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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正しない A63F
管理番号 1162177
審判番号 訂正2006-39055  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2006-04-14 
確定日 2007-08-16 
事件の表示 特許第3461310号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
[1].本件特許第3461310号の特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明は、平成11年11月5日(優先権主張 平成10年11月9日、平成11年7月27日)の出願であって、平成15年8月15日にその特許権の設定登録がなされた。

[2].これに対して、本件特許は無効である旨の異議の申し立てが平成15年12月19日になされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である、平成17年8月2日に訂正請求がなされ、当該訂正請求が認められた上で、当該訂正請求書に記載された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された発明についての特許は取り消された。

[3].これに対して、特許権者は、当該決定の取消を求めて平成18年1月16日に知的財産高等裁判所に出訴し、当該訴訟中である、平成18年4月14日に本件訂正審判が請求された。

[4].前記訂正審判における訂正明細書の請求項に係る発明に対して、当審は特許法第29条第2項の拒絶理由を通知し、当該拒絶理由通知に対して、請求人から、平成18年6月30日に意見書が提出された。



第二.請求の要旨
本件訂正審判請求の要旨は、特許第3461310号の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その内容は次のとおりである。
[1].訂正の内容
本件訂正は、特許請求の範囲の請求項1について、(ア)「前記入賞球検知信号の入力順に」とあるのを「前記入賞球検知信号に基づく賞球個数情報の入力順に」に、(イ)「入賞球検知信号」とあるのを「賞球個数情報」に、(ウ)「固有賞球数」を「固有賞球数データ」に訂正すると共に、(エ)「CPU」の処理について「前記CPUは、補助電源によりバックアップ処理終了後も一定期間その作動が確保され、前記サブルーチンは、無限ループの設定により、前記バックアップ処理終了後の前記一定期間にメインジョブのルーチンに復帰しないようになっており、当該弾球遊技機の電源スイッチがオフされた場合には、終了信号を発生させ、この終了信号により前記異常確定情報の生成を禁止化する手段によって、前記バックアップ処理を行わせないようになっている」点を付加し、全体を
「入賞球を検知する入賞球検知部と、
入賞球検知信号に基づいて払い出すべき賞球個数の情報である賞球個数情報を生成する賞球個数情報生成手段と、
その生成された賞球個数情報に基づいて賞球払出機構に所定数の賞球の払い出しを行わせる賞球払出制御手段と、
前記賞球払出制御手段による賞球の払い出しを検知する払出賞球検知機構と、
前記賞球個数情報生成手段が生成する賞球個数情報と、前記払出賞球検知機構による払出賞球の検知情報とに基づいて、前記賞球払出機構による賞球の払い出しを管理する賞球払出管理手段とを備え、
各入賞口に対応して、各々特定の個数の賞球数が固有賞球数として定められており、
前記賞球払出制御手段は、
前記入賞球検知信号に基づく賞球個数情報の入力順に、その賞球個数情報に対応する賞球数設定用信号を出力する賞球個数指令出力手段と、
前記賞球数設定用信号の入力順に、その賞球数設定用信号に対応する固有賞球数データを記憶格納する固有賞球数データ記憶手段とを備え、
その固有賞球数データ記憶手段に記憶格納されている固有賞球数データを先に格納されているものから順に読み出し、その読み出し順に、対応する個数の賞球の払い出しを前記賞球払出機構に行わせるものであり、
前記賞球数設定用信号に対応する前記固有賞球数データは、各々一定個数のデータビットを含むと共に、そのデータビットの組み合わせが、払い出すべき賞球数に一対一に対応する形で定められたビット組の形で記憶され、
電源遮断により電源電圧が低下する異常が発生したか否かを検出する異常検出手段と、
該異常検出手段による検出結果を受けて異常確定情報を生成する異常確定情報生成手段と、
前記異常確定情報を記憶する異常確定情報記憶手段と、
少なくとも前記賞球個数情報を遊技情報として記憶する遊技情報記憶手段と、
前記電源遮断により電源電圧が低下する異常検出時に、前記遊技情報記憶手段に記憶されている遊技情報の喪失阻止処理を行うバックアップ実行制御部とを備え、
前記異常確定情報を前記異常確定情報記憶手段に書き込む処理ルーチンは、前記バックアップ実行制御部のCPUが該CPUに接続された別体の入出力回路に予め定められたタイミングにて自発的にアクセスし、そのアクセス時において入出力回路への異常検出の入力を確認した場合に実行されるサブルーチンであり、
前記CPUは、補助電源によりバックアップ処理終了後も一定期間その作動が確保され、前記サブルーチンは、無限ループの設定により、前記バックアップ処理終了後の前記一定期間にメインジョブのルーチンに復帰しないようになっており、
当該弾球遊技機の電源スイッチがオフされた場合には、終了信号を発生させ、この終了信号により前記異常確定情報の生成を禁止化する手段によって、前記バックアップ処理を行わせないようになっていることを特徴とする弾球遊技機。」(以下「訂正発明」という)と訂正するものである。


第三.当審が通知(平成18年6月1日付)した訂正拒絶理由の要旨
訂正明細書の請求項に係る発明は、特開平6-71028号公報、特開平8-202633号公報、特開平10-234990号公報、特開平5-35614号公報、特開平4-303225号公報に記載された発明、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件訂正は、特許法第126条の独立特許要件を充足しないから、当該訂正請求は認められないというものである。


