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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B30B
管理番号 1154976
審判番号 不服2004-19310  
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-16 
確定日 2007-04-13 
事件の表示 特願2001-175469「廃棄物の固形化押出し装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月18日出願公開、特開2002-361492〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成13年6月11日の特許出願であって、同15年11月21日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同16年1月29日に意見書の提出とともに明細書について手続補正がされたが、同16年8月13日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同16年9月16日に本件審判の請求がされ、その後、同16年10月7日付けで明細書について再度手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容の概要
本件補正は、特許請求の範囲を含む明細書について補正するものであって、その請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。

(1)補正前の請求項1
【請求項1】 廃棄物を投入する投入口から固形化物の排出口に亘ってほぼ同じ断面形状を有する中空部を貫通したケーシングと、ケーシングの該中空部に配設して投入口より装入した廃棄物を圧密化して排出口へ送る押出しスクリューと、ケーシングの排出口に連接して固形化物に押出し成形する成形手段と、から成り、
押出しスクリューが、回転軸としてケーシング内に貫通する多角形状横断面の内側回動軸と、異なる軸径毎に別体に区分されて該内側回動軸の周りに嵌合して連接された区分螺旋軸及び各区分螺旋軸の周囲に一体に形成した螺旋羽根から成る投入口直下の第1の区分螺線部材と排出口側にわたる第2の区分螺旋部材と、から構成され、
第2の区分螺旋部材が第1の螺線部材に連接される中間部と、中間部に連接された終端部とに分割され、終端部が排出口側終端を閉じた終端壁を有し、該終端壁が内側回動軸の排出口側端面にねじ止め固定され、
排出口側の第2の螺旋部材の螺旋軸の軸径が、投入口側にある第1の区分螺旋部材の螺旋軸の軸径より大きくされて、且つ、第2の区分螺線部材の螺旋羽根は第1の区分螺旋部材の螺旋羽根より螺旋ピッチが小さくされ且つその螺旋ピッチが排出口側に向かって徐々に小さくされていることを特徴とする廃棄物の固形化押出し装置。

(2)補正後の請求項1
【請求項1】 廃棄物を投入する投入口から固形化物の排出口に亘ってほぼ同じ断面形状を有する中空部を貫通したケーシングと、ケーシングの該中空部に配設して投入口より装入した廃棄物を圧密化して排出口へ送る押出しスクリューと、ケーシングの排出口に連接して固形化物に押出し成形する成形手段と、から成り、
押出しスクリューが、回転軸としてケーシング内に貫通する多角形状横断面の内側回動軸と、異なる軸径毎に別体に区分されて該内側回動軸の周りに嵌合して連接された区分螺旋軸及び各区分螺旋軸の周囲に一体に形成した螺旋羽根から成る投入口直下の第1の区分螺旋部材と排出口側にわたる第2の区分螺旋部材と、から構成され、
第2の区分螺旋部材が第1の螺旋部材に連接される中間部と、中間部に連接された終端部とに分割され、終端部が排出口側終端を閉じた終端壁を有し、該終端壁が内側回動軸の排出口側端面にねじ止め固定され、
排出口側の第2の螺旋部材の螺旋軸の軸径が、投入口側にある第1の区分螺旋部材の螺旋軸の軸径より大きくされて、且つ、第2の区分螺旋部材の螺旋羽根は第1の区分螺旋部材の螺旋羽根より螺旋ピッチが小さくされ且つその螺旋ピッチが排出口側に向かって徐々に小さくされている廃棄物の固形化押出し装置において、
上記第1の区分螺旋部材及び第2の区分螺旋部材の螺旋羽根は、全体でほぼ3ターンからほぼ2ターンの範囲で形成されており、また
上記多角形状横断面の内側回動軸の周りに嵌合して連接された少なくとも第2の区分螺旋軸の中間部及び終端部には嵌合面にグリースを注入する注入部が形成されていることを特徴する廃棄物の固形化押出し装置。

