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審決分類 審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  E05B
審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  E05B
審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備  E05B
審判 全部無効 2項進歩性  E05B
管理番号 1161119
審判番号 無効2005-80123  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-04-19 
確定日 2007-06-18 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3158269号「キー変換式ピンタンブラー錠」の特許無効審判事件についてされた平成17年 9月 5日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において「平成17年9月5日付け審決中、「特許第3158269号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。」との部分を取り消す。」旨の審決取消の判決(平成17年(行ケ)第10729号、平成18年 6月 6日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
被請求人は、平成7年4月13日に、発明の名称を「キー変換式ピンタンブラー錠」とする発明について特許出願をし、平成13年2月16日、特許庁から特許第3158269号として設定登録を受けた(請求項の数は1である。以下「本件特許」という。)。
これに対し、審判請求人から特許無効審判請求がされ、特許庁はこれを無効2005-80123号事件として審理し、その係属中の平成17年7月7日に、被請求人は、本件特許の願書に添付した明細書の訂正請求をした(以下、この訂正後の明細書を図面と合わせて「本件訂正明細書」という。)。そして、特許庁は、審理の結果、平成17年9月5日に、「訂正を認める。特許第3158269号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。」との審決(以下「第1審決」という。)をし、その謄本は同月15日被請求人に送達された。
被請求人は、第1審決を不服として同年10月9日に知的財産高等裁判所に出訴し、同裁判所は、平成18年6月6日に、「1 特許庁が無効2005-80123号事件について平成17年9月5日にした審決中、「特許第3158269号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。」との部分を取り消す。2 訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を言い渡した。
請求人は、上記判決を不服として最高裁判所に上告受理の申立てをしたが、最高裁判所により、「1 本件を上告審として受理しない。 2 申立て費用は申立人の負担とする。」との決定がなされ、上記判決は確定した。
その後、本件審判事件が特許庁に差し戻され、請求人から平成19年1月5日付け上申書及び平成19年2月27日付け上申書(2)の提出がなされた。

2.訂正の適否
(2-1)訂正の内容
本件無効審判の訂正請求は、本件特許の願書に添付した明細書及び図面(以下、「本件特許明細書」という。)を次のとおりに訂正しようとするものである。
訂正事項a:【0019】における「ドライブピン4D」を「ドライブピン4C」と訂正する。
訂正事項b:【0028】における「ドライブピン4D」を「ドライブピン4C」と訂正する。
訂正事項c:【0028】における「コードピン6C」を「コードピン6D」と訂正する。
訂正事項d:【0029】における「ドライブピン4D」を「ドライブピン4C」と訂正する。
訂正事項e:【0030】における「回転させると、ドライブピン4Dの小径部4bが折れて」を「回転させると、ドライブピン4Cの小径部4bが折れて」と訂正する。
訂正事項f:【図面の簡単な説明】の【図4】における「ドライブピン4D」を「ドライブピン4C」と訂正する。

(2-2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、図4の記載との整合を図るために、図4に記載されたドライブピンの符号「4C」に合わせるように、「ドライブピン4D」を「ドライブピン4C」と訂正するものである。
上記訂正事項bは、図5の記載との整合を図るために、図5に記載されたドライブピンの符号「4C」に合わせるように、「ドライブピン4D」を「ドライブピン4C」と訂正するものである。
上記訂正事項cは、図5(D)の記載との整合を図るために、図5(D)に記載されたコードピンの符号「6D」に合わせるように、「コードピン6C」を「コードピン6D」と訂正するものである。
上記訂正事項dは、図6の記載との整合を図るために、図6に記載されたドライブピンの符号「4C」に合わせるように、「ドライブピン4D」を「ドライブピン4C」と訂正するものである。
上記訂正事項eは、図6の記載との整合を図るために、図6に記載されたドライブピンの符号「4C」に合わせるように、「ドライブピン4D」を「ドライブピン4C」と訂正するものである。
上記訂正事項fは、図4の記載との整合を図るために、図4に記載されたドライブピンの符号「4C」に合わせるように、【図面の簡単な説明】の欄の【図4】における「ドライブピン4D」を「ドライブピン4C」と訂正するものである。
以上のとおり、上記訂正事項a?fは、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
また、上記訂正事項a?fは、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許請求の範囲を実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2-3)むすび
したがって、上記訂正事項a?fは、第134条の2第1項ただし書きに適合し、特許法第134条の2第5項において準用する特許法第126条第3項及び4項の規定に適合するから、当該訂正を認める。
(なお、上記した判決は「平成17年9月5日付け審決中、「特許第3158269号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。」との部分を取り消す。」旨の判決であり、第1審決で「訂正を認める」とした部分が取り消されたものではない。)

3.当事者の主張
(3-1)請求人の主張
請求人は、次の証拠を提出するとともに、本件特許は次の理由により無効とすべきであると主張する。

ア.無効理由1;
本件特許は、特許請求の範囲の記載において、特許を受けようとする発明が明確でないので、同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
イ.無効理由2;
本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、その記載が不明確かつ不十分であるので、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
ウ.無効理由3;
本件特許に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(証拠)
甲第1号証:実公平4-48296号公報
甲第2号証:岩波書店 広辞苑 第三版「折れる」の項
甲第3号証:岩波書店 広辞苑 第三版「回転面」の項
甲第4号証:特開昭48-83993号公報
甲第5号証:特開昭59-72366号公報
甲第6号証:特開昭60-5980号公報
甲第7号証:実開平6-67746号公報
甲第8号証:特開平7-71144号公報
甲第9号証:特開平5-259358号公報

(3-2)被請求人の主張
被請求人は、答弁書と共に訂正請求書を提出し、本件特許の明細書の記載は、特許法第36条第6項第2号及び第4項に規定する要件を満たしており、また、本件特許に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができないものであるから、特許法第29条第2項に該当せず、無効とされるものではないと、主張する。

4.当審の判断
(4-1)無効理由1及び2(特許法第36条)について
(4-1-1)特許請求の範囲の記載について
(ア)請求人は、特許請求の範囲の「変換用のキーによる回転体の回動時に、」という時期的な条件を含むから、キー変換式ピンタンブラー錠という物の発明であるか、使用方法若しくは製造方法の発明の何れとも解釈でき、発明のカテゴリーが不明確である、と主張している。
しかしながら、本件特許の特許請求の範囲には、「該小径部が……折れて分離可能な程度に細く短く形成されている・・・ピンタンブラー錠。」と記載されており、物の発明であることは明確である。
(イ)請求人は、特許請求の範囲の「前記ドライブピンのうちの少なくとも1本のドライブピンが、・・・ ピン先端部を一体的に設けて形成され、」と記載され、仮にすべてのドライブピンがピン先端部を一体的に設けて形成している場合、キー変換は不可能であり、本件特許発明の目的効果を奏しないから、不明確である、と主張している。
しかしながら、甲第4号証及び甲第5号証等にみられるように、すべてのドライブピンにピン先端部を設けた場合でも、キー変換は可能である。
したがって、上記の記載が特許請求の範囲を不明確にしているという主張には根拠がない。
(ウ)請求人は、特許請求の範囲の「前記ドライブピンのうちの少なくとも1本のドライブピンが、ピン本体上に小径部を介してピン先端部を一体的に設けて形成され、」という記載は、「ドライブピンのうちの少なくとも1本のドライブピン」が、「ピン本体」、「小径部」及び「ピン先端部」から一体に構成されているのか、又は「ドライブピンの少なくとも1本のドライブピン」に「ピン本体」、「小径部」及び「ピン先端部」が一体に設けて形成されているのか、不明確であり、本件発明は、請求項の記載から二以上の発明が把握されるため、不明確であると主張している。
しかしながら、上記構成は、上記記載から、「ドライブピンのうちの少なくとも1本のドライブピン」が、「ピン本体」、「小径部」及び「ピン先端部」から一体に構成されているものであり、特許請求の範囲の記載は明確である。
(エ)請求人は、特許請求の範囲の「ドライブピンのうちの少なくとも1本のドライブピンが、ピン本体上に小径部を介してピン先端部を一体的に設けて形成され、該小径部が変換用のキーによる回転体の回動時に、折れて分離可能な程度に細く短く形成されている」 という点について、小径部の形成時期が不明確である旨を主張している。
しかしながら、特許請求の範囲には、「該小径部が変換用のキーによる回転体の回動時に、折れて分離可能な程度に細く短く形成されている」との記載から、該小径部は、変換用のキーによる回転体の回動時にあらかじめに形成されているのであり、上記記載は明確である。
(オ)請求人は、特許請求の範囲の「折れて分離可能な程度に細く短く形成されている」 の対象物が不明確であると主張している。
しかしながら、特許請求の範囲には、「該小径部が変換用のキーによる回転体の回動時に、折れて……」と記載され、小径部が折れて分離可能な程度に細く短く形成されていることは明らかであり、上記記載は明確である。
(力)請求人は、特許請求の範囲の「回転体の回動時の動作」が不明確であると主張している。
しかしながら、特許請求の範囲には、「該小径部が変換用のキーによる回転体の回動時に、折れて分離可能な程度に細く短く形成されている」と記載され、小径部が回動時に折れて分離可能な程度に細く短く形成されていることは明確である。
(キ1)請求人は、特許請求の範囲の「折れて」の意味が不明確であり、甲第2号証(広辞苑第三版)には、「折れる」の意味として、「直線状または平面であるはずのものが途中で急角度に曲がる意」と記載され、物理現象として生じ得ない事項が記載され、不明確であると主張している。
確かに、「折れる」には、曲がるという意味があるが、特許請求の範囲に「折れて分離可能な程度に」と記載され、甲第2号証(広辞苑第三版)に(マル2)「まがって二つに分かれ離れる。」と記載されていることから、全体として、特許請求の範囲の「折れて」とは、小径部が回転体の回動時に分離されることを指しているにすぎず、不明確であるとまではいえない。
(キ2)請求人は、特許請求の範囲の「小径部が変換用のキーによる回転体の回動時に、折れて分離可能な程度に細く短く形成されている」という点において、「該小径部」の述語が不明確であると主張している。
しかしながら、特許請求の範囲には、「小径部」が「折れて分離可能な程度に細く短く形成されている」と記載され、述語は明確である。
(ク)請求人は、特許請求の範囲の「ドライブピンが、ピン本体上に小径部を介してピン先端部を一体的に設けて形成され」 の意義が不明確であると主張している。
しかしながら、ドライブピンが、ピン本体、小径部、ピン先端部の順に一体的に設けて形成されていることは明確である。
(ケ)請求人は、特許請求の範囲の「該小径部が変換用のキーによる回転体の回動時に、折れて分離可能な程度に細く短く形成されている」 点において、「ドライブピン」または「小径部」が折れる時期が不明確であると主張している。
しかしながら、上記記載は、小径部の構成を記しているのであり、折れる時期は「変換用のキーによる回転体の回動時」であることは特許請求の範囲の記載から明らかである。
(コ)請求人は、特許請求の範囲の「該固定体と該回転体の当接する一面に回転面が形成され、」と記載される文章中の「回転面」 について、甲第3号証(広辞苑第三版)によると、回転面とは、「ある平面曲線を、同じ平面上にある一つの直線を軸として回転した時に生じる曲面。」と記載され、いかなる回転面がどの位置に形成されるか、不明確であると主張している。
確かに、「回転面」の定義は上記のとおりであるが、発明の詳細な説明の欄に回転面Mとして多くの箇所で記されており、また、図1、図5、図6には、符号Mとして、回転面の位置が記載されていることから、「回転面」とは、固定体と回転体の摺接面であるという程度の意味であり、明確でないとまではいえない。また、甲第1号証においても、回転面という用語を用いている。
(サ)請求人は、特許請求の範囲の「ドライブピンが付勢されて挿入され、」の記載について、ドライブピンがどのような部材によりいかなる方向に付勢されるのか不明であると主張している。
しかしながら、技術常識的に、発明の詳細な説明の段落【0015】に、「脚部にコイルばね5が装着され、ドライブピンを上方に付勢する。」の記載、及び、図1、図5 、図6のドライブピン4A?4Gがコイルばね5によって上方に付勢されている構成を示すことは明らかである。

