1)請求項1に、
「レール装置と、このレール装置に支持案内されて一定経路上で移動自在な移動体とを有し、この移動体には、レール装置に支持案内される複数の被案内装置と被搬送物の支持部が設けられ、前記移動体側には、受動面が形成されるとともに受動体が設けられ、前記一定経路は、被搬送物の処理部を貫通する部分と、所定経路部分とにより無端状に形成され、この所定経路部分には、前記受動面に当接回転作用して移動体に走行力を付与する摩擦式送り装置が、その配設ピッチを移動体の全長に対して短く設定して所定間隔置きに配設され、前記処理部の部分には、前記受動体に伝動体を係合作用して移動体に走行力を付与する無端回動式送り装置が設けられ、前記被案内装置には、横方向ピンを介して遊転自在に取り付けられた被支持ローラと、縦方向ピンを介して遊転自在に取り付けられた被ガイドローラとが設けられ、前記レール装置は、チャンネル状のレールが、その開放部を相対向して左右一対に配設して構成され、両レールの開放部側の上縁部には、その上縁から上方へ曲げ成形することで被ガイドローラが対向自在なガイド部が形成されていることを特徴とする移動体使用の搬送設備。」とあるのを、
「レール装置と、このレール装置に支持案内されて一定経路上で移動自在な移動体とを有し、この移動体には、レール装置に支持案内される複数の被案内装置と被搬送物の支持部が設けられ、前記移動体側には、受動面が形成されるとともに、少なくとも1箇所の被案内装置に受動体が設けられ、前記一定経路は、塗装した被搬送物を乾燥する処理部を貫通する部分と、所定経路部分とにより無端状に形成され、この所定経路部分には、その外周部分がウレタン製の送りローラを前記受動面に当接回転作用して移動体に走行力を付与する摩擦式送り装置が、その配設ピッチを移動体の全長に対して短く設定して所定間隔置きに配設され、前記処理部の部分には、その入口部分において、前記受動体に無端状のチェーンと一体移動される伝動体を係合作用して移動体に走行力を付与し、その出口部分において、前記受動体に対する前記伝動体の係合を外して送り力を解放する無端回動式送り装置が設けられ、前記被案内装置には、横方向ピンを介して遊転自在に取り付けられた被支持ローラと、縦方向ピンを介して遊転自在に取り付けられた被ガイドローラとが設けられ、前記レール装置は、チャンネル状のレールが、その開放部を相対向して左右一対に配設して構成され、両レールの開放部側の上縁部には、その上縁から上方へ曲げ成形することで被ガイドローラが対向自在なガイド部が形成されていることを特徴とする移動体使用の搬送設備。」と訂正する。
(2)発明の詳細な説明の段落【0008】に、
「【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、本発明のうちで請求項1記載の移動体使用の搬送設備有し、この移動体には、レール装置に支持案内される複数の被案内装置と被搬送物の支持部が設けられ、前記移動体側には、受動面が形成されるとともに受動体が設けられ、前記一定経路は、被搬送物の処理部を貫通する部分と、所定経路部分とにより無端状に形成され、この所定経路部分には、前記受動面に当接回転作用して移動体に走行力を付与する摩擦式送り装置が、その配設ピッチを移動体の全長に対して短く設定して所定間隔置きに配設され、前記処理部の部分には、前記受動体に伝動体を係合作用して移動体に走行力を付与する無端回動式送り装置が設けられ、前記被案内装置には、横方向ピンを介して遊転自在に取り付けられた被支持ローラと、縦方向ピンを介して遊転自在に取り付けられた被ガイドローラとが設けられ、前記レール装置は、チャンネル状のレールが、その開放部を相対向して左右一対に配設して構成され、両レールの開放部側の上縁部には、その上縁から上方へ曲げ成形することで被ガイドローラが対向自在なガイド部が形成されていることを特徴としたものである。」とあるのを、
「【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、本発明のうちで請求項1記載の移動体使用の搬送設備有し、この移動体には、レール装置に支持案内される複数の被案内装置と被搬送物の支持部が設けられ、前記移動体側には、受動面が形成されるとともに、少なくとも1箇所の被案内装置に受動体が設けられ、前記一定経路は、塗装した被搬送物を乾燥する処理部を貫通する部分と、所定経路部分とにより無端状に形成され、この所定経路部分には、その外周部分がウレタン製の送りローラを前記受動面に当接回転作用して移動体に走行力を付与する摩擦式送り装置が、その配設ピッチを移動体の全長に対して短く設定して所定間隔置きに配設され、前記処理部の部分には、その入口部分において、前記受動体に無端状のチェーンと一体移動される伝動体を係合作用して移動体に走行力を付与し、その出口部分において、前記受動体に対する前記伝動体の係合を外して送り力を解放する無端回動式送り装置が設けられ、前記被案内装置には、横方向ピンを介して遊転自在に取り付けられた被支持ローラと、縦方向ピンを介して遊転自在に取り付けられた被ガイドローラとが設けられ、前記レール装置は、チャンネル状のレールが、その開放部を相対向して左右一対に配設して構成され、両レールの開放部側の上縁部には、その上縁から上方へ曲げ成形することで被ガイドローラが対向自在なガイド部が形成されていることを特徴としたものである。」と訂正する。

2.当審の判断
そこで、これらの訂正事項について検討すると、上記(1)の訂正は、請求項1に記載された、a)「前記移動体側には、受動面が形成されるとともに受動体が設けられ、」を、「前記移動体側には、受動面が形成されるとともに、少なくとも1箇所の被案内装置に受動体が設けられ、」に減縮し、b)「前記一定経路は、被搬送物の処理部を貫通する部分と、所定経路部分とにより無端状に形成され」を、「前記一定経路は、塗装した被搬送物を乾燥する処理部を貫通する部分と、所定経路部分とにより無端状に形成され」に減縮し、c)「この所定経路部分には、前記受動面に当接回転作用して移動体に走行力を付与する摩擦式送り装置が、その配設ピッチを移動体の全長に対して短く設定して所定間隔置きに配設され」を、「この所定経路部分には、その外周部分がウレタン製の送りローラを前記受動面に当接回転作用して移動体に走行力を付与する摩擦式送り装置が、その配設ピッチを移動体の全長に対して短く設定して所定間隔置きに配設され」に減縮し、d)「前記処理部の部分には、前記受動体に伝動体を係合作用して移動体に走行力を付与する無端回動式送り装置が設けられ」を、「前記処理部の部分には、その入口部分において、前記受動体に無端状のチェーンと一体移動される伝動体を係合作用して移動体に走行力を付与し、その出口部分において、前記受動体に対する前記伝動体の係合を外して送り力を解放する無端回動式送り装置が設けられ」に減縮しようとするものであって、上記訂正事項a)については、明細書の段落【0024】に記載され、上記訂正事項b)については、明細書の段落【0005】、【0043】に記載され、上記訂正事項c)については、明細書の段落【0005】、【0033】に記載され、上記訂正事項d)については、明細書の段落【0030】、【0031】、【0041】、【0042】、【0045】に記載されているから、上記訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、上記(2)の訂正は、訂正事項(1)の特許請求範囲の訂正によって生じる特許明細書の発明の詳細な説明と特許請求の範囲との齟齬を解消しようとするもので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、上記訂正事項(1)と同じく願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

3.訂正請求の認容について
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第134条の2ただし書き、及び、同条第5項で準用する特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

