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審決分類 審判 判定 判示事項別分類コード:121 属さない(申立て不成立) A47G
管理番号 1162254
判定請求番号 判定2007-600002  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2007-09-28 
種別 判定 
判定請求日 2007-01-16 
確定日 2007-08-25 
事件の表示 上記当事者間の特許第3512370号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号写真に示す「葬祭用装飾具」は、特許第3512370号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定請求の趣旨は、イ号写真に示す葬祭用装飾具(以下、「イ号物件」という。)は特許第3512370号発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

第2 本件特許発明
特許第3512370号の特許請求の範囲をみると、請求項2?6は請求項1を引用する従属請求項であること、独立請求項である請求項7は請求項1の下位概念のものに相当することから、イ号物件が特許第3512370号発明の技術的範囲に属するか否かは、イ号物件が特許第3512370号の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)に属するか否かによって判断する。
そして、本件特許発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであって、請求項1を分説すると、次のとおりである。
「(A) 床面上に自立可能な枠体と、この枠体に取り付けられた堤灯とから成る葬祭用装飾具であって、
(B)前記提灯の胴部の上下両端部に開口を有し、軸方向に伸縮自在な枠部材に透光性を有するシートを貼り付けてなり、扁平状に折り畳むことができるものであって、
(C)前記枠体が、上面が平坦な天板と、この天板を支持する脚体と、前記脚体に取り付けられる支持部材とを有し、
(D)前記支持部材は前記堤灯の照明具を支持し、この支持部材上に設けられ前記堤灯の胴部の下端部を固定する固定手段と備え、
(E)前記天板の下面には、前記提灯の胴部の上端部に取り付けられた吊り下げ用の紐を吊り下げ支持する引っ掛け部を備え、
(F)前記堤灯は、前記吊り下げ用の紐が前記引っ掛け部により吊り下げ支持された状態で前記提灯の胴部の上端部と前記天板との間に空隙をおいて設けられていることを特徴とする
(G)葬祭用装飾具。」
(なお、上記「(A)」、「(B)」、「(C)」、「(D)」、「(E)」、「(F)」及び「(G)」は、分説のために付した記号である。)

第3 イ号物件
請求人が提出した判定請求書中の「(5)(丸で囲まれた数字は表記不可能であるため(5)で代用する)本件特許発明と、イ号物品との技術的対比」、並びに同請求書に添付された甲第1号証の1「有限会社緑桃と株式会社クリエイトジャパンの製品の比較写真(全体・各部分)」及び甲第2号証の1「大分トキハデパートの2005年・2006年度の篭盛カタログ」に記載された内容は明確でなく、これらの記載のみからは、イ号物件の内容を正確に特定することができない。
そこで、審判合議体は、平成19年6月4日に大分商工会議所特許庁審判廷において口頭審理を行い、イ号物件が以下の通りのものであることを確認するとともに、請求人、被請求人も同意し、これを「第1回口頭審理調書」に記載した。
イ号物件の構成は、本件特許発明の分説と対応するように分説すると、次のとおりである。
「(a) 床面上に自立可能であって、上面が平坦な天板を有する枠体と、この天板に吊り下げられた堤灯とから成る葬祭用装飾具であって、
(b)前記提灯の胴部の上下両端部に開口を有し、軸方向に伸縮自在な枠部材に透光性を有するシートを貼り付けてなり、扁平状に折り畳むことができるものであって、
(c)該提灯の下端部にソケット固定板を有し、前記枠体が、前記天板を支持する脚体と、前記脚体に取り付けられる三角止め具とを有し、
(d)前記ソケット固定板は、前記提灯の照明具を支持し、前記提灯の胴部の下端部を取り付ける取付手段を備え、前記ソケット固定板と前記三角止め具との間には、空隙が設けられており、
(e)前記天板の下面には、前記提灯の胴部の上端部に取り付けられた吊り下げ用の紐を吊り下げ支持する引っ掛け部を備え、
(f)前記堤灯は、前記吊り下げ用の紐が前記引っ掛け部により吊り下げ支持された状態で前記提灯の胴部の上端部と前記天板との間に空隙をおいて設けられている
(g)葬祭用装飾具。」

第4 対比・判断
イ号物件が本件特許発明を充足するものであるか否か、本件特許発明の発明特定事項を(A)?(G)に分けて検討する。

1 本件特許発明の発明特定事項(A)について
イ号物件の構成(a)の「床面上に自立可能」な「枠体」は、本件特許発明の発明特定事項(A)の「床面上に自立可能な枠体」に相当する。
また、イ号物件の構成(a)の「上面が平坦な天板」は「枠体」の一部であること、イ号物件の構成(a)の「吊り下げられた」は本件特許発明の発明特定事項(A)の「取り付けられた」の下位概念に相当するものであることから、イ号物件の構成(a)の「天板に吊り下げられた堤灯」は、本件特許発明の発明特定事項(A)と同様に、「枠体に取り付けられた堤灯」であるといえる。
したがって、イ号物件の構成(a)は、本件特許発明の発明特定事項(A)を充足する。

2 本件特許発明の発明特定事項(B)、(E)、(F)及び(G)について
イ号物件の構成(b)、(e)、(f)及び(g)は、それぞれ、本件特許発明の発明特定事項(B)、(E)、(F)及び(G)と同一である。
したがって、イ号物件の構成(b)、(e)、(f)及び(g)は、本件特許発明の発明特定事項(B)、(E)、(F)及び(G)を充足する。

