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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680096 審決 特許
無効200680165 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  F24F
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  F24F
管理番号 1159179
審判番号 無効2006-80068  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-04-18 
確定日 2007-05-07 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3009874号発明「空気調和機の室外機の補助冷却装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3009874号に係る発明は、平成10年6月23日に特許出願され、平成11年12月3日に、請求項1?7に係る発明について特許権の設定登録がされたものである。
これに対して、平成18年4月18日に、因幡電機産業株式会社から、請求項1?7に係る特許について特許無効審判が請求され、特許権者たるダイキン工業株式会社及びオーケー器材株式会社に対し審判請求書副本を送達して答弁書提出の機会を与えたところ、平成18年7月28日付けで答弁書及び訂正明細書が添付された訂正請求書が提出された。そこで、特許無効審判請求人に対して、平成18年8月11日付け(発送日:同年8月16日)で、上記答弁書の副本及び、訂正明細書が添付された訂正請求書の副本を送付したところ、平成18年10月2日付けで弁駁書が提出された。
そして、平成18年12月15日に大阪市淀川区西宮原1-3-35の「大阪ガーデンパレス」において口頭審理がなされ、両当事者より、それぞれ口頭審理陳述要領書が提出されている。
口頭審理の後、書面審理に切り換えて審理した。
平成18年12月26日付けで、請求人より上申書が提出された。
当審より平成18年12月27日付け(発送日:平成19年1月5日)で無効の理由を通知し、これに対して、特許権者より平成19年1月31日付けで意見書及び訂正明細書が添付された訂正請求書が提出された。
なお、特許無効審判請求人に対して、平成19年1月31日付けで意見書及び訂正明細書の副本を送付して意見を求めたが、意見書等の提出はなかった。


第2 当事者の主張
1.特許無効審判請求人の主張の概要
1-1.審判請求書における請求人の主張の概要
特許無効審判請求人(以下、「請求人」という。)は、審判請求書において、甲第1号証?甲第5号証を提示するとともに概略次のような無効理由を主張している。

(1).「第5.請求項5(一部のみを覆って相対位置変更可能)に係る発明が新規性を欠如する理由」
本件請求項5に係る特許発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であって、特許法第29条1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

(2).「第6.請求項7(長さ調節が可能な棒部材)、請求項1(抜き差し自在な棒部材)及び請求項3(固定用スリーブを用いた棒部材)に係る発明が新規性若しくは進歩性を欠如する理由」
本件請求項7に係る特許発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であって、特許法第29条1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。
本件請求項1に係る特許発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であって、特許法第29条1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。
本件請求項3に係る特許発明は、甲第1号証に記載された発明(空気調和機の室外機の補助冷却装置(ノズル取付枠))並びに甲第3号証(固定用スリーブと、この固定用スリーブの両端に挿入されて固定される棒部材によって長さ調整可能とする技術)、甲第4号証乃至甲第5号証-3に記載された発明(周知、慣用の固定用スリーブ(継手スリーブ))に基づいて当業者が容易に発明し得たものであって、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

(3)「第7.請求項2(2組:抜き差し自在な棒部材)、請求項4(2個:固定用スリーブ)及び請求項6(請求項1乃至請求項4+請求項5)に係る発明が新規性若しくは進歩性を欠如する理由」
本件請求項2に係る特許発明について
甲第4号証(第2図乃至第4図)には、本件特許発明の第1実施例(第1図)の「抜き差し自在な棒部材(4,5)の2組を互いに連結した取付枠」(請求項2)が記載されている。
さらに、甲第4号証の第2図乃至第4図にも図解されている様に、棒部材からなる取付枠に安定(剛性)を求めて複数組の棒部材を互いに連結してH字状、井桁状、方形状、梯子状等に組むことは、ノズル取付枠にとどまらず、当業者にとって日常的課題に容易に対応した設計変更でしかない。
したがって、請求項2(2組:抜き差し自在な棒部材)に係る発明も、甲第1号証刊行物に記載された「空気調和機の室外機の補助冷却装置(ノズル取付枠)」と甲第4号証(2組:抜き差し自在な棒部材)に基づいて当業者が容易に想到実施し得た程度のものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。
本件請求項4に係る特許発明については、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証に記載された発明並びに甲第3号証乃至甲第5号証-3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであって、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。
甲第4号証(第2図乃至第4図)には、本件特許発明の第2実施例(第2図)の「2個の固定用スリーブ(6,6)に挿入された棒部材(3,5)を互いに連結した取付枠」(請求項4)が記載されている。
さらに、甲第4号証(第2図乃至第4図)にも示す様に、棒部材からなる取付枠に安定(剛性)を求めて複数組の棒部材を互いに連結してH字状、井桁状、方形状、梯子状等に組むことは、ノズル取付枠にとどまらず、当業者にとって日常的課題に容易に対応した設計変更でしかない。
棒部材の長さ調節を図る手段として、甲第1号証の「抜き差し自在」の取付枠の構成を甲第3号証の「継ぎ足し自在(継手スリーブ)」を用いて処理することは、甲第3号証乃至甲第5号証-3に明らかなとおり、単なる周知慣用技術の適用でしかない。
したがって、請求項4(2個:固定用スリーブを用いた棒部材)に係る発明は、甲第1号証刊行物に記載された「空気調和機の室外機の補助冷却装置(ノズル取付枠)」と甲第4号証(2個:固定用スリーブを用いた棒部材)と甲第3号証乃至甲第5号証-3(継ぎ足し自在(継ぎ手スリーブ))に基づいて当業者が容易に実施し得た程度のものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。
本件請求項6に係る特許発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であって、特許法第29条1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。
また、本件請求項6に係る特許発明は、甲第1号証に記載された発明と、甲第3号証乃至甲第5号証-3に記載された「固定用スリーブ(継手スリーブ)」、甲第4号証に記載された「2組:抜き差し自在な棒部材」、又は甲第4号証に記載された「2個:固定用スリーブを用いた棒部材」との何れかの組み合わせに基いて当業者が容易に発明し得たものであって、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。
なお、審判請求書における「甲第2号証または甲第2号証-2に基づく主張」は、口頭審理において撤回された。(「第1回口頭審理調書」参照)

1-2.弁駁書における請求人の主張の概要
請求人は、特許無効審判被請求人が提出した平成18年7月28日付けの答弁書及び訂正請求書による訂正の請求に対して、平成18年10月2日付けで弁駁書を提出し、概略次のように主張する。当該弁駁書には、周知技術を立証する証拠として、参考資料2?7が添付されている。
請求人は、当該弁駁書により、新たに、本件特許発明5,7,1に対する進歩性の欠如を無効の理由として追加する補正を行った。当該補正は、請求の理由の要旨を変更するものであるが、これは請求人の訂正の請求に起因するものであるので、当該補正を許可する旨決定した。(「第1回口頭審理調書」参照)
なお、後述するように(審決書第9頁参照)、平成18年7月28日付けの訂正請求書による訂正請求は、取り下げたものとみなす。

(1)「訂正後の請求項5(一部のみを覆って相対位置変更可能)に係る発明が依然として無効理由を有している理由」
ア.訂正後の請求項5に係る発明に対して、請求人は、甲第1号証に基づく無効理由(新規性欠如)の主張を維持し、さらに甲第1号証に基づく無効理由(進歩性の欠如)の主張を追加する。
イ.被請求人が、甲第1号証に記載された発明と訂正後の請求項5に係る発明との相違点として強調する点は、甲第1号証には「熱交換器の表面とノズルとの距離を変化させないでノズルの上下方向の噴射位置のみを調整可能にすること」(相違点1)及び「上端部がケーシングの上部に取り付けられる取付枠であること」(相違点2)が記載されていないというものであるが、相違点1は、甲第1号証の記載事項から導き出せる構成であり、相違点2は、甲第1号証の記載事項から導き出せる構成であるか、甲第3号証にも開示された周知の技術的事項であるから、訂正後の請求項5に係る発明も、甲第1号証に記載された発明であるか(特許法第29条第1項第3号)、甲第1号証及び甲第3号証にも記載される周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得た程度のものであり、依然として無効理由(特許法第29条第2項)を有する。

(2)「訂正後の請求項7(長さ調節が可能な棒部材)、請求項1(抜き差し自在な棒部材)及び請求項3(固定用スリーブを用いた棒部材)に係る発明が依然として無効理由を有する理由」
ア.訂正後の請求項7に係る発明及び請求項1に係る発明に対して、請求人は、甲第1号証に基づく無効理由(新規性欠如)の主張を維持し、さらに甲第1号証に基づく無効理由(進歩性の欠如)の主張を追加する。
イ.被請求人が、甲第1号証に記載された発明と訂正後の請求項7,請求項1,請求項3に係る発明との相違点として強調する点は、甲第1号証には「熱交換器の表面とノズルとの距離を変化させないでノズルの上下方向の噴射位置のみを調整可能にすること」(相違点1)及び「上端部がケーシングの上部に取り付けられる取付枠であること」(相違点2)が開示されていないとする点である。ただし、請求項3に係る発明に関しては、甲第1号証の「長さ調節が可能な棒部材」に代えて、「外周面に凹部が形成された円筒形状の固定用スリーブ(長さ調整用スリーブ)」(相違点3)が採用される点が主張されている。
ウ.訂正後の請求項7及び請求項1に係る発明も、甲第1号証に記載される発明と同一、又は、甲第1号証及び甲第3号証にも記載される周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得た程度のものであって、特許法第29条第1項第3号の規定、又は、同法第29条第2項の規定に違反し、同法第123条第1項第2号の規定によって、その特許は無効とされるべきものであるから、依然として無効理由を有している。
エ.長さ調整用スリーブとして、周知、慣用の外周面に凹部(内面に位置決め用の突部)が形成された円筒状の「固定用スリーブ(継ぎ足し用スリーブ)」を採用する請求項3に係る発明も、甲第1号証、並びに、甲第3号証、同第4号証及び同第5号証-1乃至-3に記載された発明(参考資料2乃至4に示されるように周知技術である)に基づいて当業者が容易に想到し得た程度のものであるから、依然として無効理由(特許法第29条第2項)を有している。

