• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) E02D
管理番号 1162248
判定請求番号 判定2007-600015  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2007-09-28 
種別 判定 
判定請求日 2007-02-15 
確定日 2007-08-10 
事件の表示 上記当事者間の特許第3295809号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「水中捨石均し工法」は,特許第3295809号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1 請求の趣旨
本件判定請求は,イ号図面ならびに説明書に示す「水中捨石均し工法」(以下,「イ号工法」という。)が特許第3295809号発明(以下,「本件発明」という。)の技術的範囲に属しない,との判定を求めたものである。

2 本件発明
本件特許第3295809号は,平成12年5月15日の出願に係り,平成14年4月12日に設定登録されたものであって,本件発明は,その特許請求の範囲に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】水中捨石基礎の計画天端高さとほぼ同じ天端高さの捨石基礎本体を作業船から捨石を投入して形成し、
その捨石基礎本体の天端上に複数の捨石余盛りを、互いに所要の間隔で、上記作業船のクレーンブームに吊下したグラブバケット等の捨石堆積手段により上記捨石基礎本体の天端至近位置で捨石を解放することによって、しかも、その各捨石余盛りに対する重錘による輾圧とそれにより周囲に展延する捨石に対する同重錘による輾圧とによって上記計画天端高さの水中捨石基礎となる捨石の総量を、各捨石余盛りに分配した量にして、形成し、
その後、上記重錘の自由落下を反復実施することによる輾圧を、上記各捨石余盛りに対して行うとともに、その輾圧によって周囲に展延した捨石に対しても行い、水中捨石基礎が計画天端高さとなるように圧密均しすることを特徴とする重錘自由落下式水中捨石基礎圧密均し工法。」(以下,「本件発明1」という。)
「【請求項2】捨石基礎本体を、水中捨石基礎の計画天端高さと同じ天端高さにして形成することを特徴とする請求項1記載の重錘自由落下式水中捨石基礎圧密均し工法。」(以下,「本件発明2」という。)
「【請求項3】捨石基礎本体を、水中捨石基礎の計画天端高さよりもやや低い天端高さにして形成することを特徴とする請求項1記載の重錘自由落下式水中捨石基礎圧密均し工法。」(以下,「本件発明3」という。)
「【請求項4】捨石基礎本体を、水中捨石基礎の計画天端高さよりもやや高い天端高さにして形成することを特徴とする請求項1記載の重錘自由落下式水中捨石基礎圧密均し工法。」(以下,「本件発明4」という。)

そして,本件発明1は,分説すると以下の構成要件を備えるものである。

A 水中捨石基礎の計画天端高さとほぼ同じ天端高さの捨石基礎本体を作業船から捨石を投入して形成し、

B その捨石基礎本体の天端上に複数の捨石余盛りを、互いに所要の間隔で、上記作業船のクレーンブームに吊下したグラブバケット等の捨石堆積手段により上記捨石基礎本体の天端至近位置で捨石を解放することによって、しかも、その各捨石余盛りに対する重錘による輾圧とそれにより周囲に展延する捨石に対する同重錘による輾圧とによって上記計画天端高さの水中捨石基礎となる捨石の総量を、各捨石余盛りに分配した量にして、形成し、

C その後、上記重錘の自由落下を反復実施することによる輾圧を、上記各捨石余盛りに対して行うとともに、その輾圧によって周囲に展延した捨石に対しても行い、水中捨石基礎が計画天端高さとなるように圧密均しすることを特徴とする

D 重錘自由落下式水中捨石基礎圧密均し工法。
(以下,上記A?Dを構成要件A?Dという。)

また,本件発明2は,構成要件A?Dに加え,以下の構成要件Eを備えるものである。
E 捨石基礎本体を、水中捨石基礎の計画天端高さと同じ天端高さにして形成する

また,本件発明3は,構成要件A?Dに加え,以下の構成要件Fを備えるものである。
F 捨石基礎本体を、水中捨石基礎の計画天端高さよりもやや低い天端高さにして形成する

また,本件発明4は,構成要件A?Dに加え,以下の構成要件Gを備えるものである。
G 捨石基礎本体を、水中捨石基礎の計画天端高さよりもやや高い天端高さにして形成する