第四.特許法第126条第5項(独立特許要件:特許法第29条第2項)の訂正拒絶理由
[1].当審で通知した取消理由に引用された刊行物及びその記載事項
(A).特開平6-71028号公報(以下「刊行物A」という)
(A-1).「【0006】また、入賞球を一旦貯留しないで、各入賞球を順次記憶しておく構成を採用することも考えられるが、遊技中に停電や故障が生じた場合には、未処理分の入賞球の記憶が消滅してしまい、遊技者が多大の不利益を蒙る可能性もあり、単純に記憶方式に切り替える訳にも行かない。」
(A-2).「【0008】【課題を解決するための手段】本発明は上記に鑑み提案されたもので、遊技盤(10)の遊技部(9)内に設けた入賞領域(例えば、第1?第3特図始動口38a?38c、変動入賞装置33の大入賞口33a等)へ入賞した入賞球の種別を検出する入賞種別検出手段(117)と、上記入賞種別検出手段(117)によって検出された入賞球の種別に応じた賞球排出数を個別に記憶する賞球排出数記憶手段(例えば第2賞球排出数記憶手段123)と、上記賞球排出数記憶手段(123)の記憶内容を保護する記憶保護手段(125,125′)と、上記賞球排出数記憶手段(123)が記憶する賞球排出数に基づいて、遊技球排出装置(71)より賞球を排出させる排出動作制御手段(124)と、を備えるものとした。」
(A-3).「【0049】この排出制御装置58の主要部は、例えばワンチップ・マイクロコンピュータ111より構成するものとしてあり、ワンチップ内にCPU,ROM,RAMが一体的に組み付けられ、電源回路112の供給電源に基づいて動作すると共に、発振器113より入力されるクロックを分周して用いる。また、上記ワンチップ・マイクロコンピュータ111へ停電検出信号を出力する停電検出回路114を設けてあり、上記電源回路112よりワンチップ・マイクロコンピュータ111へ供給される電源電圧を常時監視し、該電源電圧がワンチップ・マイクロコンピュータの動作を賄い得ない程低下した状態(停電状態)を検出することで、停電検出信号を出力するのである。」
(A-4).「【0052】先ず、遊技盤10の遊技部9内に設けられた各種入賞領域への入賞球を検出する入賞種別検出手段117(図2においては、各入賞領域に設けた第1?第3始動入賞球検出器41?43、継続入賞球検出器44、大入賞口入賞球検出器45等の検出器)より出力される入賞種別検出信号が、電気的制御装置56の第1賞球排出数記憶手段118へ入力されるものとしてある。そして、上記第1賞球排出数記憶手段118は、入賞種別検出手段117より入力された入賞種別検出信号の示す入賞球の種別に応じた賞球排出数を個別に記憶し、当該賞球排出数を賞球排出数送信手段119へ送出するのである。
【0053】なお、第1賞球排出数記憶手段118に複数の賞球排出数記憶がある場合には、入賞種別検出手段117より入力がある毎に予め定めた順番に賞球排出数を送出する構成とすればよい。例えば、第1賞球排出数記憶手段118が入賞球種別検出信号の入力された順に賞球排出数を記憶し、最も古い賞球排出数記憶から賞球排出数送信手段119へ出力するようにしてもよいし、賞球排出数の種別に対して何らかの優先順位を設定しておき、この優先順位に従って何れかの賞球排出数を優先的に賞球排出数送信手段119へ出力するようにしてもよい。」
(A-5).「【0070】先ず、電気的制御装置56の各制御処理について説明する。この電気的制御装置56は、例えば2ミリ秒毎にリセットされるものとしてあり、リセットによって起動する毎に所定の処理手順に従ってルーチンワークを行い、再び待機(リセット待ち)状態になる。なお、開店等で当該遊技機1の電源が投入された際には、RAMのクリアやフラグの初期設定等の初期化処理を行い、その後に各処理へ移行する。」
(A-6).「【0118】なお、上記実施例の排出数表示器28(4桁の可変表示器より構成した排出数表示手段)によって排出記憶の内容を一度に表示することは困難であるが、例えば、5個賞球の記憶数が“3”、10個賞球の記憶数が“0”、15個賞球の記憶数が“1”の場合には、「5-3,10-0,15-1」の表示をスクロールすることで、排出記憶内容の概要を遊技者に報知することが可能となる。また、排出数表示器28とは別途に排出記憶表示器を設けておくように構成すれば、ウエイトタイム中以外でも排出記憶の可視表示を行うことが可能となる」
(A-7).「【0121】また、本実施例の排出制御装置58においては、停電時における各種記憶のバックアップを行うために、例えば停電検出回路114が停電状態(ワンチップ・マイクロコンピュータ111への供給電圧低下)を検出することに基づいて、停電割込処理を行うものとしてある。そして、この停電割込処理においては、排出制御装置58より出力する各種の信号をオフにすると共に、停電検出時(停電割込処理実行時)の各処理状態および停電が発生した旨を記憶するのである。斯くすることによって、停電復帰した際には、上記排出制御装置58のゼネラルフローチャートで示した如く、停電発生の記憶に基づいて停電復帰と判定し、記憶している各処理状態へ復帰させるのである。」(第16頁右欄第10?22行)
(A-8).してみると、刊行物Aには次の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。
「所定の処理手順に従うルーチンワークの実行により、遊技盤(10)の遊技部(9)内に設けた入賞領域(例えば、第1?第3特図始動口38a?38c、変動入賞装置33の大入賞口33a等)へ入賞した入賞球の種別を検出し、入賞球種別に入力された順に賞球排出数を個別に記憶し、当該記憶内容を、記憶保護手段(125,125′)にて保護し、
記憶された賞球排出数の記憶に基づいて古い順に遊技球排出装置(71)より排出動作制御手段(124)にて賞球を排出させるパチンコ遊技機において、 電源電圧を監視する停電検出回路114を具備させ、当該停電検出回路が停電状態(ワンチップ・マイクロコンピュータ111への供給電圧低下)を検出する停電検出信号に基づいて、排出制御装置58より出力する各種の信号をオフにすると共に、停電検出時(停電割込処理実行時)の各処理状態および停電が発生した旨を記憶する停電割込処理を行なうパチンコ遊技機。」

