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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2007800032 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A63F
管理番号 1152396
審判番号 無効2005-80148  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-05-19 
確定日 2007-02-14 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3590405号発明「遊技機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3590405号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第3590405号に係る特許出願は、平成9年10月24日に出願された特許出願(特願平9-309735号、以下、「先の出願」という)に基づいて優先権が主張され平成9年11月10日に出願された特許出願(特願平9-323806号)の一部が、特許法第44条第1項の規定により、平成15年12月25日に新たな特許出願とされたものであって、平成16年8月27日にその特許権の設定登録がなされ、平成17年5月19日に、黒田博道より特許無効の審判請求がなされ、平成17年6月6日付けで答弁指令がなされ、その指定期間内である平成17年8月5日付けで答弁書及び訂正請求書が提出されたものである。

第2.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
i.訂正事項a
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1において、「この停止制御手段によって前記複数の入賞ライン上のいずれかに停止表示される図柄が、前記所定の図柄の組合せの一部を構成していることを条件に、前記所定の図柄の組合せを構成する残りの図柄を停止表示する前記可変表示装置の前記列の種類に応じた入賞期待音を発生する入賞期待音発生手段」とあるのを「前記可変表示装置の複数列のうちの1つの列を残して前記複数の入賞ライン上のいずれかに前記停止制御手段によって停止表示される図柄が、前記所定の図柄の組合せの一部を構成していることを条件に、前記所定の図柄の組合せを構成する残りの図柄を停止表示する前記可変表示装置の残りの前記1つの列の種類に応じた入賞期待音を発生する入賞期待音発生手段」と訂正する。
ii.訂正事項b
特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0006】において、「この停止制御手段によって複数の入賞ライン上のいずれかに停止表示される図柄が、所定の図柄の組合せの一部を構成していることを条件に、所定の図柄の組合せを構成する残りの図柄を停止表示する可変表示装置の列の種類に応じた入賞期待音を発生する入賞期待音発生手段」とあるのを「可変表示装置の複数列のうちの1つの列を残して複数の入賞ライン上のいずれかに停止制御手段によって停止表示される図柄が、所定の図柄の組合せの一部を構成していることを条件に、所定の図柄の組合せを構成する残りの図柄を停止表示する可変表示装置の残りの1つの列の種類に応じた入賞期待音を発生する入賞期待音発生手段」と訂正する。

2.訂正の目的、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1に記載の「複数列のうちの1つの列を残し」て「停止表示され」、「残りの前記1つの列」に関して「入賞期待音を発生する」ということを限定するものであり、そして、このことは、特許明細書の段落【0012】中の「可変表示装置を構成する3個のリール3,4,5」、同段落【0060】中の「いずれか2つのリールについて停止制御が行われると・・・未だ停止操作されていない残った最後のリールの種類が・・・第3リール5である場合には・・・入賞期待音Aがスピーカ39から発生させられる」、同段落【0062】中の「最後のリールが第2リール4である場合には・・・入賞期待音Bがスピーカ39から発生させられる」及び同段落【0064】中の「最後のリールが第1リール3である場合には・・・入賞期待音Cがスピーカ39から発生させられる」に記載されているものと認められるから、当該訂正事項aは、特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内において上記限定をしたものであり、したがって、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、上記訂正事項bは、上記訂正事項aに係る特許請求の範囲の請求項1の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

3.まとめ
したがって、上記訂正は、特許法第134条の2第1項並びに同条の2第5項において準用する特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3.本件発明
本件特許第3590405号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正が認められるから、本件の訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される下記のとおりのものである。
【請求項1】種々の図柄を複数列に可変表示する可変表示装置と、この可変表示装置に表示される各列の図柄の組合せを規定する複数の入賞ラインとを備え、この入賞ライン上に所定の図柄の組合せが停止表示されると入賞が発生する遊技機において、
前記可変表示装置の可変表示を遊技者の操作に応じて停止させる可変表示停止手段と、一定範囲で発生する乱数の中から特定した乱数に応じた入賞態様を複数の入賞態様の中から決定する入賞態様決定手段と、この入賞態様決定手段で決定された入賞態様および遊技者の前記可変表示停止手段の操作に基づいて前記可変表示装置に停止表示する図柄を制御する停止制御手段と、前記可変表示装置の複数列のうちの1つの列を残して前記複数の入賞ライン上のいずれかに前記停止制御手段によって停止表示される図柄が、前記所定の図柄の組合せの一部を構成していることを条件に、前記所定の図柄の組合せを構成する残りの図柄を停止表示する前記可変表示装置の残りの前記1つの列の種類に応じた入賞期待音を発生する入賞期待音発生手段を備えたことを特徴とする遊技機。

第4.当事者の求めた審判
1.請求人の主張
請求人は、審判請求書において、下記の甲第1号証乃至甲第4号証を提出して、特許第3590405号の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めることを請求の趣旨とし、本件発明の特許を無効とすべき理由として、以下のように主張する。
(1)特許法第36条第6項第2号違反
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の「この停止制御手段によって前記複数の入賞ライン上のいずれかに停止表示される図柄が、前記所定の図柄の組合せの一部を構成していることを条件に、前記所定の図柄の組合せを構成する残りの図柄を停止表示する前記可変表示装置の前記列の種類に応じた入賞期待音を発生する入賞期待音発生手段」という記載によっては、所定の図柄の組合せの一部を構成する1のリールが停止することにより、停止していない残りのリールが2つという場合が生じ得るが、その場合どのような入賞期待音となるのか不明であり、また、そのような場合についての説明が特許明細書の発明の詳細な説明に記載されていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(2)特許法第29条第2項違反
本件発明は、甲第1号証〔特開平6-114140号公報〕、甲第2号証〔特開平3-114482号公報〕及び甲第3号証〔実願昭58-128412号(実開昭60-37379号)のマイクロフィルム〕に記載された各発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

2.被請求人の主張
被請求人は、答弁書において、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、無効審判の請求人が主張する、無効の理由について、以下のように反論している。
(1)特許法第36条第6項第2号違反について
平成17年8月5日付けの訂正請求により、本件発明は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反しないものとなった。

(2)特許法第29条第2項違反について
本件発明は、請求人が提出した甲第1号証乃至甲第3号証に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5.当審の判断
