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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07C
管理番号 1161928
審判番号 不服2005-22819  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-25 
確定日 2007-07-04 
事件の表示 平成 6年特許願第512006号「2-プロピルヘプタノールのアルコキシラートの用途」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 5月26日国際公開、WO94/11331、平成 8年 4月 2日国内公表、特表平 8-502993〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、1993年11月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 1992年11月19日 スウェーデン(SE))を国際出願日とする出願であって、平成17年8月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年11月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成17年12月16日付けで手続補正がなされたものである。

そして、本願請求項1?6に係る発明は、平成16年9月14日付けの手続補正書及び平成17年12月16日付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 次の一般式を有し側鎖プロピル基を有するアルコキシラートであって、硬質な表面のための洗剤組成物に用いられるアルコキシラート。
C5H11CH(C3H7)CH2O(A)nH (I)
式中、Aは2-4個の炭素原子を有するアルキレンオキシ基であり、かつ、nは2-16である。
【請求項2】 全アルキレンオキシ基の50-100%はエチレンオキシ基であることを特徴とする、請求項1に記載のアルコキシラート。
【請求項3】 Aはエチレンオキシ基であり、かつ、nは3-7であることを特徴とする、請求項1に記載のアルコキシラート。
【請求項4】 次式の化学式を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のアルコキシラート。
C5H11CH(C3H7)CH2O(C2H4O)p(B)rH (II)
式中、Bは3-4個の炭素原子を有するアルキレンオキシ基であり、pは1-10であり、かつ、rは1-6である。
【請求項5】 洗剤組成物は、ラッカー仕上げされていない、またはラッカー仕上げされている金属の表面の油を落とすための組成物であることを特徴とする、請求項1-4のいずれかに記載のアルコキシラート。
【請求項6】 次式で表わされ、側鎖プロピル基を有することを特徴とするアルコキシラート。
C5H11CH(C3H7)CH2O(C2H4O)p(B)rH (II)
式中、Bは3-4個の炭素原子を有するアルキレンオキシ基であり、pは1-10であり、かつ、rは1-6である。」

2.引用文献及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭49-6003号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。

記載事項a:特許請求の範囲の欄
「特許請求の範囲
一般式:

〔式中R1及びR2は同一又は異なるもので炭素原子数3?11を有する線状アルキル残基を表わす〕の分枝鎖状1級アルコールに酸化エチレン5?20モル及び酸化プロピレン1?10モルの付加物を含有することを特徴とする発泡性の少ない非イオン性界面活性剤をベースとする機械的な器具洗浄のための澄明洗浄剤。」

記載事項b:第1頁左下欄下から4行目?第2頁右上欄第2行
「本発明は硬い表面に対して良好な湿潤作用及び流下作用を有する機械的な器具洗浄のための発泡性の少ないかつ生物学的に分解しうる澄明洗浄剤に関する。…該澄明洗浄剤は良好な湿潤力を有し、かつ後洗浄水が器具からフイルム状に流出し顕著な残留物、例えば石灰斑点又は他の汚れを残さない様に後洗浄水の表面張力を引きさげるべきである。洗浄機中での強力な洗浴運動のために、澄明洗浄剤は出来るだけ低発泡性であるべきである。…使用湿潤剤は良好な生物学的分解性及び水中生育性有機体に対する僅かの毒性を有すべきである。」

記載事項c:第2頁右上欄第3行?右下欄第6行
「本発明の目的は極めて発泡性の低い生物学的に分解しうる澄明洗浄剤の製造であり、これは、もつぱら湿潤剤として作用する成分を含有し発泡を抑制する余分な界面活性剤又は他の発泡抑制剤の共用を不必要とする。この目的は本発明により、低発抱性の非イオン性界面活性剤を基礎とする機械的な器具洗浄のための澄明洗浄剤により達成され、該澄明洗浄剤は一般式:

〔式中R1及びR2は同一又は異なるもので炭素原子数3?11を有する線状アルキル基を表わす〕の分枝鎖状1級アルコールへの酸化エチレン5?20モル及び酸化プロピレン1?10モルの付加生成物を含有することを特徴とする。前記アルコールとしてはいわゆるグエルベツト-アルコール(Guerbet-Alkohle)が挙げられる。これはアルカリを用い、場合により触媒的に作用しうる金属の存在で水の離脱下に鎖長C4?C12の直鎖1級アルコールを二量化することにより得られる。…本発明によればヘキサノール、オクタノール、デカノールから得られる炭素原子数12,16及び20の二量化生成物が有利である。…上記アルコールと酸化アルキレンとの反応は公知方法で酸性又はアルカリ性触媒の存在下で有利には高温及び高圧を使用して実施される。…アルコール1モルに対し酸化エチレン5?10モルを付加含有する付加生成物から出発するのが有利である。これに酸化プロピレン1?5モルを付加する。」

記載事項d:第3頁右下欄第5行?第5頁右上欄第13行
「消泡試験で本発明による異なった澄明洗浄剤又は澄明洗浄剤混合物の泡状態を調べる。第1表に記載した実験結果から前記薬剤の卓越した泡状態が証明される。1g/lの適用量添加の際に、20回メスシリンダー中で表に記載の化合物もしくは混合物を衝き、かつ引続き10,30及び60秒後に泡の高さをcmで読み取った。…表中で使用した略号は下記のものを表わす:
ÅO =酸化エチレン
PrO =酸化プロピレン
Gb.Alkoholは”グエルベツト-アルコール”を表わす。
C12,C16,C20の表示はグエルベツト-アルコールの合計炭素数である。
┌────────────────┬───────┬───┐
│ 適用量=0.2g/l │ 50℃ 水道水 │ … │
│ │10" 30" 60" │ … │
├────────────────┼───────┼───┤
│C12-Gb.-アルコール-7ÅO/2PrO│4.0 3.2 3.0 │ … │
│C16-Gb.-アルコール-7ÅO/3PrO│1.0 0.9 0.8 │ … │
│C20-Gb.-アルコール-7ÅO/5PrO│0 0 0 │ … │
│ … │ … │ … │
└────────────────┴───────┴───┘…
例5 特に家庭用器具洗浄機用の本発明による澄明洗浄剤は下記の組成を有する:
C12-Gb.-アルコール-7ÅO-5PrO 10%
C20-Gb.-アルコール-7ÅO 10%
クエン酸 20%
水 60%
澄明乾燥力は0.1?1.0g/lの濃度範囲において良好である。泡発生は少なくとも50℃の液温を保持する場合には十分に低い。」
(審決註:上記記載事項d中において「Å」は「ウムラウトA」を表す。)

3.対比・判断
引用例1には、『「鎖長C4?C12の直鎖1級アルコールを二量化」することにより得られる「グエルベツト-アルコール」1モルに対し「酸化エチレン5?10モル」を付加し、これに「酸化プロピレン1?5モル」を付加した「付加生成物」を含有する「機械的な器具洗浄のための澄明洗浄剤」』についての発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(記載事項c)。

本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用発明とを対比する。

引用発明の『「鎖長C4?C12の直鎖1級アルコールを二量化」することにより得られる「グエルベツト-アルコール」』において、鎖長C5の直鎖1級アルコールを二量化することにより得られるグエルベツト-アルコールは、技術常識(必要ならば、特開平2-286638号公報を参照されたい。)からみて、次の化学式で表される「2-プロピルヘプタノール」であることは自明であり、
C5H11CH(C3H7)CH2OH
引用発明の「酸化エチレン」は、本願発明の「2個の炭素原子を有するアルキレンオキシ基」に相当し、
引用発明の「酸化プロピレン」は、本願発明の「3個の炭素原子を有するアルキレンオキシ基」に相当し、
引用発明における「酸化エチレン5?10モル」及び「酸化プロピレン1?5モル」のアルキレンオキシ基のモル当量は、アルコール1モルに対して6?15モルと計算され、
引用発明の「機械的な器具洗浄のための澄明洗浄剤」は、引用例1の「本発明は硬い表面に対して良好な…澄明洗浄剤に関する」との記載からみて、本願発明の「硬質な表面のための洗剤組成物」に相当し、
引用発明の『「アルコール」に対し「酸化エチレン」及び「酸化プロピレン」を付加した「付加生成物」』は、本願発明の「アルコキシラート」に相当するので、引用発明は、
「次の一般式を有し側鎖プロピル基を有するアルコキシラートであって、硬質な表面のための洗剤組成物に用いられるアルコキシラート。
C5H11CH(C3H7)CH2O(A)nH (I)
式中、Aは2-3個の炭素原子を有するアルキレンオキシ基であり、かつ、nは6-15である。」である本願発明を包含するものである。