(ちなみに、請求人は、上記裁判事件において、予備的に、次の理由から特許法36条の要件違反による本件特許の無効を主張している。
「ア 本件発明の特徴部分である「前記ドライブピンのうちの少なくとも1本のドライブピンが,ピン本体上に小径部を介してピン先端部を一体的に設けて形成され,該小径部が変換用のキーによる回転体の回動時に,折れて分離可能な程度に細く短く形成されている」(請求項1)との記載から,少なくとも1本のドライブピン又は小径部が折れていないこと,すなわち製造工程のある時期に少なくとも1本の折れていないドライブピン又は小径部が存在していることを理解できるものの,この折れていないドライブピン又は小径部はいつの時点のものを示しているのか不明確である。ピン孔への挿入前に折れていないドライブピン又は小径部が存在するという意味であれば,請求項1は,キー変換式ピンタンブラー錠の発明について,その完成前の製造工程における部品の状態を特定する構成要件を含む記載となるから,その記載は奇異である。また,折れていないドライブピン又は小径部は,「回転体の回動時において常に折れる」と解釈することができる一方,「回転体の特定の回転時にのみ折れる」と解釈することができるため,請求項1の記載からドライブピン又は小径部が折れる時期を一義的に導き出すことができない。」
「イ さらに,請求項1の「折れる程度」,「細い」及び「短い」との記載は,強度や大きさを相対的かつ抽象的に示すものにすぎないから,請求項1の「小径部が折れる程度に細く短く形成されている」との記載は,発明を明確に特定しているものではない。」
これらの主張に対して、判決は、「特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば、本件発明の「小径部」が折れてピン本体と先端部が分離する時期は、変換用のキーによる回転体の回動時であり、その分離される以前はドライブピン又は小径部が折れていないことは明らかであるし、また、本件発明の「小径部」が「変換用のキーによる回転体の回動時に、折れて分離可能な程度」に細く短く構成されていることも明確に理解できるものであって、本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載に、請求人主張のような明確を欠く点は認められない」(判決書第22?23頁参照)と判示している。)

以上のとおりであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。

(4-1-2)本件特許明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載について
(ア)請求人は、明細書の発明の詳細な説明の欄の「ドライブピン4D」と「ドライブピン4C」の記載が不明確であると主張している。
これに対し、被請求人は、訂正請求により訂正事項a,b,d?fの訂正を行い、これによって、上記の点は明確となった。
(イ)請求人は、明細書の発明の詳細な説明の欄などにおける「回転面」の記載が不明確である主張している。
しかしながら、上記「(4-1-1)(コ)」で述べたとおり、明確でないとまではいえない。
(ウ)請求人は、「細く短い小径部」とは、発明の詳細な説明から把握される形状から、どの程度の力を加えると、容易に折れて分離可能であるのか否かを判断することはできないから、当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないと主張する。
しかしながら、特許請求の範囲等の記載から、変換用のキーによる回転体の回動時に、小径部が分離可能であればよいものであり、当業者であれば十分実施可能である。
(エ)請求人は、発明の詳細な説明の【0019】「ドライブピン4D」の記載が不明確である主張している。
これに対し、上記(ア)でも述べたとおり、被請求人は、上記訂正事項aの訂正を行い、これによって、上記の点は明確となった。
(オ)請求人は、「ピン先端部4c」及び「ピン本体4a」の先端部が「回転面M」において回転するとは、いかなる状態を意味するものであるのか、発明の詳細な説明の記載からは明確でないと主張する。
しかしながら、キーにより回転体3を回したとき、回転体3はその軸を中心に回転し、このとき、回転面Mにおいて、回転面Mの軸の周りの円周上に穿設された貫通ピン孔に挿入されたピン先端部4cとピン本体4aが、回転体3の回転に伴い回転することは明白であるから、回転面M における回転は、明細書に明確に記載されているのであり、当業者が実施可能な程度に明確に且つ充分に記載されている。
(力)請求人は、明細書の発明の詳細な説明の欄の段落【0016】において、「回転面Mを介して」とはどういう意味なのか、また「回転面Mを介して各有底ピン孔に連通可能な貫通ピン孔」とはどういうものを指すのか不明確である。さらに、「穿設」という用語は、一般に日本語として使用されている語ということはできず、どのような意味をなすのか不明確であるから、上記の記載は、いわゆる当業者がその実施を可能な程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないと主張する。
確かに、図1、図5、図6の断面図には有底ピン孔や貫通ピン孔の符号は付されていないものの、各々ドライブピン4A?4Gまたはコードピン6A?6Gがそれらの孔に挿入された形態がそこに表記されていることから、段落【0016】の記載の意味は明確である。また、「穿設」は技術用語又は特許用語として慣用されている用語であって、当該用語の意味が当業者にとって明確でないとはいえない。

以上のとおりであるから、本件特許明細書の記載は明確であり、特許法第36条第4項に規定する要件を満たすものである。

(4-2)無効理由3(特許法第29条第2項)について
(4-2-1)本件発明
本件特許に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

(本件発明)
「ケーシング内に固定体が取付けられ、該固定体内に錠軸を有する回転体が回転可能に嵌挿され、該固定体と該回転体の当接する一面に回転面が形成され、該固定体には複数の有底ピン孔が穿設され、各有底ピン孔に各々ドライブピンが付勢されて挿入され、該回転体には回転面を介して各有底ピン孔に連通可能な複数の貫通ピン孔が穿設され、各貫通ピン孔には各々コードピンが挿入され、変換用のキーを錠の挿入口に差込み、該回転体を任意列回転させた状態で、代りに別の変換用のキーを該挿入口に差込み、該回転体を最初の位置まで回転させることにより、前のキーを使用不能とし、別のキーを使用可能とするキー変換式ピンタンブラー錠において、
前記ドライブピンのうちの少なくとも1本のドライブピンが、ピン本体上に小径部を介してピン先端部を一体的に設けて形成され、該小径部が変換用のキーによる回転体の回動時に、折れて分離可能な程度に細く短く形成されていることを特徴とするキー変換式ピンタンブラー錠。」

