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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680092 審決 特許
無効200680032 審決 特許
無効200680280 審決 特許
無効200680043 審決 特許
無効200680077 審決 特許

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審決分類 審判 一部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  A45D
審判 一部無効 4項(134条6項)独立特許用件  A45D
審判 一部無効 2項進歩性  A45D
審判 一部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A45D
管理番号 1157717
審判番号 無効2006-80173  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-09-05 
確定日 2007-05-01 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3708289号発明「両軸繰出式棒状化粧材容器」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3708289号の請求項1、3に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3708289号に係る発明についての出願は、平成9年5月9日に出願され、平成17年8月12日に特許権の設定登録がされたものであって、その後、平成18年9月5日に請求人株式会社トキワより無効審判が請求され、これに対して被請求人鈴野化成株式会社より平成18年11月27日付で答弁書が提出されるとともに、同日付で訂正請求がなされ、これに対して請求人より平成19年1月5日付で弁駁書が提出され、平成19年2月28日に口頭審理が行われ、同日付で請求人、被請求人より口頭審理陳述要領書が提出され、さらに請求人、被請求人より平成19年3月8日付けで上申書が提出されたものである。

2.訂正の適否に対する判断
(1)訂正の内容
本件訂正は、願書に添付した明細書及び図面(以下、「特許明細書」という。)を、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである。
・訂正事項(a)
特許請求の範囲の請求項1において
(a-1)訂正前の「中間筒」を「容器の中間に位置する円筒状の中間筒であって、その外周には、軸方向中央の大径部の両端に、容器のキャップの開口側端部と当接する段部が設けられている中間筒」と訂正する。
(a-2)訂正前の「先筒を覆うキャップ」を「先筒を覆い、かつ中間筒の両端に対して共通に着脱自在なキャップ」と訂正する。
(a-3)訂正前の「キャップ内面と中間筒の軸方向前後部外面に同期係合部が設けられ」を「キャップ内面に設けられた周方向連続縦溝と、中間筒の軸方向前後部外面に設けられた縦リブとが、キャップの開口側端部が中間筒の前記段部に当接する状態において相互に係合することによる、キャップと中間筒との同期係合部が設けられ」と訂正する。
(a-4)請求項1に「さらに、キャップの内面に設けられた周方向凹溝と、キャップの開口側端部が中間筒の前記段部に当接する状態において上記凹溝と係合する、中間筒前後部外面に設けられた突起との相互係合による、キャップ係止部が設けられている」という事項を付加する。
・訂正事項(b)
特許請求の範囲の請求項3、請求項4及び請求項5を削除する。
・訂正事項(c)
訂正前の特許請求の範囲の請求項6を請求項3に繰り上げ、かつ同請求項の記載を「上記先筒A、Bがそれぞれカートリッジとなって上記中間筒に対して着脱自在であることを特徴とする請求項1又は2記載の両軸繰出式棒状材容器。」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
・訂正事項(a)について
(ア)上記(a-1)の訂正事項について
上記(a-1)の訂正事項は、訂正前の「中間筒」に関して、「容器の中間に位置する円筒状の中間筒であって、その外周には、軸方向中央の大径部の両端に、容器のキャップの開口側端部と当接する段部が設けられている」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当する。
また、上記(a-1)の訂正事項の内「容器の中間に位置する円筒状の中間筒」は、特許明細書の段落【0019】に「中間筒21は、中段部が太く、両端部が細い円筒状のものである。」と、中間筒が円筒状であることが記載されており、また、図1、図3の記載から中間筒が容器の中間に位置することは自明な事項である。
さらに、上記(a-1)の訂正事項の内「その外周には、軸方向中央の大径部の両端に、容器のキャップの開口側端部と当接する段部が設けられている」は、図1、図3の記載から、中間筒の軸方向中央部に大径部があることは自明な事項であり、さらに、図1、図3には、大径部の両端に段部が設けられ、該段部とキャップの開口側端部が当接している状態が図示されている。そして、容器一般において、容器のキャップが係合する部分に、キャップの開口側端部と当接する段部を設けることによりキャップの嵌り過ぎの防止やキャップの位置決め等を行うようにすることが技術常識であることを合わせて考慮すると、図1、図3の記載から、大径部の両端に設けられた段部とキャップの開口側端部とが当接することは自明な事項であるといえる。

(イ)上記(a-2)の訂正事項について
上記(a-2)の訂正事項は、訂正前の「キャップ」に関して、「中間筒の両端に対して共通に着脱自在な」と限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当する。
また、上記(a-2)の訂正事項は、訂正前の請求項5の「上記キャップが、上記容器の前後において共通である」という記載、特許明細書の段落【0011】の「上下のキャップ11、29は同じ形をしており、上下取り替えて装着することができる。あるいは、キャップが1個だけで、使用しない方の先筒に装着しておいてもよい。キャップを共通化することにより、キャップの選択が不要になるとともに、金型費等の製造コストを低減できる。」という記載、及び図1、図3にキャップが中間筒の両端に装着されている状態が図示されていることから自明な事項であるといえる。

