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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1161473
審判番号 不服2004-16374  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-05 
確定日 2007-07-25 
事件の表示 特願2002-179601「印刷装置およびカートリッジ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月18日出願公開、特開2003- 48332〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定

本願は、平成11年11月25日に出願された特願平11-334016号の一部を特許法44条1項の規定により新たな特許出願とした(国内優先権主張 平成10年11月26日、平成10年12月24日、平成11年01月11日、平成11年08月26日及び平成11年10月18日)ものであって、平成16年6月24日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年8月5日付けで本件審判請求がされたものである。

本願の請求項1,21に係る発明は、平成15年11月17日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の【請求項1】及び【請求項21】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

【請求項1】:「インクを収容すると共に書き換え可能な不揮発性メモリを備えたカートリッジが装着可能であり、該カートリッジのインクを印刷媒体に移して印刷を行なう印刷装置であって、
書き換え可能な本体側メモリと、
前記印刷媒体への印刷の実行に伴って消費される前記カートリッジ内のインク量に関する情報を、所定ビット数のデータとして、前記本体側メモリに記憶する情報書込手段と、
前記情報書込手段が前記本体側メモリに記憶する前記インク量に関する情報を、そのデータの下位ビットを削除することにより、前記ビット数より少ないビット数のデータに変換して、前記カートリッジに備えられた不揮発性メモリに書き込むメモリ書込手段と
を備えた印刷装置。」(以下、「本願発明1」という。)

【請求項21】:「インクを収容すると共に書き換え可能な不揮発性メモリを備え、印刷装置に装着して用いられるカートリッジであって、
前記不揮発性メモリは、印刷の実行に伴って消費される前記カートリッジ内のインク量に関する情報が、そのデータの下位ビットを削除することにより、前記印刷装置側で扱われているビット数より少ないビット数に変換されて書き込まれる、
カートリッジ。」(以下、「本願発明21」という。)


第2 引用刊行物記載の発明

原査定の拒絶の理由に引用された特開昭62-184856号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?クの記載が図示とともにある。

ア.「記録用のインクを収容し、プリンタに着脱自在となしたインクカートリッジにおいて、前記インクの残量を書き換え可能に記憶する記憶手段を具え、該記憶手段に記憶される前記インクの残量を前記プリンタの側から書き換えることができるようにしたことを特徴とするインクカートリッジ。」(1頁左下欄5?11行)

イ.「従来、プリンタ用のインクカートリッジにはコスト面および取扱い上の見地から余分な付属部品を極力設けないようにするのが通常であった。」(1頁右下欄7?9行)

ウ.「更に第2A図および2B図はプリンタにおけるインクカートリッジ1の収納部の構成を示し、6はそのインクカートリッジ収納部7の上面に取付けられた接続用の電極である。」(2頁右上欄19?左下欄2行)

エ.「収納部7にカートリッジ1が挿入されると吸針8がインクチューブ2に差し込まれると共に接続用電極6とカートリッジ側の電極4とが互いに接続される。」(2頁左下欄7行?10行)

オ.「カートリッジ1側の電極4とプリンタ側の電極6との構成を一例として第3図に示すが、このように、双方の電極4および6には互いの対向する位置に端子群が設けられていて、不揮発性メモリ3に電源を供給するライン系CE、+V,およびGND,データの書き込みアドレスを供給するアドレスバスDIおよびDO、メモリ内容の読み出し書き込みの指示信号を出力するRCおよびSTR、インクカートリッジが所定の位置にセットされたか否かの検知信号を出力するIS、更にまたクロック信号を供給するためのSK等の制御用信号線を互いに電気的に接続することができる。」(2頁左下欄12行?右下欄3行)

カ.「第4図は本発明にかかるインク残量検出のための制御回路の構成の一例を示し、11はプリンタ制御部、12はメモリRAM、13は減算器、14はプリンタ操作SW群である。」(2頁右下欄4行?7行)

