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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1162063
審判番号 不服2004-16132  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-04 
確定日 2007-08-08 
事件の表示 特願2002-307447「コンピュータ連携方法および制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月11日出願公開、特開2003-196255〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年7月31日に出願した特願2000-231992号の一部を平成14年10月22日に新たな特許出願としたものであって、平成14年11月12日付で手続補正がなされ、平成16年4月20日付で拒絶理由が通知され、同年6月8日付で手続補正がなされるとともに意見書が提出されたが、同年6月28日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月4日付で拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年8月19日付で審判請求の理由補充がなされたものである。

本願発明は、平成16年6月8日付の手続補正による補正後の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
ネットワークにて接続された複数のコンピュータに、該複数のコンピュータ間でのデータの自動やりとり処理を実行させるためのフロントエンドプログラムであって、前記フロントエンドプログラムは、能動処理プログラム、受動処理プログラム、およびデータ送受信プログラムを備えるものであり、前記各コンピュータにおいて、
a1)前記能動処理プログラムは、起動データを受け取ると、処理要求データの送信先コンピュータを特定する能動処理定義データに基づいて、他のコンピュータに対する処理要求データを出力するステップを前記コンピュータに実行させ、
a2)前記受動処理プログラムは、処理要求データが与えられると、与えられた処理要求データを処理させるアプリケーションプログラムを特定する受動処理定義データに基づいて、当該処理要求データを前記特定のアプリケーションプログラムに渡し、当該アプリケーションプログラムから処理後の結果データを受け取ると、この結果データを出力するステップを前記コンピュータに実行させ、
a3)前記データ送受信プログラムは、起動データを受信すると、前記能動処理プログラムに与えるステップを前記コンピュータに実行させ、前記データ送受信プログラムは、前記能動処理プログラムから処理要求データを受け取ると、指定されたコンピュータに処理要求データを送信するステップを前記コンピュータに実行させ、前記データ送受信プログラムは、他のコンピュータから処理要求データを受け取ると、前記受動処理プログラムに与えるステップを前記コンピュータに実行させ、前記データ送受信プログラムは、前記受動処理プログラムから結果データを受け取ると、前記処理要求データを与えたコンピュータに前記結果データを送信するステップを前記コンピュータに実行させ、
B)前記受動処理プログラムは、前記受動処理定義データに前記起動データが含まれている場合には、同じ制御装置の能動処理プログラムに前記起動データを出力するステップを前記コンピュータに実行させ、
C)前記受動処理定義データには、複数の処理ステップが処理順に記憶されているとともに、各処理ステップは、当該ステップを自動実行するかを指定する為のチェックボックスを有しており、前記受動処理プログラムは、前記複数の処理ステップを処理順に前記コンピュータに実行させるにあたって、前記受動処理定義データの前記チェックボックスがチェック済みである処理ステップまで自動実行させること、
を特徴とするコンピュータ可読のプログラム。」

2.原審における査定の理由

拒絶査定の理由は、原審より平成16年4月20日付で通知された理由の1(1)のとおりであって、この出願は、特許請求の範囲の記載が下記(1)の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない、というものである。

