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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) B23Q
管理番号 1158498
審判番号 無効2002-35025  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-01-28 
確定日 2007-06-15 
事件の表示 上記当事者間の特許第3223219号「工具保持具」の特許無効審判事件についてされた平成15年 6月 5日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成15年(行ケ)第0311号平成16年11月25日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第3223219号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続きの経緯
(1)本件特許第3223219号の請求項1に係る発明についての出願は、平成5年9月24日に特許出願され、平成13年8月17日にその発明について特許権の設定登録がされた。
(2)平成14年1月28日に請求人大昭和精機株式会社により本件請求項1に係る発明についての特許を無効とすることを求める本件審判請求がなされ、請求人より、平成14年2月15日付け手続補正書、平成14年7月18日付け証拠説明書、平成14年7月31日付け上申書、平成14年9月13日付け弁駁書及び平成15年4月17日付け弁駁書が提出され、一方、被請求人より、平成14年5月7日付け答弁書、平成14年7月18日付け口頭審理陳述要領書、平成15年1月13日付け意見書及び平成15年1月16日付け証拠提出書が提出された。
(3)平成14年7月18日に第1回口頭審理が行われ、平成15年6月5日付けで「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下、「第1次審決」という。)がなされた。
(4)平成15年7月15日に、上記第1次審決の取消しを求める訴(平成15年(行ケ)311号)が東京高等裁判所に提起され、平成16年11月25日に上記審決取消の判決が言渡された。そして、平成16年12月9日に当該判決の取消しを求める上告(平成17年(行ツ)第58号、平成17年(行ヒ)第66号)がなされたが、平成17年4月8日に上告棄却の決定がなされた。
(5)平成17年2月22日に、本件特許の願書に添付した明細書の訂正を求める審判(訂正審判2005-39030号)が請求され、平成17年9月5日付けで訂正拒絶の理由が通知され、その指定期間内である平成17年10月13日に意見書が提出され、平成17年11月8日付けで「本件訂正請求は、成り立たない。」との審決がなされたので、本件についてさらに審理する。

第2.請求人の主張の概要
請求人は、甲第1号証(特表平3-500511号公報)、甲第2号証(グーリング社のカタログ「GUHRING 93」、1993年9月発行、第5頁)、甲第3号証(規格書「DIN 69893」、1993年7月発行)、甲第4号証(特開平2-124204号公報)及び甲第5号証(日本工作機械工業会規格「プルスタッド」 1975年9月11日制定)を提示し、さらに、甲第2号証が本件特許の出願前である1993年9月14日?22日の期間にドイツ国ハノーバ市で開催されたEMOショーにおいて出展者であったグーリング社が頒布していたカタログであることを立証するために、請求人の従業者川上英盛の1993年9月の手帳であるとして甲第6号証、同川上英盛のパスポートであるとして甲第7号証、上記EMOショーのカタログであるとして甲第8号証、同EMOショーの出展者リストであるとして甲第9号証、上記川上英盛の供述書であるとして甲第10号証及び請求人の従業者久保治明の供述書であるとして甲第11号証を提示し、さらに甲第2号証に記載されている内容が本件出願前に公知であったことを立証するために甲第12号証(日刊工業新聞、1993年2月25日発行)を提示し、また、甲第3号証に記載されている中空テーパシャンク部が減径して締り嵌めされるものであることを立証するために甲第13号証(規格書「DIN 69063」、1993年7月発行)、甲第14号証(「ツールエンジニアリング」、1996年2月号、1996年2月1日発行、第105頁?第110頁)及び甲第15号証(「機械と工具」、1998年12月号、1998年12月1日発行、第60頁)を提示し、本件の請求項1に係る発明は、甲第1号証記載の発明に、甲第2号証乃至甲第5号証記載の発明を組み合わせることによって当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件の請求項1に係る発明についての特許は無効とすべきである旨主張している。

