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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
管理番号 1153467
異議申立番号 異議2003-73126  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-06-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-15 
確定日 2007-01-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3450863号「PtとPt以外の遷移金属をベースにした化合物とをベースにした混合物を使用するシリコーンエラストマーのアーク抵抗性を高めるための添加剤」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、知的財産高等裁判所において、平成17年4月6日付けでした特許異議の決定について、取消決定取消しの判決(平成17年(行ケ)第10647号、平成18年11月20日判決言渡)があったので、更に審理の結果、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3450863号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3450863号の請求項1?8に係る発明は、平成9年12月29日(優先権主張 1996年12月31日 フランス)を国際出願日として特許出願され、平成15年7月11日にその特許権の設定登録がなされ、その後、信越化学工業株式会社より、請求項1?8に係る発明の特許に対し、特許異議の申立てがなされ、請求項1?8に係る発明の特許に対し、平成16年8月20日付けで取消理由が通知され、その指定期間内(期間延長願あり)である平成17年2月28日付けで特許異議意見書とともに訂正請求書が提出され、平成17年4月6日付けで、「訂正を認める。特許第3450863号の請求項1?8に係る特許を取り消す。」との特許異議の決定がなされ、これに対して特許権者は、平成17年8月23日にこの決定の取消しを求める訴え(平成17年(行ケ)第10647号 特許取消決定取消請求事件)を提起し、その後、知的財産高等裁判所から平成18年11月20日付けで、「特許庁が異議2003-73126号事件について平成17年4月6日にした決定を取り消す。」との判決が言い渡されたものである。

II.訂正請求について
1.訂正の内容
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1中の「混合物A、B又はCを含む」を、「混合物A、B又はCからなる」と訂正する。
2.訂正の適否について
訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1において、添加剤を、混合物A、B又はCのみからなるものにするもので、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内において、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
そして、上記訂正事項aは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.訂正後の請求項1?8に係る発明
訂正後の請求項1?8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明8」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?8に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】以下の成分から形成される混合物A、B又はCからなる、白金触媒の存在下に室温で又は重付加反応からの熱により架橋するか或いは有機過酸化物との作用により高温で架橋するシリコーンエラストマー取得用ポリオルガノシロキサン組成物Dのアークトラッキング抵抗性及びアーク浸食抵抗性を高めるための添加剤:
・該混合物A、B又はCは、
(1)混合物Aについては、成分A1+A3の混合物であって、成分A1が白金の錯体又は化合物の形の白金であり且つ成分A3がFeOとFe2O3との組み合わせからなるもの、
(2)混合物Bについては、成分B1+B2の混合物であって、成分B1が白金の錯体又は化合物の形の白金であり且つ成分B2が酸化及び(又は)水酸化セリウム(IV)からなるもの、
(3)混合物Bについては、成分B1+B3の混合物であって、成分B1が白金の錯体又は化合物の形の白金であり且つ成分B3が酸化及び(又は)水酸化セリウム(IV)と酸化チタンTiO2との組み合わせからなるもの、或いは
(4)混合物Cについては、成分C1+C2の混合物であって、成分C1が白金の錯体又は化合物の形の白金であり且つ成分C2が酸化及び(又は)水酸化セリウム(IV)と酸化チタンTiO2との組み合わせとFeOとFe2O3との組み合わせとの混合物からなるもの
であり(添加剤の成分A1、B1又はC1は、室温で又は重付加反応からの熱により架橋するポリオルガノシロキサン組成物Dに含有される触媒白金の形で存在できる)、
・ここで、種々の成分A1、A3、B1、B2、B3、C1及びC2の量並びに組み合わせの場合にそれらのいくつかの量の間に存在しうる比率は以下に記載する範囲:
*白金の量は、元素状白金の重量部で表わして、ポリオルガノシロキサン組成物Dのポリオルガノシロキサン成分の総重量に関して1?250ppmの範囲、
*混合物A、B及びCの成分A3、B2、B3及びC2の量は、成分の重量部で表わして、ポリオルガノシロキサン組成物Dのポリオルガノシロキサン成分100部当たり0.5?30重量部の範囲、
*成分A3(組み合わせ)において、FeOの重量対Fe2O3の重量の比率は0.1:1?9:1の範囲、
*成分B3(組み合わせ)において、酸化及び(又は)水酸化セリウム(IV)の重量対TiO2の重量の比率は0.6:1?6:1の範囲、
*成分C2(組み合わせ)において、成分A3の重量対成分B3の重量の比率は0.02:1?1:1の範囲
内にあるものとする。
【請求項2】1種又はそれ以上の(一成分又は多成分)のパッケージとして提供される硬化性のポリオルガノシロキサン組成物Dが、1種以上のポリオルガノシロキサン成分から形成される主成分と、好適な触媒と、随意としての特に補強若しくは半補強充填剤又は増量剤又は硬化性組成物の流動性を変性させるように働く充填剤、架橋剤、接着促進剤、可塑剤、触媒禁止剤及び着色剤よりなる群から選択される1種以上の化合物とを含有することを特徴とする、請求項1に記載の添加剤。
【請求項3】ポリオルガノシロキサン組成物Dの主成分をなすポリオルガノシロキサンが、次の一般式:
RnSiO(4-n)/2 (I)
のシロキシル単位及び(又は)一般式:
ZxRy SiO(4-x-y)/2 (II)
のシロキシル単位
(これらの式において、種々の記号は下記の意味を有する:
-記号Rは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ非加水分解性の炭化水素型の基を表し、この基は、
*1?5個の炭素原子を有し及び1?6個の塩素及び(又は)弗素原子を含有するアルキル及びハロアルキル基、
*3?8個の炭素原子を有し及び1?4個の塩素及び(又は)弗素原子を含有するシクロアルキル及びハロシクロアルキル基、
*6?8個の炭素原子を有し及び1?4個の塩素及び(又は)弗素原子を含有するアリール、アルキルアリール及びハロアリル基、
*3?4個の炭素原子を含有するシアノアルキル基
であることができ、
-記号Zはそれぞれ水素原子又はC2?C6アルケニル基を表し、
-nは0、1、2又は3に等しい整数であり、
-xは0、1、2又は3に等しい整数であり、
-yは0、1又は2に等しい整数であり、
-x+yの和は1?3の範囲内にある)
からなることを特徴とする、請求項2に記載の添加剤。
【請求項4】ポリオルガノシロキサン組成物Dが室温で又は重付加反応からの熱により架橋する一成分又は二成分組成物(RTV組成物と称される)であって、
(a)1分子当たり少なくとも2個のビニル基を有する線状のホモ重合体及び共重合体から選択される少なくとも1種のポリジオルガノシロキサンであって、これらのビニル基は異なった珪素原子に結合し且つ鎖内に及び(又は)鎖の末端に位置しており、珪素原子に結合したその他の有機基はメチル、エチル及びフェニル基から選択され、これらのその他の基の少なくとも60モル%はメチル基であり、しかも25℃で400?100,000mPa.sの範囲の粘度を有するようなもの100重量部、
(b)1分子当たり少なくとも2個の水素原子を有する線状又は環状のホモ重合体及び共重合体から選択される少なくとも1種のポリオルガノヒドロシロキサンであって、これらの水素原子は異なった珪素原子に結合し、珪素原子に結合した有機基はメチル、エチル及びフェニル基から選択され、これらの基の少なくとも60モル%はメチル基であり、しかも25℃で5?1000mPa.sの範囲の粘度を有するようなもの(この反応体(b)は、(b)のヒドリド官能基対(a)のビニル基のモル比が1.1?4の間にあるような量で使用されるものとする)、
(c)触媒として有効な量の白金触媒、
(d)ポリオルガノシロキサン(a)+(b)の組み合わせ100重量部当たり0?120重量部の珪素質充填剤
を含むものであることを特徴とする、請求項2又は3に記載の添加剤。
【請求項5】反応体(a)の100重量%までが、その構造内に0.1?20重量%の1個以上のビニル基を含有するポリオルガノシロキサン樹脂であって、該構造がM(トリオルガノシロキシル)、D(ジオルガノシロキシル)、T(モノオルガノシロキシル)及びQ(SiO4/2)単位を有し、これらの単位の少なくとも一つがT又はQ単位であり、しかも該ビニル基がM、D及び(又は)T単位によって支持されることが可能であるようなものによって置き換えられることを特徴とする、請求項4に記載の添加剤。
【請求項6】ポリオルガノシロキサン組成物Dが重付加反応からの熱で架橋する一成分又は二成分組成物(LSR組成物と称される)であって、これらの組成物がいわゆるRTV組成物に関して請求項4又は5に示した定義(ただし、ビニル含有ポリジオルガノシロキサン(a)の粘度に関しては別であって、このときはそれは100,000mPa.sよりも大きい値から500,000mPa.sまでの範囲内にある)を満足するものであることを特徴とする、請求項2?5のいずれかに記載の添加剤。
【請求項7】ポリオルガノシロキサン組成物Dが重付加反応からの熱で架橋する一成分又は二成分組成物(重付加EVC組成物と称される)であって、
(a')1分子当たり少なくとも2個のビニル基を有する線状のホモ重合体又は共重合体であるポリジオルガノシロキサンゴムであって、これらのビニル基は異なった珪素原子に結合し且つ鎖内に及び(又は)鎖の末端に位置し、珪素原子に結合したその他の有機基はメチル、エチル及びフェニル基から選択され、これらのその他の基の少なくとも60モル%はメチル基であり、しかも該ゴムは25℃で500,000mPa.sよりも高い粘度を有するようなもの100重量部、
(b')1分子当たり少なくとも3個の水素原子を有する線状、環状又は網状のホモ重合体及び共重合体から選択される少なくとも1種のポリオルガノヒドロシロキサンであって、これらの水素原子は異なった硅素原子に結合し、珪素原子に結合した有機基はメチル、エチル及びフェニル基から選択され、これらの基の少なくとも60モル%はメチル基であり、しかも25℃で5?1000mPa.sの粘度を有するようなもの(反応体(b')は、(b')のヒドリド官能基対(a')のビニル基のモル比が0.4?10であるような量で使用されるものとする)、
(c')触媒として有効な量の白金触媒、
(d')該ポリオルガノシロキサン(a')+(b')の組み合わせ100重量部当たり0.5?120重量部の珪素充填剤、
を含むものであることを特徴とする請求項2又は3に記載の添加剤。
【請求項8】ポリオルガノシロキサン組成物Dが、
(a")1分子当たり少なくとも2個のビニル基を有する線状のホモ重合体又は共重合体であるポリジオルガノシロキサンゴムであって、これらのビニル基は異なった珪素原子に結合し且つ鎖内に及び(又は)鎖の末端に位置し、珪素原子に結合したその他の有機基はメチル、エチル及びフェニル基から選択され、これらのその他の基の少なくとも60モル%はメチル基であり、しかも該ゴムは25℃で少なくとも1,000,000mPa.sの粘度を有するようなもの100重量部、
(b")0.1?7重量部の有機過酸化物、
(c")該ゴム(a")100重量部当たり0.5?120重量部の珪素質充填剤
を含むような一成分組成物(EVC組成物と称される)であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の添加剤。」

IV.特許異議申立ておよび取消理由について
[1]特許異議申立人 信越化学工業株式会社は、甲第1号証?甲第6号証を提出して、訂正前の請求項1?8に係る発明の特許は、以下の理由により取り消されるべきである旨主張している。
(1)訂正前の請求項1?8に係る発明は、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明であるから、訂正前の請求項1?8に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するものである。
(2)訂正前の請求項1?8に係る発明は、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1?8に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に該当するものである。

[2]当審の取消理由通知の概要
(1)訂正前の請求項1?8に係る発明は、本件出願前に頒布された刊行物1?6に記載された発明であるから、訂正前の請求項1?8に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
(2)訂正前の請求項1?8に係る発明は、本件出願前に頒布された刊行物1?6に記載された発明基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、訂正前の請求項1?8に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(引用文献等)
刊行物1:特開平8-325458号公報
(特許異議申立人提出甲第1号証)
刊行物2:特開平7-300774号公報
(同第2号証)
刊行物3:特開平6-316690号公報
(同第3号証)
刊行物4:特開平6-293862号公報
(同第4号証)
刊行物5:特開平8-92483号公報
(同第5号証)
刊行物6:特開平7-118536号公報
(同第6号証)

