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審決分類 審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C07K
管理番号 1154665
審判番号 不服2005-21528  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-07 
確定日 2007-03-22 
事件の表示 特願2003- 24901「腫瘍壊死因子結合リガンド」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月19日出願公開、特開2003-231699〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯及び特許請求の範囲の記載
本願は、平成2年8月7日(優先権主張:1989年8月7日 AU、1989年11月24日 AU)に国際出願された特願平2-510780号(PCT/AU90/00337)をもとの出願として、平成15年1月31日に分割してなされた出願であって、その特許請求の範囲は平成17年12月7日付け手続補正書により下記の請求項1乃至7に補正された。

【請求項1】TNF-αに特異的に結合する抗体またはその断片であって、TNF-αの残基49-97内にあるTNF-αの領域に結合するものであり、TNF-αへ結合すると、TNF-αの内皮プロコアギュラント活性の誘導を阻害することを特徴とする抗体またはその断片。
【請求項2】請求項1に記載の抗体またはその断片であって、残基56-79、残基58-65、残基76-90、残基96-105、残基49-96、及び残基69-97からなる群より選択されるTNF-α残基内の、TNF-αの領域に結合することを特徴とする抗体またはその断片。
【請求項3】TNF-αに特異的に結合する抗体またはその断片であって、モノクロ-ナル抗体Mab1、Mab53、又はMab54によって認識されるいずれか一つのエピト-プに結合するものであり、TNF-αへ結合すると、TNF-αの内皮プロコアギュラント活性の誘導が阻害されることを特徴とする抗体またはその断片。
【請求項4】請求項1乃至3のいずれか一項記載の抗体またはその断片であって、該抗体またはその断片は、抗体、F(ab)断片、単一ドメイン抗体(dAbs)再構成抗体、単一鎖抗体、そして血清結合タンパク質からなる群から選択されることを特徴とする抗体またはその断片。
【請求項5】請求項1乃至4のいずれか一項記載の抗体またはその断片であって、前記抗体がモノクロ-ナル抗体であることを特徴とする抗体またはその断片。
【請求項6】請求項1乃至5のいずれか一項に記載の抗体またはその断片であって、TNF-αの、TNF-α受容体への結合を阻害することを特徴とする抗体またはその断片。
【請求項7】請求項1乃至6のいずれか一項に記載の抗体またはその断片であって、TNF-αの細胞毒性を阻害することを特徴とする抗体またはその断片。

2.原審での拒絶査定の理由
本願に対する原審での平成17年8月9日付拒絶査定の理由は、この出願の発明の詳細な説明は、請求項1乃至9に係る発明について、当業者が容易に実施をすることができる程度に記載されていないから、特許法第36条第3項に規定する要件を満たさないというものである。
なお、上記請求項1乃至7は、拒絶査定時の請求項1乃至9のうち、請求項1及び2を削除し、請求項3を請求項1に繰り上げて、その余の請求項を順次繰り上げしたものである。

3.当審の判断
(1)請求項1に係る発明について
請求項1には、「TNF-αの残基49-97内にあるTNF-αの領域に結合する」抗体であって、当該抗体がTNF-αに結合すると、「TNF-αの内皮プロコアギュラント活性の誘導を阻害する」TNF-α特異的抗体に係る発明が記載されている。(以下、「本願発明」ともいう。)
ここで、「TNF-αの内皮プロコアギュラント活性の誘導を阻害する」こととは、当初明細書等(以下、「本願明細書」という。)の段落【0076】乃至【0077】によれば、TNF-αが内皮細胞に働き、血液凝固因子を産生させる活性を阻害することであり、それは抗体がTNF-αの特定の領域に結合することによって引き起こされる、生物活性の1つであると解される。
また、「残基49-97内にあるTNF-αの領域」とは、TNF-αのアミノ酸配列の残基49番目から97番目までに位置する、直線的な領域の全部又はその内の一部を指すと解されるから、「TNF-αの残基49-97内にあるTNF-αの領域に結合する抗体」とは、「TNF-αのアミノ酸配列中の49-97残基の全部もしくは1部からなる領域と結合する抗体」に相当する(以下、単に「TNF-αの49-97残基に結合する抗体」ともいう。)。
そうしてみると、本願発明は、TNF-α特異的抗体が、TNF-αと残基49-97内の領域で結合すれば、高い蓋然性をもってTNF-αの内皮プロコアギュラント活性誘導の阻害作用を引き起こすことを前提とする発明であるから、本願発明が本願明細書中に開示されているといえるためには、TNF-α特異的抗体のTNF-α内の結合領域が「残基49-97」であることと、当該抗体の「TNF-αの内皮プロコアギュラント活性誘導の阻害作用」との間に高い相関関係が存在することが、本願明細書の中で明らかにされていることが必要である。

