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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
管理番号 1156546
審判番号 不服2004-20137  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-30 
確定日 2007-04-25 
事件の表示 特願2000-251612「ゴマ青麦顆粒の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月26日出願公開、特開2002- 58458〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年8月22日の出願であって、その請求項1ないし3に係る発明は、平成18年11月22日付手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】麦類緑葉乾燥粉末とペースト状のゴマとを混合する工程および該混合物を造粒する工程を含む、風味、保存安定性、および美肌効果に優れたゴマ青麦顆粒の製造方法であって、該混合工程において、麦類緑葉乾燥粉末とペースト状のゴマとの重量比が5:1の割合で、かつペースト状のゴマがゴマ青麦顆粒中に10重量%以下となるように混合される、方法。」

2.引用例
これに対して、当審における、平成18年8月31日付で通知した拒絶の理由に引用した特開平4-79864号公報(以下、「引用例1」という。)には、
(a)「1、ペースト状の黒胡麻とアロエエキスとを複合的に含有してなることを特徴とする、滋養成分含有食品。」(特許請求の範囲の項)、
(b)「本発明による滋養成分含有食品は、ペースト状黒胡麻とアロエエキスとが複合的に添加されている限りにおいて、様々な種類の食品、飲料、菓子類に適用可能であり、・・・・・さらに、賦形剤を用いるかあるいは用いないで顆粒状ないし粉末状に成形することもできる。したがって、材料、製造方法の採用にあたっては、ペースト状黒胡麻とアロエエキスとを複合的に配合する点を除いて、従来知られている食品の材料ないし製造方法、あるいは種々の追加的添加材料の使用が、本発明を逸脱しない範囲内で適用可能である。」(2頁左上欄19?右上欄12行)、
(c)「従来から知られているように、黒胡麻は滋養分に富み、白髪や抜け毛の防止において効果があり、また皮膚、目、歯、爪の健康増進においても顕著な効果が認められる。本発明においては、このような黒胡麻と後述するアロエエキスとを組合わせて配合することによって黒胡麻とアロエが有する滋養効果を十分に発現させるばかりでなく、双方の成分が有する嫌味を除去ないし低減させて、味覚、食感の一層の向上を図ることができる。」(2頁左下欄5?8行)、及び
(d)「具体的には、黒胡麻ペースト10重量部に対して、アロエエキス5重量部?40重量部、好ましくは10?30重量部の範囲で配合する。」(2頁右下欄5?8行)と記載されている。
上記摘示事項(b)には、ペースト状の黒胡麻とアロエエキスとを配合してなる滋養成分含有食品を顆粒状に成形することが示されているから、結局、引用例1には、「アロエエキスと黒胡麻ペーストとを配合する工程及び該配合物を顆粒にする工程を含む、滋養成分含有顆粒の製造方法であって、該配合工程において、ペースト状の黒胡麻とアロエエキスとの重量比が10:5?40の割合で配合される、方法」が記載されているものと認める。
同じく引用した特開平9-233996号公報(以下、「引用例2」という。)には、「【請求項1】75?80%の水分が脱水され、細かくスライスされた青葉野菜を主材料とする青葉野菜の半乾燥食品。」(請求項1)、「【請求項2】75?80%の水分が脱水され、細かくスライスされた青葉野菜と、味付け材料とを混ぜ合わせた青葉野菜の半乾燥食品。」(請求項2)、「【請求項6】前記味付け材料は、乾燥わかめ,乾燥しその葉,ちりめん,いり胡麻,食塩,砂糖,調味料のグループより選択されたものである、請求項1?5のいずれかに記載の青葉野菜の半乾燥食品。」(請求項6)、及び「本発明の青葉野菜の半乾燥食品は、野沢菜、青高菜、ケール、麦の若葉などの青葉野菜を細かくきざんだ半乾燥のものを主な材料とし、これに乾燥わかめ,乾燥しその葉,ちりめん,いり胡麻,食塩,砂糖,調味料などの味付け材料を混ぜ合わせたものである。」(2頁段落【0010】)と記載されている。

3.対比
本願発明と引用例1に記載された発明を対比すると、引用例1に係る「滋養成分含有顆粒」は、ペースト状の黒胡麻とアロエエキスとを混合し、該混合物を造粒することにより製造されることは明らかであり、また、「麦類緑葉乾燥粉末」と「アロエエキス」は、共に「健康食品素材」であるといえるから、両者は、「健康食品素材とペースト状のゴマとを混合する工程および該混合物を造粒する工程を含む、健康食品顆粒の製造方法」の点で一致し、ただ、(イ)前者は、健康食品素材として「麦類緑葉乾燥粉末」を用い、「ゴマ青麦顆粒」を製造するのに対して、後者では、健康食品素材として「アロエエキス」を用い、「ゴマとアロエエキスを含有する顆粒」を製造する点、(ロ)健康食品顆粒が、前者では、「風味、保存安定性、および美肌効果に優れた」ものであるのに対し、後者には、保存安定性及び美肌効果について記載されていない点、及び(ハ)前者では、健康食品素材として用いた麦類緑葉乾燥粉末とペースト状のゴマとの重量比が5:1の割合で、かつ、ペースト状のゴマが健康食品顆粒中に10重量%以下となるように混合されるのに対し、後者には、そのような数値限定について記載されていない点で、両者は相違する。