キ.「プリンタの電源スイッチが“オン”されプリンタが動作状態に入ると同時にプリンタ制御部11では電極4と6との接続部を介してインクカートリッジ1に取付けられている書き換え可能な不揮発性メモリ3の内容、すなわちインク残量に関するデータが読み出され、プリンタ本体のメモリ12に書き込まれる。そこで、プリンタ操作SW群14中のプリントSWが押されプリントが開始されると、例えばその1ラインごとにインク残量のデータが減算器13により減算されていく。この減算する値はプリント1ライン分のインク使用量およびインク不吐出回復用ボンピングのインク使用量などに対応して設定される。」(2頁右下欄9行?3頁左上欄1行)

ク.「なおインク残量のカウント値がインクカートリッジ1に取付けられている書き換え可能な不揮発性メモリ3に書き込まれるタイミングは、インクカートリッジ1が所定の位置に納められているか否かを検知する信号線ISを利用してカートリッジ1の取外されたことが検知された時点で行うか、または電源をオフした時点において行うようにすればよく、あるいはまた、プリント中において上述したようにインク残量の値が変化する都度行うようにしてもよい。
また、プリンタ途中などでインクカートリッジ1が取りはずされた場合には、取りはずされた時点でインク残量の値が書き込まれるので、インクカートリッジ1が再度取付けられる場合にはその時点でそのインク残量の値がプリンタ制御部11により読み出され、上述の動作が継続される。」(3頁左上欄7行?右上欄2行)

この記載事項によると,引用例1には,

「記録用のインクを収容し、プリンタに着脱自在となしたインクカートリッジが挿入される収納部を備えたプリンタであって、
プリンタの電源を“オン”する電源スイッチと、
メモリRAMと、
プリンタの電源スイッチが“オン”されプリンタが動作状態に入ると同時に、インクカートリッジに取り付けられている書き換え可能な不揮発性メモリの内容、すなわちインク残量に関するデータを読み出し、メモリRAMに書き込むプリンタ制御部11と、
プリントが開始されると、1ラインごとに、プリント1ライン分のインク使用量およびインク不吐出回復用ボンピングのインク使用量などに対応して設定された減算する値を、インク残量のデータから減算する減算器13とを有し、
インクカートリッジの取外されたことが検知された時点、または電源をオフした時点、あるいはプリント中においてインク残量の値が変化する都度、その時点でのインク残量のカウント値を、インクカートリッジに取り付けられている書き換え可能な不揮発性メモリにプリンタの側から書き換える、プリンタ。」(以下、「引用発明1」という。)

「記録用のインクを収容し、プリンタに着脱自在となしたインクカートリッジにおいて、前記インクの残量を書き換え可能に記憶する記憶手段を具え、該記憶手段に記憶される前記インクの残量を前記プリンタの側から書き換えることができるようにしたことを特徴とするインクカートリッジ。」(以下、「引用発明2」という。)

が記載されていると認められる。


第3.本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点の認定
引用発明1の「インクカートリッジ」、「プリンタ」、「プリンタ本体のメモリRAM」は、それぞれ本願発明1の「インクを収容するカートリッジ」、「印刷装置」、「書き換え可能な本体側メモリ」に相当する。
また、引用発明1の「インクカートリッジ」には、「不揮発性メモリ」が取り付けられているのだから、当該「インクカートリッジ」は、本願発明1の「カートリッジ」と、「書き換え可能な不揮発性メモリを備えたカートリッジ」である点でも共通している。
また、引用発明1の「プリンタに着脱自在となしたインクカートリッジが挿入される収納部を備えたプリンタ」は、本願発明1の「カートリッジが装着可能であ」る「印刷装置」に相当する。
また、引用例1の明細書の記載全体からみて、引用発明1がいわゆるインクジェット式の印刷装置であることが自明なのだから、「インクカートリッジ」のインクが、「印刷媒体に移」されて印刷が行われていること、及び「印刷媒体への印刷の実行に伴って消費される」ことは、いずれも明かである。
また本願発明1の「インク量に関する情報」も引用発明1の「インク残量のカウント値」も、いずれも「不揮発性メモリ」に書き込まれるのだから、引用発明1の「インク残量のカウント値」は、本願発明1の「インク量に関する情報」と「インク量に関するデジタルデータ」である点で共通している。
また、引用発明1においては、「インク残量のカウント値」を、不揮発性メモリにプリンタの側から書き換えるのだから、プリンタがインクカートリッジに備えられた不揮発性メモリに書き込むメモリ書込手段を備えていることは明かである。

