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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F03G
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F03G
管理番号 1158290
審判番号 不服2005-25465  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-21 
確定日 2007-06-15 
事件の表示 特願2005- 78069「発電機の発電稼働装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月31日出願公開、特開2006-226278〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯及び本願発明
本件出願は、平成17年2月18日の出願であって、平成17年6月28日付けの拒絶の理由の通知に対して、平成17年8月25日に手続補正書(平成17年9月2日付けである。)が提出されたが、平成17年11月18日付けで拒絶査定がなされ、平成17年12月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされた。そして、当審において平成18年8月21日付けで拒絶の理由の通知がなされ、補正することなく、平成18年9月28日に意見書(平成18年9月28日付けである。以下、「意見書」という。)が提出されたものである。
また、本件出願において、平成17年8月25日に提出された手続補正書(平成17年9月2日付け)により補正された特許請求の範囲、並びに出願当初の明細書及び図面の記載によれば、審判請求人(特許出願人)が特許を受けようとする請求項1?2に係る発明については、特許請求の範囲の請求項1?2にそれぞれ次のような事項が記載されている。

「【請求項1】
本発明は、シーソー(Seesaw)の上下運動の原理を利用してシーソーの台座部分をフレームワーク(Framework)に置き換え、その内部にコマを組込み、コマが自重により回転して移動するときにシーソー(フレーム)が上下降し、そのとき内部のコマが回転して移動するときに発生するエネルギー(Energie)を、コマの軸から外部に設置した発電機に伝動させて発電する、若しくはフレーム本体とコマ自体を発電機にして発電させる装置に関するものある。
すなわち、フレームの枠内をコマ自体が自重による重力(Gravity)によって下降しフレームの円弧を利して上昇するときに、コマが回転し発生するエネルギーをコマの軸に伝え、その軸(Shaft)の回転を外部に伝えて発電する、又は、コマ自体の回転を発電機として機能させることにより発電させるものである。さらに、この組み合わせによるダブル(Double)発電の考えもある。
コマの重力よる回転運動と、フレーム上のコマの移動による昇降運動の組み合わせにより発電が可能であるが、コマの回転運動のエネルギーが、摩擦によるエネルギーロスとフレームの昇降運動によるエネルギーロスを上回る限り、無害で連続的に発電させ続けることができる。コマの材質やフレームワークの形状によりエネルギーロスを最小限にし、初期設定にかかるエネルギーを押さえれば継続的な発電が可能である。また、コマ本体の規模(大、中、小型)及び自重(重、中、軽量)による回転速度の使い分けにより能力の異なる発電が可能である。
制御(Control)装置はコマがフレーム内を昇降運動を繰り返する過程で、上下降する際の回転数を制御するもので、バネ(Sprig)又は、ピストン(Piston)によりクッション(Cushion)の役目も果たすし、発電機の始動(ON)及び停止(OFF)の際にも利用される。
火力発電は現時点で最高の発電方法でありグローバル的に普及しているが、化石燃料を燃焼させて発電しているため大量のCo2を大気中に放出しており、地球規模での大気汚染、温暖化等々の問題を引き起こしている。また、原子力発電は常に放射漏れ、爆発等の危険性があるために住民は常に危険にさらされているが、他により良い発電方法がないのが現状でやむなく我慢に耐え忍んでいる。より良い発電方法があれば、即刻に廃止すへき発電方法である。
水力、風力、ソーラー発電等も普及は進みつつあるが、常に天候、気候、昼夜、地域等の影響を受ける発電方法であるために、安定的な電気の供給ができずグローバル的な規模での普及は望めない。
本発明は、重力を利用する発電装置であることから、Co2を放出せず、従って温暖化も促進しない、放射能漏れ爆発等の危険性もない、天候、気候、昼夜、地域等の制限や制約も受けず常に安定的に供給ができる。さらに最大の利点は重力を利用するため無代、無制限、万国で平等、無公害で負荷をかけず、全ての生物において安全、安心で優しくクリーンであるといえる。
この発電装置がグローバル的に普及したとき、今、稼働している発電方法は、如何に地球に負荷をかけており、コストがかかる欠陥的な発電方法であるかが判る。
【請求項2】
(図面2)について
シーソーの台座▲1▼にフレームワーク▲2▼を取付け、その内部にコマ▲3▼をセットする。コマの自重自体で回転運動が始まり、フレームワークの先端部の円弧を利してコマの昇降運動が加わり、コマがフレーム内を移動するときに生じる回転エネルギーをコマの軸▲4▼のシャフトに伝達して外部の発電機を稼働させて発電をする。又は、フレームワーク自体を発電機としてコマの回転により発電する。なお、外部と内部に発電機を装置して発電する方法も考えられる。▲5▼シーソーの支点を図示している。▲6▼コマの回転の様子を矢印(→)で図示している。▲7▼制御(Control)装置はコマがフレームワーク内を上下降する際の回転数をバネ(Sprig)又は、ピストン(Piston)により制御するもので、発電機の始動(ON)停止(OFF)にも利用可能である。▲8▼▲9▼シーソーの昇降運動の移動の様子を破線で図示。▲8▼はフレームワークが水平状態の位置を破線で図示。▲9▼はフレームワークがコマの回転力により推進して上昇していき最高点に到達した状態を破線で図示してある。フレームの反復運動にはコマの回転による推進力をフレームの上昇運動にスムースに伝える必要があり、このため、フレームの形状は楕円形が不可欠である。このフレームワークとコマの組合せにより回転エネルギーが摩擦等により減衰するまで持続し続ける様子を破線で図示した。コマの回転と移動の際の水平の位置を▲10▼、下降の位置▲11▼の様子を破線で図示した。コマによるシーソーの昇降運動をフレームワーク▲2▼を通して伝達するとともに、フレームワークの先端部を円弧にすることでコマ▲3▼の回転を上部への上昇運動に変換し、上昇して頂点に達した時点で下部へ下降する連続運動が生じ、その際、コマ自身の回転により発生するエネルギーによって発電機を稼働させて発電する方法である。」