(ウ)上記(a-3)の訂正事項について
上記(a-3)の訂正事項は、訂正前の「同期係合部」が、「キャップ内面と中間筒の軸方向前後部外面に」設けられたものであったのを、キャップ内面に設けられた同期係合部を「周方向連続縦溝」とし、中間筒の軸方向前後部外面に設けられた同期係合部を「縦リブ」とし、これらの同期係合部が「キャップの開口側端部が中間筒の前記段部に当接する状態において相互に係合する」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当する。
また、上記(a-3)の訂正事項の内「キャップ内面に設けられた周方向連続縦溝と、中間筒の軸方向前後部外面に設けられた縦リブ」は、訂正前の請求項3の「上記同期係合部が、互いに係合するローレット(周方向連続縦溝)と縦リブとで構成されている」という記載、及び特許明細書の段落【0012】の「キャップ11、29の根元部内面には、同期係合縦溝51、78が形成されている。・・・(中略)・・・この縦溝51は、図2に示すように、周方向に連続的に多数形成されている。縦溝51、78は、先筒15、23外面の縦リブ53、79及び、中間筒外面前後端部の縦リブ55、75と係合して、前のキャップ11と先筒15及び中間筒21、後のキャップ29と先筒23及び中間筒21とを回り止めする。」という記載から自明な事項である。
さらに、上記(a-3)の訂正事項の内、同期係合部が「キャップの開口側端部が中間筒の前記段部に当接する状態において相互に係合する」は、上記(a-1)の訂正事項で検討したように、キャップを容器に装着した状態でキャップの開口側端部が中間筒の前記段部に当接することは自明な事項であるといえ、また、キャップ内面に設けられた周方向連続縦溝と、中間筒の軸方向前後部外面に設けられた縦リブとは、キャップを容器に装着した状態で相互に係合するものであるし、図1、図3にも、キャップの開口側端部が中間筒の段部に当接する状態で、キャップ内面に設けられた周方向連続縦溝と、中間筒の軸方向前後部外面に設けられた縦リブが相互に係合している状態が図示されているのであるから自明な事項であるといえる。

(エ)上記(a-4)の訂正事項について
上記(a-4)の訂正事項は、訂正前の請求項1に「さらに、キャップの内面に設けられた周方向凹溝と、キャップの開口側端部が中間筒の前記段部に当接する状態において上記凹溝と係合する、中間筒前後部外面に設けられた突起との相互係合による、キャップ係止部が設けられ」という事項を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当する。
また、上記(a-4)の訂正事項の内「キャップの内面に設けられた周方向凹溝と」「中間筒前後部外面に設けられた突起との相互係合による、キャップ係止部」は、訂正前の請求項4に「上記中間筒前後部外面にキャップを嵌合係止する係止部が形成されており、上記キャップ内面に該係止部に対応する係止部が形成されている」と、キャップの内面と中間筒前後部外面にキャップの係止部が形成されていることが記載されており、また、特許明細書の段落【0012】に「同溝の手前側には、嵌合凹凸57(図2における環状凸部57a及び環状凹部57b)、71が形成されている。」と、キャップ係止部として嵌合凹凸が用いられることが記載されており、図2には、嵌合凹部としてキャップの内面の周方向凹溝が、嵌合凸部として中間筒外面の突起がそれぞれ図示されているのであるから自明な事項であるといえる。
さらに、上記(a-4)の訂正事項の内「キャップの開口側端部が中間筒の前記段部に当接する状態において上記凹溝と係合する」「突起」は、上記(a-1)の訂正事項で検討したように、キャップを容器に装着した状態でキャップの開口側端部が中間筒の前記段部に当接することは自明な事項であるといえ、また、キャップ内面に設けられた周方向凹溝と、中間筒前後部外面に設けられた突起とは、キャップを容器に装着した状態で相互に係合するものであるし、図1、図3にも、キャップの開口側端部が中間筒の段部に当接する状態で、キャップ内面に設けられた溝と、中間筒前後部外面に設けられた突起が相互に係合している状態が図示されているのであるから自明な事項であるといえる。

したがって、上記訂正事項(a)は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当するとともに、特許明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

なお、審判請求人は弁駁書において、訂正事項(a)の「軸方向中央」、「大径部」、「周方向凹溝」、「突起」なる用語は本件特許の明細書に一切記載されておらず、また、キャップの開口側端部と中間筒の段部が当接する旨や、この当接により的確な位置で同期係合及び抜け止めを図る旨は特許明細書には記載も示唆もされておらず、また、自明なものでもない旨主張しているが、上述したように請求人が指摘する点は、特許明細書又は図面の記載から自明な事項であるといえるから、請求人の上記主張は採用することができない。

・訂正事項(b)について
上記訂正事項(b)は、特許請求の範囲の請求項3、請求項4及び請求項5を削除するのであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

・訂正事項(c)について
上記訂正事項(c)は、上記訂正事項(b)の特許請求の範囲の請求項3、請求項4及び請求項5の削除に伴い請求項6を請求項3に繰り上げるものであるから、明りようでない記載の釈明に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)独立特許要件について
特許請求の範囲の請求項2に係る発明は特許無効審判の請求がされていない請求項に係る発明であるが、上記訂正事項(a)のように、特許請求の範囲の請求項1に係る発明が特許請求の範囲の減縮を目的として訂正されているので、特許請求の範囲の請求項1に係る発明を引用している特許請求の範囲の請求項2も同様に特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正がされているといえる。そこで、訂正後の特許請求の範囲の請求項2に係る発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。
訂正後の特許請求の範囲の請求項2に係る発明は、「上記キャップと上記先筒の間にも同期係合部が設けられている」という発明特定事項を有するものである。
しかし、キャップと先筒の間にも同期係合部を設ける点は、後述する請求人が提出した甲各号証のいずれにも記載されておらず、また、周知技術であるともいえない。
したがって、訂正後の特許請求の範囲の請求項2に係る発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、しかも、他に特許出願の際独立して特許を受けることができない理由も見当たらない。
よって、訂正後の特許請求の範囲の請求項2に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項(a)ないし(c)は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第3項、第4項、及び特許法第134条の2第5項で読み替えて準用する特許法第126条第5項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

3.本件発明
上記2.のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1、3に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明3」という。)は、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
(1)本件発明1
「容器の両端から棒状化粧材又は備品を繰り出す両軸繰出式の棒状化粧材繰出容器であって;
容器の中間に位置する円筒状の中間筒であって、その外周には、軸方向中央の大径部の両端に、容器のキャップの開口側端部と当接する段部が設けられている中間筒と、
中間筒の両端にそれぞれ回動自在に連結された、棒状化粧材等を繰り出す先端口を有する二本の先筒と、
各先筒を中間筒と相対回動することにより作動する繰出機構と、
先筒を覆い、かつ中間筒の両端に対して共通に着脱自在なキャップと、 を備え;
キャップ内面に設けられた周方向連続縦溝と、中間筒の軸方向前後部外面に設けられた縦リブとが、キャップの開口側端部が中間筒の前記段部に当接する状態において相互に係合することによる、キャップと中間筒との同期係合部が設けられ、
さらに、キャップの内面に設けられた周方向凹溝と、キャップの開口側端部が中間筒の前記段部に当接する状態において上記凹溝と係合する、中間筒前後部外面に設けられた突起との相互係合による、キャップ係止部が設けられていることを特徴とする、両軸繰出式棒状化粧材容器。」
(2)本件発明3
「上記先筒A、Bがそれぞれカートリッジとなって上記中間筒に対して着脱自在であることを特徴とする請求項1又は2記載の両軸繰出式棒状材容器。」