3 本件特許発明の発明特定事項(C)、(D)について
イ号物件の構成(a)の「上面が平坦な天板を有する枠体」は、本件特許発明の発明特定事項(C)の「枠体が、上面が平坦な天板」「を有し」に相当し、イ号物件の構成(c)の「枠体が、天板を支持する脚体と」「を有し」は、本件特許発明の発明特定事項(C)の「枠体が」「この天板を支持する脚体と」「を有し」に相当する。
しかし、本件特許発明においては、「前記枠体が」「前記脚体に取り付けられる支持部材とを有し」(発明特定事項(C))、「前記支持部材は前記堤灯の照明具を支持し、この支持部材上に設けられ前記堤灯の胴部の下端部を固定する固定手段と備え」(発明特定事項(D))ているのに対し、イ号物件においては、「該提灯の下端部にソケット固定板を有し」、「前記枠体が」「前記脚体に取り付けられる三角止め具とを有し」(構成(c))、「前記ソケット固定板は、前記提灯の照明具を支持し、前記提灯の胴部の下端部を取り付ける取付手段を備え、前記ソケット固定板と前記三角止め具との間には、空隙が設けられて」いる(構成(d))点で相違している。
ここで、イ号物件の「提灯の胴部の下端部を取り付ける取付手段」と本件特許発明の「提灯の胴部の下端部を固定する固定手段」とは、「提灯の胴部の下端部を取り付ける」ものである点で共通しているが、イ号物件においては、「提灯の胴部の下端部を取り付ける取付手段」を備えた「ソケット固定板」と「脚体に取り付けられる三角止め具」との間に「空隙が設けられて」いるのに対し、本件特許発明においては、「提灯の胴部の下端部を固定する固定手段」が備えられた部材と「脚体に取り付けられる」部材とは同じ「支持部材」であるから、「空隙が設けられて」いないことは明らかである。

したがって、イ号物件の構成(c)及び(d)は、本件特許発明の発明特定事項(C)及び(D)を充足しない。

第5 均等論について
上記のとおり、イ号物件の構成(c)及び(d)は本件特許発明の発明特定事項(C)及び(D)を充足しないが、イ号物件の構成(c)及び(d)が本件特許発明の発明特定事項(C)及び(D)と均等なものであるかについて、以下、検討する。

最高裁平成6年(オ)第1083号判決(平成6年2月24日)は、特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存在する場合であっても、以下の5つの要件を満たす場合には、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、対象製品等は特許発明の技術的範囲に属するものとするのが相当であると判示している。
「(積極的要件)
(1)相違部分が特許発明の本質的部分でなく、
(2)相違部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、
(3)右のように置き換えることに、当業者が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、
(消極的要件)
(4)対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術から出願時に容易に推考できたものでなく、かつ、
(5)対象製品等が、特許発明の出願手続において、特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たる等の特段の事情もない。」

イ号物件の構成(c)及び(d)と本件特許発明の発明特定事項(C)及び(D)とがこれらの要件を満たすか否か、以下に検討する。
(要件(2)について)
本件特許発明においては、「脚体に取り付けられる支持部材」に「堤灯の胴部の下端部を固定する固定手段」が備えられているから、提灯の胴部の下端部は脚体に対して安定して保持されるのに対し、イ号物件においては、「提灯の胴部の下端部を取り付ける取付手段を備え」た「ソケット固定板」と「脚体に取り付けられる三角止め具」「との間には、空隙が設けられて」いるから、提灯の胴部の下端部を安定して保持するという作用効果は奏しない。
そうすると、本件特許発明の発明特定事項(C)及び(D)は、イ号物件の構成(c)及び(d)には無い作用効果を奏するものといえるから、上記要件(2)を満たさない。
(要件(5)について)
本件特許発明の出願当初の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、
「 床面上に自立可能な枠体と、この枠体に取り付けられた提灯とから成り、前記枠体が、前記提灯を着脱自在かつ床面の上方に位置するように支持する手段と、その上方に設けられた被展示物を支持する手段とを有することを特徴とする葬祭用装飾具。」(乙第9号証参照。)
であるから、「提灯の胴部の下端部を取り付ける取付手段を備え」た「ソケット固定板」と「脚体に取り付けられる三角止め具」との間に「空隙が設けられて」いるイ号物件をも、その技術的範囲に含むものであった。
しかし、審査の過程において、平成15年4月30日付けで拒絶理由の通知(乙第10号証参照。)を受けた本件特許発明の出願人は、平成15年7月7日付け手続補正書(乙第12号証参照。)により、特許請求の範囲を、「堤灯の胴部の下端部を固定する固定手段」を備えた「支持部材」が「脚体に取り付けられ」ている「葬祭用装飾具」に減縮する補正を行い、その結果、「提灯の胴部の下端部を取り付ける取付手段を備え」た「ソケット固定板」と「脚体に取り付けられる三角止め具」との間に「空隙が設けられて」いる「葬祭用装飾具」は、本件特許発明の技術的範囲には含まれないものとなった。
そうすると、「提灯の胴部の下端部を取り付ける取付手段を備え」た「ソケット固定板」と「脚体に取り付けられる三角止め具」との間に「空隙が設けられて」いるイ号物件は、本件特許発明の出願手続において、特許請求の範囲から意識的に除外されたものといえるから、上記要件の(5)を満たさない。

よって、均等の判断に当たっての上記要件(2)及び要件(5)を満たさないので、イ号物件の構成(c)及び(d)は、本件特許発明の発明特定事項(C)及び(D)と均等なものとすることはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、イ号写真に示す葬祭用装飾具は本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2007-08-15 
出願番号 特願2000-157807(P2000-157807)
審決分類 P 1 2・ 121- ZB (A47G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 氏原 康宏  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 川本 真裕
中田 誠二郎
登録日 2004-01-16 
登録番号 特許第3512370号(P3512370)
発明の名称 葬祭用装飾具  
代理人 梅澤 健  

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