したがって、本願発明1と引用発明1とは、

「インクを収容すると共に書き換え可能な不揮発性メモリを備えたカートリッジが装着可能であり、該カートリッジのインクを印刷媒体に移して印刷を行なう印刷装置であって、
書き換え可能な本体側メモリと、
前記印刷媒体への印刷の実行に伴って消費される前記カートリッジ内のインク量に関する情報を、デジタルデータとして、前記カートリッジに備えられた不揮発性メモリに書き込むメモリ書込手段を備えた印刷装置。」である点で一致し、以下の2点で相違する。

〈相違点1〉本願発明1は「前記印刷媒体への印刷の実行に伴って消費される前記カートリッジ内のインク量に関する情報を、所定ビット数のデータとして、前記本体側メモリに記憶する情報書込手段」を有するのに対し、引用発明1はかかる構成を採用しているか否か明らかではない点。

〈相違点2〉本願発明1は「前記情報書込手段が前記本体側メモリに記憶する前記インク量に関する情報を、そのデータの下位ビットを削除することにより、前記ビット数より少ないビット数のデータに変換して、前記カートリッジに備えられた不揮発性メモリに書き込むメモリ書込手段」を有するのに対し、引用発明1はかかる構成を採用しているか否か明らかではない点。


第4.本願発明1についての当審の判断
(1)相違点1について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平09-001823号公報(以下「引用例2」という。)には、「上位装置から転送されて画像メモリ13に蓄積された記録データが黒画素カウンタ部12を通して記録部2に転送され、記録部2でインクジェット式記録ヘッドによる記録紙上への記録が開始されると、黒画素カウンタ部12は画像メモリ13から記録部2に転送される記録データのうちの黒の画素数のみをカウントする(図2ステップS1)。
主制御部11は画像メモリ13から記録部2に1ページ分の記録データが転送されたか否かを判定する(図2ステップS2)。主制御部11は記録部2に1ページ分の記録データが転送されたと判定すると、黒画素カウンタ部12からそのカウント値を読出し(図2ステップS3)、黒画素カウンタ部12をリセットしてそのカウント値を0に初期化する(図2ステップS4)。
同時に、主制御部11はRAM14に格納された前回までの累積黒画素数にそのカウント値を加算してRAM14に格納することで、RAM14の累積黒画素数を更新する(図2ステップS5)。
」(【0023】-【0025】)と記載されている。

この記載事項によると、引用例2には、
「主制御部11はインクジェット式プリンタが有するRAM14に格納された前回までの累積黒画素数に、黒画素カウンタ部12がカウントしたカウント値を加算してRAM14に格納するのと同時に、黒画素カウンタ部12をリセットしてそのカウント値を0に初期化する」点が記載されている。

故に相違点1に係る本願発明1の構成は、引用例2に記載されている。

そして、引用発明1において、メモリRAMと減算器13との関係がどのようになっているかは、[第2 1.記載キ]以外には明らかでないが、引用発明1の「インク残量のカウント値」と引用例2に記載の「累積黒画素数」とは、残量であるか消費量であるかの相違でしかないのだから、引用発明1においても、引用例2に記載されているように、カウンタでカウントされたカウント値をメモリRAMに格納されたデータから減算し、この減算されたデータをメモリRAMに再度格納するように構成することは、RAMを演算結果の一時的な保存手段として用いることが一般的であることを考慮すると想到容易である(残量か消費量かの相違により、加算か減算か異なることは当然のことである。)。