4.当事者の主張
(1)請求人の主張
請求人は、審判請求書において、訂正前の請求項1、3ないし6に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明と同一であるか、または甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号、または特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、無効とすべきものである旨主張している。また、請求人は、弁駁書において、訂正後の請求項1、3に係る発明(本件発明1、3)は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、無効とすべきものである旨主張している。
(証拠方法)
甲第1号証:実願昭56-194767号(実開昭58-104122号)のマイクロフィルム
甲第2号証:実願昭56-69124号(実開昭57-181205号)のマイクロフィルム
甲第3号証:実願昭56-149341号(実開昭58-54212号)のマイクロフィルム
甲第4号証:実公昭63-24810号公報
甲第5号証:特開平8-256833号公報
甲第6号証の1:米国特許第3758218号明細書
甲第6号証の2:甲第6号証の1の翻訳文
甲第7号証:実公平6-32006号公報
甲第8号証:実願昭63-146298号(実開平2-130510号)のマイクロフィルム
甲第9号証:登録実用新案第3030037号公報
甲第10号証:実願昭57-194232号(実開昭59-98817号)のマイクロフィルム

(2)被請求人の主張
一方、被請求人は、答弁書において、本件発明1、3は、甲第1号証に記載された発明と同一ではなく、また、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1、3についての特許は、審判請求人が主張する無効理由によって無効とされるべきものではない旨主張している。

5.甲第1号証に記載の発明
甲第1号証には、「ダブル機構棒状化粧料容器」に関し、第1図と共に次の事項が記載されている。
(ア)「a)内周に螺旋溝を設け、露出外周部はほぼ一様な外径を有する筒状の螺旋体;
b)該螺旋体の一端に相対回転可能に連結され、少くとも該連結部付近で螺旋体とほぼ等しい外径を有する第1の先筒;
c)前端に第1の化粧料を保持するための保持具を設け、後部に前記螺旋溝に係合する突起部分を設け、かつ前記第1の先筒内で摺動可能な第1の押し棒;
d)前記螺旋体の他端に相対回転可能に連結され、少くとも該連結部付近で螺旋体とほぼ等しい外径を有する第2の先筒;
e)前端に第2の化粧料を保持するための保持具を設け、後部に前記螺旋溝に係合する突起部分を設け、かつ前記第2の先筒内で摺動可能な第2の押し棒;ならびに
f)前記第1または第2の先筒に被着したとき先筒の長さを越えて前記螺旋体に達する長さを有し、螺旋体の外径に密嵌する内径を有する、少くとも第1または第2の先筒の一方に着脱自在に被着される回転操作用キヤツプ;
から成るダブル機構化粧料容器。」(明細書第1頁第5行?第2頁第6行)
(イ)「本考案は、左右両端から異なる2種類の化粧料を露出させることのできるダブル機構化粧料容器に関するもので、特に一端の化粧料を使用するときに他端の化粧料を被覆してその露出を防ぐと共に前記一端の化粧料の進退のための回転操作部となる回転操作用キヤツプを備えたダブル機構化粧料容器に関するものである。」(明細書第2頁第8?14行)
(ウ)「図面には、本考案の一実施例であるダブル機構繰出しペンシルを示してある。筒状の螺旋体1が、内周に沿つて螺旋溝を有している。螺旋体1は、円筒形または多角形状のいずれでも良いが、その露出外周部は全長にわたりほぼ一様な外径を有するものとする。螺旋体1の左端に先筒2が取付けられている。先筒2は、螺旋体1に対して相対的に回転し得るようになつている。先筒2の外径は、少くともその螺旋体1との連結部A付近において、螺旋体1とほぼ等しい外径を有するものとする。先筒2は、円筒形または多角形状の筒体であり、また図面に示すように先端を細くしたテーパーをつけても良い。押し棒3の先端にあるチヤツク部分4が、先筒2の内部で摺動する。チヤツク部分4には、例えば口紅などの棒状化粧料が保持される。」(明細書第3頁第3?18行)
(エ)「押し棒3の後部には突起部分5が設けてあり、これが螺旋体1の内周の螺旋溝に係合する。押し棒3は、先筒2に対して相対的に回転しないようになつている。先筒2と螺旋体1との間に相対的回転を与えることにより、押し棒3が前進して、チヤツク部4に保持された化粧料が先筒2の先端開口部から露出する。そこで、露出した化粧料により化粧を施すことができる。化粧を終えた後には、螺旋体1を逆方向に回転させれば、化粧料が後退して先筒2の内部に収納される。
図面の右半分に描いた機構は、左半分に描いた前述の機構と同様である。すなわち、先筒6が、螺旋体1の右端に相対回転可能に取付られて、その内部に摺動可能な押し棒7のチヤツク部分8を収容している。先筒6の外径も、先筒2と同様に、少くともその螺旋体1との連結部B付近において螺旋体1とほぼ等しい外径とする。チヤツク部分8には、例えばリムーバーなどの棒状化粧料が保持されて、チヤツク部分8とともに先筒6の内部で前進後退する。押し棒7の後部には、螺旋体1の螺旋溝に係合する突起部分9が設けてある。先筒6に対して螺旋体1を回転させることにより、チヤツク部分8に保持された化粧料が進退して、化粧に使用可能となりまた化粧後に先筒6内に収納することができる。
符号10で示されているのは、回転操作用キヤツプである。このキヤツプ10は、先筒2または6に被着したとき、それぞれの先筒の長さを越えて延びる長さを有し、螺旋体1の外径に密嵌する内径を有している。図面においては先筒8を完全に覆い螺旋体1の中央部まで延びてそこに密嵌している。」(明細書第4頁第4行?第5頁第17行)
(オ)「また、螺旋体1と操作用キヤツプ10が密嵌していることから、一方の手に先筒2を持ち、他方の手でキヤツプ10を持つて相対的に回転させることにより押し棒3を進退させることができ、非常に使い易い。左側の化粧料を収納させた後、右側の化粧料を使用する際には、キヤツプ10を引き抜いて左側に被せれば良い。キヤツプ10の内側には、金属性の板バネなどの弾性体を取付けて、螺旋体1との嵌合をより強いものにしてもよい。キヤツプ10の断面形状は、螺旋体1および先筒2,8の形状に合わせて円または多角形状のいずれでも良い。
なお、回転操作用キヤツプ10は、以上のように1個を両端にさし替えて使用してもよいが、はじめから各端部に1個ずつ嵌挿しておいても良い。
本考案で使用する化粧料は、任意の種類、太さ、色調のもので良く、また左右の化粧料の組合せも任意に選択することが可能である。例えば、アイブロウとアイシヤドウ,アイシヤドウとアイライナー,アイブロウとリツプカラー,および任意の化粧料とそのリムーバーなど、種々の組合せが考えられる。」(明細書第6頁第4行?第7頁第7行)
(カ)第1図には、螺旋体1が容器の中間に位置し、螺旋体1の外周には、軸方向中央に大径部が設けられ、螺旋体1の大径部の軸方向前後部の外面にキヤツプ10内面が密嵌されていることが図示されている。