第3.被請求人の主張の概要
これに対して、被請求人は、乙第1号証(日本工作機械工業会の規格書「規格番号 MAS 403-1975」)、乙第2号証(「精密工学雑誌」、Vol64、No.6、1988、第830頁?第834頁)、乙第3号証(日本規格協会発行、「JIS規格書 JIS B 6339-1986」)及び乙第4号証(甲第1号証の基礎原文であるPCT/US87/02977の国際公開公報)を提示し、本件の請求項1に係る発明は、甲第1号証記載の発明に甲第2号証ないし甲第5号証記載の発明を組み合わせることによって当業者が容易に発明をすることができたものではない旨主張している。

第4.本件発明
本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、設定登録時の願書に添付した明細書及び図面(以下、「本件特許明細書」という。)に記載した事項からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「本体の軸線方向の一端には工具保持部を備え、
本体の軸線方向の他端には、該本体を工作機の主軸に対して軸線が一致する状態に取付ける為に、上記主軸の端部に備わっているテーパ孔に嵌合させるようにした対応テーパ形状のシャンク部と、主軸側の引具でシャンク部を引込むためにシャンク部の先端に設けられたプルスタッドとを備え、
上記本体における上記の工具保持部と上記のシャンク部との間の外周に備えさせた鍔部には、工作機の主軸の孔縁部端面に対して当て付ける為の鍔状の当部を上記孔縁部端面に対向させる位置に周設している工具保持具において、
上記シャンク部の外周面の外径は、上記テーパ孔に差込むことによってシャンク部の外周面がテーパ孔の内周面に当接した状態では、上記工作機の主軸に対して上記鍔状の当部が当接することのない寸法に形成してあり、
上記シャンク部の内部は、上記シャンク部をテーパ孔の深部方向に向けて力が加えられたときに、減径して、上記深部方向に向かって僅かに移動させられるような肉厚を残して中空に形成してあり、
しかもそのシャンク部内側の中空部は、シャンク部の元部側の最大径部を越えて上記鍔部寄りにも上記の肉厚と同じように減径する肉厚が得られるように鍔部の内側に向けて連続的に形成してあり、
上記本体の外周に周設した上記鍔状の当部の位置は、上記シャンク部におけるプルスタッドに対してテーパ孔の深部方向に向けて力が加えられて、上記シャンク部の外周面が減径されながら上記シャンク部がテーパ孔深部方向へ僅かに移動することにより上記主軸の孔縁部の端面に上記鍔状の当部が当接するような位置に設定してあることを特徴とする工具保持具。」