4.当審の判断
上記相違点(イ)ないし(ハ)について検討する。
相違点(イ)について
麦類の緑葉には葉緑素、ビタミン、ミネラル類、食物繊維等の栄養成分が豊富に含まれており、該麦類緑葉の乾燥粉末を原料として用いて健康食品を製造することは、本願出願前に当業者において周知であった(必要なら、例えば特開平7-241176号、特開平5-137530号公報参照。)こと、及び麦の若葉を半乾燥したものとゴマを用いた食品が引用例2に記載されていることを併せ考えると、引用例1での健康食品素材であるアロエエキスに代えて、麦類緑葉乾燥粉末を用いて「ゴマ青麦顆粒」を製造することは、当業者において格別困難なことではない。
相違点(ロ)について
本願発明で特定する「風味、保存安定性、および美肌効果に優れた」は、本願発明に係る効果というべきものであるが、引用例1には、「従来から知られているように、黒胡麻は滋養分に富み、白髪や抜は毛の防止において効果があり、また皮膚、目、歯、爪の健康増進においても顕著な効果が認められる。」(摘示事項(c))との記載があり、この「皮膚の健康増進」とは、「美肌効果」に他ならないから、「美肌効果に優れた」という効果は、引用例1の記載に基づいて当業者が容易に予測できるものである。
また、一般に、食品素材の配合物を乾燥させて顆粒にすれば、風味、保存安定性が高まることは当業者の技術常識であることから、「風味、保存安定性」についても、当業者が予測できる範囲内のもので格別の効果とはいえない。
相違点(ハ)について
本願明細書の実施例1ないし5には、麦類緑葉乾燥粉末と市販のゴマ(ゴマ粉末と解される。)を重量比で5:3の割合で配合することにより、造粒性と保存安定性に優れ、美肌効果に優れたゴマ青麦顆粒が得られることは記載されているが、麦類緑葉乾燥粉末とペースト状のゴマを重量比で5:1の割合で配合すること及びそれに基づく効果については本願明細書に何も記載されていないから、上記「5:1」の数値限定に臨界的意義を認めることはできない。
また、ゴマを配合して滋養強壮剤等を製造するとき、ゴマに含まれる油分の影響により混合分散に不都合が生じることはよく知られていた(必要ならば、特開平10-218785号公報、段落【0008】を参照のこと。)ことからすれば、顆粒中のゴマのペーストの含有量を「10重量%以下」とすることは、当業者にとって格別困難なことではない。
請求人は、平成18年4月24日付けで提出した実験成績証明書(甲第1号証)に記載の実験結果に基づいて、平成18年11月22日付け意見書において、「麦若葉末とゴマペーストとの重量比が5:2である場合には、造粒することができず、その重量比を5:1にすることにより造粒が可能となり、目的のゴマ青麦顆粒を得ることができる」との主旨の主張をしている。
しかしながら、本願明細書には、麦類緑葉乾燥粉末とゴマとの配合割合について「麦類緑葉乾燥粉末とゴマとの配合割合は、一般に重量比で10:1?1:2が好ましい。この範囲を外れると、上記相乗効果が得られにくい。5:1?1:2がより好ましく、3:1?3:2がさらに好ましい。」(段落【0045】)との記載はあるが、上記「ゴマ」がゴマ粒なのか、擦りゴマなのか、或いはゴマペーストなのか不明である。
そうすると、麦若葉末とゴマペーストとの重量比を5:1にすることにより、はじめて造粒が可能となり、目的のゴマ青麦顆粒を得ることができるという効果が本願明細書の上記箇所に記載されているということはできず、請求人の上記主張は採用しない。
そして、本願発明が奏する効果は、上記周知事項及び引用例1及び2に記載された発明から予測されるところを超えて優れているとはいえない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本出願に係る他の請求項について検討するまでもなく、本出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-05 
結審通知日 2007-02-13 
審決日 2007-03-05 
出願番号 特願2000-251612(P2000-251612)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 淳子  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 鈴木 恵理子
冨永 みどり
発明の名称 ゴマ青麦顆粒の製造方法  
代理人 南條 博道  

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