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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1156378
審判番号 不服2004-12588  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-17 
確定日 2007-04-26 
事件の表示 平成9年特許願第249187号「モジュラジャック」拒絶査定不服審判事件〔平成11年3月30日出願公開、特開平11-86955号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年9月12日の出願であって、平成16年5月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年6月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正(以下、「第1回目の手続補正」という。)がなされ、更に、同年7月20日付けで手続補正(以下、「第2回目の手続補正」という。)がなされたものである。

2.第1回の手続補正の補正却下の決定について
[結論]
第1回の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「モジュラプラグが挿入されるプラグ挿入口が前面に開口したケースと、ケース内の定位置に固定されプラグ挿入口を通してケース内に挿入されたモジュラプラグの接触子に接触する複数本の接触ばねを有するインサートブロックとを備え、ケースは、プラグ挿入口が前面に開口するカバーと、カバーの後面に結合するボディとにより構成されるとともに埋込型の配線器具用の取付枠に取り付けることができる取付部を両側面に有し、カバーの後面側とインサートブロックとの間には、プラグ挿入口に沿って前記両側面に直交する方向にプラグ挿入口を開閉する扉が配設され、ケースの矩形状の外周縁の4隅に、前面が開口した有底の略円筒状の埋込型ボックスに取付可能となるようなテーパを有する面取り部が形成されて成ることを特徴とするモジュラジャック。」
と補正するものである。(上記下線部分は、本件補正により補正された箇所である。)

(2)補正の目的の適否
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ケース」について「ケースの矩形状の外周縁の4隅に、前面が開口した有底の略円筒状の埋込型ボックスに取付可能となるようなテーパを有する面取り部が形成されて」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第1項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

ア.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願昭61-79139号(実開昭62-191181号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、電話用差込接続器に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「モジュラインサート部を備えたボディブロックにカバーが取り付けられているとともに、カバーのモジュラインサート部と対応する位置にプラグ差込口が形成されていて、このプラグ差込口が開閉されるようにシャッターが設けられている電話用差込接続器において、前記シャッターが、閉止用ばねによって閉止される方向に付勢されていることを特徴とする電話用差込接続器。」(実用新案登録請求の範囲)
(イ)「第1図は、この考案にかかる電話用差込接続器の一例を分解して斜め上方からみたものをあらわしている。この電話用差込接続器は、ボディブロック1とカバー2を備えていて、ボディブロック1には、その前面側に1対の係入孔3,3が形成されているとともに、前面一側にモジュラインサート部4が突設されている。モジュラインサート部4は、その中央にプラグ挿入孔5を備えているとともに、このプラグ挿入孔5内には、複数本の接触片6が臨むように配列されている。前記モジュラインサート部4にはプラグ挿入孔5を通してモジュラプラグが同孔5内に係脱自在とされ、このプラグに配列された導電片が接触片6と電気的に接続されるようになっている。カバー2は、前記係入孔3,3に係入する係入突起7を備えていて、その裏面が開口された箱体とされている。このカバー2の表面壁には、モジュラインサート部4のプラグ挿入孔5に対応するようにしてプラグ差込口8が形成されている。このプラグ差込口8は、カバー2の一側に偏寄して配置されていて、カバー2の表面壁9内側に設けられたシャッター(扉)10によって開閉されるようになっている。カバー2の内側には、第1図矢印H方向に長手方向が向くようにして2本のシャッターガイド(扉保持用リブ)11,11が一体に配備されている。シャッターガイド11,11は、第3図にもみるように、L字形に形成されていて、矢印Hに直交する方向にその溝部11aを向い合わすようにされている。これら両シャッターガイド11,11に摺動自在に案内されるようにしてシャッター10が設けられている。シャッター10には、第2図にもみるように、プラグ差込口8を閉止できる板部の一端にプラグ差込口8を通して外部へ突出する開放操作片(プラグ引掛り片)12が突設されている。シャッター10には常に閉止されるように閉止用ばね13によって付勢されている。そのため、シャッター10の幅間中央に、矢印H方向に向く貫通孔14が形成されているとともに、カバー2には、貫通孔14と同心状に嵌まり合うガイドピン15が設けられている。このガイドピン15は、カバー2外から挿し込まれるようになっていて、このガイドピン15の軸回りには、シャッター10とカバー2間に対応するようにして閉止用ばね13が設置けられている。この閉止用ばね13は、コイル形のものが用いられていて、圧縮された状態で組み込まれている。」(明細書第3頁第14行?第5頁第20行)
(ウ)「前記シャッター10は閉止用ばね13によって常に付勢されていて、プラグ差込口8を閉止するようになっている。開放操作片12を介してシャッター10が開放されて、図示しないモジュラプラグがプラグ差込口8を通してプラグ挿入孔5内に挿し込まれるようになっている。モジュラプラグが抜かれると、閉止用ばね13によって自動的にシャッター10が閉止されるものである。前記シャッター10はシャッターガイド11によってカバー2にがたつきなく安定して保持されているとともに、カバー2をボディブロック1に組み付けるときにもシャッター10が落ちるようなこともない。この電話用差込接続器は、第1図にみる矢印Hの方向を水平方向に向けて埋め込まれるのが通例であり、その状態でシャッター10が横開き式に開かれるようになっているので、シャッター10を上に持ち上げて開くようにするものに比べて、モジュラプラグがシャッター10に引っ掛かりにくくなって挿入しやすいものである。さらに、シャッター10が閉止用ばね13によって常に閉止されるように付勢されているので、前記のような方向に接続器が設置される場合はもちろん、水平軸回りのいかなる向きに設置される場合にも常時シャッター10が閉じられていて設置向きを広汎に選ぶことができるようになった。」(明細書第6頁第8行?第9頁第12行)
(エ)第1図において、モジュラインサート部4の複数の接触片6には、モジュラプラグの接触子が接触することは、技術常識からして当然である。
また、第1図には、カバー2及びボディブロック1が、埋込型の配線器具用の取付枠に取り付けることのできる取付部を両側面に有していることは、図示内容及び技術常識からみて、当然である。
上記の記載事項及び図示内容を総合すると、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「モジュラプラグが挿入されるプラグ差込口8が前面に開口したカバー2と、カバー2内の定位置に固定されプラグ差込口8を通してカバー2内に挿入されたモジュラプラグの接触子に接触する複数本の接触片6を有するモジュラインサート部4とを備え、電話用差込接続器は、プラグ差込口8が前面に開口するカバー2と、カバー2の後面に結合するボディブロック1とにより構成されるとともに埋込型の配線器具用の取付枠に取り付けることができる取付部をカバー2の両側面に有し、カバー2の後面側とモジュラインサート部4との間には、プラグ差込口8に沿って前記両側面に直交する方向にプラグ差込口8を開閉するシャッター10が配設されて成る電話用差込接続器。」