上記記載事項及び図示事項を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「容器の両端から棒状化粧料を露出させるダブル機構化粧料容器であって;
容器の中間に位置する円筒形の螺旋体1であって、その外周には、軸方向中央に大径部が設けられている螺旋体1と、
螺旋体1の両端にそれぞれ相対回転可能に連結された、棒状化粧料を露出させる先端開口部を有する第1、第2の先筒2,6と、
各先筒2,6と螺旋体1との間に相対的回転を与えることにより、押し棒3,7が前進して、チヤツク部分4,8に保持された棒状化粧料を露出させる機構と、
先筒2,6を覆い、かつ螺旋体1の両端にさし替えて使用するキヤツプ10と、を備え;
キヤツプ10内面と螺旋体1の軸方向前後部の外面を密嵌することにより、キヤツプ10と先筒2,6を相対的に回転させると押し棒3,7を進退させることができるダブル機構化粧料容器。」

6.対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と甲1発明を対比すると、後者の「棒状化粧料」はその機能・構造からみて前者の「棒状化粧材又は備品」に相当し、以下同様に後者の「露出させる」は「繰り出す」に、「ダブル機構化粧料容器」は「両軸繰出式の棒状化粧材繰出容器」に、「円筒形」は「円筒状」に「螺旋体1」は「中間筒」に、「相対回転可能」は「回動自在」に、「先端開口部」は「先端口」に、「第1、第2の先筒2,6」は「二本の先筒」に、「各先筒2,6と螺旋体1との間に相対的回転を与える」は「各先筒を中間筒と相対回動する」に「押し棒3,7が前進して、チヤツク部分4,8に保持された棒状化粧料を露出させる機構」は「作動する繰出機構」に、「両端にさし替えて使用する」は「両端に対して共通に着脱自在な」に、それぞれ相当する。
また、後者の「その外周には、軸方向中央に大径部が設けられている螺旋体1」と前者の「その外周には、軸方向中央の大径部の両端に、容器のキャップの開口側端部と当接する段部が設けられている中間筒」とは「その外周には、軸方向中央に大径部が設けられている中間筒」である点で共通している。
また、後者の「キヤツプ10内面と螺旋体1の軸方向前後部の外面を密嵌することにより、キヤツプ10と先筒2,6を相対的に回転させると押し棒3,7を進退させることができる」ことから、キヤツプ10内面と螺旋体1の軸方向前後部の外面との密嵌により、螺旋体1がキヤツプ10と同期して回転し、その結果先筒2,6と螺旋体1との間に相対的回転が与えられていることが明らかであるから、前者の「キャップ内面に設けられた周方向連続縦溝と、中間筒の軸方向前後部外面に設けられた縦リブとが、キャップの開口側端部が中間筒の前記段部に当接する状態において相互に係合することによる、キャップと中間筒との同期係合部が設けられ」とは「キャップ内面と、中間筒の軸方向前後部外面とが係合することによる、キャップと中間筒との同期係合部が設けられ」ている点で共通しているといえる。
そうすると、両者は
「容器の両端から棒状化粧材又は備品を繰り出す両軸繰出式の棒状化粧材繰出容器であって;
容器の中間に位置する円筒状の中間筒であって、その外周には、軸方向中央に大径部が設けられている中間筒と、
中間筒の両端にそれぞれ回動自在に連結された、棒状化粧材等を繰り出す先端口を有する二本の先筒と、
各先筒を中間筒と相対回動することにより作動する繰出機構と、
先筒を覆い、かつ中間筒の両端に対して共通に着脱自在なキャップと、 を備え;
キャップ内面と、中間筒の軸方向前後部外面とが係合することによる、キャップと中間筒との同期係合部が設けられている両軸繰出式棒状化粧材容器。」の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)中間筒に関し、前者では、「その外周には、軸方向中央の大径部の両端に、容器のキャップの開口側端部と当接する段部が設けられて」いるのに対し、後者では、大径部にそのような段部が設けられていない点。
(相違点2)同期係合部に関し、前者では、「キャップ内面に設けられた周方向連続縦溝と、中間筒の軸方向前後部外面に設けられた縦リブとが、キャップの開口側端部が中間筒の前記段部に当接する状態において相互に係合することによる、キャップと中間筒との同期係合部」であるのに対し、後者の同期係合部はキャップ内面と中間筒の軸方向前後部外面との密嵌によるものである点。
(相違点3)前者では、「さらに、キャップの内面に設けられた周方向凹溝と、キャップの開口側端部が中間筒の前記段部に当接する状態において上記凹溝と係合する、中間筒前後部外面に設けられた突起との相互係合による、キャップ係止部が設けられている」のに対し、後者ではそのようなキャップ係止部が設けられていない点。

