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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1162137
審判番号 不服2005-7210  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-21 
確定日 2007-08-09 
事件の表示 平成 7年特許願第313067号「画像記録用光源ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 6月10日出願公開、特開平 9-150547〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成7年11月30日の出願であって、平成17年3月15日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年4月21日付けで本件審判請求がされるとともに、同年5月20日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成17年5月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正事項及び補正目的
本件補正は特許請求の範囲を補正するものであり、請求項1に限っていうと、補正前の「発光光量が小さくなるか、または発光時間が短くなるように、各発光素子の発光光量または発光時間を制御する」を「発光光量が小さくなるように、各発光素子の発光光量を制御する」と補正するものであるから、特許請求の範囲の減縮(平成18年改正前特許法17条の2第4項2号該当)を目的とするものと認める。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか検討する。

2.補正発明の認定
補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「複数の画素で構成される画像を印刷版作製用の感材に記録するための光源ユニットであって、
感材を感光させることによってこの感材に画素を記録するための複数の発光素子と、
この発光素子からの光を感材に結像させるための光学系と、
上記複数の発光素子からの光によって上記感材上に形成される複数の画素の黒化面積が均一化されるように、上記光学系の光軸から遠い発光素子ほど、発光光量が小さくなるように、各発光素子の発光光量を制御することによって画素当たりの照射総光量を制御すべく上記複数の発光素子をそれぞれ駆動制御する制御手段とを含むことを特徴とする画像記録用光源ユニット。」

3.引用刊行物記載の発明の認定
原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-273256号公報(以下「引用例」という。)には、
「列状に形成された多数の発光ドットをもつ複数の発光素子がヘッド基板上に配置されるとともに、上記ヘッド基板と感光体との間に上記各発光素子に対応するレンズ要素をもつ光学レンズ系を配置し、上記各発光素子の発光ドットを感光体に結像させるようになした光プリントヘッドにおいて、
上記各発光ドットの上記感光体上における結像の照度がほぼ同一になるように、上記各発光素子における各発光ドットの発光出力を、上記レンズ要素の軸から遠ざかるに従って増加させたことを特徴とする、光プリントヘッド。」(1頁左下欄5?17行)との発明(以下「引用発明」という。)が記載されており、その説明として以下のア?エの各記載が図示とともにある。
ア.「光源としてLED発光素子を備えるLEDプリントヘッドにおいては、上記各LED発光素子が、64個あるいは128個の列状に配置された単位発光ドット有し、上記各発光ドットが駆動用ICによって駆動させられる。通常、上記各発光ドットから放射される点状の露光出力を、上記感光体表面に再び点として集束させるために、上記ヘッド基板と上記感光体との間に光学レンズ系が付設されている。
上記光学レンズ系は、上記各発光素子に対応する凸レンズ要素を上記光学素子の配置にそのまま対応させたレンズアレイ等が一般的に用いられることが多く、上記各発光ドットから放射される点状の光が上記レンズ要素によって集束されることにより、感光体上に上記発光ドットから投影されたドット列像が形成される。」(1頁右下欄15行?2頁左上欄10行)
イ.「各発光素子における各発光ドットの上記感光体表面上における露光出力も同一でなければならない。」(2頁左上欄15?17行)
ウ.「各発光ドットから放射される光束は、上記レンズ要素に対して、その発光ドットが配置された位置に応じて上記レンズ要素に所定の角度をもって入射することから、発光ドットの配列位置によって、上記感光体上の結像の照度が異なる現象が生じる。すなわち、各発光ドットの光の出力が同じであっても、上記レンズ要素の軸上に位置する発光ドットから放射されて上記レンズ要素に入射する光量と、上記レンズ要素の軸から離れて位置する発光ドットから放射されて上記レンズ要素に入射する光量との間にはかなりの差が発生する。このため、上記レンズ要素によって集束される感光体上の露光量にもかなりの差が生じ、印字を構成する各ドットによる露光量に差異が生じて印字品質の低下を招くという問題がある。」(2頁右上欄2?17行)
エ.「また、一般に、一点から出た光がレンズ要素の軸に沿ってレンズ要素に入射した場合には、レンズ要素を出た光束は一点に集束するが、上記レンズ要素の軸と傾斜してレンズ要素に入射した場合には、レンズ要素を出た光束は再び一点に集束せず、上記傾斜の度合に応じて拡がりをもって像面に散らばり像がぼけた状態となる。」(2頁右上欄18行?左下欄4行)