イ.対比・判断
本願補正発明と引用発明を対比すると、後者の「プラグ差込口8」は、その機能及び構造からみて、前者の「プラグ挿入口」に相当する。
また、本願の段落【0016】等によれば、後者の「カバー2」と「ボディブロック1」を合体させたものは、前者の「ケース」に相当する。
また、後者の「カバー2」は前者の「カバー」に、後者の「接触片6」は前者の「接触ばね」に、後者の「モジュラインサート部4」は前者の「インサートブロック」に、後者の「ボディブロック1」は前者の「ボディ」に、後者の「シャッター10」は前者の「扉」に、後者の「電話用差込接続器」は前者の「モジュラプラグ」に、それぞれ相当する。
そうすると、両者は、
「モジュラプラグが挿入されるプラグ挿入口が前面に開口したケースと、ケース内の定位置に固定されプラグ挿入口を通してケース内に挿入されたモジュラプラグの接触子に接触する複数本の接触ばねを有するインサートブロックとを備え、ケースは、プラグ挿入口が前面に開口するカバーと、カバーの後面に結合するボディとにより構成されるとともに埋込型の配線器具用の取付枠に取り付けることができる取付部を両側面に有し、カバーの後面側とインサートブロックとの間には、プラグ挿入口に沿って前記両側面に直交する方向にプラグ挿入口を開閉する扉が配設されて成るモジュラジャック。」の点で一致しており、以下の点で相違する。
(相違点)
前者は、「ケースの矩形状の外周縁の4隅に、前面が開口した有底の略円筒状の埋込型ボックスに取付可能となるようなテーパを有する面取り部が形成」されて成るのに対し、後者は、そのような構成を備えていない点。

上記相違点について検討する。
モジュラジャックを取り付ける器具本体を、「前面が開口した有底の略円筒状の埋込型ボックス」とする点は、従来周知の技術(例えば、特開平5-38023号公報、特開平6-243923号公報等)であり、かつ、「ケースの矩形状の外周縁の4隅に、テーパを有する面取り部が形成」するのは、機械設計において常套手段(例えば、特開昭64-76688号公報等)であることから、上記周知の技術及び常套手段を引用発明に適用して、本願補正発明の相違点に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明の作用効果は、引用発明、上記周知の技術及び常套手段に基づいて当業者が容易に予測できる程度のものであって、格別のものではない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、上記周知の技術及び常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

ウ.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.第2回目の手続補正の補正却下について
[結論]
第2回目の手続補正を却下する。
[理由]
第2回目の手続補正は、第1回目の手続補正の補正事項に加え【発明の詳細な説明】についてのみ補正したもので、【特許請求の範囲】は補正していないから、第2回目の手続補正によって補正された請求項1に係る発明も、実質上、第1回目の手続補正と同じ発明である。
したがって、当該発明も、上記2.と同様の理由により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、第2回目の手続補正も、却下すべきものである。

4.本願発明
第1,2回目の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許出願時の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「モジュラプラグが挿入されるプラグ挿入口が前面に開口したケースと、ケース内の定位置に固定されプラグ挿入口を通してケース内に挿入されたモジュラプラグの接触子に接触する複数本の接触ばねを有するインサートブロックとを備え、ケースは、プラグ挿入口が前面に開口するカバーと、カバーの後面に結合するボディとにより構成されるとともに埋込型の配線器具用の取付枠に取り付けることができる取付部を両側面に有し、カバーの後面側とインサートブロックとの間には、プラグ挿入口に沿って前記両側面に直交する方向にプラグ挿入口を開閉する扉が配設されて成ることを特徴とするモジュラジャック。」

5.引用発明
上記「2.(3)ア.」に記載したとおりである。

6.対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「ケース」の限定事項である「ケースの矩形状の外周縁の4隅に、前面が開口した有底の略円筒状の埋込型ボックスに取付可能となるようなテーパを有する面取り部が形成されて」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.(3)イ.」に記載したとおり、引用発明、上記周知の技術及び常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-22 
結審通知日 2007-02-27 
審決日 2007-03-15 
出願番号 特願平9-249187
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01R)
P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 栗田 雅弘  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 和泉 等
中村 則夫
発明の名称 モジュラジャック  
代理人 西川 惠清  
代理人 森 厚夫  

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