(B).特開平8-202633号公報(以下「刊行物B」という)
(B-1).「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、データ処理装置に係わり、詳細には、停電時にアプリケーションプログラムにより実行される停電時データ退避処理の有無に応じて、バックアップ電源からの電源供給を制御するデータ処理装置に関する。
【0002】【従来の技術】従来、データ処理装置としては、例えば、エンジニアリングワークステーション(Engineering Work station)、パーソナルコンピュータ(Personal Computer)等がある。
【0003】これらのデータ処理装置には、停電、あるいは断線等によって不意に瞬間的、もしくは継続的に電力の供給が途絶えた場合、装置にダメージを与えぬために一定期間電源供給を行うUPS部(Uniterruptible Power Supply)を備えている。」
【0004】図4に示すようにUPS部1は、停電検出部1a、バックアップ電源1bとから構成されている。停電検出部1aは、AC電源からデータ処理装置に供給される供給電圧が停電によって停止される状態を検出し、所定の停電検出信号をデータ処理装置のCPU(Central Processing Unit:図示せず)に出力する。
【0005】バックアップ電源1bは、AC電源により常時充電されており、停電検出時にCPUから入力される所定の供給開始信号により、AC電源に替りデータ処理装置内各部に一定時間電源供給を行う。
【0006】従来の、データ処理装置のCPUにおいて実行される停電処理は、UPS部1の停電検出部1aからの停電検出信号の入力を受けて実行される処理である。CPUでは、前記停電検出信号の入力を受けると停電と判断し、バックアップ電源1bに供給開始信号を出力する。バックアップ電源1bでは、前記供給開始信号が入力されるとデータ処理装置内各部に一定時間電源供給を行なう。」
(B-2).「【0034】次に、動作を説明する。まず、本実施例のデータ処理装置10のCPU11において実行される停電処理について、図2に示すフローチャートに基づいて説明する。この停電処理は、タイマ20のタイムアップ毎に実行されるタイマ割込み処理であり、一定時間毎にUPS部1の停電検出部1aから停電検出信号が入力されているか否かを判別し(ステップS1)、前記停電検出信号が入力されていない場合は、停電処理を終了し、前記停電検出信号が入力されている場合は、停電フラグF2を“1”にセットする(ステップS2)。」
(B-3).「【0037】そして、アプリケーションプログラム独自の停電時データ退避処理の完了がデータ処理装置10のCPU11に入力されると(ステップS6)、CPU11は、バックアップ電源1bに供給終了信号を出力し、バックアップ電源1bからの電源供給を停止させ(ステップS7)、停電処理を終了し、データ処理装置10は停止する。以上がデータ処理装置10のCPU11において実行される停電処理の動作手順である。」

(C)特開平10-234990号公報(以下「刊行物C」という)
(C-1).「【0004】これまでの損失補償のやり方として、たとえば、特開平6-285231号公報には、電源の供給状態を検出するための電源供給状態検出手段と、この電源供給状態検出手段が出す検出信号に基づいて電源電圧の低下を検出するための停電検出手段と、この停電検出手段が出す電源電圧低下信号に基づいてその時点の遊技状態を記憶保持するための遊技状態記憶保持手段により、停電を検知したときに、その時点の遊技状態を記憶保持し、停電が復旧してから記憶保持してある停電前の遊技状態を呼び出し、これに基づいて再び遊技を始められるようにしたものが記載してある(以下、これを、「従来の装置」と略称する)。
【0005】しかし、従来の装置は遊技の再開を前提としているので、一度停電となったときに遊技者は、損失補償を受けるために停電が復旧するのを待たなければならない。」(第2頁右欄38行?第3頁左欄第3行)
(C-2).「なお、本明細書において「バックアップ電源」とは、停電時に少なくとも記憶手段の記憶を保持できる電源であればどのようなものでもよく、そのようなものとして、たとえば、発電装置のように電力を発生させるもの、蓄電池のように電気的エネルギーを蓄えるもの及びキャパシタ(コンデンサ)のように電荷を蓄えるものなどがある。(第4頁左欄第20?26行)
(C-3).「なお、符号14,14...は、特定入賞口12とは別の機能を持たせた一般入賞口である。一般入賞口14に遊技球が入賞すると賞球払出装置(賞球払出手段)43が一定数の賞球を払い出すようになっている。」(第5頁左欄第33?36行)
(C-4).「【0028】次に、図2を中心に図1をも参照しながら、本実施形態の電気的構成について説明する。符号25が示すのは、各種の演算処理や制御を受け持つCPU(Central Proccesing Unit、中央処理装置)である。CPU25には、遊技プログラム等を格納したROM(Read Only Memory、読み出し専用の記憶装置)26と、RAM(Random AccessMemory、ランダム・アクセスが可能な読み出しと書き込みができる記憶装置)27を接続する。さらに、停電時に一定のデータ(後述)を記憶・保持させるためのEEPROM(Electrically Erasable Programable ROM、電気的に書込消去できるプログラム可能なROM)28を接続する。
【0029】CPU25を駆動する電源回路(駆動電源)29に、停電を検出するための停電検出回路(停電検出手段)30を接続し、停電検出回路30を、CPU25に接続する。」(第5頁右欄第1?18行)
(C-5).「【0036】特賞状態にあるときのCPU25は、割込信号の有無を確認しながら特賞状態を続け、その状態が終了したときにS7へ戻る。割込信号を受け取ったCPU25は、バックアップ処理サブルーチンを実行する(S11)。ここに割込信号とは、CPU25等を駆動する電源回路29に供給される外部電源の電圧が一定以下(たとえば、賞球払出装置43が作動できる電圧以下)に低下したときに、これを停電とみなしてその事実を知らせるための信号である。すなわち、電源回路29に接続した停電検出回路30が、電圧の低下を検知したときに出力する信号が割込信号である。S11におけるCPU25は、まず、補償球算出手段として働く。つまり、RAM27から読み出した予定賞球数から、賞球払出装置43がその時点まで実際に払い出した(賞球検知センサ35が計数する)賞球数を、減算してその差球数(補償球数)を算出する(S15)。
【0037】次いで、CPU25は、記憶手段であるEEPROM28に、先の遊技者識別情報と関連づけてこの補償球数を記憶させる(S16,S17)。このように構成したのは、一度停電になっても、通電後に記憶内容を読み出せるというEEPROM28の機能を利用して停電時における遊技状態を保持するためである。」