(3)「訂正後の請求項2(2組:抜き差し自在な棒部材)、請求項4(2個:固定用スリーブ)及び請求項6(請求項1乃至請求項4+請求項5)に係る発明も依然として無効理由を有する理由」
ア.被請求人は「本件請求項2,4,6は、先行する独立請求項1,3,5に無効理由が無いから、無効理由が無い」と主張するが、訂正後の独立請求項1,3,5についてみても、依然として無効理由を有することが明らかである。
イ.請求人は、請求項2及び請求項4において「左右の長さ調整可能な棒部材を梯子状に連結する」周知技術を立証する証拠として、参考資料5?7を提出する。

1-3.口頭審理陳述要領書における請求人の主張の概要
甲第1号証に記載の発明(取付枠)に関する特許無効審判被請求人の「甲第1号証の取付枠14は、熱交換器の表面とノズルとの距離を変化させないで、熱交換器に対するノズルの上下方向の噴射位置のみを調整可能にするものではない。」(陳述要領書第3頁4行目?6行目)との事実認定は誤りである。
請求人は、平成18年7月28日付けの訂正請求書によって特許請求の範囲が減縮された訂正後の請求項5(及び同様の理由で請求項1?請求項7)に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一若しくは甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到実施し得た程度のものであって、特許法第29条第1項第3号又は特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定によって、その特許は無効とされるべきであるとの平成18年10月2日付けの審判事件弁駁書及び平成18年4月18日付けの審判請求書の主張を改めて陳述する。

1-4.上申書における請求人の主張の概要
請求人は、上申書を提出すると共に参考資料8?11を提示し、概略次のように主張する。

参考資料8?11には、いずれにも、平行な2本の「縦棒部材」に架設した「横板部材」(ないしその横板部材に相当する2本の「横棒部材」)にノズル等の噴出具を取り付ける形態の支持構造が示されている。
参考資料8?11に見られるように、ノズル等の噴出具を噴射反力に抗して支持することを目的として、『2本の縦棒部材に横板部材(ないしその横板部材に相当する2本の横棒部材)を架設して枠構造を構成し、この枠構造における横板部材(ないし2本の横棒部材)にノズル等の噴出具を取り付ける形態の支持構造』は周知慣用技術である。
そもそも、引用刊行物たる甲第1号証(米国特許第4240265号明細書)の支持ユニット14と技術水準を明らかにする甲第2号証(米国特許第4685308号明細書)や甲第2号証-2(米国特許第4542627号明細書)のワイヤ410とを比較すれば、上下にY字状架設部を設ける前者の支持ユニット14が甲第1号証第1図で撓みをもって示される可撓性のあるホース又はパイプ30を前提とした支持構造と理解される一方、後者のワイヤ410が導管(auxiliary conduit)により補助されていることを前提とした支持構造であると理解されるように、ノズルの噴射反力による回転等に対応すべき適宜の支持構造とすること自体、本技術分野における当業者の自然な対応手段と理解されるものである。
従って、審判請求書において提示した甲第1号証(米国特許第4240265号明細書)に示される支持ユニット14において、1本の棒状の基部14aにノズル18を取り付ける支持構造に代え、2本の縦棒部材に架設した横板部材(ないし2本の横棒部材)にノズル18を取り付ける上記支持構造を採用する程度のことは当業者が適宜選択し得る設計的事項にすぎない。
また、出願前公知技術として甲第1号証がある以上、訂正された本件特許発明の相違点は、甲第1号証に記載された支持ユニット14の強度向上との課題から動機付けられる又は設計対応が可能な自然な構成でしかない。枠体の強度向上という課題自体は日常的かつ普遍的な課題であり、かつ、課題解決のための手段としては、上記のとおり枠体の強度を確保すべき出願前の周知慣用技術が知られていた以上、当該技術的事項を「熱交換器に水を散布するノズルを取り付けるための枠体に関する技術」に関する刊行物記載のものに限るべき理由もない。
従って、本件特許発明に対しては、今回提出の参考資料8?11及び従前提出の参考資料5?7が出願前に一対の棒部材部分を有する枠体を補強すべき構造に係る技術的事項を周知慣用技術として開示している以上、訂正された本件特許発明は、甲第1号証に基づき、枠体の強度を設計事項の範囲で補強したものに過ぎないと評価されるべきことは明らかである。
よって、仮に、訂正後における本嫌悪特許請求の範囲に記載の発明において、本件明細書段落0031に記載の如き「平行な2本のパイプ21,21を連結する取付部としての板24にノズル27を取り付ける」という構成要件を付加する減縮訂正をさらに行ったとしても、本件特許の無効理由(特許法第29条第2項)は依然として回避されるものではない。

1-5.請求人が提出した証拠方法
(1) 甲第1号証 : 米国特許第4,240,265号明細書
(2) 甲第2号証 : 米国特許第4,685,308号明細書
(3) 甲第2号証-2: 米国特許第4,542,627号明細書
(4) 甲第3号証 : 米国特許第4,266,406号明細書
(5) 甲第4号証 : 特開昭50-117246号公報
(6) 甲第5号証-1: 特開昭56-97612号公報
(7) 甲第5号証-2: 特開昭56-156510号公報
(8) 甲第5号証-3: 特開昭56-66506号公報
(9) 参考資料2 : 実開昭50-22613号公報
(10)参考資料3 : 実開昭51-69320号公報
(11)参考資料4 : 実開昭59-162020号公報
(12)参考資料5 : 登録実用新案第3045972号公報
(13)参考資料6 : 実開昭61-121163号公報
(14)参考資料7 : 登録実用新案第3045227号公報
(15) 参考資料8 : 特開平10-118213号公報
(16)参考資料9 : 実開昭54-34419号及びその明細書のマイクロフィルム
(17)参考資料10 : 実開昭54-183979号及びその明細書のマイクロフィルム
(18) 参考資料11 : 特開平9-296998号公報
2.特許無効審判被請求人の主張の概要
2-1.答弁書における被請求人の主張の概要
特許無効審判被請求人たる特許権者(以下、「被請求人」という。)が平成18年7月28日付けの訂正請求書により訂正の請求を行った上で答弁書において述べる反論は、次の事項に要約できる。
なお、後述するように(審決書第9頁参照)、この訂正請求は、取り下げたものとみなされる。

訂正後の本件請求項1?7に係る発明は、熱交換器の表面とノズルとの距離を変化させないで熱交換器に対するノズルの上下方向の噴射位置のみを調整可能にするものであるから、ノズルの前後方向の噴射位置のみを変更する甲第1号証の支持ユニット14とは全く異なる。

2-2.口頭審理陳述要領書における被請求人の主張の概要
被請求人は、請求人が提出した弁駁書に対して、口頭審理陳述要領書を提出し、概略次のように主張する。
甲第1号証の取付枠14は、熱交換器の表面とノズルとの距離を変化させないで、熱交換器に対するノズルの上下方向の噴射位置のみを調整可能にするものではない。
したがって、請求人の甲第1号証に対する認定は誤っている。


第3 当審が通知した無効の理由
口頭審理の後、当審が通知した無効の理由は、概略、次のとおりである。

本件特許第3009874号の請求項1?7に係る発明は、下記に示す点で、発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載した発明ではないから、それらの請求項1?7に係る発明に対する特許は、特許法第36条第4項の規定に違反してなされたものであり、また、発明の詳細な説明に記載されかつ特許請求の範囲に明確に記載された発明ではないから、それらの請求項1?7に係る発明に対する特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に違反してなされたものである。



(1)請求項1?7に係る発明について。
発明の詳細な説明では、ノズルの熱交換器に対する位置を調整できると説明されているが(段落【0010】、【0017】、【0022】、【0024】、【0027】等。)、請求項1?7に記載された事項によりそのような作用、効果が奏されるとは解せない。

(2)請求項2,4に係る発明について。
発明の詳細な説明には、請求項2に係る発明について、「ノズルからの水の噴射反力がかかっても、回転することがない」(段落【0013】、【0072】。)との説明があるが、請求項2に記載された事項のみでそのような作用、効果が奏されるとは解せない。(取付枠の取付態様のような、当然前提とすべき事項も欠くのではないかと思料する。)
また、棒部材は、「少なくとも2組」備えられるものとされているが、発明の詳細な説明及び図面には具体的な実施の形態として棒部材を2組とした例が挙げられるだけであって、3組以上とした場合に、どのような構成となるのか不明である。
請求項2の記載では、棒部材、取付部、ノズルの関連構成が十分明確でない。
請求項4に係る発明についても、同様である。

(3)請求項3,4,6に係る発明について。
請求項3に係る発明は「固定用スリーブ」を備えるものであるが、発明の詳細な説明では「固定用スリーブに対して種々の長さの棒部材を用いることによって、あるいは、種々の長さの固定用スリーブを用いることによって、あるいは、固定用スリーブへの棒部材の挿入長さを調整することによって、取付枠の寸法を調整することができる。例えば、棒部材を切断したり、または、短い棒部材を長い棒部材に置き換えることによって、あるいは、異なる長さの固定用スリーブに置き換えることによって、あるいは、固定用スリーブへの棒部材の挿入長さを調整することによって、取付枠の大きさを調整できる。したがって、この補助冷房装置は、容易に汎用性を持たせることができる。また、上記取付枠の棒部材または固定用スリーブの長さ、あるいは、固定用スリーブへの棒部材の挿入長さを調整することによって、ノズルの熱交換器に対する位置を調整することができる。」(段落【0016】、【0017】等。)と説明されており、請求項3に記載された事項のみで寸法が調整できるものとは解せない。
請求項3を引用して記載された請求項4,6の記載についても、同様である。