そこでまず、本願発明のTNF-αモノクロ-ナル抗体により認識される、ヒトTNF-α上の結合領域と、TNF-αの内皮プロコアギュラント活性の誘導が阻害されることとの関係についての本願明細書中の記載を検討する。
本願明細書の【表1】(段落【0080】参照)には、本願発明で取得された13種類のモノクローナル抗体がTNF-αの生物活性へ与える影響が示されているが、当該【表1】によれば、モノクローナル抗体1、20、21、32、42、47、53及び54は、TNF-αの内皮プロコアギュラント活性の誘導を阻害する抗体であるのに対して、残りのモノクローナル抗体11、12、25、31及び37は、内皮プロコアギュラント活性の誘導を阻害しない抗体である。
また、本願明細書の段落【0108】乃至【0123】には、本願発明のモノクローナル抗体によって認識される結合領域を決定するために、TNF-αの全アミノ酸配列をカバ-するように、7ないし10個程度のアミノ酸配列の長さからなる重なり合ったペプチドを作製し、これらのペプチドに対して前記抗体が結合するか否かを調査したことが記載されており、その結果が、段落【0122】に示されている。
これらの結果をあわせて、「内皮プロコアギュラント活性誘導を阻害するもの」を◎印で、「残基49-97」に含まれる領域を下線で表示すると以下の通りになる。)

◎MAb1 : 残基 1-18、 58-65、 115-125、138-149
MAb11 : 残基 49-98
MAb12 : 残基 22-40、 70-87
◎MAb21 : 残基 1-18、 76-90
MAb25 : 残基 12-22、36-45、96-105、 132-157
◎MAb32 : 残基 1-26、 117-128、 141-153
MAb37 : 残基 22-31、 146-157
◎MAb42 : 残基 22-40、 49-96、 110-127、 136-153
◎MAb47 : 残基 1-18、 108-128
◎MAb53 : 残基 22-40、 69-97、 105-128、 135-155
◎MAb54 : 残基 56-79、 110-127、 136-155
ここで、「内皮プロコアギュラント活性誘導を阻害する」として◎を付したモノクローナル抗体群と、「残基49-97」に結合領域を有するモノクローナル抗体群との間には、相関関係は全く見られない。すなわち、例えば「残基49-97」領域で結合するMab11及びMab12には◎はなく、当該領域では結合しないMab32及び47に◎がある。

そして、本願明細書の「段落【0124】結論」では、本願発明におけるモノクローナル抗体を、各モノクローナル抗体が認識するTNF-α中の結合領域と関連づけてグループ分けし、「グループII」に属するMab11、12、53及び42に対しては、「TNF3次元構造のいわゆるパリンドローム・ループを取り囲む残基70-96の領域においてTNFと結合する」と記載する一方、「内皮細胞プロコアギュラント誘導活性を阻害するモノクローナル抗体」のグループとして、MAb1、32、42、47、54及び53を対応させ、これらモノクローナル抗体に対して「すべて、TNF3次元構造のループ構造をふたたび取り囲む残基108-128の領域においてTNFと結合する」ものであることを明記している。
ところで、ここで「グループII」にグループ分けされたMab11、12、53及び42は、まさに本願請求項1における「TNF-αの残基49-97内にあるTNF-αの領域に結合する抗体」に相当するが、当該「グループII」と「内皮プロコアギュラント活性の誘導を阻害すること」との関係については、全く言及されることなく、むしろ当該「グループII」とは全く別に、「TNF-αの内皮プロコアギュラント活性の誘導を阻害するモノクローナル抗体」のグループがグループ分けされており、当該グループに属する抗体に対して、すべてTNF-α上の残基108-128の領域においてTNFと結合するものであることを結論づけている。
そうしてみると、本願明細書の実験結果は、TNF-αの残基49-97に結合する抗体であっても、「内皮プロコアギュラント活性の誘導を阻害する効果」を有しているとはいえないばかりか、たとえ「TNF-αの残基49-97」と結合する抗体であっても、「同残基108-128」と結合しない抗体であれば、当該効果が得られない蓋然性が高いことを示すものである。
したがって、本願明細書の記載には、TNF-α特異的抗体のうち、残基49-97内にあるTNF-αの領域に結合する抗体であれば、TNF-αの内皮プロコアギュラント活性の誘導を阻害する蓋然性が高いことが実証されておらず合理的な説明もなされていないから、本願明細書中には、請求項1に係る発明についての実質的な開示がない。

