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審決分類 |
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G09B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B |
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管理番号 | 1159633 |
審判番号 | 不服2004-20550 |
総通号数 | 92 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-10-05 |
確定日 | 2007-06-18 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第148999号「ナビゲーション装置の地図表示方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月22日出願公開、特開平10-340045〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は平成9年6月6日の出願であって、平成16年9月6日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年10月5日付けで本件審判請求がされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定] 平成16年10月5日付けの手続補正を却下する。 [理由] 本件補正は、補正前請求項2の「該指示により操作画面上の地図のみ縮尺を変更して、」との記載を「該指示により操作画面上の地図のみ縮尺を変更し、」と補正するものである。他に補正事項はなく、要するに「変更して、」との文言から「て」を削除するものである。 上記補正が、請求項削除(特許法17条の2第4項1号)又は特許請求の範囲の減縮(同項2号)の何れにも該当しないことは一見して明らかである。 補正前の記載が誤記であると解さねばならない理由はないから、誤記の訂正(同項3号)にも該当しない。 補正前記載の「て」が、記載を不明りようしていると解すべき理由もないから、明りようでない記載の釈明(同項4号)にも該当しない。そればかりか、補正前の記載が不明りようである旨の拒絶理由は通知されておらず、請求人が勝手に釈明することを特許法は許容していない。 以上によれば、本件補正は特許法17条の2第4項の規定に違反している。 [補正の却下の決定のむすび] 本件補正は特許法17条の2第4項の規定に違反しているから、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。 よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求についての判断 1.本願発明の認定 本件補正が却下され他に明細書の補正はされていないから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、願書に最初に添付した明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。なお、請求項1は補正されていないから、本件補正を却下するかどうかは、本願発明の認定には影響しない。 「ディスプレイ画面に地図を表示する地図表示方法において、 ディスプレイ画面をメイン画面とカーソル画面に分け、 2画面地図表示が要求された時、メイン画面に地図を表示すると共に、該地図上の所定エリアを示すカーソルをメイン画面に表示し、 該カーソルが指示するエリアの地図をカーソル画面に表示し、 メイン画面においてカーソルを地図に対して相対的に移動し、該カーソルの移動に伴ってカーソル画面に地図をスクロール表示することを特徴とするナビゲーション装置の地図表示方法。」 2.引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-43112号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア?オの記載が図示とともにある。 ア.「画面地図上に目的地及び出発地を設定する設定手段を設け、この設定手段から目的地及び出発地を第1地図画面又は第2地図画面の一方に設定して表示し、かつ、位置計測手段で計測した自己の現在位置を合わせて表示するとともに、前記第1地図画面又は第2地図画面の他方に、少なくとも前記位置計測手段で計測した自己の現在位置を示す・・・ナビゲーション装置。」(【請求項4】) イ.「従来例のナビゲーション装置では、操作者が所望の地図情報を、その都度、操作を行って地図格納部から読み出して画面表示を行う必要があり、その操作が面倒である。例えば、現在位置から目的地までを含む地図と、現在位置の周囲の地図(拡大地図)との間を切替える場合に、その切替えが即座にできないため、現在位置、目的地及び現在位置の確認と、現在位置の周囲の地図(拡大地図)との確認に手間取り、その使い勝手が悪いという欠点がある。」(段落【0003】) ウ.「本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、地図の表示画面上に、縮小した他の地図を画面表示でき、例えば、走行経路全体を含む地図を、現在の画面表示の詳細な地図画面上に縮小して画面表示し、その現在地と目的地及び出発地の位置関係が容易に判明する優れたナビゲーション装置の提供を目的とする。」