「(1)請求項1は「プログラム」を特許請求するものであるが、「プログラム」とは物であるのか方法であるのか、発明のカテゴリーが不明である。」

3.請求人の主張
これに対し、請求人は、平成16年6月8日付の意見書において、次のとおりの主張をしている。

「「プログラム」については、特許庁も平成13年1月10日以降の出願について認めているように、物の発明である。それ以前の出願についても同様に取り扱うべきである。」

さらに、同年8月19日付で補充された審判請求の理由において、次のとおりの主張をしている。

「(3)本願発明が特許されるべき理由
1)「コンピュータ可読のプログラム」を物の発明として取り扱う必要性について
(i)一般社会の実情
本件特許の請求項1にかかるプログラムは、単なるプログラムではなく、”コンピュータ可読のプログラム”である。したがって、コンピュータが読み込めない形式のプログラムは除外されている。このような”コンピュータ可読のプログラム”については、下記のような実情が存在する。
本件出願の出願時には、”コンピュータ可読のプログラム”をダウンロード販売することが一般的に行われていた。したがって、このような実情下では、消費者は、”コンピュータ可読のプログラム”を他の有体物と同等の価値を有する商品として認識して購入しているといえる。すなわち、”コンピュータ可読のプログラム”を無体物ではあるが、有体物と同様なものと認識している。
また、一般的には、ダウンロードしたあと、所定のインストールを行い、ハードディスクにかかる”コンピュータ可読のプログラム”を記録させる。このような用い方がされる”コンピュータ可読のプログラム”は、コンピュータを機能させる為の部品として認識されるものである。
したがって、たとえ無体物であっても、このような社会の実情を前提として考えると、”コンピュータ可読のプログラム”は、物の発明として取り扱うべきである。
また、このように一般的に、”コンピュータ可読のプログラム”は、物の発明として認識されている以上、当然のことながら、その実施行為とはいかなることをいうのかについて、解釈の疑義は生じえない。たとえば、サーバに”コンピュータ可読のプログラム”を記憶させて、有料でダウンロードさせる行為は、一般的な有体物と同様に、販売であると認識する。
したがって、”コンピュータ可読のプログラム”の実施行為が特定できないという審査官の判断は誤ったものであり、取り消されるべきものである。
(ii) 不公平性について
出願人がプログラム自体が特許されている例を特許庁のデータベースIPDLの”公報テキスト検索”を用いて、出願日が2001年1月09日以前で、かつ、”?プログラム”を請求項として含まれている登録例を探したところ、少なくとも、下記の38件が存在した。数件であればまだしも、このような多くの登録例があることからすると、本件出願人が本拒絶査定のような不利益を受けることには合理的な理由がなく、法の下の平等(憲法14条)に違反する。したがって、”コンピュータ可読のプログラム”の実施行為が特定できないという審査官の判断は誤ったものであり、取り消されるべきものである。
1. 特公平07-097364号,2. 特公平07-096315号,3. 特公平06-103484号,4. 特公平05-032686号, 5. 特公平05-031737号,6. 特許3534067号,7. 特許3530110号, 8.特許3524389号,9.特許3520248 号, 10.特許3513104号, 11.特許3510549号, 12.特許3502040号, 13.特許3499819号, 14.特許3492602号, 15.特許3487284号, 16.特許3478498号, 17.特許3466573号, 18.特許3466572号, 19.特許3453481号, 20.特許3452198号, 21.特許3448274号, 22.特許3433177号, 23.特許3427049号, 24.特許3422693号, 25.特許3413145号, 26.特許3403697号, 27.特許3378848号, 28.特許3373428号, 29.特許3372918号, 30.特許3365502号, 31.特許3360820号, 32.特許3358734号, 33.特許3344338号, 34.特許3290938号, 35.特許3246312号, 36.特許2706116号, 37.特許2578938号, 38.特許2557029号