そこで、相違点1について検討する。
キャップが嵌合する部分に、キャップの開口側端部と当接する段部を設けることは甲第3、4、5、10号証にも記載されているように周知技術であり、甲第1号証の上記図示事項(カ)を参酌すると、甲1発明のキャップが嵌合する部分は中間筒(螺旋体1)の大径部であるから、前記周知技術を甲1発明の中間筒の大径部に適用して上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。

次に、相違点2について検討する。
甲1発明における同期係合部は、キャップ内面と中間筒の軸方向前後部外面とを密嵌させてキャップと中間筒との間の回り止めを図ることによるものであるが、キャップとキャップが嵌合する部分の回り止めを図るために、周方向連続縦溝と縦リブを設けることは、甲第2、3号証にも記載されているように周知技術であり、これを甲1発明の同期係合部の構成として採用することは当業者であれば容易に想到し得ることである。
また、上記相違点1で検討した、キャップの開口側端部と当接する段部は、キャップの嵌り過ぎの防止やキャップの位置決め等を行うためのものであることが技術常識であり、上記周知技術の周方向連続縦溝と縦リブもキャップを容器に嵌合した状態で相互に係合するものであるから、キャップを容器に嵌合した際に、キャップの開口側端部と中間筒の段部が当接する状態にするとともに、周方向連続縦溝と縦リブも相互に係合するようにすることは当業者であれば適宜なし得る設計的事項にすぎない。

次に、相違点3について検討する。
キャップの内面に周方向凹溝を設け、容器のキャップが嵌合する部分に突起を設けることは、甲第4、5号証にも記載されているように周知技術であり、これを甲1発明のキャップ内面とキャップが嵌合する部分である中間筒の軸方向前後部外面に適用してキャップ係止部を設けるようにすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。
また、上記相違点1で検討した、キャップの開口側端部と当接する段部は、キャップの嵌り過ぎの防止やキャップの位置決め等を行うためのものであることが技術常識であり、上記周知技術の周方向凹溝と突起もキャップを容器に嵌合した状態で相互に係合するものであるから、キャップを容器に嵌合した際に、キャップの開口側端部と中間筒の段部が当接する状態にするとともに、周方向凹溝と突起も相互に係合するようにすることは当業者であれば適宜なし得る設計的事項にすぎない。

また、上記相違点1ないし3によって本件発明1が奏する作用、効果も、甲1発明及び周知技術から予測される範囲内のものであって、格別なものとは認められない。

(2)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1を引用する発明であるから、本件発明3と甲1発明とを対比すると、両者は上記一致点で一致し、上記相違点1ないし3に加えて、次の相違点4で相違する。

(相違点4)前者は、先筒A、Bがそれぞれカートリッジとなって上記中間筒に対して着脱自在であるのに対し、後者はそのような構成となっていない点。

そこで上記相違点について検討する。
相違点1ないし3については上記「6.(1)」で検討したとおりである。
次に、相違点4について検討する。
棒状化粧材繰出容器において、先筒をカートリッジとして中間筒に対して着脱自在とすることは甲第8,9号証にも記載されているように周知技術であり、これを甲1発明に適用して上記相違点4に係る本件発明3の発明特定事項とすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。

