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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N
管理番号 1154753
審判番号 不服2004-16781  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-12 
確定日 2007-03-29 
事件の表示 特願2002-285380「微量物質の小型検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月22日出願公開、特開2004-125402〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は,平成14年9月30日の出願であって,その請求項1に係る発明は,平成18年12月14日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下,「本願発明」という。)
「【請求項1】
マーカー・タンパク、有害ガス及び微粒子の被検出物質を選択的に被着または吸着可能な水晶振動子を含む着脱可能な検出部と、該検出部に接続されて前記水晶振動子とともに発振回路系を構成する発振回路と、前記水晶振動子の発振周波数、または前記発振回路の出力電圧もしくは電流またはインピーダンスを含む前記発振回路の電気的特性を検出する演算回路と、該検出された電気的特性を表すデータを送出する出力回路と、該データを可視表示する表示回路と、前記発振回路、演算回路、出力回路および表示回路に給電する電源部と、該発振回路、演算回路、出力回路、表示回路および電源部を収容する携帯可能な単一の筐体とを含み、前記演算回路は、前記データを一時蓄積するメモリ回路及び指示または設定を手操作にて入力する操作部を含み、前記出力回路は、有線または無線により外部の利用装置に接続可能であり、これによって該利用装置は、遠隔の位置から前記被検出物質を検出可能である検出装置において、被検出物質の発生源を探知する機能と、該発生源に近づく自走機能と、該発生源の位置を特定する機能と、前記発生源に近づいたときに、前記被検出物質を測定し、該発生源の位置決めのためのマーキングタグを設置する機能とを含み、該マーキングタグは無線機能及び爆発誘爆機能を有することを特徴とする微量物質の検出装置。」

2.当審の拒絶理由
一方,当審において平成18年11月8日付けで通知した拒絶の理由の概要は,平成16年2月16日付け手続補正書によって補正された請求項1?6に係る発明は,本願の出願日前である平成13年9月7日に頒布された刊行物である「特開2001-242057号公報」に記載された発明、同じく平成12年9月8日に頒布された刊行物である「国際公開第00/52444号パンフレット」(対応する公表公表である特表2002-538457号公報参照)、同じく平成7年1月17日に頒布された刊行物である「特開平7-12671号公報」、同じく平成10年5月29日に頒布された「」特開平10-141900号公報」に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

3.引用刊行物記載の発明
3.1 当審の拒絶理由で引用した本願の出願日前である平成13年9月7日に頒布された刊行物である特開2001-242057号公報(以下、「引用例1」という。)には、図1とともに、以下の事項が記載されている。
ア.「【0005】【発明の実施の形態】本発明のガスまたは大気中浮遊微粒子簡易小型検出装置を図1に基づいて説明する。図1において、(A)は検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子を含有する気体を該検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子に対して吸着性を有する被膜を表面に有する水晶振動子に接触させて検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子のみを水晶振動子に吸着する手段(水晶振動子)、(B)は検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子を吸着した水晶振動子を発振し、その発振周波数変化を測定し表示する手段(検出器本体)であり、この検出器本体は筐体の中に、(C)検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子を吸着した水晶振動子を発振させる手段(発振回路)、(D)該水晶振動子の発振によって発生する発振周波数変化を測定する手段(周波数計)及び(E)該周波数変化を表示する手段(発振周波数表示用ディスプレイ)が組み込まれ一体化されている。なお、図1において、単位はmmである。
【0006】具体的には、(B)の検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子を吸着した水晶振動子を発振し、その発振周波数変化を測定し表示する手段(検出器本体)は、金属製筐体の中に、(C)高周波数においても発振させるために工夫された水晶振動子の発振回路(D)周波数計としての秋月通商の周波数測定キット(PIC Kitver. 2.00)及び(E)液晶表示部等が組み込まれ適宜結合手段によって一体化されたものが使用される。もちろん(C)と(D)は本発明を参照し、一つのICとして設計、製作することで、更に一体・小型化可能であり、(E)の小型化を含め金属または樹脂やセラミックス製筐体の中に集積化できる。」

イ.「【0011】本発明の簡易小型ガス検出装置の代表例には2種類ある。その一つは測定周波数表示部にLEDディスプレイを用いるものであり、消費電力が多いので9VのACアダプター駆動である。他の一つは測定周波数表示部に液晶ディスプレイを用いるものであり、使用電力が少なく乾電池(9V、006Pを一個使用)駆動である。なお、乾電池は同一容量の充電式バッテリーに交換も可能である。」

