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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1154904
審判番号 不服2004-11808  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-10 
確定日 2007-03-30 
事件の表示 平成 8年特許願第224737号「新規ポリイミドフィルムをベースフィルムとするFCテープ及びTABテープ」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 3月10日出願公開、特開平10- 70157〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]出願日及び本願発明

本願は、平成8年8月27日の出願であって、平成16年3月15日に提出された手続補正書により補正された明細書の記載からみて、本願の請求項1?4に係る発明(以下それぞれ、「本願発明1」?「本願発明4」という。)は、特許請求の範囲の請求項1?4に記載された以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】 保護層と接着剤層とベースフィルムの層とからなるFCテープであって、該ベースフィルムが、一般式(1)化1
【化1】
(式、及び、式中の定義を省略)
で表されるポリアミド酸共重合体を脱水閉環することにより得られる、熱膨張係数1.0×10-5℃-1以上2.5×10-5℃-1以下の新規なポリイミドフィルム(熱可塑性ポリイミドフィルムを除く。)であることを特徴とするFCテープ。
【請求項2】 前記ベースフィルムが、吸水率1.6%以下の新規なポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1に記載するFCテープ。
【請求項3】 前記ベースフィルムが、吸湿膨張係数15ppm以下の新規なポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載するFCテープ。
【請求項4】 前記請求項1乃至請求項3に記載するFCテープの保護層を剥離した上に銅箔を張り合わせ、回路を描いたことを特徴とするTABテープ。」

[2]拒絶査定の概要

原査定の拒絶理由は理由IIと理由IIIからなり、理由IIIの概要は、本願は明細書の記載が不備であるから、特許法第36条第4項又は第6項に規定する要件を満たしていない、というものである。
そして、不備な理由には、概略、以下の理由1、2が含まれている。
理由1:本願の発明の詳細な説明は当業者が本願発明1?4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載していない。
理由2:吸湿膨張係数の定義及び測定条件が明確でない。

[3]当審の判断

そこで、上記理由1、2の妥当性を判断する。

A.理由1についての判断

1.本願発明1について
本願発明1は、ベースフィルムが一般式(1)で表される特定構造のポリアミド酸共重合体を脱水閉環することにより得られるポリイミドフィルム(以下「本願ポリイミドフィルム」という。)であることを要件とする発明であり、該ポリイミドフィルムは、「熱膨張係数が1.0×10-5℃-1以上2.5×10-5℃-1以下であるという要件」(以下「熱膨張要件」という。)、及び、「熱可塑性ポリイミドフィルムではないという要件」(以下「可塑要件」という。)の両者を兼ね備えた要件(以下「第1要件」という。)を具備するものである。
そこで、発明の詳細な説明に、本願ポリイミドフィルムが第1要件の点で実施可能であるように記載されているかを検討する。
まず、発明の詳細な説明には、第1要件を満足させるためにいかなる手段を採用すればよいかについての具体的な記載はない。熱膨張要件、及び、可塑要件のそれぞれを単独で満足させるためにいかなる手段を採用すればよいかについての記載さえも存在しない。
そこで実施例を検討するに、本願の発明の詳細な説明に記載された実施例は、実施例1?12であるが、これらの実施例におけるポリイミドフィルムが可塑要件を備えたものであるか否かの確認は何もなされていない。また、実施例1?12における「熱膨張係数×10-5℃-1」は、1.1?1.7の中の特定の値であり、熱膨張要件(1.0×10-5℃-1以上2.5×10-5℃-1以下)の全範囲、特に上限までの全範囲に亘るものではない。また、実施例1?12のポリイミドフィルムは、本願ポリイミドフィルムの一部にすぎないから、実施例1?12のポリイミドフィルム以外では、どのようにすれば熱膨張要件を満足するフィルムを得ることができるか不明である。したがって、実施例から、本願ポリイミドフィルム全般において、第1要件を満足せしめる手段が明らかであるとは認められない。
ゆえに、発明の詳細な説明は、第1要件の点で、当業者が本願発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しているとは認められない。
請求人は、可塑要件につき「ポリイミドが、剛構造を有する酸二無水物やジアミンを多く含んで構成される程、また、回転自由度の低い結合を含む酸二無水物やジアミンを多く含んで構成される程、得られるポリイミドのTgが高くなる(あるいは、Tgが高くなり過ぎて測定が不可能になる)ことは、当業者にとって周知の事実であります。このため、本願明細書の記載に基づいて、剛構造を有する酸二無水物やジアミンを多く用いてポリイミドを構成したり、回転自由度の低い結合を含む酸二無水物やジアミンを多く用いてポリイミドを構成することによって、単に、ポリイミドフィルムを非熱可塑性とすることは、当業者であれば、何ら技術的困難性を伴うことなく行い得ることは明らかなのであります。」と主張している。
しかし、特定のポリマーが熱可塑性か否かと、Tgの値の高低や、Tgが高くなり過ぎて測定が不可能になるか否か、とは別の概念である。請求人が平成16年10月4日付けの物件提出書で提出した「躍進するポリイミドの最新動向」の第3頁をみても、非熱可塑性ポリイミドや熱可塑性ポリイミドをTg値や、Tg値測定の可能性で定義づける記載はない。また、本願の発明の詳細な説明には、上記したとおり、どのようにすれば可塑要件を満足するフィルムを得ることができるか何等記載されていないし、可塑要件を満足させるための剛構造を有する酸二無水物やジアミンがどれであるかを説明する記載もない。したがって、上記請求人の主張は採用できない。
請求人は、熱膨張要件については特段の主張をしていない。
したがって、請求人の主張をみても、上記判断を覆すことはできない。