1.特許法第36条第6項第2号違反について
上記第2.3.において訂正が認められたことにより、特許法第36条第6項第2号の規定に違反する旨の特許無効の理由は解消した。

2.特許法第29条第2項違反について
(1)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証〔特開平6-114140号公報〕には、「スロットマシン」に関して、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0008】図1は、本発明に係るスロットマシンの一例を示す全体正面図である。スロットマシン1の機枠1Aにはカバー部材の一例の前面枠1Bが開閉自在に設けられており、その前面枠の上方部分の前面側の所定箇所には表示窓71が設けられている。この表示窓71には、可変表示装置70(図2参照)によって可変表示される図柄等の識別情報を遊技者に視認させるための可変表示部5L、5C,5Rが設けられている。この左可変表示部5L,中可変表示部5C,右可変表示部5Rは、それぞれに上下3段に識別情報を可変表示可能な大きさに構成されている。前面枠1Bは、通常時は開成状態で施錠されており、遊技場の係員が所定の鍵をドア開閉用鍵穴3aに挿入して操作することにより解錠されて前面枠1Bが開成可能となる。そして、前面枠1Bの開閉状態がドアスイッチ44により検出される。」(第2頁右欄第39行?第3頁左欄第3行)、
(イ)「【0009】遊技者が遊技を行なう場合には、投入指示ランプ19が点灯または点滅しているときに、遊技者が価値物体の一例のコインをコイン投入口18から投入する。この投入指示ランプ19は、コインが3枚投入された時点(後述するボーナスゲームの中においては1枚投入された時点)で消灯する。遊技者がコインを投入してスタートレバー12を押圧操作すれば、可変表示装置70が可変開始されて各可変表示部5L?5Rにより複数種類の識別情報が可変表示される。次に、遊技者が各ストップボタン9L,9C,9Rを押圧操作すれば、それに対応する各可変表示部5L,5C,5Rの可変表示が停止されるように構成されている。なお、遊技者がいずれのストップボタン9L?9Rをも押圧操作しなければ、所定の時間の経過により可変表示装置70が自動的に停止制御される。この可変表示装置70が可変開始されてから停止する1回の可変停止により1ゲームが終了し、可変停止時の表示結果が後述するように特定の識別情報になれば所定の遊技価値が付与可能となる。」(第3頁左欄第4?21行)、
(ウ)「【0010】・・・すなわち、遊技者が1枚のコインを投入してスタートレバー12を押圧操作すればいわゆる1枚賭の遊技となり、1本の有効ラインが有効となり、2枚のコインを投入してスタートレバー12を押圧操作すればいわゆる2枚賭の遊技となり、3本の有効ラインが有効となり、3枚のコインを投入してスタートボタン12を押圧操作すれば、いわゆる3枚賭の遊技となり5本の有効ラインすべてが有効となる。」(第3頁左欄第45行?右欄第2行)、
(エ)「【0039】以上説明したように、1ゲームにおけるゲーム結果に賭る賭数を入力設定するべく遊技者がコインをコイン投入口18から投入するごとに3回を限度としてS58によりランダムカウンタのランダム値Rが読出されて格納される。」(第9頁右欄第39?43行)、
(オ)「【0042】次にS66に進み、格納されているランダム値R(図6参照)を用いて所定の演算を行なう処理がなされる。このランダムカウンタのランダム値Rは、前述したように、1賭けの場合には1つの値であるが2賭けの場合には2つの値を有し、3賭けの場合には3つの値を有する。ゆえに、1賭けの場合にはその1つの値を用いて所定の演算を行なうことになるが、2賭けの場合には2つの値を用いて所定の演算を行ない、3賭けの場合には3つの値を用いて所定の演算を行なうことになる。その所定の演算とは、ランダム値R同士を加算したり減算したり乗じたり除したりあるいは所定の関数に代入して答えを算出したりする演算である。ゆえに、このランダムカウンタのランダム値Rの数が多いほどすなわち1枚賭けよりも2枚賭けあるいは2枚賭けよりも3枚賭けの場合ほどS66による演算結果の値がランダムな値となる。次にS67により、その演算結果を各当選の判定値と比較する処理が行なわれる。この各当選の判定値は、ビッグボーナスゲーム当選の判定値,ボーナスゲーム当選の判定値,小役当選の判定値,再ゲーム当選の判定値の4種類がある。」(第10頁左欄第28?47行)、
(カ)「【0050】一方、S104によりNOの判断がなされた場合にはS108に進み、停止しているいずれか2つのリールにより表示されている図柄がリーチ状態の図柄になっているか否かの判断がなされる。リーチ状態とは、複数の可変表示部5L,5C,5Rのうちのいずれか1つがまだ可変表示している段階で、既に停止している可変表示部の表示結果が、「AAA」,「BBB」等の特定の識別情報の組合せとなる条件を満たす所定表示状態となっている場合を意味する。そして、S108によりリーチ状態でないと判断された場合にはS87に進むが、リーチ状態であると判断された場合にはS109に進み、ビッグボーナス当選フラグまたはボーナス当選フラグがセットされているか否かの判断がなされ、いずれもセットされていない場合にはS87に進むが、いずれかがセットされている場合にはS110に進み、リーチ音をスピーカ28から発生させた後にS87に進む。このリーチ音が発せられることにより、遊技者が現在可変表示している可変表示部の停止時の表示結果次第で前記特定の識別情報の組合せが成立するかもしれないという遊技者の期待感を効果的に盛り上げることができる。なお、スピーカ28からリーチ音を発生させることに加えてあるいはそれに代えてリーチ状態が発生した旨の表示を行なうようにしてもよい。また、ビッグボーナス当選フラグセット時にのみリーチ時の報知を行なうようにしてもよいし、どちらかの当選フラグがセットされている方のリーチ時にのみ報知を行なうようにしてもよい。」(第12頁左欄第6?31行)。
ii.以上の記載及び図面によれば、甲第1号証には、以下の発明(以下、「第1引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「種々の図柄を左可変表示部5L,中可変表示部5C,右可変表示部5Rに可変表示する可変表示装置70と、この可変表示装置70に表示される各可変表示部の図柄の組合せを規定する複数の有効ラインとを備え、この有効ライン上に特定の図柄の組合せが停止表示されると入賞が発生するスロットマシンにおいて、
前記可変表示装置70の可変表示を遊技者の操作に応じて停止させるストップボタン9L、9C、9Rと、ランダムカウンタから読出されたランダム値Rを用いた演算結果を各当選の判定値と比較する処理によりビッグボーナスゲーム当選、ボーナスゲーム当選、小役当選及び再ゲーム当選の中から当選を決定する手段(S76Y、S78Y、S81Y及びS83Y)と、前記当選を決定する手段で決定された当選および遊技者の前記ストップボタン9L、9C、9Rの操作に基づいて前記可変表示装置70に停止表示する図柄を制御する停止制御手段と、前記可変表示装置70の3つの可変表示部のうちの停止しているいずれか2つの可変表示部により表示されている図柄が、リーチ状態の図柄になっていることを条件に、リーチ音を発生するスピーカ28を備えたスロットマシン。」

(2)甲第2号証に記載された発明
甲第2号証〔特開平3-114482号公報〕には、「スロットマシン」に関して、以下の事項が記載されている。
(ア)「複数の回転リール、停止していないひとつの回転リールの絵柄さえ合えば入賞となる旨を点灯することによってプレーヤーに伝えるリーチランプ、及びゲームを行うに際して投入されたメダルの数と停止した回転リールの絵柄とを記憶して演算する制御装置を有し、その制御装置は、全ての回転リールのうちのひとつを残して他の全ての回転リールが停止した際に停止した回転リールの絵柄が入賞の可能性がある組合せとなっていると判断した場合にリーチランプを点灯させる命令を発することを特徴としたスロットマシン。」(第1頁左下欄第5?17行)、
(イ)「具体的には、以下のような場合を入賞としている。1枚のコインを投入してゲームをしたときには、出窓内中央の水平線(以下、「第1ライン」とする)上に特定の組合せの絵柄が並んだ場合にのみ入賞とする。2枚のコインを投入してゲームをしたときには、出窓内の3本の水平線(以下、「第1?3ライン」とする)上のいずれかに特定の組合せの絵柄が並んだ場合に入賞とする。 3枚のコインを投入してゲームをしたときは、第1?3ライン上、左上から右下への直線(以下、「第4ライン」とする)上、又は左下から右上への直線(以下、「第5ライン」とする)上のいずれかに特定の組合せの絵柄が並んだ場合に入賞とする。即ち、2枚のコインを投入してゲームをする場合のほうが1枚のコインを投入してゲームをする場合よりも入賞する確率が3倍となり、3枚のコインを投入してゲームをする場合のほうが1枚のコインを投入してゲームをする場合よりも入賞する確率が5倍となる。」(第2頁左上欄第9行?右上欄第7行)、