2.補正の適否
上記特許請求の範囲における補正は、第1の区分螺旋部材及び第2の区分螺旋部材の螺旋羽根について、「全体でほぼ3ターンからほぼ2ターンの範囲で形成され」ることを限定し、少なくとも第2の区分螺旋軸の中間部及び終端部について、「嵌合面にグリースを注入する注入部が形成されている」ことを限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、前記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。

(2)引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平6-467号公報(以下「刊行物1」という。)、特開平11-342497号公報(以下「刊行物2」という。)、及び、特開平11-254193号公報(以下「刊行物3」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア.刊行物1
(1-a)段落【0001】?【0002】
「【産業上の利用分野】過去においては、使用済みのプラスチック製品は、焼却すると高温を発し焼却炉を傷めるので主に埋め立て投棄によってゴミ処理をしていた。しかし、多様な形状のプラスチック製品をそのまま埋め立てると場所をとり、埋め立て用地の確保が困難となるため、近年、減容機により減容した所謂減容プラスチックにしてから埋め立てるという処理方法が広まってきた。また将来的には、この減容プラスチックを燃料として再利用する可能性も出てきている。
本発明は、このような減容機に係り、特に、投入口と押出ダイスを備えたケーシング内に回転するスクリューを配置し、前記投入口に投入した廃棄プラスチックを前記スクリューによって前記押出ダイスに向け順次移動しかつ圧縮した減容プラスチックを、該押出ダイスに設けた排出口から棒状で排出させるように成したものに関する。」

(1-b)段落【0010】?【0011】
「図1,2に示すように、本実施例の減容機は、基台1上に、ケーシング2の内部に設け、羽根部3,3と回転軸4,4から各成る一対のスクリュー5,5と、前記回転軸4,4の一端を前記ケーシング2の外部で回転可能に軸支する軸受6,6と、該回転軸4,4の他端にロータリージョイント7,7(図1には一方のみ図示)を介して連繋した駆動機構8を配置して構成する。
図1?4に示すように、ケーシング2は、断面長円形で横長の筒状に形成され、その内部に前記一対のスクリュー5,5が水平でかつ横に並ぶよう配置されている。また、該ケーシング2には、ホッパー9aを取り付けた投入口9と、前記駆動機構8とは反対側の端部に設けた、三つの排出口10,10,10を有する押出ダイス11と、該押出ダイス11近傍の基部からケーシング2内に入り前記駆動機構8側に向いて伸びる上下4本の熱媒体12・・・が設けてある。なお、前記投入口9にあっては、投入した廃棄プラスチックが前記スクリュー5,5間に落下するような位置に設けてある。また、前記各排出口10・・には、直角に湾曲した排出エルボ10a,10a,10aが取り外し可能に取り付けてある。該排出エルボ10a,10a,10aは内径の異なるものを複数種類準備し交換可能とする。」

(1-c)段落【0012】?【0014】
「図3に示すように、前記スクリュー5,5の構成部材である、羽根部3,3と回転軸4,4は、互いに取り外し可能に一体化すべく、羽根部3,3の中心軸上に伸びる挿入孔3a,3aの内形を断面六角形に、また回転軸4,4の連結部分4a,4aの外形を前記挿入孔3a,3aの内形に合致しうる断面六角形に形成し、該挿入孔3a,3aに連結部分4a,4aを挿入しして一体化するように構成してある。そして、前記一対のスクリュー5,5は、前記回転軸4,4が駆動機構8によって対向する方向に同じ回転数で回転し、この回転とともに羽根部3,3が前記廃棄プラスチックを前記押出ダイス11方向に強制的に移動するようになっている。
図1?3に示すように、前記軸受6,6は、基台1の端部に設けた支持台13上に取り付け、回転軸4,4の一端に設けた小径の被軸支部4b,4bを軸支する。また、該支持台13に基部が固定され、回転軸4,4の軸線方向に伸びる軸孔4c,4c内に挿入されたヒーター14,14は、ケーシング2の投入口9端にほぼ対応する位置まで伸びている。なお、図1中、符号15はヒーター14,14の前記基部のカバーである。
図1に示すように、前記駆動機構8は、駆動モーター16、一対のロータリージョイント17、複数のスプロケットにより構成される減速機18から成るもので、該減速機18にて二つの駆動軸に分岐し、該駆動軸を前記両ロータリージョイント7,7(図1には一方のみ図示)を介して、前記軸受6,6とは反対側の回転軸4,4端部に連繋してある。」