[3]特許異議申立ての理由および取消理由についての判断
1.刊行物に記載の事項
(1)刊行物1には、以下の事項が記載されている。
(1-1)
「【請求項1】
(1)有機過酸化物硬化型又は付加硬化型のシリコーンゴム組成物 100重量部
(2)シリカ微粉末 1?100重量部
(3)アルミニウム水酸化物 30?300重量部
(4)少なくとも1種の遷移元素を含む金属酸化物 0.1?20重量部
を含有してなることを特徴とする高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
・・・・・
【請求項4】 少なくとも1種の遷移元素を含む金属酸化物が、Co2O3,Co3O4,MoO3,Ce2O3及びFeO・Fe2O3から選ばれるものである請求項1、2又は3記載の組成物。」(特許請求の範囲)
(1-2)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、加熱硬化により優れた高電圧電気絶縁体となるシリコーンゴムを与える高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】送電線等に用いる碍子に使用される高電圧電気絶縁体は、一般に磁器製又はガラス製である。しかし、海岸沿いの地域や工業地帯のように汚染を受けやすい環境下では、高電圧電気絶縁体の表面を微粒子や塩類、霧等が通ることにより、漏れ電流が発生したり、フラッシュオーバーにつながるドライバンド放電等が起こるという問題があった。
【0003】そこで、これらの磁器製又はガラス製の絶縁体の欠点を改良するために種々の解決法が提案されている。例えば、米国特許第3511698号公報には、硬化性樹脂からなる部材と白金触媒含有オルガノポリシロキサンエラストマーとからなる耐候性の高電圧電気絶縁体が提案されている。また、米国特許第4476155号公報に対応する特開昭59-198604号公報には、一液性の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物をガラス製品又は磁器製の電気絶縁体の外側表面に塗布することにより、湿気、大気汚染、紫外線等の野外におけるストレスの存在下においても前記電気絶縁体の有する高性能の電気性能を維持させる技術が提案されている。
【0004】更に、米国特許第3965065号公報に対応する特開昭53-35982号公報及び米国特許第5369161号公報に対応する特開平4-209655号公報には、加熱硬化によりシリコーンゴムとなるオルガノポリシロキサンとアルミニウム水和物との混合物を100℃よりも高い温度で30分以上加熱することによって、電気絶縁性が改良されたシリコーンゴム組成物が得られることが提案されている。
【0005】しかしながら、前記の従来技術では、いずれも使用されているシリコーンゴム材料の高電圧電気絶縁性能が未だ十分満足できるものでなく、このため従来のシリコーンゴム組成物は、電気絶縁性能を向上させるためには多量のアルミニウム水酸化物を使用しなければならないが、これによりゴムの機械的強度が弱くなるという欠点があった。
【0006】本発明は上記事情に鑑みなされたもので、加熱硬化後に過酷な大気汚染或いは気候に晒される条件下でも耐候性、耐トラッキング性、耐アーク性、耐エロージェン性等の高電圧電気絶縁特性に優れたシリコーンゴムを与える高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。」(段落【0001】?【0006】)
(1-3)
「【0007】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明者は上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、有機過酸化物硬化型又は付加硬化型のシリコーンゴム組成物、シリカ微粉末を含有するシリコーンゴム組成物に対して、アルミニウム水酸化物と少なくとも1種の遷移元素を含む金属酸化物とを特定量併用して配合することにより、アルミニウム水酸化物と遷移金属酸化物との相乗効果によりシリコーンゴムの耐トラッキング性、更には耐エロージョン性、耐アーク性等の特性が大幅に向上し、高圧碍子として実用的な耐トラッキング性を得るためのアルミニウム水酸化物の充填量を減量することが可能であり、シリコーンゴム碍子の軽量化、機械的特性の改良にも寄与できること、それ故、耐候性、耐トラッキング性、耐アーク性、耐エロージェン性等の高電圧電気絶縁特性に優れたシリコーンゴムを与える高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物が得られることを知見し、本発明をなすに至った。」(段落【0007】)
(1-4)
「【0028】付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテートなどの白金系触媒のほか、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。この付加反応触媒の添加量は触媒量であり、通常第一成分に対して白金、パラジウム又はロジウム金属として0.1?500ppm、特に1?100ppmである。」(段落【0028】)
(1-5)
「【0033】本発明では、第三成分としてアルミニウム水酸化物を使用するもので、この成分を配合することでシリコーンゴムの耐アーク性、耐トラッキング性等の電気絶縁性能を改善することができ、本発明組成物において必須のものである。」(段落【0033】)
(1-6)
「【0045】第三成分のアルミニウム水酸化物の配合量は、第一成分100部に対して30?300部、好ましくは50?250部の範囲であり、30部に満たないと硬化後の組成物が必要な耐アーク性や耐トラッキング性を得られないものとなり、300部を超えると組成物への充填が困難となり、加工性が悪くなる。」(段落【0045】)
(1-7)
「【0046】本発明では、第四成分として少なくとも1種の遷移金属元素を含む金属酸化物(即ち、遷移金属酸化物)を使用するもので、上記金属酸化物を特定量配合することで上記第三成分のアルミニウム水酸化物との相乗効果によりシリコーンゴムの耐トラッキング性、耐エロージョン性、耐アーク性等を更に向上することができるものである。
・・・・・
【0048】本発明において遷移金属元素を含む金属酸化物としては、・・・Ce2O3,FeO・Fe2O3,Fe2O3,TiO2,・・・等が例示されるが、・・・。
【0050】第四成分の遷移元素を含む金属酸化物の配合量は、第一成分100部に対して0.1?20部、好ましくは0.3?17部の範囲であり、0.1部に満たないと期待する耐トラッキング性の向上が得られず、20部を越えると得られるゴム強度が十分でなくなり、また水酸化アルミニウムを高充填できなくなったり、トラッキング性に更なる利点を上げることができない。」(段落【0046】?【0050】)
(1-8)
「【0053】
【発明の効果】本発明の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物は、過酷な気候や汚染に晒された条件下でも耐トラッキング性、耐エロージェン性、耐アーク性等の高電圧電気特性に優れるだけでなく、耐候性、撥水性にも優れたシリコーンゴムを与え、このシリコーンゴムは高圧碍子等の高電圧電気絶縁体として有用である。」(段落【0053】)
(1-9)
「【0060】
【表1】

