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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C11D |
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管理番号 | 1161822 |
審判番号 | 不服2002-10391 |
総通号数 | 93 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-06-10 |
確定日 | 2007-08-20 |
事件の表示 | 平成10年特許願第513038号「カラーセーフブリーチ増強剤、それを用いた組成物および洗濯方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 4月23日国際公開、WO98/16614、平成12年 2月15日国内公表、特表2000-501773〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成9年8月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1996年8月29日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成14年2月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月20日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成14年6月20日付け手続補正書による補正の適否について 平成14年6月20日付け手続補正書により、請求項16?21の末尾が補正前の「洗濯製品」から「洗濯添加製品」に補正された。当該補正は、平成14年2月26日付け拒絶査定において審査官が指摘した、補正前の請求項15の末尾「洗濯添加製品」と、請求項15を引用する請求項16?21の末尾「洗濯製品」との間の記載の不整合を正すものであり、特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められ、17条の2第5項の規定を適用されない補正である。そして、洗濯添加物を含む洗濯添加製品は出願当初の請求項2に記載されているから、この補正は新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満足するものである。 したがって、当該補正は適法なものと認められる。 3.本願発明 上記のように補正が認められるので、本願の請求項1?21に係る発明は、平成13年2月20日付け手続補正書及び平成14年6月20日付け手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?21に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 ペルオキシゲン供給源と、下記式を有するブリーチ増強剤: (上記式中R1?R3は水素、あるいはアリール、ヘテロ環式環、アルキルおよびシクロアルキル基からなる群より選択される非置換または置換基である;R1およびR2は共通環の一部を形成している;Tは以下である: 上記式中xは0または1である;Jは、存在するとき、‐CR11R12‐、‐CR11R12CR13R14‐および‐CR11R12CR13R14CR15R16‐からなる群より選択される;R7?R16はH、直鎖または分岐C1‐C18置換または非置換アルキル、アルキレン、オキシアルキレン、アリール、置換アリール、置換アリールカルボニル基およびアミド基からなる群より選択される;但し、R7?R8のうち少くとも1つはHまたはメチルでなければならず、R9もR10もHでないとき、R7?R8のうち1つはHでなければならない;Zはxが1であるときJxに、およびxが0であるときCbに共有結合されていて、Zは‐CO2-、‐SO3-および‐OSO3-からなる群より選択され、aは1であり、但しxが0であるときR7?R10の少なくとも1つがHではなく、そしてただしxが1であるときR7?R16の少なくとも1つが存在するときHではない) を含んでなる、漂白組成物。 【請求項2】 R1?R3が非置換または置換フェニルである、請求項1に記載の漂白組成物。 【請求項3】 前記ペルオキシゲン供給源が、過カルボン酸および塩、過炭酸および塩、過イミド酸および塩、ペルオキシモノ硫酸および塩、およびそれらの混合からなる群より選択される前形成過酸化合物からなる、請求項1に記載の漂白組成物。 【請求項4】 前記ペルオキシゲン供給源は、過酸化水素源と、ブリーチアクチベーターとからなる、請求項1に記載の漂白組成物。 【請求項5】 前記過酸化水素源は、過ホウ酸化合物、過炭酸化合物、過リン酸化合物およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項4に記載の漂白組成物。 【請求項6】 前記ブリーチアクチベーターが、テトラアセチルエチレンジアミン、デカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノナノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウロイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、(6‐オクタンアミドカプロイル)オキシベンゼンスルホネート、(6‐ノナンアミドカプロイル)オキシベンゼンスルホネート、(6‐デカンアミドカプロイル)オキシベンゼンスルホネートおよびそれらの混合からなる群より選択される、請求項4に記載の漂白組成物。 【請求項7】 R1およびR2が一緒になって下記非荷電部分: を形成している、請求項1に記載の漂白組成物。 【請求項8】 ブリーチ増強剤はアリールイミニウム双極性イオンであって、R3はH、Zは‐OSO3-、aは1である、請求項7に記載の漂白組成物。 【請求項9】 前記ブリーチ増強剤が、下記式を有するアリールイミニウム双極性イオン: (上記式中R17はHと、直鎖または分岐C1‐C18置換または非置換アルキルからなる群より選択される)である、請求項8に記載の漂白組成物。 【請求項10】 少くとも1種の洗浄界面活性剤をさらに含んでなる、請求項1に記載の漂白組成物。 【請求項11】 少くとも1種のキレート化剤をさらに含んでなる、請求項10に記載の漂白組成物。 【請求項12】 少くとも1種の洗浄酵素をさらに含んでなる、請求項1に記載の漂白組成物。 【請求項13】 漂白組成物の1%水溶液で約8?約10.5のpHを有する、請求項10に記載の漂白組成物。 【請求項14】 (上記式中R17はHと、直鎖または分岐C1‐C18置換または非置換アルキルからなる群より選択される)から選ばれる、双極性イオンブリーチ増強剤化合物。 【請求項15】 15. 