(4)図4,5を用いて説明されるものは、「この発明の実施の形態」であるとされているが、請求項1?7に係る発明との関係が明らかでなく、それらの発明の実施の形態であるとは解せない。


第4 被請求人の意見書における主張の概要
当審から通知された無効の理由に対して、被請求人は、平成19年1月31日付けの訂正請求書により訂正の請求を行った上で意見書において概略次のように主張する。

被請求人は、同時提出の訂正請求書および訂正明細書により、請求項1を訂正すると共に、請求項2?7を削除した。
また、上記訂正明細書において、請求項1の訂正と請求項2?7の削除とに合わせて、整合性を確保するため、【発明の詳細な説明】も訂正した。
これにより、本件に対する無効理由は完全に解消した。
よって、請求人の無効請求は理由がない。


第5 訂正の適否について
当審が通知した無効の理由に対して被請求人より平成19年1月31日付け訂正請求書が提出されたので、平成18年7月28日付け訂正請求書による訂正の請求は、特許法第134条の2第4項の規定により、取り下げられたものとみなす。
平成19年1月31日付け訂正請求書による訂正の請求は、次のとおりのものであって、各訂正事項について検討する。

1.訂正の内容
被請求人の提出した平成19年1月31日付け訂正請求書の請求の趣旨は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求める、というものであり、訂正の内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
発明の名称の記載を、『【発明の名称】 空気調和機の室外機の補助冷却装置』と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の記載を、次のとおりに訂正する。
『【請求項1】 熱交換器(12)に水を散布するノズル(27,28)と、
互いに抜き差し自在な棒部材(21,22)とこの棒部材(21,22)に上記ノズル(27,28)を取り付ける取付部(24,25)とを有する取付枠(20)と
を備え、 上記取付枠(20)は、上記抜き差し自在な棒部材(21,22)を互いに平行に2組備え、上記平行な2組の棒部材(21,22;21,22)の夫々の上端部が室外機(10)のケーシング(11)の上部に取り付けられ、かつ、上記平行な2組の棒部材(21,22;21,22)の夫々の下端部が上記室外機(10)の上記ケーシング(11)の下部に取り付けられるようになっており、 上記取付部(24,25)は上記平行な2組の抜き差し自在な棒部材(21,22;21,22)を互いに連結している板であり、上記板に上記ノズル(27,28)が取り付けられており、 上記取付枠(20)は、上記平行な2組の抜き差し自在な棒部材(21,22;21,22)と、上記板である上記取付部(24,25)とでH字状または梯子状をしていることを特徴とする空気調和機の室外機の補助冷却装置。』
この訂正の詳細は、次の通りである。
(A) 請求項1の2行目(特許第3009874号公報(以下、公報という)の請求項1の欄3行目)の「抜き差し自在な棒部材」の前に、「互いに」を挿入する。
(B) 請求項1の2行目(公報の請求項1の欄3行目)の「、」を削除する。
(C) 請求項1の3乃至4行目(公報の請求項1の欄5行目)の「取付枠(20)とを備えたこと」を、「取付枠(20)とを備え、上記取付枠(20)は、上記抜き差し自在な棒部材(21,22)を互いに平行に2組備え、上記平行な2組の棒部材(21,22;21,22)の夫々の上端部が室外機(10)のケーシング(11)の上部に取り付けられ、かつ、上記平行な2組の棒部材(21,22;21,22)の夫々の下端部が上記室外機(10)の上記ケーシング(11)の下部に取り付けられるようになっており、上記取付部(24,25)は上記平行な2組の抜き差し自在な棒部材(21,22;21,22)を互いに連結している板であり、上記板に上記ノズル(27,28)が取り付けられており、上記取付枠(20)は、上記平行な2組の抜き差し自在な棒部材(21,22;21,22)と、上記板である上記取付部(24,25)とでH字状または梯子状をしていること」と訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2乃至7を削除する。

(4)訂正事項4
発明の詳細な説明の段落番号【0005】の記載を、『【0005】』と訂正する。

(5)訂正事項5
発明の詳細な説明の段落番号【0007】の記載を、『【0007】そこで、この発明の目的は、種々の室外機に適合できて汎用性が高く、小型で安価に製造でき、梱包費、保管費、運送費などを減少できる空気調和機の室外機の補助冷却装置を提供することにある。』と訂正する。
この訂正の詳細は、次の通りである。
段落番号【0007】の2?3行目(公報の段落番号【0007】の欄2行目)の「ノズルの位置調整ができ、」を削除する。

(6)訂正事項6
発明の詳細な説明の段落番号【0008】の記載を、次のとおりに訂正する。
『【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明の空気調和機の室外機の補助冷却装置は、
熱交換器(12)に水を散布するノズル(27,28)と、
互いに抜き差し自在な棒部材(21,22)とこの棒部材(21,22)に上記ノズル(27,28)を取り付ける取付部(24,25)とを有する取付枠(20)と
を備え、 上記取付枠(20)は、上記抜き差し自在な棒部材(21,22)を互いに平行に2組備え、上記平行な2組の棒部材(21,22;21,22)の夫々の上端部が室外機(10)のケーシング(11)の上部に取り付けられ、かつ、上記平行な2組の棒部材(21,22;21,22)の夫々の下端部が上記室外機(10)の上記ケーシング(11)の下部に取り付けられるようになっており、 上記取付部(24,25)は上記平行な2組の抜き差し自在な棒部材(21,22;21,22)を互いに連結している板であり、上記板に上記ノズル(27,28)が取り付けられており、 上記取付枠(20)は、上記平行な2組の抜き差し自在な棒部材(21,22;21,22)と、上記板である上記取付部(24,25)とでH字状または梯子状をしていることを特徴としている。』

(7)訂正事項7
発明の詳細な説明の段落番号【0010】の記載を、『【0010】』と訂正する。

(8)訂正事項8
発明の詳細な説明の段落番号【0012】の記載を、『【0012】』と訂正する。

(9)訂正事項9
発明の詳細な説明の段落番号【0013】の記載を、『【0013】また、上記取付枠は、2組の棒部材を互いに板である取付部で連結してH字状または梯子状をしていて、その板である取付部にノズルが取り付けられているから、ノズルからの水の噴射反力がかかっても、回転することがない。』と訂正する。
この訂正の詳細は、次の通りである。
(A) 段落番号【0013】の2行目(公報の段落番号【0013】の欄1乃至2行目)の「請求項2の発明の空気調和機の室外機の補助冷却装置によれば、」とあるを「また、」と訂正する。
(B) 段落番号【0013】の2?3行目(公報の段落番号【0013】の欄2行目)の「少なくとも」を削除する。
(C) 段落番号【0013】の3行目(公報の段落番号【0013】の欄3行目)の「取付部」の前に、「板である」を挿入する。
(D) 段落番号【0013】の3行目(公報の段落番号【0013】の欄3行目)の「たとえば」を削除する。
(E) 段落番号【0013】の4行目(公報の段落番号【0013】の欄4行目)の「梯子状をしているから」とあるを、「梯子状をしていて、その板である取付部にノズルが取り付けられているから」と訂正する。

(10)訂正事項10
発明の詳細な説明の段落番号【0014】?【0027】の記載内容を全て削除し、段落番号【0014】?【0027】のみを残す。

(11)訂正事項11
発明の詳細な説明の段落番号【0037】の記載を、『【0037】また、上記取付枠20は幅が熱交換器2の幅よりも狭いから、取付枠20を熱交換器12に対して左右方向にずらせて、ノズル27,28の左右方向の噴射位置を調整することができる。』と訂正する。
この訂正の詳細は、次の通りである。
(A) 段落番号【0037】の2?3行目(公報の段落番号【0037】の欄1?3行目)の「取付枠20のパイプ21と線材22とを抜き差しして、ノズル28の熱交換器12に対する上下方向の噴射位置を調整することができ、また、この」を削除する。
(B) 段落番号【0037】の4行目(公報の段落番号【0037】の欄5行目)の「熱交換器20」とあるを「熱交換器12」と訂正する。

(12)訂正事項12
発明の詳細な説明の段落番号【0038】の記載を、『【0038】また、上記取付枠20は、パイプ21とパイプ21とを板24で連結し、線材22と線材22とを板25で連結して、梯子状にしていて、その板24,25にノズル28,29が取り付けられているので、ノズル27,28からの噴射反力がかかっても、取付枠20が回転することがない。』と訂正する。
この訂正の詳細は、次の通りである。
段落番号【0038】の3行目(公報の段落番号【0038】の3行目)の「梯子状にしているので」とあるを、「梯子状にしていて、その板24,25にノズル28,29が取り付けられているので」と訂正する。

(13)訂正事項13
発明の詳細な説明の段落番号【0041】の記載を、『【0041】』と訂正する。

(14)訂正事項14
発明の詳細な説明の段落番号【0044】の記載を、『【0044】また、上記実施の形態では、1つの室外機10に1つの取付枠20を取り付けたが、1つの室外機に複数の取付枠を取り付けるようにしてもよい。』と訂正する。

(15)訂正事項15
発明の詳細な説明の段落番号【0045】の記載を、『【0045】』と訂正する。

(16)訂正事項16
発明の詳細な説明の段落番号【0047】の記載を、『【0047】図2(a),(b),(c)は参考例の補助冷却装置29を示している。』と訂正する。
(17)訂正事項17
発明の詳細な説明の段落番号【0052】の記載を、『【0052】』と訂正する。