(2)相違点2について
消耗品である「インクカートリッジ」を、低コストで製造したいという技術課題は一般的技術課題であり(引用例1([第2 1.記載イ])参照)、引用発明1のような「不揮発性メモリを備えたカートリッジ」においては、メモリ容量が大きい程高コストになるのだから、メモリ容量をできるだけ小さくすることは、当業者が当然に考慮すべき事項である(特開平08-224886号公報(【0021】)参照)。

一方で、メモリ容量は、記憶すべきデータサイズ(ビット数)に応じて、その大きさを設定する必要がある。
引用発明1においては、プリンタの電源スイッチが“オン”されプリンタが動作状態に入ると同時に、インクカートリッジに取り付けられている書き換え可能な不揮発性メモリの内容、すなわちインク残量に関するデータが読み出され減算処理に供されることとなっている。また[第2 1.記載キ]からみて、カートリッジが取外された後再度装着された時点においても、インク残量に関するデータが読み出され減算処理に供されると推測できる。そうするとカートリッジの通常の使用形態では、インクが消費され尽くすまでに、インク残量に関するデータが読み出される回数は、せいぜい100回程度と考えるのが普通である。
一方プリンタのメモリRAMに減算器13による減算結果を格納するように設計した場合、メモリRAMからは1ラインごとに、インク残量に関するデータが読み出され減算処理に供されることとなる。
してみるに、インクカートリッジに取り付けられている書き換え可能な不揮発性メモリからインク残量に関するデータが読み出される頻度と、プリンタのメモリRAMからインク残量に関するデータが読み出される頻度とを比較すると、前者の方が圧倒的に小さく、インク残量に関するデータが次に読み出されるまでに減算される数の大きさは前者の方が桁違いに大きいのだから、インク残量に関するデータの精度を、後者に比べて前者の方を桁違いに低くしても、インク残量に関するデータの許容誤差が維持されることは明らかである。

例えば、例を示すまでもなく周知のインク吐出回数をカウントすることでインク残量を測定するインク残量測定部を備えたインクジェットプリンタにおいては、例えば特開平08-224891号公報には、「ヘッド部71は、具体的には、128個の吐出口を有していて各吐出口からのインク吐出量は、1インク滴当り約90ng(1ng=1×10-9g)である。」(【0026】)、「ここで、カラーヘッドに用いるインクタンクのネットはインク量、Bkタンクで20g、カラータンクで各色C,M,Yとも10gであるため下記のような設定値C-Bkl,Col-1を設定した。」(【0112】)と記載されており、インクカートリッジに収容される全インク量20gに占めるインク1滴の量90ngは、4.5×10-7%(必要なカウントデータサイズは2進数で28ビット程度となる)に過ぎない。
引用発明1を含めインク残量測定部を備えたインクジェットプリンタのプリンタ内では前記のように1インク滴単位でカウントすることにより高精度でインク残量を管理することとなっているが、許容誤差の観点では、インクカートリッジに取り付けられている書き換え可能な不揮発性メモリに記憶されるインク残量の精度は、インク残量データが読み出される頻度が小さく、次にインク残量データが読み出されるまでに消費されるインク量が大きいことを考慮すれば、これ程までに必要とされないことが理解される。

そうすると、インクカートリッジに取り付けられている書き換え可能な不揮発性メモリ容量を小さくするために、本体側メモリであるRAMに記憶された28ビット程度のデータの精度を、必要とされる精度の範囲内で落として記憶するように構成する程度のことは、想到容易である。

そして、データ精度を必要とされる精度の範囲内で落とすにあたって、精度上の必要性が比較的少ないデータの下位ビットを削除するという周知の手法(特開平10-044567号公報(【0034】-【0035】)、特開平06-261337号公報(【0017】-【0021】)、特開平06-103579号公報(【0012】)、特開平06-187438号公報(【0007】)参照)を採用する程度のことは、発明を具体化するにあたって当業者が適宜設計しうる程度の事項に過ぎない。