【3】本件発明
特許第3707338号の請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1?本件発明3」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】 レール装置と、このレール装置に支持案内されて一定経路上で移動自在な移動体とを有し、この移動体には、レール装置に支持案内される複数の被案内装置と被搬送物の支持部が設けられ、前記移動体側には、受動面が形成されるとともに、少なくとも1箇所の被案内装置に受動体が設けられ、前記一定経路は、塗装した被搬送物を乾燥する処理部を貫通する部分と、所定経路部分とにより無端状に形成され、この所定経路部分には、その外周部分がウレタン製の送りローラを前記受動面に当接回転作用して移動体に走行力を付与する摩擦式送り装置が、その配設ピッチを移動体の全長に対して短く設定して所定間隔置きに配設され、前記処理部の部分には、その入口部分において、前記受動体に無端状のチェーンと一体移動される伝動体を係合作用して移動体に走行力を付与し、その出口部分において、前記受動体に対する前記伝動体の係合を外して送り力を解放する無端回動式送り装置が設けられ、前記被案内装置には、横方向ピンを介して遊転自在に取り付けられた被支持ローラと、縦方向ピンを介して遊転自在に取り付けられた被ガイドローラとが設けられ、前記レール装置は、チャンネル状のレールが、その開放部を相対向して左右一対に配設して構成され、両レールの開放部側の上縁部には、その上縁から上方へ曲げ成形することで被ガイドローラが対向自在なガイド部が形成されていることを特徴とする移動体使用の搬送設備。
【請求項2】 両レールの開放部側の下縁部には、その下縁から下方へ曲げ成形することで垂下部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の移動体使用の搬送設備。
【請求項3】 移動体の本体が、連結装置を介して相対回動自在に連結された複数本のフレーム体により形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の移動体使用の搬送設備。」

【4】請求人の主張
これに対して、請求人は、本件発明1?3の特許を無効にする、との審決を求め、その理由として、本件発明1?3は、本件出願前に頒布された刊行物に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は無効とされるべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証(特許第2856033号公報)、甲第2号証(米国特許第2488907号明細書)、甲第3号証(特開平10-6982号公報)、甲第4号証(特開平8-266982号公報)、甲第5号証(米国特許第2146615号明細書)を提出するとともに、参考資料として参考資料1(特開平8-324423号公報)、参考資料2(特公昭62-802号公報)、参考資料3(実公昭53-28940号公報)、参考資料4(米国特許第3610160号明細書)、参考資料5(特開平10-180169号公報)、参考資料6(特開平6-265265号公報)、参考資料7(特開平7-313920号公報)、参考資料8(特開平11-291898号公報)、参考資料9(米国特許第3269520号明細書)、参考資料10(米国特許第4305335号明細書)、参考資料11(実願昭61-106241号(実開昭63-11424号)のマイクロフィルム)、参考資料12(実公昭39-37124号公報)、参考資料13(米国特許第2874644号明細書)、参考資料14(実際の設計研究会著「続・実際の設計」日刊工業新聞社1992年7月30日、奥付、P190?191)、参考資料15(実公平6-1501号公報)、参考資料16(実公平2-49097号公報)、を提出している。

【5】被請求人の主張
一方、被請求人は、本件発明1は、甲第1号証?甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項に該当せず、この本件発明1を引用する本件発明2,3も、当然に、特許法第29条第2項に該当しないから、本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当するものではないので、本件無効審判の請求は成り立たない、旨主張している。