4.補正発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
引用発明の「感光体」は「印刷版作製用の感材」とはいえないけれども、露光により感光する材料の限度では一致し、以下ではその意味で「感材」との用語を用いることにする。
引用発明の「レンズ要素をもつ光学レンズ系」及び「レンズ要素の軸」は、補正発明の「発光素子からの光を感材に結像させるための光学系」及び「光学系の光軸」にそれぞれ相当する。
引用発明は「各発光素子の発光ドットを感光体に結像させるようになした光プリントヘッド」であるから、「複数の画素で構成される画像を感材に記録するための画像記録用光源ユニット」ということができる。なお、画素に相当するのは、発光ドットが光学レンズ系により感光体上に結像されたものである。
そして、補正発明において「光学系の光軸から遠い発光素子ほど、発光光量が小さくなるように、各発光素子の発光光量を制御する」ことと、引用発明において「各発光素子における各発光ドットの発光出力を、上記レンズ要素の軸から遠ざかるに従って増加させた」こととは、光学系の光軸からの距離に応じて各発光素子の発光光量を異ならせる点で一致する。
したがって、補正発明と引用発明とは、
「複数の画素で構成される画像を感材に記録するための光源ユニットであって、
感材を感光させることによってこの感材に画素を記録するための複数の発光素子と、
この発光素子からの光を感材に結像させるための光学系と、
上記光学系の光軸からの距離に応じて各発光素子の発光光量を異ならせた画像記録用光源ユニット。」である点で一致し、下の各点で相違する。
〈相違点1〉発光素子からの光の結像対象である「感材」につき、補正発明が「印刷版作製用の感材」と限定しているのに対し、引用発明にはそのような限定がない点。
〈相違点2〉光学系の光軸からの距離に応じて各発光素子の発光光量を異ならせることにつき、補正発明が「上記複数の発光素子からの光によって上記感材上に形成される複数の画素の黒化面積が均一化されるように、上記光学系の光軸から遠い発光素子ほど、発光光量が小さくなるように、各発光素子の発光光量を制御することによって画素当たりの照射総光量を制御すべく上記複数の発光素子をそれぞれ駆動制御する制御手段とを含む」としているのに対し、引用発明では「各発光ドットの上記感光体上における結像の照度がほぼ同一になるように、上記各発光素子における各発光ドットの発光出力を、上記レンズ要素の軸から遠ざかるに従って増加させた」としている点。

5.相違点についての判断及び補正発明の独立特許要件の判断
(1)相違点1について
画像記録用光源ユニットを用いて印刷版作製用の感材に画像を記録することは周知であるから、相違点1に係る補正発明の構成を採用すること自体は設計事項というべきである。なお、感材の種類に応じて最適露光条件等は当然異なるが、それは後述するように相違点2の問題であり、相違点1には直接関係しない。