(ウ)「(1)しかしながら、従来のスロットマシンには、ゲームの進行上次のような欠点があった。長時間に渡ってゲームをするプレーヤーは、ゲームに対する緊張感が薄れ、3つのストップボタンを押して3つの回転リールの回転を順次止めるという操作を何気なく行ってしまっていた。その結果、2つの回転リールを止めた時点で、残りのひとつの回転リールの絵柄さえ合えば入賞するというチャンスであるにも拘らず、最後のストップボタンを何気なく押してしまうことでその入賞のチャンスを失ってしまうことが多かった。
(2)入賞のチャンスである旨をプレーヤーに伝え、プレーヤーの緊張感を呼び戻すようなスロットマシンであれば、入賞する可能性が高まり、また長時間プレーしても飽きにくいと考えられる。しかし現在のところ、そのようなスロットマシンはなかった。
(3)本発明の解決すべき課題は、全ての回転リールのうちのひとつを残して他の全ての回転リールを止めた時点で 残るひとつの回転リールの絵柄が特定のものであれば入賞となる、という場合に、プレーヤーに入賞のチャンスである旨を伝えることができるように形成することによって、入賞チャンスの増大を図ったスロットマシンを提供することにある。」(第2頁右上欄第14行?左下欄第19行)、
(エ)「以下に、本実施例の作用について説明する。
○1 プレーヤーは、スロットマシンに1?3枚のうちで任意枚数のコインを投入し、スタートボタン50を押して全ての回転リール10を回転させる。このとき制御装置80は、投入されたコインの枚数を記憶する。
○2 プレーヤーが全ての回転リール10のうちのひとつを残して2つの回転リールを停止させる。なお、3つの回転リール10をどの順番で停止させてもよい。2つの回転リール10が停止したとき、制御装置80は、光センサー30からの出力を受けて停止した2つの回転リール10の絵柄が何であるかを認識し、それを記憶する。
○3 制御装置80は、投入されたコインの枚数と停止した回転リール10の絵柄とを演算し、停止した2つの回転リール10の絵柄が入賞の可能性がある組合せとなっていると判断した場合には、リーチランプ70を点灯させる命令を発する。
○4 その命令を受けたリーチランプ70は、点灯することによって、停止していない残りのひとつの回転リール70の絵柄さえ合えば入賞となる旨をプレーヤーに伝える。
本実施例によれば、以下のような効果がある。即ち、3つの回転リール10のうちの2つを止めた時点で 残るひとつの回転リール10の絵柄が特定のものであれば入賞となる、という場合に、リーチランプ70の点灯によってプレーヤーに入賞のチャンスである旨を伝えることができるように形成することによって、入賞チャンスの増大を図ったスロットマシンを提供することができた、という効果がある。」(第4頁右上欄第5行?左下欄第17行)、
(オ)「以下に、本実施例のバリエーションについて説明する。
○1 本実施例のスロットマシンは、3つの回転リールを備えているとして説明したが、本発明に係るスロットマシンの回転リールは複数であればよく、3つには限られない。
○2 本実施例のスロットマシンでは、制御装置80からの命令によってリーチランプ70は「点灯する」として説明したが、「点滅」であってもよく、また音声を伴ってもよい。」(第4頁左下欄第18行?右下欄第9行)、
(カ)「○5 本実施例では、リーチランプ70をストップボタン60とは別に設けたとして説明したが、リーチランプの機能を兼用したストップランプ60を設けることとしてもよい。」(第5頁左上欄第5?8行)、
(キ)第2図(第6頁)には、3つの回転リール10に対応してそれぞれリーチランプ70が設けられていることが示されている。
ii.以上の記載及び図面によれば、甲第2号証には、以下の発明(以下、「第2引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「種々の絵柄を回転表示させる3つの回転リール10と、この3つの回転リール10に表示される各回転リール10の絵柄の組合せを規定する第1?5ラインとを備え、この第1?5ライン上に特定の絵柄の組合せが停止表示されると入賞が発生するスロットマシンにおいて、
前記各回転リール10に対応して、プレーヤーの操作に応じてそれぞれの回転リール10を停止させるストップボタン60と、前記全ての回転リール10のうちのひとつを残して前記第1?5ライン上のいずれかに停止した2つの回転リール10の絵柄が前記入賞の可能性がある組合せとなっていると判断した場合に点灯するリーチランプ70とを備えたスロットマシン。」

(3)甲第3号証に記載された発明
甲第3号証〔実願昭58-128412号(実開昭60-37379号)のマイクロフィルム〕には、「スロットマシン」に関して、以下の事項が記載されている。
「第1及び第2リール3,4が停止された際、その絵柄の組み合わせが、入賞を構成し得るものである場合にはチャイム、ランプなどにより遊戯者に報知させるようにすれば、さらに興趣を高めることができる。」(第5頁第4?8行)。

(4)本件発明と第1引用発明との対比
本件発明と第1引用発明とを対比すると、第1引用発明における「可変表示部」、「有効ライン」、「特定の図柄の組合せ」、「ストップボタン9L、9C、9R」、「ランダムカウンタから読出されたランダム値Rを用いた演算結果」、「当選」、「ビッグボーナスゲーム当選、ボーナスゲーム当選、小役当選及び再ゲーム当選」、「当選を決定する手段(S76Y、S78Y、S81Y及びS83Y)」、「リーチ状態の図柄になっている」、「リーチ音」、「スピーカ28」、「スロットマシン」は、それぞれ、本件発明における「列」、「入賞ライン」、「所定の図柄の組合せ」、「可変表示停止手段」、「一定範囲で発生する乱数の中から特定した乱数」、「入賞態様」、「複数の入賞態様」、「入賞態様決定手段」、「前記所定の図柄の組合せの一部を構成している」、「入賞期待音」、「入賞期待音発生手段」、「遊技機」に相当する。
そうすると、本件発明と第1引用発明は、下記の点で一致並びに相違するものと認められる。
一致点.「種々の図柄を複数列に可変表示する可変表示装置と、この可変表示装置に表示される各列の図柄の組合せを規定する複数の入賞ラインとを備え、この入賞ライン上に所定の図柄の組合せが停止表示されると入賞が発生する遊技機において、
前記可変表示装置の可変表示を遊技者の操作に応じて停止させる可変表示停止手段と、一定範囲で発生する乱数の中から特定した乱数に応じた入賞態様を複数の入賞態様の中から決定する入賞態様決定手段と、この入賞態様決定手段で決定された入賞態様および遊技者の前記可変表示停止手段の操作に基づいて前記可変表示装置に停止表示する図柄を制御する停止制御手段と、前記可変表示装置の複数列のうちの1つの列を残して前記複数の入賞ライン上のいずれかに前記停止制御手段によって停止表示される図柄が、前記所定の図柄の組合せの一部を構成していることを条件に、入賞期待音を発生する入賞期待音発生手段を備えた遊技機。」
相違点.入賞期待音を、本件発明は、所定の図柄の組合せを構成する残りの図柄を停止表示する可変表示装置の残りの1つの列の種類に応じたものとするのに対し、第1引用発明は、該構成のものか明らかでない点。

(5)相違点の検討
i.本件発明の特徴は、「可変表示装置の複数列のうちの1つの列を残して複数の入賞ライン上のいずれかに停止表示される図柄が、所定の図柄の組合せの一部を構成している」状態、すなわち、「リーチ」状態において、可変表示中である「残りの1つの列の種類に応じた」「入賞期待音」を発生することによって、遊技者が「残りの1つの列の種類」を識別できるように報知するものである。
ii.そこで、本件発明と第2引用発明とを対比すると、第2引用発明における「絵柄」、「回転表示」、「3つの回転リール10」、「回転リール10」、「第1?5ライン」、「特定の絵柄の組合せ」、「プレーヤー」、「ストップボタン60」、「全ての回転リール10のうちのひとつを残して」、「停止した2つの回転リール10の絵柄」、「入賞の可能性がある組合せとなっていると判断した場合に」、「スロットマシン」は、それぞれ、本件発明における「図柄」、「可変表示」、「可変表示装置」、「列」、「入賞ライン」、「所定の図柄の組合せ」、「遊技者」、「可変表示停止手段」、「可変表示装置の複数列のうちの1つの列を残して」、「停止表示される図柄」、「所定の図柄の組合せの一部を構成していることを条件に」、「遊技機」に相当する。
そうすると、第2引用例発明には、「種々の図柄を複数列に可変表示する可変表示装置と、この可変表示装置に表示される各列の図柄の組合せを規定する複数の入賞ラインとを備え、この入賞ライン上に所定の図柄の組合せが停止表示されると入賞が発生する遊技機において、前記可変表示装置の可変表示を遊技者の操作に応じて停止させる可変表示停止手段と、前記可変表示装置の複数列のうちの1つの列を残して前記複数の入賞ライン上のいずれかに停止表示される図柄が、前記所定の図柄の組合せの一部を構成していることを条件に点灯するリーチランプ70を備えた遊技機」、すなわち、「リーチ」状態において、残りのひとつの列の図柄さえ合えば入賞するというチャンスであるにも拘らず、最後の可変表示停止手段を何気なく押してしまうことでその入賞のチャンスを失ってしまうことが多かったという従来の遊技機における課題を解決するために、遊技者に入賞のチャンスであることをリーチランプ70を点灯することによって伝える構成によって、遊技者の緊張感を呼び戻すとともに、長時間プレーしても飽きにくいという作用効果を有する遊技機が開示されているものと認められる。
