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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
管理番号 1159641
審判番号 不服2005-9446  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-19 
確定日 2007-06-18 
事件の表示 特願2002- 10470「真空調理法を用いる生ハム類の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月29日出願公開、特開2003-210140〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明

本願は、平成14年1月18日の出願であって、その請求項1ないし3に係る発明は、平成19年3月27日に提出された手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「真空調理法を用いる生ハム類の製造方法であって、原料食肉を、海洋深層水塩およびローズマリー抽出物を含む塩漬調味剤で塩漬処理する工程と、塩漬処理した後に真空脱気包装機により真空パックする工程からなり、該真空パック後そのままその状態を維持することにより塩漬・熟成を施すことを特徴とする、生ハム類の製造方法。」


2.周知の技術・引用例

本願明細書にも「従来の技術」として「もう一つはイタリアタイプであり、原料肉に直接、塩漬剤を擦り込み塩漬してから、乾燥燻煙後熟成、あるいは乾燥後熟成されたものである。」(段落【0004】)と記載されているように、原料肉を塩漬調味剤で塩漬処理した後、乾燥、熟成させて生ハムを製造することは、本願出願前に当業者において周知であった(必要なら、他にも例えば特開平11-266782号公報の段落【0005】ないし【0006】参照。)。

当審における拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平1-174356号公報(以下、「引用例1」という。)には、「整形肉に塩せき液を注入するピックル注入工程と、注入済整形肉を耐熱性フィルムなどで真空パックする真空包装工程と、この真空パック整形肉を一定時間温水槽に漬けるか、あるいは、低温庫内に置く塩せき工程と、殺菌または滅菌を行う加熱工程と、熱処理された真空パック整形肉を冷却する工程とからなる、ハム製造方法。」(特許請求の範囲第1項)が記載され、その効果として、従来のハム製造工程に較べて包装は1回で済み、塩せき時間の短縮化と相俟って製造時間・工程は短縮・単純化され、特に、塩せき工程前に真空パックするために、真空塩せきによる品質の向上と、微生物の二次汚染防止が図られ、無添加自然食品へのニーズにも答えることができること(第2頁左下欄第10?15行)が記載されている。

原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2001-231511号公報(以下、「引用例3」という。)には、「海洋深層水または海洋深層水の濃縮あるいは乾燥品で処理した魚卵加工品」(請求項1)が記載され、海洋深層水塩の無機成分には塩化ナトリウムの塩カドを和らげる作用があり(段落【0008】)、塩辛さが低い魚卵加工品を得られること(段落【0018】)が記載されている。

原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭56-96656号公報(以下、「引用例4」という。)には、「ハーブ系香辛料、その精油採取残渣、極性溶媒で抽出したハーブ系香辛料のオレオレジン、非極性溶媒で抽出したハーブ系香辛料のオレオレジン及びその抽出残渣から選ばれる原料を極性溶媒で抽出処理して抽出液を得た後、これに吸着剤を加えて脱色処理し、ついでこの吸着剤を分離して得た溶液部を濃縮した後水蒸気蒸留し、その水蒸気蒸留残渣中の不溶部を採取することにより得られる保存剤を含有することを特徴とする加工乾燥肉製品」(特許請求の範囲第1項)が記載され、「本発明の加工乾燥肉製品は、前期保存剤を含有していることにより、獣臭の発生が良好に防止され、長期に亘り品質が維持される」(第3頁右上欄第19行?左下欄第1行)ことが記載され、参考例として、資料香辛料(セージ、ローズマリー、マジョラム、タイム)粉末から、粉末保存剤[画分D]を得たこと(第3頁左下欄第9行?右下欄第8行)が記載され、実施例1として「プレスハム製造時において熟成原料と調味料等を混合する際、同時に参考例で示したローズマリー画分Dを熟成材料に対して0.01%配合し、通常の方法でハムを製造した後、これをスライスし、乾燥したこと(第4頁左下欄第8行?右下欄第1行)が記載されている。