(2)相違点2について
請求人が平成16年4月23日手続補足書により提出した「初級者のための写真製版技術入門」(社団法人日本印刷技術協会)には、「製版用リスフィルムは、リス現像を行うことによってガンマ値は10程度となり、超高コントラストの画像となる。」(上記手続補足書添付の参考資料の2頁、上記文献における頁数は確かめていないが、請求人は「第92頁第6?7行」と主張している。)との記載がある。請求人はこの記載を根拠に「製版分野では、ハイコントラスト特性を有する感光材料が一般に用いられることがお分かりいただけるかと思います。」(平成16年4月23日付け意見書2頁33?34行)と主張しており、同主張については当審も認めることにやぶさかではなく、「印刷版作製用の感材」がハイコントラスト特性であることを前提として、補正発明が成立しているものと解する。
ところで、ハイコントラスト特性の感材(印刷版作製用の感材)であれば、照射光量がある閾値を超える部分が黒化し、超えない部分は黒化せず、黒化する場合に照射光量が閾値をいくら上回っていようと問題にならない。そのことは、上記意見書において請求人が「黒化閾値以上のエネルギーが加えられる領域(幅W1)の内部での濃度むらは問題になりません。」(3頁本文6?7行)と主張しているとおりであり、この主張にも誤りはない。
そうすると、感材をハイコントラスト特性とした場合に当業者が目標とすべきことは、閾値を超える部分の面積を均一化するすることであり、それは補正発明でいう「上記複数の発光素子からの光によって上記感材上に形成される複数の画素の黒化面積が均一化される」ことにほかならない。これに対し、引用発明は「各発光ドットの上記感光体上における結像の照度がほぼ同一になる」ことを目標としている。ハイコントラスト特性でない感材であれば、単純に黒化するかしないかに2値化されるのではなく、黒化されるにしてもその度合いが、光のエネルギーに依存するから、面積でなく、「各発光ドットの感光体上における結像の照度」が像特性を支配する主たる要因となる。そうであるから、引用発明の感材はハイコントラスト特性でないものと推認することができる。
引用例には「各発光素子における各発光ドットの上記感光体表面上における露光出力も同一でなければならない。」(記載イ)との記載があり、「露光出力も同一」とするに当たり、ハイコントラスト特性でない感材であれば、引用発明のように「各発光ドットの上記感光体上における結像の照度がほぼ同一」ということに帰着するけれども、ハイコントラスト特性の感材であれば、「露光出力も同一」は「感材上に形成される複数の画素の黒化面積が均一化」に帰着される。このように、感材がハイコントラスト特性であるかないかによって、像特性を支配する要因は異なるから、目標とすることを引用発明の「各発光ドットの上記感光体上における結像の照度がほぼ同一になる」から、補正発明の「上記複数の発光素子からの光によって上記感材上に形成される複数の画素の黒化面積が均一化される」に変更することは、ハイコントラスト特性の感材(印刷版作製用の感材)を用いることに付随した設計事項というべきである。
請求人は上記意見書において、参考図を用いつつ、「参考図において曲線L2で示すように、感材上での蓄積エネルギーの傾斜(立ち上がり)が緩やかとなり、単位面積当たりのエネルギーが小さくなります。ところが、黒化閾値以上のエネルギーが加えられる領域は相対的に広いため、当該光像による黒化幅W2は、光軸付近の発光素子に対応する光像の黒化幅W1よりも広くなります。」(3頁本文9?12行)と主張している。以下、本審決も上記参考図の用語、具体的には「光軸付近光像の黒化幅W1」(「W1」と略記することもある。)、「周辺光像の黒化幅W2」(「W2」と略記することもある。)、「光軸付近の光像のビームプロファイルL1」及び「周辺部分の光像のビームプロファイルL3」との各用語を用いることとする。確かに参考図では、光軸付近光像の黒化幅W1<周辺光像の黒化幅W2となるグラフが描かれている。しかし、同図では「光軸付近の光像のビームプロファイルL1」と「周辺部分の光像のビームプロファイルL3」の交点より下側に「黒化の閾値」が位置するため、W1<W2となっているが、交点と閾値の位置関係が逆であれば、W1>W2となる。そして、参考図よりも光強度が弱い場合、閾値が大きい場合、又は光学系の収差が小さい場合には、そのような位置関係になることは十分ありうるから、補正発明では、偶々交点よりも閾値が下側であったというよりない。
引用例には「上記レンズ要素の軸と傾斜してレンズ要素に入射した場合には、レンズ要素を出た光束は再び一点に集束せず、上記傾斜の度合に応じて拡がりをもって像面に散らばり像がぼけた状態となる。」(記載エ)との記載があり、この記載から上記参考図のように、周辺のビームプロファイルL3の立ち上がり特性がなだらかになることが読み取れる。そうであれば、引用例に接した当業者であれば、感材をハイコントラスト特性とした場合に、W1<W2となっているか、又はW1>W2となっているかのどちらかの状態にあることはたやすく予測でき、これらが複数の画素の黒化面積が均一化されていない状態であることもたやすく理解できる。
そして、黒化面積が均一化されていない状態を均一化された状態にするためには、どちらかの面積を大きくするか又は小さくするかしなければならないのであるが、光量が小さいほどドットサイズ(印刷版作製用の感材であれば黒化面積)が小さくなることは、例えば特開平5-183712号公報【図6】(同図では「光強度の大きいときのドット径」及び「光強度の小さいときのドット径」が逆に記載されており、これは自明な誤記である。)に示されているとおりであるから、黒化面積を制御するために、発光光量を制御することには何の困難性もない。
上記のとおり、W1<W2となるのか、W1>W2となるのかは、感材の閾値、発光条件及び光学系の収差等により定まり不確定であるから、光学系の光軸から遠い発光素子ほど、発光光量が小さくなるように、各発光素子の発光光量を制御すべきなのか、逆に光学系の光軸から遠い発光素子ほど、発光光量が大きくなるように、各発光素子の発光光量を制御すべきなのかも不確定であるが、重要なのは、目標となる「複数の画素の黒化面積が均一化される」ことの実現である。そして、W1<W2又はW1>W2の何れであっても、光学系の光軸から遠い発光素子を大きくした場合及び小さくした場合の実験を行い、もっとも黒化面積が均一となるように、各発光素子の発光量を定めればよく、実験を経て発光量を定めることには何の困難性もない。
補正発明は、「光学系の光軸から遠い発光素子ほど、発光光量が小さくなるように、各発光素子の発光光量を制御する」としているが、これは偶々W1<W2であったのか、それとも「印刷版作製用の感材」を対象とした場合には、諸々の条件からW1<W2となってしまうかの何れかと解さねばならず、偶々であるにせよ必然であるにせよ、W1<W2であれば、上記説示のとおり、実験により定められる発光量は「光学系の光軸から遠い発光素子ほど、発光光量が小さくなる」ものである。
また、「発光光量が小さくなるように、各発光素子の発光光量を制御」すれば、自然と「画素当たりの照射総光量を制御」することにもなり、各発光素子の発光光量を制御するために「複数の発光素子をそれぞれ駆動制御する制御手段」を備えることは当然というよりない。
以上のとおりであるから、相違点2に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(3)補正発明の独立特許要件の判断
相違点1,2に係る補正発明の構成を採用することは設計事項であるか、当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