(18)訂正事項18
発明の詳細な説明の段落番号【0056】の記載を、『【0056】上記参考例では、取付枠30を、2個の平行な固定用スリーブ33,33と線材31,32によって梯子状に形成しているが、1個だけの固定用スリーブの両端に線材を挿入して、あるいは、一直線上に2以上の固定用スリーブと3以上の線材を配置して取付枠を形成してもよい。』と訂正する。
この訂正の詳細は、次の通りである。
(A) 段落番号【0056】の2行目(公報の段落番号【0056】の欄1行目)の「上記実施の形態では、」とあるを「上記参考例では、」と訂正する。
(B) 段落番号【0056】の5?7行目(公報の段落番号【0056】の欄6?9行目)の「この場合、室外機にケーシングに係止する線材の部分を例えばY字状にして、取付枠にノズルから噴射反力がかかっても回転しないようすればよい。」を削除する。
(19)訂正事項19
発明の詳細な説明の段落番号【0057】の記載を、『【0057】また、上記参考例では、スリーブ33と線材31,32とを凹部33b,33bで固定しているが、スリーブ33と線材31,32とをネジで固定するようにしてもよい。』と訂正する。
(20)訂正事項20
発明の詳細な説明の段落番号【0058】の記載を、『【0058】また、上記参考例では、1つの室外機10に1つの取付枠29を取り付けたが、1つの室外機に複数の取付枠を取り付けるようにしてもよい。』と訂正する。
(21)訂正事項21
発明の詳細な説明の段落番号【0059】の記載を、『【0059】また、上記参考例では、ノズル37,38の取付部として板34,35を用いたが、線材によって取付部を形成してもよい。』と訂正する。

(22)訂正事項22
発明の詳細な説明の段落番号【0063】の記載を、『【0063】図4は参考例の補助冷却装置の寸法調整方法を示す。』と訂正する。

(23)訂正事項23
発明の詳細な説明の段落番号【0066】の記載を、『【0066】図5は参考例の補助冷却装置の寸法調整方法を示す。』と訂正する。

(24)訂正事項24
発明の詳細な説明の段落番号【0070】の記載を、『【0070】』と訂正する。

(25)訂正事項25
発明の詳細な説明の段落番号【0072】の記載を、『【0072】また、請求項1の発明の空気調和機の室外機の補助冷却装置は、取付枠が2組の棒部材を互いに板である取付部で連結していてH字状または梯子状をしていて、その板である取付部にノズルが取り付けられているから、ノズルからの水の噴射反力がかかっても、回転することがない。』と訂正する。
この訂正の詳細は、次の通りである。
(A) 段落番号【0072】の2行目(公報の段落番号【0072】の欄1行目)の「請求項2」とあるを、「請求項1」と訂正する。
(B) 段落番号【0072】の3行目(公報の段落番号【0072】の欄2?3行目)の「取付部」の前に、「板である」を挿入する。
(C) 段落番号【0072】の3行目(公報の段落番号【0072】の欄3?4行目)の「梯子状をしているから」とあるを、「梯子状をしていて、その板である取付部にノズルが取り付けられているから」と訂正する。
(26)訂正事項26
発明の詳細な説明の段落番号【0073】乃至【0080】の記載内容を全て削除し、段落番号【0073】乃至【0080】のみを残す。
(27)訂正事項27
図面の簡単な説明の記載を、次のとおりに訂正する。
『 【図1】 図1(a)および(b)は、この発明の1実施の形態の空気調和機の室外機の補助冷却装置の斜視図および拡大斜視図である。
【図2】 図2(a),(b)および(c)は、参考例の空気調和機の室外機の補助冷却装置の斜視図、分解図および要部拡大図である。
【図3】 図3は、従来例の空気調和機の室外機の補助冷却装置の斜視図である。
【図4】 図4は参考例の補助冷却装置の寸法調整方法を示す図である。
【図5】 図5は参考例の補助冷却装置の寸法調整方法を示す図である。
【符号の説明】
10 室外機11 ケーシング19 補助冷却装置
20 取付枠
21 パイプ
22 線材
23 ネジ
24,25 板
27,28 ノズル』

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本願発明が空気調和機の室外機の補助冷却装置のみであることを明確に限定するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項1は、発明の詳細な説明の段落番号【0008】,【0009】の「請求項1の発明の空気調和機の室外機の補助冷却装置は、」という記載事項に基づくから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

(2)訂正事項2について
(A)訂正事項2の(A)は、棒部材の構成を明確に限定するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項2の(A)は、発明の詳細な説明の段落番号【0031】の「上記取付枠20は、図1(a),(b)に示すように、抜き差し自在な棒部材としてのパイプ21と線材22とからなる組を2組備えている。この線材22の一端はパイプ21の端部に抜き差し自在に嵌め込んで、パイプ21にネジ23で固定している。」という記載事項及び図1の記載内容に基づくから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
(B)訂正事項2の(B)は、取付枠の構成部材を明確に限定するために記載を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項2の(B)は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
(C)訂正事項2の(C)は、取付枠の構成部材を明確に限定すると共に、その構成部材同士の関係を明確に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項2の(C)は、発明の詳細な説明の段落番号【0012】の「上記取付枠は抜き差し自在な棒部材を少なくとも2組備え、上記取付部は上記少なくとも2組の棒部材を互いに連結している」、段落番号【0013】の「上記取付枠は、少なくとも2組の棒部材を互いに取付部で連結していてたとえばH字状または梯子状をしている」、段落番号【0031】の「上記パイプ21とパイプ21とは平行で、それらのパイプ21,21を取付部としての板24で互いに連結し、その板24にノズル27を取り付けている。また、上記線材22と線材22とは平行で、それらの線材22,22を取付部としての板25で互いに連結し、その板25にノズル28を取り付けている。」という記載事項及び図1の記載内容に基づくから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項2?7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たる。そして、この訂正事項3は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は不明りょうな記載を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項4は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、空気調和機の室外機の補助冷却装置の作用効果が不明りょうになるのを避けるために記載を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項5は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
(6)訂正事項6について
訂正事項6は、特許請求の範囲の請求項1が訂正されるのに伴って、発明の詳細な説明の段落番号【0008】の記載が整合性を失って不明りょうになるのを避けるものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項6は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

(7)訂正事項7について
訂正事項7は、訂正後の請求項1の発明の作用効果が不明りょうになるのを避けるために記載を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項7は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

(8)訂正事項8について
訂正事項8は、特許請求の範囲の請求項2が削除されるのに伴って、発明の詳細な説明の段落番号【0012】の記載が整合性を失って不明りょうになるのを避けるために、段落番号【0012】の記載を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項8は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
(9)訂正事項9について
訂正事項9は、特許請求の範囲の請求項1が訂正されるのに伴って、訂正後の請求項1に係る発明の作用効果が不明りょうになるのを避けるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項9は、図1の記載内容に基づくから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

(10)訂正事項10について
訂正事項10は、特許請求の範囲の請求項3?7が削除されたのに伴って、その発明の詳細な説明の段落番号【0014】?【0027】の記載が整合性を失って不明りょうになるのを避けるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項10は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

(11)訂正事項11について
(A)訂正事項11の(A)は、補助冷却装置19の作用効果が不明りょうになるのを避けるために記載を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項11の(A)は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
(B)訂正事項11の(B)は、熱交換器の参照番号の誤記を訂正するものであるから、誤記の訂正に当たる。そして、この訂正事項11の(B)は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

(12)訂正事項12について
訂正事項12は、補助冷却装置19の作用効果が不明りょうになるのを避けるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項12は、図1の記載内容に基づくから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
(13)訂正事項13について
訂正事項13は、特許請求の範囲の請求項1が訂正されるのに伴って、訂正後の請求項1の実施の形態が不明りょうになるのを避けるために記載を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項13は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

(14)訂正事項14について
訂正事項14は、取付枠の参照番号の誤記を訂正するものであるから、誤記の訂正に当たる。そして、この訂正事項14は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

(15)訂正事項15について
訂正事項15は、本願発明が訂正後の請求項1のみに明確に限定されるのに伴って、発明の実施の形態が不明りょうになるのを避けるために、本願発明の範囲に入らない例を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項15は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

(16)訂正事項16について
訂正事項16は、本願発明が訂正後の請求項1のみに明確に限定されるのに伴って、発明の実施の形態が不明りょうになるのを避けるために、本願発明の範囲に入らない例を参考例に訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項16は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

(17)訂正事項17について
訂正事項17は、参考例の補助冷却装置29の作用効果が不明りょうになるのを避けるために記載を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項17は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

(18)訂正事項18について
(A)訂正事項18の(A)は、発明の詳細な説明の段落番号【0047】が訂正されるのに伴って、段落番号【0056】の記載が整合性を失って不明りょうになるのを避けるために、段落番号【0056】の記載を訂正後の段落番号【0047】の記載に合わせて訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項18の(A)は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
(B)訂正事項18の(B)は、発明の詳細な説明の段落番号【0056】の5?7行目(公報の段落番号【0056】の欄6?9行目)の「この場合、室外機にケーシングに係止する線材の部分を例えばY字状にして、取付枠にノズルから噴射反力がかかっても回転しないようすればよい。」を削除するものであって、参考例の補助冷却装置29の作用効果が不明りょうになるのを避けるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項18の(B)は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
(19)訂正事項19?訂正事項21について
訂正事項19?21は、いずれも、発明の詳細な説明の段落番号【0047】が訂正されるのに伴って、段落番号【0057】?【0059】の記載が整合性を失って不明りょうになるのを避けるために、段落番号【0057】?【0059】の記載を訂正後の段落番号【0047】の記載に合わせて訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、これらの訂正事項19?21は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
(20)訂正事項22?訂正事項23について
訂正事項22?23は、いずれも、本願発明が訂正後の請求項1のみに明確に限定されるのに伴って、発明の実施の形態が不明りょうになるのを避けるために、本願発明の範囲に入らない例を参考例に訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、これらの訂正事項22?23は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
(21)訂正事項24について
訂正事項24は、訂正後の請求項1の発明の作用効果が不明りょうになるのを避けるために記載を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項24は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

(22)訂正事項25について
訂正事項25は、特許請求の範囲の請求項1が訂正されるのに伴って、発明の詳細な説明の段落番号【0072】の記載が整合性を失って不明りょうになるのを避けるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項25は、図1の記載内容に基づくから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

