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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05B |
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管理番号 | 1154354 |
審判番号 | 不服2003-10 |
総通号数 | 89 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-01-06 |
確定日 | 2007-03-30 |
事件の表示 | 特願2000-508102号「多色LED照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年3月4日国際公開、WO99/10867、平成13年9月11日国内公表、特表2001-514432号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯・本願発明 本願は、平成10年8月26日(パリ条約による優先権主張1997年8月26日、米国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1?10に係る発明は、平成17年8月15日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「電源(300)及び共通電位基準(390)を含む電力回路に結合された、異なる色の少なくとも2つの発光ダイオード(LED)であって、投射された1つの色の光を投射された他の1つの色の光と組み合わせることによって多色環境照明を与える前記LED; それ自身に割り当てられた可変アドレスを有する制御器;及び 前記制御器に応答する、前記少なくとも2つのLED及び前記電力回路に接続され、前記少なくとも2つのLEDに供給された電流をスイッチングするための少なくとも2つのスイッチング手段を備え、且つ前記少なくとも2つのLEDのそれぞれの電流経路に対応する、前記少なくとも2つのLEDを駆動する駆動手段(380); を備えた照明装置であって、 少なくとも1つのスイッチング手段が各色に与えられ、該各色に与えられた少なくとも1つのスイッチング手段は少なくとも2つの同色のLEDに接続され、 前記制御器は、 アドレス指定および前記照明装置の前記少なくとも2つのLEDを含む複数のLEDに対する強度値を受け取る手段; 前記制御器の前記可変アドレス、前記受け取られたアドレス指定、および前記受け取られた強度値に基づいて、前記少なくとも2つのLEDに対する各強度値を識別する手段;および 前記識別された各強度値に基づいて、前記少なくとも2つのLEDにパルス幅変調(PWM)信号を発生する手段であって、前記識別された各強度値はPWM信号のデューティ・サイクルを表す、前記PWM信号を発生する手段 を備え、そして前記制御器は、前記発生したPWM信号に基づいて前記少なくとも2つのスイッチング手段を周期的に且つ独立に開閉するように構成されている、 ことを特徴とする、前記照明装置。」 2 引用刊行物 これに対して、当審における、平成17年2月4日付けの拒絶理由通知において引用した本願優先日前の平成8年1月12日に頒布された特開平8-7611号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。 (a)「赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタを周囲に設けた3本の蛍光灯をケース本体内に並べて配置するとともに、前記3本の蛍光灯をそれぞれ独立に調光する調光装置を前記ケース本体内に収納し、かつ前記3本の蛍光灯の前面に光りが透過する乳白色の窓部を有し、該窓部以外の部分を遮光した調光用カバーを設けた発光ユニット。」(【請求項1】) (b)「請求項1記載の発光ユニットを取り付け枠に固定し、該発光ユニットに収納した調光装置にディップスイッチを設けて自己のアドレスを設定すると共に、信号線をインターフェース回路を介してパーソナルコンピュータに接続し、該パーソナルコンピュータからアドレスを指定した調光用制御信号を送信する照明装置。」(【請求項3】) (c)「【産業上の利用分野】本発明は、蛍光灯を用いて任意の色彩で調光できる発光ユニット及びその発光ユニットを用いた照明装置に関するものである。 【従来の技術】従来、舞台あるいは広告等の照明として蛍光灯が使用されている。」(段落【0001】?【0002】) (d)「照明装置20は、パーソナルコンピュータ31により設定された色彩に関する調光用信号がインターフェース(I/F)回路32を介して各発光ユニット10の調光装置13に伝達され、この調光装置13により3本の蛍光灯11,11,11の調光量が独立に決定され、それぞれに応じて電源装置33から与えられる電力により発光するようになっている。・・・(中略)・・・また、各調光装置13,…は、それぞれAC電源の電源装置33からの電源線に接続されている。」(段落【0021】?