第5.甲各号証記載の内容
(i)甲第2号証グーリング社のカタログ:GUHRING 93には、以下の事項が記載されている。
なお、翻訳文は、審判請求書に添付された「甲第2号証の抄訳」を参照した。
(i-1)表紙裏左上欄に
「GM300
商品番号リスト
1993年9月版」と記載され、
(i-2)第4頁中央欄に
「GM300
モジュラーツーリングシステム
我々の新しいモジュラツーリングシステムGM300は、回転及び固定ツールに適用するために開発された。締付方法のユニークな設計は、ツーリングシステム内の手動締付用の理想的なインターフェイスを提供するのみならず、機械主軸又はツールホルダーへの直接自動締付用の理想的なインターフェイスを提供する。
特徴:ドイツ工業規格(DIN69893)第1部に基づく軸平面締付機構を有する中空テーパシャンク。最も重要な利点は以下の通りである。
・強い固定及び動剛性
ツールシャンクで生じる軸方向及び径方向の力は、必要な締付力を提供する(図1)。
・高いトルク伝達及び径方向の位置決め
中空テーパシャンクとホルダー又は主軸との間のくさび効果は、全テーパ表面及び平らな支持面に摩擦接触を生じさせる(図2)。2つのキーが、ツールホルダーのシャンク末端と係合し、完全な径方向の位置決めを提供し、これにより、設置の誤りをなくす。
・高いツール交換精度及び繰り返し取付け精度
中空ツールシャンク内における締付爪の環状の係合は、シャンクと主軸又はホルダーとの間の完全な密着を提供する(図2及び3)。
・高速機械加工性能
回転数が増えるほど、締付機構の締め付け力及び締め付け効果が向上する。中空シャンクと主軸ホルダーとの間の直接的な初期の応力は、遠心力により生じる主軸の拡張を相殺し、径方向の遊びを完全に無くす(図2)。平面締付位置は、軸方向の滑りを防ぐ。
・ツール交換時間の短縮化
長さの短いシャンク(ISOテーパの約3分の1)及び軽量化(ISOテーパの約50%)による合理的なツール交換。」と記載され、
(i-3)第5頁中段に
「接合部における中空テーパシャンクの初期応力及び摩擦力」を示す図2が記載され、左側の図の上方に「装着位置」、下方に「端面の遊び」、右側の図の上方に「締り嵌め位置」、下方に「有効締め付け力」と記載され、図2に、シャンク内部の中空部は、シャンクの元部側の最大径部を越えて鍔部の内側に向けて連続的に形成されていることが記載されていると認める。
上記中空テーパシャンクは、第5頁中段の左側の図に示される「装着位置」から主軸またはホルダーのテーパ孔の深部方向に向けて力が加えられて右側の図に示される「締り嵌め位置」に移動するときに、シャンク部内側の中空部が鍔部内側まで連続して形成されているから、少なくともシャンク部の鍔部に近い部分が主軸のテーパ孔の対応部分に接している「装着位置」から「締まり嵌め位置」への移動にあたっては、当該接している部分が減径していることは技術常識より明らかであり、結局、甲第2号証には、次の発明が記載されていると認める。
「一端に工具保持部を備え、多端には主軸ホルダーのテーパ孔に装着するためのシャンクと主軸端面に接するための鍔部を備えた工具保持具であって、
装着位置においては、シャンクは主軸のテーパ孔にテーパ係合し、鍔部と主軸の端面には端面の遊びがあり、
工具保持具がテーパ孔の深部方向に引かれた締まり嵌め位置において、シャンク部は主軸ホルダーのテーパ孔にテーパ係合し、鍔部が主軸の端面に接することによりトルク伝達するものであり、
上記シャンク部の内部は、上記シャンク部をテーパ孔の深部方向に向けて力が加えられたときに、少なくともシャンク部の鍔部に近い部分が減径して、上記深部方向に向かって僅かに移動させられるような肉厚を残して中空に形成してあり、しかもそのシャンク部内側の中空部は、シャンク部の元部側の最大径部を越えて上記鍔部寄りにも上記の肉厚と同じように減径する肉厚が得られるように鍔部の内側に向けて連続的に形成してある中空のシャンク部を備える工具保持具。」