洗濯添加物を含んでなる洗濯添加製品であって、 上記添加物が下記式を有するブリーチ増強剤: (上記式中R1?R3は水素、あるいはアリール、ヘテロ環式環、アルキルおよびシクロアルキル基からなる群より選択される非置換または置換基である;R1およびR2は共通環の一部を形成している;Tは以下である: 上記式中xは0または1である;Jは、存在するとき、‐CR11R12‐、 ‐CR11R12CR13R14‐および‐CR11R12CR13R14CR15R16‐からなる群より選択される;R7?R16はH、直鎖または分岐C1‐C18置換または非置換アルキル、アルキレン、オキシアルキレン、アリール、置換アリール、置換アリールカルボニル基およびアミド基からなる群より選択される;但し、R7?R8のうち少くとも1つはHまたはメチルでなければならず、R9もR10もHでないとき、R7?R8のうち1つはHでなければならない;Zはxが1であるときJxに、およびxが0であるときCbに共有結合されていて、Zは‐CO2-、‐SO3-および‐OSO3-からなる群より選択され、aは1であり、但しxが0であるときR7?R10の少なくとも1つがHではなく、そしてただしxが1であるときR7?R16の少なくとも1つが存在するときHではない)を含み、上記添加物が洗濯液への添加に向いた投入形態をとっている、上記洗濯添加製品。 【請求項16】 R1?R3が非置換または置換フェニルである、請求項15に記載の洗濯添加製品。 【請求項17】 前記洗濯添加剤が、さらに、過ホウ酸化合物、過炭酸化合物、過リン酸化合物およびそれらの混合物からなる群より選択される、過酸化水素源を含んでなる、請求項15に記載の洗濯添加製品。 【請求項18】 前記洗濯添加剤が、さらに、テトラアセチルエチレンジアミン、デカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノナノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウロイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、(6‐オクタンアミドカプロイル)オキシベンゼンスルホネート、(6‐ノナンアミドカプロイル)オキシベンゼンスルホネート、(6‐デカンアミドカプロイル)オキシベンゼンスルホネートおよびそれらの混合からなる群より選択される、ブリーチアクチベーターをさらに含んでなる、請求項17に記載の洗濯添加製品。 【請求項19】 前記ブリーチ増強剤が、下記式 (上記式中R17はHと、直鎖または分岐C1‐C18置換または非置換アルキルからなる群より選択される)である、請求項15に記載の洗濯添加製品。 【請求項20】 前記投入形態は、丸剤、錠剤、カプレット、ゲルカップまたは他の単一投入形態からなる、請求項15に記載の洗濯添加製品。 【請求項21】 前記洗濯添加剤が、さらに適切なキャリアを含んでなる、請求項15に記載の洗濯添加製品。」 4.原査定の理由 原査定の拒絶の理由は、 「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 ・・・ 3)請求項1,15のR7?R16は一価の基であるから、「アルキレン、オキシアルキレン」との記載は不適切である。 ・・・」 というものである。 5.当審の判断 本件出願の特許請求の範囲の請求項1には、漂白組成物に含まれるブリーチ増強剤が式 で表されること、そして、上記式中に含まれる記号Tは下記の式 で表されることが記載されている。そして、当該Tを表す式中の記号については、 「上記式中xは0または1である;Jは、存在するとき、‐CR11R12‐、‐CR11R12CR13R14‐および‐CR11R12CR13R14CR15R16‐からなる群より選択される;R7?R16はH、直鎖または分岐C1‐C18置換または非置換アルキル、アルキレン、オキシアルキレン、アリール、置換アリール、置換アリールカルボニル基およびアミド基からなる群より選択される;但し、R7?R8のうち少くとも1つはHまたはメチルでなければならず、R9もR10もHでないとき、R7?R8のうち1つはHでなければならない;Zはxが1であるときJxに、およびxが0であるときCbに共有結合されていて、Zは‐CO2-、‐SO3-および‐OSO3-からなる群より選択され、aは1であり、但しxが0であるときR7?R10の少なくとも1つがHではなく、そしてただしxが1であるときR7?R16の少なくとも1つが存在するときHではない」 と説明されている。 ここで、上記式中の記号R7?R16について検討すると、前記記号の説明においてはR7?R16の選択肢に「アルキレン、オキシアルキレン」という二価の基が含まれているのに対して、上記記号Tを表す式及び記号Jを表す式中においてはR7?R16はいずれも1つの炭素原子との結合のみを有する一価の基として記載されており、R7?R16が二価の基であった場合にその基の他端が何に結合してどのような化学構造を有する化合物を形成するかは理解できない。そして、請求項1の他の箇所にもR7?R16が二価の基であった場合にその基の他端が何に結合してどのような化学構造を有する化合物を形成するかは記載されていないし、明細書の他の箇所の記載によってもそれが明らかになっているものとは認められない。 この点に関して出願人は平成14年6月20日付けの審判請求書の請求の理由の補正書において、「本願請求項1の記載は、本願明細書第7頁第13行?第16頁第11行の記載も参酌すれば、当業者が明瞭に理解できるものと思料します。例えば、R7とR8の双方がCdに結合したHまたはメチルと容易に解ると思料します。さらに、特定の配向の限定が請求項1にはないので、R11?R16は所望の配向ができることを当業者が理解できるものと思料します。」と述べているが、R7?R16が二価の基であった場合にその基の他端が何に結合するのかは説明されていないし(説明されていたとしても、それが明細書の記載及び出願時の技術常識に基づかないものであれば、やはり記載要件を満足するものではないが)、本件明細書の前記指摘された箇所にもR7?R16が二価の基であった場合に結合がどのような形態であるか、あるいは化合物の化学構造がどのようなものになるかということについて記載されていないから、明細書の記載を参酌しても請求項1の記載により請求項1に係る発明の漂白組成物に含まれるブリーチ増強剤の化学構造が明確に特定されているとは認められない。 したがって、請求項1の記載は不明確である。 6.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本願は特許を受けることができないから、原査定の他の拒絶の理由については審理をするまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-11-29 |
結審通知日 | 2005-12-02 |
審決日 | 2005-12-13 |
出願番号 | 特願平10-513038 |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(C11D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤原 浩子 |
特許庁審判長 |
脇村 善一 |
特許庁審判官 |
天野 宏樹 岩瀬 眞紀子 |
発明の名称 | カラーセーフブリーチ増強剤、それを用いた組成物および洗濯方法 |
代理人 | 紺野 昭男 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 吉武 賢次 |
代理人 | 横田 修孝 |