2)”コンピュータ可読のプログラム”を物の発明として取り扱う許容性について
”コンピュータ可読のプログラム”を物の発明として取り扱ったとしても、下記に述べるように、特に問題がない。したがって、原査定は取り消されるべきである。
(i)第三者の不測の不利益について
”コンピュータ可読のプログラム”を物の発明として取り扱いして、登録をしたとしても、「”コンピュータ可読のプログラム”が物か方法か不明であるので特許されない」という審査基準を信じた第三者に、特別な不利益を与えない。なぜなら、平成9年以降、「プログラムを記録した記録媒体」は物の発明であるとして、特許法の保護対象とされており、かなりの登録例もある。したがって、プログラムを記録した記録媒体に特許がされている場合には、媒体拡布という形式以外で、”コンピュータ可読のプログラム”を拡布させる行為は、少なくとも間接侵害(特許法101条1号または2号)に該当する。よって、そのような行為を行う者を保護する必要がないからである。
(ii)他の法律との関係について
確かに民法85条では、物とは有体物を意味すると規定されているが、別の法律でそのような規定があるからといって、特許法でもかならずしも同じ限定がなされる必要はない。各法律において、その制度趣旨等から社会の実情等から、合目的的に解釈すべきである。物の概念について、民法とは異なる解釈を行っているものとして、刑法にて電気を財物として取り扱った例(大審院明治36年5月21日第一刑事部判決刑録九輯一四巻八七四頁)がある。また、商標法では、プログラムはサービスではなく、商品として取り扱われている(平成13年12月発行国際分類第八版第51頁参照)。
3)適用する法律の誤り
本件出願は、平成12年7月31日になされた特願2000-231992号を、平成14年10月22日に、分割したものである。したがって、本件出願は平成12年7月31日に出願されたものとして取り扱われている。審査官は、平成9年4月1日から平成13年1月09日までの出願については、「プログラムは物の発明か方法の発明か不明瞭である為、36条6項2号に違反するものとして取り扱う」という審査運用指針が適用されると判断し、本件出願は、36条6項2号に違反するとして拒絶査定をなした。
しかし、特許法等の一部を改正する法律(平成14年4月17日法律第24号)によって(以下平成14年改正法という)、特許法2条3項の発明の実施の定義規定が変更され、物の発明の定義として「物の発明にはプログラム等を含む」と、規定された。
本件出願には、当然、かかる法律が適用されるべきなので、「プログラムは物の発明か方法の発明か不明瞭である為、36条6項2号に違反する」という審査官の判断は誤ったものであり、取り消されるべきものである。」

4.当審の判断
(1)平成5年に改訂された審査基準(以下、「旧基準」という。)では、「コンピュータプログラム自体」及び「コンピュータプログラムを記録した記録媒体」のいずれも、発明にあたらないとしていたが、国際情勢も踏まえ、平成9年に公表された「特定技術分野の審査の運用指針」(以下、「運用指針」という。)では、これらについても一定の場合に発明の成立性を認めるとの運用変更を行った。ただし、「プログラムを記録した記録媒体」は物の発明であるが「プログラム」自体はカテゴリ不明確として、記載要件を根拠に媒体クレームのみを認めることとした。更に、平成12年に改訂された審査基準(以下、「審査基準」という。)では、ネットワーク上を流通するソフトウェアの保護に対する要請の高まりに応えるべく、媒体に記録されているか否かを問わず、「プログラム」を物の発明としてクレームに記載できることとした。(平成13年12月に公表された産業構造審議会知的財産政策部会報告書「ネットワーク化に対応した特許法・商標法の在り方について」の第19頁を参照。)

審査基準は、出願の審査が一定の基準に従って、公平妥当かつ効率的に行われるように、現時点で最善と考えられる特許法等の関連する法律の適用についての基本的考え方をまとめたものである。(旧基準の序を参照。)
いうなれば、多くの審査官が分担する年間数十万件に上る審査処理を、国際情勢の変化等の状況に応じた妥当性を維持しつつ公平に進めるべく、審査における判断基準を示したものである。

「プログラムを記録した記録媒体」と「プログラム」に係る記載要件の取扱いは、運用指針及び審査基準において上記したとおり時代の要請に応じて運用の緩和が図られている。
審査基準は、運用指針における取扱いも含め、以下のように整理してこの取扱いをまとめている。