(23)訂正事項26について
訂正事項26は、本願発明が訂正後の請求項1のみに明確に限定されるのに伴って、発明の詳細な説明の段落番号【0077】?【0080】の記載が整合性を失って不明りょうになるのを避けるために削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項26は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
(24)訂正事項27について
訂正事項27は、本願発明が訂正後の請求項1のみに明確に限定されるのに伴って、本願発明の実施例と参考例との混同を避けるために行うものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。そして、この訂正事項27は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

3.まとめ
以上のとおりであるから、上記各訂正事項は、特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合し、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合する。
よって、被請求人が請求した訂正を認める。


第6 本件特許発明
「第5」に記載したとおり被請求人が請求した訂正が認められたので、特許第3009874号に係る発明は、平成19年1月1日付け訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下、「本件特許発明」という。)。

「【請求項1】 熱交換器(12)に水を散布するノズル(27,28)と、
互いに抜き差し自在な棒部材(21,22)とこの棒部材(21,22)に上記ノズル(27,28)を取り付ける取付部(24,25)とを有する取付枠(20)とを備え、
上記取付枠(20)は、上記抜き差し自在な棒部材(21,22)を互いに平行に2組備え、上記平行な2組の棒部材(21,22;21,22)の夫々の上端部が室外機(10)のケーシング(11)の上部に取り付けられ、かつ、上記平行な2組の棒部材(21,22;21,22)の夫々の下端部が上記室外機(10)の上記ケーシング(11)の下部に取り付けられるようになっており、
上記取付部(24,25)は上記平行な2組の抜き差し自在な棒部材(21,22;21,22)を互いに連結している板であり、上記板に上記ノズル(27,28)が取り付けられており、
上記取付枠(20)は、上記平行な2組の抜き差し自在な棒部材(21,22;21,22)と、上記板である上記取付部(24,25)とでH字状または梯子状をしていることを特徴とする空気調和機の室外機の補助冷却装置。 」


第7 当審が通知した無効の理由についての判断
1.無効の理由(1)について
訂正事項4、5、7、10、11、17、24、26のとおり、本件特許発明がノズルの熱交換器に対する位置を調整できる旨の記載が削除されたので、この点の無効の理由は、解消された。

2.無効の理由(2)について
訂正事項2のとおりに請求項1が減縮され、また、訂正事項3により、請求項1以外の請求項は、全て削除された。
当該請求項1の記載事項で「ノズルからの水の噴射反力がかかっても、回転することがない」(段落【0013】、【0072】)という作用、効果が奏されるものと認めることができる。また、この訂正事項2により、棒部材は2組と特定されている。訂正事項2により、棒部材、取付部、ノズルの関連構成は、十分明確といえる。
よって、この点の無効の理由も解消された。

3.無効の理由(3)について
訂正事項2のとおりに請求項1が減縮され、また、訂正事項3により、請求項1以外の請求項は、全て削除されたから、「固定用スリーブ」は、発明を特定するために必要な事項ではなくなったから、この点の無効の理由も解消された。

4.無効の理由(4)について
訂正事項22、23、27のとおり、図4,5は、本件特許発明の実施の形態ではなくなったから、この点の無効の理由も解消された。

5.まとめ
以上のとおりであるから、当審において通知した無効の理由は、全て解消され、この理由では、本件特許発明に対する特許を無効とすることはできない。


第8 請求人が申し立てた無効とすべき理由についての当審の判断
1.各甲号証に記載された事項
(1)甲第1号証に記載された事項
請求人の提出した甲第1号証(米国特許第4,240,265号明細書)には、次の事項が図面と共に記載されている。
なお、甲第1号証は、英文の記載箇所の日本語翻訳文に基づいて認定するものであるが、被請求人から特に日本語翻訳文について意見は述べられていない。

ア.「本発明の装置は、コンデンサーの熱交換部分に対して微粒ウォーターミストを噴霧するために、空気調和機のコンデンサーにスプレーノズルを容易に取り付け、コンデンサーの熱交換部分に対して適切にスプレーノズルを位置決めするための手段を有する。」(第1欄53行目?58行目)

イ.「ワイヤー・ハンガーまたは支持ユニット14はスプレーノズル18を支持し、コンデンサー12にスプレーノズル18を取付ける。ワイヤー・ハンガー14は、各端部にループ14bを形成する長尺基部14aを備えている。U字型の弾性軸14cが、各ループ14b内に通っている。U字型の軸14cはそれぞれ、長尺基部14aに係合するアーチ型端部14dを備えている。U字型の軸14cは、その両端に、間隔を置いた一対の係止部14eを有している。係止部14eは、図2及び3に示されるように、ハンガー14を支持すべく、コンデンサー12の流体コンダクタ24のような流体コンダクタに引っ掛けるよう構成されている。長尺基部14aは、図2に示すように、間隔を置いた係止部14eが流体コンダクタ24に対して任意に位置決めされるように、任意に曲げることができる。」(第2欄26行目?41行目)

ウ.「ループ14b内でのU字型の軸14cの弾性により、また、アーチ型端部14dと基部14aとの係合により、係止部14eが流体コンダクタ24と係止状態にあるとき、U字型の軸14cが基部14aに対して所望の位置に保持される。長尺基部14aは、その中央部にアーチ形のクランプ部分14fを有しており、このクランプ部分は、スプレーノズル18を支持するためにこれを部分的に包含し、流体コンダクタ24及びフィン26上に対して所望の噴霧パターンで噴霧を方向づけるために、スプレーノズル18を定位置に保持する。」(第2欄44行目?55行目)

エ.「例えば、ワイヤー・ハンガー14は、図6に示すように、コンデンサ75の保護グリルに支持されていてもよいし、あるいは、コンデンサの他の部分、またはそれに隣接する手段によって支持されていてもよい。」(第4欄29行目?33行目)

(2)甲第2号証に記載された事項
同じく甲第2号証(米国特許第4,685,308号明細書)及び甲第2号証-2(米国特許第4,542,627号明細書)には、次の事項が図面と共に記載されている。 なお、甲第2号証及び甲第2号証-2は、いずれも、英文の記載箇所の日本語翻訳文に基づいて認定するものであるが、被請求人から特に日本語翻訳文について意見は述べられていない。

ア.「ワイヤ410は、所望の形状に合わせて曲げることができる。さらに、ワイヤ410は、ノズル406を所望の位置に位置決めするため、エアコン90に取付けることができる。」(甲第2号証の第7欄36行目?39行目、甲第2号証-2の第6欄39行目?42行目)

(3)甲第3号証に記載された事項
同じく甲第3号証(米国特許第4266406号明細書)には、次の事項が図面と共に記載されている。
ア.「複数の硬質チューブ40の1番目は、接続部36の反対側の端に螺合接続される。一方残りの他のチューブは、そこから、スリーブ42によって螺合係合されて延設されている。」(第4欄2行目?5行目)

(4)甲第4号証に記載された事項
同じく甲第4号証(特開昭50-117246号公報)には、次の事項が図面と共に記載されている。

ア.「上サッシ3と、この上サッシ3と同外形状の長窓用サッシバー5とを継手を介し接続し、上記長窓用サッシバー5の他端に下サッシ4を挿入し長手方向長さを調整し固定しウインドフアンを取付ける長窓用サッシにおいて、上記上サッシ3と長窓用サッシ5のそれぞれの接続端部を外側継手6内に嵌入し、接続固定することを特徴とするウインドフアンの長窓用サッシ。」(特許請求の範囲)

イ.「6は外側継手で、第2図ないし第4図に示す如く、上サッシ3と長窓用サッシバー5との端面を衝き合わせその外側で包んで接続する。
従って第3図に示す如く、外側継手6のほぼ1/2の深さまで上サッシ3と長窓用サッシバー5を両方から挿入し、上下に調整しても支障のない位置にねじ(図示せず)などで固定しておく。
上記のように本発明は、長窓用サッシバーを使用することにより長窓用取付補助枠を不要とする。また、従来の長窓用サッシバーを用いた時のように130cm?160cmの長窓に取付けるとき、従来と異り上サッシと長窓用サッシバーとの接続固定を衝き合わせ部の外部を外側継手に嵌入し固定し、長窓用サッシバーの他端に挿入する下サッシの上下移動に対しても長窓用サッシバーの内側にこれを阻止することがないようにした。このため従来のように標準形取付枠の下サッシが長窓用サッシバーの内部の継手に当接して取付枠の高さ調整が出来なくなるようなことは無くなり、130cmなみ190cmの長窓にも取付けることが出来るものである。」(第2頁左上欄4行目?右上欄5行目)

(5)甲第5号証に記載された事項
同じく甲第5号証-1(特開昭56-97612号公報)、甲第5号証-2(特開昭56-156510号公報)及び甲第5号証-3(特開昭56-66506号公報)には、管をカップリングの両端に挿入して固定することが記載されている。

2.甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、「第8 1.(1)」に摘記した事項及び図面の記載内容からみて、スプレーノズルが空気調和機のコンデンサーを補助的に冷却するものであることは、当業者にとって明らかであることをふまえると、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認めることができる。

「空気調和機のコンデンサーに水を散布するスプレーノズルと、
各端部にループを形成した長尺基部と、このループ内を通って長尺基部に係合するアーチ型端部と両端に間隔を置いた一対の係止部とを備えたU字型の弾性軸を有し、この長尺基部に上記スプレーノズルを取り付けるクランプ部分を有するワイヤー・ハンガーとを備え、
上記係止部を上記コンデンサーの流体コンダクタに係止させられるようになっている空気調和機のコンデンサーの補助冷却装置。」