(D).特開平5-35614号公報(以下「周知刊行物D」という)
(D-1).「【0005】すなわち、上記構成のバックアップ装置は、CPU1の電源電圧VCCを保護するのではなく、CPU1の制御状態を保持するRAM3自体にバッテリを備える方式である。通常こうした不揮発性RAMは、電源電圧VCCが低下してある電圧VP となると書込み禁止となるような保護がなされている。」
(D-2).「【0009】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するためにこの発明は、バッテリを内蔵し、電源電圧がバッテリ電圧以下となるときデータの書込みを禁止する書込み保護機能を有する不揮発性メモリを使用して、電源電圧が正常値から低下して正常値に復帰するまで中央処理装置の制御状態を保持するバックアップ装置において、前記電源電圧が前記メモリの書込み保護のかかる電圧と正常の電源電圧との間の電圧になったことを検出して前記中央処理装置に割込み処理をかける割込み処理手段と、前記電源電圧が前記割込み処理手段で割込み処理のかかる電圧と前記メモリの書込み保護のかかる電圧との間の電圧になったことを検出して前記中央処理装置にリセットをかけるリセット処理手段と、この手段でリセットをかけるときに前記メモリに割り当てされたアドレスを選択しないようにアドレスバスの最上位ビットを0にするアドレスバス制御手段とを具備して構成される。」

(E).特開平4-303225号公報(以下「周知刊行物E」という)
(E-1).「【0001】【発明の詳細な説明】【産業上の利用分野】本発明は、マイクロ・コンピュータを応用した測定器(以下、「電子応用測定器」という。)の電源断監視装置に関するものであって、とくに、主電源の断が、停電(外的要因)によるものか、電子応用測定器の操作者による電源スイッチの切断(人的要因)によるものかを速やかに識別し、電源断の要因ごとに異なる主電源断割込み処理ルーチンの変更を容易にし、割込み処理に許容される時間を引き延ばした、電子応用測定器に組み込まれる電源断監視装置に関する。」
(E-2).「【0003】そのために、主電源が断になったときの測定データや操作箇所の設定状態等所定の情報を測定器内部のメモリ(通常電池でバックアップされている)或は外部記憶装置に瞬時に退避する必要がある。一般に電子応用測定器の場合、人的要因と外的要因とでは退避すべき情報の種類や量が異なる。そのために、主電源の断が人的要因によるものか、外的要因によるものかによって、主電源断後の割込み処理ルーチンを変える必要がある。」、
(2).訂正発明と引用発明とにおける発明特定事項の対応関係
引用発明における、(ア)「停電検出回路」、(イ)「停電が発生した旨を記憶する」、(ウ)「停電割込処理」、(エ)「停電検出時(停電割込処理実行時)の各処理状態の記憶」は、訂正発明1における(ア)「異常検出手段」、(イ)「異常確定情報記憶手段」、(ウ)「バックアップ実行制御部」、(エ)「遊技情報記憶手段」に各々対応する。

(3).一致点
引用発明におけるルーチンワークの実行、すなわち、入賞球を入賞球種別に検出して記憶し、検出順に賞球を排出する機能の実行に際しては、当該機能実行の為の手段を伴うことが周知であることを考慮すると、両者は以下の点で一致する。
「入賞球を検知する入賞球検知部と、
入賞球検知信号に基づいて払い出すべき賞球個数の情報である賞球個数情報を生成する賞球個数情報生成手段と、
その生成された賞球個数情報に基づいて賞球払出機構に所定数の賞球の払い出しを行わせる賞球払出制御手段と、
前記賞球払出制御手段による賞球の払い出しを検知する払出賞球検知機構と、
前記賞球個数情報生成手段が生成する賞球個数情報と、前記払出賞球検知機構による払出賞球の検知情報とに基づいて、前記賞球払出機構による賞球の払い出しを管理する賞球払出管理手段とを備え、
各入賞口に対応して、各々特定の個数の賞球数が固有賞球数として定められており、
前記賞球払出制御手段は、
前記入賞球検知信号に基づく賞球個数情報の入力順に、その賞球個数情報に対応する賞球数設定用信号を出力する賞球個数指令出力手段と、
前記賞球数設定用信号の入力順に、その賞球数設定用信号に対応する固有賞球数データを記憶格納する固有賞球数データ記憶手段とを備え、
その固有賞球数データ記憶手段に記憶格納されている固有賞球数データを先に格納されているものから順に読み出し、その読み出し順に、対応する個数の賞球の払い出しを前記賞球払出機構に行わせるものであり、
前記賞球数設定用信号に対応する前記固有賞球数データは、払い出すべき賞球数に一対一に対応する形で定められて記憶され、
電源遮断により電源電圧が低下する異常が発生したか否かを検出する異常検出手段と、
該異常検出手段による検出結果を受けて異常確定情報を生成する異常確定情報生成手段と、
前記異常確定情報を記憶する異常確定情報記憶手段と、
少なくとも前記賞球個数情報を遊技情報として記憶する遊技情報記憶手段と、
前記電源遮断により電源電圧が低下する異常検出時に、前記遊戯情報記憶手段に記憶されている遊技情報の喪失阻止処理を行うバックアップ実行制御部とを備え、
前記異常確定情報を前記異常確定情報記憶手段に書き込む処理ルーチンはサブルーチンである弾球遊技機。」