」(段落【0060】)
(2)刊行物2には、以下の事項が記載されている。
(2-1)
「【請求項1】 ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、これらの織布及び不織布、熱可塑性エラストマー並びにポリウレタンシートから選ばれる基材の全部又は一部に、
(A)1分子中に珪素原子に直結したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン100重量部
(B)(A)成分中のアルケニル基1個に対して珪素原子に結合した水素原子を0.5?4個与えるのに充分な量の、1分子中に珪素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C)1分子中に珪素原子に結合した水素原子を少なくとも1個と珪素原子に直結した炭素原子を介して珪素原子に結合したエポキシ基及び/又はトリアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機珪素化合物0.1?10重量部
(D)カーボン、NiO2、FeO、FeO2、Fe2O3、Fe3O4、CoO2、CeO2及びTiO2から選ばれる平均粒径20μm以下の粉末の1種又は2種以上0.1?100重量部
(E)触媒量の白金又は白金化合物
を含有するシリコーンコーティング剤の皮膜を5?20μmの厚さで形成してなることを特徴とするシリコーンコーティング加工基材。
【請求項2】 シリコーンコーティング剤に更に(F)ベンゾトリアゾール及び/又はベンズイミダゾールを1重量部以下配合した請求項1記載のシリコーンコーティング加工基材。
【請求項3】 シリコーンコーティング剤に更に(G)補強性シリカを100重量部以下配合した請求項1又は2記載のシリコーンコーティング加工基材。
【請求項4】 ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、これらの織布又は不織布からなる繊維基材に請求項1,2又は3記載のシリコーンコーティング剤の皮膜が形成されたエアバッグ基材」(特許請求の範囲)
(2-2)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、シリコーンコーティング剤の皮膜が形成されたエアバッグ基材等のシリコーンコーティング加工基材及びエアバッグ基材に関する。」(段落【0001】)
(2-3)
「【0026】(D)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対し0.1?100重量部であることが望ましい。0.1重量部未満の場合は、高温耐性向上に寄与しない。また、100重量部を越える場合は、硬化物の物性に悪影響を与え、コーティング基材として必要な物性を得られない。なお、(D)成分のより好ましい配合量は0.5?20重量部である。
【0027】本発明に使用される(E)成分の白金又は白金化合物は、通常ハイドロサイレーション反応に使用される公知のものでよく、白金ブラック、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、白金とオレフィン又はアルデヒドとの錯体、白金とビニルシロキサンとの錯体などが例示される。この(E)成分の使用量は、触媒量であり、所望の硬化速度に応じて適宜調節すればよいが、上記(A),(B)及び(C)成分の合計量に対して白金原子の量で0.5?200ppm、好ましくは1?100ppmの範囲である。0.5ppm未満の場合は、硬化不良を起こし易く、硬化に高温度、長時間を要する。200ppmを越えると硬化反応の制御が困難になるだけでなく、コスト面でも不利になる。」(段落【0026】?【0027】)
(2-4)
「【0036】
【発明の効果】本発明のシリコーンコーティング加工基材は、シリコーンコーティング皮膜の塗工膜が5?20μmと従来の約半分以下であっても、耐燃焼性に優れ、十分実用に供されるものである。」(段落【0036】)
(3)刊行物3には、以下の事項が記載されている。
(3-1)
「【請求項1】 (1)一分子中に少なくとも2個以上のアルケニル基を有し、25℃での粘度が少なくとも5,000センチポイズであるオルガノポリシロキサン、(2)一分子中に少なくとも2個以上の珪素原子に直接結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(3)白金又は白金族化合物、(4)一分子中に1個以上のアルケニル基及び/又は珪素原子に直接結合した水素原子とアルコキシシリル基及び/又はエポキシ基とを含有する化合物、(5)カーボンブラック、(6)酸化セリウム又は水酸化セリウムを含有してなり、エラストマー状の硬化物を与えることを特徴とする接着用シリコーンゴム組成物。
・・・・・」(特許請求の範囲)
(3-2)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、乾式複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ等の定着ロールに好適に利用することができる接着用シリコーンゴム組成物及びフッ素樹脂フィルムとシリコーンゴムとの一体成型体に関する。」(段落【0001】)
(3-3)
「【0018】本発明では、第1成分と第2成分との硬化付加反応(ハイドロサイレーション)を促進させるための触媒として第3成分として白金又は白金族化合物を配合する。白金又は白金族化合物としては、例えば白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸と各種オレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン、アセチレンアルコール等との錯体などが好適に使用される。
【0019】第3成分の白金又は白金族化合物の添加量は、希望する硬化速度に応じて適宜増減すればよいが、通常は全組成物に対して白金量として0.1?1000ppm、特に1?200ppmの範囲が好ましい。」(段落【0018】?【0019】)
(3-4)
「【0025】また、第6成分の酸化セリウム又は水酸化セリウムは、上記カーボンブラックと共に添加することで相乗的に作用して組成物の高温での接着耐久性を強化するものである。この酸化セリウム又は水酸化セリウムの添加量は、第1成分のオルガノポリシロキサン100部に対して0.1?5部、特に0.2?2部とすることが好ましく、0.1部に満たないと接着耐久性が強化されない場合があり、5部を超えると組成物の硬化反応に異常をきたし、硬化が阻害される場合がある。」(段落【0025】)
(4)刊行物4には、以下の事項が記載されている。
(4-1)
「【請求項1】(A) ケイ素原子に結合せるビニル基が1分子中に平均 0.1?10個存在し、ケイ素原子に結合せる残余の有機基が脂肪族不飽和結合を含まぬ置換又は非置換の1価の炭化水素基であり、25℃における粘度が50?100000cPであるポリオルガノシロキサン、100 重量部
(B) (R')2SiO単位を含み又は含まず、(R')3SiO0.5 単位とSiO2単位(式中R'は脂肪族不飽和結合を含有しない1価の炭化水素基及びビニル基から選ばれた基を示す)よりなり、ケイ素原子の 2.5?10モル%はケイ素原子に直結するビニル基を有し、(R')3SiO0.5 単位:SiO2単位の比が 0.4:1?1:1であるポリオルガノシロキサン共重合体、0?200 重量部
(C) ケイ素原子に結合せる水素原子が1分子中に平均2個を越える数存在し、ケイ素原子に結合せる残余の有機基が置換または非置換の1価の炭化水素基であるポリオルガノハイドロジェンシロキサン、ケイ素原子に結合せる水素原子の数の和が (A)、(B) のケイ素原子に結合せるビニル基1個に対して 0.1?5.0 個となる量
(D) 白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒からなる群より選ばれる触媒、(A) 、(B) 、(C) の合計量に対して触媒金属元素の量として0.01?100ppmとなる量
(E) セリウムアセチルアセテートもしくはオクチル酸セリウム;金属セリウムに換算して0.001 ?0.7 重量部、及び/又は酸化セリウムもしくは水酸化セリウム;金属セリウムに換算して0.005 ?5重量部を含有する難燃性シリコーンゲル組成物。
・・・・・」(特許請求の範囲)
(4-2)
「【0001】
【発明の技術分野】本発明は難燃性シリコーンゲル組成物及びその硬化物に関する。」(段落【0001】)
(4-3)
「【0009】本発明で用いられる(D) 成分の触媒は、(A),(B) 成分のビニル基と(C) 成分のヒドロシリル基との間の付加反応を促進するためのもので、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金とオレフィンとの錯体、白金とケトン類との錯体、白金とビニルシロキサンとの錯体などで例示される白金系触媒、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウム黒とトリフェニルホスフィンとの混合物などで例示されるパラジウム系触媒、あるいはロジウム系触媒が使用できるが、触媒効果と取り扱いの容易さから、白金系触媒が好ましい。(D) 成分の配合量は、(A) と(B) と(C) の合計量に対し、触媒金属元素の量として0.01?100ppmの範囲となる量であり、好ましくは1?30ppm である。
【0010】本発明における(E) 成分のセリウム化合物は、(A) ?(D) から成るシリコーンゲル組成物に難燃性を付与するものである。このようなものとしては、セリウムアセチルアセテート、酸化セリウム、オクチル酸セリウム及び水酸化セリウムが選択的に挙げられる。その理由は、これらがセリウム化合物のうちでも物理的および化学的に安定であり、取扱いが容易だからである。また、その添加量も重要で、金属セリウムに換算して(A) 成分100 重量部に対して、セリウムアセチルアセテートもしくはオクチル酸セリウム;0.001 ?0.7 重量部、及び/又は酸化セリウムもしくは水酸化セリウム;0.005 ?5重量部である。下限量より少ないと難燃性を付与できず、上限量を越えると却って難燃性、更にゲルの特性に悪影響を及ぼす。」(段落【0009】?【0010】)
(5)刊行物5には、以下の事項が記載されている。
(5-1)
「【請求項1】 以下の(1)?(5)の成分を含有することを特徴とする難燃性シリコーンゴム組成物。
(1)平均組成式が
RmSiO(4-m)/2(但し、Rは水酸基若しくは置換又は非置換の一価炭化水素基、mは1.98?2.02の正数を表す。)で表されるオルガノポリシロキサン100重量部
(2)微粉状シリカ系充填剤5?500重量部
(3)第1成分に対し3?200ppm量の白金又は同量の白金を含む白金系化合物
(4)第3成分中の白金量に対し2?200倍等量の窒素-窒素二重結合を与え得る2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)
(5)以下の(A)?(C)のいずれかより選ばれる金属元素単体又は金属化合物
(A)第1成分に対し10?20000ppm量のセリウム又は同量のセリウムを含むセリウム系化合物
(B)第1成分に対し1?20重量部の酸化鉄
(C)第1成分に対し1?20重量部の酸化チタン」(特許請求の範囲)
(5-2)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、難燃性シリコーンゴム組成物に関する。さらに詳しくは、難燃性に優れ、加硫成型時の副生成物の有害性を低減した難燃性シリコーンゴム組成物に関する。」(段落【0001】)
(5-3)
「【0018】本発明における(3)成分の白金系化合物は公知のものが使用でき、具体的には白金元素単体、白金化合物、白金複合体、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物、エーテル化合物、各種オレフィン類とのコンプレックスなどが例示される。
【0019】(3)成分の添加量は、(1)成分のオルガノポリシロキサンに対して3?200ppm量の白金又は同量の白金を含む白金系化合物の範囲とすることが好ましい。」(段落【0018】?【0019】)
(5-4)
「【0022】本発明における(5)成分の金属元素単体又は金属化合物は、白金系化合物及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)と併用することで難燃性を大きく向上させるものであり、具体的には以下の金属元素単体又は金属化合物が挙げられる。これらのうち固体のものは、シリコーンゴムへの分散を容易にし、機械的強度を低下させないために粒子径が50μm以下の微粉状であることが好ましい。これらは1種単独でも、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】セリウム系化合物としては、セリウム元素単体、酸化セリウム、炭酸セリウムなどの無機化合物、酢酸セリウム、オクチル酸セリウム、セリウム原子含有ヘテロシロキサンなどの有機化合物などが挙げられ、他の元素、例えばチタン、アルミニウム、希土類元素の化合物との混合物として供給されてもよい。この配合量は、(1)成分のオルガノポリシロキサンに対して10?20000ppm量のセリウム又は同量のセリウムを含むセリウム系化合物であればよい。
【0024】酸化鉄としては、一般に赤ベンガラと呼ばれるFe2O3、一般に黒ベンガラと呼ばれるFe3O4、これらの鉄原子の一部が亜鉛、マグネシウムなど他の金属で置き換えられたものなどが挙げられる。この配合量は、(1)成分のオルガノポリシロキサンに対して1?20重量部であればよい。
【0025】酸化チタンとしては、ルチル型TiO2、アナターゼ型TiO2、四塩化チタンの加水分解によって作られるフュームドTiO2などが挙げられる。この配合量は、(1)成分のオルガノポリシロキサンに対して1?20重量部であればよい。」(段落【0022】?【0025】)
(6)刊行物6には、以下の事項が記載されている。
(6-1)
「【請求項1】 (A)下記一般式(1)で示され、分子鎖両末端が2個以上のビニル基を有するシリル基で封鎖された重合度3,000以上のオルガノポリシロキサン100重量部、
RaSiO(4-a)/2 …(1)
(式中、Rは置換又は非置換の一価炭化水素基であり、aは1.95?2.05の正数である。)(B)比表面積50m2/g以上の微粉末シリカ10?100重量部、(C)白金又は白金化合物を白金量として(A)成分に対し1?200ppm、(D)水酸化アルミニウム1?40重量部、(E)酸化セリウム0?10重量部、(F)有機過酸化物0.1?10重量部を含有することを特徴とする難燃性シリコーンゴム組成物。
・・・・・」(特許請求の範囲)
(6-2)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、難燃性に優れたシリコーンゴムを与える熱風加硫(HAV)可能なシリコーンゴム組成物に関する。」(段落【0001】)
(6-3)
「【0017】(C)成分の白金又は白金化合物はシリコーンゴムに難燃性を付与するための必須成分である。白金としては白金微粉末或いはアルミナ、シリカゲルなどの担体に白金粉末を担持させたものが例示され、白金化合物としては塩化白金酸或いは塩化白金酸とアルコール,エーテル,ビニルシロキサンなどとの錯体が例示される。
【0018】この(C)成分の配合量は、(A)成分に対して白金量として1?200ppm、特に2?100ppmである。配合量が1ppm未満では難燃効果が十分発揮されず、配合量が200ppmを越えてもそれ以上の難燃効果は発揮されずコスト的に不利である。」(段落【0017】?【0018】)
(6-4)
「【0019】(D)成分の水酸化アルミニウム〔Al(OH)3〕は上述した(C)成分との相乗的効果によって、シリコーンゴムに難燃性を付与する成分である。
【0020】この(D)成分の配合量は、上記(A)成分100部に対して1?40部、特に5?30部である。配合量が1部未満では難燃性付与効果が期待できず、40部を越えると電気的特性が低下するのみならず、機械的な強度が低下する場合がある。」(段落【0019】?【0020】)
(6-5)
「【0021】(E)成分の酸化セリウムは上述した(C)成分の白金又は白金化合物及び(D)成分の水酸化アルミニウムとの相乗効果によって、シリコーンゴムに難燃性を付与する成分であると共に、シリコーンゴム組成物の加硫速度を更に速め、安定にHAVすることができる性能を付与させたり、加硫したシリコーンゴムの耐熱性を向上させる成分である。
【0022】この(E)成分は余りに大量に配合しても、少量添加時の特性の更なる改良にはならないため、経済的な理由から、(E)成分の配合量は上記(A)成分100部に対して0?10部、好ましくは0.1?10部、特に0.1?5部とすることが好ましい。」(段落【0021】?【0022】)