第2.当審で通知した拒絶の理由
当審で通知した拒絶の理由は、次のとおりである。
『1.この出願は、明細書及び図面の記載が以下の(1)ないし(5)の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(1)特許請求の範囲の請求項1の「コマが自重により回転して移動するときにシーソー(フレーム)が上下降し、そのとき内部のコマが回転して移動する」、及び「フレームの枠内をコマ自体が自重による重力(Gravity)によって下降しフレームの円弧を利して上昇する」、並びに請求項2の「フレームワークの先端部の円弧を利してコマの昇降運動が加わり、コマがフレーム内を移動する」なる記載に関し、発明の詳細な説明において、コマがフレームの枠内にどのようにして拘束されて、回転して移動するのか具体的構成・構造が不明瞭であり、この発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が実施をできる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められない。

(2)特許請求の範囲の請求項1の「そのとき内部のコマが回転して移動するときに発生するエネルギー(Energie)を、コマの軸から外部に設置した発電機に伝動させて発電する」、及び「コマが回転し発生するエネルギーをコマの軸に伝え、その軸(Shaft)の回転を外部に伝えて発電する」、並びに請求項2の「コマがフレーム内を移動するときに生じる回転エネルギーをコマの軸▲4▼のシャフトに伝達して」なる記載に関し、発明の詳細な説明において、コマの軸から外部に設置した発電機に伝動する具体的手段が不明瞭である。すなわち、コマがフレームの枠内を回転して移動しており、かなりの移動範囲にわたって移動するコマの軸から、どのようにして外部に設置した発電機に回転を伝動するのか具体的実施手段が理解できない。よって、この発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が実施をできる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められない。

(3)特許請求の範囲の請求項1の「フレーム本体とコマ自体を発電機にして発電させる」、及び「コマ自体の回転を発電機として機能させることにより発電させる」、並びに請求項2の「又は、フレームワーク自体を発電機としてコマの回転により発電する」なる記載に関し、発明の詳細な説明において、具体的構成・構造が不明瞭であり、この発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が実施をできる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められない。

(4)特許請求の範囲の請求項1の「制御(Control)装置は」「発電機の始動(ON)及び停止(OFF)の際にも利用される。」、請求項2の「▲7▼制御(Control)装置は」「発電機の始動(ON)停止(OFF)にも利用可能である。」なる記載に関し、発明の詳細な説明において、具体的構成・構造が不明瞭であり、この発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が実施をできる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められない。

(5)特許請求の範囲の請求項1の「コマの材質やフレームワークの形状によりエネルギーロスを最小限にし、初期設定にかかるエネルギーを押さえれば継続的な発電が可能である。」、段落0001の「フレームワークが上下降する反復運動をくり返すことにより半永久的にコマが回転し続け、そのエネルギーを使用して連続的に発電機を稼働させ続けることができるものである。」なる記載において、コマが重力による位置エネルギーで回転して移動する際のエネルギーロス、コマの軸から外部に設置した発電機に伝動する際のエネルギーロス、発電時のエネルギーロスをどのようにして最小限にし、半永久的に発電機を稼働させ続けることができるのか、エネルギーロスを最小限とする具体的構成・構造が不明瞭であり、この発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が実施をできる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められない。