(1-d)段落【0018】
「この変形例で、前記実施例と異なる構成は、前記実施例における押出ダイス11の排出エルボ10a,10a,10aを二つの直線形状の排出口50,50に変更するとともに、回転軸4,4に切断刃51,51を有する切断部材52を固定し、該切断刃51,51が前記排出口50,50端に沿って通過するように成し、該排出口50,50から排出された半溶解状態の減容プラスチックを所定長さに切断するように成した点である。このように構成した変形例においては、棒状の減容プラスチックが所定の長さに揃うので、以後のゴミ処理が行い易いだけでなく、この減容廃棄プラスチックを燃料化する際、長さが揃っているので燃料用の成形加工を省略できるという利点がある。」

(1-e)図1,2及び4の記載によれば、ケーシング2は、投入口9から排出口10に亘ってほぼ同じ断面形状を有する中空部を貫通してなることが看取できる。

(1-f)図3の記載によれば、スクリュー5は、軸径が小さい第1の部分と軸径が大きい第2の部分とに区分されていることが看取できる。そして、図2、図3及び上記(1-c)の記載からみて、スクリュー5の軸径が小さい第1の部分は投入口9の直下に、軸径が大きい第2の部分は排出口側にわたって配置されていることが明らかである。

これらの記載事項を本件補正発明に照らして整理すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
[引用発明]
廃棄プラスチックを投入する投入口9から押出ダイス11に設けた減容プラスチックの排出口10に亘ってほぼ同じ断面形状を有する中空部を貫通したケーシング2と、ケーシング2の該中空部に配設して投入口9より装入した廃棄プラスチックを圧密化して排出口10へ送るスクリュー5と、から成り、棒状の減容プラスチックを排出する減容機において、
スクリュー5が、回転軸としてケーシング内に貫通する多角形状横断面の回動軸4と、該回動軸4の周りに嵌合された羽根部3から成る投入口直下の第1の部分と排出口側にわたる第2の部分と、から構成され、
排出口側の第2の部分の軸径が、投入口側にある第1の部分の軸径より大きくされている廃棄プラスチックの減容機。

イ.刊行物2
(2-a)段落【0001】
「【発明の属する技術分野】この発明は、各種プラスチック等の廃棄物を混練圧縮(減容化)し高密度物として排出したり、又は各種プラスチック等の廃棄物を混練圧縮、加熱(自己発熱や外部加熱)して、熱可塑性処理物を軟化、溶融させて非溶融物(木くず、紙くずその他)等と混合し固形化、減容化して排出する2軸押出機に関するものである。」

(2-b)段落【0017】
「端板5には胴体3の各円を中心とする内外2つの円周上に多数個の貫通孔13が設けられている。胴体3の内面には長さ方向及び上下方向とも複数に分割され、耐摩耗性を有する分割形胴体ライナー(内張材)15がコッタ16により取付けられている。胴体ライナー15内には1対の回転軸17,18が互いに平行に、かつ対向する方向に回転可能に設けられている。この回転軸17,18は胴体ライナー15内部分の断面が六角形であり、その外面にそれぞれ6枚の分割形送りスクリュー20……が互いに噛み合うように嵌挿固定されている。そして各送りスクリュー20はその羽根20aが連続した螺旋状となるように組み付けられる。回転軸17,18はこの例では断面六角形としたが、円形としてこれに送りスクリュー20をキー等で連結してもよい。また、送りスクリュー20を6枚に分割したが、分割数は任意であり、一体ものの1本の送りスクリューを回転軸17,18に嵌挿固定するようにしてもよい。」