しかしながら、引用例1には、鎖長C4?C12の9種類の直鎖1級アルコールのうち、鎖長C6、C8及びC10の、ヘキサノール、オクタノール、デカノールから得られる、炭素原子数12,16及び20の二量化生成物が有利であり(記載事項c)、これら炭素原子数12,16及び20の二量化生成物のアルコキシラートを適用した澄明洗浄剤の消泡試験における60秒後の泡の高さが、それぞれ、3.0cm、0.8cm及び0cmであることが記載されているものの(記載事項d)、鎖長C5の直鎖1級アルコールを二量化することにより得られる「2-プロピルヘプタノール」にアルキレンオキシ基を付加したアルコキシラートを選択的に使用することについては、具体的な記載が見当たらない。

してみると、本願発明は、その発明の構成が、引用発明の構成に包含されるものであり、引用例1で好ましいとされる鎖長C6に近い鎖長C5の直鎖1級アルコールの二量化を検討することは容易と認められるものの、引用発明の「鎖長C4?C12の直鎖1級アルコールを二量化」することにより得られる9種類の「グエルベツト-アルコール」由来のアルコキシラートのうち、「鎖長C5の直鎖1級アルコールを二量化」することにより得られる1種類の「グエルベツト-アルコール」由来のアルコキシラートに限定した、いわゆる選択発明の範疇に属する余地があるものである。そこで、本願発明が、「引用発明の有する効果とは異質の効果、又はこれと同質であるが際だって優れた効果」を有し、選択発明としての進歩性をするか否かについて以下に検討する。

まず、引用発明は、「汚れを残さない」ように表面張力を引き下げ、「強力な洗浴運動」のために低発泡性であり、「毒性」が僅かであることを課題とし、「良好な湿潤作用及び流下作用」を有する「発泡性の少ないかつ生物学的に分解しうる澄明洗浄剤」に関するものであって(記載事項b)、「澄明乾燥力」が良好で、「泡発生」も十分に低い(記載事項d)というものであるから、本願発明が、引用発明と異質の効果を有するとは認められない。

そして、本願明細書の第5頁の第2表の試験結果を参照するに、本願発明のものに該当する鎖長C5のペンタノールを二量化して得られる「2-プロピルヘプタノール」由来のアルコキシラートである「化合物2」、及び「化合物5」、並びに本願発明のものに該当しない鎖長C4のブタノールを二量化して得られる「2-エチルヘキサノール」由来のアルコキシラートである「化合物B」、のそれぞれにおいて測定された5分後の泡高は、7cm、5cm、並びに0cmであり、また、経過時間等の実験条件が同一ではないものの、引用例1には、鎖長C6、C8及びC10の、ヘキサノール、オクタノール、デカノールの二量化生成物のアルコキシラートにおける60秒後の泡の高さが、それぞれ、3.0cm、0.8cm及び0cmであることが記載されている(記載事項d)ので、本願発明のものは、発泡性の点において、引用発明に比して際だって優れた効果を奏しているとは認められない。

また、平成16年9月14日付けの意見書及び平成17年12月16日付けで手続補正された審判請求書の内容を参酌しても、本願発明のアルコキシラートが、引用発明で好ましいされるアルコキシラートに比して、際だって優れた効果を奏していることを裏付けるに足る、比較実験例等の具体的なデータは提示されていないので、本願発明に格別予想外の顕著な効果があるとは認められない。

したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-31 
結審通知日 2007-02-06 
審決日 2007-02-19 
出願番号 特願平6-512006
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C07C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 爾見 武志  
特許庁審判長 原 健司
特許庁審判官 木村 敏康
岩瀬 眞紀子
発明の名称 2-プロピルヘプタノールのアルコキシラートの用途  
代理人 深見 久郎  
代理人 森田 俊雄  
代理人 堀井 豊  

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