ウ.「【0012】従来のガスまたは大気中浮遊微粒子検出装置は、図2に示されるように、(d)水晶振動子を発振させる装置(発振回路)、(e)水晶振動子の発振によって発生する周波数を測定装置(周波数計)、測定された周波数の表示装置(表示部)、(c)安定化電源、(f)コンピュター等の各測定機器間がバラバラに配置され、しかもこれらを接続するための多数のBNCケーブルやGP-IBケーブルなどの接続器具を必要とするため、装置が大掛かりとなり、作業現場で設置することができないという欠点があったが、本発明では、(B)の検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子を付着した水晶振動子を発振し、その周波数変化を測定し表示する手段を、筐体の中に(C)検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子を付着した水晶振動子を発振させる手段と(D)水晶振動子の発振によって発生する周波数変化を測定する手段及び(E)測定周波数を表示する手段が組み込まれ一体化させた構成としたことから、BNCケーブルやGP-IBケーブルなどの接続器具を不要とし、またその装置の大きさも11cm(縦)×13cm(横)×3cm(厚み)程度、総重量を0.3kg程度(9Vの乾電池込み)とすることが可能となり、従来品に比べその大きさと重量を著しくコンパクト化することができ、移動、携帯が容易であり狭い環境の中での簡単に設置できる。」

エ.「【0014】本発明の検出対象ガスとしては、半導体加工用ガス、毒ガス、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アルデヒド類、芳香族類、ハロゲン化芳香族類、脂肪族ハロゲン化合物類、有機リン化合物類、ダイオキシン類、内分泌攪乱物質類、農薬、殺虫剤などの種々の揮発性物質または空気中の浮遊微粒子等が挙げられ、具体的には、塩素、臭素、砒素、カドミウム、ニッケル、NH3、PCl3、PCl5,HCl、HF、F2、SO2、NO2、SF6、CF4、C2F6、SiH4、PH3、WF6、CO、CO2、H2O、フェノール、硫化水素、イペリット、ホスゲン、サリン、青酸、クロルピクリン、クロロアセトフェノン、クロロベンジリデンマロノニトリル、3-キヌクリジニルベンジレート、リゼルギン酸ジエチルアミド、VX、タブン、ソマン、p-ジクロロベンゼン、ホルムアルデヒド、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、モルホリン、メチルアミン、エチルアミン、トリエチルアミン、メルカプタン、ジメチルホルムアミド、クロロフェノール、ジクロロベンゼン、ジオキサン、ジメチルスルフィド、アニリン、ニトロメタン、ピリジン、酢酸、蟻酸、α-ピネン、カンファー、メントール、メタノール、エタノール、メチルエチルエーテル、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、アセトン、クロロホルム、ヘキサン、ペンタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、四塩化炭素、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,2-ジクロロエタン、1,2-ジクロロプロパン、アクリロニトリル、アセトニトリル、イソブチルニトリル、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン(o-, m-, p-)、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジクロロメタン、塩化ビニル、塩化メチル、1,1,1-トリクロロエタン、クロロジブロモエタン、ブロモホルム、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエチレン(trans-,cis-)、臭化メチル、ブロモエタン、ポリ塩化ビフェニル、ポリ塩化ナフタレン、クロルデン類、ディルドリン類、ポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシン、ポリ塩化ジベンゾフラン、石油エーテル、ディーゼル車廃棄ガス中の浮遊微粒子、ゴミ焼却場や工場から発生する浮遊微粒子、解体工事現場等から発生する浮遊微粒子石綿などが例示される。」

そして、第1図には、「(D)周波数計」が「(F)電池(9V)」と「(E)表示部」と「(C)発振回路」に接続されて「(B)検出器本体」内に収要されるとともに、「(A)水晶振動子」が「(B)検出器本体」外において「(C)発振回路」と接続する構成が記載されている。