【6】刊行物の記載事項
当審が、平成18年9月27日に通知した無効の理由において引用した、特開平8-324423号公報(以下、「刊行物」という。)には、「可動体使用の搬送設備」に関して、第1?16図とともに次のような記載がある。
ア)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記した第1の従来構成によると、可動体群は前後端間を当接させて密状で移動されるのであり、このような可動体群を、一定経路中の別な箇所で、前後端間に間隔を置いた展開状で移動させることはできない。また第2の従来構成によると、キャリヤ群は展開状で移動されるのであり、このようなキャリヤ群を、一定経路中の別な箇所で、前後端間を当接させた密状で移動させることはできない。
【0007】本発明の目的とするところは、可動体群は、前後端間を当接させた密状(列車状)での移動と、前後端間に間隔を置いた展開状で移動とのいずれも行え、しかも上下や左右のカーブ経路部を有する一定経路でも、可動体群の密状での移動を円滑に確実にかつ安定して行える可動体使用の搬送設備を提供する点にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成すべく本第1発明の可動体使用の搬送設備は、レールに支持案内されて一定経路上を移動自在な可動体の本体を、連結装置を介して相対回動自在に連結した複数のフレーム体により形成し、これらフレーム体の側面を受動面に形成するとともに、本体の前後端を当接部に形成し、各フレーム体のうち少なくとも一つのフレーム体に、被搬送物支持部と、レールに支持案内される一対の被案内装置とを設けるととも、残りのフレーム体は遊端側に被案内装置を設け、移動方向の両端に位置した一対の被案内装置のうち、一方には受動体を設けるとともに、他方には受動部離脱用の操作体を設け、これら被案内装置のうち少なくとも一方の被案内装置は、フレーム体に対して相対変位自在に連結し、前記一定経路中に、前記受動面に当接自在な送りローラを有する摩擦式送り装置と、前記受動体と相対的に係脱自在な伝動体を有する係脱式送り装置とを設けている。」
イ)「【0021】
【実施例】以下に本発明の一実施例を図に基づいて説明する。図1、図2、図7、図13において、床1側からの機枠2に、チャンネル状の可動体用レール3が、その開放部を相対向して左右一対に配設されており、そして可動体用レール3の開放部側の縁部には、その上面に四角棒状のガイド部材4が固定されている。前記可動体用レール3により一定経路5が形成されるのであり、ここで一定経路5は平面視において、平行した一対の直線状経路部5Aと、これら直線状経路部5Aの始終端間を接続したカーブ経路部5Bとにより長円無端状に形成されている。
【0022】そして長円無端状の一定経路5は、その平行した一対の直線状経路部5Aの部分で二分割され、一方側が密状移動ゾーン6に形成されるとともに、他方側が展開状移動ゾーン7に形成されている。」
ウ)「【0023】両可動体用レール3に支持案内されて一定経路5上を移動自在な可動体10が設けられる。この可動体10は、その本体11が三本(複数)のフレーム体12,13,14により形成されている。ここで各フレーム体12,13,14は、四角筒状体(四角棒状体)により形成され、それぞれの左右一対の両側面が受動面15に形成されている。そして前部フレーム体12と中間部フレーム体13との間、ならびに中間部フレーム体13と後部フレーム体14との間が、それぞれ連結装置20を介して上下、左右で相対回動自在に連結されている。
【0024】すなわち連結装置20は図1?図3に示すように、中間部フレーム体13の前後端に一体化された端部材16と、前後のフレーム体12,14の相対向端との間に設けられるもので、前記端部材16に左右方向の横ピン21を介して連結体22が上下揺動自在に取り付けられるとともに、この連結体22が、前後のフレーム体12,14の相対向端に縦ピン23を介して左右揺動自在に連結されたところの、トラニオン形式が採用されている。
【0025】前記フレーム体12,13,14のうち少なくとも一つのフレーム体、この実施例では中間部フレーム体13に、被搬送物支持部25と、可動体用レール3に支持案内される前後一対の被案内装置30とが設けられるととも、残りのフレーム体、この実施例における前後のフレーム体12,14には、遊端側に被案内装置31,40が設けられている。」
エ)「【0026】前記被搬送物支持部25は、前記端部材16の上部に前後方向の継手ピン26を介して固定されたブラケット27と、このブラケット27上に設けられた左右方向の支持フレーム28などから構成され、これら支持フレーム28の左右方向の両端部には、たとえば自動車ボデイなどの被搬送物29の支持部28Aが配設されている。
【0027】前記中間部フレーム体13に設けられた前後一対の被案内装置30は、前記端部材16に回動自在に取り付けられた上下方向ピン32と、この上下方向ピン32の下端に左右方向ピン33を介して回動自在に連結されたトロリ本体34と、このトロリ本体34の両側にそれぞれ前後一対に取り付けられかつ前記可動体用レール3に嵌合して支持案内される被支持ローラ35と、前記トロリ本体34の上部に前後一対に取り付けられかつ前記ガイド部材4に案内される被ガイドローラ36などにより、トロリ形式に構成されている。
【0028】前部フレーム体12の遊端側に設けられた被案内装置31も前記被案内装置30と同様な構成であって、図1、図2、図4に示すように、端部材17に回動自在に取り付けられた上下方向ピン32、左右方向ピン33、トロリ本体34、被支持ローラ35、被ガイドローラ36などにより、トロリ形式に構成されている。そしてトロリ本体34の下部には、左右方向の支持ピン37を介して受動体38が上下揺動自在に設けられている。この受動体38の後部には後方に無く係止面38Aが形成され、また前部の上面側には被操作面(カム面)38Bが形成されている。」
オ)「【0033】図6、図7、図13に示すように、前記密状移動ゾーン6において、上昇経路部分5aの少し上手から下降経路部分5bの少し下手に亘っては乾燥炉60が設けられる。この乾燥炉60は、矩形筒状の囲壁体61や、この囲壁体61の内面側に配設された乾燥手段62などから構成され、そして囲壁体61内に、前記直線状経路部5Aやカーブ経路部5Bが挿通されている。
【0034】前記密状移動ゾーン6において、乾燥炉60の入口部分よりも少し上手には、前記受動面15に作用して可動体10に走行力を付与する摩擦式送り装置70が設けられる。この摩擦式送り装置70は図8、図9に示すように、前記可動体用レール3の側外方において前記機枠2などから連設されたベース体71に、縦軸72が立設されている。そして縦軸72には、軸受73を介して支持部材74が縦軸心75の周りに揺動自在に取り付けられる。
【0035】前記支持部材74には、回転駆動装置(モータなど)76が配設され、この回転駆動装置76に連動する減速機77から上方へ取り出した出力軸78に、たとえばウレタン製の送りローラ79が固定される。」
カ)「【0039】図10?図13において、前記展開状移動ゾーン7の上手経路部分からカーブ経路部5Bを出た部分に亘っては、前記可動体10の受動体38と相対的に係脱自在な伝動体107を有する係脱式送り装置100が設けられる。すなわち前記可動体用レール3の下方には、チャンネル状の駆動体用レール101が、その開放部を相対向して左右一対に配設され、これら駆動体用レール101は前記機枠2側に支持されている。
【0040】そして駆動体の一例である無端チェーン102には、所定のリンク103からブラケット105が連設され、このブラケット105に、前記駆動体用レール101に支持案内されるローラ106が設けられれる。また別のリンク104からは、前記受動体38が係脱自在な伝動体107が上方へと連設されている。前記無端チェーン102は、複数のガイド鎖輪108などに案内され、そして回転駆動装置109に連動された駆動鎖輪110に巻回されている。
【0041】前記展開状移動ゾーン7のカーブ経路部5Bを出た部分から下手経路部分に亘っては、前記可動体10群に係合して、この可動体10を高速で搬送させる高速送り装置115が配設される。」
キ)「【0043】次に上記の一実施例において可動体10の移動作業を説明する。図13において、送り込み装置95の部分に可動体10が停止され、この可動体10に対して、前工程においてたとえば塗装処理されて搬入装置116により搬入された被搬送物29が、移載装置117によって移載される。
【0044】この状態で送り込み装置95を、後述する摩擦式送り装置70と同様に作動させることにより、この摩擦式送り装置70側が受入れ態勢になった状態で可動体10が送り出される。その際に一定経路5上に密な列車状で位置している可動体10群の最後尾の可動体10における後端部の当接部57に、この送り込まれた可動体10の前端部の当接部56が当接し、以て送り込み装置95の送り込み力で可動体10群を移動させる。」
ク)「【0046】その後、・・・送りローラ79を接近動させて図8の実線で示すように一方の受動面15に圧接させるとともに、他方の受動面15を定置ローラ84に当接させ、以て両ローラ79,84により前部フレーム体12を挟持するのであるが、このとき送りローラ79は回転駆動装置76によって回転駆動されている。したがって強制回転されている送りローラ79を受動面15に圧接させることで、その送り回転力Aにより可動体10に移動力を与えることになり、以て可動体10は、密状移動ゾーン6の一定経路5において所望の速度で移動され、この密状移動ゾーン6に密な列車状で位置している可動体10群を後押し移動させることになる。」
ケ)「【0051】このようにして可動体10は、密状移動ゾーン6において所望の速度で間欠移動され、その間欠移動している間に図6に示すように乾燥炉60内を通過して、塗装された被搬送物29に対する乾燥作業が遂行される。」
コ)「【0060】前述したようにして送り出し装置96に達した可動体10は、この送り出し装置96によって展開状移動ゾーン7に送り出される。この展開状移動ゾーン7においては、図10?図13に示すように、係脱式送り装置100の無端チェーン102が回転駆動装置109により駆動されており、そして所定ピッチ置きに設けられた伝動体107が可動体10の受動体38に係合される。これにより可動体10は、係脱式送り装置100により展開状移動ゾーン7において、所定ピッチ置きに展開されて移動される。
【0061】この展開状移動ゾーン7で、たとえばストッパー装置により先行可動体10を停止させたとき、この先行可動体10の操作体49に対して、後続可動体10の受動体38の被操作面38Bが乗り上がることになり、以て受動体38が揺動されて伝動体107から離脱される。これにより、ストッパー装置よりも上手において、所定台数の可動体10をストレージし得る。」

上記ア)?コ)の記載からみて、上記刊行物の可動体使用の搬送設備は、(摩擦式送り装置を用いた)前後端間を当接させた密状での移動と、(係脱式送り装置を用いた)前後端間に間隔を置いた展開状で移動との、いずれをも行える可動体使用の搬送設備を提供することを第1の目的とし、その目的を達成するために、レールに支持案内されて一定経路上を移動自在な可動体の本体を、連結装置を介して相対回動自在に連結した複数のフレーム体により形成し、これらフレーム体の側面を受動面に形成するとともに、本体の前後端を当接部に形成し、移動方向の両端に位置した一対の被案内装置のうち、一方には受動体を設けるとともに、他方には受動部離脱用の操作体を設け、前記一定経路中に、前記受動面に当接自在な送りローラを有する摩擦式送り装置と、前記受動体と相対的に係脱自在な伝動体を有する係脱式送り装置とを設けたものであって、上記搬送設備は、その実施例においては、チャンネル状の可動体用レール3がその開放部を相対向して左右一対に配設することで構成されたレール装置と、このレール装置に支持案内されて一定経路5上で移動自在な可動体10を有し、この可動体10にはレール装置に支持案内される複数の被案内装置30,31,40と被搬送物29の支持部25とが設けられ、前記可動体10の側(側面)には受動面15が形成されるとともに、可動体10の前部フレーム体12の遊端側に設けられた被案内装置31には受動体38が設けられ、上記一定経路5は、塗装した被搬送物29を乾燥する乾燥炉60を貫通する密状移動ゾーン6内の部分と、展開状移動ゾーン7内の部分とにより無端状に形成された搬送設備として構成され、上記実施例においては、前記摩擦式送り装置は、外周部分がウレタン製の送りローラ79を前記受動面15に当接回転作用させ、可動体10に走行力を付与することにより可動体10を密状に移動させる摩擦式送り装置70として上記密状移動ゾーン6内の部分の入口部分に設けられ、また前記係脱式送り装置は、その始点部分において前記受動体38に無端チェーン102と一体移動される伝動体107を係合作用して可動体10に走行力を付与し、その終点部分において前記受動体38に対する前記伝動体107の係合を外して送り力を解放する係脱式送り装置100として、上記展開状移動ゾーン7内の部分に、高速送り装置115とともに設けられているものと認められる。またさらに、上記実施例における前記被案内装置30,31,40には、遊転自在に取り付けられた被支持ローラ35と、同じく遊転自在に取り付けられた被ガイドローラ36とが設けられ、前記レール装置における両可動体用レール3の開放部側の上縁部には、図7,12から明らかなように、被ガイドローラ36が対向自在なガイド部材4が固定されているものと認められる。
したがって、上記刊行物には、
「レール装置と、このレール装置に支持案内されて一定経路5上で移動自在な可動体10を有し、この可動体10には、レール装置に支持案内される複数の被案内装置30,31,40と被搬送物29の支持部25が設けられ、前記可動体10側には、受動面15が形成されるとともに、少なくとも1箇所の被案内装置に受動体38が設けられ、前記一定経路5は、塗装した被搬送物29を乾燥する乾燥炉60を貫通する密状移動ゾーン6内の部分と、展開状移動ゾーン7内の部分とにより無端状に形成され、この密状移動ゾーン6内の部分の入口部分には、その外周部分がウレタン製の送りローラ79を前記受動面15に当接回転作用して可動体10に走行力を付与する摩擦式送り装置70が配設され、前記展開状移動ゾーン7内の部分には、その始点部分において、前記受動体38に無端チェーン102と一体移動される伝動体107を係合作用して可動体10に走行力を付与し、その終点部分において、前記受動体38に対する前記伝動体107の係合を外して送り力を解放する係脱式送り装置100が設けられ、前記被案内装置30,31,40には、遊転自在に取り付けられた被支持ローラ35と、遊転自在に取り付けられた被ガイドローラ36とが設けられ、前記レール装置は、チャンネル状の可動体用レール3が、その開放部を相対向して左右一対に配設して構成され、両可動体用レール3の開放部側の上縁部には、被ガイドローラ36が対向自在なガイド部材4が固定されている可動体使用の搬送設備」の発明(以下、「刊行物の発明」という。)が記載されているものと認める。