(2-c)段落【0018】
「図3、図4は回転軸17,18の端板5側の端部にボルト22により端板5と近接して固定された押し込み(羽根)部材23を示すものである。この押し込み部材23は、ボス部24と、その外周の所定範囲に形成した扇状押し込み板部25と、嵌合軸部26とから構成され、回転軸17、18の回転により、図7の様に内々回転する。押し込み板部25は、後記排出ノズル33に相対していて、端板5側の側面がスクリュー部(捩れ面)25aとこれに続くフラット部(フラット面)25bとからなり、送りスクリュー20の羽根20a終端と押し込み部材23のスクリュー部25aの始端とが重合状に配設されている(図2参照)。」

上記記載事項及び図面の記載からみて、刊行物2には次の発明が記載されていると認められる。
「各種プラスチック等の廃棄物を固形化、減容化して排出する2軸押出機において、胴体ライナー15内部分の断面が六角形である回転軸17,18の外面にそれぞれ分割形送りスクリュー20……が互いに噛み合うように嵌挿固定されており、回転軸17,18の端板5側の端部に押し込み(羽根)部材23がボルト22により固定され、送りスクリュー20の羽根20a終端と押し込み部材23のスクリュー部25aの始端とが重合状に配設されている2軸押出機。」

ウ.刊行物3
(3-a)段落【0001】
「【発明の属する技術分野】本発明は、産業廃棄物を構造簡易にして容易に固化できる産業廃棄物固化処理装置に関する。」

(3-b)段落【0016】?【0017】
「本実施形態に係る産業廃棄物固化処理装置は、一側に入口1を、端部に蓋2で塞いだ出口3を備えた横長筒状のケーシング(搬送路)4内に、駆動軸5に固設したスクリュー羽根6を収容する構成になっている。
ケーシング4は、入口1から出口3に向って開口径を同一口径にするとともに、その軸方向に沿って、例えば3分割できる分割タイプになっている。分割タイプに構成したケーシング4は、図2に示すように、横断中心軸xを境に上半ケーシング4aと下半ケーシング4bとに区分けし、パッキング7を介装させてフランジ8a,8b間をボルト9a,9bで締結し、分割できる構成になっている。」

(3-c)段落【0019】
「一方、分割タイプに構成したケーシング4に収容する駆動軸5は、図1に示すように、一方にシール11および軸受12を軸装させて駆動部13に接続するとともに、他方にスクリュー羽根6を固設させ、固形物の出口3側に向って長く延びている。また、駆動軸5に固設したスクリュー羽根6は、出口3側に向うに連れて、そのピッチP1 ,P2 ,P3 を徐々に短くして固形物の圧縮率を高め、固形物を確実に固化できるようになっている。」

(3-d)段落【0028】
「本実施形態に係る産業廃棄物固化処理装置は、駆動軸5に固設したスクリュー羽根6を収容するケーシング4の開口径D1 ,D2 のうち、出口3の開口径D2 を、入口1の開口径D1 に較べて相対的に大きくしたものである。また、入口1から出口3に向ってケーシング4の開口径の拡開に伴って、駆動軸5の口径も拡口径にするとともに、駆動軸5に固設するスクリュー羽根6のピッチP1 ,P2 ,P3 を入口1から出口3に向うに連れ短くしている。」