してみれば、引用例1には、「毒ガス等の検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子のみを水晶振動子に吸着する手段と、検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子を吸着した水晶振動子を発振させる手段と、前記水晶振動子の発振によって発生する発振周波数変化を測定する手段と、該周波数変化を表示する手段と、乾電池と、前記毒ガス等の検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子のみを水晶振動子に吸着する手段と、検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子を吸着した水晶振動子を発振させる手段と、前記水晶振動子の発振によって発生する発振周波数変化を測定する手段と、該周波数変化を表示する手段と、前記検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子を吸着した水晶振動子を発振させる手段、前記水晶振動子の発振によって発生する発振周波数変化を測定する手段、前記周波数変化を表示する手段に給電する乾電池とを収容する携帯可能な単一の筐体とからなる簡易小型ガスまたは大気中浮遊微粒子検出装置」(以下「引用例1発明」という。)が、開示されていると認められる。

3.2 また、当審の拒絶理由で引用した本願の出願日前である平成12年9月8日に頒布された国際公開第00/52444号パンフレット(以下、「引用例2」という。対応する公表公報である特表2002-538457号公報参照)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
オ.「1.ハウジングと、 前記ハウジングに結合され、特定の検査サンプルに対して明確な応答を提供する少なくとも2個のセンサを含むセンサモジュールと、前記ハウジングに結合され、前記の少なくとも2個のセンサからの特定の応答を分析するように構成され、特定の応答に基づいて検査サンプル内の被検出物を識別し、あるいは計量するように構成された処理装置と、前記処理装置に結合され、コンピュータネットワークと通信するように構成されている通信インタフェースとを含むことを特徴とする手持ちの感知装置。
2.前記処理装置がマイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、用途特定集積回路(ASIC)およびデジタル信号処理装置(DCP)からなる群から選択された品目であることを特徴とする請求項1に記載の手持ち感知装置。
3. 前記センサモジュールにおける少なくとも1個のセンサが導電性/非導電性領域センサ、SAWセンサ、クオーツマイクロバランスセンサ、導電性合成センサ、化学抵抗体、導電性ポリマーセンサ、有機半導体ガスセンサ、光ファイバ化学センサおよび圧電クオーツクリスタルセンサからなる群から選択された品目であることを特徴とする請求項1に記載の手持ち感知装置。
4.前記センサモジュールにおける少なくとも1個のセンサが有機半導体ガスセンサであることを特徴とする請求項3に記載の手持ち感知装置。
5.前記コンピュータネットワークがインターネットワーク、広域ネットワーク、構内ネットワーク、イントラネット、世界規模のコンピュータネットワーク、およびインターネットからなる群から選択されたことを特徴とする請求項1に記載の手持ち感知装置。
6.前記ネットワークが無線ネットワークであることを特徴とする請求項5に記載の手持ち感知装置。
・・・
9.前記通信インターフェイスがRS-232インターフェース、パラレルポート、ユニバーサルシリアルバス(USB)、赤外線データリンク、光学インターフェース及びRFインターフェースとからなる群から選択された品目であることを特徴とする請求項1に記載の手持ち感知装置。」(第43頁第2行-第44頁第10行)

カ. 「更に別の実施例において、e-ノーズ装置は被検出物のデータを検出し、捕捉し、その後そのようなデータをコンピュータネットワークによって遠隔の場所まで分析のために伝送するために使用される。」(第7頁第14-第16行)

キ. 「発明および特定の実施例の詳細説明
図1はe-ノーズ装置100を使用している作業者を示す絵図面を示す。図1に示す実施例において、e-ノーズ装置100は特定のサンプルにおける1個以上の被検出物の存在を感知するための可搬性で手持ちの計器である。ここで使用するサンプルとは分析する物質の蒸気、液体、ガス、固体あるいはその他の形態およびそれらの混合物のユニットである。このように、サンプルは化学的な被検出物、匂い、蒸気およびその他のものを含む。サンプルは単一の被検出物あるいは複数の被検出物を含みうる。図1において、e-ノーズ装置100は産業用にモニタや検出に、あるいは工業用の弁組立体から逃避してくる有毒ガスを識別し、計量するために使用される。e-ノーズ装置100はまた、以下列挙するような多くのその他の用途に使用可能である。
図2Aはe-ノーズ装置100aの実施例の頂部斜視図を示す。E?ノーズ装置100aは下端が作業者の手で掴み、支持するの都合のよいサイズとされている細長いハウジング110aを含む。作業者が都合よく観察し、アクセスできるようにディスプレイ120aと数個の押し釦の制御スイッチ122aから122cまでがハウジングの頂部側に位置している。押し釦122は種々の作動モードの間に該装置を制御するために使用される。ディスプレイ120aはそのような作動モードおよび本装置の感知の結果についての情報を表示する。
分析すべきサンプルをそれぞれ受け取ったり、排出するためにチューブ状のサンプリングワンド130aと排出ポート134とが設けられている。サンプリングワードはノーズあるいは鼻と称される。プラグインセンサモジュール150aがそのソケットをe-ノーズ装置100aの基部に位置させた状態で設置されたものとして示されている。センサモジュール150aの作動については以下詳細に説明する。ハウジング110aの下端に位置した電気コネクタ126がホストコンピュータとの通信を可能とし、電気接点128が、e-ノーズ装置を作動させ、e-ノーズ装置内の充電可能なバッテリを再充電しうるようにする外部からの給電を可能とする。」(第9頁第31行-第10頁第24行)