[補正の却下の決定のむすび]
補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反しており、同法159項1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年4月23日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「複数の画素で構成される画像を印刷版作製用の感材に記録するための光源ユニットであって、
感材を感光させることによってこの感材に画素を記録するための複数の発光素子と、
この発光素子からの光を感材に結像させるための光学系と、
上記複数の発光素子からの光によって上記感材上に形成される複数の画素の黒化面積が均一化されるように、上記光学系の光軸から遠い発光素子ほど、発光光量が小さくなるか、または発光時間が短くなるように、各発光素子の発光光量または発光時間を制御することによって画素当たりの照射総光量を制御すべく上記複数の発光素子をそれぞれ駆動制御する制御手段とを含むことを特徴とする画像記録用光源ユニット。」

2.本願発明の進歩性の判断
本願発明は複数の発光素子に対する制御量を、「発光光量または発光時間」と択一的に定めたものであるから、当然「発光光量」であってもよい。そして、制御量を「発光光量」とした場合には、「発光光量が小さくなる」ように制御するのであって、「発光時間が短くなるように」制御するわけではないから、結局のところ、補正発明そのものとなる。
そして、第2で述べたとおり、補正発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたのだから、本願発明も引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたというよりなく、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-07 
結審通知日 2007-06-12 
審決日 2007-06-25 
出願番号 特願平7-313067
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
P 1 8・ 575- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 名取 乾治  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 島▲崎▼ 純一
尾崎 俊彦
発明の名称 画像記録用光源ユニット  
代理人 稲岡 耕作  
代理人 川崎 実夫  

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