【7】本件発明1と上記刊行物の発明との対比
本件発明1と上記刊行物の発明とを対比すれば、上記刊行物の発明の「可動体10」は、本件発明1の「移動体」に相当し、以下同様に、上記刊行物の発明の「塗装した被搬送物29を乾燥する乾燥炉60を貫通する密状移動ゾーン6内の部分」は、本件発明1の「塗装した被搬送物を乾燥する処理部を貫通する部分」に、「展開状移動ゾーン7内の部分」は「所定経路部分」に、「可動体用レール3」は「レール」に、それぞれ相当している。
したがって、本件発明1と上記刊行物の発明は、
「レール装置と、このレール装置に支持案内されて一定経路上で移動自在な移動体とを有し、この移動体には、レール装置に支持案内される複数の被案内装置と被搬送物の支持部が設けられ、前記移動体側には、受動面が形成されるとともに、少なくとも1箇所の被案内装置に受動体が設けられ、前記一定経路は、塗装した被搬送物を乾燥する処理部を貫通する部分と、所定経路部分とにより無端状に形成され、前記被案内装置には、遊転自在に取り付けられた被支持ローラと、遊転自在に取り付けられた被ガイドローラとが設けられ、前記レール装置は、チャンネル状のレールが、その開放部を相対向して左右一対に配設して構成され、両レールの開放部側の上縁部には、被ガイドローラが対向自在なガイド部が形成されている移動体使用の搬送設備。」
で一致し、以下の<相違点>で相違しているものと認める。
<相違点>
1)本件発明1の一定経路は、所定経路部分に、その外周部分がウレタン製の送りローラを受動面に当接回転作用して移動体に走行力を付与する摩擦式送り装置が、その配設ピッチを移動体の全長に対して短く設定して所定間隔置きに配設されるとともに、処理部の部分に、その入口部分において、受動体に無端状のチェーンと一体移動される伝動体を係合作用して移動体に走行力を付与し、その出口部分において、受動体に対する伝動体の係合を外して送り力を解放する無端回動式送り装置が設けられて構成されているのに対し、上記刊行物の発明の一定経路5は、塗装した被搬送物を乾燥する処理部を貫通する部分である密状移動ゾーン6内の部分の入口部分に、その外周部分がウレタン製の送りローラ79を受動面15に当接回転作用して可動体10に走行力を付与する摩擦式送り装置70が配設されるとともに、所定経路部分である展開状移動ゾーン7内の部分に、その始点部分において、受動体38に無端チェーン102と一体移動される伝動体107を係合作用して移動体である可動体10に走行力を付与し、その終点部分において、受動体38に対する伝動体107の係合を外して送り力を解放する無端回動式送り装置である係脱式送り装置100が設けられて構成されている点。
2)本件発明1では、被支持ローラと被ガイドローラとが、被案内装置に横方向ピン及び縦方向ピンを介して取り付けられているのに対し、上記刊行物の発明では、被支持ローラと被ガイドローラとが、被案内装置にどのように取り付けられているのか明らかでない点。
3)本件発明1では、被ガイドローラが対向自在なガイド部が、両レールの開放部側の上縁部に、その上縁から上方へ曲げ成形することで形成されているのに対し、上記刊行物の発明では、被ガイドローラ36が対向自在なガイド部材4が、両可動体用レール3の開放部側の上縁部に、別部材として固定されている点。

【8】当審の判断
上記相違点1)?3)について検討する。
(1)相違点1)に関して
レール装置に支持案内されて無端状に形成された一定経路上を移動自在な可動体に走行力を付与するときに、外周部分がウレタン製の送りローラを受動面に当接回転作用して移動体に走行力を付与する摩擦式送り装置を、塗装した被搬送物を乾燥する処理部を貫通する部分以外の部分において適用することは、例えば、申立人が提出した甲第1号証(特許第2856033号公報)にみられるように周知技術であるとともに、このような摩擦式送り装置において、送りローラを、その配設ピッチを移動体の全長に対して短く設定して所定間隔置きに配設することも、例えば、申立人が提出した甲第3号証(特開平10-6982号公報)や参考資料2(特公昭62-802号公報)にみられるように周知技術である。さらにまた、このような可動体に、塗装した被搬送物を乾燥する処理部を貫通する部分において走行力を付与するときに、無端状のチェーンを用いた無端回動式送り装置を適用することも、同じく申立人が提出した甲第4号証(特開平8-266982号公報)にみられるように周知技術である。
そして、上記刊行物の発明において、摩擦式送り装置を乾燥炉60を貫通する部分に設け、係脱式送り装置を乾燥炉60を貫通する部分以外の部分に設けた点が、摩擦式送り装置を用いた移動と、係脱式送り装置を用いた移動とのいずれをも行える可動体使用の搬送設備の単なる一実施例にすぎないことを考慮すれば、上記刊行物の発明に上記各周知技術を適用することに格別な困難性を認めることはできない。
しかも、上述したような無端回動式送り装置を、塗装した被搬送物を乾燥する処理部を貫通する部分に適用する場合、その始点部分が処理部の入口部分となり、終点部分が処理部の出口部分となることは自明であるとともに、塗装した被搬送物を乾燥する処理部を貫通する部分以外の部分に一種類の送り装置のみを適用することは当業者が適宜選択しうる設計事項である。
してみれば、上記刊行物の発明において、塗装した被搬送物を乾燥する処理部を貫通する部分以外の所定経路部分に、その外周部分がウレタン製の送りローラを受動面に当接回転作用して移動体に走行力を付与する摩擦式送り装置を適用して、その配設ピッチを移動体の全長に対して短く設定して所定間隔置きに配設し、さらに、塗装した被搬送物を乾燥する処理部を貫通する部分に、無端状のチェーンを用いた無端回動式送り装置を適用して、該処理部を貫通する部分に、その入口部分において、受動体に無端状のチェーンと一体移動される伝動体を係合作用して可動体に走行力を付与し、その出口部分において、受動体に対する伝動体の係合を外して送り力を解放する無端回動式送り装置(係脱式送り装置)を配設することは、上記刊行物の発明に上記各周知技術を適用することにより当業者が容易に行い得たものと言うべきである。
(なお、被請求人は、平成18年10月25日付けの意見書で、上記刊行物の【0007】に記載の「本発明の目的とするところは、・・・しかも上下や左右のカーブ経路部を有する一定経路でも、可動体群の密状での移動を円滑に確実にかつ安定して行える可動体使用の搬送設備を提供する点にある。」に着目して、「密状移動ゾーン6における一定経路5は、上下や左右のカーブ経路部を有する一定経路、即ち、乾燥炉60内を貫通する、上昇経路部分5aが組み込まれた一方の直線状経路部5Aと、カーブ経路部5Bと、下降経路部分5bが組み込まれた他方の直線状経路部5Aとをもって形成されている一定経路、に特定されることは明らかである。
とすると、刊行物の発明は、密状移動ゾーン6において、可動体群の密状での移動を円滑に確実にかつ安定して行える可動体使用の搬送設備の発明に特定されたものと理解されるべきである。」として、「“送り装置を逆にする”との着想を受け入れない刊行物の発明を引用発明とした進歩性否定の論理付けは成り立ち得ないことが明白である。」と主張しているが、ア)で摘記した上記刊行物の【発明が解決しようとする課題】の記載からみて、上記刊行物の発明の第1の目的が、「(摩擦式送り装置を用いた)前後端間を当接させた密状での移動と、(係脱式送り装置を用いた)前後端間に間隔を置いた展開状で移動との、いずれをも行える可動体使用の搬送設備を提供すること」にあることは明らかであるから、被請求人の主張は採用できない。)