しかして、第2引用例発明に開示される前記遊技機には、各列に対応してリーチランプ70がそれぞれ配置されているところ、リーチ状態において前記各リーチランプ70がどのように点灯されるのかについては必ずしも明らかではないが、遊技者に入賞のチャンスである旨をリーチランプ70を点灯することによって伝えるという発明の目的からすれば、現在可変表示中の残りのひとつの列を遊技者が自ずと注目及び特定できるように、この列に対応するリーチランプ70のみを点灯するように構成することが最も可能性の高い形態として示唆されているものといえる。特に、第2引用発明を認定した甲第2号証に「本実施例では、リーチランプ70をストップボタン60とは別に設けたとして説明したが、リーチランプの機能を兼用したストップランプ60を設けることとしてもよい。」(第5頁左上欄第5?8行)と記載されている事例によれば、遊技者が、リーチランプの補助により、現在可変表示中の残りのひとつの列に対応するストップボタン60の停止操作を行うときに、当該ストップボタン60に付随するリーチランプのみを点灯することにより当該列に対する遊技者の注意を効果的に喚起できることは、当業者にとって自明である。
なお、リーチ状態において、現在可変表示中の残りのひとつの列に対応するリーチランプのみを点灯するようにした遊技機が、本件出願前の刊行物である特開平7-100241号公報(第3頁第4欄段落【0018】)に既に開示されているところである。
iii.また、第1引用発明を認定した甲第1号証に「スピーカ28からリーチ音を発生させることに加えてあるいはそれに代えてリーチ状態が発生した旨の表示を行なうようにしてもよい。」(第12頁左欄第26?27行)、第2引用発明を認定した甲第2号証に「本実施例のスロットマシンでは、制御装置80からの命令によってリーチランプ70は「点灯する」として説明したが、「点滅」であってもよく、また音声を伴ってもよい。」(第4頁右下欄第6?9行)、あるいは、甲第3号証に「第1及び第2リール3,4が停止された際、その絵柄の組み合わせが、入賞を構成し得るものである場合にはチャイム、ランプなどにより遊戯者に報知させるようにすれば、さらに興趣を高めることができる。」(第5頁第4?8行)と記載されているように、リーチ状態が発生した旨を「音」あるいは「表示ランプ」により報知することが互換的手段として技術常識であるところ、遊技機の技術分野において、リーチの種類に応じた異なる入賞期待音を発生することによって、遊技機が如何なるリーチ状態にあるかを識別できるようにすることは、周知技術(例えば、特開平5-317501号公報(第12頁第22欄段落【0069】)、特開平8-182825号公報(第8頁第13欄段落【0035】)、特開平8-266709号公報(第9頁第15欄段落【0085】)、特開平8-322980号公報(第9頁第16欄段落【0069】?【0072】))である。
iv.そうすると、スロットマシンという第1引用発明と同種の遊技機に属する第2引用発明に、現在可変表示中の残りのひとつの列が特定されるように、この列に対応するリーチランプ70のみを点灯するようにした遊技機が示唆され、また、遊技機の技術分野において、遊技機が如何なるリーチ状態にあるかを識別できるようにリーチの種類に応じた異なる入賞期待音によって報知することが周知技術であることを考慮すると、第1引用発明に示される、リーチ状態において入賞期待音を発生する構成において、第2引用発明に示唆される、現在可変表示中の残りのひとつの列に対応するリーチランプ70のみを点灯する構成の互換的手段として、前記周知技術に示される、リーチの種類に応じた異なる入賞期待音を発生する構成を適用することで、現在可変表示中の残りのひとつの列の種類に応じた入賞期待音を発生するようにして、前記相違点に係る本件発明のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
v.また、本件発明の作用効果は、第1引用発明及び第2引用発明に並びに前記周知技術に基づいて、当業者が容易に予測できるものである。

(6)まとめ
よって、本件発明は、第1引用発明及び第2引用発明に並びに前記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

3.むすび
以上のとおり、本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その出願日前に公知の刊行物に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、その特許は、同法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
遊技機
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変表示装置に可変表示される種々の図柄が入賞ライン上に所定の組合せで停止表示されると入賞が生じる遊技機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の遊技機としては例えばスロットマシンがある。一般的なスロットマシンでは前面パネルの背後に3個のリールが3列に並設されている。各リールの外周には種々の図柄が描かれており、これら図柄は前面パネルに形成された各窓を介して観察される。この窓には5本の入賞ラインが記されており、スロットマシン遊技は、いずれかのこの入賞ライン上に所定の図柄の組み合わせが揃うか否かによって行われる。
【0003】
つまり、各リールは遊技者によるスタートレバーの操作に応じて回転し、各窓には図柄が列方向に回転移動表示される。各リールが一定速度に達すると各リールに対応して設けられた各ストップスイッチの操作は有効となる。遊技者は移動する図柄を観察しながら各ストップスイッチを操作し、各リールの回転を停止させ、所望の図柄をいずれかの入賞ライン上に停止表示させようとする。各リールは各ストップスイッチの操作タイミングに応じてその回転が停止する。この停止時にいずれかの入賞ライン上に所定の図柄組み合わせが表示されると、その図柄組み合わせに応じた入賞が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の遊技機では、入賞ライン上に揃わせる所定図柄の組合せの種類に着眼して遊技されており、所定図柄が揃えられる入賞ライン上に最後に図柄を停止表示するリール列の種類については余り注目されずに遊技されていた。
【0005】
本発明は、注目されていなかったこのリール列の種類についても遊技者の注目,関心を集め、遊技の興趣に幅を持たせ、また、遊技機の操作性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このために本発明は、種々の図柄を複数列に可変表示する可変表示装置と、この可変表示装置に表示される各列の図柄の組合せを規定する複数の入賞ラインとを備え、この入賞ライン上に所定の図柄の組合せが停止表示されると入賞が発生する遊技機において、可変表示装置の可変表示を遊技者の操作に応じて停止させる可変表示停止手段と、一定範囲で発生する乱数の中から特定した乱数に応じた入賞態様を複数の入賞態様の中から決定する入賞態様決定手段と、この入賞態様決定手段で決定された入賞態様および遊技者の可変表示停止手段の操作に基づいて可変表示装置に停止表示する図柄を制御する停止制御手段と、可変表示装置の複数列のうちの1つの列を残して複数の入賞ライン上のいずれかに停止制御手段によって停止表示される図柄が、所定の図柄の組合せの一部を構成していることを条件に、所定の図柄の組合せを構成する残りの図柄を停止表示する可変表示装置の残りの1つの列の種類に応じた入賞期待音を発生する入賞期待音発生手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
本構成によれば、最後の図柄を入賞ライン上に停止表示させる可変表示列の種類に応じた入賞期待音が、入賞期待音発生手段によって発生させられる。遊技者は、好みの入賞期待音が発生する可変表示列に、所定図柄の組合せの最後の図柄を停止表示させ、その入賞期待音を聞くことが出来、遊技の楽しみが拡がる。
【発明の効果】
【0008】
このような本発明によれば、最後の図柄を入賞ライン上に停止表示させる可変表示列の種類に応じた入賞期待音が、入賞期待音発生手段によって発生させられる。遊技者は、好みの入賞期待音が発生する可変表示列に、所定図柄の組合せの最後の図柄を停止表示させ、その入賞期待音を聞くことが出来、遊技の楽しみが拡がる。
【0009】