(4).相違点
(4-1).相違点1
固有賞球数データに関して、訂正発明は、払い出すべき賞球数に一対一に対応する形で定められたデータビットを含む一定個数のデータビットの組合せで記憶されているのに対し、引用発明には、当該賞球数の記憶形式がデータビットであるか否か不明である点、
(4-2).相違点2
電源電圧が低下する異常が発生した場合、訂正発明は、サブルーチンにて、(i)CPUが該CPUに接続された別体の入出力回路に予め定められたタイミングにて自発的にアクセスして異常の有無確認し、(ii)バックアップ処理後にメインジョブのルーチンに復帰しない処理を無限ループにて行い、(iii)バックアップ処理終了後も一定期間その作動が確保されるようになっているのに対し、引用発明は、(i)異常の有無の具体的確認手段は不明であり、(ii)バックアップ処理後にメインジョブのルーチンに復帰しない処理を無限ループにて行っているか否か不明であり、さらに、(iii)バックアップ処理終了後も一定期間動作が確保されるか否か不明である点。
(4-3).相違点3
訂正発明は、弾球遊技機の電源スイッチがオフされた場合には終了信号を発生させ、この終了信号により前記異常確定情報の生成を禁止化する手段によって、前記バックアップ処理を行わせないようになっているのに対し、引用発明は電源スイッチオフの場合に、バックアップ処理を行わせるか否か不明である点。

(5).相違点の検討
(5-1).相違点1について、
CPUを用いた制御における記憶手段は、ビットの組合せにより記憶すべきデータを表すこと、及びビットの組合せの個数を一定とする固定長とすることは周知の記憶手段であるから、引用発明において記憶する固有賞球データを、固定長のデータビットの組合せで記憶する旨の限定は、周知の記憶手段を単に限定したもので、格別のものではない。
(5-2).相違点2について、
(i)前記(B-2)に、停電の検知・対処手段として、CPUがタイマーによる一定時間毎のタイミングでアクセスして停電検出信号入力の有無をチェックして異常の確認を行い、停電時等異常の場合は停電フラグF2を1にする検知・対処手段が示されており、当該アクセスして停電検出信号入力の有無をチェックすること、及び停電フラグF2を1にする対処手段は、訂正発明において、各々CPUが該CPUに接続された別体の入出力回路に予め定められたタイミングにて自発的にアクセスして異常の確認、及び、異常確定情報の生成、記憶に相当するものであるから、当該停電の検知・対処手段を引用発明における停電の検出手段に採用することは当業者が容易になし得る程度の事項であり、当該採用したことによる格別の作用効果は認められない。
(ii)停電時には、バックアップ電源にてバックアップされていない電気制御手段が停止されることは、例えば、刊行物B、C、周知刊行物Dにも見られる様に技術常識であるから、引用発明においてもバックアップ電源にてその処理が確保されている停電割込処理、すなわち、当該割込処理のサブルーチン以外のルーチンワークが実行されることはないものであるから、
当該サブルーチン終了後もメインルーチンに復帰しないことは明らかであること、さらに、無限ループのルーチンはそのルーチンを繰り返すものであることは周知の事項であることを勘案すれば、メインルーチンに復帰させない手段として、当該無限ループのルーチンを採用することは当業者が適宜選択採用し得る程度の事項であり、しかも、当該採用したことによる格別の作用効果も認められない。
(iii)バックアップ電源の供給期間を所定期間とすることは、前記(B-1)にUPS部(Uniterruptible Power Supply)と記載されるように周知のバックアップ電源供給手法であり、当該所定期間はその目的からして、少なくともバックアップ処理が終了する期間以上であることは技術常識であること。
また、バックアップ処理終了検出手段を持たない本件訂正発明は、バックアップ処理時間が不明であるから当該処理終了後の一定時間の始期を如何に設定するのか記載されていないばかりでなく、当該一定期間は、如何なる作用、効果を達成する為の如何なる長さの期間であるのかも記載されていない。
してみると、バックアップ処理終了後も一定期間その作動を確保することは、前記周知のバックアップ電源供給手法に基づいて、そのバックアップ処理の確実性の担保等を勘案して適宜設定しうる設計的事項であり格別のものではない。、
(5-3).相違点3について、
停電対策としてバックアップ手段を設けた機器において、電源スイッチのオフによる電源電圧低下の場合と、遊戯中における停電による電源電圧の低下の場合とを峻別して、前者の場合と後者の場合とで相違する処理を行わせることは、前記周知刊行物Eに示される様に周知の事項である。
一方、弾球遊技機において、電源電圧低下の原因が遊戯中における停電のときは遊技状態の記憶を保持する必要があるのに対し、その原因が閉店時の電源スイッチオフのとき等は遊技状態の記憶を保持する必要性がない場合も周知である。
してみると、電源スイッチのオフのときに、遊技状態の記憶を保持するバックアップ処理を行わせない様にすることは、当業者が必要に応じて適宜行う技術的事項であり、しかも、そのための構成においても格別な点は認められないから、当該相違点は格別のものではない。
(6).まとめ、
以上のように各相違点は格別のものではなく、しかも、それらの相違点を総合的に判断しても、格別の作用効果も構成上の困難性も認められないから、訂正発明は、前記刊行物A、B、Cに記載された発明、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもので特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、訂正発明は、特許法第126条第5項の規定に違反するものである。