いわゆる媒体クレーム形式での記載を許容する運用指針の内容を踏襲した審査基準の第VII部特定技術分野の審査基準 第1章 コンピュータ・ソフトウェア関連発明 1.明細書の記載要件中の1.1.1(2)(a)の部分は、平成9年4月1日以降の出願を審査するにあたって適用される。(以下、運用指針及び審査基準の上記1.1.1(2)(a)の部分を併せて「媒体クレーム基準」という。)
そして、いわゆるプログラムクレーム形式での記載を許容する審査基準の第VII部特定技術分野の審査基準 第1章 コンピュータ・ソフトウェア関連発明1.明細書の記載要件中の1.1.1(2)(b)、1.1.2(1)及び1.1.3例2の部分(以下、「プログラムクレーム基準」という。)は、平成13年1月10日以降の出願を審査するにあたって適用される。
そして、「媒体クレーム基準」と「プログラムクレーム基準」のそれぞれの内容とともにこうした適用時期についての取扱いを一体的に周知し、審査にあたって個々の出願に適用される基準を明確にし、公平性を担保している。

本願は、平成12年7月31日に出願した特願2000-231992号の一部を特許法第44条第1項の規定により平成14年10月22日に新たな特許出願としたものであって、同条第2項の規定により平成12年7月31日に出願されたものとみなされるものである。
してみると、本願の記載要件の審査にあたっては、平成9年4月1日以降の出願に適用される媒体クレーム基準は適用される。その一方で、平成13年1月10日以降の出願に適用されるプログラムクレーム基準は適用されない。

以下の判断は、公平性を担保するためその適用時期も明確にされた運用指針及び審査基準における、こうした取扱いに沿ったものである。

(2)本願発明は上記1で認定したとおりであり、「ネットワークにて接続された複数のコンピュータに、該複数のコンピュータ間でのデータの自動やりとり処理を実行させるためのフロントエンドプログラムであって、・・・・コンピュータ可読のプログラム。」の記載からして、本願発明は「コンピュータ可読のプログラム」である。
ところで、本願発明が「コンピュータ可読のプログラム」であるとは、機能実現手段からなる「物の発明」を構成する各機能実現手段について、コンピュータに機能を実現させるためのプログラムの形式で、本願発明を特定しようとするものである、と解することはできる。
しかし、本願発明が「コンピュータ可読のプログラム」であるとは、手順の列からなる「方法の発明」を構成する各々の手順について、コンピュータが実行する命令の順番付けられた列であるプログラムの形式で、本願発明を特定しようとするものとも解される。
そして、文理上可能なこれらの二つの解釈について、その一方の解釈を排斥し他方の解釈を採用すべきであるとする根拠は見当たらない。

この点につき、上記したプログラムクレーム基準を、上記の二つの解釈の一方に即した内容のものとみることはできる。
しかし、上記のとおり、プログラムクレーム基準は、平成13年1月10日以降の出願についての審査に適用されて各審査官による審査をより公平かつ効率的にするものであるものの、平成13年1月10日より前である平成12年7月31日の特許出願とみなされる本願についての法解釈の基準を示すものではない。
してみると、上記したプログラムクレーム基準は、いうなれば本願とは異なる出願に関するものであって本願とは無関係であり、本願について上記した二つの解釈の一方を採用すべきであるとする根拠にはならない。

以上のとおりであるから、本願発明が「コンピュータ可読のプログラム」である結果、本願発明が「物の発明」であるか「方法の発明」であるかを特定して記載したものとは認められない。

(3)特許法は、その第68条で「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する」とし、その第2条第3項で「実施」を物の発明、方法の発明及び物を生産する方法の発明に区分して定義している。また、その第70条第1項で特許発明の技術的範囲は「特許請求の範囲の記載に基づいて」定めなければならないとしている。
したがって、特許請求の範囲において出願人において特定された特許を受けようとする発明について、その属するカテゴリー(物の発明、方法の発明、物を生産する方法の発明)が不明確である場合にその発明に対して特許が付与されると、実施行為の範囲、ひいては侵害行為の範囲、が不明確となる。
この点を踏まえて、特許法第36条第6項第2号は、特許請求の範囲の記載要件として「特許を受ける発明が明確であること」と規定し、カテゴリーが不明確でない場合を拒絶理由及び無効理由としているものである。