(ii)甲第4号証である特開平2-124204号公報には、以下の事項が記載されている。
(ii-1)特許請求の範囲に
「受面を備える本体と、上記受面に当接させる為の当面を備える工具ホルダとを備え、上記本体又は工具ホルダの一方には、上記受面又は当面に開口するテーパ孔を、他方には、上記当面又は受面から突出しかつ上記テーパ孔のテーパ面に対応するテーパ面を有するテーパ突起を夫々具備させ、それらテーパ孔及びテーパ突起の大きさは、テーパ突起をテーパ孔に差し込む過程においてテーパ孔の内周面にテーパ突起の外周面が当接する大きさにしてあり、上記テーパ孔の内周部又はテーパ突起の外周部の構造は、上記内周面又は外周面が弾性変形して上記受面に対する当面の当接を許容可能な寸法差吸収構造にしてある工具取付構造。」と記載されている。
(ii-2)第2頁右上欄第8行-右下欄第12行に
「上記本体Aは一例として工作機のスピンドル1に対して、自体の軸芯Acがスピンドルの回動軸芯と一致する状態で複数の取付ねじ2でもって固定してあるが、上記スピンドル1の一部をもって構成される場合もある。」と記載されている。
(ii-3)第4頁右上欄第17行-左下欄第11行に
「次に第14図乃至16図は本願の更に異なる実施例を示すもので、テーパ突起12hの外周部における寸法差吸収構造の更に異なる例を示すものである。本例においては、テーパ突起12hの外周部(第14?16図の記載から、「内周部」の誤記であると認められる。)に環状の溝27を備えさせてある。
このような構成のものにあっては、第14図の状態からテーパ突起12hをテーパ孔4h内に差込み、更に差込を深めると、溝27の外側の環状部分28は第16図に示されるように溝27に向け弾性変形する。これによりテーパ突起12hはテーパ孔4hの深部へ向けて侵入して当面11hが受面3hに密着する。尚本例における工具ホルダ8hはその製造を容易にする為に、二つの部材29,30に分けて構成し、それらを符号31で示されるねじ部において連結してある。」と記載されている。
(ii-4)そして、第14図、第16図によれば、当面11hの元部は、図において当面11hよりも右側に位置し、受面3hと接しないこと、及び、テーパ突起12hの外周面は図の右に向かって拡がり、径が最大となった後、上記の元部に連続していること、が明らかである。
上記(ii-1)?(ii-3)記載事項及び上記(ii-4)の第14,16図の記載より、甲第4号証には、次の事項が記載されていると認める。
「工作機のスピンドルは受面とテーパ孔を備え、工具ホルダは上記受面に当接させる為の当面と上記テーパ孔のテーパ面に対応するテーパ面を有するテーパ突起を備え、それらテーパ孔及びテーパ突起の大きさは、テーパ突起をテーパ孔に差し込む過程においてテーパ孔の内周面にテーパ突起の外周面が当接する大きさにしてあり、上記テーパ孔の内周部又はテーパ突起の外周部の構造は、上記内周面又は外周面が弾性変形して上記受面に対する当面の当接を許容可能な寸法差吸収構造にしてある工具取付構造。」
「当面11hの元部は、図において当面11hよりも右側に位置し、受面3hと接しないこと、及び、テーパ突起12hの外周面は図の右に向かって拡がり、径が最大となった後、上記元部に連続している。」

(iii)甲第5号証である日本工作機械工業会規格「プルスタッド」には、以下の事項が記載されている。
第4頁の「4.種類」の欄に、解説図1及び解説図2が示され、
「プルスタッドは引張り機構によるつかみ部の角度により2種類に分けた。
引張り機構は大別すると,解説図1のようにボールを介してツールシャンクを後方へ引張る方式(以下「ボール方式」という)と,解説図2のようにコレットによる方式(以下「コレット方式」という)とがある。」と記載されていると認める。
上記甲第5号証の解説図1及び2並びに上記記載事項より、「プルスタッドをシャンク部の先端に設けた工具保持具。」は、周知の事項であると認められる。

第6.対比
本件発明と甲第2号証記載の発明とを対比すると、両者共にテーパーシャンクと主軸の端面及び鍔部による二面係合の工具保持具である点で共通し、後者の「装着位置」と前者の「テーパ孔に差込むことによってシャンク部の外周面がテーパ孔の内周面に当接した状態」とが共通すること、及び、後者の「締まり嵌め位置」における「主軸ホルダー」と「鍔部」の位置関係と、前者の「本体の外周に周設した上記鍔状の当部の位置は、上記シャンク部におけるプルスタッドに対してテーパ孔の深部方向に向けて力が加えられて、上記シャンク部の外周面が減径されながら上記シャンク部がテーパ孔深部方向へ僅かに移動することにより上記主軸の孔縁部の端面に上記鍔状の当部が当接するような位置に設定してある」こととが共通することは、明らかである。
そうすると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