第五.請求人は、前記訂正拒絶の理由に対して、要旨次のことを意見書(平成18年6月30日付)にて主張するので、当審の見解を以下に簡明に述べる。
[ア].相違点2に関する請求人主張要旨
(ア-1).段落【0037】の「例えば、プログラム暴走等によるリセット状態」、段落【0176】の「電源遮断異常以外のトラブル発生(例えば、プログラム暴走など)時にはセットされることはない。」との記載、及び特開平10-249032号公報(以下「請求人提出刊行物1」という)、特開平9-17956号公報(以下「請求人提出刊行物2」という)を根拠に、本件明細書には「ウオッチドッグタイマ」が記載されている旨の主張、
さらに、
(ア-2).当該「ウオッチドッグタイマ」の存在を前提として、
(i).無限ループの作用、効果を、バックアップ処理終了後に停止命令(STOP)の挿入によりプログラムを停止させた場合、それがプログラムどおりであるとしても、停止命令(STOP)の挿入によりプログラムが停止してしまうためウオッチドッグタイマはクリアされず、CPUがリセットしてしまうことになるが、無限ループの設定によってプログラムの動作を継続させることにより、「プログラムは正常に動作しプログラムの 暴走には当たらない」ようにウオッチドッグタイマを定期的にクリアすることができる旨、
(ii).及び、メインジョブ以外の処理で、バックアップ処理終了後に必要とされる処理がある場合に、無限ループのルーチンの繰り返しにおいて処理が可能である旨主張する。

[あ].合議体の見解(相違点2に関する請求人主張要旨(ア)に対して)
(あ-1).請求人主張事項(ア-1)について、
(a).遊技機において「例えば、プログラム暴走等によるリセット状態」として、定期的なリセットスタート手段によっても当該状態が生じることが周知であることは、下記の刊行物α、および、遊技機において「ウォッチドッグタイマ」が周知である例として請求人が提出した、「請求人提出刊行物1」の段落【0032】の記載「なお、CPU30は、上述のように定期的にリセットスタートしているので、仮にCPU30が暴走しても正常な状態に復帰する可能性がある。」との記載から明らかであり、このことは、本件特許明細書段落【0166】の「そして、初期化後は、S2においてタイマー監視(カウンタプログラムによるソフトタイマー処理である)により、リセット周期が到来したかどうかが確認され、リセット周期が到来していればSIの初期化ジョブに戻る。」との記載にも見られるように当業者にとっては周知の技術的事項である。
してみると、「例えば、プログラム暴走等によるリセット状態」が即「ウオッチドッグタイマ」の存在を指すものではないことは、前記のように定期的なリセットスタート手段にても生じるものであるから「プログラム暴走等によるリセット状態」を根拠に「ウオッチドッグタイマ」が記載されているとの主張は根拠がないこと。
しかも、本件明細書に記載されている「例えば、プログラム暴走等によるリセット状態」は前記段落【0166】の記載と整合するものであるから、「ウオッチドッグタイマ」が存在しなくても、本件発明の記載に矛盾を生じることはないものである。
したがって、本件明細書に「ウオッチドッグタイマ」が記載されている根拠は認められないから、本件明細書に「ウオッチドッグタイマ」は記載されていないものである。
(b).当該「請求人提出刊行物1」には、「ウォッチドッグタイマ」に関して段落【0019】に、「CPU50は、ROM51に格納されているプログラムに従って動作し、・・・。また、詳細は後述するが、CPU50は、ROM51に格納されているW/Tパルス出力プログラムに基づくW/Tパルス出力処理を実行することにより、正常に動作しているときには定期的に、上述のウォッチドッグタイマパルスを監視回路55に向けて出力する。」と、「ウォッチドッグタイマ」には、「W/Tパルス出力プログラム」を要することが記載されているように、ウォッチドッグタイマが訂正発明に存在するならば、最低限プログラムとの関係が記載される必要があるにも拘わらず、ウォッチドッグタイマに関するプログラムについては一切本件明細書には記載されていない。
このことは、ウォッチドッグタイマが本件明細書に記載されていないことの証左でもある。
なお、「ウォッチドッグタイマ」は、プログラムとの関係を要することが周知の事項であることの例示として、刊行物(β)、(γ)、及びその記載事項を以下に記載する。

(α):特公平5-34032号公報報記載事項
(α-1).「CPUが実行するプログラム、固定データを記憶したROMの命令を一通り実行するのに十分な時間(3ms)毎にリセットすることにより、CPUが暴走や無限ループへの飛び込みといった誤動作に陥ることがあったとしても3ms毎のリセットによって、ただちに正常な動作状態に復帰させられる」
(β):特開平5-225000号公報記載事項
(β-1).「【0002】【従来の技術】図6(A)は、マイクロコンピュータ10Aに接続された従来のウオッチドッグタイマを示す。図6(B)?(D)は、図6(A)の動作を示すタイミングチャートである。」
(β-2).「【0004】プログラムが暴走し又はクロックが停止してクリアパルスP1がマイクロコンピュータ10Aから出力されなくなると、電圧P2が上昇して基準電圧VSよりも高くなり、コンパレータ34の出力信号P3が高レベルとなる。この出力信号P3により、例えばマイクロコンピュータ10Aが初期化されて、装置の安全が確保される。」
(β-3).「【0017】マイクロコンピュータ10は、プログラムのループの所定箇所を通る毎に、1個のクリアパルスS1をデータ出力端子DO1から出力し、また、データ出力端子DO2の出力を反転させる。クリアパルスS1の立ち下げ又は/及び切換信号S2の反転は、クリアパルスS1の立ち上りに基づいてハードウエア構成で行ってもよい。」