【0022】) (e)「発光ユニット10によれば、ケース本体13内に収納された赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタ11a,11b,11cが巻かれ3本の長い蛍光灯11,11,11は、同じケース本体13内に収納された調光装置12に外部から与えられた制御信号により、それぞれ独立に0%から100%まで調光され、かつ蛍光灯11,11,11の前面側が細長い乳白色の窓部15aとその窓部15a周囲を遮光する遮光部15bを有する調光用カバー15で覆われているため、それぞれ調光された蛍光灯11,11,11の光りが混合され乳白色の窓部15aから外部に発光する。この窓部15aから外部に発光する光の色彩は、各RGB用の蛍光灯11,11,11の調光により任意に決められる。・・・(中略)・・・ また、上記照明装置20では、発光ユニット10を、例えば、格子状に形成された取り付け枠21の各辺に取り付け、各発光ユニット10の調光装置12のディップスイッチによりアドレスを設定すると共に、信号線を順次直列接続してパーソナルコンピュータ31にI/F回路32を介して接続し、パーソナルコンピュータ31で任意の発光ユニット10の発光する色彩を設定することで、I/F回路32からアドレス情報と共に調光用の制御信号を各調光装置13に送信すれば、各調光装置13は予め設定した自己のアドレスに対応する調光用の制御信号のみを取り込み、対応するRGB用の蛍光灯11,11,11に調光量を出力する。したがって、格子状に設けられた発光ユニット10を任意の色彩で所定のタイムスケジュールで発光させたり、あるいは消灯させることで効果的な照明を得ることができる。また、この照明装置20は、各発光ユニット10のアドレスをディップスイッチで設定すると共に、調光装置13間を接続し、パーソナルコンピュータ31にI/F回路32を介して接続するだけで構成できるため、設置、変更あるいは取り外し作業が簡単になる。」(段落【0023】?【0024】) 上記(a)?(e)の記載事項を総合すると、刊行物1には、 「電源装置から与えられる電力により発光する、赤、緑、青の3本の蛍光灯であって、それぞれの蛍光灯の明かりを混合することによって任意の色彩の照明を得る蛍光灯; ディップスイッチにより自己のアドレスを設定可能であり、赤、緑、青の3本の蛍光灯及び電源装置に接続され、赤、緑、青の3本の蛍光灯に調光量を出力する調光装置;を備えた照明装置であって、 調光装置は、アドレス情報と調光用の制御信号を受け取る手段; 該制御信号のうち予め設定した自己のアドレスに対応する調光用の制御信号のみを取り込む手段; 取り込まれた調光用の制御信号に基づいて対応する3つの蛍光灯に調光量を出力する手段を備え、 そして前記調光装置は、前記調光量に基づいて前記3つの蛍光灯のそれぞれの光量を独立に0%から100%まで制御することにより、任意の色彩で所定のタイムスケジュールで発光させたり、あるいは消灯させることができるように構成されている、照明装置。」(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 3 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、その意味、機能または作用等からみて、後者の「電源装置から与えられる電力により発光する」は前者の「電源(300)及び共通電位基準(390)を含む電力回路に結合された」に相当し、以下同様に後者の「ディップスイッチによりアドレスを設定可能であ」る「調光装置」は前者の「それ自身に割り当てられた可変アドレスを有する制御器」に、後者の「アドレス情報」は前者の「アドレス指定」に、後者の「調光用の制御信号」は前者の「強度値」に、それぞれ相当する。 そして、後者の「赤、緑、青の3本の蛍光灯であって、それぞれの蛍光灯の明かりを混合することによって任意の色彩の照明を得る蛍光灯」と前者の「異なる色の少なくとも2つの発光ダイオード(LED)であって、投射された1つの色の光を投射された他の1つの色の光と組み合わせることによって多色環境照明を与える前記LED」とはともに異なる色の少なくとも2つの前記光源であって、投射された1つの色の光を投射された他の1つの色の光と組み合わせることによって多色環境照明を与える光源という点で、後者の「調光量」と前者の「パルス幅変調(PWM)信号」ないし「PWM信号」とはともに「光量信号」という点で、それぞれ共通する。 以上のことから、後者の「アドレス情報と調光用の制御信号を受け取る手段」は「アドレス指定および前記照明装置の前記少なくとも2つの」光源「を含む複数の」光源「に対する強度値を受け取る手段」と、後者の「制御信号のうち予め設定した自己のアドレスに対応する調光用の制御信号のみを取り込む手段」は「制御器の前記可変アドレス、前記受け取られたアドレス指定、および前記受け取られた強度値に基づいて、」少なくとも2つの光源に対する「各強度値を識別する手段」と、後者の「取り込まれた調光用の制御信号に基づいて対応する3つの蛍光灯に調光量を出力する手段」は「識別された各強度値に基づいて、前記少なくとも2つの」光源に光量信号を「発生する手段」と、それぞれいうことができる。 