(4-2-2)甲号各証の記載内容
(ア)甲第1号証(実公平4-48296号公報 )には図面と共に次のことが記載されている。
「[産業上の利用分野]本考案はピン突出に応じて施錠されるとともにピン相互の突合せ平面での整列に応じて解錠されるピンタンブラー錠に係り、殊に、専用鍵を紛失したときにその専用鍵を使用不能として別な鍵を使用可能とできる鍵(「錠」は誤記:当審注)変換式のピンタンブラー錠に関するものである。」(2欄7?13行)、
「錠(「鍵」は誤記:当審注)本体1は、ケーシング2の奥内部に固定される固定筒体部3と、該固定筒体部3に一端が回動自在に挿通される回転体4とから成り、回転体4と固定筒体部3との間で回転面5が構成される。上記ケーシング1の先端側の鍵挿入口10の外縁には切欠部11を有し、・・・前記固定筒体部3の有底の各ピン孔14a?14eには長さの異なるドライブピン19a?19eがばね24・・・によって回転面側へ付勢された状態で夫々収容されている。
又、前記回転体4の大径部40の各貫通ピン孔30a?30eには長さの異なる操作ピン35a?35eが夫々収容され、上記ピン孔14a?14eと同軸上に形成されている。」(4欄18?32行)、
「上記錠(「鍵」は誤記:当審注)本体1の特徴は、少なくとも一つのドライブピン19bを他のドライブピン19a,19c?19eよりも短寸に形成し、その部分にボール29を介在した構成にある。」(5欄11?14行)、
「第一鍵6を紛失したこの場合、第一、第二変換鍵8,9を用いて、錠本体1の構造を変換し、第二鍵7のみを使用可能にする必要がある。
先ず、第1変換鍵8を差し込むと、第6図に示す如く、その操作ピン押圧用カム溝面61a?61eは上記第一鍵6の各操作ピン押圧用カム溝面44a?44eの各後退量と同一であるので、各ドライブピン19a?19eの先端が回転面5に一致する。その後、上記第一変換鍵8を操作して回転体4を回転させ、第7図に示すようにピン軸線位置を変更する。
斯る状態から第一変換鍵8を引き抜き、代わりに第二変換鍵9を差し込む。第一、第二変換(「化」は誤記:当審注)鍵8,9には、上記第一、第二鍵6,7の如く、抜け止め用突起49,59が形成されていないので、この状態からそれぞれ引き抜き、差し込むことができる。第二変換鍵9の操作ピン押圧用カム溝面67bは、上記第一鍵6、第一変換鍵8の操作ピン押圧用カム溝面44b,54bよりボール29の直径分だけ後退しているので、該ボール29は第8図示の如く貫通ピン孔30内へ移動する。
次に、第二変換鍵9を上記とは逆方向に回転させることにより第9図に示す状態とした後、第二変換鍵9を引き抜くと、第二鍵7だけが使用可能となる。」(5欄37行?6欄18行)。

上記甲第1号証記載によれば、甲第1号証には、
「ケーシング2内に固定筒体部3が取付けられ、該固定筒体部3内に一端Aを有する回転体4が回転可能に嵌挿され、該固定筒体部3と該回転体4の当接する一面に回転面5が形成され、該固定筒体部3には複数の有底のピン孔14a?14eが穿設され、各有底のピン孔14a?14eに各々ドライブピン19a?19eが付勢されて挿入され、該回転体4には回転面5を介して複数の有底ピン孔14a?14eに連通可能な複数の貫通ピン孔30a?30eが穿設され、各貫通ピン孔30a?30eには各々操作ピン35a?35eが挿入され、第一変換鍵8を鍵の挿入口10に差込み、該回転体4を任意列回転させた状態で、代りに第二変化鍵9を該挿入口10に差込み、該回転体4を最初の位置まで回転させることにより、第一鍵6を使用不能とし、第二鍵7を使用可能とする鍵変換式のピンタンブラー錠において、
前記ドライブピン19a?19eのうちの少なくとも1本のドライブピン19aと操作ピン35bとの間に別体のボール29が設けられている鍵変換式のピンタンブラー錠。」の発明が記載されていると認められる(以下、「甲第1号証発明」という。)

(イ)甲第4号証(特開昭48-83993号公報)には図面と共に次のことが記載されている。
「本発明はピンタンブラー錠錠およびキー構造体、特に軸方向ピンタンブラー錠の改良に関する。」(3頁右上欄17?18行)、
「また本発明は変更位置への回転によりピンタンブラーの設定を変更するために標示環と保持ピンおよび変更キーを有するピンタンブラー錠構造体を提供することである。」(4頁左上欄5?8行)、
「前方胴31の各通路52はタンブラー55を有し、中央胴29の整合通路54は錠止ピン56を含み、中央胴の一つおきの通路54aは変更タンブラー57を含み、後方胴28の通路53は変更タンブラー57およびタンブラーばね58を含む。」(5頁左上欄20行?右上欄5行)。

(ウ)甲第5号証(特開昭59-72366号公報)には図面と共に次のことが記載されている。
「本発明は軸方向ピンタンブラ錠に関し、内軸の回転軸線周りに配設した複数列以上のピンタンブラのタンブラ編成をマスターキーと或る特定のチェンジキーとによって自在に変換可能に構成したもので、」(2頁左上欄6?10行)、
「各ピン孔(10)には…後ピン(11c)と、…中間ピン(11b)と…前ピン(11a)と…コイルバネ(11d)とからなる一群のピンタンブラ(11)を夫々納め、」(2頁右上欄6?16行)。

(エ)甲第6号証(特開昭60-5980号公報)には図面と共に次のことが記載されている。
「本発明は、鍵違い、すなわち同種類のシリンダ錠に対する異形の鍵数を激増しうる可変式錠前に関し、」(1頁左下欄18行?右下欄1行)、
「錠前を組立てるには、ドライバーケース3の各チェンジピン貯蔵穴B1、B2、…に貯蔵穴用ドライバー7とスプリング8を装入し、ドライバーケース3の孔31にプラグ1の円柱部11を嵌合する。次にピン穴A1、A2、とピン穴14、14、…とを合致させ、その各ピン穴A1、A2、…と14、14、…にスプリング8、ドライバー6、チェンジピン5、ピン4を装入する。」(2頁右上欄3?10行)。

(オ)甲第7号証(実開平6-67746号公報)には図面と共に次のことが記載されている。
「【0001】【産業上の利用分野】本考案は、キーの挿入により内部のタンブラピンが軸方向にスライドする軸方向型のシリンダ錠を、可変コードにした可変コード型シリンダ錠に関する。」、
「【0009】 垂直壁面7の複数箇所(本実施例では7箇所)に有底のアンダーピン孔8が設けられ、各アンダーピン孔8には、ばね9が挿入され、次に、アンダーピン10が挿入される。従って、アンダーピン10の先端部は、垂直壁面7から突出する方向に付勢される。」、
「【0011】鍔部11bには、ロックシリンダ11が施錠状態にあるときに各アンダーピン孔8に相対する位置に、タンブラピン孔16が貫通する。図7は、7個のタンブラピン孔16を通過する円筒面を平面に展開した展開図であり、7個のタンブラピン孔を16a,16b?16gとすると、タンブラピン孔16aにはタンブラピン17aと可変コードピン18が挿入され、他のタンブラピン孔16b?16gには、それぞれタンブラピン17b?17gが挿入される。」。

(カ)甲第8号証(特開平7-71144号公報)には図面と共に次のことが記載されている。
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、使用できる鍵を変更することが可能な可変式錠に関する。」、
「【0026】このうち作動係止機構20は、図8にも示すように、蓋19側から、圧縮コイルスプリングからなるスプリング22、係止ピン23、及び所用数の設定用スペーサ24(なお、設定用スペーサ24は、図8の状態では1箇所のみに配設されている)、及びキーピン25とによって構成されていて、スプリング22によりキーピン25の先端部が鍵挿入穴2に突出するように付勢されている。なお、各キーピン25は、ケース1の前面部1aの裏側によって前方への突出が規制されている。」。