ク.「 図12Aおよび図12Cにおいて、プロセッサ1210と1260とは用途特定集積回路(ASIC),デジタル信号プロセッサ(DSP),制御装置,マイクロプロセッサあるいはここに説明する機能を実行するように構成されたその他の回路として実行することができる。
コード、データ、およびその他の形態情報を記憶するために1個以上の記憶装置が提供され、プロセッサの近傍に装着される。適当な記憶装置はランダムアクセスメモリ(RAM),ダイナミックRAM(DRAM),FLASHメモリ、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラム化可能読み出し専用メモリ(PROM),電気的にプログラム化可能なROM(EPROM),電気的に消去可能で、プログラム化可能なPROM(EEPROM),およびその他のメモリ技術を含む。前記メモリのサイズは用途によって変わり、必要に応じて直ちに拡張可能である。」(第20頁第26行-第21頁第3行)

ケ.「入力装置
ある実施例においては、e-ノーズ装置は、例えば押し釦、キーパッド、タッチスクリーン、スイッチ、その他の入力機構、あるいはそれらの組み合わせのような入力装置を任意に含む。キーパッドは種々の材料から製作することができる。ある実施例においては、キーパッドはシリコンゴムから成形され、手袋を嵌めた手に対して触覚しうるフィードバックを提供する。更に、キーパッドおよび釦にナビゲーションコントロールを組み込むことができる。例えば、「スニッフ」釦は任意にキーパッドに位置させることができる。」(第30頁第24-31行)

コ.「 e-ノーズ装置は限定的ではないが、下記を含む広範囲の商業用途において使用可能である。
● ユーティリティや電力のような用途、油/ガス石油化学、化学/プラスッチク、自動換気制御(料理、発煙など)、重工業、環境毒理学、治療教育、生物学、化粧品/香水、製薬、運送、緊急応答および法的規制、
● 燃焼ガス、天然ガス、H2S,大気、排ガス制御、空気取り入れ、煙、危険な漏洩、危険なこぼれ、逃避排ガスの検出、識別および(または)モニタ、
● 例えば鮮度の検出、果物の熟れ具合の管理、発酵過程、風味の成分の識別のような清涼飲料水、食品および農産物のモニタおよび管理、
● 不法物質、爆発物、トランスの不具合、冷媒および燻煙剤、ホルムアルデヒド、ヂーゼル/ガソリン/航空燃料、病院/医療用麻酔および殺菌ガスの検出および識別、
● 遠隔手術(telesurgery),体液の分析、麻薬の発見、感染疾病の検出および呼吸への適用、作業者の保護、放火の調査、個人証明、周囲のモニタ、芳香の形成、および
● 溶剤回収の有効性、燃料補給作業、船積みコンテナの検査、密閉空間の監視、製品品質の検査、材料の品質管理、製品の識別と品質検査。
e-ノーズ装置100は被検出物のデータを検出し、捕捉して、その後そのデータを遠隔場所で分析するためにコンピュータネットワークにより外部に伝送するために使用できる。図16は本発明の作動の一モードを示す簡素化した概略ブロック線図である。この作動モードにおいて、e-ノーズ装置100は被検出物16を検出し、その後そのような被検出物に関連したデータをコンピュータネットワーク18により分析のためにプロセッサ12まで伝送する。e-ノーズ装置100とプロセッサ12との間のデータ通信は一方向あるいは二方向の通信のいずれかでよい。e-ノーズ装置100はデータをプロセッサ12に送ることのみ可能な送信器として専ら作用するか、あるいは代替的にプロセッサ12まで、あるいはそこからデータを送ることと、受信することの双方を行ないうるトランシーバとして作用しうる。更に、e-ノーズ装置100はまた相互に通信することができる。」(第37頁第14行-第38頁第14行)。