(2)相違点2)に関して
移動体を支持したりガイドしたりするローラを、ピンを介して取り付けることは、引用例を挙げるまでもなく慣用技術である。
してみれば、上記刊行物の発明において、被支持ローラと被ガイドローラとを、被案内装置に横方向ピン及び縦方向ピンを介して取り付けることは、上記刊行物の発明に上記慣用技術を適用することにより、当業者が容易に行い得たものである。

(3)相違点3)に関して
被ガイドローラが対向自在なガイド部を、両レールの開放部側の上縁部に、その上縁から上方へ曲げ成形することで形成することは、申立人が提出した前記甲第3号証や参考資料12(実公昭39-37124号公報)にみられるように従来周知である。
してみれば、上記刊行物の発明において、被ガイドローラが対向自在なガイド部を、両レールの開放部側の上縁部に、その上縁から上方へ曲げ成形することで形成することは、上記刊行物の発明に上記周知技術を適用することにより、当業者が容易に行い得たものである。

(4)本件発明2に関して
本件発明2は、本件発明1において、両レールの開放部側の下縁部には、その下縁から下方へ曲げ成形することで垂下部が形成されているようにしたものであるが、このようにすることは、前述の甲第3号証や参考資料12(実公昭39-37124号公報)でも行われているから、この点は、刊行物の発明の単なる設計変更にすぎないものである。

(5)本件発明3に関して
本件発明3は、本件発明1または2において、移動体の本体が、連結装置を介して相対回動自在に連結された複数本のフレーム体により形成されているようにしたものであるが、移動体をこのように構成することは上記刊行物の発明でも行われている。

そして、本件発明1?3が奏する作用効果は、上記刊行物の発明と上記慣用技術、各周知技術に示唆された事項から予測される程度以上のものではない。
したがって、本件発明1?3は、上記刊行物の発明と上記慣用技術、各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