3.対比

本願発明と上記の周知の生ハムの製造方法を対比すると、原料食肉を塩漬調味料で塩漬け処理する点は一致するが、以下の点で相違している。

相違点(1)
本願発明は真空調理法を用いる生ハム類の製造方法であって、塩漬処理した後に真空脱気包装機により真空パックする工程からなり、該真空パック後そのままその状態を維持することにより塩漬・熟成を施すものであるのに対し、周知の生ハムの製造法においては塩漬処理した後、乾燥、熟成するものである点。

相違点(2)
本願発明において、塩漬調味料が海洋深層水塩およびローズマリー抽出物を含むものであるのに対し、周知の生ハムの製造方法における塩漬調味料はそのようなものを含んでいない点。


4.判断

まず、上記相違点(1)について検討する。
生ハムは、その名前からも明らかなように製造時に加熱処理されていないものであるから、加熱処理して製造されるハムにおける加熱処理技術が生ハムの製造に転用できるはずもないが、ハムの製造における塩漬工程や熟成工程の技術は、特段の理由がなければ生ハムの製造にも転用は可能であるといえる。
引用例1には、塩せき時間の短縮化と相俟って製造時間・工程を短縮・単純化する技術として、「整形肉に塩せき液を注入するピックル注入工程と、注入済整形肉を耐熱性フィルムなどで真空パックする真空包装工程と、この真空パック整形肉を一定時間温水槽に漬けるか、あるいは、低温庫内に置く塩せき工程と、殺菌または滅菌を行う加熱工程と、熱処理された真空パック整形肉を冷却する工程とからなる、ハム製造方法。」が記載されているのであるから、生ハム製造においても、塩せき時間の短縮化と相俟って製造時間・工程を短縮・単純化しようとし、引用例1における「耐熱性フィルムなどで真空パックする真空包装工程と、この真空パック整形肉を一定時間温水槽に漬けるか、あるいは、低温庫内に置く塩せき工程」とを採用し、本願発明のごとくしてみる程度のことは、それを阻害するような特段の理由もなく、当業者が容易になしえることである。

そして、請求人の主張する「極めて簡便な操作で塩漬工程から最後の工程(塩漬工程、熟成工程、包装工程)まで効率よく進めることができる」という本願発明の効果も、引用例1には、その効果として従来のハム製造工程に較べて包装は1回で済み、塩せき時間がの短縮化と相俟って製造時間・工程は短縮・単純化されることが記載されているのであるから、格別な効果とはいえない。

次に相違点(2)について検討する。
引用例3は魚卵加工品に関するものではあるが、海洋深層水塩の無機成分には塩化ナトリウムの塩カドを和らげる作用があり、塩辛さが低いものが得られることが記載されているのであるから、当業者であれば、魚卵に限らず、塩カドを和らげ、塩辛さが低いものとするために、従来食塩を用いていた食品において、食塩に替えて海洋深層水塩を用いてみようとする程度のことにさしたる困難さはないというべきである。
また、引用例4にはローズマリー抽出物を用いたことにより、プレスハムの乾燥品の獣臭の発生を防止でできることが記載されているのであるから、同じ効果を期待して、同じ技術分野の生ハムの製造に用いる塩漬調味料に含ませることも何ら困難ではない。
したがって、周知の生ハムの製造法における塩漬調味料に、海洋深層水塩およびローズマリー抽出物を含ませることは当業者が容易になしえることである。

この点につき、請求人は、原料肉特有の臭いが抑制、軽減され、かつ塩味を感じないマイルドな食味を引き出すことができるという顕著な効果があることを主張しているが、引用例3及び4に同様の効果が記載されており、格別の効果とはいえない。


5.むすび

以上のとおり、本願発明は、周知技術と引用例1、3及び4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本出願に係る他の請求項について検討するまでもなく、本出願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-19 
結審通知日 2007-04-20 
審決日 2007-05-07 
出願番号 特願2002-10470(P2002-10470)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小石 真弓  
特許庁審判長 平田 和男
特許庁審判官 鈴木 恵理子
河野 直樹
発明の名称 真空調理法を用いる生ハム類の製造方法  
代理人 吉武 賢次  
代理人 横田 修孝  
代理人 紺野 昭男  
代理人 中村 行孝  

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