上記記載事項及び図面の記載からみて、刊行物3には次の発明が記載されていると認められる。
「産業廃棄物固化処理装置において、駆動軸5に固設したスクリュー羽根6は、出口3側に向うに連れて、そのピッチP1 ,P2 ,P3 を徐々に短くして固形物の圧縮率を高めること。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「廃棄プラスチック」は、本件補正発明における「廃棄物」に相当し、以下同様に、「減容プラスチック」は「固形化物」に、「スクリュー5」は「押出しスクリュー」に、「回動軸4」は「内側回動軸」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明は、押出ダイスに設けた排出口から棒状の減容プラスチックを排出するものであるから、排出口に連接して固形化物に押出し成形する成形手段を備えているということができるものである。
また、引用発明における「回動軸4の周りに嵌合された羽根部3から成る投入口直下の第1の部分と排出口側にわたる第2の部分」は、「内側回動軸の周りに嵌合された螺旋軸及び螺旋軸の周囲に一体に形成した螺旋羽根から成る投入口直下の第1の螺旋部と排出口側にわたる第2の螺旋部」という限りで、本件補正発明における「異なる軸径毎に別体に区分されて内側回動軸の周りに嵌合して連接された区分螺旋軸及び各区分螺旋軸の周囲に一体に形成した螺旋羽根から成る投入口直下の第1の区分螺旋部材と排出口側にわたる第2の区分螺旋部材」と共通している。
さらに、引用発明における「廃棄プラスチックの減容機」は、廃棄物の固形化押出し装置と表現することができるものである。
したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりと認められる。
[一致点]
「廃棄物を投入する投入口から固形化物の排出口に亘ってほぼ同じ断面形状を有する中空部を貫通したケーシングと、ケーシングの該中空部に配設して投入口より装入した廃棄物を圧密化して排出口へ送る押出しスクリューと、ケーシングの排出口に連接して固形化物に押出し成形する成形手段と、から成り、
押出しスクリューが、回転軸としてケーシング内に貫通する多角形状横断面の内側回動軸と、該内側回動軸の周りに嵌合された螺旋軸及び螺旋軸の周囲に一体に形成した螺旋羽根から成る投入口直下の第1の螺旋部と排出口側にわたる第2の螺旋部と、から構成され、
排出口側の第2の螺旋部の螺旋軸の軸径が、投入口側にある第1の螺旋部の螺旋軸の軸径より大きくされている廃棄物の固形化押出し装置。」である点。
[相違点1]
押出しスクリューが、本件補正発明では、異なる軸径毎に別体に区分されて内側回動軸の周りに嵌合して連接された区分螺旋軸及び各区分螺旋軸の周囲に一体に形成した螺旋羽根から成る投入口直下の第1の区分螺旋部材と排出口側にわたる第2の区分螺旋部材と、から構成され、第2の区分螺旋部材が第1の螺旋部材に連接される中間部と、中間部に連接された終端部とに分割され、終端部が排出口側終端を閉じた終端壁を有し、該終端壁が内側回動軸の排出口側端面にねじ止め固定されており、上記第1の区分螺旋部材及び第2の区分螺旋部材の螺旋羽根は、全体でほぼ3ターンからほぼ2ターンの範囲で形成されているのに対して、引用発明では、回動軸4の周りに嵌合された羽根部3から成る投入口直下の第1の部分と排出口側にわたる第2の部分から構成されているものの、異なる軸径毎に別体に区分され、第2の部分がさらに中間部と終端部とに分割されたものとはされておらず、また、螺旋羽根が全体でほぼ3ターンからほぼ2ターンの範囲で形成されているともされていない点。
[相違点2]
本件補正発明では、第2の区分螺旋部材の螺旋羽根は第1の区分螺旋部材の螺旋羽根より螺旋ピッチが小さくされ且つその螺旋ピッチが排出口側に向かって徐々に小さくされているのに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。
[相違点3]
本件補正発明では、多角形状横断面の内側回動軸の周りに嵌合して連接された少なくとも第2の区分螺旋軸の中間部及び終端部には嵌合面にグリースを注入する注入部が形成されているのに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。