【9】むすび
以上のとおり、本件特許発明は、上記刊行物に記載された発明と上記慣用技術、各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、申立人の主張を検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
移動体使用の搬送設備
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール装置と、このレール装置に支持案内されて一定経路上で移動自在な移動体とを有し、この移動体には、レール装置に支持案内される複数の被案内装置と被搬送物の支持部が設けられ、前記移動体側には、受動面が形成されるとともに、少なくとも1箇所の被案内装置に受動体が設けられ、前記一定経路は、塗装した被搬送物を乾燥する処理部を貫通する部分と、所定経路部分とにより無端状に形成され、この所定経路部分には、その外周部分がウレタン製の送りローラを前記受動面に当接回転作用して移動体に走行力を付与する摩擦式送り装置が、その配設ピッチを移動体の全長に対して短く設定して所定間隔置きに配設され、前記処理部の部分には、その入口部分において、前記受動体に無端状のチェーンと一体移動される伝動体を係合作用して移動体に走行力を付与し、その出口部分において、前記受動体に対する前記伝動体の係合を外して送り力を解放する無端回動式送り装置が設けられ、前記被案内装置には、横方向ピンを介して遊転自在に取り付けられた被支持ローラと、縦方向ピンを介して遊転自在に取り付けられた被ガイドローラとが設けられ、前記レール装置は、チャンネル状のレールが、その開放部を相対向して左右一対に配設して構成され、両レールの開放部側の上縁部には、その上縁から上方へ曲げ成形することで被ガイドローラが対向自在なガイド部が形成されていることを特徴とする移動体使用の搬送設備。
【請求項2】
両レールの開放部側の下縁部には、その下縁から下方へ曲げ成形することで垂下部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の移動体使用の搬送設備。
【請求項3】
移動体の本体が、連結装置を介して相対回動自在に連結された複数本のフレーム体により形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の移動体使用の搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レール装置と、このレール装置に支持案内されて一定経路上で移動自在な移動体とを有し、この移動体により被搬送物を支持して搬送を行う移動体使用の搬送設備に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の搬送設備としては、たとえば特開平7-25441号公報に見られる構成が提供されている。すなわち、レールに支持案内されて一定経路上を移動自在な移動体(可動体)の本体は、連結装置を介して相対回動自在に連結された三本のフレーム体により形成されている。そしてフレーム体は、一定経路の方向に長い四角状体からなるとともに、その側面が受動面に形成されている。中間部のフレーム体には、被搬送物支持部と、レールに支持案内される被案内装置とが設けられ、また前後端の両フレーム体には、レールに支持案内される被案内装置が設けられている。
【0003】
その際に被案内装置は、対応するフレーム体に設けた端部材に回動自在に取り付けた上下方向ピンと、この上下方向ピンの下端に左右方向ピンを介して回動自在に連結したトロリ本体と、このトロリ本体に取り付けられた被支持ローラ、ならびに被ガイドローラとにより、トロリ形式に構成されている。そしてレールはチャンネル状であって、その開放部を相対向して左右一対に配設されている。これらレールの開放部側の上縁部には、上部の被ガイドローラを案内するためのガイド部材が固定され、また下縁部には、下部の被ガイドローラを案内するためのガイド部材が固定されている。ここでガイド部材は四角棒状体からなる。
【0004】
このような従来形式によると、送り装置から制動装置の間で複数台の移動体が、その前後端間に隙間を生じめることなく密に後押し状態で整列されて走行される駆動形式とし得る。その際に送り装置は、フレーム体の側面に形成された受動面に対して送り装置の送りローラを圧接させることで、移動体に走行力を付与する形式であり、そして送りローラは、たとえばウレタン製など摩擦送りに好適な材料から構成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記した従来の構成においては、送り装置の送りローラがウレタン製などの材料から構成されていることで、たとえば塗装した被搬送物を乾燥炉に入れて乾燥処理する工程などには、送りローラが損傷することなどから容易に採用できない。またレールは、その開放部側の上縁部と下縁部に、それぞれ被ガイドローラを案内するためのガイド部材が固定されていることで、構造が複雑になる、などの問題がある。
【0006】
そこで本発明のうち請求項1記載の発明は、摩擦式の送りと非摩擦式(機械式)の送りとを使い分け得、さらに好適な機能を備えたレールを構造簡単に形成し得る移動体使用の搬送設備を提供することを目的としたものである。
【0007】
また請求項2記載の発明は、好適な機能と十分な強度を備えたレールを構造簡単に形成し得る移動体使用の搬送設備を提供することを目的としたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、本発明のうちで請求項1記載の移動体使用の搬送設備は、レール装置と、このレール装置に支持案内されて一定経路上で移動自在な移動体とを有し、この移動体には、レール装置に支持案内される複数の被案内装置と被搬送物の支持部が設けられ、前記移動体側には、受動面が形成されるとともに、少なくとも1箇所の被案内装置に受動体が設けられ、前記一定経路は、塗装した被搬送物を乾燥する処理部を貫通する部分と、所定経路部分とにより無端状に形成され、この所定経路部分には、その外周部分がウレタン製の送りローラを前記受動面に当接回転作用して移動体に走行力を付与する摩擦式送り装置が、その配設ピッチを移動体の全長に対して短く設定して所定間隔置きに配設され、前記処理部の部分には、その入口部分において、前記受動体に無端状のチェーンと一体移動される伝動体を係合作用して移動体に走行力を付与し、その出口部分において、前記受動体に対する前記伝動体の係合を外して送り力を解放する無端回動式送り装置が設けられ、前記被案内装置には、横方向ピンを介して遊転自在に取り付けられた被支持ローラと、縦方向ピンを介して遊転自在に取り付けられた被ガイドローラとが設けられ、前記レール装置は、チャンネル状のレールが、その開放部を相対向して左右一対に配設して構成され、両レールの開放部側の上縁部には、その上縁から上方へ曲げ成形することで被ガイドローラが対向自在なガイド部が形成されていることを特徴としたものである。
【0009】
したがって請求項1の発明によると、一定経路中の所定経路部分に設けた摩擦式送り装置を移動体の受動面に当接回転させることで、摩擦回転力により移動体に走行力を付与して一定経路上で走行し得、その際に移動体の走行は、摩擦式送り装置の配設ピッチ置きに間欠的に行える。そして、一定経路中の別な箇所で、乾燥炉など、適合する環境の処理部においては、無端回動式送り装置の伝動体を移動体の受動体に係合作用させることで、無端回動力により移動体に走行力を付与して一定経路上で走行し得る。その際に被案内装置を支持案内するレール装置のレールは、その上縁部に被ガイドローラの案内を行うガイド部を上方へ曲げ成形していることで、ガイド機能を有するレールを容易に構成し得る。
【0010】
また本発明の請求項2記載の移動体使用の搬送設備は、上記した請求項1記載の構成において、両レールの開放部側の下縁部には、その下縁から下方へ曲げ成形することで垂下部が形成されていることを特徴としたものである。
したがって請求項2の発明によると、被案内装置を支持案内するレール装置のレールは、その下縁部に垂下部を下方へ曲げ成形していることで、十分な強度を有するレールを容易に構成し得る。さらに本発明の請求項3記載の移動体使用の搬送設備は、上記した請求項1または2に記載の構成において、移動体の本体が、連結装置を介して相対回動自在に連結された複数本のフレーム体により形成されていることを特徴としたものである。
【0011】
したがって請求項3の発明によると、カーブ経路部において各フレーム体は、連結装置を介して相対的に回動した姿勢となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を、床側走行形式に採用した状態として図に基づいて説明する。
【0015】
図1?図6において、床1側からの機枠10の上部にレール装置11が配設されている。このレール装置11は、チャンネル状のレール12を、その開放部を相対向して左右一対に配設することで構成されている。これらレール12の開放部側の上縁部には、その上縁から上方へ曲げ成形することでガイド部12aが形成されるとともに、その下縁部には、その下縁から下方へ曲げ成形することで垂下部12bが形成されている。
【0016】
前記レール装置11により一定経路5を形成するものであり、ここで一定経路5は平面視において、たとえば平行した一対の直線状経路部5aと、これら直線状経路部5aの始終端間を接続したカーブ経路部5bとにより無端状に形成されている。
【0017】
前記レール装置11に支持案内されて一定経路5上を移動自在な移動体20が設けられる。この移動体20の本体21は、連結装置(後述する。)を介して相対回動自在に連結された三本(複数本)のフレーム体22,23,24により形成されている。
【0018】
ここで各フレーム体22,23,24は、一定経路5の方向に長い四角筒状体(四角棒状体)22A,23A,24Aと、これら四角筒状体22A,23A,24Aの前端に一体化された前端部材22B,23B,24Bと、後端に一体化された後端部材22C,23C,24Cとにより形成されている。そして少なくとも一側面、すなわち、たとえば無端状の一定経路5における内側に向いた側面が、全長または大部分に亘っての受動面25に形成されている。