3 イ号工法
請求人は,イ号工法を「水中捨石基礎(基礎19)の計画天端高さ(H)よりも高い捨石基礎本体(捨石基礎20)を作業船から捨石(4)を投入して形成し、その後、重錘(錘本体6)の自由落下を反復実施することによる輾圧を、上記捨石基礎本体(捨石基礎20)に対しても行うとともに、その輾圧によって周囲に展延した捨石(4)に対しても行い、水中捨石基礎(基礎19)が計画天端高さ(H)となるように圧密均し、最後に、潜水士が余分な捨石(4)を排除することを特徴とする水中捨石均し工法。」と特定している(請求書4頁8?14行)が,請求人が判定請求書に添付した「イ号図面ならびに説明書」との対応が十分ではなく,例えば,捨石投入工程および荒均し工程について,特定されていない。
そこで,イ号工法については,本件判定と判定2007-600014とは全く同一であるといえるから,判定2007-600014における被請求人の特定(判定2007-600014の答弁書7頁17行?8頁4行)を援用するとともに,これに基づいて,イ号工法を次のように特定する。

a 捨石投入工程において,指示棒22,22を目印に,所定幅Wの内側に捨石4を投入し,所定高さ(計画天端高さ)Hよりもh1ほど高い高さにした捨石基礎20を形成し(図4),

b 荒均し工程で,上記水中捨石基礎(捨石基礎20)の上端部の捨石4をクレーンや潜水士によって排除して,該水中捨石基礎(捨石基礎20)の上端が概ね平坦で高さが所定の高さHよりもh2(h2<h1)ほど高い水中捨石基礎(捨石基礎20)を形成し,

c 本均し工程において,起重機船のクレーンに吊り下げた重錘(錘本体6)の自由落下を反復実施することによる輾圧作業を行って,該水中捨石基礎(捨石基礎20)を所定高さ(計画天端高さ)Hまで圧密均しするとともに,その輾圧作業により皺寄せされた捨石4すなわち捨石群についても,上記輾圧作業における重錘(錘本体6)による輾圧,押圧により余分な捨石4を水中捨石基礎(捨石基礎20)の縁部から法面へと排除することにより,上記所定高さ(計画天端高さ)Hにする

d 水中捨石均し工法。
(以下,上記a?dを構成a?dという。)

4 当事者の主張
(4-1)請求人
請求人は,本件発明1とイ号工法と比較すると,本件特許発明では,「水中捨石基礎の計画天端高さとほぼ同じ天端高さの捨石基礎本体を作業船から捨石を投入して形成し、その捨石基礎本体の天端上に複数の捨石余盛りを、互いに所要の間隔で、上記作業船のクレーンブームに吊下したグラブバケット等の捨石堆積手段により上記捨石基礎本体の天端至近位置で捨石を解放することによって、しかも、その各捨石余盛りに対する重錘による輾圧とそれにより周囲に展延する捨石に対する同重錘による輾圧とによって上記計画天端高さの水中捨石基礎となる捨石の総量を、各捨石余盛りに分配した量にして、形成し」ているのに対し,イ号工法は,「水中捨石基礎(基礎19)の計画天端高さ(H)よりも高い捨石基礎本体(捨石基礎20)を作業船から捨石(4)を投入して形成しており、しかも、所要の間隔の捨石余盛りを形成していない」点で相違し,本件発明のような効果を奏しないから,イ号工法は,本件発明の技術的範囲に属しない旨,主張する。(判定請求書の4頁15行?5頁13行「(5)本件特許発明とイ号発明との技術的対比」及び「(6)イ号発明が本件特許発明の技術的範囲に属しないとの説明」の項参照)。

(4-2)被請求人
被請求人は,次のように主張する。
(イ)「請求の理由(4)イ号発明の説明の項で・・・・・のイ号発明の構成と,そのイ号図面ならびに説明書に記載されているイ号発明の構成とが,一致も対応もしていない・・・・・整合しているとはいえない。
このため,・・・・・『イ号発明』が特定されていないことになる。
その上,・・・・・イ号発明は,いずれもその構成が,・・・・・請求項1?4に記載された構成・・・・・と対応させることができる程度に特定されていないことも明らかである。」(答弁書6頁21?同7頁8行)
(ロ)「本件特許発明1の・・・・・『ほぼ同じ天端高さ』は,明細書の発明の詳細な説明の記載や本件特許発明2?4の構成・・・・・から明らかなとおり,『同じ天端高さ』,『やや低い天端高さ』および『やや高い天端高さ』を包含する上位概念に相当し,当然ながらイ号発明の上記『よりも高い・・・天端高さ』をも包含する。
したがって,・・・・・本件特許発明の『水中捨石基礎の計画天端高さとほぼ同じ天端高さの捨石基礎本体を作業船から捨石を投入して形成し』と,イ号発明の『水中捨石基礎(基礎19)の計画天端高さ(H)よりも高い捨石基礎本体(捨石基礎20)を作業船から捨石(4)を投入して形成し』とは,互いに対応し同じ構成とみなされる。」(答弁書7頁23行?同8頁4行)
(ハ)「イ号発明において,水中捨石基礎(基礎19)の計画天端高さHよりもh1ほど高い捨石基礎20を作業船(ガット船)から捨石4を投入して形成している以上,その投入には,当然作業船(ガット船)に装備しているグラブバケットが使用され,必然的に,捨石余盛りは所要の間隔にならざるを得ない筈である。」(答弁書8頁7?11行)
(ニ)「イ号図面ならびに説明書の記載によれば,本均し工程の後において,『余分な捨石4を潜水士が排除する』のは,法面均し工程で法面に生じる余分な捨石であって,本件特許発明の対象外の事項である。・・・・・・ したがって,イ号発明が,法面均し工程において,余分な捨石を潜水士が排除しなければならないとしても,それは本件特許発明の関知するところではなく,イ号発明は,本件特許発明と対応一致する構成の範囲において,本件特許発明と同様な効果を奏すると認められる。」(答弁書8頁27行?同9頁14行)
(ホ)「イ号発明については,・・・・・本件特許発明1?4との正確な対比が不可能であるから,・・・・・『本件判定の請求を却下する。』との判定を賜りたく存じます。」(答弁書9頁15?18行)