3.3 また、当審の拒絶理由で引用した本願の出願日前である平成7年1月17日に頒布された特開平7-12671号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
サ.「 【請求項1】におい・ガスの発生源を探知する自律移動型におい・ガス源探知システムにおいて、(a)移動可能な本体と、(b)該本体上に配置されるプローブと、(c)該プローブをにおい・ガスの流れの方向に対して平行又は直交する方向に回転させる第1の駆動手段と、(d)該プローブに接続されるガス濃度検知手段と、(e)該ガス濃度検知手段に接続されるにおい・ガスの流れる方向を判別する方向判別手段と、(f)該方向判別手段による判別方向に前記本体を移動する第2の駆動手段とを具備することを特徴とする自律移動型におい・ガス源探知システム。」

シ.「【0013】更に、特定のガスを検知するガス濃度センサを組み込むことにより、妨害臭の存在化で特定のにおい・ガスについてその発生源を探知することができる。また、自律移動型におい・ガス源探知システムにより、ガス漏れの検知、薬物(麻薬等)、危険物の検知、半導体工場やトンネル工場現場等における危険ガスの検知等の無人探査を行なうことができる。」

ス.「【0017】次に、この自律移動型におい・ガス源探知装置の動作について、図2を用いて、説明する。
(1)まず、外部のリモートコントロール装置(図示なし)より、スイッチ24をONにする(ステップS1)。
(2)次いで、プローブ16を第1の位置にセットして、半導体ガス濃度センサ12でガス濃度を測定する(ステップS2)。
【0018】(3)次に、そのプローブ16の第1の位置におけるデータを取り込む(ステップS3)。
(4)次に、プローブ16を90度回転駆動させる(ステップS4)。
(5)次いで、プローブ16を第2の位置にセットして、ガス濃度を測定する(ステップS5)。
【0019】(6)次に、そのプローブ16の第2の位置におけるデータを取り込む(ステップS6)。
(7)次いで、上記のデータに基づいて、におい・ガスの流れの方向の判別を行う(ステップS7)。
(8)次に、その判別された方向に台車11を駆動する(ステップS8)。
【0020】(9)次に、におい・ガス源に到達したか否かを判断する(ステップS9)。
その結果、におい・ガス源に到達していなければ、上記を繰り返し、におい・ガス源に到達したら、スイッチ24をオフ(ステップS10)にして、終了とする。図3は本発明の自律移動型におい・ガス源探知装置の具体例を示す概略斜視図、図4はその自律移動型におい・ガス源探知移動体(ロボット)の概略構成図、図5はその自律移動型におい・ガス源探知移動体によるにおい・ガスの流れに対応してガス濃度を測定する状態を示す平面図である。」

セ.「【0041】(4)また、自律移動型におい・ガス源探知システムにより、ガス漏れの検知、薬物(麻薬等)、危険物の検知、半導体工場やトンネル工場現場等における危険ガスの検知等の無人探査を行なうことができる。」

3.4 また、当審の拒絶理由で引用した本願の出願前である平成10年5月29日に頒布された特開平10-141900号公報(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに以下の点が記載されている。
ソ.「【0001】【発明の属する技術分野】この発明は、爆発物を爆発させて無害化処理するための爆発物処理用遠隔無線発破装置及びそれを用いる爆発物の処理方法に関するものである。さらに詳しくは、特に地表、地中ないし水中に敷設された爆発物、例えば地雷や機雷を除去する場合や、鉱山や土木工事等で発破後に見つかった不発残留爆薬を処理する場合などに有用な爆発物処理用遠隔無線発破装置及びそれを用いる爆発物の処理方法に関するものである。」

タ.「【0006】【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の金属探知機等による探知後、付近に爆薬を設置して爆発物を処理する方法は、探知、爆薬の設置作業等で爆発物の存在する周辺領域(以後、爆発原という)に作業者が入る必要があり、作業者にとって好ましくない状態になる。」