3.請求人が主張する無効理由について
(1)本件特許発明と甲1発明の対比。
請求人が主張する無効理由は、いずれも、甲第1号証に記載された発明を基礎として発明の新規性又は進歩性がないことをいうものであるから、まず、本件特許発明と甲1発明を対比する。
甲1発明の「コンデンサー」、「スプレーノズル」は、各々、本件特許発明の「熱交換器」、「ノズル」に相当する。甲1発明の「コンデンサー」は、また、通常、空気調和機の室外機として設置されるものである。
甲1発明の「ワイヤー・ハンガー」は、ノズルを熱交換器に取り付けるためのものであって、その「長尺基部」と「弾性軸」は、互いに抜き差し自在であり、また棒状の部材ということができる。さらに、甲1発明の「ワイヤー・ハンガー」の「クランプ部分」は、本件特許発明1の「取付部」に相当する。これらのことからすると、甲1発明の「ワイヤー・ハンガー」は、本件特許発明の「取付枠」に相当するといえる。
また、甲1発明の「係止部」は、棒状の部材の「上端部」と「下端部」にあるということができて、かつ、室外機に取り付けられるものと解せる。
そうしてみると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
「熱交換器に水を散布するノズルと、
互いに抜き差し自在な棒部材とこの棒部材に上記ノズルを取り付ける取付部とを有する取付枠とを備え、
上記取付枠は、上記棒部材の上端部と下端部が室外機に取り付けられるようになっている空気調和機の室外機の補助冷却装置 」

[相違点1]
本件特許発明において、取付枠は、上記抜き差し自在な棒部材を互いに平行に2組備え、取付部は上記平行な2組の抜き差し自在な棒部材を互いに連結している板であり、上記板に上記ノズルが取り付けられており、上記取付枠は、上記平行な2組の抜き差し自在な棒部材と、上記板である上記取付部とでH字状または梯子状をしているのに対して、甲1発明では、取付枠がそのような構成でない点。

[相違点2]
取付枠は、本件特許発明において、ケーシングの上部と下部に取り付けられるものであるのに対して、甲1発明では、流体コンダクタに取り付けられるものである点。

(2)相違点1,2についての判断。
(2-1)各甲第号証につき、上記相違点(主に相違点1)について検討していく。

ア.甲第1号証の記載事項(「第8 1.(1)」)及び図面の記載内容の限りでは、1つのワイヤー・ハンガーを構成する「長尺基部」と「弾性軸」を2組として、各組を連結する部材にノズルを取り付けることは、明示的に記載されていないし、また、示唆されているともいえない。
すなわち、甲第1号証に記載されたものにおいて、単純にワイヤー・ハンガーを2組設けるとすると、それぞれにノズルが取り付けられているから、全体として2つのノズルを備えることになるし、また、あくまでノズルが1つであるとすると、わざわざ1つのワイヤー・ハンガーを構成する「長尺基部」と「弾性軸」を2組とすることを動機付ける事項は見あたらない。
したがって、上記相違点1に係る本件発明の構成は、当業者が甲第1号証の記載事項から導き出せるものではないから、上記相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明が甲第1号証に記載された発明と同一であって特許法第29条1項第3号の規定により特許を受けることができないとはいえない。
イ.甲第2号証及び甲第2号証-2の記載事項(「第8 1.(2)」)及び図面の記載内容からは、図面に、それぞれ1つのノズルが取り付けられるワイヤーを1つのエアコンの別々の部位に合計2つ取り付けることが示されている。しかしながら、これらの甲第2号証及び甲第2号証-2にあっても、ノズルの取付枠を平行な2組の棒部材とノズルの取付部とでH字状または梯子状とすることを明示的に開示せず、またそのようなことを示唆するものでもない。

ウ.甲第3号証の記載事項(「第8 1.(3)」)及び図面の記載内容からは、図面に、スプレー44を下端に設けたチューブ40が圧縮機ユニットAの上部に取り付けられていることは見て取れるものの、スプレー(ノズル)の取付枠を平行な2組の棒部材とノズルの取付部とでH字状または梯子状とした取付枠することは、明示的に開示されていないし、また示唆されてもいない。

エ.甲第4号証の記載事項(「第8 1.(4)」)及び図面の記載内容により開示されたものは、ウインドフアンの長窓用サッシに関するものであって、空気調和機の室外機にノズルを取り付けることとの関係を全く欠いているし、仮に、上サッシ及び長枠用サッシバーと下サッシを互いに抜き差し自在な棒部材と見立てて、それが平行に2組あって互いに連結されていると解したとしても、その連結部材に噴射反力が発生するノズルのような部材を取り付けることまでが示唆されるものでもない。
請求人は、審判請求書において、甲第4号証には「2個の固定用スリーブに挿入された棒部材を互いに連結した取付枠」が記載されており、さらに、この甲第4号証に示されるように、棒部材からなる取付枠に安定(剛性)を求めて複数組の棒部材を互いに連結してH字状、井桁状、方形状、梯子状等に組むことは、ノズル取付枠にとどまらず、当業者にとって日常的課題に容易に対応した設計変更でしかない旨主張するが、甲第4号証に記載されている事項あるいはそれから読み取れる事項は上述のものであるから、甲第4号証をもって相違点1に係る本件特許発明の構成が当業者にとって容易に採用し得たとすることはできない。

オ.甲第5号証-1、甲第5号証-2、甲第5号証-3の記載事項(「第8 1.(5)」)及び図面の記載内容により開示されたものは、管のカップリング関するものであって、管同士を抜き差し自在な棒部材と見立てることは可能であっても、それを互いに平行に2組設けそれらを互いに連結することまでが示唆されるものではない。

以上、甲第1号証?甲第5号証-3を主に相違点1との関連について順次検討したが、上記相違点1は、甲第1号証に実質的に記載されているものでもないので本件特許発明は甲1発明と同一であるとはいえず、また、甲第2号証?甲第5号証-3に開示されているものでなく、しかも、示唆されているものでもないので、本件特許発明は甲第1発明及び甲第2号証?甲第5号証-3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるともいえない。

(2-2)そこで、進んで、請求人が提出した参考資料2?参考資料11につき、上記相違点(主に相違点1)について検討する。

カ.参考資料2?4について。
これらの参考資料は、請求人が、弁駁書において、棒部材同士を固定する場合に用いるスリーブに関する周知技術を示すために提示したものであって、参考資料2は、角材の連結器具に係るものであり、参考資料3は、管継手に係るものであり、また、参考資料4は、テント用継ポールに係るものである。これらの参考資料により開示されるものが、互いに抜き差し自在な棒部材に関するものであるとしても、それらを互いに平行に2組設けそれらを連結した部材に噴射反力が発生するノズルのような部材を設けることまでもが示唆されるものではない。
そうしてみると、参考資料2?4に記載された技術的事項を考慮しても、上記相違点1に係る本件特許発明の構成は、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
キ.参考資料5?7について。
これらの参考資料は、請求人が、弁駁書において、「左右の長さ調整可能な棒部材を梯子状に連結する」周知技術を示すために提示したものであって、参考資料5は、旅行鞄の牽引装置に係るものであり、参考資料6は、衣桁に係るものであり、参考資料7は、伸縮式のハンガー掛け、それに用いる組立式家具用のジョイント及び組立式家具用のベースに係るものである。
それら参考資料5?7の図面を見ると、たしかに「左右の長さ調整可能な棒部材を梯子状に連結する」こと自体を理解することは可能であるのだが、そこでの連結のための部材は、噴射反力が発生するノズル等の部品を支持するためのものではない。
また、これら参考資料5?7に開示された技術的事項を組み合わせようとする相手たる甲第1号証の「ワイヤー・ハンガー」は、それ1組で1つのノズルを支持する態様のみが具体的に開示されているというだけでなく、それを2組用いて1つのノズルを支持するような構成に変更することが容易にできるとは考えられない。すなわち、本件特許発明でいう「取付部」に相当する甲1発明の「クランプ部分」で2つの長尺基部を連結するような具体的構造は、当業者が容易に想起し得るものではない。
そうしてみると、参考資料5?7に記載された技術的事項を考慮しても、上記相違点1に係る本件特許発明の構成は、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
ク.参考資料8?11について
これらの参考資料8?11は、請求人が、上申書において、ノズル等の噴出具を噴射反力に抗して支持することを目的として、『2本の縦棒部材に横板部材(ないしその横板部材に相当する2本の横棒部材)を架設して枠構造を構成し、この枠構造における横板部材(ないし2本の横棒部材)にノズル等の噴出具を取り付ける形態の支持構造』が周知慣用技術であることを示すために提示したものである。
そこで、これらの参考資料8?11が開示するものを逐次検討していく。
まず、参考資料8からは、消防用ホース延長カーに関し、長方形にパイプを組んで構成した本体フレーム2における2本の平行な縦パイプ部分に2本の平行な横パイプ部分を架設し、この2本の横パイプ部分に放水銃3を取り付けた、H字状または梯子状の支持構造が見て取れる。しかも、放水銃からの放水時の反動圧も考慮されている。しかしながら、この放水銃3が取り付けられる本体フレーム2とは、消防用ホース延長カー本体を構成するものであって、他の装置に取り付けるためのものではなく、また、その縦パイプの長さが変えられるものでもない。
次に、参考資料9からは、噴霧装置に関し、枠体1における2本の平行な縦棒(ないし縦パイプ)部分に2枚の横帯部材を上下に位置して架設し、これら横帯部材に対して、噴霧ノズル5を上下複数段に設けた送液管4を縦姿勢に取り付けた支持構造が見て取れる。しかしながら、噴霧ノズル5が取り付けられるのは、横帯部材ではなく、送液管であるので、そもそも、請求人が述べるような支持構造に該当するとは言い難いし、枠体1は、噴霧装置本体を構成するものであって、他の装置に取り付けるためのものではなく、また、その縦棒の長さが変えられるものでもない。
さらに、参考資料10には、生簀洗浄装置に関し、生簀上枠1b及び生け簀底枠1cに渡して取り付ける案内枠2aにノズル支持体3aを取り付けるのに、「ロ」の字状の枠構造のノズル支持体3aを案内枠2aにおける2本の縦長レールに対し昇降操作自在に架設し、また、そのノズル支持体3aに圧力水噴射ノズル3bを取り付けるのに、「ロ」の字状のノズル支持体3aにおける2本の平行な縦辺部に台状の横板部材を架設し、この横板部材に圧力水噴射ノズル3bを取り付けた支持構造が示されている。しかしながら、ノズル支持体3aは、案内枠の内部で昇降自在であるといっても、他の装置に取り付けられるものとはいえず、また、その長さが変えられるものでもない。
最後に、参考資料11からは、移動式バンドル洗浄装置に関し、上下に配置した水平走行レール9a、9bに対し横方向へ走行自在に懸架した走行水洗ユニット21に水洗ノズル2を取り付けるのに、走行水洗ユニット21における縦姿勢の2本のレール4a、4bに板状の可動台3を昇降操作自在に架設し、この可動台3に水洗ノズル2を取り付けた支持構造が示されている。しかしながら、走行水洗ユニット21自体は、2本の互いに平行なレール4a、4bを水洗ノズル2を取り付けた可動体3等で連結した、H字状または梯子状の構造のものとして理解し得るとしても、それは2本の水平走行レール9a、9bに着脱可能となっているものであって、レール4a、4bの長さが変えられるものではない。
そして、これら参考資料8?11に開示された技術的事項を組み合わせようとする相手たる甲第1号証の「ワイヤー・ハンガー」は、それ1組で1つのノズルを支持する態様のみが具体的に開示されているというだけであり、あえてそれを2組用いて1つのノズルを支持するような構成に変更することが容易にできるとは考えられない。すなわち、本件特許発明でいう「取付部」に相当する甲1発明の「クランプ部分」で2つの長尺基部を連結するような具体的構造は、参考資料8?11を考慮しても、当業者が容易に想起し得るものではない。
そうしてみると、参考資料8?11に記載された技術的事項を考慮しても、上記相違点1に係る本件特許発明の構成は、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(2-3)以上をふまえると、甲第2号証?甲第5号証-3及び参考資料2?参考資料11をもってしても、上記相違点1に係る本件特許発明の構成を当業者が容易に採用し得たということはできない。
そして、本件特許発明は、上記相違点1に係る構成を具備することにより、ノズルからの水の噴射反力があっても、取付枠が回転することがない、という効果を奏するものである。