(4)してみると、本願請求項1は、本願発明が「コンピュータ可読のプログラム」であることを特定して記載したものであって、本願発明が「物の発明」と「方法の発明」のいずれのカテゴリーに属するものであるかを特定して記載していないので、特許法第36条第6項第2号に規定する「特許を受ける発明が明確であること」という要件を満たしていない。

(5)次に請求人の主張について検討する。
(ア)意見書における主張について
本願を含む平成9年4月1日以降平成13年1月9日までの出願の審査にあたって、媒体クレーム基準は適用されるもののプログラムクレーム基準は適用されないことは、上記4.(1)のとおりである。
したがって、「それ以前の出願についても同様に取り扱うべきである。」という主張を採用することはできない。

(イ)審判請求の理由中1)(i)の主張について
”コンピュータ可読のプログラム”についての、「本件出願の出願時には、”コンピュータ可読のプログラム”をダウンロード販売することが一般的に行われていた。したがって、このような実情下では、消費者は、”コンピュータ可読のプログラム”を他の有体物と同等の価値を有する商品として認識して購入しているといえる。すなわち、”コンピュータ可読のプログラム”を無体物ではあるが、有体物と同様なものと認識している。また、一般的には、ダウンロードしたあと、所定のインストールを行い、ハードディスクにかかる”コンピュータ可読のプログラム”を記録させる。このような用い方がされる”コンピュータ可読のプログラム”は、コンピュータを機能させる為の部品として認識されるものである。」という実情が存在するか否かはともかく、仮にそうした実情が存在したと仮定しても、上記4.(2)で示したように「プログラム」の記載によっては「物」と「方法」のいずれを特定しているかが明らかでないから、特許法第36条第6項第2号の解釈として「たとえ無体物であっても、このような社会の実情を前提として考えると、”コンピュータ可読のプログラム”は、物の発明として取り扱うべきである」という帰結が導かれるものではない。
「”コンピュータ可読のプログラム”は、物の発明として認識されている以上、当然のことながら、その実施行為とはいかなることをいうのかについて、解釈の疑義は生じえない。」との主張は、「”コンピュータ可読のプログラム”は、物の発明として認識されている」ことを前提としたものであるが、この前提は、プログラムクレーム基準が適用される平成13年1月10日以降の出願についてはともかく、平成12年7月31日に出願したものとみなされる本願について妥当するものではない。

したがって、これらの主張は、いずれも根拠がなく、採用することはできない。

(ウ)審判請求の理由中1)(ii)の主張について
上記4.(2)のとおり、本願発明が「コンピュータ可読のプログラム」である結果、本願発明が「物の発明」であるか「方法の発明」であるかを特定して記載したものとは認められない。

また、本願以外の登録された特許について無効理由が存在するか否かは、本件請求と関係ない事項である。
すなわち、運用指針及び審査基準における取扱いに照らせば、平成13年1月9日以前の出願について、末尾が「プログラム」である結果として不明確な発明であるにもかかわらず特許された場合には、無効審判が提起された場合に無効理由が存在すると判断される可能性があるものの、このことは本願の審査とは無関係である。
そして、上記4.(1)で示したとおり、審査の公平を期するために、「媒体クレーム基準」と「プログラムクレーム基準」のそれぞれが適用される出願の時期を明確にし、いわば段階的に適用するようにしているものである。

したがって、この主張を採用することはできない。

(エ)審判請求の理由中2)(i)の主張について
上記4.(2)のとおり、本願発明が「コンピュータ可読のプログラム」である結果、本願発明が「物の発明」であるか「方法の発明」であるかを特定して記載したものとは認められず、特許法第36条第6項第2号の拒絶理由が解消していないものである。
拒絶理由が解消しておらず特許を受けることができない発明について、特許権の設定がなされることを前提とした侵害行為や間接侵害行為の成立や不成立を議論することは、無意味であり、上記4.(2)と異なった判断をすべきであることの根拠にもならない。