5 当審の判断
(5-1)本件発明の技術的意義について
本件発明の技術的意義につき,本件特許明細書(甲第1号証)を参酌すると,次のような「従来の問題点」,「目的」,「解決手段」及び「効果」について次の記載がある。
(イ)従来の問題点:
「【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記第2893527号特許公報に記載の工法では、余分な捨石5の競り上がりの発生を防止できるものの、調整溝6…を水中捨石基礎3の作業区域の各境界部分に形成しなければならず、水中捨石基礎3の築造が面倒である。
【0009】さらには、余分な捨石5を上記調整溝6…に皺寄せ堆積させ、また、それを重錘4によりいちいち輾圧する必要があるため、輾圧作業も煩雑となる。」,
(ロ)目的:
「【0010】本発明は、余分な捨石が生じない水中捨石基礎の築造とこれの輾圧作業を容易に行うことができるとともに、高品質の水中捨石基礎を仕上げることができる重錘自由落下式水中捨石基礎圧密均し工法を提供しようとするものである。」,
(ハ)解決手段:
「請求項1の本発明重錘自由落下式水中捨石基礎圧密均し工法は次の構成からなる。
(1)水中捨石基礎Aの計画天端高さHとほぼ同じ天端高さの捨石基礎本体A′を作業船1から捨石を投入して形成すること。
(2)その捨石基礎本体A′の天端上に複数の捨石余盛りa1?a5,b1?b5,c1?c5、d1?d5,e1?e5,f1?f5,…を、互いに所要の間隔で、上記作業船1のクレーンブーム2に吊下したグラブバケット等の捨石堆積手段7により上記捨石基礎本体′の天端至近位置で捨石を解放することによって、しかも、その各捨石余盛りに対する重錘4による輾圧とそれにより周囲に展延する捨石に対する同重錘4による輾圧とによって上記計画天端高さHの水中捨石基礎となる捨石の総量を、各捨石余盛りに分配した量にして、形成すること。
(3)その後、上記重錘4の自由落下を反復実施することによる輾圧を、上記各捨石余盛りに対して行うとともに、その輾圧によって周囲に展延した捨石に対しても行い、水中捨石基礎Aが計画天端高さHとなるように圧密均しすること。
【0012】請求項2?4の発明は、捨石基礎本体A′を、水中捨石基礎Aの計画天端高さHと同じかそれよりやや低いかまたはやや高い天端高さにして形成する請求項1記載の重錘自由落下式水中捨石基礎圧密均し工法である。」,
(ニ)効果:
「請求項1?4記載の発明によれば、次の効果を得ることができる。水中捨石基礎の計画天端高さとほぼ同じ天端高さの捨石基礎本体を形成し、その後、その捨石基礎本体の天端上に、輾圧によって水中捨石基礎が計画天端高さとなる所要量の捨石からなる複数の捨石余盛りを互いに所要の間隔で形成しているので、従来のような余分な捨石を生じさせることがない。
【0024】また、余分な捨石が生じないので、従来のような調整溝を水中捨石基礎に形成する必要がなく、また、調整溝に余分な捨石を皺寄せ堆積させて、それを重錘によりいちいち輾圧する必要もないので、その水中捨石基礎の築造を容易に行うことができる。
【0025】さらに、作業船のクレーンブームに吊下したグラブバケット等の捨石堆積手段を捨石基礎本体の天端至近位置に吊り下ろした状態で、各捨石余盛りを堆積形成しているので、波浪,うねり等に起因する作業船の揺動による影響を受けにくく、これにより、それら各捨石余盛りを捨石基礎本体上の所要位置に正確にかつ過不足のない適量の捨石から形成することができる。」。