よって、本件特許発明は、甲1発明と同一であるとはいえず、また、甲1発明及び甲第2号証?甲第5号証-3、参考資料2?参考資料11に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

4.まとめ
したがって、本件特許発明は、請求人が提出した甲第1号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものには該当せず、また、請求人が提出した甲第1号証?甲第5号証-3及び参考資料2?11によっては、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものには該当せず、結局、本件特許発明に対する特許が特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものであるという請求人の主張は、失当である。


第9 むすび
以上のとおり、本件特許発明は、請求人の主張する理由及び証拠方法によっても、当審において通知した無効の理由によっても、本件特許発明(訂正後の請求項1に係る発明)に対する特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
空気調和機の室外機の補助冷却装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】熱交換器(12)に水を散布するノズル(27,28)と、
互いに抜き差し自在な棒部材(21,22)とこの棒部材(21,22)に上記ノズル(27,28)を取り付ける取付部(24,25)とを有する取付枠(20)とを備え、
上記取付枠(20)は、上記抜き差し自在な棒部材(21,22)を互いに平行に2組備え、上記平行な2組の棒部材(21,22;21,22)の夫々の上端部が室外機(10)のケーシング(11)の上部に取り付けられ、かつ、上記平行な2組の棒部材(21,22;21,22)の夫々の下端部が上記室外機(10)の上記ケーシング(11)の下部に取り付けられるようになっており、
上記取付部(24,25)は上記平行な2組の抜き差し自在な棒部材(21,22;21,22)を互いに連結している板であり、上記板に上記ノズル(27,28)が取り付けられており、
上記取付枠(20)は、上記平行な2組の抜き差し自在な棒部材(21,22;21,22)と、上記板である上記取付部(24,25)とでH字状または梯子状をしていることを特徴とする空気調和機の室外機の補助冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気調和機の室外機の補助冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、空気調和機の室外機としては、図3に示すようなものがある。この室外機1はケーシング6内に熱交換器2と図示ない圧縮機とファンとを配置している。この熱交換器2に水を散布するために、ケーシング6に補助冷却装置5を設けている。この補助冷却装置5は、ノズル3と、このノズル3をケーシング6に取り付けるための取付枠7と、ノズル3に水を供給する給水管8と、電磁弁等を内蔵して給水管8への水の供給を制御する制御部9とからなる。上記取付枠7は、矩形の網状の線材71と、この線材71に支持されてノズル3が固定される板4とからなって、熱交換器2の外部に露出した面と略同じ大きさを有する。すなわち、上記取付枠7は熱交換器2の開口部の左右方向の幅と上下方向の高さと略同じ寸法を有して、ノズル3の熱交換器2に対する上下左右方向の位置を定めて、上部のフック状の係止部7a,7aによってケーシング6の上部に係止し、下部のフック状の係止部7b,7bによってケーシング6の下部に係止している。
【0003】
そして、上記ノズル3から円錐状または角錐状に水を噴出して、熱交換器2の露出部に水を散布して、水の気化熱を利用して熱交換器2を効果的に冷却して、空気調和機の冷房能力、効率を向上させるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の空気調和機の室外機の補助冷却装置5は、取付枠7が熱交換器2の露出した部分の大きさに略等しいため、その取付枠7に適合した室外機1にしか取り付けることができず、他の機種の室外機に取り付けることができないという問題があった。つまり、この補助冷却装置5は汎用性がないという問題があった。
【0005】
【0006】
また、上記補助冷却装置5では、取付枠7が熱交換器2の露出部全面を覆うため、つまり取付枠7の大きさが大きいため、材料費、製造コストが高くなり、かつ、梱包費、保管費、運送費が高くなるという問題があった。
【0007】
そこで、この発明の目的は、種々の室外機に適合できて汎用性が高く、小型で安価に製造でき、梱包費、保管費、運送費などを減少できる空気調和機の室外機の補助冷却装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明の空気調和機の室外機の補助冷却装置は、
熱交換器(12)に水を散布するノズル(27,28)と、
互いに抜き差し自在な棒部材(21,22)とこの棒部材(21,22)に上記ノズル(27,28)を取り付ける取付部(24,25)とを有する取付枠(20)とを備え、
上記取付枠(20)は、上記抜き差し自在な棒部材(21,22)を互いに平行に2組備え、上記平行な2組の棒部材(21,22;21,22)の夫々の上端部が室外機(10)のケーシング(11)の上部に取り付けられ、かつ、上記平行な2組の棒部材(21,22;21,22)の夫々の下端部が上記室外機(10)の上記ケーシング(11)の下部に取り付けられるようになっており、
上記取付部(24,25)は上記平行な2組の抜き差し自在な棒部材(21,22;21,22)を互いに連結している板であり、上記板に上記ノズル(27,28)が取り付けられており、
上記取付枠(20)は、上記平行な2組の抜き差し自在な棒部材(21,22;21,22)と、上記板である上記取付部(24,25)とでH字状または梯子状をしていることを特徴としている。
【0009】
請求項1の発明の空気調和機の室外機の補助冷却装置によれば、上記抜き差し自在な棒部材と取付部とを有する取付枠にノズルを取り付けている。したがって、上記棒部材を抜き差しして、取付枠の寸法を調整することによって、この取付枠は種々の熱交換器に取り付けることができる。したがって、この補助冷却装置は汎用性が高いという利点を有する。
【0010】
【0011】
また、この補助冷却装置は、取付枠の棒部材が抜き差し自在であるので、この棒部材を差し込んだ状態で、あるいは外した状態で、つまり、コンパクトな状態で、梱包、保管、運送をすることができる。したがって、梱包費、保管費、運送費を減少できる。
【0012】
【0013】
また、上記取付枠は、2組の棒部材を互いに板である取付部で連結してH字状または梯子状をしていて、その板である取付部にノズルが取り付けられているから、ノズルからの水の噴射反力がかかっても、回転することがない。
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0029】
図1(a)に示すように、室外機10のケーシング11内に熱交換器12と図示しないファンおよび圧縮機を収納している。
【0030】
上記ケーシング11には、熱交換器12の外部に露出した面の略中央の部分に対向するように、補助冷却装置19を設けている。この補助冷却装置19は、熱交換器12の外部に露出した部分の幅よりも狭い幅を有する梯子状の取付枠20と、その取付枠20に搭載されたノズル27,28と、このノズル27,28に水を導く図示しない配管を備えている。
【0031】
上記取付枠20は、図1(a),(b)に示すように、抜き差し自在な棒部材としてのパイプ21と線材22とからなる組を2組備えている。この線材22の一端はパイプ21の端部に抜き差し自在に嵌め込んで、パイプ21にネジ23で固定している。上記パイプ21は鉤状に屈曲しており、また、上記線材22も鉤状に屈曲している。上記パイプ21とパイプ21とは平行で、それらのパイプ21,21を取付部としての板24で互いに連結し、その板24にノズル27を取り付けている。また、上記線材22と線材22とは平行で、それらの線材22,22を取付部としての板25で互いに連結し、その板25にノズル28を取り付けている。
【0032】
一方、上記室外機10のケーシング11の上部に設けた切り起こし穴11a,11aにはパイプ21,21の端部21a,21aを挿入し、ケーシング11の下端部には線材22,22の下端のフック状の係止部22a,22aを係止している。
【0033】
そして、上記ノズル27,28から熱交換器12に水を噴出して、その熱交換器12の表面およびそのフィンの間の隙間に水を散布することによって、この水の気化熱を利用して熱交換器12を効果的に冷却して、熱交換器12の凝縮能力を向上させて、空気調和機の冷房能力を高め、効率を高めるようにしている。
【0034】
上記構成の空気調和機の室外機の補助冷却装置19によれば、取付枠20の幅は熱交換器12の外側に露出している部分の幅よりも狭い。したがって、この取付枠20の幅よりも広い幅を有する露出部を有する熱交換器を有する室外機であれば、どのような幅の室外機にもこの取付枠20を取り付けることができる。
【0035】
また、上記抜き差し自在なパイプ21と線材22との挿入位置を調整して、そのパイプ21と線材22とをネジ23で固定することによって、取付枠20の高さ方向の寸法を調整することができる。したがって、異なる高さを有する室外機にも、この補助冷却装置19の取付枠20を取り付けることができる。
【0036】
したがって、この補助冷却装置19は左右上下の寸法が異なる種々の室外機に取り付けることができて、汎用性の高いものである。
【0037】
また、上記取付枠20は幅が熱交換器2の幅よりも狭いから、取付枠20を熱交換器12に対して左右方向にずらせて、ノズル27,28の左右方向の噴射位置を調整することができる。
【0038】
