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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) G08G
管理番号 1157160
判定請求番号 判定2007-600020  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2007-06-29 
種別 判定 
判定請求日 2007-02-28 
確定日 2007-04-23 
事件の表示 上記当事者間の特許第3497025号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びイ号説明書に示す「ナビゲーション装置」は、特許第3497025号の請求項5に係る発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1.請求の趣旨
イ号図面及びイ号説明書に示す「ナビゲーション装置」(以下「イ号物件」という。)は、特許第3497025号の請求項5に係る発明(以下「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求める。

2.本件特許発明
本件特許発明は、訂正された明細書及び図面(訂正2006-39165号事件、平成18年11月20日訂正認容審決確定)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項5に記載されたとおりのものであり、その構成を符号を付して分説して記載すると次のとおりである。
「A ナビゲーション装置において、
B GPS受信情報に基づき現在地を特定する現在地特定手段と、
C ユーザの指示する目的地の位置を受け付ける入力手段と、
D 前記現在地の所定範囲内に存在する複数の交通機関の利用開始地点、前記目的地の所定範囲内に存在する複数の交通機関の利用終了地点、および、現在地から目的地までの移動経路および移動時間を検索する経路検索手段と、
E 前記複数の利用開始地点、前記複数の利用終了地点、前記移動経路とともに、少なくとも前記現在地から利用開始地点まで移動する時間が識別できるように前記移動時間を画面表示し、且つ現時刻において次に乗車できる時刻を表示する表示手段と、
F を備えることを特徴とするナビゲーション装置。」

3.イ号物件の特定
判定請求書に添付されたイ号説明書の記載事項及びイ号図面の図示内容を総合すると、イ号物件は次のとおり特定されるものと認めることができる。
「a ナビゲーション装置において、
b GPS受信情報に基づき現在地を特定するGPS受信部と、
c ユーザの指示する目的地の位置を受け付ける入力部と、
d 前記現在地の徒歩圏内にある複数の駅、前記目的地の徒歩圏内にある複数の駅、および、現在地から目的地までの経路および現在地から目的地までに要する移動時間を検索する経路検索部と、
e 前記現在地の徒歩圏内にある複数の駅、前記目的地の徒歩圏内にある複数の駅、現在地から目的地までの経路とともに、現在地の出発時刻及び前記現在地の徒歩圏内にある駅への到着時刻、および、前記現在地から目的地までに要する移動時間を画面表示し、且つ現時刻において検索された、前記現在地の徒歩圏内にある駅から乗車できる電車の出発時刻を表示する表示部と
f を備えるナビゲーション装置。」

なお、合議体によるイ号物件の特定は、判定請求書において判定請求人が記載したイ号物件の特定と相違する。その相違点(上記下線部参照)及び理由は以下のとおりである。
・ 経路検索部について
判定請求書におけるイ号装置の説明の欄には、経路検索部において検索する情報として「現在地から目的地までの経路及び発着時刻(経路途中の駅等での発着時刻を含む)」との記載がある。
しかしながら、イ号図面の図4の43-1をみると、現在地から目的地(東京都新宿区愛住町3)までに要する移動時間(28分)のみが示されており、同図の43-2をみても同様であるから、本件特許発明の構成要件との対応関係を考慮し、上記のとおり特定した。
・ 表示部について
判定請求書におけるイ号装置の説明の欄には、表示部において表示する情報として「現在地から目的地までの経路及び発着時刻(経路途中の駅等での発着時刻を含む)」との記載がある。
しかしながら、イ号説明書及びイ号図面の図4の43-1をみると、現在地の出発時刻(17:35)及び現在地の徒歩圏内にある駅(小川町)への到着時刻(17:44)、および、現在地から目的地までに要する移動時間(28分)、並びに、現時刻(17:32)において検索された、現在地の徒歩圏内にある駅(小川町)から乗車できる電車の出発時刻(17:47)が画面表示されており、これについても同図の43-2をみても同様であるから、本件特許発明の構成要件との対応関係を考慮し、上記のとおり特定した。

4.対比・判断
イ号物件の各構成が、本件特許発明の各構成要件を充足するか否かについて以下検討する。

(1)構成要件A及びFについて
イ号物件は、ナビゲーション装置であるから、イ号物件の構成a及びfは、本件特許発明の構成要件A及びFを充足する。

(2)構成要件Bについて
イ号物件の構成bの「GPS受信部」は、本件特許発明の「現在地特定手段」に相当する。
そうすると、イ号物件の「GPS受信情報に基づき現在地を特定するGPS受信部」は、本件特許発明の「GPS受信情報に基づき現在地を特定する現在地特定手段」を充足する。

(3)構成要件Cについて
イ号物件の「入力部」は、本件特許発明の「入力手段」に相当する。
そうすると、イ号物件の「ユーザの指示する目的地の位置を受け付ける入力部」は、本件特許発明の「ユーザの指示する目的地の位置を受け付ける入力手段」を充足する。