また、上記相違点1ないし4によって本件発明3が奏する作用、効果も、甲1発明及び周知技術から予測される範囲内のものであって、格別なものとは認められない。

7.むすび
以上のとおり、本件発明1、3は、甲1発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、3についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
両軸繰出式棒状化粧材容器
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の両端から棒状化粧材又は備品を繰り出す両軸繰出式の棒状化粧材繰出容器であって;
容器の中間に位置する円筒状の中間筒であって、その外周には、軸方向中央の大径部の両端に、容器のキャップの開口側端部と当接する段部が設けられている中間筒と、
中間筒の両端にそれぞれ回動自在に連結された、棒状化粧材等を繰り出す先端口を有する二本の先筒と、
各先筒を中間筒と相対回動することにより作動する繰出機構と、
先筒を覆い、かつ中間筒の両端に対して共通に着脱自在なキャップと、を備え;
キャップ内面に設けられた周方向連続縦溝と、中間筒の軸方向前後部外面に設けられた縦リブとが、キャップの開口側端部が中間筒の前記段部に当接する状態において相互に係合することによる、キャップと中間筒との同期係合部が設けられ、
さらに、キャップの内面に設けられた周方向凹溝と、キャップの開口側端部が中間筒の前記段部に当接する状態において上記凹溝と係合する、中間筒前後部外面に設けられた突起との相互係合による、キャップ係止部が設けられていることを特徴とする、
両軸繰出式棒状化粧材容器。
【請求項2】
さらに、上記キャップと上記先筒の間にも同期係合部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の両軸繰出式棒状化粧材容器。
【請求項3】
上記先筒A、Bがそれぞれカートリッジとなって上記中間筒に対して着脱自在であることを特徴とする請求項1又は2記載の両軸繰出式棒状材容器。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、棒状化粧材(アイライナーやアイブロウ、アイシャドウ、口紅等)を容器の両端から繰り出し・引き込みできる容器に関する。特には、キャップを持って繰り出し操作を行うことができ、操作性に優れる両軸繰出式棒状化粧材容器に関する。なお、本発明は化粧材を主に念頭においたものではあるが、その他の棒状材(糊、鉛筆等)の繰出容器にも適用できる。
【0002】
【従来の技術】
図5は、実公昭63-29454号に開示された棒状化粧材繰出容器の断面図である。この棒状化粧材繰出容器の詳しい説明は省略するが、同容器を構成する部品は、キャップを除いても、第1芯筒906、第1摺動体909(チャック910一体)、中具927、コイル体913、軸筒926、軸杆924(チャック923一体)、ストッパー914、ワッシャー918、ネジ筒901、スプリング917、第2芯筒915の11点にも達する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
図5の棒状化粧材容器のように多数の部品を使用していたのでは、部品の製造コスト及び組み立てコストが増大し実現性が乏しくなる。
【0004】
また同容器は、上下いずれかのキャップを外して、軸筒926と芯筒906又は915とを相対的に回動させることにより棒状化粧材を繰り出すのであるが、このとき、軸筒926の替りに外していない方のキャップを持って回すと、キャップと軸筒926とが回ってしまって、棒状化粧材を繰り出すことができない。実際には、このような事態にならないように、軸筒926を長くしておいて、繰り出し時には自然と軸筒926を持つように仕向けている。しかし、両軸繰出の場合、片一方の化粧材を使用中には、他方のキャップを外すことはないので、外していない方のキャップをホルダーとして確実に繰り出しに使用できるようにすることが望ましい。
【0006】
本発明は、キャップを持って繰り出し操作を行うことができるため、操作性に優れる両軸繰出式棒状化粧材容器を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の棒状化粧材容器は、容器の両端から棒状化粧材又は備品を繰り出す両軸繰出式の棒状化粧材繰出容器であって;中間筒と、中間筒の両端にそれぞれ回動自在に連結された、棒状化粧材等を繰り出す先端口を有する二本の先筒と、各先筒を中間筒と相対回動することにより作動する繰出機構と、先筒を覆うキャップと、を備え;キャップ内面と中間筒の軸方向前後部外面に同期係合部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の両軸繰出式棒状材容器においては、さらに、上記キャップと上記先筒の間にも同期係合部が設けられていることが好ましい。これによって、中間筒と先筒との間の回動をも拘束して不意の棒状化粧材の突出を防ぐことができる。
【0009】
また、上記同期係合部が、互いに係合するローレット(周方向連続縦溝)と縦リブとで構成されていることが好ましい。これによって、先筒及び中間筒とキャップとを嵌着する際に位置合せを必要とせず、芯材(化粧材)がどの位置でもワンタッチでキャップの着脱が行われる。なお、このローレットと縦リブの関係は、中間筒又は先筒側をローレットとしてキャップ側を縦リブとしてもその逆であってもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ具体的に説明する。
図1は、本発明の1実施例に係る両軸繰出式棒状化粧材容器を示す側面断面図である。
図2は、図1の棒状化粧材容器のキャップ同期係合部の詳細を示す図である。(A)は先筒及び中間筒の側面図、(B)はキャップの側面断面図である。
この容器は、図の上から下に向かって、キャップA11、先筒A15、チャックA17、押棒A19(チャックAと一体物)、Oリング20、22、中間筒21、先筒B23、押棒B24、チャックB25(押棒Bと一体物)及びキャップB29から構成されている。
【0011】
上下のキャップ11、29は同じ形をしており、上下取り替えて装着することができる。あるいは、キャップが1個だけで、使用しない方の先筒に装着しておいてもよい。キャップを共通化することにより、キャップの選択が不要になるとともに、金型費等の製造コストを低減できる。
【0012】
キャップ11、29は、有頂筒状をしており(頂部41、95)、装着状態において先筒15、23の先端口43、93及び側面を覆っている。キャップ11、29の根元部は、中間筒21外面に嵌合している。キャップ11、29の根元部内面には、同期係合縦溝51、78が形成されている。同溝の手前側には、嵌合凹凸57(図2における環状凸部57a及び環状凹部57b)、71が形成されている。この縦溝51は、図2に示すように、周方向に連続的に多数形成されている。縦溝51、78は、先筒15、23外面の縦リブ53、79及び、中間筒外面前後端部の縦リブ55、75と係合して、前のキャップ11と先筒15及び中間筒21、後のキャップ29と先筒23及び中間筒21とを回り止めする。なお、各縦溝が連続的に多数形成されているため、また各縦リブの先が尖っているため、特にキャップを位置合わせしなくても、縦溝と縦リブとを合わせる(係合させる)ことができる。
【0013】