2.この出願は、特許請求の範囲の記載が以下の(1)ないし(3)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項1の「その軸(Shaft)の回転を外部に伝えて発電する、又は、コマ自体の回転を発電機として機能させることにより発電させるものである。さらに、この組み合わせによるダブル(Double)発電の考えもある。」、「制御(Control)装置はコマがフレーム内を昇降運動を繰り返する過程で、上下降する際の回転数を制御するもので、バネ(Sprig)又は、ピストン(Piston)によりクッション(Cushion)の役目も果たすし、発電機の始動(ON)及び停止(OFF)の際にも利用される。」なる記載では、どこまでが請求項1の発明を特定するための事項か不明瞭である。

(2)請求項1の「火力発電は現時点で最高の発電方法でありグローバル的に普及しているが、化石燃料を燃焼させて発電しているため大量のCo2を大気中に放出しており、地球規模での大気汚染、温暖化等々の問題を引き起こしている。また、原子力発電は常に放射漏れ、爆発等の危険性があるために住民は常に危険にさらされているが、他により良い発電方法がないのが現状でやむなく我慢に耐え忍んでいる。より良い発電方法があれば、即刻に廃止すへき発電方法である。水力、風力、ソーラー発電等も普及は進みつつあるが、常に天候、気候、昼夜、地域等の影響を受ける発電方法であるために、安定的な電気の供給ができずグローバル的な規模での普及は望めない。」なる記載は、請求項1の発明の技術的事項とは認められず、特許請求の範囲の記載を不明瞭としている。また、請求項2において図面の記載を代用しており、請求項2の発明の範囲が不明確である。

(3)前記1.(1)ないし(5)に関する特許請求の範囲の記載に対して、発明の詳細な説明において記載されておらず、請求項1、2に記載した発明と、発明の詳細な説明に記載した発明とが実質的に対応しない。』