(4)構成要件Dについて
本件特許発明の経路検索手段において検索する「移動時間」は、その文言の一般的な意味から、移動に要する時の長さと解することが相当である。また、構成要件Eにおける「少なくとも現在地から利用開始地点まで移動する時間が識別できるように前記移動時間を画面表示し」という記載から、「移動時間」は、少なくとも現在地から利用開始地点までの移動に要する所要時間を含むものと解すべきである。
一方、イ号物件の経路検索部において検索する「移動時間」は、「現在地から目的地までに要する移動時間」である。
そうすると、少なくとも、本件特許発明の経路検索手段で検索される「移動時間」と、イ号物件の経路検索部で検索される「現在地から目的地までに要する移動時間」とは、明らかに相違するものというべきである。
したがって、イ号物件の「現在地の徒歩圏内にある複数の駅、目的地の徒歩圏内にある複数の駅、および、現在地から目的地までの経路および現在地から目的地までに要する移動時間を検索する経路検索部」は、本願特許発明の「現在地の所定範囲内に存在する複数の交通機関の利用開始地点、目的地の所定範囲内に存在する複数の交通機関の利用終了地点、および、現在地から目的地までの移動経路および移動時間を検索する経路検索手段」を充足するとはいえない。

(5)構成要件Eについて
本件特許発明の表示手段において「少なくとも現在地から利用開始地点まで移動する時間が識別できるように移動時間を画面表示」する態様の「移動時間」は、上記(4)のとおり、移動に要する時の長さと解することが相当である。即ち、本件特許発明の表示手段で表示する情報は、現在地から利用開始地点までの移動に要する所要時間であって、出発時刻や到着時刻とは異なる情報と解すべきである。この点について、訂正された特許明細書及び図面を参酌しても、「【0011】7は経路情報作成部であって,現在地から目的地までの経路を求め,所要時間,運賃等を計算するものである。8は表示部であって,地図,経路,所要時間,運賃等を表示するものである。」、「【0013】21は移動時間計算部であって,交通機関情報保持部5の保持する時刻表等をもとに,求められた経路により目的地に至るまでの所要時間を計算するものである。」、及び、図2の表示画面の例の「○駅まで ○○分」等の記載をみても、移動時間は、時刻表、即ち、交通機関の発着時刻をもとに計算されるものであって、発着時刻とは異なる情報であることは明らかであり、また、これ以上の意味を含むものと解することができる他の実施例等の開示は見当たらない。
一方、イ号物件の表示部は、「現在地の出発時刻及び前記現在地の徒歩圏内にある駅への到着時刻、および、現在地から目的地までに要する移動時間」を画面表示するものである。
そうすると、イ号物件の表示部で表示する「現在地の出発時刻及び前記現在地の徒歩圏内にある駅への到着時刻」は、上記のとおり、その情報の内容が、本件特許発明の「移動時間」と明らかに相違し、また、同じくイ号物件の表示部で表示する「現在地から目的地までに要する移動時間」は、「移動時間」ではあるものの、本件特許発明の「移動時間」が有する「少なくとも現在地から利用開始地点まで移動する時間が識別できるように」という機能を有するものとはいえないから、少なくとも、イ号物件の表示部において「現在地の出発時刻及び前記現在地の徒歩圏内にある駅への到着時刻、および、現在地から目的地までに要する移動時間を表示」する態様と、本件特許発明の表示手段において「少なくとも現在地から利用開始地点まで移動する時間が識別できるように移動時間を表示」する態様とは、相違するというべきである。
したがって、イ号物件の「現在地の徒歩圏内にある複数の駅、前記目的地の徒歩圏内にある複数の駅、現在地から目的地までの経路とともに、現在地の出発時刻及び前記現在地の徒歩圏内にある駅への到着時刻、および、現在地から目的地までに要する移動時間を画面表示し、且つ現時刻において検索された、前記現在地の徒歩圏内にある駅から乗車できる電車の出発時刻を表示する表示部」は、本件特許発明の「複数の利用開始地点、複数の利用終了地点、移動経路とともに、少なくとも現在地から利用開始地点まで移動する時間が識別できるように移動時間を画面表示し、且つ現時刻において次に乗車できる時刻を表示する表示手段」を充足するとはいえない。
なお、判定請求人は、判定請求書において、「これに対し、本件特許発明の構成要件Eにおいて『少なくとも前記現在地から利用開始地点まで移動する時間が識別できるように・・・画面表示』するとは、現在地から前記交通機関の利用開始地点まで移動する時間が識別可能でありさえすれば、その表示形態は、時間であれ、時刻であれ、問われないから、イ号装置の時刻表示であっても包含することは明らかである。」旨、主張するが、前述のとおり、本件特許発明の表示手段が表示する情報は「移動時間」であって、時刻とは相違するものであるから、「その表示形態は、時間であれ、時刻であれ、問われない」との認識に基づく上記主張は、採用することができない。

5.むすび
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2007-04-11 
出願番号 特願平7-258555
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (G08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 芳枝  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 丸山 英行
渋谷 善弘
登録日 2003-11-28 
登録番号 特許第3497025号(P3497025)
発明の名称 ナビゲーション表示方法,および,装置  
代理人 真田 有  

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