〈一致点〉
本体の軸線方向の一端には工具保持部を備え、
本体の軸線方向の他端には、該本体を工作機の主軸に対して軸線が一致する状態に取付ける為に、上記主軸の端部に備わっているテーパ孔に嵌合させるようにしたシャンク部を備え、
上記本体における上記の工具保持部と上記のシャンク部との間の外周に備えさせた鍔部には、工作機の主軸の孔縁部端面に対して当て付ける為の鍔状の当部を上記孔縁部端面に対向させる位置に周設している工具保持具において、
上記シャンク部の外周面の外径は、上記テーパ孔に差込むことによってシャンク部の外周面がテーパ孔の内周面に当接した状態では、上記工作機の主軸に対して上記鍔状の当部が当接することのない寸法に形成してあり、
上記シャンク部の内部は、上記シャンク部をテーパ孔の深部方向に向けて力が加えられたときに、上記深部方向に向かって僅かに移動させられるような肉厚を残して中空に形成してあり、
しかもそのシャンク部内側の中空部は、シャンク部の元部側の最大径部を越えて上記鍔部寄りにも上記の肉厚と同じように減径する肉厚が得られるように鍔部の内側に向けて連続的に形成してあり、
上記本体の外周に周設した上記鍔状の当部の位置は、上記シャンク部に対してテーパ孔の深部方向に向けて力が加えられて、上記シャンク部がテーパ孔深部方向へ僅かに移動することにより上記主軸の孔縁部の端面に上記鍔状の当部が当接するような位置に設定してある工具保持具。

〈相違点1〉
本件発明では、シャンク部の外形状が、主軸の端部に備わっているテーパ孔に嵌合させるようにした対応テーパ形状であるのに対し、甲第2号証に記載された発明では、シャンク部の外形状がそのようなものであるか不明である点。

〈相違点2〉
本件発明では、主軸側の引具でシャンク部を引込むためにシャンク部の先端に設けられたプルスタッドを備え、当該プルスタッドに対してテーパ孔の深部方向に向けて力が加えられるのに対し、甲第2号証に記載された発明では、主軸側の引具がどのようなものであるか不明である点。

〈相違点3〉
本件発明では、シャンク部をテーパ孔の深部方向に向けて力が加えられたときに、シャンク部が減径し、シャンク部の外周面が減径されながら主軸の孔縁部の端面に上記鍔状の当部が当接するような位置に移動するのに対し、甲第2号証に記載された発明では、シャンク部をテーパ孔の深部方向に向けて力が加えられたとき、少なくともシャンク部の鍔部に近い部分が減径するものの、締まり嵌め位置への移動がシャンク部全長に亘っての減径によるものか否かは不明である点。

第7.判断

(i)相違点1について
甲第4号証には、上記第3.(3)(ii)のとおりの事項が記載されており、甲第2号証に記載された発明と甲第4号証に記載された事項とは、二面係合する中空のツールシャンクに関するものであることで技術分野が一致するので、甲第2号証に記載された発明に甲第4号証に記載された事項を適用し、相違点1における本件発明のように構成することに格別の困難性は見当たらない。

(ii)相違点2について
甲第5号証に記載されているとおり、「主軸側の引具でシャンク部を引込むためにシャンク部の先端に設けられたプルスタッド」を備えることは、本願の出願前に周知の事項であり、相違点2における本件発明のように構成することに格別の困難性は見当たらない。

(iii)相違点3について
甲第2号証に記載された発明においても、少なくともシャンク部の鍔部に近い部分が減径しており、また、当該減径する部分をシャンク部の全体とすることは、上記相違点1に係る構成であるシャンク部のテーパ形状を主軸のテーパ孔のテーパ形状に合わせることにより、必然的に成し遂げられる事項であり、相違点4における本件発明のように構成することに格別の困難性は見当たらない

(v)作用効果について
本件発明の作用効果は、甲第2号証記載の発明、甲第4号証記載の事項、及び、従来周知の事項から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。

第8.むすび
以上のとおりであり、本件発明は、甲第2号証記載の発明、甲第4号証記載の事項、及び、従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当する。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-05-19 
結審通知日 2003-05-22 
審決日 2005-11-21 
出願番号 特願平5-261782
審決分類 P 1 112・ 121- Z (B23Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岡野 卓也  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 前田 幸雄
菅澤 洋二
鈴木 孝幸
佐々木 正章
登録日 2001-08-17 
登録番号 特許第3223219号(P3223219)
発明の名称 工具保持具  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 佐竹 弘  
代理人 大賀 眞司  
代理人 中島 知子  
代理人 田中 克郎  

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