すなわち本発明によれば、従来注目されていなかったリール列の種類について、遊技者の注目,関心を集められるようになり、遊技の興趣に幅が持たせられ、また、遊技機の操作性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明による遊技機をスロットマシンに適用した第1の実施形態について説明する。
【0011】
図1は本実施形態によるスロットマシン1の正面図である。
【0012】
スロットマシン1の前面パネル2の背後には可変表示装置を構成する3個のリール3,4,5が回転自在に設けられている。各リール3,4,5の外周面には複数種類の図柄(以下、シンボルという)から成るシンボル列が描かれている。これらシンボルはスロットマシン1の正面の表示窓6,7,8を通してそれぞれ3個ずつ観察される。また、この表示窓6,7,8の下方右側には、遊技者がメダルを入れるための投入口9が設けられている。
【0013】
表示窓6?8には、横3本(中央L1および上下L2A,L2B)および斜め2本(斜め右下がりL3A,斜め右上がりL3B)の入賞ラインが記されている。ゲーム開始に先立ち、遊技者がメダル投入口9に1枚のメダルを投入したときは、各リール3?5上にある中央の入賞ラインL1だけが図2(a)に示すように有効化される。また、2枚のメダルを投入口9に投入したときはこれに上下の入賞ラインL2A,L2Bが加わり、横3本の入賞ラインL1,L2AおよびL2Bが同図(b)に示すように有効化される。また、3枚のメダルを投入口9に投入したときは全ての入賞ラインL1,L2A,L2B,L3AおよびL3Bが同図(c)に示すように有効化される。
【0014】
なお、同図における丸印は各リール3?5上に描かれたシンボルを表している。このような入賞ラインの有効化は、各入賞ラインの端部に配置された有効化ライン表示ランプ23(図1参照)が点灯することにより、遊技者に表示される。
【0015】
また、表示窓6?8の下方左側には、1BETスイッチ10,2BETスイッチ11およびマックスBETスイッチ12が設けられている。クレジット数表示部13にメダルがクレジットされている場合には、メダル投入口9へのメダル投入に代え、これら1BETスイッチ10,2BETスイッチ11およびマックスBETスイッチ12の各押ボタン操作により、1回のゲームにそれぞれ1枚,2枚および3枚のメダルが賭けられる。クレジット数表示部13は、表示する数値の桁数に応じた個数の7セグメントLEDで構成されており、現在クレジットされているメダル数を表示する。
【0016】
これらBETスイッチ10?12の下方にはクレジット/精算切換スイッチ(C/Pスイッチ)14およびスタートレバー15が設けられており、スタートレバー15の右方の機器中央部には停止ボタン16,17,18が設けられている。C/Pスイッチ14の押しボタン操作により、メダルのクレジット/払い出し(PLAY CREDIT/PAY OUT)を切り換えることが出来る。
【0017】
また、スタートレバー15のレバー操作により、リール3,4,5の回転が一斉に開始する。停止ボタン16,17,18は、各リール3,4,5に対応して配置されており、これら各リール3?5の回転が一定速度に達したとき操作が有効化され、遊技者の押しボタン操作に応じて各リールの回転を停止させる。
【0018】
また、スロットマシン1の正面下部には透音孔19およびメダル受皿20が設けられている。透音孔19は、機器内部に収納されたスピーカから発生した音を外部へ出すものである。メダル受皿20はメダル払出口21から払い出されるメダルを貯めるものである。また、スロットマシン1の正面上部には、各入賞に対してどれだけのメダルが払い出されるかが示されている配当表示部22が設けられている。
【0019】
また、各リール3,4,5の右方の前面パネル2には液晶表示部24が設けられている。この液晶表示部24は各リール3,4,5の回転表示を模擬的に表示するディスプレイ装置である。
【0020】
図3は、本実施形態のスロットマシン1における遊技処理動作を制御する制御部と、これに電気的に接続された周辺装置(アクチュエータ)とを含む回路構成を示している。
【0021】
制御部はマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)30を主な構成要素とし、これに乱数サンプリングのための回路を加えて構成されている。マイコン30は、予め設定されたプログラムに従って制御動作を行うCPU31と、記憶手段であるROM32およびRAM33を含んで構成されている。CPU31には、基準クロックパルスを発生するクロックパルス発生回路34および分周器35と、一定範囲の乱数を発生する乱数発生器36および発生した乱数の1つを特定する乱数サンプリング回路37が接続されている。
【0022】
マイコン30からの制御信号により動作が制御される主要なアクチュエータとしては、リール3,4,5を回転駆動するステッピングモータ3M,4M,5M、メダルを収納するホッパ38、液晶表示部24およびスピーカ39がある。これらはそれぞれモータ駆動回路40、ホッパ駆動回路41、表示駆動回路42およびスピーカ駆動回路43によって駆動される。これら駆動回路40?43は、マイコン30のI/Oポートを介してCPU31に接続されている。各ステッピングモータ3M?5Mはモータ駆動回路40によって1-2相励磁されており、400パルスの駆動信号が供給されるとそれぞれ1回転する。
【0023】
また、マイコン30が制御信号を生成するために必要な入力信号を発生する主な入力信号発生手段としては、スタートレバー15の操作を検出するスタートスイッチ15Sと、メダル投入口9から投入されたメダルを検出する投入メダルセンサ9Sと、前述したC/Pスイッチ14とがある。また、図示しないリール回転センサからの出力パルス信号を受けて各リール3,4,5の回転位置を検出するリール位置検出回路44もある。リール回転センサおよびリール位置検出回路44は同図では各リール3,4,5の駆動機構に含まれている。
【0024】
リール回転センサは各リール3,4,5が一回転する毎にリセットパルスを発生する。このリセットパルスはリール位置検出回路44を介してCPU31に与えられる。RAM33内には、各リール3?5について、一回転の範囲内における回転位置に対応した計数値が格納されており、CPU31はリセットパルスを受け取ると、RAM33内に形成されたこの計数値を“0”にクリアする。このクリア処理により、各シンボルの移動表示と各ステッピングモータ3M?5Mの回転との間に生じるずれが、一回転毎に解消されている。
【0025】
さらに、上記の入力信号発生手段として、リール停止信号回路45と、払出し完了信号発生回路46とがある。リール停止信号回路45は、停止ボタン16,17,18が押された時に、対応するリール3,4,5を停止させる信号を発生する。また、メダル検出部47はホッパ38から払い出されるメダル数を計数し、払出し完了信号発生回路46は、このメダル検出部47から入力した実際に払い出しのあったメダル計数値が所定の配当枚数データに達した時に、メダル払い出しの完了を知らせる信号をCPU31へ出力する。
【0026】
ROM32には、このスロットマシン1で実行されるゲーム処理の手順がシーケンスプログラムとして記憶されている他、入賞判定テーブル,シンボルテーブルおよび入賞シンボル組合せテーブル等がそれぞれ区分されて格納されている。
【0027】
入賞判定テーブルは、乱数発生器36で発生する一定範囲の乱数を各入賞態様に区画するデータを記憶している。サンプリング回路37で特定された1つの乱数値はこの区画のどのグループに属するかが判定され、入賞態様が決定される。
【0028】
また、シンボルテーブルは図4に概念的に示される。このシンボルテーブルは各リール3?5の回転位置とシンボルとを対応づけるものであり、シンボル列を記号で表したものである。このシンボルテーブルにはコードナンバに対応したシンボルコードが各リール3?5毎に記憶されている。コードナンバは、前述したリセットパルスが発生する回転位置を基準として各リール3?5の一定の回転ピッチ毎に順次付与されている。シンボルコードはそれぞれのコードナンバ毎に対応して設けられたシンボルを示している。
【0029】
また、入賞シンボル組合せテーブルには、配当表示部22に示される各入賞シンボル組合せのシンボルコードや、特定ゲーム発生のフラグが成立していることを遊技者に示唆する「リーチ目」を構成するシンボル組合せのシンボルコード、各入賞を表す入賞判定コード、入賞メダル配当枚数等が記憶されている。この入賞シンボル組合せテーブルは、第1リール3,第2リール4、第3リール5の停止制御時、および全リール停止後の入賞確認を行うときに参照される。
【0030】
次に、本実施形態においてマイコン30で制御される遊技機の動作について説明する。
【0031】
図5はこの遊技処理の概略を示すフローチャートである。
【0032】
まず、CPU31により、メダルBETがなされたかどうかが判別される(ステップ101参照)。この判別は、メダル投入口9にメダルが投入され、メダルセンサ9Sからの検出信号入力があった場合、あるいはBETスイッチ10,11,12からの信号入力があった場合に“YES”となる。その場合、次にスタートレバー15の操作によりスタートスイッチ15Sからのスタート信号入力があったか否かが判別される(ステップ102)。