2.対比・判断
[1]特許法第29条第1項第3号について
本件発明1?8が刊行物1?6のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるか否かについて以下に検討する。
(i)本件発明1について
本件発明1は、「以下の成分から形成される混合物A、B又はCからなる、白金触媒の存在下に室温で又は重付加反応からの熱により架橋するか或いは有機過酸化物との作用により高温で架橋するシリコーンエラストマー取得用ポリオルガノシロキサン組成物Dのアークトラッキング抵抗性及びアーク浸食抵抗性を高めるための添加剤:
・該混合物A、B又はCは、
(1)混合物Aについては、成分A1+A3の混合物であって、成分A1が白金の錯体又は化合物の形の白金であり且つ成分A3がFeOとFe2O3との組み合わせからなるもの、
(2)混合物Bについては、成分B1+B2の混合物であって、成分B1が白金の錯体又は化合物の形の白金であり且つ成分B2が酸化及び(又は)水酸化セリウム(IV)からなるもの、
(3)混合物Bについては、成分B1+B3の混合物であって、成分B1が白金の錯体又は化合物の形の白金であり且つ成分B3が酸化及び(又は)水酸化セリウム(IV)と酸化チタンTiO2との組み合わせからなるもの、或いは
(4)混合物Cについては、成分C1+C2の混合物であって、成分C1が白金の錯体又は化合物の形の白金であり且つ成分C2が酸化及び(又は)水酸化セリウム(IV)と酸化チタンTiO2との組み合わせとFeOとFe2O3との組み合わせとの混合物からなるもの
であり(添加剤の成分A1、B1又はC1は、室温で又は重付加反応からの熱により架橋するポリオルガノシロキサン組成物Dに含有される触媒白金の形で存在できる)、
・ここで、種々の成分A1、A3、B1、B2、B3、C1及びC2の量並びに組み合わせの場合にそれらのいくつかの量の間に存在しうる比率は以下に記載する範囲:
*白金の量は、元素状白金の重量部で表わして、ポリオルガノシロキサン組成物Dのポリオルガノシロキサン成分の総重量に関して1?250ppmの範囲、
*混合物A、B及びCの成分A3、B2、B3及びC2の量は、成分の重量部で表わして、ポリオルガノシロキサン組成物Dのポリオルガノシロキサン成分100部当たり0.5?30重量部の範囲、
*成分A3(組み合わせ)において、FeOの重量対Fe2O3の重量の比率は0.1:1?9:1の範囲、
*成分B3(組み合わせ)において、酸化及び(又は)水酸化セリウム(IV)の重量対TiO2の重量の比率は0.6:1?6:1の範囲、
*成分C2(組み合わせ)において、成分A3の重量対成分B3の重量の比率は0.02:1?1:1の範囲
内にあるものとする」
を発明の構成とするものである。
一方、刊行物1には、付加硬化型のシリコーンゴム組成物、シリカ微粉末、アルミニウム水酸化物、少なくとも1種の遷移金属元素を含む金属酸化物、を含有してなる高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物が記載されている。[摘示記載(1-1)]
そして、該高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物は、過酷な気候や汚染に晒された条件下でも耐トラッキング性、耐エロージョン性、耐アーク性等の高電圧電気特性に優れるだけでなく、耐候性、撥水性にも優れたシリコーンゴムを与え、高圧碍子等の高電圧電気絶縁体として有用であることが記載されている。[摘示記載(1-8)]
また、付加硬化型のシリコーンゴム組成物は、白金錯体又は白金化合物を付加反応触媒として含有することが記載され[摘示記載(1-4)]、少なくとも1種の遷移金属元素を含む金属酸化物として、Ce2O3,FeO・Fe2O3,TiO2が用いられることも記載されている[摘示記載(1-7)]。
そうすると、刊行物1には、白金錯体又は白金化合物を触媒として含む付加硬化型のシリコーンゴム組成物に、シリカ微粉末、アルミニウム水酸化物、Ce2O3,FeO・Fe2O3,TiO2から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を含有する耐トラッキング性、耐アーク性等の高電圧電気特性に優れた高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物が記載されているものといえる。
そこで、本件発明1と刊行物1に記載されている発明とを比較すると、
刊行物1に記載されている発明は、上記[摘示記載(1-2)、(1-3)、(1-5)?(1-7)]の記載からみて、アルミニウム水酸化物が必須の成分であり、該アルミニウム水酸化物とCe2O3,FeO・Fe2O3,TiO2から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物との併用により、その相乗効果として耐トラッキング性、耐アーク性等の高電圧電気特性が得られるものである。
これに対し、本件発明1は、その特許請求の範囲及び本件訂正明細書の記載からも明らかなように、アルミニウム水酸化物は必須の成分とはなっておらず、アルミニウム水酸化物を加えなくとも、良好なアークトラッキング抵抗性、アーク浸食抵抗性が得られるものである。
そうであれば、刊行物1に記載の「アルミニウム水酸化物を必須成分として含有する高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物」が、本件発明1の「以下の成分から形成される混合物A、B又はCからなる、白金触媒の存在下に室温で又は重付加反応からの熱により架橋するか或いは有機過酸化物との作用により高温で架橋するシリコーンエラストマー取得用ポリオルガノシロキサン組成物Dのアークトラッキング抵抗性及びアーク浸食抵抗性を高めるための添加剤:
・該混合物A、B又はCは、
(1)混合物Aについては、成分A1+A3の混合物であって、成分A1が白金の錯体又は化合物の形の白金であり且つ成分A3がFeOとFe2O3との組み合わせからなるもの、
(2)混合物Bについては、成分B1+B2の混合物であって、成分B1が白金の錯体又は化合物の形の白金であり且つ成分B2が酸化及び(又は)水酸化セリウム(IV)からなるもの、
(3)混合物Bについては、成分B1+B3の混合物であって、成分B1が白金の錯体又は化合物の形の白金であり且つ成分B3が酸化及び(又は)水酸化セリウム(IV)と酸化チタンTiO2との組み合わせからなるもの、或いは
(4)混合物Cについては、成分C1+C2の混合物であって、成分C1が白金の錯体又は化合物の形の白金であり且つ成分C2が酸化及び(又は)水酸化セリウム(IV)と酸化チタンTiO2との組み合わせとFeOとFe2O3との組み合わせとの混合物からなるもの」に相当するということはできないから、刊行物1には、本件発明1が記載されているということはできない。
刊行物2には、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、これらの織布及び不織布、熱可塑性エラストマー並びにポリウレタンシートから選ばれる基材に、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、珪素原子に特定の置換基を有する有機珪素化合物、カーボン、NiO2、FeO、FeO2、Fe2O3、Fe3O4、CoO2、CeO2及びTiO2から選ばれる粉末の1種又は2種以上及び触媒量の白金又は白金化合物、を含有するシリコーンコーティング剤の皮膜を形成してなるシリコーンコーティング加工基材が記載され[摘示記載(2-1)]、エアバック基材として用いられること、耐燃焼性に優れていることが記載されている[摘示記載(2-2)、(2-4)]。
しかしながら、刊行物2に記載された発明は、シリコーンコーティング加工の技術分野に係る技術であって基材にシリコーンコーティング剤の被膜を形成させるものであり、本願発明1のような電気絶縁体の技術分野に係る技術ではないし、必須成分として更に、組成物に接着性を付与する、珪素原子に特定の置換基を有する有機珪素化合物を含有するものである。そして、刊行物2には、本願発明1のシリコーンエラストマーが有するアークトラッキング抵抗性、アーク浸食抵抗性については全く記載も示唆もされていない。
そうすると、刊行物2には、本件発明1が記載されているということはできない。
刊行物3には、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、白金又は白金族化合物、珪素原子に特定の置換基を有する有機珪素化合物、カーボンブラック、酸化セリウム又は水酸化セリウム、を含有してなるエラストマー状の硬化物を与える接着用シリコーンゴム組成物が記載されている[摘示記載(3-1)]。
しかしながら、刊行物3に記載された発明は、定着ロールに使用される接着用シリコーンゴム組成物に係る技術であって、本願発明1のような電気絶縁体の技術分野に係る技術ではないし、必須成分として更に、組成物に接着性を付与する、珪素原子に特定の置換基を有する有機珪素化合物、組成物に接着耐久性を付与するカーボンブラックを含有するものである。そして、刊行物3には、本願発明1のシリコーンエラストマーが有するアークトラッキング抵抗性、アーク浸食抵抗性については全く記載も示唆もされていない。
そうすると、刊行物3には、本件発明1が記載されているということはできない。
刊行物4には、ビニル基含有ポリオルガノシロキサン、特定のシロキサン単位を有するポリオルガノシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、白金系触媒、セリウムアセチルアセテートもしくはオクチル酸セリウム及び/又は酸化セリウムもしくは水酸化セリウムを、含有する難燃性シリコーンゲル組成物が記載されている[摘示記載(4-1)]。
しかしながら、刊行物4に記載された発明は、難燃性シリコーンゲル組成物に係る技術であって、本願発明1のような電気絶縁体の技術分野に係る技術ではないし、必須成分として更に、シリコーンゲル組成物に十分な強度を付与する、特定のシロキサン単位を有するポリオルガノシロキサン、シリコーンゲル組成物に難燃性を付与する特定のセリウム化合物を含有するものである。そして、刊行物4には、本願発明1のシリコーンエラストマーが有するアークトラッキング抵抗性、アーク浸食抵抗性については全く記載も示唆もされていない。
そうすると、刊行物4には、本件発明1が記載されているということはできない。
刊行物5には、アルケニル基含有ポリオルガノシロキサン、微粉状シリカ系充填剤、白金又は白金系化合物、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、金属化合物(セリウム系化合物、酸化鉄、酸化チタンから選ばれる)を、含有する難燃性シリコーンゴム組成物が記載されている[摘示記載(5-1)]。
しかしながら、刊行物5に記載された発明は、難燃性シリコーンゴム組成物に係る技術であって、本願発明1のような電気絶縁体の技術分野に係る技術ではないし、必須成分として、シリコーンゴム組成物に白金又は白金系化合物及びセリウム系化合物と併用することにより難燃性を向上させる2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、を含有するものである。そして、刊行物5には、本願発明1のシリコーンエラストマーが有するアークトラッキング抵抗性、アーク浸食抵抗性については全く記載も示唆もされていない。
そうすると、刊行物5には、本件発明1が記載されているということはできない。
刊行物6には、ビニル基含有ポリオルガノシロキサン、微粉状シリカ、白金又は白金化合物、水酸化アルミニウム、酸化セリウム及び有機過酸化物、を含有する難燃性シリコーンゴム組成物が記載されている[摘示記載(6-1)]。
しかしながら、刊行物5に記載された発明は、難燃性シリコーンゴム組成物に係る技術であって、本願発明1のような電気絶縁体の技術分野に係る技術ではないし、必須成分として更に、シリコーンゴム組成物に白金又は白金系化合物及び酸化セリウムと併用することにより難燃性を向上させる水酸化アルミニウムを含有するものである。そして、刊行物6には、本願発明1のシリコーンエラストマーが有するアークトラッキング抵抗性、アーク浸食抵抗性については全く記載も示唆もされていない。
そうすると、刊行物6には、本件発明1が記載されているということはできない。
(ii)本件発明2?8について
本件発明2?8は、本件発明1を直接的に引用するか、間接的に引用するものであるから、上記したように本件発明1が刊行物1?6に記載された発明であるということができない以上、本件発明1と同様、本件発明2?8は、刊行物1?6に記載された発明であるということはできない。

[2]特許法第29条第2項違反について
本件発明1?8が刊行物1?6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるか否かについて以下に検討する。
(i)本件発明1について
本件発明1と刊行物1に記載の発明を比較すると、上記[1](i)でも記載したように、両者は、「白金錯体又は白金化合物を触媒として含む付加硬化型のシリコーンゴム組成物に、シリカ微粉末、Ce2O3,FeO・Fe2O3,TiO2から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を含有する耐トラッキング性、耐アーク性等の高電圧電気特性に優れた高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物」という点で一致し、以下の点で相違する。
相違点
刊行物1に記載されている発明は、さらにアルミニウム水酸化物が必須の成分であり、該アルミニウム水酸化物とCe2O3、FeO・Fe2O3、TiO2から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物との併用により、その相乗効果として耐トラッキング性、耐アーク性等の高電圧電気特性が得られるものである。
これに対し、本件発明1は、アルミニウム水酸化物は必須の成分とはなっておらず、アルミニウム水酸化物を加えなくとも、良好なアークトラッキング抵抗性、アーク浸食抵抗性が得られるものである。
そこで、相違点について検討する。
刊行物1に記載された発明は、ゴムの機械的強度を弱くするアルミニウム水酸化物の充填量を減量することを目的としながらも、アルミニウム水酸化物が必須の成分であることは、「本発明では、第三成分としてアルミニウム水酸化物を使用するもので、この成分を配合することでシリコーンゴムの耐アーク性、耐トラッキング性等の電気絶縁性能を改善することができ、本発明組成物において必須のものである。」[摘示記載(1-5)]との記載、「第三成分のアルミニウム水酸化物の配合量は、第一成分100部に対して30?300部、好ましくは50?250部の範囲であり、30部に満たないと硬化後の組成物が必要な耐アーク性や耐トラッキング性を得られないものとなり、300部を超えると組成物への充填が困難となり、加工性が悪くなる。」[摘示記載(1-6)]との記載からも明らかである。
また、刊行物1の表1を参酌すると、アルミニウム水酸化物の充填量を10部とし、Co2O3を1部加えた比較例1においては、アルミニウム水酸化物の充填量を100部ないし200部とした他の実施例及び比較例と比較して、トラッキング(時間)、浸食損失係数(重量%)が著しく劣ることが示されており、アルミニウム水酸化物の充填量が30部に満たないと十分なアーク浸食抵抗性やアークトラッキング抵抗性を得られないとの刊行物1の記載を裏付けるものとなっている。
そうすると、刊行物1に記載されている発明において、アークトラッキング抵抗性及びアーク浸食抵抗性を更に追求していく場合においても、アルミニウム水酸化物の充填量が30部より以上であれば、ほぼ同様のアークトラッキング抵抗性及びアーク浸食抵抗性が得られるであろうことは予想し得たとしても、アルミニウム水酸化物の充填量をゼロ(即ち、アルミニウム水酸化物は添加しない)としても、金属酸化物の量を増やすことにより十分なアークトラッキング抵抗性及びアーク浸食抵抗性を有する添加剤を得られるということまで容易に推考し得たということはできない。
また、刊行物2には、FeO、Fe2O3 、 酸化セリウム、酸化チタンと白金とを組み合わせたものがシリコーンゴムに耐燃性を付与することが記載され、刊行物3には、酸化セリウム、水酸化セリウムと白金、カーボンブラックとを組合せたものがシリコーンゴムに高温での接着耐久性を付与することが記載され、さらに、刊行物4には、酸化セリウム、水酸化セリウムと白金とを併用することでシリコーンゲルに難燃性を付与すること、刊行物5には、セリウム系化合物、酸化鉄、酸化チタンと白金、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)とを併用することでシリコーンゴムに難燃性を付与すること、刊行物6には、酸化セリウムと白金、水酸化アルミニウムとを併用することでシリコーンゴムに難燃性をを付与することがそれぞれ記載されている。
しかしながら、上記したように刊行物2?6にはアークトラッキング抵抗性及びアーク浸食抵抗性が得られることについては全く記載も示唆もされていないし、耐燃性、高温での接着耐久性、難燃性を有する遷移金属化合物がアルミニウム水酸化物と同様のアークトラッキング抵抗性及びアーク浸食抵抗性を有するものと直ちにいえるものではない。
そうすると、刊行物1?6に記載された発明を組み合わせたとしても、アルミニウム水酸化物を充填することなく良好なアークトラッキング抵抗性及びアーク浸食抵抗性を有するオルガノポリシロキサンエラストマーを得ることが容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、本件発明1は、刊行物1?6に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。
(ii)本件発明2?8について
本件発明2?8は、本件発明1を直接的に引用するか、間接的に引用するものであるから、上記したように本件発明1が刊行物1?6に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるということができない以上、本件発明1と同様、本件発明2?8は、刊行物1?6に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。
V.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知の理由及び特許異議申立の理由、証拠によっては、本件発明1?8についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?8についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
PtとPt以外の遷移金属をベースにした化合物とをベースにした混合物を使用するシリコーンエラストマーのアーク抵抗性を高めるための添加剤
【発明の詳細な説明】
本発明の主題は、
・白金と白金以外の遷移金属の賢明に選定された化合物の1種以上とをベースにした混合物を、
・金属触媒の存在下に室温で又は重付加反応からの熱により架橋する(RTV、LSR又は重付加EVC組成物と称される)か或いは有機過酸化物との作用により高温で架橋する(EVC組成物と称される)ポリオルガノシロキサンに(シリコーンエラストマーを得るために)、
アークトラッキング抵抗性及びアーク浸食抵抗性を高めるために使用する添加剤として使用することに関する。
表現“アークトラッキング抵抗性及びアーク浸食抵抗性”とは、いわゆるRTV、LSR又は重付加EVC或いはEVCポリオルガノシロキサン組成物を架橋させることによって得られるこのタイプのシリコーンエラストマーについてのこれらの性質を意味するものであると理解されたい。
表現“RTV”、“LSR”及び“EVC”は当業者には周知である。RTVは“室温加硫(硬化)”の略号であり、LSRは“液状シリコーンゴム”の略号であり、EVCは“熱加硫(硬化)性エラストマー”の略号である。
JP-A-76/035,501号から、EVAから得られたシリコーンエラストマーの耐燃性を高めるために白金と式:(FeO)x・(Fe2O3)y(ここで、比率x/yは0.05:1?1:1の間にある)の混合鉄酸化物との混合物を使用することが知られている。
また、FR-A-2,166,313及びEP-A-0,347,349から、EVC組成物(FR-A-2,166,313)から又はRTV組成物(EP-A-0,347,349)から得られたシリコーンエラストマーの難燃性を高めるために白金と少なくとも1種の希土類金属酸化物との混合物、特に白金と酸化セリウム(IV)CeO2との混合物を使用することが知られている。
ここに、本出願人は、白金と混合酸化鉄又は酸化セリウム(IV)との混合物をベースとしたこの種の添加剤を含有するRTV、LSR、重付加EVC又はEVCポリオルガノシロキサン組成物がさらに良好なアークトラッキング抵抗性及びアーク浸食抵抗性を有することを発見した。また、本出願人は、良好なアークトラッキング抵抗性及びアーク浸食抵抗性を有すると共に依然として良好な難燃性及び良好な機械的性質を有するシリコーンエラストマー(これらのエラストマーはRTV、LSR、重付加EVC又はEVC型のポリオルガノシロキサン組成物から得られたが)を得るのに使用できる、上記の混合物以外の添加剤を発見した。
従って、本発明は、以下の成分から形成される混合物A、B又はCを、白金触媒の存在下に室温で又は重付加反応からの熱により架橋するか或いは有機過酸化物との作用により高温で架橋するシリコーンエラストマー取得用ポリオルガノシロキサン組成物Dにアークトラッキング抵抗性及びアーク浸食抵抗性を高めるための添加剤として使用することに関する。ここに、
・該混合物A、B又はCは、
(1)混合物Aについては、成分A1+A3の混合物であって、成分A1が白金の錯体又は化合物の形の白金であり且つ成分A3がFeOとFe2O3との組み合わせからなるもの、
(2)混合物Bについては、成分B1+B2の混合物であって、成分B1が白金の錯体又は化合物の形の白金であり且つ成分B2が酸化及び(又は)水酸化セリウム(IV)からなるもの、
(3)混合物Bについては、成分B1+B3の混合物であって、成分B1が白金の錯体又は化合物の形の白金であり且つ成分B3が酸化及び(又は)水酸化セリウム(IV)と酸化チタンTiO2との組み合わせからなるもの、或いは
(4)混合物Cについては、成分C1+C2の混合物であって、成分C1が白金の錯体又は化合物の形の白金であり且つ成分C2が酸化及び(又は)水酸化セリウム(IV)と酸化チタンTiO2との組み合わせとFeOとFe2O3との組み合わせとの混合物からなるもの
であり(添加剤の成分A1、B1又はC1は、室温で又は重付加反応からの熱により架橋するポリオルガノシロキサンDに含有される触媒白金の形で存在できる)、
・ここで、種々の成分A1、A3、B1、B2、B3、C1及びC2の量並びに組み合わせの場合にそれらのいくつかの量の間に存在しうる比率は以下に記載する範囲:
*白金の量は、元素状白金の重量部で表わして、硬化性組成物Dのポリオルガノシロキサン成分の総重量に関して1?250ppmの範囲、
*混合物A、B及びCの成分A3、B2、B3及びC2の量は、成分の重量部で表わして、硬化性組成物Dのポリオルガノシロキサン成分100部当たり0.5?30重量部の範囲、
*成分A3(組み合わせ)において、FeOの重量対Fe2O3の重量の比率は0.1:1?9:1の範囲、
*成分B3(組み合わせ)において、酸化及び(又は)水酸化セリウム(IV)の重量対TiO2の重量の比率は0.6:1?6:1の範囲、
*成分C2(組み合わせ)において、成分A3の重量対成分B3の重量の比率は0.02:1?1:1の範囲
内にあるものとする。
混合物A、B及びCの構成成分A1、B1及びC1である白金は、特に次のものであってよい。
-金属(元素状)白金の形態のもの、
-以下の形態のもの:
・特許US-A-2,823,218号に記載のような塩化白金酸H2PtCl6・H2O、
・無水の塩化白金酸、
・PtCl2[P(CH2-CH2-CH3)3]2、
・錯体、例えば特許US-A-3,159,601に記載されるような式:(PtCl2・オレフィン)2及びH(PtCl3・オレフィン)の如き錯体(錯体のオレフィンは特にエチレン、プロピレン、ブチレン、シクロへキセン又はスチレンを表わす)、
・特許US-A-3,159,662に記載のような塩化白金/シクロプロパン錯体である(PtCl2・C3H6)2、
・下記の物質、化合物又は錯体:

白金の量は、元素状白金の重量部で表わして、硬化性組成物Dのポリオルガノシロキサン成分の総重量に関して一般に1?250ppm、好ましくは3?100ppmの範囲内にある。RTV、LSR及び重付加EVA型の組成物Dの場合には、白金成分は、有利には、これらの組成物を架橋させる原因である重付加反応を実施するのに通常使用される触媒の白金に相当する。
混合物A、B及びCの成分A2又はA3、B2又はB3及びC2に関しては、表現“無機化合物”とは、特に酸化物及び水酸化物を意味するものと理解されたい。これらの化合物は、一般的に固体、場合により無水の固体であって、20μmを越えず、好ましくは0.02?5μmの範囲にある平均直径及び0.2m2/g以上、好ましくは0.5?100m2/gの範囲にあるBET比表面積を有する粒子の形態で使用される。
一群の粒子を所定の範囲内にある平均直径を有するものというときは、粒子の50重量%以上が問題の範囲内にある直径を有するものと理解すべきである。
BET比表面積は、AFNOR NFT 45007(1987年11月)標準規格に相当する“The Journal of American Chemical Society Vol.80,p.309(1938)”に記載されたブルナウエル・エメット・テラー法を使用して決定される。
混合物A、B及びCの成分A2又はA3、B2又はB3及びC2の量は、成分の重量部で表わして、硬化性組成物Dのポリオルガノシロキサン成分100部当たり一般に0.5?30重量部、好ましくは1?15重量部の範囲内にある。
成分A3(組み合わせ)においては、化合物A2.1の重量対化合物A2.2の重量の比率は、一般に0.1:1?9:1、好ましくは0.25:1?4:1の範囲内にある。
成分B3(組み合わせ)においては、化合物B2.1の重量対化合物B2.2の重量の比率は、一般に0.6:1?6:1、好ましくは0.8:1?4:1の範囲内にある。
成分C2(組み合わせ)においては、成分A2又はA3の重量対成分B2又はB3の重量の比率は、一般に0.02:1?1:1、好ましくは0.05:1?0.5:1の範囲内にある。
本発明の有益な具体例によれば、
1.A1+A3型の混合物Aであって、成分A1が白金の錯体又は化合物の形態の白金であり且つ成分A3がFeOとFe2O3との組み合わせからなるもの、
2.B1+B3型の混合物Bであって、成分B1が前記1の成分A1の意味を有し且つ成分B2が酸化及び(又は)水酸化セリウム(IV)からなるもの、
3.B1+B3型の混合物Bであって、成分B1が前記1の成分A1の意味を有し且つ成分B3が酸化及び(又は)水酸化セリウム(IV)と酸化チタンTiO2との組み合わせからなるもの、或いは
4.成分C1+成分C2型の混合物Cであって、成分C1が前記1の成分A1の意味を有し且つ成分C2が前記3の成分B3と前記1の成分A3との組み合わせからなるもの
からなり、ここに種々の成分A1、A3、B1、B2、B3、C1及びC2の量並びに組み合わせの場合にそれらのいくつかの量の間に存在しうる比率は上記した“一般に(・・・)?(・・・)の範囲内にある”と称した広い範囲内にあるようなものが添加剤として使用される。
本発明の特に有益な具体例によれば、前記1、2、3及び4に述べた混合物の一つであって、種々の成分の量並びに組み合わせの場合にそれらのいくつかの量の間に存在しうる比率は上記した“好ましくは(・・・)?(・・・)の範囲内にある”と称した狭い範囲内にあるようなものが添加剤として使用される。
1種又はそれ以上の(一成分又は多成分)のパッケージとして提供される本発明の範囲内にはいる硬化性のポリオルガノシロキサン組成物Dは、1種以上のポリオルガノシロキサン成分から形成される主成分と、好適な触媒と、随意としての特に補強若しくは半補強充填剤又は増量剤又は硬化性組成物の流動性を変性させるように働く充填剤、架橋剤、接着促進剤、可塑剤、触媒禁止剤及び着色剤よりなる群から選択される1種以上の化合物とを含有する。
本発明の範囲内に入る組成物Dの主成分を構成するポリオルガノシロキサンは、線状の、分岐状の又は架橋していてよく、炭化水素基及び(又は)アルケニル基や水素原子からなる反応性の基を含有する。ポリオルガノシロキサン組成物は、文献に広く記載されており、特にウオルター・ノルの研究“シリコーンの化学及び技術”、アカデミック・プレス社、1968、第2版、第386?409頁に記載されていることを認識されたい。
さらに詳しくは、本発明の範囲内に入る組成物Dの主成分をなすポリオルガノシロキサンは、次の一般式:

のシロキシル単位及び(又は)一般式:

のシロキシル単位
(これらの式において、種々の記号は下記の意味を有する:
-記号Rは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ非加水分解性の炭化水素型の基を表し、この基は、
*1?5個の炭素原子を有し及び1?6個の塩素及び(又は)弗素原子を含有するアルキル及びハロアルキル基、
*3?8個の炭素原子を有し及び1?4個の塩素及び(又は)弗素原子を含有するシクロアルキル及びハロシクロアルキル基、
*6?8個の炭素原子を有し及び1?4個の塩素及び(又は)弗素原子を含有するアリール、アルキルアリール及びハロアリル基、
*3?4個の炭素原子を有するシアノアルキル基
であることが可能であり、
-記号Zはそれぞれ水素原子又はC2?C6アルケニル基を表し、
-nは0、1、2又は3に等しい整数であり、
-xは0、1、2又は3に等しい整数であり、
-yは0、1又は2に等しい整数であり、
-x+yの和は1?3の範囲内にある)
からなる。
例示すれば、珪素原子に直接結合した有機基Rのうちでは、次の基:メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、n-ブチル、t-ブチル、クロルメチル、ジクロルメチル、α-クロルメチル、α,β-ジクロルエチル、フルオルメチル、ジフルオルメチル、α,β-ジフルオルエチル、3,3,3-トリフルオルプロピル、トリフルオルシクロプロピル、4,4,4-トリフルオルブチル、3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオルペンチル、β-シアノエチル、γ-シアノプロピル、フェニル、p-クロルフェニル、メタクロルフェニル、3,5-ジクロルフェニル、トリクロルフェニル、テトラクロルフェニル、o-、p-又はm-トリル、α,α,α-トリフルオルトリル、キシリル、例えば2,3-ジメチルフェニル及び3,4-ジメチルフェニルが挙げられる。
好ましくは、珪素原子に直接結合した有機基Rはメチル又はフェニル基であり、これらの基はハロゲン化されていてよく、或いはシアノアルキル基であってよい。
記号Zは水素原子又はアルケニル基であり、後者は好ましくはビニル基である。
ポリオルガノシロキサンの性状、従ってシロキシ単位(I)とシロキシ単位(II)との間の比率並びにそれらの分布は、周知のように、硬化性の組成物をエラストマーに転化するする目的で該組成物について実施される架橋処理に応じて選択される。
金属触媒、一般的に白金をベースとした触媒の存在下に室温で又は重付加反応からの熱、本質的にはヒドロシリル基とアルケニルシリル基との間の反応からの熱によって架橋する二成分又は一成分ポリオルガノシロキサン組成物Dは、例えば、特許US-A-3,220,972;3,284,406;3,436,366;3,697,473及び4,340,709に記載されている。これらの組成物に使用されるポリオルガノシロキサンは、一般的には、一方では、残基ZがC2?C6アルケニル基を表し且つxが少なくとも1に等しい単位(II)からなり、これらの単位(II)が場合により単位(I)に結合していてよい線状の、分岐状の又は架橋したポリシロキサンに、他方では、残基Zが水素原子を表し且つxが少なくとも1に等しい単位(II)からなり、これらの単位(II)が場合により単位(I)に結合していてよい線状の、分岐状の又は架橋したポリヒドロシロキサンに基づいた対からなる。
重付加反応により架橋する組成物D(RTV組成物と称される)の場合には、アルケニルシリル基を有するポリオルガノシロキサン成分は、有利には多くとも100,000mPa.s、好ましくは400?100,000mpa.sの25℃の粘度を有する。
重付加反応により架橋する組成物D(LSR組成物と称される)の場合には、アルケニルシリル基を有するポリオルガノシロキサン成分は、有利には100,000mPa.s以上、好ましくは100,000mPa.sよりも大きい値から500,000mpa.sまでの範囲に入る25℃の粘度を有する。
重付加反応により架橋する組成物D(重付加EVC組成物と称される)の場合には、アルケニルシリル基を有するポリオルガノシロキサン成分は、有利には500,000mPa.s以上、好ましくは1,000,000mPa.s?30,000,000mpa.sの間、さらにはそれ以上の25℃の粘度を有する。
いわゆるRTV、LSR又は重付加EVC組成物であるポリオルガノシロキサン組成物Dの場合には、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン成分は、多くとも10,000mPa.s、好ましくは5?1000mpa.sの25℃の粘度を有する。
さらに他の組成物は、有機過酸化物の作用により高温で硬化する組成物Dであってよい。いわゆるEVC組成物であるこのような組成物に使用されるポリオルガノシロキサン又はゴムは、残基ZがC2?C6アルケニル基を表し且つxが1に等しい単位(II)と随意に結合してよいシロキシル単位(I)から本質的になる。このようなEVC組成物は、例えば、特許US-A-3,142,655;3,821,140;3,836,489及び3,839,266に記載されている。
これらのEVC組成物のポリオルガノシロキサン成分は、有利には少なくとも1,000,000mPa.s、好ましくは2,000,000mPa.s?30,000,000mpa.sの間、さらにはそれ以上の25℃の粘度を有する。
本発明の範囲内に入る硬化性の組成物Dは、ポリオルガノシロキサン成分と並んで、さらに、触媒並びに随意として架橋剤及び(又は)接着促進剤及び(又は)着色剤、補強若しくは半補強充填剤又は増量剤又は流動性を変性させる用に働く充填剤を含むことができ、これらは好ましくは珪素質充填剤から選択される。
補強充填剤は、熱分解シリカ及び沈降シリカから選択される。それらは、BET法に従って測定して、少なくとも50m2/g、好ましくは100m2/gよりも大きい比表面積及び0.1μm以下の平均粒度を有する。
これらのシリカは、そのままで或いはこの目的のために通常使用される有機珪素化合物で処理した後に好ましくは配合することができる。これらの化合物のうちでは、メチルポリシロキサン類、例えばヘキサメチルジシロキサン及びオクタメチルシクロテトラシロキサン;メチルポリシラザン類、例えばヘキサメチルジシラザン及びヘキサメチルシクロトリシラザン;クロルシラン類、例えばジメチルジクロルシラン、トリメチルクロルシラン、メチルビニルジクロルシラン及びジメチルビニルクロルシラン;アルコキシシラン類、例えばジメチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン及びトリメチルメトキシシランがある。この処理の間に、シリカはその出発時の重量を20%まで、好ましくはほぼ10%まで増大しよう。
半補強充填剤若しくは増量剤又は流動性を変性するように働く充填剤は、100m2/g以下のBET比表面積及び0.1μm以上の平均粒度を有し、好ましくは粉砕石英、焼成クレー及び珪藻土から選択される。
そうする必要があるときは、組成物Dのポリオルガノシロキサン成分の重量に関して0.5?120重量%、好ましくは1?100重量%の充填剤を使用することができる。
本発明の範囲内で好ましいポリオルガノシロキサン組成物Dは、室温で又は重付加反応からの熱により架橋する一成分又は二成分組成物(RTV組成物と称される)であって、
(a)1分子当たり少なくとも2個のビニル基を有する線状のホモ重合体及び共重合体から選択される少なくとも1種のポリジオルガノシロキサンであって、これらのビニル基は異なった珪素原子に結合し且つ鎖内に及び(又は)鎖の末端に位置しており、珪素原子に結合したその他の有機基はメチル、エチル及びフェニル基から選択され、これらのその他の基の少なくとも60モル%(好ましくはこれらのその他の基の全て)はメチル基であり、しかも25℃で400?100,000mPa.sの範囲の粘度を有するようなもの100重量部、
(b)1分子当たり少なくとも2個の水素原子を有する線状又は環状のホモ重合体及び共重合体から選択される少なくとも1種のポリオルガノヒドロシロキサンであって、これらの水素原子は異なった珪素原子に結合し、珪素原子に結合した有機基はメチル、エチル及びフェニル基から選択され、これらの基の少なくとも60モル%(好ましくはこれらのその他の基の全て)はメチル基であり、しかも25℃で5?1000mPa.sの範囲の粘度を有するようなもの(この反応体(b)は、(b)のヒドリド官能基対(a)のビニル基のモル比が1.1?4の間にあるような量で使用されるものとする)、
(c)触媒として有効な量の白金触媒、
(d)ポリオルガノシロキサン(a)+(b)の組み合わせ100重量部当たり0?120重量部、好ましくは0?100重量部の珪素質充填剤
を含むものである。
一具体例によれば、反応体(a)の100重量%までが、その構造内に0.1?20重量%の1個以上のビニル基を含有するポリオルガノシロキサン樹脂であって、該構造がM(トリオルガノシロキシル)、D(ジオルガノシロキシル)、T(モノオルガノシロキシル)及びQ(SiO4/2)単位を有し、これらの単位の少なくとも一つがT又はQ単位であり、しかも該ビニル基がM、D及び(又は)T単位によって支持されることが可能であるようなものによって置き換えられる。
反応体(a)は、有利には、線状のポリジオルガノシロキサンであって、その鎖はn=2である単位(I)から本質的になり、しかもこの鎖はそれぞれの末端にZ=ビニルであり且つx=1及びy=2である単位(II)を有するようなものであってよい。
反応体(b)は、有利には、その構造内に珪素に結合した少なくとも3個の水素原子を含有する線上のポリオルガノヒドロシロキサンであって、その鎖は随意にn=2である単位(I)と結合していてもよいZ=Hであり且つx=y=1である単位(II)から本質的になり、しかもこの鎖はそれぞれの末端にZ=Hであり且つx=1及びy=2である単位(II)又はn=3である単位(I)を有するようなもの、或いは該ポリオルガノヒドロシロキサンと別の線状のポリオルガノヒドロシロキサンであって、その鎖はn=2である単位(I)から本質的になり、しかもこの鎖はそれぞれの末端にZ=Hであり且つx=1及びy=2である単位(II)を有するようなものとのブレンドであってよい。
触媒(c)の重量は、白金金属の重量部で計算して、オルガノシロキサン(a)+(b)の混合物の重量に基づいて、一般的に1?250ppm、好ましくは3?100ppmである。
その他の好ましいポリオルガノシロキサン組成物Dは、重付加反応からの熱で架橋する一成分又は二成分組成物(LSR組成物と称される)である。これらの組成物は、いわゆるRTVの好ましい組成物に関して上で示した定義(ただし、ビニル含有ポリジオルガノシロキサン(a)の粘度に関しては別であって、このときはそれは100,000mPa.sよりも大きい値から500,000mPa.sまでの範囲内にある)を満足する。
更に好ましいポリオルガノシロキサン組成物Dは、重付加反応からの熱で架橋する一成分又は二成分組成物(重付加EVC組成物と称される)であって、
(a’)1分子当たり少なくとも2個のビニル基を有する線状のホモ重合体又は共重合体である少なくとも1種のポリジオルガノシロキサンゴムであって、これらのビニル基は異なる珪素原子に結合し且つ鎖内に及び(又は)鎖の末端に位置し、珪素原子に結合したその他の有機基はメチル、エチル及びフェニル基から選択され、これらのその他の基の少なくとも60モル%(好ましくはこれらの他の基の全部)はメチル基であり、しかも該ゴムは25℃で500,000mPa.sよりも高く、好ましくは少なくとも1,000,000mPa.sの粘度を有するようなもの100重量部、
(b’)1分子当たり少なくとも3個の水素原子を有する線状、環状又は網状のホモ重合体及び共重合体から選択される少なくとも1種のポリオルガノヒドロシロキサンであって、これらの水素原子は異なる硅素原子に結合され、珪素原子に結合した有機基はメチル、エチル及びフェニル基から選択され、これらの基の少なくとも60モル%(好ましくはこれらの他の基の全部)はメチル基であり、しかも該ヒドロキシシロキサンは25℃で5?1000mPa.sの粘度を有するようなもの(反応体(b’)は、(b’)のヒドリド官能基対(a’)のビニル基のモル比が0.4?10、好ましくは1.1?4になるような量で使用されるものとする)、
(c’)触媒として有効な量の白金触媒、
(d’)ポリオルガノシロキサン(a’)+(b’)の組み合わせ100重量部当たり0.5?120重量部、好ましくは1?100重量部の珪素質充填剤、
を含むようなものである。
ゴム(a’)は、その鎖に沿って、単位(I)(ここで、n=2)を随意に単位(II)(ここで、z=ビニル、x=y=1)と結合させてなり、そしてそれは、その鎖の各端において単位(II)(ここで、Z=ビニル、x=1、y=2)によって又は単位(I)(ここで、n=3)によって停止される。
有益には、成分(b’)として少なくとも1種の線状ポリオルガノヒドロシロキサンが使用され、そのポリオルガノヒドロシロキサンの鎖は単位(II)(ここで、Z=H、x=y=1)より本質上なり、これらの単位(II)は随意に単位(I)(ここで、n=2)と結合され、そしてこの鎖は、各端において単位(II)(ここで、Z=H、x=1、y=2)によって又は単位(I)(ここで、n=3)によって停止される。
ゴム(a’)及びヒドロシリル化合物(b’)の重量に関して白金金属の重量部数で表わした触媒(c’)の量(重量比)は、1?250ppmそして好ましくは3?100ppmである。
シリコーン組成物Dは、成分(a’)、(b’)、(c’)及び(d’)の他に、ゴム(a’)100重量部当たり、25℃で10?1000mPa.sの粘度を有する1?10重量部のシラノール停止ポリジメチルシロキサンオイル(e’)を更に含有することができる。
架橋を遅延させることが要求される場合には、重付加反応によって架橋するポリオルガノシロキサン組成物D(RTV、LSR又は重付加EVC組成物と称される)に白金触媒禁止剤を添加することが可能である。これらの禁止剤は周知である。具体的に言えば、有機アミン、シラザン、有機オキシム、ジカルボン酸のジエステル、アセチレン系ケトン、そしてとりわけ、好ましい禁止剤として、アセチレン系アルコール(例えば、FR-A-1,528,464、2,372,874及び2,704,553を参照されたい)、及び単位(II)(ここで、Z=ビニル、x=y=1)(これらの単位(II)は、単位(I)(ここで、n=2)と随意に結合される)より本質上なる環状ポリジオルガノシロキサンを使用することができる。禁止剤は、その1種を使用するときには、ポリオルガノシロキサン(a)又はゴム(a’)100重量部当たり0.005?5重量部そして好ましくは0.01?3重量部の量で配合される。
更に好ましいポリオルガノシロキサン組成物Dは、
(a”)分子当たり少なくとも2個のビニル基を有する線状のホモ重合体又は共重合体であるポリジオルガノシロキサンゴムであって、これらのビニル基は異なる珪素原子に結合し且つ鎖内に及び(又は)鎖の末端に位置し、珪素原子に結合したその他の有機基はメチル、エチル及びフェニル基から選択され、これらのその他の基の少なくとも60モル%(好ましくはこれらの他の基の全部)はメチル基であり、しかも該ゴムは25℃で少なくとも1,000,000mPa.s、好ましくは少なくとも2,000,000mPa.sの粘度を有するようなもの100重量部、
(b”)0.1?7重量部の有機過酸化物、
(c”)ゴム(a”)100重量部当たり0.5?120重量部、好ましくは1?100重量部の珪素質充填剤、
を含むような一成分組成物(EVC組成物と称される)である。
ゴム(a”)は、その鎖に沿って、単位(I)(ここで、n=2)を随意に単位(II)(ここで、z=ビニル、x=y=1)と結合させてなり、そしてそれは、その鎖の各端において単位(II)(ここで、Z=ビニル、x=1、y=2)によって又は単位(I)(ここで、n=3)によって停止される。しかしながら、これらの適合する単位との混合物としての、異なる構造の単位、例えば式(I)(ここで、n=1及び(又は)SiO4/2)及び(又は)式(II)(ここで、Z=ビニル、x=1、y=0)の単位の存在は、適応する単位の総数に関して多くて2%の量では除外されない。
有機過酸化物(b”)は、ゴム(a”)100部当たり0.1?7部そして好ましくは0.2?5部の量で使用される。これらは当業者には周知であり、そしてより具体的に言えば、過酸化ベンゾイル、過酸化2,4-ジクロルベンゾイル、過酸化ジクミル、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、過安息香酸t-ブチル、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、過酸化ジ-t-ブチル及び1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンを包含する。
EVCタイプの組成物Dは、ゴム(a”)100重量部当たり、25℃で10?5000mPa.sの粘度を有する1?10重量部のシラノール停止ポリジメチルシロキサンオイル(d”)を更に含むことができる。
本明細書において先に定義されたアークトラッキング抵抗性及びアーク腐食抵抗性を向上させるための添加剤を含有するRTV、LSR、重付加EVC及びEVC組成物と称されるポリオルガノシロキサン組成物Dの製造は、公知の機械的手段、例えば、ターボミキサー、ニーダー、スクリュー形ミキサー及びロール形ミキサーを備えた装置を使用して実施される。各成分は、これらの機械に、場合によっては任意の順序で又は所望の一成分若しくは二成分型の組成物を考慮に入れた順序で供給される。
かくして、かかる添加剤を含有するポリオルガノシロキサン組成物Dは一成分組成物になることができ、即ち、単一のパッケージで配送されることができる。かかる組成物がその使用前に貯蔵されなければならないならば、RTV、LSR及び重付加EVC組成物の場合では、白金の触媒作用を抑制し且つ組成物の架橋間に発生する熱によって消失する有効量の禁止剤(先に記載の)を添加するのが望ましい場合がある。また、かかる添加剤を含有するポリオルガノシロキサン組成物Dは二成分組成物になることができ、即ち、2つの別個のパッケージで配送され留ことができ、そしてそれらのうちの1つは架橋用触媒を含む。エラストマーを得るために、2つのパッケージの内容物が混合され、そして触媒によって架橋が行われる。同様の一成分及び二成分組成物が当業者に周知である。
また、かかる添加剤を含有する硬化性組成物Dは、エラストマーを得るために、使用する組成物のタイプ(RTV、LSR、重付加EVC又はEVC)に応じて室温(23℃)又は例えば40℃?250℃の範囲にわたる温度でそれ自体公知の態様で架橋されることができる。
また、かかる添加剤を含有する硬化性組成物Dは硬化して、良好なアークトラッキング抵抗性及びアーク腐食抵抗性、並びに良好な難燃性及び良好な機械的特性を有するエラストマーを生成する。これらのエラストマーは、燃焼させるのが困難である及び(又は)漏れ電流や電気アークに耐えるポリオルガノシロキサンを使用しうる任意の用途において使用されることができる。これらは、例えば、電気絶縁材料、中電圧及び高電圧絶縁体、ケーブル端子付属品、ケーブルジョイント、テレビブラウン管用の陽極キャップ、並びに航空機産業用の成型品又は押出製品を製造するのに使用されることができる。
次の実施例は、本発明の一例として提供されるものであって、いかなる点でも本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
実施例1および2:
A)エラストマーの製造:
下記に定義する一成分組成物から、RTV型エラストマーを得た:
1)対照組成物1:実験室用ターボミキサーを用いて、下記のものを室温(23℃)で混合する:
・下記を含有する懸濁液93.3重量部:
-各鎖端が(CH3)2ViSiO0.5の単位(Vi=ビニル基)で終端するポリジメチルシロキサンの油であって、600mPa・秒の粘度を有し、油100gあたり0.014個のSi-Vi官能基を含むもの67.3重量部;
-300m2/gのBET比表面積を展開する熱分解法シリカであって、初めのシリカの重さが8%増加するようヘキサメチルジシラザンで処理したもの26重量部;
・各鎖端が(CH3)2HSiO0.5の単位で終端するポリジメチルシロキサンの油であって、8mPa・秒の粘度を有し、油100gあたり0.19個のSi-H官能基を含むもの4.7重量部;
・各鎖端が(CH3)2HSiO0.5の単位で終端するポリ(ジメチル)(ヒドロメチル)シロキサンの油であって、300mPa・秒の粘度を有し、油100gあたり全部で0.16個のSiH官能基を含むもの2重量部;
・ジビニルテトラメチルジシロキサンと配位結合した12重量%の白金、すなわち0.0013重量%の金属白金を含む白金錯体(カルステット触媒)のジビニルテトラメチルジシロキサンへの溶液0.011重量部;および
・化合物100gあたり1.15個のSi-Vi官能基を含む環状メチルビニルポリシロキサン四量体0.04重量部。
2)実施例1の組成物:
これは、100重量部の対照組成物1に、FeO(組合せ中に21重量%)およびFe2O3(組合せ中に79重量%)の組合せ(これらの酸化物は、0.1μmの平均直径、および10m2/gのBET比表面積を有する)10重量部を、ターボ型ミキサーを用いて加えることによって得られる。
3)対照組成物2:
これは、100重量部の対照組成物1に、3μmの平均直径、および2m2/gのBET比表面積を有する摩砕した天然シリカ(石英)30重量部を、ターボ型ミキサーを用いて加えることによって得られる。
4)実施例2の組成物:
これは、100重量部の対照組成物1に、下記のものをターボ型ミキサーを用いて加えることによって得られる:
・対照組成物2に用いた摩砕天然シリカ25重量部;および
・実施例1の組成物に用いた酸化鉄の組合せ5重量部。
エラストマーを得るには、Heraeus社が販売する換気装置付きオーブン内で、組成物を適切な成形用型(硬度を測定するのに用いる試験片の場合は6mmの厚さ、また剪断強度を測定し、耐炎性および耐アーク侵食性試験を実施するのに用いる試験片の場合は2mmの厚さを有する)中で150℃で60分間架橋結合させる。
B)エラストマー特性の評価:
得られた結果を、下の表Iに示す:

(1)SAH:ショアA硬度;測定は、DIN53505の規格の規定により実施。
(2)TS:剪断強度;測定は、ASTMのD624-Aの規格の規定により実施。
(3)得られたエラストマーの耐炎性試験は、保険業者研究所
(Underwriters Laboratories)が定義したプロトコル(UL94V)第4版、1991年6月18日により実施。試験片(長さ127mm、幅12.7mm、厚さ2mm)を、10秒の露出時間で980℃の炎に接触させ、その後、消滅時間を測定(各消滅時間は、9回の耐炎性試験の平均に相当)。
(4)耐アーク侵食性試験は、下記に定義するプロトコルにより実施:
この試験の原理は、シリコーンエラストマーを含む材料の表面に、「ドライバンドアーク」型の応力を局所的に印加し、応力によって生じた材料の侵食を測定することからなる。この試験の特異性の一つは、印加された電力が限定的であり、9±1ワットの平均値前後に調節されることにある。
配列の線図を添付の図1に示す;この線図では、参照番号(1)?(9)は、それぞれ、下記を意味する:
(1)試験しようとするシリコーンエラストマーを含む材料;
(2)電気アークを発生する犬釘;
(3)材料(1)を支え、水を内容するセル;
(4)水;
(5)測定分流路の抵抗器;
(6)リミット抵抗器;
(7)50Hzで作動する高圧発電機;
(8)分圧器;および
(9)その機能が、電気アークを材料(1)の表面に照射かつ維持する電気的パラメータを精確に制御することにあるコンピュータ。
4.1-試験の実施
4.1.1-標本の機械的定置:
1.5x2x0.2cmの寸法を有する標本を、それらの底部から1cmでエポキシ樹脂の飾り板に接着する。次いで、添付の図2に示すとおり、飾り板をガラス容器内に、水平と50.6°の角度をなすように保持するが、ここで参照番号(10)は、シリコーンエラストマーの標本を意味し、参照番号(11)は、エポキシ樹脂の飾り板を意味する。飾り板(11)と、それに接着された標本(10)とが形成する組合せは、図1について上記した、シリコーンエラストマーを含む材料(1)を構成する。次いで、飾り板の基部にスズのワイヤを巻き付けることによって、アース電極を形成し;次いで、この組立品をセルに入れ、水準を底部からの与えられた距離に設定する。次いで、副尺を用いて犬釘を定置する。標準的試験のための犬釘の位置は、添付の図3に示すとおり、水面から垂直上方に7mm、標本から水平に1.3mm側方であって、ここで距離d1=7mm、距離d2=1.3mmである。
4.1.2-パラメータの設定、および試験の開始:
発電機の無負荷電圧を、7kVに設定する。
間欠的に標本を洗浄する装置系を始動する。アークで処理された標本表面を間欠的に洗い流して、アークのために形成されるいかなる灰も除去する。この洗浄は、10分ごとに10秒間仕向けられる非常に細かい水ジェットからなる。セル内の水準は、吸引によって一定に保つ。
すべての試験パラメータを設定したならば、アース電極および犬釘を装置に接続する。次いで、発電機のスイッチを入れることができる。
4.1.3-試験の終了:
印加したエネルギーが500W分に達したならば直ちに、電気回路を開く。
4.2-侵食された体積の測定:
標本を、エポキシ樹脂の飾り板から取り外す。侵食された領域から灰のすべての痕跡を、水洗することによって除去し、次いで、標本をアルコールで洗浄し、次いで乾燥する。
次に、侵食領域に与えてこれを充填することができる(添付の図4を参照)のに充分に流動的であるエポキシ樹脂を混合する。混合した後、樹脂を、真空鐘内で少なくとも10分間脱気する。樹脂は、脱気したならば、標本の表面の侵食マーク(孔)を充填し、初めの体積に復帰させるのに用いる。次いで、肉眼による検査が非常に重要である。カッターナイフの刃を用いて、余剰の樹脂を標本から除去する。生じた侵食の印影を完全に(終夜)硬化させた後、離型し、精密天秤で秤量する。判明した重量(mg)は、侵食体積を表わす。添付の図4の左方の部分には、シリコーンエラストマーを含む材料(1)、電気アーク(12)を発生する犬釘(2)、水(4)を内容する容器(3)、および高圧発電機(7)を再び示し;添付の図4の右方の部分には、エポキシ樹脂の支持飾り板から剥がされ、アークが誘導した侵食マーク(または孔)(13)を有する、シリコーンエラストマーの標本(10)を示す。
酸化鉄が与える利得は、明白である。耐炎性の試験と耐アーク侵食性の試験との結果も、同様に相関することも認め得る。
実施例3:
A)エラストマーの製造:
下記に定義する別の一成分組成物から、RTVエラストマーを得た:
1)対照組成物3:実験室用ターボミキサーを用いて、下記のものを室温(23℃)で混合する:
・0.55重量%のビニル基を有し、17.5重量%の(CH3)3SiO0.5の単位、0.3重量%の(CH3)2ViSiO0.5の単位、74.5重量%の(CH3)2SiOの単位、1.5重量%の(CH3)ViSiOの単位、および6.2重量%のSiO2の単位からなる、MMV1DDV2Qの構造を有する樹脂65重量部;
・3μmの平均直径、および2m2/gのBET比表面積を有する摩砕した天然シリカ(石英)33重量部;
・各鎖端が(CH3)2HSiO0.5の単位で終端するポリ(ジメチル)(ヒドロメチル)シロキサンの油であって、25mPa・秒の粘度を有し、油100gあたり0.7個のSi-H官能基を含むもの2.9重量部;
・ジビニルテトラメチルジシロキサンと配位結合した12重量%の白金、すなわち0.00075重量%の金属白金を含む白金錯体(カルステット触媒)のジビニルテトラメチルジシロキサンへの溶液0.0063重量部;および
・1-エチニル-1-シクロヘキサノールからなる阻害剤0.03重量部。
2)実施例3の組成物:
これは、100重量部の対照組成物3に、実施例1の組成物に用いた酸化鉄の組合せ5重量部をターボ型ミキサーを用いて加えることによって得られる。
エラストマーを得るには、Heraeus社が販売する換気装置付きオーブン内で、組成物を150℃で60分間架橋結合させる。
B)エラストマー特性の評価:
得られた結果を、下の表IIに示す:

注(1)?(4):表Iを参照のこと。
実施例4?6:
A)エラストマーの製造:
下記に定義する別の一成分組成物から、RTV型エラストマーを得た:
1)対照組成物4:実験室用ターボミキサーを用いて、下記のものを室温(23℃)で混合する:
・下記を含有する懸濁液93.4重量部:
-対照組成物1に用いた、各鎖端が(CH3)2ViSiO0.5の単位で終端するポリジメチルシロキサンの油70.4重量部;
-対照組成物1に用いた、ヘキサメチルジシラザンで処理した発熱性シリカ23重量部;
・2μmの平均直径、および3m2/gのBET比表面積を有する摩砕した天然シリカ(石英)1.7重量部;
・対照組成物1に用いた、各鎖端が(CH3)2HSiO0.5の単位で終端するポリジメチルシロキサンの油3.0重量部;
・各鎖端が(CH3)3SiO0.5の単位で終端するポリ(ジメチル)(ヒドロメチル)シロキサンの油であって、10mPa・秒の粘度を有し、油100gあたり全部で0.36個のSi-H官能基を含むもの1.9重量部;
・ジビニルテトラメチルジシロキサンと配位結合した12重量%の白金、すなわち0.003重量%の金属白金を含む白金錯体(カルステット触媒)のジビニルテトラメチルジシロキサンへの溶液0.025重量部;および
・化合物100gあたり1.15個のSi-Vi官能基を含む環状メチルビニルポリシロキサン四量体0.08重量部。
2)実施例4の組成物:
これは、ターボ型ミキサーを用いて、100重量部の対照組成物4に、2μmの平均直径、および1m2/gのBET比表面積を有する無水水酸化セリウム(IV)3重量部を加えることによって得られる。
3)実施例5の組成物:
これは、ターボ型ミキサーを用いて、100重量部の対照組成物4に下記のものを加えることによって得られる:
・実施例4の組成物に用いた水酸化セリウム(IV)3重量部;および
・0.03μmの平均直径、および50m2/gのBET比表面積を有する酸化チタンTiO23重量部。
4)実施例6の組成物:
これは、ターボ型ミキサーを用いて、100重量部の対照組成物4に下記のものを加えることによって得られる:
・実施例4の組成物に用いた水酸化セリウム(IV)3重量部;
・実施例5の組成物に用いたTiO21重量部;および
・実施例1の組成物に用いた酸化鉄の組合せ0.25重量部。
エラストマーを得るには、Heraeus社が販売する換気装置付きオーブン内で、組成物を150℃で60分間架橋結合させる。
B)エラストマー特性の評価:
得られた結果を、下の表IIIに示す:

注(1)、(2)および(3):表Iを参照のこと。
UL94の試験の場合、分類は、得られた分類に合致する試験片の(全部で9個のうちの)数を示すことによって完了することに留意しなければならない。
(57)【特許請求の範囲】
1.以下の成分から形成される混合物A、B又はCからなる、白金触媒の存在下に室温で又は重付加反応からの熱により架橋するか或いは有機過酸化物との作用により高温で架橋するシリコーンエラストマー取得用ポリオルガノシロキサン組成物Dのアークトラッキング抵抗性及びアーク浸食抵抗性を高めるための添加剤:
・該混合物A、B又はCは、
(1)混合物Aについては、成分A1+A3の混合物であって、成分A1が白金の錯体又は化合物の形の白金であり且つ成分A3がFeOとFe2O3との組み合わせからなるもの、
(2)混合物Bについては、成分B1+B2の混合物であって、成分B1が白金の錯体又は化合物の形の白金であり且つ成分B2が酸化及び(又は)水酸化セリウム(IV)からなるもの、
(3)混合物Bについては、成分B1+B3の混合物であって、成分B1が白金の錯体又は化合物の形の白金であり且つ成分B3が酸化及び(又は)水酸化セリウム(IV)と酸化チタンTiO2との組み合わせからなるもの、或いは
(4)混合物Cについては、成分C1+C2の混合物であって、成分C1が白金の錯体又は化合物の形の白金であり且つ成分C2が酸化及び(又は)水酸化セリウム(IV)と酸化チタンTiO2との組み合わせとFeOとFe2O3との組み合わせとの混合物からなるもの
であり(添加剤の成分A1、B1又はC1は、室温で又は重付加反応からの熱により架橋するポリオルガノシロキサン組成物Dに含有される触媒白金の形で存在できる)、
・ここで、種々の成分A1、A3、B1、B2、B3、C1及びC2の量並びに組み合わせの場合にそれらのいくつかの量の間に存在しうる比率は以下に記載する範囲:
*白金の量は、元素状白金の重量部で表わして、ポリオルガノシロキサン組成物Dのポリオルガノシロキサン成分の総重量に関して1?250ppmの範囲、
*混合物A、B及びCの成分A3、B2、B3及びC2の量は、成分の重量部で表わして、ポリオルガノシロキサン組成物Dのポリオルガノシロキサン成分100部当たり0.5?30重量部の範囲、
*成分A3(組み合わせ)において、FeOの重量対Fe2O3の重量の比率は0.1:1?9:1の範囲、
*成分B3(組み合わせ)において、酸化及び(又は)水酸化セリウム(IV)の重量対TiO2の重量の比率は0.6:1?6:1の範囲、
*成分C2(組み合わせ)において、成分A3の重量対成分B3の重量の比率は0.02:1?1:1の範囲
内にあるものとする。
2.1種又はそれ以上の(一成分又は多成分)のパッケージとして提供される硬化性のポリオルガノシロキサン組成物Dが、1種以上のポリオルガノシロキサン成分から形成される主成分と、好適な触媒と、随意としての特に補強若しくは半補強充填剤又は増量剤又は硬化性組成物の流動性を変性させるように働く充填剤、架橋剤、接着促進剤、可塑剤、触媒禁止剤及び着色剤よりなる群から選択される1種以上の化合物とを含有することを特徴とする、請求項1に記載の添加剤。
3.ポリオルガノシロキサン組成物Dの主成分をなすポリオルガノシロキサンが、次の一般式:

のシロキシル単位及び(又は)一般式:

のシロキシル単位
(これらの式において、種々の記号は下記の意味を有する:
-記号Rは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ非加水分解性の炭化水素型の基を表し、この基は、
*1?5個の炭素原子を有し及び1?6個の塩素及び(又は)弗素原子を含有するアルキル及びハロアルキル基、
*3?8個の炭素原子を有し及び1?4個の塩素及び(又は)弗素原子を含有するシクロアルキル及びハロシクロアルキル基、
*6?8個の炭素原子を有し及び1?4個の塩素及び(又は)弗素原子を含有するアリール、アルキルアリール及びハロアリル基、
*3?4個の炭素原子を有するシアノアルキル基
であることができ、
-記号Zはそれぞれ水素原子又はC2?C6アルケニル基を表し、
-nは0、1、2又は3に等しい整数であり、
-xは0、1、2又は3に等しい整数であり、
-yは0、1又は2に等しい整数であり、
-x+yの和は1?3の範囲内にある)
からなることを特徴とする、請求項2に記載の添加剤。
4.ポリオルガノシロキサン組成物Dが室温で又は重付加反応からの熱により架橋する一成分又は二成分組成物(RTV組成物と称される)であって、
(a)1分子当たり少なくとも2個のビニル基を有する線状のホモ重合体及び共重合体から選択される少なくとも1種のポリジオルガノシロキサンであって、これらのビニル基は異なった珪素原子に結合し且つ鎖内に及び(又は)鎖の末端に位置しており、珪素原子に結合したその他の有機基はメチル、エチル及びフェニル基から選択され、これらのその他の基の少なくとも60モル%はメチル基であり、しかも25℃で400?100,000mPa.sの範囲の粘度を有するようなもの100重量部、
(b)1分子当たり少なくとも2個の水素原子を有する線状又は環状のホモ重合体及び共重合体から選択される少なくとも1種のポリオルガノヒドロシロキサンであって、これらの水素原子は異なった珪素原子に結合し、珪素原子に結合した有機基はメチル、エチル及びフェニル基から選択され、これらの基の少なくとも60モル%はメチル基であり、しかも25℃で5?1000mPa.sの範囲の粘度を有するようなもの(この反応体(b)は、(b)のヒドリド官能基対(a)のビニル基のモル比が1.1?4の間にあるような量で使用されるものとする)、
(c)触媒として有効な量の白金触媒、
(d)ポリオルガノシロキサン(a)+(b)の組み合わせ100重量部当たり0?120重量部の珪素質充填剤
を含むものであることを特徴とする、請求項2又は3に記載の添加剤。
5.反応体(a)の100重量%までが、その構造内に0.1?20重量%の1個以上のビニル基を含有するポリオルガノシロキサン樹脂であって、該構造がM(トリオルガノシロキシル)、D(ジオルガノシロキシル)、T(モノオルガノシロキシル)及びQ(SiO4/2)単位を有し、これらの単位の少なくとも一つがT又はQ単位であり、しかも該ビニル基がM、D及び(又は)T単位によって支持されることが可能であるようなものによって置き換えられることを特徴とする、請求項4に記載の添加剤。
6.ポリオルガノシロキサン組成物Dが重付加反応からの熱で架橋する一成分又は二成分組成物(LSR組成物と称される)であって、これらの組成物がいわゆるRTV組成物に関して請求項4又は5に示した定義(ただし、ビニル含有ポリジオルガノシロキサン(a)の粘度に関しては別であって、このときはそれは100,000mPa.sよりも大きい値から500,000mPa.sまでの範囲内にある)を満足するものであることを特徴とする、請求項2?5のいずれかに記載の添加剤。
7.ポリオルガノシロキサン組成物Dが重付加反応からの熱で架橋する一成分又は二成分組成物(重付加EVC組成物と称される)であって、
(a’)1分子当たり少なくとも2個のビニル基を有する線状のホモ重合体又は共重合体であるポリジオルガノシロキサンゴムであって、これらのビニル基は異なった珪素原子に結合し且つ鎖内に及び(又は)鎖の末端に位置し、珪素原子に結合したその他の有機基はメチル、エチル及びフェニル基から選択され、これらのその他の基の少なくとも60モル%はメチル基であり、しかも該ゴムは25℃で500,000mPa.sよりも高い粘度を有するようなもの100重量部、
(b’)1分子当たり少なくとも3個の水素原子を有する線状、環状又は網状のホモ重合体及び共重合体から選択される少なくとも1種のポリオルガノヒドロシロキサンであって、これらの水素原子は異なった硅素原子に結合し、珪素原子に結合した有機基はメチル、エチル及びフェニル基から選択され、これらの基の少なくとも60モル%はメチル基であり、しかも25℃で5?1000mPa.sの粘度を有するようなもの(反応体(b’)は、(b’)のヒドリド官能基対(a’)のビニル基のモル比が0.4?10であるような量で使用されるものとする)、
(c’)触媒として有効な量の白金触媒、
(d’)該ポリオルガノシロキサン(a’)+(b’)の組み合わせ100重量部当たり0.5?120重量部の珪素充填剤、
を含むものであることを特徴とする請求項2又は3に記載の添加剤。
8.ポリオルガノシロキサン組成物Dが、
(a”)1分子当たり少なくとも2個のビニル基を有する線状のホモ重合体又は共重合体であるポリジオルガノシロキサンゴムであって、これらのビニル基は異なった珪素原子に結合し且つ鎖内に及び(又は)鎖の末端に位置し、珪素原子に結合したその他の有機基はメチル、エチル及びフェニル基から選択され、これらのその他の基の少なくとも60モル%はメチル基であり、しかも該ゴムは25℃で少なくとも1,000,000mPa.sの粘度を有するようなもの100重量部、
(b”)0.1?7重量部の有機過酸化物、
(c”)該ゴム(a”)100重量部当たり0.5?120重量部の珪素質充填剤
を含むような一成分組成物(EVC組成物と称される)であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の添加剤。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2007-01-05 
出願番号 特願平10-529710
審決分類 P 1 651・ 113- YA (C08L)
P 1 651・ 121- YA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 森川 聡  
特許庁審判長 宮坂 初男
特許庁審判官 高原 慎太郎
井出 隆一
一色 由美子
船岡 嘉彦
登録日 2003-07-11 
登録番号 特許第3450863号(P3450863)
権利者 ロディア シミ
発明の名称 PtとPt以外の遷移金属をベースにした化合物とをベースにした混合物を使用するシリコーンエラストマーのアーク抵抗性を高めるための添加剤  
代理人 倉内 基弘  
代理人 風間 弘志  
代理人 小島 隆司  
代理人 風間 弘志  
代理人 小林 克成  
代理人 石川 武史  
代理人 重松 沙織  
代理人 倉内 基弘  

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