(4)相違点についての検討
ア.相違点1について
刊行物2には、上記(2)イに示したとおりの事項が記載されており、刊行物2に記載された発明における、回転軸17,18の外面に嵌挿固定された分割形送りスクリュー20……は、別体に区分されて内側回動軸の周りに嵌合して連接された区分螺旋軸及び各区分螺旋軸の周囲に一体に形成した螺旋羽根から成る区分螺旋部材を成しているということができる。そして、刊行物2に記載された発明における、回転軸17,18の端板5側の端部に固定された押し込み(羽根)部材23は、区分螺旋部材のうち終端部を成しており、終端壁を有するということができる。
そうすると、刊行物2には、「押出しスクリューが、別体に区分されて内側回動軸の周りに嵌合して連接された区分螺旋軸及び各区分螺旋軸の周囲に一体に形成した螺旋羽根から成る区分螺旋部材から構成され、前記区分螺旋部材に連接される終端部が終端壁を有し、該終端壁が内側回動軸の排出口側端面にねじ止め固定されること。」が記載されているとすることができる。
引用発明及び刊行物2に記載された発明は、いずれもスクリューを用いて廃棄物を圧縮、固化する装置として共通するものである。そして、上記の螺旋部材をどのように区分又は分割するかは、押出しスクリューの軸径・軸長等に応じて当業者が適宜設定できる事項にすぎないから(刊行物2の段落【0017】でも、分割数は任意とされている。)、引用発明において刊行物2に記載された発明を適用し、内側回動軸の周りに嵌合して連接された螺旋部材について投入口直下の第1の部分と排出口側にわたる第2の部分とを別体に区分して第1の区分螺旋部材と第2の区分螺旋部材とすることに格別困難性は見出せず、第2の部分をさらに中間部と終端部とに分割し、終端部が排出口側終端を閉じた終端壁を有するものとすることにも困難性は見当たらない。
また、押出しスクリューの螺旋羽根を全体で何ターンにするかについても、装置の規模や要求される圧縮度等に応じて当業者が適宜設定すべき設計的事項にすぎない。
したがって、引用発明に刊行物2に記載された発明を適用し上記相違点1に係る本件補正発明の特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。

イ.相違点2について
刊行物3には、上記(2)ウに示したとおり、産業廃棄物固化処理装置において、駆動軸に固設したスクリュー羽根を、出口側に向うに連れて、そのピッチを徐々に短くして固形物の圧縮率を高めることが記載されている。
引用発明及び刊行物3に記載された発明は、いずれもスクリューを用いて廃棄物を圧縮、固化する装置として共通するものであるから、引用発明に刊行物3に記載された発明を適用することにより、排出口側にわたる第2の部分の螺旋羽根を第1の部分より螺旋ピッチが小さくし、且つその螺旋ピッチを排出口側に向かって徐々に小さくするように設定することに格別の困難性は見出せない。

ウ.相違点3について
保守点検等の容易化のために、部材の嵌合部分等に注油する注入部を形成しておくことは従来周知であり(必要であれば、実願平1-110141号(実開平3-48865号)のマイクロフィルムの第1図及び第3頁第11?18行の記載等を参照)、また、内側回動軸の周りに嵌合された部材に嵌合面へグリースを注入する注入部を形成することも従来周知の事項にすぎないものである(必要であれば、実願平3-96415号(実開平5-45250号)のCD-ROMの段落、【0002】、【0008】の記載等を参照)。
してみると、引用発明における回転軸に嵌合された羽根部に対し上記従来周知の事項を適用して相違点3に係る本件補正発明の特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。

エ.本件補正発明の作用効果について
本件補正発明の作用効果についてみても、引用発明、刊行物2及び3に記載された発明並びに従来周知の事項から当業者であれば十分予測できる範囲内のものであって格別顕著なものではない。

したがって、本件補正発明は、引用発明、刊行物2及び3に記載された発明並びに従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本件発明について
1.本件発明
平成16年10月7日付の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1乃至5に係る発明は、平成16年1月29日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、前記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容は、前記第2の2(2)に示したとおりである。

3.対比・検討
本件発明は、前記第2の2で検討した本件補正発明から、「第1の区分螺旋部材及び第2の区分螺旋部材の螺旋羽根は、全体でほぼ3ターンからほぼ2ターンの範囲で形成されており」及び「多角形状横断面の内側回動軸の周りに嵌合して連接された少なくとも第2の区分螺旋軸の中間部及び終端部には嵌合面にグリースを注入する注入部が形成されている」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本件発明を特定する事項の全てを含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が前記第2の2(4)で示したとおり、引用発明、刊行物2及び3に記載された発明並びに従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も、同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本件発明は、引用発明、刊行物2及び3に記載された発明並びに従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-17 
結審通知日 2006-05-23 
審決日 2006-06-05 
出願番号 特願2001-175469(P2001-175469)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B30B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 紀本 孝  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 中島 昭浩
豊原 邦雄
発明の名称 廃棄物の固形化押出し装置  
代理人 青山 葆  
代理人 河宮 治  
代理人 石井 久夫  

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