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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16J
管理番号 1158041
審判番号 不服2003-20123  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-09 
確定日 2007-06-07 
事件の表示 平成10年特許願第 84853号「シール装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月 7日出願公開、特開平11-241768〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願説明
本願は、平成10年2月25日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成13年12月5日付の手続補正書並びに平成14年10月30日付の手続補正書により補正された明細書及び図面によれば、その特許請求の範囲の請求項1に次の通り記載されている。
「リング同志がずれない、かさなり合う複数のリングからなるものとしている。これらは、次ぎの(A)?(B)の構造をもつリングによる、シール装置。
(A) シール面(2)を有し。(B)のリングに対しシール面(2)からその対面までの長さが短く、リング同志の合い口(1)がかさならない。そして、(B)のリングの合い口(1)ともつながらないように(B)のリングとのかさなり合う面からその対面まで穴(3)、シール面(2)に溝(4)及びリングをシール面(2)の反対側に歪ませたとしたもの(5)があるリング。
(B) シール面(2)を有するリング。
(C) シール面(2)を有さず。(A)のリングのシール面(2)に対する面に接しており、(A)のリングに対しリング同志の合い口(1)がかさならないリング。」

2.引用刊行物の記載
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に国内で頒布された特開平5-340474号公報(以下「引用刊行物1」という。)及び特開昭51-49355号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、概略以下の発明が記載されている。
(1)引用刊行物1
引用刊行物1には以下の事項が記載されている。
イ.「本発明は、漏れを最小限にしたシール装置に関する。」(第2頁第1 欄第19-20行、段落【0002】)
ロ.「この発明が解決しようとする課題は、負圧のかからないリングにも負 圧をかけシール効果を高めようとすることである。」(第2頁第1欄第 33-35行、段落【0005】)
ハ.「第1図において、複数のリング(1)はリングAとリングBからなる ものとし、お互いの合い口(2)はずれ、リングAの突起(7)がリン グBの合い口(2)はめ入れるとしている。そして、リングAにはリン グBの合い口(2)にかからないように穴(3)があるとしている。」 (第2頁第2欄第9-14行、段落【0010】及び図1)
ニ.「第2図に示される実施例では、リングAのシール面に溝(4)があり 、その溝(4)とシール面(5)との角はまるめてあるとしている。」 (第2頁第2欄第15-17行、段落【0011】及び図2)
ホ.「第9図に示される実施例では、リングAに穴(3)があり、リングB との重なり合う面に対する面とシール面(5)との角、及びその面と接 するリングを装着する溝(4)の角にへこみ(6)があるとしている。 」(第2頁第2欄第36-40行、段落【0018】及び図9)

してみると、引用刊行物1には、概略次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「リングAの突起がリングBの合い口はめ入れるとしている、かさなり合う複数のリングは、リングAとリングBからなる、シール装置。
リングA シール面を有し。そして、リングBの合い口ともつながらないようにリングBのかさなり合う面からその対面まで穴、シール面に溝があるリング。
リングB シール面を有するリング。」

(2)引用刊行物2
引用刊行物2には、以下の事項が記載されている。
ヘ.「第1図?第2図において、1?3は、その端面間に所定の間隔Gを保 持し、かつ自張力を有するように構成されたピストンリングで、外側ピ ストンリング1の内周には中央ピストンリング2が、また中央ピストン リング2の内周には内側ピストンリング3が、それぞれの自張力を持つ て、密接している。・・・・・・上記各ピストンリング1,2,3の肉 厚は、第1図(A)に示すごとく、それぞれが同一であつても、また第 2図に示すごとく、それぞれ異つてもよく、ピストンリング1,2,3 の肉厚は、実際的場合の必要に応じて適宜設定される。しかして、この 場合、軸方向及び軸直角方向において相接するピストンリングの合口隙 間(端面間々隙)相互にづらして、互に接続しないように、各ピストン リングは密接している。」(第1頁右下欄第11-第2頁左上欄第11 行、第1図、第2図)
ト.「ピストンリングの切口隙間を通る高圧洩れは複数個のピストンリング が相互にリングの切口の位置をずらして取付けられているので各段通過 ごとに洩れは急激に減少し、最下段での洩れは皆無になる。」(第2頁 右上欄第9-13行)