(γ).http:/www.necel.com/ja/faq/mi_com/_com_wdt.html(日本電気(株)ホームページ抜粋)
(γ-1).「ウォッチドッグ・タイマの基本 」
(1)はじめに
日頃使用しているパソコンでは、何らかの原因で動作がおかしくなった(指定した動作以外を繰り返す、黙り込んでしまい何の操作も受け付けない等)場合には「暴走した」または「フリーズした」として立ち上げ直すのは経験があるかと思います。使用者はパソコンが何をやっているかをある程度理解しており、異常を検知でき、対策を行うことができるからこのような処理が可能な訳です。
それでは、マイコンが通常使われている組み込み分野のアプリケーションではどうでしょうか。使用するのは一般の人です。マイコンが使われていることも知らない可能性があります。何か異常を感じたら、コンセントから電源コードを引き抜くようなことはあるかも知れませんが、常に監視している訳ではありませんし、的確な判断や処理ができるとは期待できません。
その一方で、アプリケーション・プログラムはどんどん大きくかつ複雑になっています。そのため、設計者も全体を理解するのは困難になってきています。そのために、プログラムに何らかの対策を盛り込むのは無理(対策を考えるよりは、プログラムそのものの完成度を上げるのが先)でしょう。プログラムのみでの対策ができないとなると、なんらかのハードウェアの助けを借りる必要があります。
プログラムが異常動作をしていないかを監視するハードウェアの代表的なものに「ウォッチドッグ・タイマ」(番犬機能)があります。
(2) ウォッチドッグ・タイマとは
ウォッチドッグ・タイマ(以下WDTと呼ぶ)はプログラムが異常動作していないかを監視する番犬の機能を果たすものですが、その実体は、監視対象であるプログラムからはクリアすることはできるが、止めることができない単なるタイマです。このタイマはオーバフローすると、WDT割り込みを発生したり、リセットをかけたりします。
通常は、オーバフローしないように定期的にクリアすることでWDT割り込みやリセットを発生させないようにします。これは、下記のように対応させると分かりやすいと思います。このように、WDTは他の機能と違って、動作させない(吠えさせない)ようにするのが正常な使い方になります。
(3) WDTの構成と動作(概要)
WDTタイマはクリアできるがとめられない(フリーランの)タイマで、起動すると指定されたクロックをひたすらカウントし続けます。イメージとしては下図のようになります。あふれる(オーバフロー)までの時間は水滴(カウントクロック)の頻度(周波数)で決まります。水滴を溜めていき(カウントして)、あふれる(オーバフロー)前に底をあけて水を捨て(クリア)れば、なにも起こりません。もし、水を捨てるのを忘れるか、間に合わなかった場合にはあふれて(オーバフロー)しまい、爆弾のスイッチが押される(リセットがかかる)ことになります。これで、プログラムの異常検出ができます。
(4) WDTの使い方の概要
WDTは、プログラムが正常に動作しているときには、その中で、クリア処理を定期的に行うことで、WDTが動作しない(番犬が吠えない)ようにします。







(c).むすび
前記「 (a)」記載のように、「プログラム暴走等によるリセット状態」は、「ウォッチドッグタイマ」手段によってのみ生じるものではなく、「定期的なリセットスタート手段」にても生じること、そして、「ウォッチドッグタイマ」には、クリアパルスを発生させる為のプログラム中のコマンドを必要とすること等から、「定期的なリセットスタート」手段と「ウォッチドッグタイマ」手段とは相違する手段、すなわち、前者は必ず所定時間毎に初期状態にリセットされるものであるのに対し、後者は所定時間毎に必ず初期状態にリセットされるものではなく、異常状態が生じ、クリアパルスが発生しないときのみリセットされるものであるから、両者に偶々「プログラム暴走等によるリセット状態」の共通状態が存在する場合があることを以て、本件明細書には明記されていない「ウォッチドッグタイマ」が記載されているということはできないから、請求人の当該主張は誤りである。
(あ-2).請求人主張事項(ア-2)について、
前記「(c).むすび」のように、本件明細書にウオッチドッグタイマが記載されていないものであるから、当該ウオッチドッグタイマを前提とした作用、効果の主張はその主張の前提において理由がない。
なお、念のために当該主張に対する反論を簡潔に以下に記載する。
(d).請求人主張(ア-2)(i)について
請求人の前記「(i)」主張における「プログラムどおりであるとしても、停止命令(STOP)の挿入によりプログラムが停止してしまうためウオッチドッグタイマはクリアされず」における「プログラムどおりであるとして」との主張は、請求人が、明細書に記載された「プログラムの暴走」を根拠として「ウオッチドッグタイマ」の存在を主張していることと矛盾するばかりでなく、訂正発明と関係ない主張であるから、主張の前提において理由がない。
すなわち、
ウオッチドッグタイマは、「プログラムが正常動作の場合にはCPUをリセットしない」という機能が本来の機能であるから、本来の機能と相違する機能の使用に際しては、当該使用に関する明示的な記載を要するところ、当該記載は明細書には認められない。
したがって、本来の機能と相違する機能を主張することは、明細書の記載に基づかない主張であるから、当該主張はその前提において理由がない。
(e).請求人主張(ア-2)(i)について
請求人の前記「(i)」の「プログラムは正常に動作しプログラムの暴走には当たらない様にウオッチドッグタイマを定期的にクリア」との主張は、ウオッチドッグタイマを如何にクリアするのかに関する記載は明細書には認められないから、明細書の記載に基づかない主張であり、主張の前提において理由がない。
すなわち、
訂正発明において実行されるプログラムは、電源異常時でない限りメインルーチンを実行するものであり、また、実行されるプログラムが無限ルーチンに移行したとき、メインルーチンは実行されないこととなる。
したがって、ウオッチドッグタイマがメインルーチンの実行中に定期的にクリアされるものであるならば、無限ルーチンに移行してからはウオッチドッグタイマのクリアは行われないこととなる。
してみれば、「クリア」は、無限ループを含む割込ルーチンを実行させるプログラムによって行われることを要するところ、当該ルーチンには「クリア」に関する記載は認められない。
(f).請求人主張(ア-2)(ii)について
「無限ルーチン」に関する唯一の記載箇所である、本件明細書の段落【0179】には、「マル2バックアップ処理終了後も補助電源の電圧は一定期間維持され、プログラム処理の続行は可能であるが、補助電源電圧が不安定化してくると、プログラムの正常作動が困難となり、甚だしい場合は暴走状態に陥って、」と記載されており、このことは、当該一定期間に「プログラム処理の続行」することを回避すべき旨の記載であるから、当該主張と対立するものであることからして、当該主張は明細書の記載に基づかない主張である。
さらに、無限ループで「プログラム処理の続行」を行うとすると、繰り返し行なう処理とは如何なる処理であるのか、すなわち、無限ループのルーチンで何回も何回も繰り返し行われる処理とは遊技機において具体的に如何なる処理であるかも記載されていない。
したがって、当該主張は本件明細書の記載に基づかない主張であるから理由がない。