【0019】
前部フレーム体22と中間部フレーム体23との間、ならびに中間部フレーム体23と後部フレーム体24との間が、それぞれ連結装置27を介して相対回動自在に連結されている。ここで両連結装置27は、前部フレーム体22の後端部材22Cと中間部フレーム体23の前端部材23Bとの間、ならびに中間部フレーム体23の後端部材23Cと後部フレーム体24の前端部材24Bとの間を、それぞれ縦方向軸28を介して左右方向に相対回動自在に連結することで構成されている。
【0020】
前記移動体20は、複数の被案内装置30を介してレール装置11に支持案内されることで、一定経路5上を移動自在に構成されている。その際に、各被案内装置30は同様なトロリ形式に構成されている。
【0021】
すなわちトロリ本体31には、前後方向の中央部分に上方で開放された四角状凹部31Aが形成されている。そしてトロリ本体31の上下中間位置には前後一対の横方向ピン32が貫通して固定され、これら横方向ピン32の両突出部分に、前記レール装置11におけるレール12に嵌合して支持案内される被支持ローラ33が遊転自在に取り付けられている。またトロリ本体31の上部にはそれぞれ縦方向ピン34が貫通して固定され、これら縦ピン34の下端部分に、前記レール12のガイド部12aに対向して案内される被ガイドローラ35が遊転自在に取り付けられている。
【0022】
これにより各被案内装置30は、そのトロリ本体31の両側にそれぞれ前後一対の被支持ローラ33が設けられるとともに、その上部に前後一対の被ガイドローラ35が設けられて構成されている。そして被案内装置30は、両縦方向軸28、ならびに前端部材22Bや後端部材24Cに設けられた縦方向軸29の端部に相対回動自在に連結されている。
【0023】
すなわち、縦方向軸28,29の下部は四角状部28A,29Aに形成され、これら四角状部28A,29Aが前記四角状凹部31Aに挿入され、そしてトロリ本体31に通される横方向ピン38,39が各四角状部28A,29Aに貫通されている。これにより縦方向軸28,29の端部と被案内装置30との連結は、四角状部28A,29Aを貫通する横方向ピン38,39を介して、前後方向で相対回動自在に行われる。
【0024】
前記移動体20側には受動体40が設けられている。すなわち、前から2番目(少なくとも1箇所)の被案内装置30において、そのトロリ本体31の下前部には横ピン41を介して受動体40が上下揺動自在に設けられている。この受動体40には、下部で後方に向く受動面40aと、中間部で上方に向く受け面40bと、上部で後方に向くストッパ面40cとが形成されている。ここでストッパ面40cがトロリ本体31側に当接されたとき、受動面40aは垂直状の受動姿勢になるように構成されている。
【0025】
そしてトロリ本体31の下部かつ後部には、横ピン43を介して惰走防止体42が上下揺動自在に設けられている。この惰走防止体42には、下部で前方に向く惰走防止面42aと、中間部で下方に向く当て面42bと、上部で前方に向くストッパ面42cと、下方かつ後方に向くカム面42dとが形成されている。ここでストッパ面42cがトロリ本体31側に当接されたとき、惰走防止面42aは垂直状の受動面40aに対向されるとともに、当て面42bが受け面40bに上方から当接される姿勢になるように構成されている。
【0026】
前記移動体20には被搬送物Wの支持部45が設けられている。すなわち、前記フレーム体22,23,24のうち中間部フレーム体23には、被搬送物Wの支持部45が設けられている。この支持部45は、前記中間部フレーム体23における四角筒状体23Aと前端部材23Bまたは後端部材23Cとの上面間から立設された前後一対の縦材46と、これら縦材46の上面間に設けられた前後材47と、この前後材47の前後端面にそれぞれ固定された左右材48と、これら左右材48上に設けられた被搬送物Wの支持具49などにより構成されている。
【0027】
前記支持部45の部分には遊転輪(ガイドローラ)50が取り付けられている。すなわち、左右材48から左右一対のブラケット51が連設され、これらブラケット51から左右外方へ突設された軸52に前記遊転輪50が取り付けられている。そして、前記遊転輪50を下方から支持案内する一対のガイドレール6が、前記一定経路5に沿って配設されている。
【0028】
なおガイドレール6は一定経路5の全長に沿って設けてもよく、また主として被搬送物Wを支持して作業を行う直線状経路部5aの全長もしくは所望の箇所に設けてもよい。さらにガイドレール6の部分にはカバー体7が設けられており、ここでカバー体7により遊転輪50を下方から支持案内する形式であってもよい。そして遊転輪50は、図3の仮想線に示される4輪形式のほか、1輪形式、片持ち状の2輪形式、3輪形式、4輪以上の複数輪形式などであってもよい。
【0029】
前記一定経路5において、たとえば一方の直線状経路部5aは被搬送物Wの乾燥炉(処理部の一例)55に貫通されている。そして、この乾燥炉55に対応して前記移動体20に走行力を付与する無端回動式送り装置60が設けられている。
【0030】
すなわち無端回動式送り装置60は、乾燥炉55の出口部分に設けられた駆動歯輪61と、乾燥炉55の入口部分などに設けられた従動歯輪62群と、駆動歯軸61に連動された駆動装置63と、両歯軸61,62間に巻回されたチェーン64などにより、その一例が構成されている。ここでチェーン64は、一対の上下リンク体65群と一対の左右リンク体66群とを、チェーンピン体67により交互に連結することで無端状に構成され、そしてチェーンピン体67による連結は、上下ならびに左右に相対回動自在とされている。
【0031】
前記一対の上下リンク体65間には、縦ピン68を介して横ガイドローラ69が遊転自在に設けられ、そして一対の左右リンク体66の外側には、横ピン70を介して上下ガイドローラ71が遊転自在に設けられている。さらに、適所の左右リンク体66間には前記受動体40に係合可能な伝動体72が設けられ、ここで伝動体72は、上位の経路部分において上方へ突出するように構成されている。
【0032】
この上位の経路部分で移動されるチェーン64を支持案内するために、前記レール装置11の下方にはチェーンガイド装置14が設けられている。すなわちチェーンガイド装置14は、機枠10の下部にチャンネル状のレール15を、その開放部を相対向して左右一対に配設することで構成されている。
【0033】
前記一定経路5中の所定経路部分には、前記受動面25に当接回転作用して移動体20に走行力を付与する摩擦式送り装置80が設けられている。この摩擦式送り装置80は、回転駆動部の一例である減速機付きのインダクションモータ81と、このインダクションモータ81から上下方向に取り出した出力軸に取り付けられた送りローラ82などにより構成されている。そして送りローラ82は、たとえば外周部分がウレタン製とされている。
【0034】
この摩擦式送り装置80は、駆動回転される送りローラ82を受動面25に当接作用させることで、移動体20に走行力を付与し得る。その際に摩擦式送り装置80は、定置式でもよいし、より十分な当接力を得るために、たとえば、圧縮ばねの弾性反発力により送りローラ82を受動面25に対して当接付勢し得る形式であってもよい。
【0035】
そして摩擦式送り装置80は、一定経路5中の所定経路部分に所定間隔置きに配設され、その際に配設ピッチPは、移動体20の全長Lに対して短く、すなわちP<Lに設定されている。
【0036】
以下に、上記した実施の形態における作用を説明する。
図2、図6の仮想線に示されるように、一定経路5中で乾燥炉55の部分を除いた所定経路部分では、受動面25に当接している送りローラ82をインダクションモータ81により駆動回転させることで、摩擦式送り装置80により移動体20に走行力を付与することになって、この移動体20を送り走行し得る。すなわち、摩擦式送り装置80による移動体20の走行は、その送りローラ82を、前部のフレーム体22の受動面25から中間部のフレーム体23の受動面25、ならびに後部のフレーム体24の受動面25へと順次作用させることで行われる。
【0037】
その際に、送りローラ82が前部のフレーム体22に作用しているとき、中間部のフレーム体23と後部のフレーム体24は連結装置27を介して引っ張り移動され、また中間部のフレーム体23に作用しているとき、前部のフレーム体22は連結装置27を介して押し移動されるとともに後部のフレーム体24は連結装置27を介して引っ張り移動され、さらに後部のフレーム体24に作用しているとき、中間部のフレーム体23と前部のフレーム体22は連結装置27を介して押し移動されることになる。
【0038】
そして、このような移動(走行)の際に各被案内装置30は、各被支持ローラ33を介してレール装置11の両レール12に支持案内され、そして各被ガイドローラ35がガイド部12aに当接して案内される。これにより移動体20の移動は、ガタ付いたり横倒れしたりすることなく安定して行われ、以て被搬送物Wに対する各種作業や被搬送物Wの積み降ろしは、常に正確に行える。
【0039】
上述した移動体20の走行は、摩擦式送り装置80の配設ピッチP置きに間欠的に行われ、その際に、下手の摩擦式送り装置80の部分が空状態のときに間欠的な送りが行われるように、適宜の検出手段などによる検出に基づいて自動制御されている。そして摩擦式送り装置80の位置において、送りローラ82の非回転により移動体20を停止させるとともに適宜の位置決め手段によって位置決めを行った状態で、床1上の作業者や本体21上に乗り移った作業者が、支持部40に支持されている被搬送物Wに対して各種の作業を遂行する。
【0040】
前記移動体20の走行は、カーブ経路部5bでも同様にして行われる。その際にカーブ経路部5bでは、図7に示されるように、各フレーム体22,23,24は、平面視において連結装置27における縦方向軸28を介して相対的に屈折した姿勢で移動されることになる。
【0041】