チ.「【請求項1】 磁界発生装置と受信起爆装置とよりなり、磁界発生装置が特定周波数の交流電流を発生する交流発生機と、その交流電流により磁界を発生するアンテナとを備え、受信起爆装置が前記磁界に同調して所定のエネルギーを発生するエネルギー発生部と、そのエネルギー発生部より発生するエネルギーにより爆発する爆薬とを備え、受信起爆装置を爆発処理の対象となる爆発物が受信起爆装置により誘爆処理される範囲内に配置し、磁界発生装置を爆発物の存在しない場所に設置する爆発物処理用遠隔無線発破装置。」

ツ.「【0027】爆発原に受信起爆装置4を配置する方法としては、上空から受信起爆装置4を散布して地上に配置したり、クレーン等のアームを用いて配置したり、無人車が直接地雷原に進入して配置したりする方法等が挙げられる。具体的な例として、図1(a)に示すように、爆発物17の存在する爆発原の上空からヘリコプター18等の空中輸送手段により受信起爆装置4にパラシュート19をつけて散布・投下する方法、又は図1(b)に示すように、ラジコンヘリコプター等の無人ヘリコプター20で、爆発物17が埋設されている付近の爆発原に受信起爆装置4を投下して設置する方法が挙げられる。」と記載されている。

4.対比
本願発明と、引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「毒ガス等の検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子のみを水晶振動子に吸着する手段」、「検出対象ガスまたは大気中浮遊微粒子を吸着した水晶振動子を発振させる手段」、「水晶振動子の発振によって発生する発振周波数変化を測定する手段」及び「周波数変化を表示する手段」は、それぞれ本願発明「マーカー・タンパク、有害ガス及び微粒子の被検出物質を選択的に被着または吸着可能な水晶振動子を含む検出部」、「検出部に接続されて前記水晶振動子とともに発振回路系を構成する発振回路」、「水晶振動子の発振周波数、または前記発振回路の出力電圧もしくは電流またはインピーダンスを含む前記発振回路の電気的特性を検出する演算回路」及び「データを可視表示する表示回路」に相当することは明らかである。また、上記摘記事項「イ.」及び第1図の記載から、引用例1の検出装置は、該検出装置に設けられた乾電池で駆動しているものであり、それ以外に検出装置に給電する手段について何ら記載されておらず、該乾電池は、該検出装置の各構成部分である「水晶振動子を発振させる手段」、「水晶振動子の発振によって発生する発振周波数変化を測定する手段」、「周波数変化を表示する手段」にも給電していることは明らかであるから、引用例1発明の「乾電池」は、本願請求項1に係る発明の「発振回路、演算回路及び出力回路に給電する電源部」に相当するものであることは明らかである。
さらに、引用例1発明の「ガスまたは大気中浮遊微粒子簡易小型検出装置」は、上記摘記事項「エ.」に挙げられているような大気等に含まれる微量なガス、微粒子を検出するためのものであるから、本願発明の「微量物質の検出装置」に相当する。

したがって、両者は、「マーカー・タンパク、有害ガス及び微粒子の被検出物質を選択的に被着または吸着可能な水晶振動子を含む検出部と、該検出部に接続されて前記水晶振動子とともに発振回路系を構成する発振回路と、前記水晶振動子の発振周波数、または前記発振回路の出力電圧もしくは電流またはインピーダンスを含む前記発振回路の電気的特性を検出する演算回路と、該データを可視表示する表示回路と、前記発振回路、演算回路および表示回路に給電する電源部と、該発振回路、演算回路、表示回路および電源部を収容する携帯可能な単一の筐体とを含む微量物質の検出装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1] 検出された電気的特性を表すデータを外部に出力する構成について、本願発明は、「検出された電気的特性を表わすデータを送出する出力回路を有するとともに、該出力回路は、有線または無線により外部の利用装置に接続可能であり、これによって該利用装置は、遠隔の位置から被検出物質を検出可能」としているのに対して、引用例1発明は検出された電気的特性を表すデータを外部に出力する構成を有していない点。

[相違点2] 水晶振動子の周波数特性を検出する演算回路について、本願発明は、「データを一時蓄積するメモリ回路及び指示または設定を手操作にて入力する操作部を含んでいる」のに対して、引用例1発明には係る点について記載がない点。