(キ)甲第9号証(特開平5-259358号公報)には図面と共に次のことが記載されている。
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は超高密度化による超多ピン化実装する場合のICパッケ?ジ用マイクロリ?ドピンのICチップ等への実装装着方法、ICパッケ?ジ用マイクロリ?ドピン板の製造方法およびICパッケ?ジ用マイクロリ?ドピン板に関する。」、
「【0010】…このICパッケ?ジ用マイクロリ?ドピン基板形成工程1は、図2に示すように…シ?ト状の封着金属合金母材3を用いて電子ビ?ム4…等の加工によって行なう。このICパッケ?ジ用マイクロリ?ドピン基板形成工程1で製造されるICパッケ?ジ用マイクロリ?ドピン基板2は、図3ないし図5に示すように、…多数本のピン本体5と、この多数本のピン本体5の頭部と図5に示すように食い込みを有するようにあるいは食い込みのない状態でそれぞれ簡単に切断可能に一体成形された上部フレ?ム6と、前記多数本のピン本体5のティ?ル部と食い込みを有するようにあるいは食い込みのない状態でそれぞれ簡単に切断可能に一体成形された下部フレ?ム7と、この下部フレ?ム7と前記上部フレ?ム6の両端部寄りの部位に形成された位置決め用の位置決め孔8、8、8、8とから構成されている。
【0011】9は前記ICパッケ?ジ用マイクロリ?ドピン基板形成工程1で製造されたICパッケ?ジ用マイクロリ?ドピン基板2の多数本のピン本体5部分を表面処理および導電性を良好にするために、図6に示すように金メッキ等の電解メッキ処理してICパッケ?ジ用マイクロリ?ドピン板10を形成するメッキ処理工程で、…
【0012】11は前記ICパッケ?ジ用マイクロリ?ドピン板10を図7に示すように多数枚整列状態で整列固定治具12に固定するICパッケ?ジ用マイクロリ?ドピン板の固定工程で、このICパッケ?ジ用マイクロリ?ドピン板の固定工程11で使用される整列固定治具12は、図7ないし図9に示すように前記ICパッケ?ジ用マイクロリ?ドピン板10の厚さ寸法よりもわずかに大きな幅寸法で、下部フレ?ム7およびピン本体5の全体あるいはピン本体5の頭部の先端部を除く部位が収納される挿入溝13が所定間隔で多数個並列形成された整列固定具本体14と、前記挿入溝13内に挿入された下部フレ?ム7の位置決め孔8、8と対応する部位に形成された位置決めピン15、15を挿入するピン挿入孔16、16とから構成されている。すなわち、整列固定治具12の挿入溝13内にICパッケ?ジ用マイクロリ?ドピン板10の下部フレ?ム7をそれぞれ挿入し、位置決めピン15、15をピン挿入孔16、16および下部フレ?ム7の位置決め孔8、8に挿入することにより、ピン本体5をマトリックス状に整列固定させる。
【0013】17は前記ICパッケ?ジ用マイクロリ?ドピン板の固定工程11後に、整列固定治具12より上方に突出している上部フレ?ム6を図10に示すように除去する上部フレ?ム除去工程で、この上部フレ?ム除去工程17は上部フレ?ム6を…レ?ザ?等で切断する。
【0014】18は前記上部フレ?ム除去工程17後にピン本体5の頭部に、図11に示すようにそれぞれ金ロウ材等のロウ材19を自動溶着機を用いて付着させるロウ材付着工程で、このロウ材付着工程18でピン本体5の頭部に付着させる金ロウ等は該ピン本体5をICチップ20等のリ?ドピン取付部21に取付けるためのもので、…
【0015】22は前記ロウ材付着工程18後に図12に示すように、ICセラミックスレイヤ?パッケ?ジ用基板あるいはICチップ20のリ?ドピン取付部21と整列固定治具12に整列固定されたロウ材19が付着されたピン本体5とを位置決めしてロウ付け固定するピン本体固定工程で、…
【0016】23は前記ピン本体固定工程22後に、図13に示すように整列固定治具12を除去するとともに、下部フレ?ム7をピン本体5より切断して除去する下部フレ?ム除去工程で、…
【0017】このような実装装着方法を用いることにより、ICチップあるいはICセラミックスレイヤ?パッケ?ジ用基板に数千本の入出力用マイクロリ?ドピンを実装装着することができる。」。

(4-2-3)対比・判断
(i)判決(平成17年(行ケ)第10729号)による判示要旨
上記判決は、本件発明及び引用発明(本審判事件における甲第1号証記載の発明)との相違点の判断につき、次の(ア)及び(イ)のとおり判示する。

(ア)引用例(注;本件の甲第1号証「実公平4-48296号公報」)中には、『組立て後のキー変換式ピンタンブラー錠におけるボールとドライブピンが「一体」であってもよいことの記載も示唆もないし、また、このことが技術常識から明らかであることを認めるに足りる証拠はない。』
(イ)『「製品の製造時に、複数の部品の組み付けを容易にし、部品点数の低減を図るために、二以上の部品を一体に成形することは、広範な技術分野においてきわめて普通に行われ」、「ピン本体部及びピン先端部は、いずれもピン孔の内部において移動可能に挿入されるものであって、その材料、及び外径等の寸法等が共通する」としても、このことから直ちに、ボールとドライブピンという特定の部材に着目して、これらを小径部を介して一体化してドライブピンのピン本体部とピン先端部(ボールに相当する部分)とし、かつ、変換用のキーによる回転体の回動時に小径部が折れてピン先端部とピン本体部を分離し、キー変換を可能とする構成とすることが、当業者にとって当然考慮すべき設計的事項であるとすることはできず、他にこれを設計的事項にすぎないと認めるに足りる証拠はない。』
(ウ)『したがって、本件審決が、引用発明において、相違点に係る本件発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得ることであると判断したのは誤りである。』

そこで、上記判示内容に従い、以下、対比・判断する。

(ii)当審の対比・判断
<一致点・相違点>
本件発明と甲第1号証発明とを対比すると、甲第1号証発明の「固定筒体部3」は、本件発明の「固定体」に相当し、以下同様に、「一端A」が「錠軸」に、「有底のピン孔14a?14e」が「有底ピン孔」に、「貫通ピン孔30a?30e」が「貫通ピン孔」に、「操作ピン35a?35e」が「コードピン」に、「第一変換鍵8」が「変換用のキー」に、「第二変換鍵9」が「別の変換用キー」に、「第一鍵6」が「前のキー」に、「第二鍵7」が「別のキー」に、「鍵変換式のピンタンブラー錠」が「キー変換式ピンタンブラー錠」に、それぞれ、相当する。
そうすると、両者は、
「ケーシング内に固定体が取付けられ、該固定体内に錠軸を有する回転体が回転可能に嵌挿され、該固定体と該回転体の当接する一面に回転面が形成され、該固定体には複数の有底ピン孔が穿設され、各有底ピン孔に各々ドライブピンが付勢されて挿入され、該回転体には回転面を介して各有底ピン孔に連通可能な複数の貫通ピン孔が穿設され、各貫通ピン孔には各々コードピンが挿入され、変換用のキーを錠の挿入口に差込み、該回転体を任意列回転させた状態で、代りに別の変換用のキーを該挿入口に差込み、該回転体を最初の位置まで回転させることにより、前のキーを使用不能とし、別のキーを使用可能とするキー変換式ピンタンブラー錠」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
本件発明が、ドライブピンのうちの少なくとも1本のドライブピンが、ピン本体上に小径部を介してピン先端部を一体的に設けて形成され、該小径部が変換用のキーによる回転体の回動時に、折れて分離可能な程度に細く短く形成されているのに対し、甲第1号証発明は、ドライブピン19a?19eのうちの少なくとも1本のドライブピン19bと操作ピン35bとの間に別体のボール29が設けられている点。

<相違点の検討>
ア 本件訂正明細書には、次のとおりの記載がある。
(ア)「【従来の技術】この種のキー変換式ピンタンブラー錠として、従来、円筒形のケーシング内に固定体を取付けると共に、その固定体の中心孔に錠軸を有する回転体を回転可能に嵌挿して、固定体と回転体の当接する一面に回転面を形成し、固定体には複数の有底ピン孔が穿設され、それらの有底ピン孔に各々ドライブピンが上方に付勢されて挿入され、回転体には回転面を介して各有底ピン孔に連通可能な複数の貫通ピン孔が穿設され、それらの貫通ピン孔にはコードピンが挿入され、上記ドライブピンのうちの1本が短く形成されると共に、その短寸のドライブピンの上、つまりピン孔の回転面側にボールが挿入されてなるピンタンブラー錠が知られている(例えば、実公平4-48296号公報参照)」(段落【0002】)
(イ)「【発明が解決しようとする課題】しかし、この種のキー変換式ピンタンブラー錠は、第一変換キーと第二変換キーを使用して、第一キーから第二キーへ容易にキーを変更することができるものの、その製造時には、非常に小さいボール(例えば直径約2mmの金属球)を用意し、組付工程でその小ボールを所定のピン孔に正確に挿入する必要がある。この種の組付工程は、通常、手作業で行われるが、非常に小さい金属球を手に持って所定の細い孔に正確に挿入する作業は、難しく、非常に煩雑となる問題があった。」(段落【0007】)、「本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、通常のピンタンブラー錠と同様に容易に組立を行うことができ、部品点数も削減できるキー変換式ピンタンブラー錠を提供することを目的とする。」(段落【0008】)
(ウ)「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明のキー変換式ピンタンブラー錠は、ケーシング内に固定体が取付けられ、固定体内に錠軸を有する回転体が回転可能に嵌挿され、固定体と回転体の当接する一面に回転面が形成され、固定体には複数の有底ピン孔が穿設され、各有底ピン孔に各々ドライブピンが付勢されて挿入され、回転体には回転面を介して各有底ピン孔に連通可能な複数の貫通ピン孔が穿設され、各貫通ピン孔には各々コードピンが挿入され、変換用のキーを錠の挿入口に差込み、回転体を任意列回転させた状態で、代りに別の変換用のキーを挿入口に差込み、回転体を最初の位置まで回転させることにより、前のキーを使用不能とし、別のキーを使用可能とするキー変換式ピンタンブラー錠において、ドライブピンのうちの少なくとも1本のドライブピンが、ピン本体上に小径部を介してピン先端部を一体的に設けて形成され、小径部が変換用のキーによる回転体の回動時に、折れて分離可能な程度に細く短く形成されていることを特徴とする。」(段落【0009】)
(エ)「【作用・効果】このような構成のキー変換式ピンタンブラー錠は、その製造時、ドライブピンが全て一体に形成され、従来必要としていた非常に小径の金属球を必要としないため、手作業の組付工程において、小さな金属球を所定の細い孔に手で挿入するような煩雑で難しい組み立て作業が不要となり、この種の錠を簡単に組み立てることができ、また、部品点数も削減することができる。」(段落【0010】)、「このキー変換式ピンタンブラー錠のキーを変換する場合、変換用のキーを錠の挿入口に差込み、それを回して回転体を任意列に回転させた状態で、代りに別の変換用のキーを挿入口に差込み、それを回す。このとき、特定のドライブピンのピン先端部が回転体の貫通ピン孔内に進入し、そのピン本体とピン先端部との間の小径部が回転面に位置するため、回転時に小径部が折れてピン先端部がピン本体から分離する。このため、分離したドライブピンのピン先端部が隣りのピン孔に移動し、残ったピン本体のドライブピンと移動したその隣りのドライブピン(コードピン)の長さが変り、解錠可能なキーが変換される。」(段落【0011】)

