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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200580341 審決 特許
無効200580033 審決 特許
無効200680198 審決 特許
無効200680168 審決 特許
無効2007800031 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G01P
管理番号 1162007
審判番号 無効2006-80227  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-10-31 
確定日 2007-08-10 
事件の表示 上記当事者間の特許第2978984号発明「超音波式トンネル内風速測定システム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2978984号の請求項1?3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

本件は、平成7年5月12日に特許出願がされ、平成11年9月17日に特許権の設定登録がされた特許第2978984号(以下「本件特許」という。)につき、平成18年10月31日にその請求項1?3に係る特許に対して株式会社創発システム研究所より無効審判の請求がされたところ、同年12月19日付けの請求書副本の送達通知に対して被請求人より答弁書の提出も訂正請求もされず、平成19年4月24日付けの当審からの審尋に対して請求人より同年5月27日に回答書が提出されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、本件特許を無効とする、審判の費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として以下の主張をし、その証拠方法として甲第1?6号証を提出するともに、平成19年4月24日付けの当審からの審尋(同年4月27日発送)に対して、甲第7?15号証を提出している。

1 本件特許発明は、本件特許出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明である。よって、本件特許は、特許法29条1項3号の規定に違反してされたものであるというべきであるから、同法123条1項2号の規定により無効とされるべきである(以下「無効理由1」という)。

2 本件特許発明は、甲第2号証に示されているように本件特許出願前に実際に使用された公知公用の発明である。よって、本件特許は、特許法29条1項1号又は2号の規定に違反してされたものであるというべきであるから、同法123条1項2号の規定により無効とされるべきである(以下「無効理由2」という)。

3 本件特許発明は、本件特許出願前に頒布された甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証、甲第6号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものである。よって、本件特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるというべきであるから、同法123条1項2号の規定により無効とされるべきである(以下「無効理由3」という)。

第3 被請求人の主張

上記の通り、被請求人は何も主張していない。

第4 本件特許発明

本件特許の請求項1?3に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 トンネル内の左右側壁の同じ高さに、該トンネルの長手方向の中心部における仮想垂直断面に対して所定の角度をもって設置される一対の超音波送受波器と、該一対の超音波送受波器の一方の超音波送受波器から他方の超音波送受波器に送波される超音波の伝搬時間と他方の超音波送受波器から一方の超音波送受波器に送波される超音波の伝搬時間との時間差から、当該トンネル内の前記超音波送受波器の設置高さの風速を求める変換器とから構成された超音波式トンネル内風速測定システム。
【請求項2】 前記トンネル内の左右側壁に設置される超音波送受波器を異なる高さに複数対設けると共に、前記変換器により前記超音波送受波器の各対毎に風速を求め、かつ前記複数対の超音波送受波器の設置高さ範囲の平均的風速を求めるように構成された請求項1に記載の超音波式トンネル内風速測定システム。
【請求項3】 前記トンネル内の左右側壁に設置される超音波送受波器を、該超音波送受波器の送受される超音波が上方から透視した状態でクロスするような位置関係に複数対設け、前記変換器により該複数対の超音波送受波器の超音波送受の各伝搬時間から、当該トンネル内の前記超音波送受波器の設置高さ又設置高さ範囲の平均的風速を求めるように構成された請求項1または2に記載の超音波式トンネル内風速測定システム。」

第5 甲第1?15号証及び引用発明

1 甲第1号証
「Erwin Sick GmbH」社の「FLOWSIC400」のカタログ

甲第1号証には、図面とともに次の記載がある(なお、翻訳は、請求人の抄訳による)。

(1)「FLOWSIC400はトンネル内の風速計測に必要なすべての機能を備えています。」(原文2枚目2?3行)

(2)「本システムの動作原理はとても優れたものであり、車両通行方向および風の流れる方向に対して例えば45°の角度をもって対向するトンネル壁面間に理想的な2つのトランスデューサが設置されている(図1)。」(原文2枚目10?12行)

(3)「超音波パルスがトランスデューサAからトランスデューサBの間で相互に送受信されている。空気の流れが図示の方向である場合においてトランスデューサAからトランスデューサBへ送られる超音波パルスは風により加速される。測定されたA-B方向の送受信時間は、風に逆らってパルスが減速されるB-A方向の送受信時間よりも短くなる。測定された2つの送受信時間の差はトンネル内の風の流れの速さに比例する。」(原文2枚目13?18行)

(4)「システム構成: 取り付けブラケット付き超音波トランスデューサ2つ 19”プラグインユニットに設置または筐体内に内装された評価ユニット1つ」(原文3枚目5?7行)

したがって、これらの記載から、甲第1号証には、「トンネル内の左右の壁面に、風の流れる方向に対して45°の角度をもって設置される2つのトランスデューサと、該2つのトランスデューサの一方のトランスデューサから他方のトランスデューサに送波される超音波パルスの送受信時間と他方のトランスデューサから一方のトランスデューサに送波される超音波パルスの送受信時間との差から、当該トンネル内の風速を求める評価ユニットとから構成された超音波式トンネル内風速計測システム。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

また、甲第1号証は、その原文1枚目の下部に「DB:FLOWSIC400:E:0189」と記載されていることから、1989年1月に頒布された刊行物と認められる。

2 甲第2号証
論文「MODELLING EMISSION FACTORS OF ROAD TRAFFIC FROM A TUNNEL STUDY」、論文誌「ENVIRONMETRICS」1997年版8巻219-239頁

3 甲第3号証
米国特許第3940985号公報

4 甲第4号証
米国特許第4078428号公報

5 甲第5号証
特開昭60-210769号公報

6 甲第6号証
特開平5-223608号公報

7 甲第7号証
「Spears Manufacturing Company」社の「SWING JOINT RISER SPECIALTY OUTLETS」のカタログ