(2)請求項2に係る発明について
請求項2は、請求項1記載の抗体のうちで、さらにTNF-αの残基56-79、58-65、76-90、96-105、49-96、及び69-97からなる群より選択されるいずれかの領域にも結合する抗体であると解されるので、「TNF-αの内皮プロコアギュラント活性の誘導を阻害する」性質を有する抗体であるはずであるが、これら各領域と「内皮プロコアギュラント活性の誘導の阻害」についての関連性に関しては何ら明細書中に具体的に記載されていない点は、請求項1における「残基49-97」領域の場合と同様である。
そうしてみると、TNF-α特異的抗体が、TNF-α中の「残基49-97」に加えて、さらに残基56-79、残基58-65、残基76-90、残基49-96、及び残基69-97からなる群より選択されるいずれかの領域にも結合するからといって、必ずしもTNF-αの内皮プロコアギュラント活性の誘導を阻害する蓋然性が高いということができないことは明らかである。
したがって、本願明細書中には、請求項2に係る発明についても同様に開示されていない。

(3)請求項3に係る発明について
請求項3に係る発明は、モノクロ-ナル抗体Mab1、Mab53、又はMab54によって認識されるいずれか一つのエピト-プに結合するTNF-α特異的抗体であれば、TNF-αの内皮プロコアギュラント活性の誘導が阻害される蓋然性が高いことを前提とするものである。
しかしながら、段落【0122】の記載によれば、モノクロ-ナル抗体Mab1、Mab53、又はMab54は、いずれも単一のエピトープを認識するのではなく、それぞれ残基1-18、58-65、115-125、138-149と、残基22-40、69-97、105-128、135-155と、残基56-79、110-127、136-155とに結合領域を有するから、ここで「モノクロ-ナル抗体Mab1、Mab53、又はMab54によって認識されるいずれか一つのエピト-プ」というとき、残基1-18、22-40、56-79、58-65、69-97、105-128、110-127、115-125、135-155、136-155及び138-149のいずれか1つの領域をエピト-プとして認識する場合を指すと解される。
確かに、モノクロ-ナル抗体Mab1、Mab53、又はMab54自身は「TNF-αの内皮プロコアギュラント活性の誘導を阻害する」性質を有していることが確認されているものの、そのことが直ちに各抗体が認識する全エピトープの領域について、いずれの領域での結合であっても、TNF-αの内皮プロコアギュラント活性の誘導阻害を引き起こすことを立証するものではない。そして、各エピトープと当該作用との関連性については、明細書全体の記載を参酌しても、具体的に把握することができない。
結局、モノクロ-ナル抗体Mab1、Mab53、又はMab54によって認識されるいずれか一つのエピト-プに結合するTNF-α特異的抗体が、高い蓋然性をもってTNF-αの内皮プロコアギュラント活性の誘導を阻害するとは認められないから、本願明細書中には、請求項3に係る発明についても実質的に開示されているとはいえない。

4.結語
以上述べたとおり、本願明細書中には、請求項1乃至3に係る発明についての実質的な開示がない。
そのようなとき、本願の発明の詳細な説明において、請求項1乃至3に記載された発明について当業者が容易に実施できる程度に記載されているということはできないものであって、他の請求項については検討するまでもない。
したがって、本願は特許法第36条第3項に規定する要件を満たしていない、とした原審の拒絶査定の理由は妥当なものであり、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-19 
結審通知日 2006-10-24 
審決日 2006-11-07 
出願番号 特願2003-24901(P2003-24901)
審決分類 P 1 8・ 531- Z (C07K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伏見 邦彦冨永 みどり  
特許庁審判長 鵜飼 健
特許庁審判官 高堀 栄二
鈴木 恵理子
発明の名称 腫瘍壊死因子結合リガンド  
代理人 志賀 正武  
代理人 村山 靖彦  
代理人 渡邊 隆  
代理人 実広 信哉  
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