【0033】
この判別が“YES”の場合、CPU31によって入賞判定(確率抽選処理)が行われ(ステップ103)、引き続いてリール3,4,5の回転処理が行われる(ステップ104)。入賞判定は、スタートレバー15が操作された後の適宜のタイミングに行われ、乱数発生器36で発生し、サンプリング回路37によって特定された1つの乱数値が、入賞判定テーブルにおいてどの入賞グループに属する値になっているか判断されることによって行われる。
【0034】
この入賞判定の結果セットされた入賞フラグの種類に応じてリール3,4,5の停止制御が行われる(ステップ105)。次に、リール停止時の表示が所定の入賞シンボル組合せであるか否かが、入賞シンボル組合せテーブルを参照して判断される(ステップ106)。入賞が得られなかったときには“NO”となって処理は初めのステップ101に戻る。また、入賞判定の結果リプレイゲームであるときは処理はステップ102のスタートレバー15の操作待ち処理に戻る(ステップ107)。リプレイゲームでない入賞のときには所定枚数のメダルがホッパ38によって払い出される(ステップ108)。
【0035】
次に、上述したST105のリール停止制御について、図6および図7のフローチャートを参照して説明する。
【0036】
遊技者による各停止ボタン16?18の操作は、前述したように、リール停止信号回路45を介してCPU31によって検出されている(図6,ステップ111参照)。3つの停止ボタン16?18のうちのいずれかについてON操作があり、1番目の停止ボタンのON操作が検出された場合には、リール3?5のうちのその停止ボタンに対応するいずれか1つのリールについて、停止制御される(ステップ112)。
【0037】
この停止制御は、CPU31によってモータ駆動回路40が制御され、操作された停止ボタンに対応するいずれかのステッピングモータ3M?5Mへの駆動パルス供給が停止されることによって行われる。この際、停止操作されたリールが窓6?8に停止表示するシンボルの種類は、シンボルテーブルを基にして、ステッピングモータ3M?5Mに供給された駆動パルス数から知ることが出来る。停止表示されたシンボルの種類はRAM33の所定領域にシンボルコードとして一時記憶される。
【0038】
引き続いて、2番目の停止ボタンのON操作があったか否かが検出され(ステップ113)、このON操作が検出された場合には、CPU31により、その停止ボタンに対応するいずれか1つのリールについて同様に停止制御される(ステップ114)。停止操作されたこの2番目のリールがいずれかの窓6?8に停止表示するシンボルの種類も、同様にしてRAM33の所定領域にシンボルコードとして一時記憶される。
【0039】
このようにして3つのリール3?5の中の2つのリールが停止制御され、これら2つの各リールが停止表示したシンボルコードがRAM33の所定領域にストアされると、CPU31によってヒットフラグ発生テーブルが作成される。つまり、既に固定された2つのリールの組合せシンボルに対し、残りの1つのリールのどのシンボルが組み合わされると、どの入賞ラインにどのような入賞が発生するかがテーブルとしてRAM33の所定領域に表される。このために、2つのリールによって既に決定されたシンボルに対し、残りのリールが表示する全てのシンボルが組み合わされ、有効化された各入賞ライン毎に入賞の有無が判定される。
【0040】
図8はこのようにして作成されたヒットフラグ発生テーブルの一例を示しており、第1リール3および第2リール4が既に停止制御され、最後に第3リール5が停止制御される場合を示している。第1リール3および第2リール4が停止表示しているシンボルは同テーブルでシンボルコードとして表されており、これらシンボルは、有効化入賞ラインL1またはL2Aのいずれかにおいて入賞シンボル組合せの一部を構成している。これら有効化入賞ラインL1,L2Aに残りの第3リール5が停止表示する各シンボルコードが組み合わされ、各入賞ライン毎に入賞の有無が判定される。
【0041】
この判定結果は、入賞(ヒット)を発生させるシンボル組合せにヒットフラグが立つことによって示され、また、このヒットフラグの種類によって大ヒット,中ヒット,小ヒット,入賞なしといった入賞態様が表される。従って、このヒットフラグ発生テーブルが作成されることにより、残りの1つのリールがどのシンボルを停止表示させれば、どのような入賞がどの有効化入賞ライン上に発生するかを事前に知ることが出来る。
【0042】
次に、このヒットフラグ発生テーブルが参照され、有効化された入賞ラインL1に入賞が発生する期待があるか否かが判断される(ステップ115)。入賞ラインL1に入賞期待がある場合には、スピーカ駆動回路43がCPU31によって制御され、スピーカ39から入賞期待音Aが発生させられる(ステップ116)。この入賞期待音Aは機器前面下方の透音孔19を通って遊技者に伝えられる。ここで、スピーカ駆動回路43,スピーカ39およびCPU31は入賞期待音発生手段を構成している。
【0043】
例えば、図9(a)に示すように、有効化された入賞ラインL1上に、第2のリール4および第3のリール5のシンボル「7」が停止表示され、第1のリール3が回転しているときに、この入賞期待音Aが発生する。
【0044】
また、入賞ラインL1に入賞期待が無い場合には、次に有効化された入賞ラインL2Aに入賞が発生する期待があるか否かが、ヒットフラグ発生テーブルに基づいて判断される(ステップ117)。入賞ラインL2Aに入賞期待がある場合には、スピーカ駆動回路43がCPU31によって制御され、入賞期待音Aと異なる入賞期待音Bがスピーカ39から発生させられる(ステップ118)。この入賞期待音Bも透音孔19を通って遊技者に伝えられる。
【0045】
例えば、図9(b)に示すように、有効化された入賞ラインL2A上に、第1のリール3および第2のリール4のシンボル「サンダーV」が停止表示され、第3のリール5が回転しているときに、この入賞期待音Bが発生する。
【0046】
また、入賞ラインL2Aに入賞期待が無い場合には、次に有効化された入賞ラインL2Bに入賞が発生する期待があるか否かが、ヒットフラグ発生テーブルに基づいて判断される(図7,ステップ119参照)。入賞ラインL2Bに入賞期待がある場合には、スピーカ駆動回路43がCPU31によって制御され、入賞期待音A,Bと異なる入賞期待音Cがスピーカ39から発生させられる(ステップ120)。この入賞期待音Cも透音孔19を通って遊技者に伝えられる。
【0047】
例えば、図9(c)に示すように、有効化された入賞ラインL2B上に、第1のリール3および第3のリール5のシンボル「7」が停止表示され、第2のリール4が回転しているときに、この入賞期待音Cが発生する。
【0048】
また、入賞ラインL2Bに入賞期待が無い場合には、次に有効化された入賞ラインL3Aに入賞が発生する期待があるか否かが、ヒットフラグ発生テーブルに基づいて判断される(ステップ121)。入賞ラインL3Aに入賞期待がある場合には、スピーカ駆動回路43がCPU31によって制御され、入賞期待音A,B,Cと異なる入賞期待音Dがスピーカ39から発生させられる(ステップ122)。この入賞期待音Dも透音孔19を通って遊技者に伝えられる。
【0049】
例えば、図9(d)に示すように、有効化された入賞ラインL3A上に、第1のリール3および第3のリール5のシンボル「サンダーV」が停止表示され、第2のリール4が回転しているときに、この入賞期待音Dが発生する。
【0050】
また、入賞ラインL3Aに入賞期待が無い場合には、次に有効化された入賞ラインL3Bに入賞が発生する期待があるか否かが、ヒットフラグ発生テーブルに基づいて判断される(ステップ123)。入賞ラインL3Bに入賞期待がある場合には、スピーカ駆動回路43がCPU31によって制御され、入賞期待音A,B,C,Dと異なる入賞期待音Eがスピーカ39から発生させられる(ステップ124)。この入賞期待音Eも透音孔19を通って遊技者に伝えられる。
【0051】
例えば、図9(e)に示すように、有効化された入賞ラインL3B上に、第2のリール4および第3のリール5のシンボル「サンダーV」が停止表示され、第1のリール3が回転しているときに、この入賞期待音Eが発生する。
【0052】
その後、3つのリール3?5のうちの残りの1つのリールについて、停止ボタン操作がされたか否かが判断される(ステップ125)。この3番目の停止ボタンのON操作が検出された場合には、CPU31により、その停止ボタンに対応するいずれか1つのリールについて、停止制御される(ステップ126)。そして、この最後のリールによっていずれかの窓6?8に停止表示されるシンボルの種類も、RAM33の所定領域にシンボルコードとして一時記憶される。
【0053】
この結果、RAMの所定領域には、各窓6?8に表示される合計9個の全てのシンボルがシンボルコードとして一時記憶される。前述した入賞判定処理(図5,ステップ106参照)では、この記憶データが参照され、有効化された各入賞ライン毎に入賞の有無が判断される。