(段落【0004】) エ.「図3において、この選択では分割/一画面表示、縮小地図(ウィンドウ)移動及び縮小地図サイズ変更の項目がLCD9で表示される(ステップ18)。ここではジョイパッド7cで分割/一画面表示中の分割を選択(矢印)し、決定スイッチ7aを押下し、この押下信号を演算/制御部3で取り込んで、その分割表示を決定する(ステップ19,20)。」(段落【0013】) オ.「図4は、この分割表示の地図画面を示す図である。図4において、LCD9の全画面に表示された詳細地図Maに現在位置Paが表示されている。この詳細地図Maの右下部に、詳細地図Ma部分を含む縮小地図Msが画面表示されている。・・・走行経路全体を含む縮小地図Msには目的地Pn、出発地Pm及び現在位置(現在の走行地点)Pbが表示されており、また、詳細地図Maに現在位置Pbが表示されているため、その現在位置Pbと目的地Pn及び出発地Pmの位置関係が容易に判明することになる。」(段落【0014】) 3.引用例記載の発明の認定 記載アでは、目的地及び出発地を表示する地図(以下「第2地図」といい、同地図を表示する部分を「第2地図画面」という。)と自己の現在位置を示す地図(以下「第1地図」といい、同地図を表示する部分を「第1地図画面」という。)のどちらが詳細地図でありどちらが縮小地図であるか特定されていないが、記載オでは第2地図が縮小地図であり、第1地図が詳細地図である旨特定されており、さらに第2地図画面に現在位置を表示することも記載されている。 記載エによれば、「分割/一画面表示」を選択することができ、第1地図画面と第2地図画面が表示されるのは分割表示が選択された場合である。 したがって、引用例にはナビゲーション装置による地図表示方法として、次のような発明が記載されていると認めることができる。 「分割表示が選択された場合に、1つのLCD画面を第1地図画面と第2地図画面に分割して表示するナビゲーション装置による地図表示方法であって、 前記第2地図画面には目的地、出発地及び現在位置を表示する縮小地図である第2地図を表示し、前記第1地図画面には現在位置及びその周囲を示す詳細地図である第1地図を表示する地図表示方法。」(以下「引用発明」という。) 4.本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定 引用発明の「1つのLCD画面」及び「分割表示が選択された場合」は、本願発明の「ディスプレイ画面」及び「2画面地図表示が要求された時」にそれぞれ相当する。 引用発明の「第2地図画面」は本願発明の「メイン画面」に相当し、引用発明の「第1地図画面」と本願発明の「カーソル画面」は、メイン画面に表示された「地図上の所定エリア」の地図を表示する画面(以下「サブ画面」という。)である点で一致する。 引用発明において「第1地図」の範囲(本願発明における、カーソル画面に表示されるエリアに相当。)は、第1地図と第2地図の縮尺比(これは、特別の操作をしない限り固定である。)及び第1地図画面のサイズで定まり、第2地図画面に表示される現在位置が定まれば、同位置を含むように第1地図の範囲が定まる。そうである以上、第2地図画面に表示される現在位置と本願発明の「カーソル」とは、サブ画面に表示するエリアを定めるための指標である点で一致する。引用発明において、第2地図画面に表示される現在位置が大きく変化すれば、それまで表示されていた第1地図から現在位置がはみ出すことになり、他方、第1地図は「現在位置及びその周囲を示す」のだから、第1地図が変更されると解さねばならず、それは本願発明でいう「スクロール表示」と異ならない。 したがって、本願発明と引用発明とは、 「ディスプレイ画面に地図を表示する地図表示方法において、 ディスプレイ画面をメイン画面とサブ画面に分け、 2画面地図表示が要求された時、メイン画面に地図を表示すると共に、該地図上の所定エリアを定めるための指標をメイン画面に表示し、 該エリアの地図をサブ画面に表示し、 メイン画面において、該指標の移動に伴ってサブ画面に地図をスクロール表示するナビゲーション装置の地図表示方法。」である点で一致し、以下の各点で相違する。 〈相違点1〉本願発明が「指標」につき「地図上の所定エリアを示すカーソル」と特定しているのに対し、引用発明ではそのように特定していない点。なお、本願発明の「サブ画面」が「カーソル画面」であり、カーソル画面に表示するものが「カーソルが指示するエリアの地図」であることは、上記相違に必然的に伴う付随的事項にすぎないから、別途独立した相違点には当たらない。 〈相違点2〉「サブ画面に地図をスクロール表示する」に当たり、本願発明では「メイン画面において指標を地図に対して相対的に移動し」と特定しているのに対し、引用発明における指標は「現在位置」であるから、車両の移動に伴い自然に移動するだけであって、上記特定事項に該当するかどうか不明確な点。なお、カーソルについては相違点1で扱うので、ここでは本願発明の構成についても「指標」とした。 5.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断 (1)相違点1について 引用例には、第1地図表示に当たり、現在位置を表示することは記載されているが、現在位置を第1地図画面の特定位置(代表的には中心)に表示することまでは明記されていない。 しかし、ナビゲーション装置の地図表示にあたって、現在位置を表示画面の中心等特定位置にすることは周知であり(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-201071号公報にも記載されている。)