第3.当審の判断

1.意見書概要
当審における平成18年8月21日付けの拒絶の理由に対し、補正することなく、以下のような意見書が提出された。

『【意見の内容】
拒絶理由に対する項目別の説明書(意見書)
1(1)「コマがフレームの枠内にどのようにして拘束されて、回転して移動するのか具体的構成、構造が不明瞭」
上記の理由について
フレームワーク(図▲2▼)の枠内は二重構造に成っており、その内枠内部にコマ(図3)の軸(図4)が拘束されコマの回転時に左右の軸に固定されなが高速回転する時に微妙に発生する、ブレ、コマの飛散等を制御して安定的(回転不変)な回転を確保します。
軸はボールベヤリング等で保護して安定回転を確保しコマの高速回転時に発生する摩擦、摩耗熱等を防御する。
(2)「コマがフレームの枠内を回転して移動しており、かなりの移動範囲にわたって移動するコマの軸から、どのようにして外部に設置した発電機に回転を伝動するか」
上記について
【図1】のフレームワーク図は重力に反発するようすは、どような発想なのかをシーソの原理に着眼した時点で、それを誰でもシーソの原理を理解できるようにフレームワークの枠を長大に拡張した図であり、現実はきわめて短いフレームワークで円弧に近い楕円フレームワークですむ。
コマの図は縮小してコマの回転を高速回転するようすをイメージしていだく図である、現実のコマはフレームワークに対して相当に大きな物(円形、円盤形、円筒形、車輪形等いろいの形が考えられる)になる。
上記によりコマの移動範囲は限定され軸の移動範囲内での拡幅及び拡大の発電機を開発すれ外部発電は可能です。
なお、コマ自体を磁石等にすれば磁場が発生してコマ自体が発電機になり発電が可能ににる。
よって、外部発電(左右の両軸に発電機を取り付ける)、のダブル(2ケ所)発電、内部発電の3ケ所発電が可能になる。
(3)「フレームワーク自体を発電機としてコマの回転により発電する」
上記の理由について
コマ自体を磁石(磁気)を帯びた製品を使用するか、コマがフレームワーク内を高速回転するときに発するエネルキー(磁気)を磁場として発電する。
(4)「制御(Control)装置は」「発電機の始動(ON)停止(OFF)にも利用可能である」
上記の理由について
制御装置は恒に如何(地震時等)なる事態にも外部圧力等に対応してコマの回転を安定的に回転させると供にフレーム内のコマ自体の回転速度(回転数)を恒に一定(安定不変)に保ち働きをする装置である。
発電機の始動、停止は非常事態発生時(超大地震等)で工場、家等の倒壊等により電気の漏電時に発生する火災等を未然に防ぐ、また、長期間(半年?1年以上)による発電機を使用しない場合にも停止装置(事故防止)が必要のため。
発電機の始動は新規工場操業、新築家等の発電には初期始動に付き物の装置である。
(5)1,コマが重力による位置エネルギーで回転して移動する際のエネルギーロス、2,コマの軸から外部に設置した発電機に伝達する際のエネルギーロス、3,発電時のエネルキーロスをどのようにして最小限とする。
上記の理由について
1,コマ自体が重力に反発してフーレワークを利して上昇運動に変わる時に減速のロスが発生する、また、下降運動に変わる時に高速回転速度になり(回転数)微妙な変化が生じる、それを補う装置が制御(Control)装置(4)である。
2,コマの回転軸から発電機に伝達するには軸の摩擦ロスが生じるので、そのロスを防ぐには軸の外部に超精巧なボールベアリング等を使用して回転時の摩擦、摩擦熱等のロスを最小限に抑える。
3,発電時のロスは始動(ON)と停止(OFF)時が最大のエネルギーロスが発生する(例えば自動車の始動時、急停車急発進時の燃料消費のロス)よって、この発電装置(機)はこまめな停止、始動はしないこと(発電におけるエネルギー代は無代であるから)
2(1)「この組み合わせによるダブル発電の考えもある」
コマの軸(図4)の回転によりシャフト伝達して外部発電機により発電する、また、コマ自体の回転時に発生する本体磁石(磁場)による発電により、より効率的な内部発電と外部発電によりもとも優れた効率の良いダブル発電の発想である。
(2)「制御装置」
上記にも記したがこの制御装置がコマの微妙な回転の変化を察知してコントロールしてコマの回転速度を一定に維持し恒に安定した発電を推進する、また、発電機のトラブル等不慮の大災害時に安全に停止(OFF)する装置である。
微妙なコマの回転速度をコントロールすることはバネ(Sprig)だけでは不可能であるのでピストンとの組み合わせ(ダブル)により、より精密で性能の良い最良のコントロールを可能にする。
・・・
本、発明の要点(ポイント)を簡素に記すると、シーソ、コマ、発電機、バネ、ピストン、ベアリング等は現世で今現在時で使用して利されている物である、重力(引力)も全世界中に存在(万国不変)して誰でもどこでも平等に利用(利便不変)できどなんに使用しようが枯渇する事がない、これを利することに着眼しシーソの原理を応用してフーレワーク内部にコマ組み込みコマ回転移動によりフームワークが昇降運動をくり返し永久に運動をし続ける(金属疲労等が無い場合を想定している)、そのコマが回転時に磁場を発生して発電できることか発明(特許権にあたいする)である』

2.特許法第36条第4項第1号に規定する要件について
(1)まず、前記拒絶の理由に示した前記第2.1.(5)について検討する。
請求項1に係わる発明について、請求項1において「コマの回転運動のエネルギーが、摩擦によるエネルギーロスとフレームの昇降運動によるエネルギーロスを上回る限り、無害で連続的に発電させ続けることができる。コマの材質やフレームワークの形状によりエネルギーロスを最小限にし、初期設定にかかるエネルギーを押さえれば継続的な発電が可能である。」としており、段落0001において「フレームの枠内をコマが重力(Gravity)によつて落下することによる回転により発生するエネルギーを利用してフレームワークの内枠をコマが推進し、フレームワークが上下降する反復運動をくり返すことにより半永久的にコマが回転し続け、そのエネルギーを使用して連続的に発電機を稼働させ続けることができるものである。」としており、意見書において「シーソの原理を応用してフーレワーク内部にコマ組み込みコマ回転移動によりフームワークが昇降運動をくり返し永久に運動をし続ける(金属疲労等が無い場合を想定している)、そのコマが回転時に磁場を発生して発電できることか発明(特許権にあたいする)である」と主張している。