このように、中間筒及び先筒の両者にキャップとの同期係合が設けられているため、キャップの装着状態において、中間筒と先筒とがキャップを介して同期係合するので、不意に両者が相対的に回るようなことがなく、化粧材が不意に繰り出されるようなことがない。なお、このような特性は、両軸繰出式の容器に限らず、片端繰出式の容器においても有用な特性である。
【0014】
図2に示されているように、キャップ11の基部内面の環状凹部57bは、中間筒前後外面の環状凸部57aと嵌合して、キャップ11を中間筒21に係止する。
【0015】
先筒15、23は、チャック17、25の摺動する内孔45、91及び棒状化粧材13、27の繰り出し・引き込みされる先端口43、93を有する。先筒の内孔45、91には、チャック17、25(及び押棒19、24)との同期係合縦溝46、89が切られている。したがって、チャック17、25及び棒状化粧材13、27は、先筒15、23内をまっすぐ進退する。
【0016】
先筒15、23の根元部外面には前述の同期係合縦リブ53、79が形成されている。先筒15、23の根元部58、69は、中間筒21の端部外面に嵌合されて保持されている。同根元部58、69の内面と、中間筒21の端部外面には、環状嵌合凹凸56、73が形成されており、先筒15、23と中間筒21とを回動自在に連結している。
【0017】
チャック17、25は、押棒19、24と一体に成形されたものである。チャック17、25は、その凹部47、87で棒状化粧材13、27の尾部を保持する。チャック17、25の外面には突起48、81が突設されている。この突起48、81は、先筒15、23内孔45、91の同期係合縦溝46、89と同期係合する。
【0018】
押棒は、前後2本(押棒A19、押棒B24)に分割されており、前後の棒状化粧材を別々に繰り出すことができる。また、押棒19、24の基部には、中間筒21のラセン溝62、74と螺合するオネジ状突起64、68が形成されている。
【0019】
中間筒21は、中段部が太く、両端部が細い円筒状のものである。中間筒21の端部外周には環状嵌合凹凸56、73が形成されており、上述のように両先筒の根元部58、69が嵌合されている。中間筒21の中央部外面には、上述の同期係合縦リブ55、75及び嵌合凹凸57、71が形成されており、キャップ11、29が回動不能に係止される。中間筒21の中段部67は、キャップ11、29の外径と同径であり、容器の外面に表われている。中間筒21内径にストローク分の長いラセン溝62、74が形成されている。これらのラセン溝62、74には、押棒19、24の突起64、68が螺合する。
【0020】
Oリング20、22は、中間筒両端部外面の溝に装着されており、先筒15、23と中間筒21との間の摺動に一定の抵抗を与える。この摺動抵抗により、容器の繰り出し・引き込み時にガタつかず、容器の高級感を増す。なお、Oリング20、22の摺動抵抗に打ち勝って繰り出すために、キャップ11、29と中間筒21間に同期係合部が設けられているとも言える。このOリングは特に無くてもよいが、繰り出し速度を速くしたいためメネジのピッチを大きくした場合、芯先からの圧力によって芯チャックが後方に下がってしまう(CUP DOWN)場合は必須な部材となる。
【0021】
図1の容器の操作について説明する。
まず、どちらかのキャップ11又は29を外し(以後の話は、キャップA11を外して棒状化粧材A13を繰り出す場合を考える)、先筒15の外面を指でつまんで、外さなかった方のキャップB29を同じく指でつまんで回す。すると、キャップB29と中間筒21とは同期係合しているので中間筒21と先筒A15とが相対的に回動する。そして、押棒19は先筒A15と同期係合し、中間筒21と螺合しているので、ネジ機構により繰り出される。後側の棒状化粧材27Bを繰り出す場合は、上述の逆である。なお、容器1にキャップ11、29のうちのいずれか一方のみを設けておき、繰り出したい方の反対側に1個のキャップを付け替えながら使用することもできる。
なお、図1の棒状材容器においては、押棒のストローク限は、チャック17、25が先筒15、23内孔の段部44、94に当接することにより定まる。
【0022】
図3は、本発明の他の1実施例に係るカートリッジ式両軸繰出式棒状材容器を示す側面断面図である。
同図において、図1の符号に100を足した符号は、以下に特記するものを除いて同様の部品・部位を示す。
この容器101の容器本体105は1本の中間筒からなる。この容器本体105内に両側からカートリッジ103及び103′が挿入されて保持される。
【0023】
カートリッジ103は、先筒115、チャック117付き押棒119、及び、螺合筒118からなる。先筒115は、その内孔145の縦溝146にチャック117外面の突起148が係合して摺動するので、押棒119と同期係合する。螺合筒118は、先筒115と回動自在に連結されている。螺合筒118の先端部内周にはメネジ状突起150が設けられており、このメネジ状突起150は押棒119外面のオネジ152と螺合している。螺合筒118の尾端部内面には同期係合溝164が形成されている。
【0024】
容器本体105の内部の中段部(奥)には同期係合片160が軸方向に突設されている。同期係合片160の周囲には、ローレット状の同期係合リブ162が形成されている。このリブ162は、螺合筒118の尾端部内面の同期係合溝164と係合して、容器本体105と螺合筒118とが同期係合する。この状態で、容器本体105あるいは後ろ側のキャップ111′と先筒115とを相対的に回すと、容器本体105と同期係合する螺合筒118と、先筒115と同期係合する押棒119とが相対的に回動して棒状化粧材113が繰り出される。
【0025】
図3の容器は、芯チャックの下方にオネジを配したことによりストローク分のメネジ筒を使用することがないため、細径のカートリッジとなる。
また、キャップは両方に配され、中間筒及び先筒両方にキャップとの同期係合部を有する。また、本実施例においては、二つのラセン溝と二つの押棒による繰出機構であるが、一つのラセン溝と一つの押棒による両軸繰出機構もある。その場合には、先筒と中間筒の両方に同期係合部があった場合には繰出不能になる。これは後述する。
【0026】
図4は、一本の押棒303の両端に化粧材を保持する芯チャック317、317′を有し、中間筒305のメネジ333と押棒303外面の一群の突起322をオネジに見立てた螺合作用と、該一群の突起322を軸方向に用い、先筒301、301′との回転止に使用した、両軸繰出式棒状化粧材容器である。
本実施例では、アイブローやアイライナー、リップライナー等細径の化粧材の容器に用いられ、簡単な構造と、短軸で細い外径でできるので、今までと違った複雑な部品構成でないため、全ての面で優れている繰出機構である。
【0027】
先筒A301と中間筒305を回動することによって上記の繰出理論によって、化粧材は真直に繰り出される。その際、先筒A301が回動すると先筒B301’も回動するため、先筒Aと先筒Bを回動操作した場合は繰出不能となる。一本の押棒303の両端に芯チャック317、317’を配した両軸繰出式化粧材容器の大きな欠点は引込操作をする時に後方の化粧材を後に突出してしまうことである。一本の押棒303の1/2の所にメネジ部331があり、先筒A301側の繰り出しには、押棒303の後方半分が使用され、先筒B301’側の繰り出しには押棒303の前方半分が使用されるため、引込操作において引込み過ぎると後方より化粧材が突出してしまうのである。この欠点を補うために1個のキャップ309を設けたのが図4である。やや長めのキャップ309を設けて多少後方よりの突出があっても手を汚さないようになっている。
【0028】