イ 本件訂正明細書の上記記載及び請求項1によれば、(a)キー変換式ピンタンブラー錠は、変換用のキーを錠の挿入口に差込み、回転体を任意列回転させた状態で、代りに別の変換用のキーを挿入口に差込み、回転体を最初の位置まで回転させることにより、前のキーを使用不能とし、別のキーを使用可能とする構成を有するものであり、(b)従来のキー変換式ピンタンブラー錠の製造時には、通常、手作業で非常に小さいボール(例えば直径約2mmの金属球)を所定のピン孔に正確に挿入するという、難しく、非常に煩雑な組付工程を要するという問題があったところ、(c)本件発明は、ドライブピンのうちの少なくとも1本のドライブピンが、ピン本体上に小径部を介してピン先端部を一体的に形成され、変換用のキーによる回転体の回動時に、ドライブピンの小径部が折れてピン先端部とピン本体部とを分離可能とする程度に当該小径部を細く短く形成するという構成(本件審決認定の相違点の構成)を採ることにより、組立て時には、ドライブピン本体とピン先端部を一体として取り扱えるようにして、小さな金属球を所定の細い孔に手で挿入するような煩雑で難しい組立作業を不要とするとともに、部品点数を削減し、組立て後には、ピンタンブラー錠として使用することを可能とし、変換用のキー(上記(a)の別の変換用のキー)による回転体の回動時に、ドライブピンの小径部が折れてピン先端部とピン本体部を分離しキー変換を可能とする効果を奏することを特徴とするものと認められる。
なお、請求項1の「ドライブピンが、ピン本体上に小径部を介してピン先端部を一体的に設けて形成され、該小径部が変換用のキーによる回転体の回動時に、折れて分離可能な程度に細く短く形成されている」との記載によれば、本件発明の「小径部」が折れてピン本体と先端部が分離する時期は、変換用のキーによる回転体の回動時であることは明らかであり、また、本件発明の「小径部」が「変換用のキーによる回転体の回動時に、折れて分離可能な程度」に細く短く構成されていることも明らかである。

ウ(ア)甲第1号証中には、組立て後のキー変換式ピンタンブラー錠におけるボールとドライブピンが「一体」であってもよいことの記載も示唆もないし、また、このことが技術常識から明らかであることを認めるに足りる証拠はない。
(イ)加えて、上記イで認定したとおり、本件発明は、ドライブピンのうちの少なくとも1本のドライブピンが、ピン本体上に小径部を介してピン先端部を一体的に形成され、変換用のキーによる回転体の回動時に、ドライブピンの小径部が折れてピン先端部とピン本体部とを分離可能とする程度に当該小径部を細く短く形成するという相違点に係る構成を採ることにより、組立て時に、小さな金属球を所定の細い孔に手で挿入するような煩雑で難しい組立作業を不要とし、部品点数を削減するのみならず、組立て後には、ピンタンブラー錠として使用することを可能としながら、変換用のキーによる回転体の回動時に、ドライブピンの小径部が折れてピン先端部がピン本体部から分離可能としてキー変換を可能とするものである。例え、「製品の製造時に、複数の部品の組み付けを容易にし、部品点数の低減を図るために、二以上の部品を一体に成形することは、広範な技術分野においてきわめて普通に行われ」、「ピン本体部及びピン先端部は、いずれもピン孔の内部において移動可能に挿入されるものであって、その材料、及び外径等の寸法等が共通する」としても、このことから直ちに、ボールとドライブピンという特定の部材に着目して、これらを小径部を介して一体化してドライブピンのピン本体部とピン先端部(ボールに相当する部分)とし、かつ、変換用のキーによる回転体の回動時に小径部が折れてピン先端部とピン本体部を分離し、キー変換を可能とする構成とすることが、当業者にとって当然考慮すべき設計的事項であるとすることはできない。
(ちなみに、甲第4号証ないし甲第8号証記載の発明は、本件発明と同一の技術分野における、前のキーを不要とし別のキーを使用可能とするキー変換式タンブラー錠ではあるが、いずれも、本件発明の「ドライブピンのうちの少なくとも1本のドライブピンが、ピン本体上に小径部を介してピン先端部を一体的に設けて形成され、該小径部が変換用のキーによる回転体の回動時に、折れて分離可能な程度に細く短く形成されている」構成を備えてない。
さらに、甲第9号証には、【特許請求の範囲】に、「【請求項1】シート状の封着金属合金母材を用いて電子ビーム、レーザー、スタンパー、エッチング等の加工方法によって並列された多数本のピン本体、この多数本のピン本体の頭部とそれぞれ簡単に切断可能に一体成形された上部フレ?ム、前記多数本のピン本体のティ?ル部とそれぞれ簡単に切断可能に一体成形された位置決め孔を有する下部フレ?ムとからなるICパッケ?ジ用マイクロリ?ドピン基板を製造するICパッケ?ジ用マイクロリ?ドピン基板形成工程と、・・・メッキ処理工程と、このメッキ処理工程後に・・・整列固定治具に多数枚のICパッケ?ジ用マイクロリ?ドピン板を位置決め状態に固定するICパッケ?ジ用マイクロリ?ドピン板の固定工程と、このICパッケ?ジ用マイクロリ?ドピン板の固定工程後に整列固定治具より上方に突出している上部フレ?ムを切断して除去する上部フレ?ム除去工程と、この上部フレ?ム除去工程後に・・・ロウ材付着工程と、このロウ材付着工程後にICチップあるいはICセラミックスレイヤ?パッケ?ジ用基板のリ?ドピン取付部と整列固定治具に整列固定されたロウ材が付着されたピン本体とを位置決めしてロウ付け固定するピン本体固定工程と、このピン本体固定工程後に整列固定治具を除去するとともに、下部フレ?ムをピン本体より切断して除去する下部フレ?ム除去工程とを含むことを特徴とするICパッケ?ジ用マイクロリ?ドピンのICチップ等への実装装着方法。」との記載がある。しかし、甲第9号証記載の技術は、上部フレーム及び下部フレームにより一体化された多数本のピン本体をICチップ等に装着する過程において、装着後は不要となる上部フレーム及び下部フレームを切断、除去して多数本のピン本体を分離するものであって、変換用のキーによる回転体の回動時に小径部が折れてドライブピンのピン先端部をピン本体部から分離する前においても、ピンタンブラー錠としての使用を可能としつつ、キー変換を可能とする本件発明の構成を示唆するものと認めることはできない。
このように、甲号各証には、いずれも、ボールとドライブピンを一体的に設けたことは記載されておらず、他にこれを設計的事項にすぎないと認めるに足りる証拠はない。)

エ したがって、本件発明は、甲第1号証ないし甲第9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

5.審判請求人が提出した上申書について
(5-1)平成19年1月5日付け上申書について
ア 請求人は、最高裁判所の上告棄却の後に、本件無効審判事件につき平成19年1月5日付け上申書を提出するとともに、新たな証拠である甲第10号証?甲第16号証を提示して、本件特許を無効にすべき次の理由1?5を主張している。
(1)理由1:本件発明は、小径部が折れるという現象のみを表現しているにすぎないから、当業者にとって従来技術から容易に想到できる。
(2)理由2:本件発明は、時期的限定をつけて、(小径部の)折れるという現象を表現した記載になっており、その(小径部の)折れる時点を特定しても何ら創作といえる程度の発明性はみいだせない、
(3)理由3:上申書添付の【図1】の赤い部分を除けば、本件発明は甲1と何ら変わらない。
(4)理由4:本件発明は、甲第1号証に基づいて当業者が当時の技術水準から容易に考え出すことができる。
(5)理由5:甲第10号証の発明に甲第11号証?甲第13号証記載の発明を組み合わせれば、本件発明を容易に想到することができる。また、甲第14号証記載の発明を、甲第15号証または甲第16号証記載の発明に組み合わせれば、本件発明を容易に発明をすることができる。

(新たな証拠)
甲第10号証:実願昭61-146565号(実開昭63-52658号)のマイクロフィルム
甲第11号証:特開昭52-15799号公報
甲第12号証:特公平7-45787号公報
甲第13号証:実願平5-18231号(実開平6-71805号)のCD-ROM
甲第14号証:米国特許第3998080号明細書
甲第15号証:米国特許第4233828号明細書
甲第16号証:米国再発行特許第28319号明細書