また、物の発明として記録された「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」について媒体拡布以外の形式での拡布行為が間接侵害に該当するか否かは、「コンピュータ可読のプログラム」である本願発明が明確であるか否かとは無関係である。

さらにいえば、本願の経緯をみても、媒体クレーム形式を許容する審査基準の運用に従って権利が発生した場合に媒体拡布以外の形式での拡布行為が間接侵害に該当するか否かという点は、「コンピュータ可読のプログラム」であって媒体クレーム形式で記載されたものでない本願発明についての本件請求とは無関係の事項である。

つまり、特許法第36条第6項第2号の要件の審査段階での運用としての上記媒体クレーム基準は周知されており、しかも、原審における拒絶理由通知も、かっこ書で、この拒絶理由が審査基準に沿った運用に基づくものであることを明示している。つまり、媒体クレーム形式で記載することにより特許法第36条第6項第2号の要件を満たすことが可能であることは、この拒絶理由に接した請求人において当然に知り得たものである。
してみると、請求人は、媒体クレーム形式で記載することによりこの拒絶理由が解消することを承知の上で、特許法第36条第5項でいうところの「特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべて」として媒体クレームの形式によらずに本願特許請求の範囲を記載したものである。そして、本件請求は、そうして請求人によって記載された特許請求の範囲の記載に基づいて認定される本願発明についてなされたものである。
なお、媒体クレームの形式で記載することによって特許法第36条の記載要件を満たすように補正をする意思があるかについては、当審からも平成19年5月8日に代理人に問い合わせ、請求人にその意思がないことを確認している。

こうしたことを踏まえれば、請求人は、媒体クレームの形式によって特許法第36条第6項第2号の要件を満たす可能性をいわば放棄したものである。
そして、媒体クレーム形式で成立した特許権の効力に関する主張は、請求人が媒体クレームをいわば放棄したことに整合しない主張、いうなれば筋違いな主張、であって、本件請求と関係のないものである。

したがって、この主張を採用することはできない。

(オ) 審判請求の理由中2)(ii)の主張について
上記4.(1)のとおり、審査基準は、特許法等の関連する法律の適用についての基本的な考え方をまとめたものであり、上記4.(2)の認定判断は、その審査基準に沿ったものである。

してみると、他の法律における類似する法律用語の解釈がそのまま特許法の解釈として参酌されるものではないことは、特許法の適用についての基本的な考え方をまとめたものである審査基準に沿った上記4.(2)と異なった判断をすべきであることの根拠にならない。

(カ)審判請求の理由3)について
本願は、上記4.(1)に示したように、平成12年7月31日に出願した特願2000-231992号の一部を特許法第44条第1項の規定により平成14年10月22日に新たな特許出願としたものであり、同条第2項の規定により平成12年7月31日の特許出願とみなされるものである。
他方、特許法等の一部を改正する法律(平成14年4月17日法律第24条)の第1条による特許法第2条第3項の改正に係る同法律の施行は平成14年9月1日であり(特許法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(平成14年6月19日政令第213号) )、また、同改正について経過措置は定められていないので、同改正後の特許法は平成14年9月1日より前の出願には適用されない。

してみると、平成14年9月1日より前である平成12年7月31日の出願とみなされる本願には、同改正後の特許法は適用されないので、この主張を採用することはできない。

4.むすび
したがって、本願は、明細書及び図面の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-04 
結審通知日 2007-06-11 
審決日 2007-06-25 
出願番号 特願2002-307447(P2002-307447)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲はま▼中 信行  
特許庁審判長 吉岡 浩
特許庁審判官 桑江 晃
相崎 裕恒
発明の名称 コンピュータ連携方法および制御装置  
代理人 鶴本 祥文  
代理人 古谷 栄男  
代理人 松下 正  
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