8 甲第8号証
「Spears Manufacturing Company」社の「PVC&CPVC LAB VALVES」のカタログ

9 甲第9号証
「Rehrig Pacific Company」社の「The Smart Grower’s Edge」のカタログ

10 甲第10号証
「Rehrig Pacific Company」社の「Rehrig Pacific Roll-out Carts」のカタログ

11 甲第11号証
「Cingular Wireless LLC.」社の「Xpress Mail Personal Edition」のカタログ

12 甲第12号証
「Pitney Bowes Inc.」社 の「Maximize Mail Center Productivity To Achieve Peak Performance」のカタログ

13 甲第13号証
「BARCO」社の「Coronis Color 3MP Diagnostic Luminance」のカタログ

14 甲第14号証
「ZTC Controls Ltd」社の「Let ZTC put you in the cab with ZTC RealFeel Control」のカタログ

15 甲第15号証
「STRONGWELL」社の「FIBERGLASS STRUCTURES&SYSTEMS THE INDUSTRIAL PRODUCT LINE」のカタログ

第6 当審の判断

無効理由3について検討する。

1 本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明1」という。)と甲第1号証に記載された発明との対比・判断

(1)本件特許発明1と引用発明との対比

本件特許発明1と引用発明とを対比する。

引用発明の「壁面」、「2つの」、「トランスデューサ」、「超音波パルス」、「送受信時間」、「差」、「評価ユニット」、「計測」は、本件特許発明1の「側壁」、「一対の」、「超音波送受波器」、「超音波」、「伝搬時間」、「時間差」、「変換器」、「測定」にそれぞれ相当する。

引用発明の「風の流れる方向に対して45°の角度」をもつことは、トンネルの長手方向の中心部における仮想垂直断面に対して所定の角度をもっていることであるから、本件特許発明1の「トンネルの長手方向の中心部における仮想垂直断面に対して所定の角度」をもつことに相当する。

してみれば、本件特許発明1と引用発明は、「トンネル内の左右側壁に、該トンネルの長手方向の中心部における仮想垂直断面に対して所定の角度をもって設置される一対の超音波送受波器と、該一対の超音波送受波器の一方の超音波送受波器から他方の超音波送受波器に送波される超音波の伝搬時間と他方の超音波送受波器から一方の超音波送受波器に送波される超音波の伝搬時間との時間差から、当該トンネル内の風速を求める変換器とから構成された超音波式トンネル内風速測定システム。」である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本件特許発明1では、一対の超音波送受波器が「同じ高さ」に設置され、前記超音波送受波器の設置高さの風速を求めるのに対して、引用発明では、一対の超音波送受波器がどのように設置されるのか特定されていない点。

(2)判断

[相違点1]について
一対の超音波送受波器を同じ高さに設置して、前記超音波送受波器の設置高さの流速を求めることは、周知の技術であり(例えば、甲第3号証、特開平4-42060号公報参照)、かかる周知の技術を引用発明に適用して、相違点1に係る構成を得ることに格別の困難性はない。

したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 本件特許の請求項2に係る発明(以下「本件特許発明2」という。)と甲第1号証に記載された発明との対比・判断

(1)本件特許発明2と引用発明との対比

本件特許発明2と引用発明とは、前記相違点1に加えて次の相違点2でも相違している。

[相違点2]
本件特許発明2では、超音波送受波器を異なる高さに複数対設け、複数対の超音波送受波器の設置高さ範囲の平均的風速を求めるのに対して、引用発明では、超音波送受波器を複数対設けていない点。

(2)判断

[相違点2]について
超音波送受波器を異なる高さに複数対設け、複数対の超音波送受波器の設置高さ範囲の平均的風速を求めることは、周知の技術であり(例えば、甲第3号証、甲第6号証、上記特開平4-42060号公報参照)、かかる周知の技術を引用発明に適用して、相違点2に係る構成を得ることに格別の困難性はない。

したがって、本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 本件特許の請求項3に係る発明(以下「本件特許発明3」という。)と甲第1号証に記載された発明との対比・判断

(1)本件特許発明3と引用発明との対比

本件特許発明3と引用発明とは、前記相違点1、2に加えて次の相違点3でも相違している。

[相違点3]
本件特許発明3では、超音波送受波器を送受される超音波が上方から透視した状態でクロスするような位置関係に複数対設け、超音波送受波器の設置高さ又設置高さ範囲の平均的風速を求めるのに対して、引用発明では、超音波送受波器を複数対設けていない点。

(2)判断

[相違点3]について
超音波送受波器を送受される超音波が上方から透視した状態でクロスするような位置関係に複数対設け、超音波送受波器の設置高さ、設置高さ範囲の平均的風速を求めることは、周知の技術であり(例えば、特開昭53-1576号公報)、かかる周知の技術を引用発明に適用して、相違点3に係る構成を得ることに格別の困難性はない。

したがって、本件特許発明3は、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1?3に係る発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法123条1項2号に該当し、他の無効理由1及び2について判断を示すまでもなく、無効にすべきものである。

審判に関する費用については、特許法169条2項において準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-13 
結審通知日 2007-06-18 
審決日 2007-06-29 
出願番号 特願平7-137466
審決分類 P 1 113・ 121- Z (G01P)
最終処分 成立  
前審関与審査官 江塚 政弘後藤 時男  
特許庁審判長 瀧 廣往
特許庁審判官 岡田 卓弥
山川 雅也
登録日 1999-09-17 
登録番号 特許第2978984号(P2978984)
発明の名称 超音波式トンネル内風速測定システム  
代理人 永井 道彰  

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