すなわち、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、当業者にとって想到容易である。

(3)本願発明1の進歩性の判断
相違点1,2に係る本願発明の構成を採用することは、設計事項又は当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。

したがって、本願発明1は引用発明1、引用例2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。


第5.本願発明21と引用発明2との一致点及び相違点の認定
引用発明2の「インクカートリッジ」、「プリンタ」は、それぞれ本願発明21の「インクを収容するカートリッジ」、「印刷装置」に相当する。
また、引用発明2の「インクカートリッジ」は、記載キ、クからみて、インクの残量を書き換え可能に記憶する不揮発性メモリを備えているのだから、当該「インクカートリッジ」は、本願発明21の「カートリッジ」と、「書き換え可能な不揮発性メモリを備えたカートリッジ」である点でも共通している。
また、引用発明2の「プリンタに着脱自在となしたインクカートリッジ」は、本願発明21の「印刷装置に装着して用いられるカートリッジ」に相当する。

したがって、本願発明21と引用発明2とは、
「インクを収容すると共に書き換え可能な不揮発性メモリを備え、印刷装置に装着して用いられるカートリッジ。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。

〈相違点〉
本願発明21では、「前記不揮発性メモリは、印刷の実行に伴って消費される前記カートリッジ内のインク量に関する情報が、そのデータの下位ビットを削除することにより、前記印刷装置側で扱われているビット数より少ないビット数に変換されて書き込まれる」のに対して、引用発明2では、かかる構成を採用していない点。


第6.本願発明21についての当審の判断
(1)相違点について
「前記不揮発性メモリは、印刷の実行に伴って消費される前記カートリッジ内のインク量に関する情報が、そのデータの下位ビットを削除することにより、前記印刷装置側で扱われているビット数より少ないビット数に変換されて書き込まれる」という事項が、印刷装置において実行されるのか、カートリッジにおいて実行されるのか不明であるので、本願明細書を参照するに、「次に32ビットで演算されEEPROM90に書き込まれたインク残量Inを8ビットの値Ieに換算する処理を行う(ステップs48)・・・換算した8ビットの換算値IeをRAM44の所定の領域に書き込む処理を行なう(ステップs49)」(【0083】-【0084】、【図11】)と記載されていることから、上記の事項は印刷装置において実行されるものと理解できる。
さてこの事項が、「カートリッジ」を特定する事項であるか否かであるが、カートリッジが備える不揮発性メモリは、印刷装置側から送られてきたデータを記憶する機能を有するだけであって、印刷装置側から送られてきた同じビット数のデータを記憶するにあたって、そのデータが、印刷装置側において下位ビットを削除されたデータなのか、それともそうでないデータなのか区別がつかないのだから、この事項が「カートリッジ」を特定することにはならない。
つまり、この事項は、単に「印刷の実行に伴って消費されるカートリッジ内のインク量に関するデータを印刷装置側のメモリに記憶し、該インク量に関するデータの下位ビットを削除してカートリッジに書き込む手段を備えた印刷装置」にカートリッジを装着することができることを特定するにすぎないのである。
そうすると、引用発明2のカートリッジは、明らかに「印刷の実行に伴って消費されるカートリッジ内のインク量に関するデータを印刷装置側のメモリに記憶し、該インク量に関するデータの下位ビットを削除してカートリッジに書き込む手段を備えた印刷装置」に装着することができるのだから、この相違点は実質的な相違点ではない。

したがって、本願発明21と引用発明2とは一致しており、相違するところはない。

(3)本願発明21の新規性の判断

したがって、本願発明21は引用例1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができない。

第7.むすび

本願発明1,21が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-16 
結審通知日 2007-05-22 
審決日 2007-06-04 
出願番号 特願2002-179601(P2002-179601)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
P 1 8・ 113- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 時男  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 尾崎 俊彦
名取 乾治
発明の名称 印刷装置およびカートリッジ  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  

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