上記本件特許明細書の記載内容からすると,構成要件A,Bである「水中捨石基礎の計画天端高さとほぼ同じ天端高さの捨石基礎本体を作業船から捨石を投入して形成し、
その捨石基礎本体の天端上に複数の捨石余盛りを、互いに所要の間隔で、上記作業船のクレーンブームに吊下したグラブバケット等の捨石堆積手段により上記捨石基礎本体の天端至近位置で捨石を解放することによって、しかも、その各捨石余盛りに対する重錘による輾圧とそれにより周囲に展延する捨石に対する同重錘による輾圧とによって上記計画天端高さの水中捨石基礎となる捨石の総量を、各捨石余盛りに分配した量にして、形成し」という工程を採用することにより,「余分な捨石が生じないので、従来のような調整溝を水中捨石基礎に形成する必要がなく、また、調整溝に余分な捨石を皺寄せ堆積させて、それを重錘によりいちいち輾圧する必要もないので、その水中捨石基礎の築造を容易に行うことができる。さらに、作業船のクレーンブームに吊下したグラブバケット等の捨石堆積手段を捨石基礎本体の天端至近位置に吊り下ろした状態で、各捨石余盛りを堆積形成しているので、波浪,うねり等に起因する作業船の揺動による影響を受けにくく、これにより、それら各捨石余盛りを捨石基礎本体上の所要位置に正確にかつ過不足のない適量の捨石から形成することができる。」ものとする点が,本件発明の技術的特徴点であって,本件発明の本質的部分であると認められる。

ところで,上記請求人の主張からみて,請求人は,イ号工法が構成要件AおよびBを充足しないことのみを主張し,構成要件CおよびDが充足することについて争っていない。
そこで,以下,構成要件AおよびBについて検討する。

(5-2)構成aが構成要件Aを充足するか否かについて
(i)構成要件Aについて
先ず,構成要件Aの「計画天端高さとほぼ同じ天端高さ」を検討するに,本件特許明細書(甲第1号証)を参酌すると,次のような記載がある。
「【0013】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の一実施形態について説明する。まず、捨石を作業船1から慣行に従って投入することにより、図1に示すように、水中捨石基礎Aの計画天端高さHと同じ天端高さの捨石基礎本体A′を形成する。このとき、捨石基礎本体A′に対する輾圧作業は行わない。」
「【0021】なお、本発明は前述した実施形態に限るものではなく、次のような変形実施が可能である。上記においては、水中捨石基礎の計画天端高さと同じ天端高さの捨石基礎本体を形成した例について説明したが、これに限るものではなく、捨石基礎本体の天端高さを上記の計画天端高さよりもやや低く、また、それよりもやや高く築造することができる。」
これらの記載からは,「ほぼ同じ」が「やや低く」および「やや高く」を含むことは明らかであるが,具体的な説明も定義なく,実施態様としての数値も記載されいない。しかし,構成要件Bからみて,「計画天端高さ」を実現するための捨石の総量が水中捨石基礎の量と,その上に形成される「複数の捨石余盛り」の量との和により決められるのであるから,捨石基礎本体の高さは,「複数の捨石余盛り」の量により調節可能であるといえる。すなわち,「複数の捨石余盛り」の量を多くすることが可能な場合には,捨石基礎本体の高さを低くし,「複数の捨石余盛り」の量を少なくする場合には,捨石基礎本体の高さを高くすることとなる。
してみると,「ほぼ同じ」の技術的意義は,「複数の捨石余盛り」の量によって調節可能な,幅のある範囲であり,その上限は,最も少ない「複数の捨石余盛り」を形成する場合の高さであるといえる。

なお,本件特許公報(甲第1号証)に挙げられている参考文献である特開平3-13624号公報を参照すると,その3頁左上欄17?20行には,「中割石2は1個30?300kgのものとし、かつマウンド主部aの高さは、水中捨石マウンドAの設計計画高さLより平均で約30cm低く形成しておく。」と記載されている。

(ii)構成aについて
構成aの「所定高さ(計画天端高さ)Hよりもh1ほど高い高さ」についても,具体的な「h1」の大きさがイ号説明書に記載されておらず,具体的な内容は不明である。
しかし,構成bから明らかなように,「h1」は,捨石の除去により低くされることを前提にされた高さであって,捨石が余盛りされ,さらに高くされる高さではないことは,明らかである。