(あ-3).まとめ
本件明細書には明示的には勿論、実質的にも「ウォッチドッグタイマ」は記載されていないものである。


[イ].相違点3に関する請求人主張要旨
相違点3を容易であるとした判断は誤りである。
すなわち、
刊行物Eに記載された発明は、主電源の断が人的要因によるか、外的要因によるかに基づいて主電源断後の割込処理ルーチンを変えているものの、所定の情報をメモリにバックアップ処理しているから、電源スイッチがオフされた場合にバックアップ処理させないことは、刊行物Eに基づいて当業者が容易に想到し得ることではない。
[い].相違点3に関する請求人主張要旨(イ)に対する合議体の見解
主電源断の場合に、RAMに記憶されたデータをバックアップする必要の有無によりバックアップ処理の有無を決定することは、刊行物E以外にも例えば下記の刊行物δ、εに示されるように周知の技術的事項であり、 さらに、遊技機においても、閉店時に人的要因により電源スイッチをオフしたときにバックアップ手段を持たない遊技機、要するに遊技情報がメモリーにバックアップされない遊技機は周知であり、当該周知の遊技機の場合には、電源スイッチがオフされた場合にバックアップ処理をさせないことは、例えば、下記の刊行物φに示されるように技術的に明らかな事項である。
したがって、引用発明に刊行物Eを適用するに際して、前記周知の遊技機の様にバックアップする対象である遊技情報が無いときは、バックアップ処理させないことは当業者にとっては当然の技術的事項であるから、当該主張は理由がない。

刊行物δ:特開平11-184569号公報(平成11年7月9日公開)
(δ-1)「【0009】【発明が解決しようとする課題】しかし、この様な半導体メモリのデータバックアップシステムでは、停電や通常電源供給装置の異常等の突発的な電源断の場合以外に、運用状態における保守時、或いは、運用前の製造工場における試験時又は現地における初期調整時等の人為的断電時にも補助電源45に切り替わり、補助電源45の電力が無駄に消費されることになる。
(δ-2)「【0013】したがって、本発明は、人為的な電源断の場合に、補助電源からの電力の供給をしないように制御して、補助電源の寿命を延ばすことを目的とする。
刊行物ε:特開平6-4168号公報
(ε-1)「【0002】【従来の技術】コンピュ-タシステムにおいてアプリケ-ションプログラムが実行中に電源断となる要因(OFFキ-押下、停電、バッテリ駆動の場合の電圧低下等)が発生した場合、直ちに再開情報をバックアップRAMにセ-ブし、システムをダウンさせる。しかる後、次回電源ONにて再開情報をシステムにロ-ドし直すという方式をとっている(特開昭62-169218)。」
(ε-2)「【0011】(1) 電源断要因が発生した場合電源断要因にはいくつか考えられるが、ここではユ-ザが、OFFキ-を押したとして説明する。」
(ε-3)「【0015】(ステップ21)ここで、ユ-ザは次の三者択一の処理を行う。
【0016】(a)再開情報をセ-ブしないでシステムの電源断(b)再開情報をセ-ブし,システムの電源断(c)再開情報をセ-ブし、アプリケ-ションプログラム続行また、一定時間未入力状態が続いた場合には予め設定してあるデフォルトを選択する。さらに、停電、瞬電等が発生した場合には、このステップでシステムがダウンする可能性があるが、前もって再開情報をセ-ブしておけば、たとえ、ここでシステムがダウンしても問題ない。
【0017】(ステップ22)再開情報をセ-ブしないでシステムの電源断が選択された場合には、(ステップ23)物理的にシステムの電源断を行う。」

刊行物φ:特開6-175938号公報
(φ-1)「【0002】【従来の技術】従来のメモリ内容保持機能を有する情報処理装置、特にメモリ内容保持機能を有するPOS装置において、電源スイッチがオンのとき、AC100V電源によりメモリーが保持され、電源スイッチがオフのとき、バックアップ用の電池を内蔵している場合はこの電池の容量分メモリーが保持される。また、バックアップ用の電池を内蔵していない場合は、電源スイッチをオフするとメモリ内容が消去される。」


第六.まとめ
以上のとおり、訂正発明は、前記刊行物A、B、Cに記載された発明、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第5項の規定に適合しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-29 
結審通知日 2006-09-01 
審決日 2006-09-20 
出願番号 特願平11-315495
審決分類 P 1 41・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 塩崎 進
川島 陵司
登録日 2003-08-15 
登録番号 特許第3461310号(P3461310)
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 伊藤 洋二  

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