【0054】
なお、上述した本実施形態では全ての入賞ラインが有効化されたことを前提に説明したが、有効化されていない入賞ラインがある場合には、その入賞ラインについての入賞期待の判断は飛ばされて処理される。
【0055】
このような本実施形態によれば、入賞を発生させる所定シンボルの組合せが揃いそうになっている入賞ラインの種類に応じた入賞期待音A?Eが、スピーカ39から発生させられる。遊技者はこの入賞期待音A?Eから、複数の入賞ラインL1,L2A,L2B,L3A,L3Bのうちのどの入賞ラインに所定シンボルが揃いそうになっているかを識別することが出来る。従って、遊技者は、どの入賞ラインに入賞が発生しそうな遊技状態になっているか、ということを速やかに把握できるようになり、スロットマシン1の操作性は向上する。
【0056】
また、遊技者は、入賞期待音A?Eの中の好みの入賞期待音が発生する入賞ライン上に所定シンボルの組合せを停止表示させることにより、好みの入賞期待音を楽しむことが出来る。
【0057】
次に、本発明による遊技機を上述したスロットマシン1に適用した第2の実施形態について説明する。
【0058】
本実施形態と上記の第1の実施形態との相違は、図5のステップ105に示すリール停止制御処理が相違している点にあり、その他の構成は上記実施形態と同様である。つまり、本実施形態における各リール3?5の停止制御処理は、図10および図11のフローチャートに示される。
【0059】
本処理においても、上述したステップ111?114と同様に、まず、1番目の停止ボタンがON操作されたか否かが判断され(図10,ステップ131参照)、このボタン操作が検出された場合には対応するいずれかのリール3?5について停止制御が行われる(ステップ132)。引き続いて2番目の停止ボタンがON操作されたか否かが判断され(ステップ133)、このボタン操作が検出された場合には、対応するいずれかのリール3?5について停止制御が行われる(ステップ134)。
【0060】
いずれか2つのリールについて停止制御が行われると、上述したヒットフラグ発生テーブルが作成され、どの入賞ラインにどのような入賞が発生するかが調べられる。ここで、ある入賞ラインに入賞が発生する期待があることが分かると、次に、未だ停止操作されていない残った最後のリールの種類が、右側の第3リール5であるか否かが判断される(ステップ135)。この最後のリールが第3リール5である場合には、スピーカ駆動回路43がCPU31によって制御され、入賞期待音Aがスピーカ39から発生させられる(ステップ136)。
【0061】
例えば、図12(a)に示すように、第1リール3および第2リール4のシンボル「7」が入賞ラインL3B上に揃って入賞期待があり、停止操作されていない最後のリールが第3リール5である場合には、この入賞期待音Aが発生する。
【0062】
また、最後に残ったリールが第3リール5でない場合には、次に、この最後のリールが第2リール4であるか否かが判断される(ステップ137)。この最後のリールが第2リール4である場合には、スピーカ駆動回路43がCPU31によって制御され、入賞期待音Aと異なる入賞期待音Bがスピーカ39から発生させられる(ステップ138)。
【0063】
例えば、図12(b)に示すように、第1リール3および第3リール5のシンボル「7」が入賞ラインL2B上に揃って入賞期待があり、停止操作されていない最後のリールが第2リール4である場合には、この入賞期待音Bが発生する。
【0064】
また、最後に残ったリールが第2リール4でない場合には、次に、この最後のリールが第1リール3であるか否かが判断される(図11,ステップ139参照)。この最後のリールが第1リール3である場合には、スピーカ駆動回路43がCPU31によって制御され、入賞期待音A,Bと異なる入賞期待音Cがスピーカ39から発生させられる(ステップ140)。
【0065】
例えば、図12(c)に示すように、第2リール4および第3リール5のシンボル「7」が入賞ラインL1上に揃って入賞期待があり、停止操作されていない最後のリールが第1リール3である場合には、この入賞期待音Cが発生する。
【0066】
次に、3つのリール3?5のうちの最後のリールについて、停止ボタン操作がされたか否かが判断される(ステップ141)。この3番目の停止ボタンのON操作が検出された場合には、CPU31により、その停止ボタンに対応する最後のリールについて、停止制御される(ステップ142)。その後、前述した入賞判定処理(図5,ステップ106参照)が行われ、有効化された各入賞ライン毎に入賞の有無が判断される。
【0067】
このような本実施形態によれば、最後のシンボルを入賞ライン上に停止表示させるリールの種類に応じた入賞期待音A?Cが、スピーカ39から発生させられる。遊技者は、この入賞期待音A?Cの中の好みの入賞期待音が発生するリールに、最後のシンボルを停止表示させる操作をすることにより、好みの入賞期待音を楽しむことが出来る。
【0068】
次に、本発明による遊技機を前述したスロットマシン1に適用した第3の実施形態について説明する。
【0069】
本実施形態と前述した第1の実施形態との相違も、図5のステップ105に示すリール停止制御処理が相違している点にあり、その他の構成は前述した第1の実施形態と同様である。つまり、本実施形態における各リール3?5の停止制御処理は、図13および図14のフローチャートに示される。
【0070】
本処理においても、前述したステップ111?114と同様に、まず、1番目の停止ボタンがON操作されたか否かが判断され(図13,ステップ141参照)、このボタン操作が検出された場合には対応するいずれかのリール3?5について停止制御が行われる(ステップ142)。引き続いて2番目の停止ボタンがON操作されたか否かが判断され(ステップ143)、このボタン操作が検出された場合には、対応するいずれかのリール3?5について停止制御が行われる(ステップ144)。
【0071】
いずれか2つのリールについて停止制御が行われると、前述したヒットフラグ発生テーブルが作成され、どの入賞ラインにどのような入賞が発生するかが調べられる。ここで、ある入賞ラインに入賞が発生する期待があることが分かると、次に、入賞が発生する期待のある入賞ラインの本数が1本であるか否かが判断される(ステップ145)。入賞期待のある入賞ラインの本数が1本である場合には、スピーカ駆動回路43がCPU31によって制御され、入賞期待音Aがスピーカ39から発生させられる(ステップ146)。
【0072】
例えば、図15(a),(b),(c)に示すように、1本の入賞ラインL2A,L3A,L3Bにそれぞれシンボル「サンダーV」が揃う入賞期待がある場合には、この入賞期待音Aが発生する。
【0073】
また、入賞期待のある入賞ラインの本数が1本でない場合には、次に、入賞期待のある入賞ラインの本数が2本であるか否かが判断される(ステップ147)。この入賞ラインの本数が2本である場合には、スピーカ駆動回路43がCPU31によって制御され、入賞期待音Aと異なる入賞期待音Bがスピーカ39から発生させられる(ステップ148)。
【0074】
例えば、図16(a)に示すように、2本の入賞ラインL1,L3B上にそれぞれシンボル「サンダーV」が揃う入賞期待がある場合には、この入賞期待音Bが発生する。同様に同図(b)に示すように、2本の入賞ラインL3A,L2B上にそれぞれシンボル「サンダーV」が揃う入賞期待がある場合にも、この入賞期待音Bが発生する。
【0075】
また、入賞期待のある入賞ラインの本数が2本でない場合には、次に、入賞期待のある入賞ラインの本数が3本であるか否かが判断される(図14,ステップ149参照)。この入賞ラインの本数が3本である場合には、スピーカ駆動回路43がCPU31によって制御され、入賞期待音A,Bと異なる入賞期待音Cがスピーカ39から発生させられる(ステップ150)。
【0076】
例えば、図17に示すように、3本の入賞ラインL3A,L1,L3B上にそれぞれシンボル「サンダーV」が揃う入賞期待がある場合には、この入賞期待音Cが発生する。
【0077】
次に、3つのリール3?5のうちの最後のリールについて、停止ボタン操作がされたか否かが判断される(ステップ151)。この3番目の停止ボタンのON操作が検出された場合には、CPU31により、その停止ボタンに対応する最後のリールについて、停止制御される(ステップ152)。その後、前述した入賞判定処理(図5,ステップ106参照)が行われ、有効化された各入賞ライン毎に入賞の有無が判断される。
【0078】
このような本実施形態によれば、入賞を発生する所定シンボルの組合せが揃いそうになっている入賞ラインの本数に応じた入賞期待音A?Cが、スピーカ39から発生させられる。遊技者はこの入賞期待音A?Cから、所定シンボルが揃いそうになっている入賞ラインの本数を識別することが出来る。
【0079】