2.本願発明3について
本願発明3は、本願ポリイミドフィルムにおいて、第1要件に加えて、さらに、「吸湿膨張係数が15ppm以下という要件」(以下「吸湿膨張要件」という。)も満足することを要件としている(以下、第1要件と吸湿膨張要件の両者を兼ね備えた要件を「第2要件」という。)。
そこで、発明の詳細な説明に、本願ポリイミドフィルムが第2要件の点で実施可能であるように記載されているかを検討する。
まず、発明の詳細な説明には、第2要件を満足させるためにいかなる手段を採用すればよいかについての具体的な記載はない。実施例1?12についての第1要件に関する判断は上記「1.」に示したとおりであり、また、実施例1?12には吸湿膨張係数が記載されていない。したがって、発明の詳細な説明には、第2要件を実施可能とする記載がなされているとは認められない。なお、平成16年3月15日に提出された意見書の【表1】に、特定の測定条件における実施例1?12の吸湿膨張係数の値が記載されているが、これは発明の詳細な説明の記載に基づくものではないから、この測定法と測定値を実施可能要件の判断の根拠とすることはできない。
以上のとおりであるから、発明の詳細な説明は、第2要件の点で、当業者が本願発明3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しているとは認められない。

3.本願発明2、4について
本願発明2は第1要件を具備し、本願発明4は、引用請求項に応じて第1要件及び第2要件を具備している。そして、これらの要件についての判断は、上記「1.」、「2.」に示したとおりであるから、発明の詳細な説明は、当業者が本願発明2、4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しているとは認められない。

4.まとめ
以上のとおりであるから、本願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

B.理由2についての判断

本願発明3、4では「吸湿膨張係数15ppm以下」との特定がなされているが、本願明細書には吸湿膨張係数の値を得る為の測定条件が記載されていない。そして、吸湿膨張係数の値は、測定条件によって変化するから、測定条件が特定されていない本願発明3、4は明確でない。
したがって、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
請求人は、平成16年3月15日に提出された意見書で特定の測定条件(図1を参照)を示し、吸湿膨張係数は「相対湿度が1%変化したときの単位長さ当たりの寸法変化」と定義されるから、この特定の測定条件は明細書に記載されているに等しい旨の主張をしている。しかし、この吸湿膨張係数の定義には当該特定の測定条件は含まれていない。したがって、この請求人の主張は採用できない。

[4]むすび

以上のとおり、本願は、特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-05 
結審通知日 2007-01-09 
審決日 2007-01-22 
出願番号 特願平8-224737
審決分類 P 1 8・ 537- Z (H01L)
P 1 8・ 536- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 天野 宏樹  
特許庁審判長 宮坂 初男
特許庁審判官 石井 あき子
高原 慎太郎
発明の名称 新規ポリイミドフィルムをベースフィルムとするFCテープ及びTABテープ  
代理人 楠本 高義  
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