すなわち、半永久とは、通常「ほとんど永久に近いこと。」(広辞苑)の意味で用いられ、請求項1に係わる発明は、「コマの材質やフレームワークの形状によりエネルギーロスを最小限にし、初期設定にかかるエネルギーを押さえれば継続的な発電が可能であ」り、「半永久的にコマが回転し続け、そのエネルギーを使用して連続的に発電機を稼働させ続けることができるものであ」り、「コマ回転移動によりフームワークが昇降運動をくり返し永久に運動をし続ける(金属疲労等が無い場合を想定している)、そのコマが回転時に磁場を発生して発電できる」としている。しかも、発電とは、一般的電気需要に対する発電を指している。(段落0003?0005)
しかしながら、請求項1に係わる発明におけるコマが保有する最大の運動エネルギーは、高々コマが最も高い位置と最も低い位置との差による有限の位置エネルギーにすぎない。そして、エネルギー保存の法則から、この有限の位置エネルギーを、運動エネルギーに変換した後、全て発電により電気エネルギーとして取り出してしまえばコマは最も低い位置で静止することとなり、半永久的にコマが回転し続け、そのエネルギーを使用して連続的に発電機を稼働させ続けることができることはあり得ない。
前記第2.1.(5)に対して、意見書においては、「1,コマ自体が重力に反発してフーレワークを利して上昇運動に変わる時に減速のロスが発生する、また、下降運動に変わる時に高速回転速度になり(回転数)微妙な変化が生じる、それを補う装置が制御(Control)装置(4)である。2,コマの回転軸から発電機に伝達するには軸の摩擦ロスが生じるので、そのロスを防ぐには軸の外部に超精巧なボールベアリング等を使用して回転時の摩擦、摩擦熱等のロスを最小限に抑える。3,発電時のロスは始動(ON)と停止(OFF)時が最大のエネルギーロスが発生する(例えば自動車の始動時、急停車急発進時の燃料消費のロス)よって、この発電装置(機)はこまめな停止、始動はしないこと(発電におけるエネルギー代は無代であるから)」としか述べていない。

したがって、エネルギー保存の法則を踏まえれば、エネルギーロスを最小限としても、それを差し引いた残りの有限のエネルギーで、半永久的に発電機を稼働させ続けることができるのか依然不明瞭であり、しかもエネルギーロスを最小限とする具体的構成・構造が不明瞭であり、この発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められない。

(2)次に、前記拒絶の理由に示した前記第2.1.(1)ないし(4)について検討する。
前記第2.1.(1)については、意見書に主張する「その内枠内部にコマ(図3)の軸(図4)が拘束されコマの回転時に左右の軸に固定されなが高速回転する時に微妙に発生する、ブレ、コマの飛散等を制御して安定的(回転不変)な回転を確保」する具体的構成は不明瞭であり、コマがフレームの枠内にどのようにして拘束されて、回転して移動するのか依然不明瞭である。また、前記第2.1.(2)については、コマの軸から外部に設置した発電機に伝動する具体的手段が依然不明瞭である。前記第2.1.(3)についても、「コマ自体が発電機になり発電が可能な」構成が依然不明瞭である。さらに、前記第2.1.(4)については、意見書において「この制御装置がコマの微妙な回転の変化を察知してコントロールしてコマの回転速度を一定に維持し恒に安定した発電を推進する、また、発電機のトラブル等不慮の大災害時に安全に停止(OFF)する装置」としているが、「制御(Control)装置」の具体的構成・構造が依然不明瞭である。
したがって、前記第2.1.(1)ないし(4)について、この発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められない。

(3)以上のように、本件出願は、発明の詳細な説明の記載が、依然として、この発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

しかも、原査定の拒絶の理由(平成17年6月28日付けの拒絶の理由)で指摘したように、明細書の記載において、「シーソーの上下移動の反復運動を利用して反永久的に稼働し続ける」ための原理、要件、及び制御装置7の機能等が不明瞭であるので、当業者が発明を実施しうる程度に開示しているとは認められないとしており、前記第3.2.(1)と同様な理由により、原査定の拒絶の理由によっても依然特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

2.特許法第36条第6項第1号、第2号に規定する要件
当審における平成18年8月21日付けの拒絶の理由に対し、なんら補正されておらず、依然として、前記第2.2.(1)ないし(3)について不備であるから、本件出願は、特許法第36条第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていない。

第4.むすび
以上のとおり、本件出願について、特許法第36条第4項第1号、及び同条第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていない。したがって、本件出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-12-28 
結審通知日 2007-01-16 
審決日 2007-01-29 
出願番号 特願2005-78069(P2005-78069)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (F03G)
P 1 8・ 536- WZ (F03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹之内 秀明  
特許庁審判長 大橋 康史
特許庁審判官 長馬 望
小谷 一郎
発明の名称 発電機の発電稼働装置  

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