3.対比
本願明細書の特許請求の範囲の請求項1には、「・・・次の(A)?(B)の構造をもつリングによる、シール装置。」と記載されている。しかしながら、該請求項1にはリング(A)、(B)とは異なる構成を有するリング(C)に係る事項が記載されていることを参酌すれば、上記記載の「(A)?(B)」は「(A)?(C)」の誤記と解せられる。
また、同じく特許請求の範囲の請求項1には「(B)のリングとのかさなり合う面からその対面まで穴(3)、シール面(2)に溝(4)及びリングをシール面(2)の反対側に歪ませたとしたもの(5)」と記載されている。しかしながら、請求項1に記載された発明の実施例について記載している段落【0006】ないし段落【0008】及び図1ないし図3には、穴、溝、リングをシール面の反対側に歪ませたものの全てを有していないものも例示されている(例えば図2は溝のみを有しており、穴あるいはリングをシール面の反対側に歪ませたものは有していないものと認められる。)。また、平成14年10月30日付け意見書にて出願人は「もし併用できる「及び」ではなく、選択的である「又は」という言葉を使うと、・・・・・・明細書には「及び」と併用できることを明記しているので問題はないと考えています。」と主張している点を鑑みれば、上記記載は、穴(3)、溝(4)、リングをシール面の反対側に歪ませたもの(5)を全て併用したものの他、穴(3)を有するもの、溝(4)を有するもの、穴(3)と溝(4)を併用するもの等、様々な組み合わせを包含したものと解される。
そこで、まず、穴(3)を有するもの、すなわち、次の発明(以下、「本願発明」という。)について検討する。
「リング同志がずれない、かさなり合う複数のリングからなるものとしている。これらは、次ぎの(A)?(C)の構造をもつリングによる、シール装置。
(A) シール面(2)を有し。(B)のリングに対しシール面(2)からその対面までの長さが短く、リング同志の合い口(1)がかさならない。そして、(B)のリングの合い口(1)ともつながらないように(B)のリングとのかさなり合う面からその対面まで穴(3)があるリング。
(B) シール面(2)を有するリング。
(C) シール面(2)を有さず。(A)のリングのシール面(2)に対する面に接しており、(A)のリングに対しリング同志の合い口(1)がかさならないリング。」

本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「穴」は本願発明の「穴」に相当する。そして、引用発明の「リングA」は、穴を有するものであることから、本願発明の「(A)のリング」に相当するものであると認められる。また、引用発明の「リングB」は、本願発明の「(B)のリング」に相当する。
そうすると、両者は、本願発明の用語に倣うと、
「リング同志がずれない、かさなり合う複数のリングからなるものとしている。これらは、次ぎの(A)?(B)の構造をもつリングによる、シール装置。
(A) シール面を有し。(B)のリングに対し、リング同志の合い口(1)がかさならない。そして、(B)のリングの合い口(1)ともつながらないように(B)のリングとのかさなり合う面からその対面まで穴(3)があるリング。
(B) シール面(2)を有するリング。」

で一致し、次の2点で相違する。

相違点1: 本願発明は、「(C) シール面(2)を有さず。(A)のリングのシール面(2)に対する面に接しており、(A)のリングに対しリング同志の合い口(1)がかさならないリング。」を有しているのに対し、引用発明は当該(C)のリングに相当する構成を有していない点。
相違点2: 本願発明の(A)のリングは、「(B)のリングに対しシール面からその対面までの長さが短く」なっているのに対し、引用発明のリングAは、シール面からその対面までの長さについて、特段の特定がなされていない点。

4.当審の判断
上記の各相違点について、以下に検討する。
相違点1について
引用刊行物2には、シリンダ壁に密接する面を有する外周ピストンリング1のシリンダ壁と密接する面の対面に中央ピストンリング2を形成すること、そして、ピストンリングの合口隙間は相互にづらして互いに接続しないようにする技術的事項が記載されている。そして、引用刊行物2に記載されたピストンリングは、高圧洩れを防ぐための装置、すなわちシール装置という点で本願発明及び引用発明と共通の技術分野に属するものであり、かつ、引用発明に対し、引用刊行物2に記載された上記事項を適用することに特段の技術的な困難性があるとも認められない。
したがって、引用発明のリングAのリングのシール面に対する面に対し、引用刊行物2に記載された上記事項を適用し、(C)のリングに相当する構成を加えること、すなわち、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到しうるものである。

相違点2について
引用刊行物2には、ピストンリング1,2,3の肉厚は異なっていてもよい点が記載されており、このうち第2図には、符号B’のピストンリングにおける外周ピストンリングよりも肉厚が薄い構造である符号A’のピストンリングにおける外周ピストンリングが記載されている。そして、相違点1と同様、引用発明に対し引用刊行物2に記載された当該事項を適用することに格別な困難性があるとは認められないことに鑑みれば、引用発明のリングAのシール面からその対面までの長さに関し、引用刊行物2に記載された符号A’のピストンリングにおける外周ピストンリングの肉厚に係る事項を適用し、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到しうるものである。
そして、本願発明の奏する効果が、引用発明及び引用刊行物2に記載された技術的事項の単なる総和以上に格別顕著なものであるとも認められない。
したがって、本願発明は、引用刊行物1及び引用刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり、上記本願発明が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-13 
結審通知日 2006-04-18 
審決日 2006-05-09 
出願番号 特願平10-84853
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 窪田 治彦  
特許庁審判長 船越 巧子
特許庁審判官 水野 治彦
町田 隆志
発明の名称 シール装置  

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