また、上記取付枠20は、パイプ21とパイプ21とを板24で連結し、線材22と線材22とを板25で連結して、梯子状にしていて、その板24,25にノズル28,29が取り付けられているので、ノズル27,28からの噴射反力がかかっても、取付枠20が回転することがない。
【0039】
また、この補助冷却装置19の取付枠20は、図3に示す従来の矩形の網状の取付枠7に比べて小型であるので、材料費が少なくなって、安価に製作できる。
【0040】
また、この補助冷却装置19の梱包、保管、運送時には、取付枠20の抜き差し自在なパイプ21と線材22とを取り外すことによって、この補助冷却装置19をコンパクトな状態で梱包、保管、運送をすることができて、これらの費用を減少できる。
【0041】
【0042】
また、上記実施の形態では、抜き差し自在の棒部材としてパイプ21と線材22を用いたが、2つの線材を用いて、一方の線材の端部に筒状部を形成し、この筒状部に他方の線材を抜き差し自在に嵌合してもよい。
【0043】
また、上記実施の形態では、パイプ21と線材22とをネジ23で固定しているが、パイプ21と線材22とをかしめて固定するようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施の形態では、1つの室外機10に1つの取付枠20を取り付けたが、1つの室外機に複数の取付枠を取り付けるようにしてもよい。
【0045】
【0046】
また、上記実施の形態では、室外機10のケーシング11の上部に切り起こし穴11a,11aを上下方向に設けたが、切り起こし穴はケーシングの下部に上下方向に設けてもよく、また、切り起こし穴は上下方向に設ける代わりに、ケーシングの左右端部に左右方向に設けてもよい。また、室外機のケーシングに切り起こし穴を設けずに、図3に示すように、ケーシングまたは熱交換器に直接に取付枠を係止するようにしてもよい。
【0047】
図2(a),(b),(c)は参考例の補助冷却装置29を示している。
【0048】
この補助冷却装置29は、図2(a)に示すように、梯子状の取付枠30とノズル37,38とを備え、室外機のケーシングに取り付けている。なお、以下に説明において、図1(a)に示す室外機10を援用する。
【0049】
上記取付枠30は、2つのスリーブ33,33の各両端に棒部材としての線材31,32を挿入している。そして、このスリーブ33の中央部には、図2(b)に示すように、凹部(スリーブ33の内側から見ると凸部)33aを設けて、この凹部33aに線材31,32の先端を当てて、線材31,32の位置を定めている。さらに、図2(c)に示すように、スリーブ33の両端部をかしめて凹部33b,33bを形成して、この凹部33b,33bで線材31,32をスリーブ33に固定している。
【0050】
一方、上記取付枠30の平行な線材31と線材31とを板材34で連結し、この板材34の中央部にノズル37を固定している。同じく、上記平行な線材32と線材32とを板材35で連結し、この板材35の中央部にノズル38を固定している。上記線材31,31は全体的に鉤状に屈曲して、その先端31a,31aを、図1(a)に示すケーシング11の上部の切り起こし穴11a,11aに挿入するようにしている。また、上記線材32,32の下端のフック状の係止部32a,32aは、図1(a)に示すケーシング1の下部に係止するようにしている。
【0051】
上記構成の補助冷却装置29の取付枠30も、図1に示す実施の形態と同様に、熱交換器12の露出部の全面を覆うものでなくて一部のみを覆うものなので、その取付枠30よりも幅が広い露出部を有する種々の熱交換器の適宜な位置に配置して、種々のケーシングに取り付けることができる。また、上記スリーブ33自体の長さ、あるいは、スリーブ33への線材31,32の挿入長さ、あるいは、線材31,32自体の長さを調整することによって、取付枠30の上下方向の高さを調整できる。したがって、この補助冷却装置29は、種々の寸法の室外機に取り付けることができて、汎用性の高いものである。
【0052】
【0053】
また、上記取付枠30は、線材31と線材31とを板34で連結し、また、線材32と線材32とを板25で連結して、梯子状にしているので、ノズル37,38からの水の噴射反力がかかっても、取付枠30が回転することがない。
【0054】
また、この補助冷却装置29の取付枠30は、図3に示す従来の矩形の網状の取付枠7に比べて小型であるので、材料費が少なくなって、安価に製作できる。
【0055】
また、この補助冷却装置29の梱包、保管、搬送時には、取付枠30のスリーブ33から線材31,32を取り外すことによって、この補助冷却装置の取付枠29がコンパクトになって、梱包費、保管費、運送費が安くなる。
【0056】
上記参考例では、取付枠30を、2個の平行な固定用スリーブ33,33と線材31,32によって梯子状に形成しているが、1個だけの固定用スリーブの両端に線材を挿入して、あるいは、一直線上に2以上の固定用スリーブと3以上の線材を配置して取付枠を形成してもよい。
【0057】
また、上記参考例では、スリーブ33と線材31,32とを凹部33b,33bで固定しているが、スリーブ33と線材31,32とをネジで固定するようにしてもよい。
【0058】
また、上記参考例では、1つの室外機10に1つの取付枠29を取り付けたが、1つの室外機に複数の取付枠を取り付けるようにしてもよい。
【0059】
また、上記参考例では、ノズル37,38の取付部として板34,35を用いたが、線材によって取付部を形成してもよい。
【0060】
図示しないが他の実施の形態の補助冷却装置では、ノズルに水を供給する給水管が長さ調節可能になっている。この給水管がシールされた状態で抜き差しできるようになっている。
【0061】
したがって、このノズルから熱交換器に水を散布する位置を給水管の長さを調節して調整することができる。したがって、この補助冷却装置は汎用性が高い。また、給水管の長さを縮めて、梱包、保管、運送ができるので、それらの費用が安くなる。
【0062】
なお、長さを調節できる給水管としては、可撓性の給水管を屈曲させて、その端から端までの長さを調節するようにしてもよい。
【0063】
図4は参考例の補助冷却装置の寸法調整方法を示す。
【0064】
図4に示すようにまず、ノズル3を支持する取付枠57の一部57aを切除する。
【0065】
次に、上記取付枠57の残された部分57b,57cを接続手段としての図2(b),(c)に示す圧着スリーブ33で接続して枠寸法を縮める。こうして、補助冷却装置を小さな室外機に適合させることができる。
【0066】
図5は参考例の補助冷却装置の寸法調整方法を示す。
【0067】
図5に示すように、まずノズル3を支持する取付枠67を切断する。
【0068】
この取付枠67の切断で分かれた部分67aと部分67bとの間に間挿部材としての棒部材68を一直線になるように挿入する。そして、上記取付枠67の部分67a,67bと上記棒部材68の両端とを接続手段としての図2(b),(c)に示すスリーブ33で接続する。こうして、取付枠67の枠寸法を延長することができ、この補助冷却装置を大きな室外機に適合させることができる。
【0069】
【発明の効果】
以上より明らかなように、請求項1の発明の空気調和機の室外機の補助冷却装置は、抜き差し自在な棒部材と取付部とを有する取付枠にノズルを取り付けているので、棒部材を抜き差しして、取付枠の寸法を調整することができ、したがって、この取付枠を種々の熱交換器に取り付けることができ、汎用性が高いという利点を有する。
【0070】
【0071】
また、請求項1の補助冷却装置は、取付枠の棒部材が抜き差し自在であるので、この棒部材を差し込んだ状態で、あるいは外した状態で、つまり、コンパクトな状態で、梱包、保管、運送をすることができる。したがって、梱包費、保管費、運送費を減少できる。
【0072】
また、請求項1の発明の空気調和機の室外機の補助冷却装置は、取付枠が2組の棒部材を互いに板である取付部で連結していてH字状または梯子状をしていて、その板である取付部にノズルが取り付けられているから、ノズルからの水の噴射反力がかかっても、回転することがない。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)および(b)は、この発明の1実施の形態の空気調和機の室外機の補助冷却装置の斜視図および拡大斜視図である。
【図2】図2(a),(b)および(c)は、参考例の空気調和機の室外機の補助冷却装置の斜視図、分解図および要部拡大図である。
【図3】図3は、従来例の空気調和機の室外機の補助冷却装置の斜視図である。
【図4】図4は参考例の補助冷却装置の寸法調整方法を示す図である。
【図5】図5は参考例の補助冷却装置の寸法調整方法を示す図である。
【符号の説明】
10 室外機
11 ケーシング
19 補助冷却装置
20 取付枠
21 パイプ
22 線材
23 ネジ
24,25 板
27,28 ノズル
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2007-03-22 
結審通知日 2007-03-22 
審決日 2007-03-27 
出願番号 特願平10-176330
審決分類 P 1 113・ 113- YA (F24F)
P 1 113・ 121- YA (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 水谷 万司  
特許庁審判長 岡 千代子
特許庁審判官 新海 岳
長浜 義憲
登録日 1999-12-03 
登録番号 特許第3009874号(P3009874)
発明の名称 空気調和機の室外機の補助冷却装置  
代理人 青山 葆  
代理人 小池 眞一  
代理人 青山 葆  
代理人 山崎 宏  
代理人 岡田 春夫  
代理人 山崎 宏  
代理人 山崎 宏  
代理人 北村 修一郎  
代理人 青山 葆  

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