このようにしてカーブ経路部5bを移動した移動体20は乾燥炉55の入口部に達し、その受動体40を無端回動式送り装置60の作用経路に突入させて停止させる。ここで乾燥炉55の部分では無端回動式送り装置60が作動されている。
【0042】
すなわち、駆動装置63により両歯輪61,62を介してチェーン64が移動されている。そして、チェーン64と一体移動される伝動体72は、作用経路の始端部分から受動体40に向って移動し、まず惰走防止体42のカム面42dに当接して、この惰走防止体42を、図4の仮想線に示すように横ピン43の周りに上方へ揺動させ、以て伝動体72は惰走防止体42の部分を通過する。そして伝動体72は、図4の実線に示すように受動体40の受動面40aに当接し、これにより移動体20を一体状に移動させる。
【0043】
このようにして移動体20を乾燥炉55内で走行させながら、支持部40に支持している被搬送物Wに対して、乾燥手段(図示せず。)により乾燥作業を遂行する。その際に無端回動式送り装置60は、乾燥炉55内でチェーン64のみが移動することから、熱などに強い送り構成とし得、以て長期に亘っての安定した動作を期待し得る。
【0044】
なお、伝動体72を受動体40の受動面40aに当接させての移動体20の移動中に、この移動体20が惰走(暴走)しようとしたとき、惰走防止体42の惰走防止面42aが伝動体72に当接して、その惰走を防止し得る。
【0045】
移動体20が乾燥炉55の出口部分に達すると、たとえばチェーンガイド装置14のレール15を下降傾斜状に形成することにより、受動体40に対して伝動体72が下降動し、以て受動体40に対する伝動体72の係合が外れる。これにより、無端回動式送り装置60による送り力が開放され、それ以降は、前述した摩擦式送り装置80により走行力が付与される。
【0046】
なお、乾燥炉55の部分から出たのち適宜の箇所において、作業済みの被搬送物Wが支持部40から降ろされるとともに、支持部40に新たな被搬送物Wが積み込まれる。このようにして移動体20は、一定経路5上において、循環走行される。
【0047】
一定経路5中に、側面視において上方(または下方)へのカーブ経路部が形成されている場合は、縦方向軸28,29に対して被案内装置30が横方向ピン38,39の周りに相対回動されることで、レール12の上下方向のカーブに沿って向きを自動的に変更しながら円滑に移動される。
【0048】
上述した構成において、各被案内装置30を支持案内するレール装置11のレール12は、その上縁部に被ガイドローラ35の案内を行うガイド部12aが上方へ曲げ成形されていることで、ガイド部を有するレールを容易に構成し得、そして下縁部に垂下部12bが下方へ曲げ成形されていることで、十分な強度を有するレールを容易に構成し得る。
【0049】
上記した実施の形態では、直線状経路部5aにおいて、前後端間に隙間を生じる状態で移動体20を走行駆動させる形式を示しているが、これは、直線状経路部5aの上手側に前記摩擦式送り装置80を設けるとともに、下手側に前記受動面25に作用して移動体20に制動力を付与する制動装置を設けた形式としたときには、摩擦式送り装置80から制動装置の間で、複数台の移動体20を、その前後端間に隙間を生じめることなく密に後押し状態で整列させて走行し得る。
【0050】
上記した実施の形態では、本体21の一側面に受動面25を形成し、この受動面25に作用する摩擦式送り装置80を設けた形式を示しているが、これは本体21の他側面に作用される受けローラを設けて、本体21を両側から挟みつけて強い摩擦力を得、以て充分な走行力を与え得る形式であってもよい。
【0051】
上記した実施の形態では、移動体20の本体21として、三本のフレーム体22,23,24からなる形式を示したが、これは前部のフレーム体22の前方や後方、後部のフレーム体24の前方や後方に単数または複数のフレーム体を連結した三本以上の形式や、中間部フレーム体13を複数本とした三本以上の形式などであってもよい。またフレーム体22,23,24のうちいずれかを省略した二本形式であってもよい。
【0052】
上記した実施の形態では、フレーム体22,23,24の連結を行う縦方向軸28を介して被案内装置30を配設しているが、これは被案内装置を、フレーム体22,23,24間や前後のフレーム体22,24の外方に配設して隣接間を連結した形式であってもよい。この場合には、被案内装置におけるトロリ本体の側面にも受動面が形成される。
【0053】
さらに、フレーム体22,23,24間で連結された被案内装置間に支持部を設けた形式であってもよく、この場合には、カーブ経路などの円滑な走行のために、中間のフレーム体23として伸縮構造が採用される。
【0054】
上記した実施の形態では、床1側からの機枠10にレール装置11やチェーンガイド装置14を配設しているが、これは床面下のピット内にレール装置11やチェーンガイド装置14を配設した構成であってもよい。これによると、移動体20を含めた全体の高さを低く形成できる。
【0055】
上記した実施の形態では、床1側を走行自在な移動体20を示したが、これは天井側に配設したレールに支持案内されて移動自在な移動体であってもよい。
上記した実施の形態では、被案内装置30として、レール12のガイド部12aに案内される被ガイドローラ35を有する形式が示されているが、これは垂下部12bに案内される被ガイドローラをも有する形式の被案内装置であってもよい。
【0056】
上記した実施の形態では、レール12にガイド部12aや垂下部12bが曲げ成形された構成を示しているが、請求項1の場合には、チャンネル状のレールとし、そして開放部側の上縁部と下縁部に、被ガイドローラを案内するためのガイド部材が固定された形式であってもよい。
【0057】
【発明の効果】
上記した本発明の請求項1によると、一定経路中の所定経路部分に設けた摩擦式送り装置を移動体の受動面に当接回転させることで、摩擦回転力により移動体に走行力を付与して一定経路上で走行でき、その際に移動体の走行は、摩擦式送り装置の配設ピッチ置きに間欠的に行うことができる。そして、一定経路中の別な箇所で、乾燥炉など、適合する環境の処理部においては無端回動式送り装置を採用でき、この無端回動式送り装置の伝動体を移動体の受動体に係合作用させることで、無端回動力により移動体に走行力を付与して一定経路上で走行できる。このように、摩擦式の送りと非摩擦式(機械式)の送りとを使い分けることができるとともに、両送り装置ともに、長期に亘っての安定した動作を期待できる。しかも被案内装置を支持案内するレール装置のレールは、その上縁部に被ガイドローラの案内を行うガイド部を上方へ曲げ成形していることで、ガイド機能を有するレールを容易に構成できる。すなわち、好適な機能を備えたレールを構造簡単にして提供できる。
【0058】
また上記した本発明の請求項2によると、被案内装置を支持案内するレール装置のレールは、その下縁部に垂下部を下方へ曲げ成形していることで、十分な強度を有するレールを容易に構成できる。すなわち、好適な機能と十分な強度を備えたレールを構造簡単にして提供できる。
さらに上記した本発明の請求項3によると、フレーム体群により本体を長く構成できるものでありながら、カーブ経路部において各フレーム体は、連結装置を介して相対的に回動した姿勢となり、以てカーブ経路部での移動体の走行は円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示し、移動体使用の搬送設備における移動体部分の一部切り欠き側面図である。
【図2】同移動体使用の搬送設備における一定経路の部分の概略平面図である。
【図3】同移動体使用の搬送設備における移動体部分の一部切り欠き平面図である。
【図4】同移動体使用の搬送設備における移動体の要部の一部切り欠き側面図である。
【図5】同移動体使用の搬送設備における移動体の要部の一部切り欠き平面図である。
【図6】同移動体使用の搬送設備における移動体の縦断正面図である。
【図7】同移動体使用の搬送設備における左右のカーブ経路部での平面図である。
【符号の説明】
5 一定経路
5a 直線状経路部
5b カーブ経路部
10 機枠
11 レール装置
12 レール
12a ガイド部
12b 垂下部
14 チェーンガイド装置
15 レール
20 移動体
21 本体
22 フレーム体
23 フレーム体
24 フレーム体
25 受動面
27 連結装置
28 縦方向軸
29 縦方向軸
30 被案内装置
31 トロリ本体
32 横方向ピン
33 被支持ローラ
34 縦方向ピン
35 被ガイドローラ
38 横方向ピン
39 横方向ピン
40 受動体
40a 受動面
42 惰走防止体
45 支持部
49 支持具
50 遊転輪(ガイドローラ)
55 乾燥炉(処理部)
60 無端回動式送り装置
63 駆動装置
64 チェーン
69 横ガイドローラ
71 上下ガイドローラ
72 伝動体
80 摩擦式送り装置
82 送りローラ
P 摩擦式送り装置の配設ピッチ
L 移動体の全長
W 被搬送物
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-11-27 
結審通知日 2006-11-30 
審決日 2006-12-21 
出願番号 特願2000-65852(P2000-65852)
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (B61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山内 康明  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 前田 仁
ぬで島 慎二
登録日 2005-08-12 
登録番号 特許第3707338号(P3707338)
発明の名称 移動体使用の搬送設備  
代理人 板垣 孝夫  
代理人 笹原 敏司  
代理人 原田 洋平  
代理人 柳野 隆生  
代理人 森岡 則夫  
代理人 関口 久由  
代理人 笹原 敏司  
代理人 森本 義弘  
代理人 原田 洋平  
代理人 森本 義弘  
代理人 板垣 孝夫  

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