イ そこで、請求人の上記理由1?5について付言すると以下のとおりである。

(ア)理由1?4について
理由1において、請求人は、本件発明が小径部が折れるという現象のみを表現しているにすぎない旨主張するが、本件発明の「少なくとも1本のドライブピンが、ピン本体上に小径部を介してピン先端部を一体的に設けて形成され、該小径部が変換用のキーによる回転体の回動時に、折れて分離可能な程度に細く短く形成されている」点は、請求項1の記載をみれば、「小径部」が「折れて分離可能な程度に細く短く形成されている」ことを規定したものであって、「小径部が折れるという現象のみを表現しているにすぎない」ものでないことが明らかであるから、請求人の主張は理由がない。
(イ)理由2において、請求人は、(小径部の)折れる時点を特定しても何ら創作といえる程度の発明性はみいだせない旨主張するが、本件発明は、「<相違点の検討>」に記載したように、ドライブピンの小径部が折れてピン先端部とピン本体部を分離しキー変換を可能とする効果を奏することを特徴とするものであって、小径部が折れる時点(分離される時点)の前後で、キーとして使用可能である点に特徴があるといえるから、請求人の主張は理由がない。
(ウ)理由3において、上申書添付の【図1】の赤い部分を除けば、本件発明は甲1と変わらない旨主張するが、上述したように、本件発明は、上申書添付の【図1】の赤い部分小径部が分離される時点)の前後で、キーとして使用可能である点に特徴があり、該相違点が容易であるとの周知例等の証拠も示されていないから、請求人の主張は理由がない。
(エ)理由4において、本件発明は、甲第1号証に基づいて当業者が当時の技術水準から容易に考え出すことができる旨主張しているが、上記「<相違点の検討>」の項で検討したとおりであって、請求人の主張は理由がない。

(オ)理由5について
請求人は、甲第10号証の発明に甲第11号証ないし甲第13号証記載の発明を組み合わせれば、本件発明を容易に想到することができる。また、甲第14号証記載の発明を、甲第15号証または甲第16号証記載の発明に組み合わせれば、本件発明を容易に発明をすることができる旨主張する。
(なお、請求人は、甲第14号証ないし甲第16号証についての翻訳文を提出していない。)
そこで、甲第10号証をみると、該証拠には、自動車用のステアリングロック装置において、施錠時に回動を阻止されている回動部材を不正に解錠するために、ノブ1を外力により回動させた時、ノブ1の脚部1e,1fの脆弱部3,3の位置が破断され、未然に盗難を防止することが記載されており、脆弱部3,3の位置が破断された後は、使用できなくなるものであって、本件発明のように、キー変換式ピンタンブラー錠において、変換用のキーによる回転体の回動時にピン先端部が分離された後も、使用可能なものとは異なる。
また、甲第14号証(特に4欄3?32行,fig.6,fig.9及びfig.10参照)には、前のキーを不要とし別のキーを使用可能とするキー変換式タンブラー錠において、変換キー20がシリンダープラグ11を強制的に回転した時に、脆いタンブラー(frangible tumbler)32が、破壊されて減摩剤(dry lubricant)になることが記載されているが、本件発明の「ドライブピンのうちの少なくとも1本のドライブピンが、ピン本体上に小径部を介してピン先端部を一体的に設けて形成され、該小径部が変換用のキーによる回転体の回動時に、折れて分離可能な程度に細く短く形成されている」構成を備えていないことが明らかであるから、当該証拠により上述したところの本件発明の相違点に係る構成を当業者が容易に想到し得たといえないことは明らかである。
同様に、甲第11号証?甲第13号証並びに甲第15号証及び甲第16号証は、前のキーを不要とし別のキーを使用可能とするキー変換式タンブラー錠である点で本件発明と共通するとしても、いずれも、本件発明の「ドライブピンのうちの少なくとも1本のドライブピンが、ピン本体上に小径部を介してピン先端部を一体的に設けて形成され、該小径部が変換用のキーによる回転体の回動時に、折れて分離可能な程度に細く短く形成されている」構成を備えてない。
したがって、甲第10号証の発明に甲第11号証?甲第13号証記載の発明を組み合わせても、または、甲第14号証記載の発明を甲第15号証または甲第16号証記載の発明に組み合わせたとしても、上述したところの本件発明の相違点に係る構成を開示したものがいずれの証拠にもないのであるから、請求人の主張は採用できない。

(5-2)平成19年2月27日付け上申書(2)について
ア さらに、請求人は、平成19年2月27日付け上申書(2)を提出するとともに、新たな証拠である甲第17号証?甲第22号証を提示して、本件特許を無効にすべき旨を主張している。

(新たな証拠)
甲第17号証:徳丸芳男・岡野修一他8名、「機械工作2」、実教出版株式会社、P.34-35.
甲第18号証:特開昭52-15799号公報(甲第11号証に同じ。)
甲第19号証:インターネット検索における「タンブラー」の検索結果の写し。
甲第20号証:野村精機製造の「AUTOMATIC SCREW MACHINE NS-P 1053」の一部を写した写真。
甲第21号証:同上全体を写した写真。
甲第22号証:同上プレート部分を写した写真。

イ そこで、請求人の主張について付言すると以下のとおりである。
(ア)請求人は、本件発明と従来技術(甲第1号証記載の発明)との相違点は、当該従来技術から当業者が容易に想到できると主張するが、上記「(4-2-3)対比・判断」の「(i)判決(平成17年(行ケ)第10729号)による判示要旨」に記載したように、当該主張については上記判決で既に判示されているとおりである。
(イ)また、請求人によれば、甲第20?22号証はドライブピンを製造するための工作機械(以下、単に「旋盤」という。)の写真であるところ、請求人の主張内容は必ずしも明らかでないものの、「連なるピン(折れやすいピン)をピン孔に挿入して組付けること」は甲第14号証により公知の技術であるから、当該「連なるピン(折れやすいピン)」をこのような旋盤で製造すれば、相違点に係る構成が当業者により容易に得られる旨を主張していると解される。
しかしながら、上記相違点である「ピン本体上に小径部を介して先端部を一体的に設けて形成され」るという本件発明の構成が上記甲第20?22号証に示されているものではなく、また、甲第14号証には、変換キー20がシリンダープラグ11を強制的に回転した時に、脆いタンブラー32が破壊されて減摩剤になることが開示されているが、上述したように、そもそも本件発明の「小径部」に相当する構成が甲第14号証には開示されていないのであるから、両者の構成が一致することを前提とするものと解される請求人の主張は理由がないといわざるを得ない。

6.上記裁判事件において被告(請求人)が提出した乙号証について
ア ところで、請求人は、上記裁判事件において、次の乙1?8を挙げて、二以上の部品を一体に成形することにより、作業の効率化を図り、部品点数の低減を図ることは、極めて広範囲の技術分野において広く採用されている周知の技術であり、本件発明の効果は、二以上の部品を一体に成形することにより考えられる効果、すなわち「作業の効率化」及び「部品点数の低減」という効果以上の格別の効果を意味するものではないから、本件発明は、周知のキー変換式ピンタンブラー錠に、極めて周知な部品の一体化という技術を寄せ集めただけにすぎず、当業者であれば、相違点に係る本件発明の構成を容易に想到し得る旨主張する。

(乙号証)
乙1:実願昭61-168441号(実開昭63-73928号)のマイクロフィルム)
乙2:特開平5-38021号公報
乙3:特開平5-135652号公報
乙4:特開平6-164160号公報
乙5:特開平6-188039号公報
乙6:特開平5-259358号公報
乙7:特開平5-343480号公報
乙8:特開平5-343481号公報