したがって、両者は、 「電源(300)及び共通電位基準(390)を含む電力回路に結合された、異なる色の少なくとも2つの光源であって、投射された1つの色の光を投射された他の1つの色の光と組み合わせることによって多色環境照明を与える前記光源; それ自身に割り当てられた可変アドレスを有する制御器; を備えた照明装置であって、 前記制御器は、 アドレス指定および前記照明装置の前記少なくとも2つの光源を含む複数の光源に対する強度値を受け取る手段; 前記制御器の前記可変アドレス、前記受け取られたアドレス指定、および前記受け取られた強度値に基づいて、前記少なくとも2つの光源に対する各強度値を識別する手段;および 前記識別された各強度値に基づいて、前記少なくとも2つの光源に光量信号を発生する手段、を備えた照明装置。」の発明である点で一致しており、下記の点で相違している。 【相違点1】光源に関し、本願発明では「発光ダイオード(LED)」であるのに対し、引用発明では「蛍光灯」である点。 【相違点2】照明装置の構成に関し、本願発明では「制御器に応答する、前記少なくとも2つのLED及び前記電力回路に接続され、前記少なくとも2つのLEDに供給された電流をスイッチングするための少なくとも2つのスイッチング手段を備え、且つ前記少なくとも2つのLEDのそれぞれの電流経路に対応する、前記少なくとも2つのLEDを駆動する駆動手段(380)」を備え、「少なくとも1つのスイッチング手段が各色に与えられ、該各色に与えられた少なくとも1つのスイッチング手段は少なくとも2つの同色のLEDに接続され」ており、前記制御器は「識別された各強度値に基づいて、前記少なくとも2つのLEDにパルス幅変調(PWM)信号を発生する手段であって、前記識別された各強度値はPWM信号のデューティ・サイクルを表す、前記PWM信号を発生する手段、を備え、そして前記制御器は、前記発生したPWM信号に基づいて前記少なくとも2つのスイッチング手段を周期的に且つ独立に開閉するように構成されている」のに対し、引用発明ではそのような構成を備えていない点。 4 当審の判断 まず相違点1について検討する。 発光ダイオード(LED)を照明装置の光源として採用することは本願優先日前の周知技術(例えば、特公平4-39235号公報(以下、「周知文献1」という。)、実願平4-21710号(実開平5-73807号)のCD-ROM(以下、「周知文献2」という。)等を参照。)ということができるから、引用発明に、同じく照明装置に係る上記周知技術を採用して相違点1に係る本願発明の構成とすることは容易である。 次に相違点2について検討すると、「制御器に応答する、少なくとも2つのLEDおよび電力回路に接続され、少なくとも2つのLEDに供給された電流をスイッチングするための少なくとも2つのスイッチング手段を備え、且つ前記少なくとも2つのLEDのそれぞれの電流経路に対応する、前記少なくとも2つのLEDを駆動する駆動手段を備え、」各LEDに対する「強度値に基づいて、前記少なくとも2つのLEDにパルス幅変調(PWM)信号を発生する手段であって、前記」「各強度値はPWM信号のデューティー・サイクルを表す、前記PWM信号を発生する手段、を備え」、少なくとも2つの光源に対応して少なくとも2つのスイッチング手段を設け、制御器は「発生したPWM信号に基づいて該スイッチング手段を周期的かつ独立に開閉する」点は、LEDの輝度制御装置として本願優先日前の周知技術(例えば、特公平1-31240号公報(以下、「周知文献3」という。)、特公平7-20711号公報(以下、「周知文献4」という。)を参照。これらのLEDを駆動するためのトランジスタが本願発明のスイッチング手段に相当している。なお、パルス幅変調方式に基づくLED制御に関して、上記当審における拒絶理由通知において引用した刊行物2(特開平9-139289号公報)も存在する。)ということができる。 さらに、照明装置において発光色の異なるLEDを各色毎に複数設け、各色毎に点灯させることは単なる慣用手段(必要があれば、周知文献1参照。)を適用したにすぎず、その際、各色毎に1つのスイッチング手段を与えることも当業者が設計にあたり適宜決定すべき事項というべきである。 してみると、引用発明において相違点1で判断したように光源としてLEDを採用するとともに、LEDの輝度制御のための具体的な制御手段として、上記周知のLEDの輝度制御装置を採用し、また、LEDを各色毎に複数設けつつ、各色毎に1つのスイッチング手段を与えることにより、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたものといえる。 そして、本願発明の効果をみても、引用発明ないし上記周知技術から当業者が十分予測し得るものであって、格別のものということができない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明ないし周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-09-12 |
結審通知日 | 2005-09-20 |
審決日 | 2005-10-04 |
出願番号 | 特願2000-508102(P2000-508102) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H05B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 仁木 浩 |
特許庁審判長 |
阿部 寛 |
特許庁審判官 |
平上 悦司 内藤 真徳 |
発明の名称 | 多色LED照明装置 |
代理人 | 葛和 清司 |
代理人 | 前田 正夫 |
代理人 | 井上 洋一 |