(iii)対比
上記のとおり,構成要件Aの「計画天端高さとほぼ同じ天端高さ」とは,「複数の捨石余盛り」を形成を前提とする高さであって,その上限は,最小の「複数の捨石余盛り」を形成する場合であり,「複数の捨石余盛り」を形成しない場合の高さよりも低いこととなる。
一方,構成aの「所定高さ(計画天端高さ)Hよりもh1ほど高い高さ」は,更なる余盛りを前提とする高さではなく,逆に,構成bにおける「捨石の除去」および構成cにおける「捨石の排除」を前提とする高さであるから,構成要件Aの「計画天端高さとほぼ同じ天端高さ」の上限よりも,高くなるといえる。
してみると,両高さは同程度とはいえず,構成aは,構成要件Aを充足しないというべきである。

(5-3)構成bが構成要件Bを充足するか否かについて
(i)構成要件Bについて
構成要件Bの「捨石余盛り」は,「複数の捨石余盛りを、互いに所要の間隔で・・・・グラブバケット等の捨石堆積手段により上記捨石基礎本体の天端至近位置で捨石を解放することによって・・・・形成」するのであり,均しを全くしていないのであるから,複数の山なりの余盛りであるといえる。

(ii)構成bについて
構成bの「所定の高さHよりもh2(h2<h1)ほど高い水中捨石基礎(捨石基礎20)」は,構成cから明らかなように,輾圧により低くされるのであるから,余盛り形成されているといえる。しかし,「上端部の捨石4をクレーンや潜水士によって排除し」,すなわち,均しにより「水中捨石基礎(捨石基礎20)の上端が概ね平坦」であるから,複数の山なりの余盛りを形成しているとまではいえない。

(iii)対比
上記したとおり,構成要件Bの「捨石余盛り」は,複数の山なりの余盛りを形成しているのに対して,構成bは,「概ね平坦」であり,複数の山なりの余盛りを形成しているとまではいえないのであるから,この点において,両余盛りは相違するといえる。
してみると,構成bは,構成要件Bを充足しないというべきである。

(5-4)まとめ
以上検討したとおり,イ号工法は構成要件AおよびBを充足しない。
また,本件発明2?4は,本件発明1を更に限定したものであるから,イ号工法は,同様に本件発明2?4の構成要件をも充足しないことは明らかである。

6 被請求人の主張に対して
まず,上記被請求人の主張(イ)および(ホ)については,上記「3 イ号工法」において述べたようにイ号工法を特定することができ,本件発明1および2と対比できるのであるから,被請求人の「本判定の請求を却下する」との主張は,理由がない。
また,被請求人の上記主張(ロ)について検討すると,
仮に,文言上,本件発明1の「ほぼ同じ天端高さ」がイ号工法の「よりも高い・・・天端高さ」の上位概念に相当するとしても,構成要件Aと構成aは,上記「(5-2)構成aが構成要件Aを充足するか否かについて」にて述べたとおり,技術的意義が相違するのであるから,「互いに対応し同じ構成とみなされる。」とはいえない。
さらに,被請求人の上記主張(ハ)について検討すると,
上記「(5-3)構成bが構成要件Bを充足するか否かについて」にて述べたとおり,本件発明の「捨石余盛り」は,構成要件Bにて形成されるものであって,複数の山なりの余盛りであり,直接に重錘による輾圧を受けるものである。構成要件Aの「捨石基礎本体」は,作業船から捨石を投入して形成されるものであって,本件発明の「捨石余盛り」を形成しているものではない。そして,イ号工法の「計画天端高さHよりもh1ほど高い捨石基礎20」が「作業船(ガット船)から捨石4を投入して形成」され,上端が平坦でないとしても,直接に重錘による輾圧を受けるものではなく,構成要件bの捨石の排除・均し後に輾圧を受けるのであるから,その上端が平坦でない「捨石基礎20」は,構成要件Bの「捨石余盛り」ではなく,構成要件Aの「捨石基礎本体」に相当するものであるといえる。被請求人の主張は,構成要件Aの「捨石基礎本体」と構成要件Bの「捨石余盛り」を混同するものであって,採用できない。

7 むすび
以上のとおりであるから,イ号工法は,本件発明の技術的範囲に属しない。
よって,結論のとおり,判定する。
 
別掲
 
判定日 2007-07-31 
出願番号 特願2000-142136(P2000-142136)
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (E02D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高橋 三成  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 峰 祐治
砂川 充
登録日 2002-04-12 
登録番号 特許第3295809号(P3295809)
発明の名称 重錘自由落下式水中捨石基礎圧密均し工法  
代理人 原田 敬志  
代理人 原田 信市  
代理人 内野 美洋  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