キャップ309内の内側端面付近には中間筒305との嵌合、係着に用いる凹環状部342と中間筒305と同期に回動する同期係合部344が設けられていて、先筒を回動する時は、中間筒305とキャップ309は同期の回転をするようになっている。図4の場合は先筒とキャップの同期係合部を付けると繰り出し不能になってしまう。キャップを設けることにより先筒同士を持って誤操作することを防いでいる。
【0029】
図4の両軸繰出式棒状材容器についてさらに詳しく説明する。
図4の両軸繰出式棒状材容器300は、図の上から下に向かって、先筒A301、押棒303(チャックA317及びチャックB317′一体物)、中間筒305、先筒B301′及びキャップ309の5部品で構成されている。
【0030】
先筒A301は、内孔311を有するパイプ状の部品である。上半分が肉厚のつまみ部320となっており、下半分が中間筒305への挿入部327となっている。内孔311内は、チャックA317が軸方向に摺動する。内孔311内には、軸方向に延びる同期係合溝313が切られており、この溝313内を、押棒303外面に突設されている一群の突起322が軸方向に摺動し、先筒A301と押棒303とが同期係合(一般的には回動不能・軸方向摺動自在)する。なお、内孔311は、図示されてはいないが先端に近づくに従い細くなる。また、同期係合溝313は、先端口の手前で途切れている。したがって、チャックA317は、先端口の手前でそれ以上前進できなくなる。
【0031】
先筒301の挿入部327は、上述のように、中間筒305の連結部326の内孔内に挿入される。両者の挿入部(連結部)には、環状の凹凸325が形成されており、両筒301と305を回動自在に連結する。なお、中間筒305の先端と先筒A301の段部323との間は軽く接触するかわずかに隙間が開く程度である。図の下部に示されている先筒B301′は、先筒A301と対称で同一形状・寸法である。図中、同じ数字にダッシュのついた符号で示す部品・部分は同じものである。
【0032】
中間筒305は、全体として同径のパイプ状のものである。上下方向の中段部は、肉厚のメネジ部331となっており、メネジ333が形成されている。このメネジ333は、押棒303の一群の突起322と螺合する。
【0033】
押棒303の外周には、軸方向に4列に、一定ピッチで多数の小判型突起322が突設されている。これらの突起322は、図の中段部においては、中間筒305内面のメネジ333と螺合している。そして、同部以外においては、先筒301、301′内孔の同期係合縦溝313に係合している(入り込んでいる)。つまり、同じ一群の突起322が、メネジ333と螺合するオネジの役割と、同期係合縦溝313と係合する縦リブの役割の双方を果しているのである。このような一群の突起322は、押棒303をプラスチック射出成形で作る場合、金型の加工が楽である。また、粗いピッチのネジの場合もアンダーカットとならず割り型で成形できる。
【0034】
以上、何種類かの実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に見られる機構・構造に限定されるものではなく、棒状化粧材の種類・径に関係なく、例えば細径のアイブローやアイライナー、大径の口紅や固形白粉、形式(カートリッジ型、非カートリッジ型)、繰り出しリードの細いもの粗いもの、繰り出しの重いもの(Oリング装着品)から軽いものまで限定なく適用できる。
【0035】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば以下の効果を発揮する。
▲1▼両軸繰出式棒状化粧材の場合、片一方の化粧材を使用している時は他方は使用しないため、使用していない方にはキャップがある。中間筒前後部とキャップ内面に同期係合部を設けることによって中間筒とキャップとを確実に同期の回転をさせ、繰出機構の如何に係らずキャップを持った状態での繰り出し操作を行うことができる。
▲2▼また、中間筒前後部外面とキャップ内面に同期係合部を設けたことによって、先筒先端口とほぼ同寸の化粧材や、細径のアイブロー、アイライナー等の化粧材及びこれらを斜めにカットした化粧材等さまざまな形態の化粧材を用いることができる。
【0036】
▲3▼中間筒前後部外面に加えて先筒にもキャップとの同期係合部を設けることによって、キャップ嵌着時には、振動や落下によって先筒が回動して芯が突出することがなくなる。この利点は、特にピッチが粗い繰出容器において特に顕著である。また、従来の口紅容器のような化粧材保持皿のロックを考えなくてもよい。なお、この発明の態様は、片端繰出化粧材繰出容器にも有効である。
▲4▼キャップと中間筒及び先筒との同期係合方法をローレットと縦リブとすることで、どの位置においてもワンタッチで着脱が可能となる。
▲5▼図4の実施例においては、先筒同士が回転する構造のため、キャップをすることにより(キャップ内で使用していない先筒が支障なく回転するため)、操作を単純にしている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例に係る両軸繰出式棒状材容器を示す側面断面図である。
【図2】図1の棒状材容器のキャップ同期係合部の詳細を示す図である。(A)は先筒及び中間筒の側面図、(B)はキャップの側面断面図である。
【図3】本発明の他の1実施例に係るカートリッジタイプの両軸繰出式棒状材容器を示す側面断面図である。
【図4】本発明の他の1実施例に係る両軸繰出式棒状材容器を示す側面断面図である。
【図5】実公昭63-29454号公報に開示されている両軸繰出式棒状材容器の側面断面図である。
【符号の説明】
1 棒状化粧材容器 11 キャップA
13 棒状化粧材A 15 先筒A
17 チャックA 19 押棒A
20、22 Oリング 21 中間筒
23 先筒B 24 押棒B
25 チャックB 27 棒状化粧材B
29 キャップB 41、95 頂部
43、93 先端口 44、94 段部
45、91 内孔 46、89 同期係合縦溝
47、87 凹部 48、81 突起
51、78 同期係合縦溝
53、55、75、79 同期係合縦リブ
56、73 環状嵌合凹凸 57、71 嵌合凹凸
58、69 根元部 60、76 段部
62、74 ラセン溝 64、68 オネジ状突起
67 中段部
118 螺合筒 119 押棒
150 メネジ状突起 152 オネジ
160 同期係合片 162 同期係合リブ
164 同期係合溝
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2007-03-19 
結審通知日 2007-03-19 
審決日 2007-03-20 
出願番号 特願平9-134494
審決分類 P 1 123・ 856- ZA (A45D)
P 1 123・ 121- ZA (A45D)
P 1 123・ 851- ZA (A45D)
P 1 123・ 853- ZA (A45D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩田 洋一  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 芦原 康裕
川本 真裕
登録日 2005-08-12 
登録番号 特許第3708289号(P3708289)
発明の名称 両軸繰出式棒状化粧材容器  
代理人 尾関 孝彰  
代理人 鈴木 秀雄  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 黒木 義樹  
代理人 城戸 博兒  
代理人 櫻井 義宏  
代理人 鈴木 秀雄  

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