イ これらの証拠に対する上記判決(平成17年(行ケ)第10729号)の判示内容は、次のとおりのものである。

(ア)乙1には、「実用新案登録請求の範囲」として、「リード端子がテーピングされたディスクリート部品において、前記リード端子には切断用の切込みが設けられていることを特徴とするディスクリート部品。」(明細書1頁)との記載がある。しかし、一方で、「このように構成された本考案のディスクリート部品をプリント配線基板の穴に手で押入するには、ディスクリート部品1を手でつかみ、リード端子2に入れてある切込み3の両側の方向に、交互に力を加えてリード端子2を切断し、・・・押入すればよい。」(明細書4頁3行?9行)との記載があることに照らすと、上記考案に係るディスクリート部品を使用してリード端子を配線基板に組み付ける際には、各リード端子を切断してプリント配線基板の穴に押入することが予定されているものであるから、乙1は、錠の組立て時に、ドライブピンのピン本体とピン先端部を一体として取り扱うことのできる本件発明の構成を示唆するものと認めることはできない。
(イ)乙2には、【特許請求の範囲】として、「【請求項1】配管の端末が接続固定される管継手部と、この管継手部につづいて設けられ配管に通された配線が収容される収容部と、この収容部の一面に設けられ配線が引き出される開口部とを備えた本体、および、この本体の前記開口部を着脱自在に塞ぐコンクリート侵入防止用キャップを備えてなる配管端末固定部材であって、・・・前記コンクリート侵入防止用キャップは、前記並設された本体のそれぞれの開口部に嵌入自在な複数個のキャップ単体が分離可能な連結部を介して一体に連設されていることを特徴とする配管端末固定部材。」との記載がある。しかし、一方で、「任意の個所で連結部を切断あるいは折れば、任意の個数の固定部材を分離することができるので、小分け販売を行ったり、1個所に複数個の固定部材を隣接させて施工するのも容易である。」(段落【0027】)との記載があることに照らすと、請求項1に係る配管端末固定部材を使用して配管端末に接続・組み付けをする際には、任意の個所で連結部を切断又は折ることが予定されているものであるから、乙2は、錠の組立て時に、ドライブピンのピン本体とピン先端部を一体として取り扱うことのできる本件発明の構成を示唆するものと認めることはできない。
(ウ)乙3には、【特許請求の範囲】として、「【請求項1】基材に透明で弾力性のある材料を用いて、多数個のキーボタン部を連結部で連結して一体化を図り、裏面に印刷表示を行ったキースイッチと、キースイッチの押圧を行う押圧凸部を形成した弾力性を有するキーシートとを重ね合わせたことを特徴とするキーボタン装置。」との記載がある。しかし、請求項1に係るキーボタン装置は、そもそも、キーボタン部の各々が分離されることを予定されていないから、乙3は、変換用のキーによる回転体の回動時に、ドライブピンの小径部が折れてピン先端部がピン本体部から分離可能とする本件発明の構成を示唆するものと認めることはできない。
(エ)乙4には、【特許請求の範囲】として、「【請求項1】スライドノブが装着されるフロントカバーにおいて、スライドノブのスライド部が、スライド部係合穴内に位置され、かつその移動方向への押圧力によって折損可能な連結部を介してスライド部係合穴の周縁部と一体成形されていることを特徴とするフロントカバー。」との記載がある。しかし、一方で、「上記構成のフロントカバー1に対してスライドスイッチを搭載したプリント基板を組付けるには、まず、フロントカバー1の凹部9にパネル8を嵌着しておく一方、プリント基板10に搭載したスライドスイッチ11の作動子の適宜に移動する。ついで、プリント基板10とフロントカバー1を組付けてスライドスイッチ11の作動子12をスライドノブ3の背面に設けた嵌合穴(図示せず)に嵌合した後、ノブ部6を介してスライドノブ3に対してその移動方向へ適宜の押圧力を付与して両連結部5を折損させる。」(段落【0007】)との記載があることに照らすと、請求項1に係るフロントカバーは、フロントカバー1と一体のスライドノブ3をスライドスイッチ11の作動子12に嵌合した後、連結部5を折損させるものであるが、上記折損によりスライドノブ3をフロントカバー1から分離しなければ機能しないものであるから、乙4は、変換用のキーによる回転体の回動時に小径部が折れてドライブピンのピン先端部をピン本体部から分離する前においても、ピンタンブラー錠としての使用を可能としつつ、キー変換を可能とする本件発明の構成を示唆するものと認めることはできない。
(オ)乙5には、【特許請求の範囲】として、「【請求項2】ボード側ピン端子(5)と、外部電極端子(31)が装着脱される接触部(2)と、前記接触部(2)の先端に設けられた略尖鋭形状の組立補助部(8)とを有する複数のコンタクトピン組立体(7)を、可動ロック部(11)に設けられた複数のコンタクトピン孔(110)にそれぞれ仮に挿通させるコンタクトピン組立体仮挿通工程と、前記組立補助部(8)および前記接触部(2)を前記複数のコンタクトピン孔(110)にそれぞれ押圧して挿入させるとともに、前記組立補助部(8)を前記接触部(2)から分離させて複数のコンタクトピン(1)を形成させるコンタクトピン挿通形成工程とを有することを特徴とするコネクタの組立方法。」との記載がある。しかし、請求項2に係る発明は、組立て後には不要となるコンタクトピン組立体(7)の組立補助部(8)を、コンタクトピン孔(110)に押圧挿入して分離するものであって、乙5は、変換用のキーによる回転体の回動時に小径部が折れてドライブピンのピン先端部をピン本体部から分離する前においても、ピンタンブラー錠としての使用を可能としつつ、キー変換を可能とする本件発明の構成を示唆するものと認めることはできない。
(カ)乙6は、上記甲第9号証と同一文献であり、上記「<相違点の検討>」の「ウ(イ)」で述べたように、乙6記載の技術は、上部フレーム及び下部フレームにより一体化された多数本のピン本体をICチップ等に装着する過程において、装着後は不要となる上部フレーム及び下部フレームを切断、除去して多数本のピン本体を分離するものであって、本件発明のように、変換用のキーによる回転体の回動時に小径部が折れてドライブピンのピン先端部をピン本体部から分離する前においても、ピンタンブラー錠としての使用を可能としつつ、キー変換を可能とする本件発明の構成を示唆するものと認めることはできない。
(キ)乙7、乙8記載の技術も、乙6記載の技術と同様に、多数本のマイクロピン本体をLSIチップ等に装着する過程において、多数本のマイクロピン本体を分離するものであって、本件発明のように、変換用のキーによる回転体の回動時に小径部が折れてドライブピンのピン先端部をピン本体部から分離する前においても、ピンタンブラー錠としての使用を可能としつつ、キー変換を可能とする本件発明の構成を示唆するものと認めることはできない。