、引用発明にこの周知技術を採用することは設計事項というべきである。 そして、引用発明に上記周知技術を採用した場合には、現在位置と第1地図画面(メイン画面)に表示されるエリアが1対1に対応するから、本願発明との相違は指標が「地図上の所定エリアを示す」かどうかだけである。 縮小地図と詳細地図を表示する場合、分割表示であるか切換表示であるかにかかわらず、詳細地図に表示される範囲が縮小地図のどの部分なのかを明示的に示すことが、ユーザの利便性につながることは明らかである。そのことは、例えば特開平7-270172号公報に「サブウィンドウに表示された縮小地図の中にメインウィンドウに表示されている地図に相当する領域を示す枠20を表示する。」(【要約】の【構成】欄)と、特開平7-167669号公報に「画面上に表示されている特定エリアの地図をより縮尺の大きな縮小地図に替えて、当該特定エリアに隣接するそれまで非表示だった他のエリアをも一緒に表示する場合には、元の特定エリアとこれに加えて新たに表示される他のエリアとを識別手段eで識別可能に表示する。」(【要約】の【構成】欄)と、及び特開平7-225549号公報に「広域地図から詳細地図へ縮尺変更する場合に、広域地図上に変更後の詳細地図の部分を窓状に表示する。」(【要約】の【構成】欄)と記載されているとおりである。 そうであれば、引用発明に現在位置を表示画面の中心等特定位置にするという上記周知技術を採用した場合に、第1地図画面の表示範囲を第2地図画面に表示することも設計事項というべきであって、そのように第2地図画面に表示した表示範囲は本願発明の「所定エリアを示すカーソル」と異ならない。 以上のとおりであるから、相違点1に係る本願発明の構成は、当業者が容易に採用できる構成といわなければならない。 (2)相違点2について 本願発明における「メイン画面において指標を地図に対して相対的に移動」につき、ユーザがナビゲーション装置に対して、指標を移動するための特別の操作を加えることに限定されていると解さねばならない理由はない。引用発明では、車両の移動に伴い指標が移動するのであるが、これも「メイン画面において指標を地図に対して相対的に移動」に該当する。したがって、相違点2は実質的相違点ではない。 仮に、「メイン画面において指標を地図に対して相対的に移動」を、上記特別の操作を加えることに限定解釈するとしても、進歩性判断には影響を及ぼさない。その理由は次のとおりである。 引用例には、詳細地図表示対象として、現在位置周囲しか記載されていないが、それ以外の箇所についても、縮小地図表示画面においてユーザが表示箇所を特定した上で詳細地図表示することは周知である(例えば、特開平8-136274号公報に「地図描画制御部13は、カーソル移動時(カーソル移動操作時)には縮小地図をディスプレイ画面に表示し、カーソル停止時或いは間歇移動時には拡大地図を表示する。」(段落【0016】)と、 特開平7-35561号公報に「図6に示すように表示広域地図(現在位置と目的地を表示している地図をいう(図6(a)、及び図5参照)のなかから経路設定を行いたい位置を入力装置4で指定する。・・・その部分を領域とする詳細地図(表示広域地図より下位の階層の地図をいう(図4参照))が画面に表示される。」(段落【0027】?【0028】)と、特開平6-195598号公報に「地図画面からその地域を包含する縮小地図に切換える場合は縮小用スイッチを、またその地域の一部の拡大地図に切換える場合はカーソルを拡大したい位置に合わせた上で拡大用スイッチを押下することにより、自動的にCRT表示装置6に表示する地図を切換えることができる。」(段落【0022】)と、及び特開平6-195599号公報に「道路地図画面上のある部分を拡大したい場合には、拡大したい領域にカーソルの位置を合わせておき、地図切換スイッチ部8における拡大スイッチを押下する。」(【要約】の【構成】欄)と記載されているとおりである。)。 そうであれば、引用発明を出発点として、第1地図(詳細地図)を表示すべき第2地図(縮小地図)の範囲を、現在位置周囲だけでなく、ユーザが任意に指定できる地点周辺部に拡張し、ナビゲーション装置に対して特別の操作を加えることにより指標(前記地点を特定するもの)を移動することは当業者が容易に想到できたというべきである。 以上のとおりであるから、相違点2は実質的相違点でないか、それとも当業者にとって想到容易である。 (3)本願発明の進歩性の判断 相違点1,2は、実質的相違点でないか、当業者にとって想到容易な相違点であり、これら相違点に係る本願発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 本願発明が特許を受けることができない以上、本願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-03-06 |
結審通知日 | 2007-03-27 |
審決日 | 2007-04-10 |
出願番号 | 特願平9-148999 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G09B)
P 1 8・ 57- Z (G09B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松川 直樹 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
長島 和子 藤井 靖子 |
発明の名称 | ナビゲーション装置の地図表示方法 |
代理人 | 斉藤 千幹 |