また、遊技者は、識別した入賞ラインの本数に応じて入賞の可能性の度合いを把握することが出来、入賞度合いに応じた遊技操作を行うことが可能になる。つまり、入賞期待のある入賞ラインの本数が少ない場合には、最後の停止ボタンのON操作を真剣に行わなければならないが、入賞期待のある入賞ラインの本数が多い場合には、最後の停止ボタンのON操作は余裕を持って行える。
【0080】
従って、遊技者は、余裕を持って遊技を行える遊技状態かといったことを速やかに把握できるようになり、スロットマシン1の操作性は向上する。
【0081】
また、例えば図16(a)に示すように、入賞期待のある入賞ラインがL1,L3Bと複数あり、最後に停止させる第3リール5の最上段のコマまたは中央のコマにシンボルを揃えると入賞が発生する場合には、入賞を発生させ易くなる。
【0082】
つまり、この第3リール5の停止制御処理では、CPU31によって4コマ分の引き込み制御処理が行われ、停止ボタンを操作するタイミングが4コマ分ずれても、シンボル「サンダーV」が最上段のコマに停止表示されるように第3リール5が停止制御される。しかし、同図(a)に示すこの場合には、さらに1コマ分停止ボタンを操作するタイミングがずれても、中央のコマに「サンダーV」が停止表示され、入賞が発生する。すなわち、入賞を発生させ易くなっている。
【0083】
従って、この状態を入賞期待音Bの報知によって識別することにより、最後の停止ボタンの操作は余裕を持って行えることが分かる。
【0084】
なお、上記各実施形態では、可変表示装置が3個のリール3?5によって構成されている場合について説明したが、可変表示装置はこの構成に限定されるものではない。例えば、液晶表示装置,プラズマディスプレイ装置,CRT,ドット式表示装置,7セグメントLED,エレクトロルミネセンス表示装置等により、可変表示装置を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
また、上記各実施形態においては本発明による遊技機をスロットマシンに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、上述した可変表示装置を有するパチンコ機といった弾球遊技機や、その他のアミューズメント機器に適用してもよい。
【0086】
このような各構成で遊技機を実現した場合においても、上記各実施形態と同様な効果が奏される。
【0087】
以上説明したように本発明によれば、所定図柄の組合せが揃いそうになっている入賞ラインの種類に応じた入賞期待音が、入賞期待音発生手段によって発生させられる。遊技者はこの入賞期待音から、複数の入賞ラインのうちのどの入賞ラインに所定図柄が揃いそうになっているかを識別することが出来る。また、遊技者は、好みの入賞期待音が発生する入賞ライン上に所定図柄を停止表示させ、その入賞期待音を聞くことが出来、遊技の楽しみが拡がる。
【0088】
また、本発明によれば、最後の図柄を入賞ライン上に停止表示させる可変表示列の種類に応じた入賞期待音が、入賞期待音発生手段によって発生させられる。遊技者は、好みの入賞期待音が発生する可変表示列に、所定図柄の組合せの最後の図柄を停止表示させ、その入賞期待音を聞くことが出来、遊技の楽しみが拡がる。
【0089】
また、本発明によれば、所定図柄の組合せが揃いそうになっている入賞ラインの本数に応じた入賞期待音が、入賞期待音発生手段によって発生させられる。遊技者はこの入賞期待音から、所定図柄が揃いそうになっている入賞ラインの本数を識別することが出来る。また、遊技者は、識別した入賞ラインの本数に応じて入賞の可能性の度合いを把握することが出来、入賞度合いに応じた遊技操作を行うことが可能になる。
【0090】
すなわち本発明によれば、従来注目されていなかった入賞ラインそのものの種類や、入賞ラインの本数、リール列の種類について、遊技者の注目,関心を集められるようになり、遊技の興趣に幅が持たせられ、また、遊技機の操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の各実施形態によるスロットマシンの外観を示す正面図である。
【図2】図1に示すスロットマシンの表示窓に記された入賞ラインが順次有効化される状態を示す図である。
【図3】図1に示すスロットマシンの主要な制御回路構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示すスロットマシンの遊技処理に用いられるシンボルテーブルを概念的に示す図である。
【図5】図1に示すスロットマシンの遊技処理の概略を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施形態によるスロットマシンにおけるリールの停止制御処理を示す第1のフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施形態によるスロットマシンにおけるリールの停止制御処理を示す第2のフローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施形態によるスロットマシンの遊技処理に用いられるヒットフラグ発生テーブルの一例を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施形態によるスロットマシンにおいて入賞期待音が発生する入賞ラインの例を示す可変表示装置の正面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態によるスロットマシンにおけるリールの停止制御処理を示す第1のフローチャートである。
【図11】本発明の第2の実施形態によるスロットマシンにおけるリールの停止制御処理を示す第2のフローチャートである。
【図12】本発明の第2の実施形態によるスロットマシンにおいて入賞期待音が発生するリール種類の例を示す可変表示装置の正面図である。
【図13】本発明の第3の実施形態によるスロットマシンにおけるリールの停止制御処理を示す第1のフローチャートである。
【図14】本発明の第3の実施形態によるスロットマシンにおけるリールの停止制御処理を示す第2のフローチャートである。
【図15】本発明の第3の実施形態によるスロットマシンにおいて入賞期待音が発生する入賞ラインの本数が1本の例を示す可変表示装置の正面図である。
【図16】本発明の第3の実施形態によるスロットマシンにおいて入賞期待音が発生する入賞ラインの本数が2本の例を示す可変表示装置の正面図である。
【図17】本発明の第3の実施形態によるスロットマシンにおいて入賞期待音が発生する入賞ラインの本数が3本の例を示す可変表示装置の正面図である。
【符号の説明】
【0092】
1…スロットマシン
2…前面パネル
3,4,5…第1,第2,第3リール
6,7,8…窓
9…メダル投入口
10,11,12…BETスイッチ
13…クレジット数表示部
14…クレジット/精算切換スイッチ
15…スタートレバー
16,17,18…停止ボタン
19…透音孔
20…メダル受皿
21…メダル払出口
22…配当表示部
23…有効化ライン表示ランプ
24…液晶表示部
L1,L2A,L2B,L3A,L3B…入賞ライン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
種々の図柄を複数列に可変表示する可変表示装置と、この可変表示装置に表示される各列の図柄の組合せを規定する複数の入賞ラインとを備え、この入賞ライン上に所定の図柄の組合せが停止表示されると入賞が発生する遊技機において、
前記可変表示装置の可変表示を遊技者の操作に応じて停止させる可変表示停止手段と、一定範囲で発生する乱数の中から特定した乱数に応じた入賞態様を複数の入賞態様の中から決定する入賞態様決定手段と、この入賞態様決定手段で決定された入賞態様および遊技者の前記可変表示停止手段の操作に基づいて前記可変表示装置に停止表示する図柄を制御する停止制御手段と、前記可変表示装置の複数列のうちの1つの列を残して前記複数の入賞ライン上のいずれかに前記停止制御手段によって停止表示される図柄が、前記所定の図柄の組合せの一部を構成していることを条件に、前記所定の図柄の組合せを構成する残りの図柄を停止表示する前記可変表示装置の残りの前記1つの列の種類に応じた入賞期待音を発生する入賞期待音発生手段を備えたことを特徴とする遊技機。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-04-11 
結審通知日 2006-04-17 
審決日 2006-04-28 
出願番号 特願2003-429430(P2003-429430)
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西村 仁志澤田 真治  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 篠崎 正
宮本 昭彦
登録日 2004-08-27 
登録番号 特許第3590405号(P3590405)
発明の名称 遊技機  
代理人 峯岸 武司  
代理人 峯岸 武司  

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