したがって、上記の判示内容のとおり、乙1?8のいずれも、相違点に係る本件発明の構成を示唆するものと認めることはできない。

7.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許は、無効とすることができない。
また、本件発明に係る本件特許を無効とすべき他の理由を発見しない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
キー変換式ピンタンブラー錠
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】ケーシング内に固定体が取付けられ、該固定体内に錠軸を有する回転体が回転可能に嵌挿され、該固定体と該回転体の当接する一面に回転面が形成され、該固定体には複数の有底ピン孔が穿設され、各有底ピン孔に各々ドライブピンが付勢されて挿入され、該回転体には回転面を介して各有底ピン孔に連通可能な複数の貫通ピン孔が穿設され、各貫通ピン孔には各々コードピンが挿入され、変換用のキーを錠の挿入口に差込み、該回転体を任意列回転させた状態で、代りに別の変換用のキーを該挿入口に差込み、該回転体を最初の位置まで回転させることにより、前のキーを使用不能とし、別のキーを使用可能とするキー変換式ピンタンブラー錠において、
前記ドライブピンのうちの少なくとも1本のドライブピンが、ピン本体上に小径部を介してピン先端部を一体的に設けて形成され、該小径部が変換用のキーによる回転体の回動時に、折れて分離可能な程度に細く短く形成されていることを特徴とするキー変換式ピンタンブラー錠。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、キーを紛失或は盗難した場合などに、そのキーを使用不能とし、別のキーを使用可能とし得るキー変換式ピンタンブラー錠に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のキー変換式ピンタンブラー錠として、従来、円筒形のケーシング内に固定体を取付けると共に、その固定体の中心孔に錠軸を有する回転体を回転可能に嵌挿して、固定体と回転体の当接する一面に回転面を形成し、固定体には複数の有底ピン孔が穿設され、それらの有底ピン孔に各々ドライブピンが上方に付勢されて挿入され、回転体には回転面を介して各有底ピン孔に連通可能な複数の貫通ピン孔が穿設され、それらの貫通ピン孔にはコードピンが挿入され、上記ドライブピンのうちの1本が短く形成されると共に、その短寸のドライブピンの上、つまりピン孔の回転面側にボールが挿入されてなるピンタンブラー錠が知られている(例えば、実公平4-48296号公報参照)。
【0003】
このピンタンブラー錠には、錠の挿入口から差込み可能でコードピンを押圧するカム溝面と抜け止め用突起を有する通常の第一キーの他に、上記抜け止め用突起を有さずに、第一キーと同様なカム溝面を有する第一変換キーと、上記抜け止め用突起を有さずに、第一キー(第一変換キー)とはボール1個分相違したカム溝面を有する第二変換キーと、上記抜け止め用突起を有すると共に、第二変換キーと同様なカム溝面を有する第二キーとが備えられる。
【0004】
そして、第一キーを紛失し、専用キーを第二キーに変更する場合、第一変換キーを錠本体の挿入口に差込み、そのキーを回すことにより、回転体を任意列分(例えば1ポジション)回転させ、その状態で第一変換キーを引き抜く。
【0005】
次に、第二変換キーを錠本体の挿入口に差込む。このとき、第二変換キーは第一変換キー(第一キー)とはボール1個分相違したカム溝面を有しているため、ボールが回転体内の貫通ピン孔に移動し全てのドライブピンは固定体内の有底ピン孔内に退避する。
【0006】
したがって、この状態で第二変換キーを回すと、ボールが回転体内の貫通ピン孔と共に回転して移動し、回転体を最初の位置まで回転させたところで、第二変換キーを引き抜く。これにより、ボールが入り込んだ列のピン孔内のコードピンはボール一個分だけ、キー挿入孔内に突出する。したがって、第二キーのピン押圧用のカム溝面はボール1個分だけ相違しているため、第二キーだけが使用可能となり、第一キーは使用不能となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この種のキー変換式ピンタンブラー錠は、第一変換キーと第二変換キーを使用して、第一キーから第二キーへ容易にキーを変更することができるものの、その製造時には、非常に小さいボール(例えば直径約2mmの金属球)を用意し、組付工程でその小ボールを所定のピン孔に正確に挿入する必要がある。この種の組付工程は、通常、手作業で行われるが、非常に小さい金属球を手に持って所定の細い孔に正確に挿入する作業は、難しく、非常に煩雑となる問題があった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、通常のピンタンブラー錠と同様に容易に組立を行うことができ、部品点数も削減できるキー変換式ピンタンブラー錠を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のキー変換式ピンタンブラー錠は、ケーシング内に固定体が取付けられ、固定体内に錠軸を有する回転体が回転可能に嵌挿され、固定体と回転体の当接する一面に回転面が形成され、固定体には複数の有底ピン孔が穿設され、各有底ピン孔に各々ドライブピンが付勢されて挿入され、回転体には回転面を介して各有底ピン孔に連通可能な複数の貫通ピン孔が穿設され、各貫通ピン孔には各々コードピンが挿入され、変換用のキーを錠の挿入口に差込み、回転体を任意列回転させた状態で、代りに別の変換用のキーを挿入口に差込み、回転体を最初の位置まで回転させることにより、前のキーを使用不能とし、別のキーを使用可能とするキー変換式ピンタンブラー錠において、ドライブピンのうちの少なくとも1本のドライブピンが、ピン本体上に小径部を介してピン先端部を一体的に設けて形成され、小径部が変換用のキーによる回転体の回動時に、折れて分離可能な程度に細く短く形成されていることを特徴とする。
【0010】
【作用・効果】
このような構成のキー変換式ピンタンブラー錠は、その製造時、ドライブピンが全て一体に形成され、従来必要としていた非常に小径の金属球を必要としないため、手作業の組付工程において、小さな金属球を所定の細い孔に手で挿入するような煩雑で難しい組み立て作業が不要となり、この種の錠を簡単に組み立てることができ、また、部品点数も削減することができる。
【0011】
このキー変換式ピンタンブラー錠のキーを変換する場合、変換用のキーを錠の挿入口に差込み、それを回して回転体を任意列に回転させた状態で、代りに別の変換用のキーを挿入口に差込み、それを回す。このとき、特定のドライブピンのピン先端部が回転体の貫通ピン孔内に進入し、そのピン本体とピン先端部との間の小径部が回転面に位置するため、回転時に小径部が折れてピン先端部がピン本体から分離する。このため、分離したドライブピンのピン先端部が隣りのピン孔に移動し、残ったピン本体のドライブピンと移動したその隣りのドライブピン(コードピン)の長さが変り、解錠可能なキーが変換される。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1はキー変換式ピンタンブラー錠の縦断面図を示し、図2はその平面図を、図3はそのIII-III断面図を示している。1は円筒形のケーシングであり、ケーシング1の上部にはキーの挿入口1aが円形で一部に切欠凹部を設けて形成される。さらに、ケーシング1内には固定体2が挿入され、側部から固定ピン1bを打ち込むことにより、そこに固定される。
【0014】
固定体2の軸中心に中心孔が設けられ、その中心孔に錠軸3aを有する回転体3が回転可能に嵌挿され、固定体2と回転体3の当接する水平面に回転面Mが形成される。また、回転体3の上部にはキーが係合する切欠付きの係合部3bが突設される。
【0015】
固定体2には、例えば7個の有底ピン孔が所定間隔で穿設され、それらの有底ピン孔に各々ドライブピン4A?4Gが収容される。ドライブピン4A?4Gの下部には脚部が設けられ、その脚部にコイルばね5が装着され、ドライブピンを上方に付勢する。脚部はドライブピンがキーにより押込まれた際のストッパとなるものである。
【0016】
さらに、回転体3の大径部には、回転面Mを介して各有底ピン孔に連通可能な7個の貫通ピン孔が穿設され、それらの貫通ピン孔に各々コードピン6A?6Gが挿入される。各コードピン6の長さは、解錠用のキーに設けるピン押圧用カム溝に応じて設定される。
【0017】
上記ドライブピン4A?4Gのうちの1本のドライブピン4Cは、図4に示すように、ピン本体4aの上に小径部4bを介してピン先端部4cが一体的に設けられて形成される。このドライブピン4の小径部4bは、変換キーによる回転体3の回動時に、折れて分離可能な程度に細く、また、分離した後その小径部がピンの動作に悪影響を与えない程度に短く形成される。
【0018】
小径部4bの直径と長さは、ピンの大きさや材質により変るが、例えば、銅合金製で直径2.5mmのドライブピンの場合、小径部4bの直径は約0.3mmで、その長さ約0.2mmに設定される。この程度の寸法の小径部4bであれば、通常の旋盤で加工することができ、小径部4bが組付工程等で簡単に折れることはなく、一体成形されたドライブピンとして組み付けることができる。
【0019】
また、ドライブピン4Cのピン先端部4cとピン本体4aの先端部は、各々分離した後、回転面Mにおいて容易に回転が可能なように、他のドライブピンと同様に略半球形に形成されている。
【0020】
図1において7は、固定体2と回転体3の間に配置された回転体位置決め用の鋼球であり、回転体3の回転時に、解錠位置及びキー変換位置に節度をもって回転体を停止させる。
【0021】
図7は第一キー10を示し、円筒形の第一キー10の先端には、操作時に各コードピンを押圧するためのカム溝10aが形成され、それらのカム溝の形状は、各コードピン6A?6Gの長さに対応して設定され、キー10を錠の挿入口1aに差込みコードピン6A?6Gを押込んだ際、コードピン6A?6Gの下端が回転面Mに合致し、解錠状態とするように形成される。
【0022】
また、キー10の先端側部には、抜け防止用の突起10bが突設され、キー10を挿入口1aに差込み回転させた際、挿入口1aの縁部に突起10bが当りキーの抜けを防止する。
【0023】
図8は第一変換キー11を示し、この第一変換キー11は、第一キー10と同じ形状のカム溝11aを有しているが、抜け防止用の突起はない。
【0024】
図9は第二変換キー12を示し、この第二変換キー12には、上記ドライブピン4Cのピン先端部4cの分だけ第一変換キー11のカム溝11aと相違したカム溝12aが形成され、また、抜け防止用の突起はない。
【0025】
図10は第二キー13を示し、この第二キー13には、上記第二変換キー12と同じ形状のカム溝13aを有し、先端側部には、抜け防止用の突起13bが突設される。
【0026】
次に、上記構成のキー変換式ピンタンブラー錠のキーの変換動作を、図5、図6により説明する。
【0027】
第一キー10で解錠可能な錠を、第二キー13でのみ解錠可能に変換する場合、先ず、第一変換キー11を錠の挿入口1aに差込む。すると、図5の(A)から(B)に示すように、キー11先端のカム溝11aがコードピン6A?6Gを押込み、コードピン6A?6Gの下端部(ドライブピン4A?4Gとの当接面)が回転面Mに一致する。
【0028】
次に、キー11を回すことにより、回転体3を固定体2に対し1ポジションだけ回転させ、図5の(C)の状態とする。そして、その状態で図5の(D)のように、第一変換キー11を抜く。この状態で、ドライブピン4Cのピン先端部4cはコードピン6Dの下に入り込んだ状態となる。
【0029】
次に、第二変換キー12を錠の挿入口1aに差込む。すると、図6の(E)に示すように、コードピン6A?6C、6E?6Gの下端部(ドライブピン4A?4C4E?4Gとの当接面)が回転面Mに一致すると共に、ドライブピン4Cのピン本体4aとピン先端部4c間の小径部4bが回転面Mに一致する。
【0030】
この状態で、第二変換キー12を前回とは逆に1ポジションだけ元の位置まで回転させると、ドライブピン4Cの小径部4bが折れて、ピン先端部4cがピン本体4aから分離し、隣のドライブピン4Dの上に位置することになる。そして、第二変換キー12を抜くと、図6の(G)の状態となり、この状態は、キー変換を行なう前の図5の(A)と比べ、ピン先端部4cがコードピン6Dの下側に入り、コードピン6Dの長さが実質的に長く変ったことになる。
【0031】
したがって、前のキー10を挿入口1aに差し込もうとした場合、図6の(H)に示すように、ドライブピン4Dの脚部が有底ピン孔の底部に当接して、キーを押込むことができず、前のキー10は使用不能となり、第二変換キー12と同じカム溝13aを持った第二キー13が使用可能なキーとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例を示すキー変換式ピンタンブラー錠の縦断面図である。
【図2】
同ピンタンブラー錠の平面図である。
【図3】
図1のIII-III断面図である。
【図4】
ドライブピン4Cの拡大正面図である。
【図5】
キー変換の動作を示す錠内部の部分断面図である。
【図6】
キー変換の動作を示す錠内部の部分断面図である。
【図7】
第一キーの斜視図である。
【図8】
第一変換キーの斜視図である。
【図9】
第二変換キーの斜視図である。
【図10】
第二キーの斜視図である。
【符号の説明】
1-ケーシング、
2-固定体、
3-回転体、
4A?4G-ドライブピン、
6A?6G-コードピン、
M-回転面、
4a-ピン本体、
4b-小径部、
4c-ピン先端部。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2005-08-19 
結審通知日 2005-08-23 
審決日 2005-09-05 
出願番号 特願平7-88321
審決分類 P 1 113・ 531- YA (E05B)
P 1 113・ 121- YA (E05B)
P 1 113・ 534- YA (E05B)
P 1 113・ 832- YA (E05B)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 石井 哲
宮川 哲伸
登録日 2001-02-16 
登録番号 特許第3158269号(P3158269)
発明の名称 キー変換式ピンタンブラー錠  
代理人 江間 路子  
代理人 飯田 昭夫  
代理人 南島 昇  
代理人 飯田 昭夫  
代理人 服部 雅紀  
代理人 江間 路子  

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