[相違点3] マーカー・タンパク、有害ガス及び微粒子の被検出物質を選択的に被着または吸着可能な水晶振動子を含む検出部について、本願発明は「着脱可能」であるのに対して、引用例1発明には係る点について記載がない点。

[相違点4] 本願発明の検出装置は、「被検出物質の発生源を探知する機能と、該発生源に近づく自走機能と、該発生源の位置を特定する機能と、前記発生源に近づいたときに、前記被検出物質を測定し、該発生源の位置決めのためのマーキングタグを設置する機能とを含み、該マーキングタグは無線機能及び爆発誘爆機能を有する」のに対して、引用例1発明には、係る点について記載がない点。

そこで上記相違点について検討する。
相違点1について。
引用例2には、クオーツマイクロバランスセンサ(本願発明の「水晶振動子」に相当する。)等を用いて有毒ガス等の被検出ガスを測定する手持ち感知装置において、該装置で取得した被検物質のデータ(本願発明の「検出された電気特性を表すデータ」)を遠隔の場所まで分析のために伝送するために、該感知装置の被検出物を識別し、あるいは計量するように構成された処理装置(本願発明「演算回路」に相当する。)に結合され、コンピュータネットワークと通信するように有線または無線により外部にデータを送るための通信インターフェイスを設けた構成が、記載されている。
引用例1発明の「簡易小型ガスまたは大気中浮遊微粒子検出装置」も、引用例2に記載の「手持ち感知装置」と同様の被検出ガスを測定するための装置であるから、引用例1発明において、被検物質の検出データを遠隔の場所まで分析のために伝送するために、引用例2に記載の技術思想を用い、検出された電気的特性を表すデータを送出する出力回路を設け、有線又は無線により外部の利用装置に接続可能であり、これによって該利用装置は、遠隔の位置から前記被検出物質を検出可能とするようになすことは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

相違点2について。
引用例2の上記摘記事項「ク.」には、プロセッサ(本願請求項1に係る発明の「演算回路」に相当する。)近傍にデータ等を記憶するためのメモリ(本願請求項1に係る発明の「データを一時蓄積するメモリ回路」に相当する。)を装着する点が記載されている。そして、該メモリはプロセッサで処理したデータを蓄積するためのものであり、プロセッサと協同して機能するものであるから、プロセッサに含ませることができることは当業者に自明である。さらに、引用例2の上記摘記事項「ケ.」及び第2A図等には装置に指示又は設定を手操作にて入力する操作部を設ける構成が記載されている。
してみれば、引用例1に記載の演算回路に、データを蓄積するメモリ回路及び指示または設定を手操作にて入力する操作部を含ませるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

相違点3について。
携帯型の分析装置において、検出部を着脱自在の構成にすることは本願出願前に周知技術であるから(例えば、実願平4-45865号(実開平6-7049号)のマイクロフィルム等参照)、引用例1に記載の検出部を着脱可能となすことは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

相違点4について。
被検出物質の発生源を探知する装置として、被検出物質の発生源を探知する機能と、該発生源に近づく自走機能と、該発生源の位置を特定する機能とを備えた自律移動型の探知装置は、引用例3の上記摘記事項「サ.」?「セ.」に記載されているように周知技術であり、また、対象物を処理するために、目的とする所定の場所に無線機能及び爆発誘爆機能を有する装置を設置する構成も引用例4の上記摘記事項「ソ.」?「ツ.」に記載されているように周知技術であって、これら周知技術を寄せ集めて相違点4の構成とすることは当業者ならば容易に想到し得たものと認められる。

そして、上記[相違点1]-[相違点4]を総合的に判断しても、本願発明は、引用例1に記載の発明、引用例2に記載の発明、引用例3、引用例4記載の周知技術及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本願発明の作用効果は、引用例1記載の発明、引用例2記載の発明、引用例3、引用例4記載の周知技術及び上記周知技術に基いて当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用例1に記載の発明、引用例2に記載の発明、引用例3、引用例4記載の周知技術及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-26 
結審通知日 2007-01-30 
審決日 2007-02-13 
出願番号 特願2002-285380(P2002-285380)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01N)
P 1 8・ 537- WZ (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼見 重雄  
特許庁審判長 高橋 泰史
特許庁審判官 黒田 浩一
菊井 広行
発明の名称 微量物質の小型検出装置  

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